説明

LED信号機対策用カメラ付きレコーダ

【課題】LED信号機を駆動する商用電源の周波数とカメラのフィールド周波数とが接近する場合に、LED信号機におけるLED信号の点灯状態を長時間記録できない現象を回避して、正確に記録することができるLED信号機対策用カメラ付きレコーダを提供する。
【解決手段】カメラ3の露光タイミングが第1の時間ごとに第2の時間だけずれるように外部同期制御信号を入力させて、露光タイミングをずらす制御を行うので、LED信号の点滅における消灯のタイミングとカメラの露光タイミングとが連続して重なり合うことにより生じるLED信号消灯の連続撮影を阻止することができる。これにより、LED信号機を駆動する商用電源の周波数とカメラ3のフィールド周波数とが接近する場合に、LED信号機におけるLED信号の点灯状態を長時間記録できない現象を回避して、正確に記録することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、イメージセンサからなるカメラにより撮影された少なくともLED(Light Emitting Diode)搭載式の交通信号機であるLED信号機におけるLED信号の点灯状態を含む撮影画像を記録するLED信号機対策用カメラ付きレコーダに関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、車両の運転状況を撮影し撮影画像を得るカメラおよび車両の加速度、速度、GPSなどを検知するセンサを有し、記録された各データにより運転を監視するカメラ付き運転監視装置(ドライブレコーダ)が知られている(例えば、特許文献1)。このドライブレコーダでは、事故時などにおいて信号機の点灯状態が赤青黄信号のいずれであったかが問題となるため、この信号の点灯状態の画像が撮影画像に含まれる。
【0003】
一般に、上記ドライブレコーダなどに使用されるCCDやCMOSのイメージセンサからなるカメラは、電子シャッタを用いて所定の露光タイミングで撮影するものであり、カメラの規格である、例えばNTSC(National Television System Committee)またはPAL(Phase Alternating Line)の方式により、露光タイミングを生成するフィールド周波数が規定されており、NTSCでは59.94HzでPALでは50Hzであり、単位期間に連続する画像記録枚数も限定されている。
【特許文献1】特許第3044025号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、従来の電球式信号機では、点灯時の輝度変化はほとんどなく、一般のカメラの撮影においてこの輝度変化の問題は起きなかったが、LED信号機は商用の交流電源を整流して駆動されるので、LED信号は、図3のaのように、この商用電源の周波数(例えば、西日本地域の60Hz)に基づいて点灯状態で輝度変化があり、点灯(輝度が高い)と消灯(輝度が低いものを含む)を高速で連続して繰り返して実際上動作する。つまり、肉眼で確認できないLED信号の点滅における消灯が一定のタイミングで出現することとなる。
【0005】
一方、図3のbのように、カメラでは、NTSCのフィールド周波数59.94Hzであって、商用電源周波数60Hzと非常に接近する場合に、このカメラの露光タイミングと、前記LED信号の点滅における消灯のタイミングとが連続して重なり合うことによって、LED信号消灯が連続して撮影されるという問題が起こる。この場合、長時間(数sec以上の単位)記録できない可能性が高く、実際には信号機が点灯状態にあるにもかかわらず消灯状態の撮影画像となり、記録映像の証拠性が低下する。
【0006】
また、イメージセンサの電子シャッタは、一般にダイナミックレンジを確保するために周囲の明るさに応じて1画面を取得する時間に露光時間を調節するので、カメラから見て周囲が一定以上の明るさのとき、電子シャッタによる露光時間が短く(露光時間最大に対して約10分の3)なると、点灯を記録できない可能性がより高くなる。
同様の問題がPALのフィールド周波数と東日本地域の商用電源周波数50Hzとの間でも発生する。
【0007】
本発明は、前記の問題点を解決して、LED信号機を駆動する商用電源の周波数とカメラのフィールド周波数とが接近する場合に、LED信号機におけるLED信号の点灯状態を長時間記録できない現象を回避して、正確に記録することができるLED信号機対策用カメラ付きレコーダを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
前記目的を達成するために、本発明にかかるLED信号機対策用カメラ付きレコーダは、イメージセンサからなるカメラにより撮影された、少なくとも商用電源で駆動されたLED信号機の点灯状態のLED信号がこの商用電源の周波数に基づき点灯と消灯の点滅を高速で繰り返して実際上動作する、当該LED信号機におけるLED信号の点灯状態を含む撮影画像を記録するものであって、前記カメラの規格に基づいて露光タイミングを生成するフィールド周波数と、前記商用電源周波数とが接近しているとき、前記LED信号の点滅における消灯のタイミングと前記カメラの露光タイミングとが連続して重なり合うことにより生じる前記LED信号消灯の連続撮影を阻止するように、前記カメラの露光タイミングが第1の時間ごとに第2の時間だけずれるように外部同期制御信号を入力させて、露光タイミングをずらす制御を行う、LED信号撮影制御手段を備えている。
【0009】
この構成によれば、カメラの露光タイミングが第1の時間ごとに第2の時間だけずれるように外部同期制御信号を入力させて、露光タイミングをずらす制御を行うので、LED信号の点滅における消灯のタイミングとカメラの露光タイミングとが連続して重なり合うことにより生じるLED信号消灯の連続撮影を阻止することができる。これにより、LED信号機を駆動する商用電源の周波数とカメラのフィールド周波数とが接近する場合に、LED信号機におけるLED信号の点灯状態を長時間記録できない現象を回避して、正確に記録することができる。
【0010】
好ましくは、前記LED信号撮影制御手段が、露光タイミングをずらすための第1の時間および第2の時間を設定するタイミングずれ設定回路と、露光タイミングを第1の時間ごとに第2の時間だけずらす外部同期制御信号を生成する外部同期制御信号生成回路と、生成された前記外部同期制御信号に基づき前記LED信号消灯のタイミングに対して露光タイミングをずらす制御を行うタイミングずれ制御回路と、を備えている。したがって、LED信号機におけるLED信号の点灯状態を長時間記録できない現象を回避して、より正確に記録することができる。
【0011】
好ましくは、前記第1の時間が、連続したLED信号消灯の時間を許容できる時間であり、前記第2の時間が、ずらす前の露光タイミングでLED信号が消灯または点灯の状態のとき、ずらした後の露光タイミングでは常にLED信号が前記状態と相異なる点灯または消灯の状態となる時間である。したがって、露光タイミングをより適切にずらす制御を行うことができる。
【0012】
好ましくは、LED信号機対策用カメラ付きレコーダは、車両に搭載されて、少なくともLED信号の点灯状態を含む撮影画像を記録し、記録されたデータに基づき運転を監視するカメラ付き運転監視装置である。また、好ましくは、前記カメラの規格がNTSC方式またはPAL方式である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
以下、本発明の実施形態を図面にしたがって説明する。図1は、本発明の一実施形態に係るLED信号機対策用カメラ付きレコーダを示す概略構成図である。本装置は、CCDイメージセンサのようなカメラ3を含むイメージセンサシステム1と、カメラ3により撮影された少なくともLED信号機におけるLED信号の点灯状態を含む撮影画像を記録する記録システム(レコーダ)2と、LED信号撮影制御手段10とを備えている。本装置は、車両に搭載されてカメラ3で車両の運転状況を連続して撮影して動画を得るもので、ほかに図示しない車両の加速度、速度、GPSなどを検知するセンサ部を備えており、記録された各データにより運転を監視するカメラ付き運転監視装置(ドライブレコーダ)に適用される。
【0014】
本装置は、商用電源で駆動されたLED信号機の点灯状態のLED信号が、この商用電源の周波数に基づき点灯と消灯の点滅を高速で繰り返して実際上動作し、カメラ3の規格(例えば、NTSC方式)に基づいて露光タイミングを生成するフィールド周波数(例えば、59.94Hz)と、前記商用電源周波数(例えば、60Hz)とが接近している状態のときに、使用されるものである。
【0015】
前記LED信号撮影制御手段10は、LED信号の点滅における消灯のタイミングとカメラ3の露光タイミングとが連続して重なり合うことにより生じる前記LED信号消灯の連続撮影を阻止するように、カメラ3の露光タイミングが第1の時間ごとに第2の時間だけずれるように外部同期制御信号を入力させて、露光タイミングをずらす調整を行う。このLED信号撮影制御手段10は、後述するタイミングずれ設定回路14、外部同期制御信号生成回路15、およびタイミングずれ制御回路7により構成される。
【0016】
記録システム(レコーダ)2は、イメージセンサシステム1から出力された同期信号を含むビデオ信号(NTSC方式)から同期信号を検出する画像処理同期検出回路11と、ビデオ信号を記録する記録回路12と、露光タイミングをずらすための第1の時間および第2の時間を設定するタイミングずれ設定回路14と、露光タイミングを第1の時間ごとに第2の時間だけずらす外部同期制御信号(垂直同期信号)を生成する外部同期制御信号生成回路15とを備えている。この外部同期制御信号生成回路15は、通常NTSCのフィールド周波数59.94Hzに基づく外部同期制御信号を生成しているが、タイミングずれ設定回路14により露光タイミングをずらすための第1の時間および第2の時間が設定されたとき、それまでの外部同期制御信号をリセットして、一時的に露光タイミングを第1の時間ごとに第2の時間だけずらす外部同期制御信号を生成する。
【0017】
イメージセンサ(カメラ)システムは、前記したカメラ(イメージセンサ)3のほかに、カメラ3に対して所定の露光タイミングでシャッタ制御を行う電子シャッタ(駆動回路)5と、画像信号を処理して出力する画像処理出力回路6と、出力された画像信号の内部同期制御、および前記外部同期制御信号生成回路15で生成された外部同期制御信号の入力に基づき、LED信号消灯のタイミングに対して露光タイミングをずらす制御を行うタイミングずれ制御回路7とを備えている。
【0018】
前記タイミングずれ設定回路14において、カメラ3の露光タイミングをずらすための第1の時間および第2の時間は以下のように設定される。
まず、LED信号機を駆動する電源は商用電源の交流を例えば全波整流して用いられ、この商用電源周波数60Hzとカメラ3のフィールド周波数59.94Hzとが接近する場合に、LED信号機におけるLED信号の点灯状態を長時間(例えば、2.5sec)記録できない現象は、以下の式のように、それぞれの周波数差に基づく周期で現れる。
(60Hz−59.94Hz)×2=0.12Hz(周波数差に基づく周期、8.3sec)
上式で商用電源周波数60Hzとカメラ3のフィールド周波数59.94Hzとの差を2倍としているのはカメラ3の露光タイミング中にLED信号の輝度が2周期変化するためである。周囲の明るさにもよるが、この周期中の点灯と消灯の時間割合を例えば7:3と考えると、全体の30%は消灯状態で、8.3secごとに5.8sec点灯し、2.2sec消灯を繰り返すこととなる。
【0019】
そこで、露光タイミングをずらすための第2の時間は、商用電源周波数60Hz(全波整流により120Hz)の周期が8.3msecであり、前記した点灯と消灯の時間割合が7:3であることにより、例えば以下のように設定される。
8.3msec×(3/7)=3.5msec
露光タイミングが3.5msecずらされて露光タイミングの周波数は全体として低くなる。これにより、ずらす前の露光タイミングでLED信号が消灯または点灯の状態のとき、ずらした後の露光タイミングでは常にLED信号が前記状態と相異なる点灯または消灯の状態となる。そうすると、例えばずらす前の露光タイミングでLED信号が消灯状態であった場合、ずらした後の露光タイミングでは必ずLED信号が点灯状態となる。
【0020】
この露光タイミングをずらす外部同期制御入力を行う頻度は、連続したLED信号消灯の状態を許容できる時間である。例えば、連続消灯の状態を0.3sec以下に収めたい場合には、第1の時間は0.3secに設定される。こうして、第1の時間ごとに第2の時間だけ露光タイミングを適切にずらすことにより、LED信号消灯の連続撮影を阻止できる。
【0021】
この例では、1枚撮影して、記録回路12でその記録が終了すると、外部同期制御信号生成回路15において通常の外部同期制御信号がリセットされたうえで露光タイミングを第1の時間ごとに第2の時間ずらす外部同期制御信号が生成されて、タイミングずれ制御回路7に入力され、図2のbのように、LED信号消灯のタイミング(図2のa)に対して露光タイミングがずらされる。
【0022】
この場合、露光タイミングをずらすことにより、一部記録できない画像が存在してレートが落ちる(例えば、1/2〜1/3)可能性はあるが、カメラ3は連続撮影して動画を得るシステムであるので、その前後の画像から信号の点灯状態を十分に認識可能である。
【0023】
これにより、LED信号機を駆動する商用電源の周波数とカメラ3のフィールド周波数とが接近する場合に、カメラ3の外部同期制御入力によりシステムに影響のない範囲で露光タイミングをずらすことにより、商用電源周波数との差を広げて、LED信号機におけるLED信号の点灯状態を長時間記録できない現象を回避して、正確に記録することができる。
【0024】
また、LED信号消灯の連続撮影が阻止されるので、記録映像における証拠性が向上するとともに、汎用的な外部同期制御入力付きカメラシステムを使用できるので、低コスト化を図ることもできる。
【0025】
なお、この実施形態では、運転状況の撮影画像にLED信号機のLED信号の点灯状態を含むカメラ付き運転監視装置(ドライブレコーダ)に適用しているが、LED信号機のみを常時カメラで監視しているLED信号機監視用のカメラ付きレコーダに適用してもよい。
【0026】
なお、この実施形態では、カメラ3の規格がNTSC方式で商用電源周波数が60Hzの場合に適用しているが、これに代えてカメラ3の規格がPAL方式で商用電源周波数が50Hzの場合などに適用してもよい。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【図1】本発明の一実施形態に係るLED信号機対策用カメラ付きレコーダを示すブロック構成図である。
【図2】LED信号消灯のタイミングに対してカメラの露光タイミングをずらした状態を示すタイムチャートである。
【図3】LED信号消灯のタイミングとカメラの露光タイミングとが重なり合う状態を示すタイムチャートである。
【符号の説明】
【0028】
1:イメージセンサシステム
2:記録システム(レコーダ)
3:イメージセンサ(カメラ)
5:電子シャッタ(駆動回路)
7:タイミングずれ制御回路
10:LED信号撮影制御手段
14:タイミングずれ設定回路
15:外部同期制御信号生成回路




【特許請求の範囲】
【請求項1】
イメージセンサからなるカメラにより撮影された、少なくとも商用電源で駆動されたLED信号機の点灯状態のLED信号がこの商用電源の周波数に基づき点灯と消灯の点滅を高速で繰り返して実際上動作する、当該LED信号機におけるLED信号の点灯状態を含む撮影画像を記録するLED信号機対策用カメラ付きレコーダであって、
前記カメラの規格に基づいて露光タイミングを生成するフィールド周波数と、前記商用電源周波数とが接近しているとき、前記LED信号の点滅における消灯のタイミングと前記カメラの露光タイミングとが連続して重なり合うことにより生じる前記LED信号消灯の連続撮影を阻止するように、前記カメラの露光タイミングが第1の時間ごとに第2の時間だけずれるように外部同期制御信号を入力させて、露光タイミングをずらす制御を行う、LED信号撮影制御手段、
を備えたLED信号機対策用カメラ付きレコーダ。
【請求項2】
請求項1において、
前記LED信号撮影制御手段が、露光タイミングをずらすための第1の時間および第2の時間を設定するタイミングずれ設定回路と、露光タイミングを第1の時間ごとに第2の時間だけずらす外部同期制御信号を生成する外部同期制御信号生成回路と、生成された前記外部同期制御信号に基づき前記LED信号消灯のタイミングに対して露光タイミングをずらす制御を行うタイミングずれ制御回路とを備えた、LED信号機対策用カメラ付きレコーダ。
【請求項3】
請求項1において、
前記第1の時間が、連続したLED信号消灯の時間を許容できる時間であり、
前記第2の時間が、ずらす前の露光タイミングでLED信号が消灯または点灯の状態のとき、ずらした後の露光タイミングでは常にLED信号が前記状態と相異なる点灯または消灯の状態となる時間である、LED信号機対策用カメラ付きレコーダ。
【請求項4】
請求項1のLED信号機対策用カメラ付きレコーダが、車両に搭載されて、少なくともLED信号の点灯状態を含む撮影画像を記録し、記録されたデータに基づき運転を監視するカメラ付き運転監視装置である、LED信号機対策用カメラ付きレコーダ。
【請求項5】
請求項2において、
前記カメラの規格がNTSC方式またはPAL方式である、LED信号機対策用カメラ付きレコーダ。




【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2009−27666(P2009−27666A)
【公開日】平成21年2月5日(2009.2.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−191622(P2007−191622)
【出願日】平成19年7月24日(2007.7.24)
【出願人】(000103736)オプテックス株式会社 (116)
【Fターム(参考)】