説明

LED点灯装置

【課題】定電流回路における損失を低減することのできるLED点灯装置を提供する。
【解決手段】交流電圧を整流するとともに平滑して直流電圧を出力する入力整流平滑回路3と、入力整流平滑回路3から出力される直流電圧をオン・オフして交流電圧に変換し、その交流電圧を所定の交流電圧に変圧する一方、変圧後の交流電圧を整流するとともに平滑して直流電圧を出力するDC−DC変換回路4と、DC−DC変換回路4から出力された直流電圧を所定電圧値に保持し出力する定電圧回路5と、定電圧回路5から出力される直流電圧をLEDに印加するとともに、LEDに流れる直流電流が一定値になるよう制御を行うトランジスタQ2を有する定電流回路6とを備えたLED点灯装置であって、LEDの点灯中、トランジスタQ2における損失を検出し、当該損失が所定値を超えた場合に、定電圧回路5における前記所定電圧値の大きさを変更する損失低減回路21を設けた。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、発光ダイオードであるLEDを点灯させるためのLED点灯装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来から、商用交流電源からの交流電圧を直流電圧に整流し、その直流電圧をDC−DC変換してからLEDに印加するようにしたLED点灯装置が知られている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
また、LED点灯装置において、DC−DC変換後の直流電圧を定電圧に保持する定電圧回路と、この定電圧回路からの直流電圧をLEDに印加するとともに、LEDに流れる直流電流を定電流に保持する定電流回路とを有するものが提案されている。例えば、図4に示すように、入力端子部1に印加された交流電圧からノイズ除去、又は当該交流電圧にノイズが入り込むのを防止する入力フィルタ回路2と、入力フィルタ回路2から出力される交流電圧を整流・平滑して直流電圧にする入力整流平滑回路3と、入力整流平滑回路3から出力される直流電圧をDC−DC変換するDC−DC変換回路4と、DC−DC変換後の直流電圧を定電圧に保持する定電圧回路5と、定電圧回路5から出力される直流電圧をLEDに印加するとともに、LEDに流れる直流電流を定電流に保持する定電流回路6とを備えたLED点灯装置が提案されている。
【0004】
入力フィルタ回路2は、コンデンサC1とラインフィルタL1などから構成されている。
【0005】
入力整流平滑回路3は、脈流電圧を全波整流する整流回路7と、全波整流された脈流電圧を平滑するコンデンサC2とを有している。
【0006】
DC−DC変換回路4は、トランスTと、このトランスTの一次巻線T1に直列接続されたトランジスタQ1と、トランジスタQ1を所定周期でオン・オフする駆動回路8とを有する。駆動回路8の入力端子8aには、フォトカプラ9のフォトトランジスタ9aが接続され、駆動回路8は、入力端子8aの電圧に応じてトランジスタQ1のオン時間を制御する。
【0007】
また、DC−DC変換回路4は、トランスTの二次巻線T2から出力される交流電圧を半波整流するダイオードD1と、このダイオードD1で半波整流された電圧を平滑するコンデンサC3とを有している。
【0008】
定電圧回路5は、フォトカプラ9の発光ダイオード9bと、この発光ダイオード9bに直列に設けられた定電圧IC10とを有している。
【0009】
定電流回路6は、比較器11と、この比較器11の出力信号によって駆動され、LEDに流れる直流電流を制御するトランジスタQ2とを有している。そして、比較器11の非反転入力端子にはLEDに流れる直流電流値を決める基準電圧Ref が抵抗R7を介して入力され、比較器11の反転入力端子にはトランジスタQ2のソース側の電圧が入力されるようになっている。
【0010】
LEDは順方向降下電圧(VF)のバラツキが大きいため、定電圧回路5は、LEDに印加する電圧が最大の順方向降下電圧(VF)の値以上になるように、設定されていなければならない。定電流回路6は、抵抗R9に流れる電流値(=LED電流値)が基準電圧Ref と等しくなるように、比較器11でトランジスタQ2をオン・オフ制御している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【特許文献1】特開2011−3326号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
しかしながら、上記従来の技術では、LEDの順方向降下電圧(VF)が大きくばらついた場合、定電流回路に数W〜数十Wの損失が発生する。つまり、定電流回路においては、((定電圧回路5の電圧値−順方向降下電圧(VF))×定電流値)がトランジスタQ2での損失となり、この損失が数W〜数十Wになる。
【0013】
このような損失が発生すると、本来、高効率であるはずのLEDの優位性が失われてしまうことになる。
【0014】
本発明の課題は、定電流回路における損失を低減することのできるLED点灯装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0015】
上記課題を解決するために、請求項1に記載の発明は、交流電圧を整流するとともに平滑して直流電圧を出力する入力整流平滑回路と、前記入力整流平滑回路から出力される直流電圧をオン・オフして交流電圧に変換し、その交流電圧を所定の交流電圧に変圧する一方、変圧後の交流電圧を整流するとともに平滑して直流電圧を出力するDC−DC変換回路と、前記DC−DC変換回路から出力された直流電圧を所定電圧値に保持し出力する定電圧回路と、前記定電圧回路から出力される直流電圧をLEDに印加するとともに、前記LEDに流れる直流電流が一定値になるよう制御を行うスイッチング素子を有する定電流回路とを備えたLED点灯装置であって、前記LEDの点灯中、前記スイッチング素子における損失を検出し、当該損失が所定値を超えた場合に、前記定電圧回路における前記所定電圧値の大きさを変更する損失低減回路を設けたことを特徴としている。
【0016】
上記構成によれば、スイッチング素子での損失が大きくなったとき、定電圧回路における所定電圧値の大きさが変更され、これによって、スイッチ素子に発生する電圧を下げることができる。その結果、定電流回路における損失を低減することができる。
【0017】
請求項2に記載の発明は、請求項1において、前記損失低減回路は比較器を有し、該比較器は、前記スイッチング素子に発生する電圧と目標電圧とを比較して、前記スイッチング素子に発生する電圧が前記目標電圧以上となったとき、前記定電圧回路における前記所定電圧値を下げるよう該定電圧回路を制御することを特徴としている。
【0018】
請求項3に記載の発明は、請求項1又は2において、前記損失低減回路は、前記定電圧回路及び前記定電流回路に接続されていることを特徴としている。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、定電流回路における損失を低減することが可能となり、高効率のLED点灯装置を実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】本発明に係るLED点灯装置の回路図である。
【図2】本発明の作用を説明するための回路図である。
【図3】本発明の作用を説明するためのタイミングチャートである。
【図4】従来技術によるLED点灯装置の回路図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本発明の実施例を図面に従って説明する。なお、従来技術と同一の箇所については同一符号を記すこととする。
【実施例】
【0022】
図1は、本発明に係るLED点灯装置を示している。このLED点灯装置20は、入力端子部1に印加された交流電圧からノイズ除去したり、又は当該交流電圧にノイズが入り込むのを防止する入力フィルタ回路2と、入力フィルタ回路2から出力される交流電圧を整流・平滑して直流電圧にする入力整流平滑回路3と、入力整流平滑回路3から出力される直流電圧をDC−DC変換するDC−DC変換回路4と、DC−DC変換後の直流電圧を定電圧に保持する定電圧回路5と、定電圧回路5から出力される直流電圧をLEDに印加するとともに、LEDに流れる直流電流を定電流に保持する定電流回路6とを有している。ここでは、LEDは3個設けられ、これらLEDは直列に接続されている。
【0023】
本実施例のLED点灯装置20においては、定電圧回路5及び定電流回路6に損失低減回路21が接続されている。
【0024】
入力フィルタ回路2には入力端子部1が接続され、この入力端子部1と入力フィルタ回路2との間にはフューズF1が設けられている。入力フィルタ回路2は、コンデンサC1とラインフィルタL1などから構成されている。なお、Z1はバリスタである。
【0025】
入力整流平滑回路3は、脈流電圧を全波整流する整流回路7と、全波整流された脈流電圧を平滑するコンデンサC2とを有している。
【0026】
DC−DC変換回路4は、トランスTと、このトランスTの一次巻線T1に直列接続されたトランジスタQ1と、トランジスタQ1を所定周期でオン・オフする駆動回路8とを有する。駆動回路8の入力端子8aには、フォトカプラ9のフォトトランジスタ9aが接続され、駆動回路8は、入力端子8aの電圧に応じてトランジスタQ1のオン時間を制御する。また、トランスTの一次巻線T1には抵抗R1が直列に接続されている。
【0027】
また、DC−DC変換回路4は、トランスTの二次巻線T2から出力される交流電圧を半波整流するダイオードD1と、このダイオードD1で半波整流された電圧を平滑するコンデンサC3とを有している。
【0028】
定電圧回路5には、プラス・マイナスの両極間に、直列に接続された抵抗R2、フォトカプラ9の発光ダイオード9b、及び定電圧IC10が設けられている。また、発光ダイオード9bには抵抗R3が並列に接続されている。
【0029】
また、定電圧回路5には、プラス・マイナスの両極間に、直列に接続された抵抗R4及び抵抗R5が設けられている。そして、発光ダイオード9bと定電圧IC10との中間点と、抵抗R4と抵抗R5との中間点とは、コンデンサC4及び抵抗R6を介して互いに接続されている。
【0030】
定電流回路6は、比較器11と、この比較器11の出力信号によって駆動され、LEDに流れる直流電流を制御するトランジスタQ2(スイッチング素子)とを有している。比較器11の非反転入力端子には、LEDに流れる直流電流値を決める基準電圧Ref が抵抗R7を介して入力され、比較器11の反転入力端子にはトランジスタQ2のソース側の電圧が入力される。また、比較器11の出力端子は抵抗R8を介してトランジスタQ2のゲートに接続され、トランジスタQ2のソース側には抵抗R9が設けられている。
【0031】
定電流回路6は、抵抗R9に流れる電流値(=LED電流値)が基準電圧Ref と等しくなるように、比較器11でトランジスタQ2をオン・オフ制御している。
【0032】
損失低減回路21には、プラス・マイナスの両極間に、直列に接続された抵抗R10及び抵抗R11が設けられ、また直列に接続された抵抗R12及びコンデンサC5が設けられている。また、損失低減回路21には比較器22が設けられている。比較器22の非反転入力端子は、抵抗R13を介して抵抗R12とコンデンサC5との中間点に接続され、比較器22の反転入力端子は、抵抗R14を介してマイナス側のラインに接続されている。
【0033】
比較器22の出力端子は、抵抗R15及び抵抗R16、さらには抵抗R4と抵抗R5の中間点を介して、定電圧IC10に接続されている。また、抵抗R15と抵抗R16の中間点は、コンデンサC6を介してマイナス側のラインに接続されている。
【0034】
比較器22の反転入力端子と出力端子とは、抵抗R17及びコンデンサC7を介して互いに接続され、さらに前記両端子は、抵抗R17及びコンデンサC7に並列に配置されたコンデンサC8によって互いに接続されている。
【0035】
また、損失低減回路21においては、抵抗R12とコンデンサC5との中間点と、定電流回路6におけるトランジスタQ2のドレイン側とが、ダイオードD2と抵抗R18を介して互いに接続されている。
【0036】
次に、上記構成のLED点灯装置の作用について説明する。
【0037】
入力端子部1に印加された交流電圧は、入力フィルタ回路2において、ノイズ除去(又は当該交流電圧にノイズが入り込むのが防止)されてから、入力整流平滑回路3に入力される。
【0038】
入力整流平滑回路3では、入力フィルタ回路2から入力された交流電圧が、整流回路7で直流電圧に整流され、その直流電圧はコンデンサC2で平滑された後、DC−DC変換回路4に入力される。
【0039】
DC−DC変換回路4に入力された直流電圧は、トランスTの一次巻線T1に印加される。そして、駆動回路8は、所定周期でトランジスタQ1をオン・オフさせる。このオン・オフにより、トランスTの一次巻線T1に印加された直流電圧は断続され、この断続によりトランスTの二次巻線T2に交流電圧が誘起される。この二次巻線T2の交流電圧は、トランスTの一次巻線T1に印加される電圧に比例する。
【0040】
上記交流電圧は、ダイオードD1により半波整流され、さらにコンデンサC3により平滑されて、直流電圧となる。この直流電圧は、損失低減回路21を経由して3個のLEDに印加され、各LEDに電流が流れて各LEDが発光する。
【0041】
定電流回路6においては、トランジスタQ2のソース側の電圧と基準電圧Ref とが等しくなるように、比較器11でトランジスタQ2をオン・オフ制御する。これによって、抵抗R9に流れる電流(つまり、LEDを流れる電流)は定電流となる。
【0042】
損失低減回路21においては、LEDが点灯している間は常時、トランジスタQ2における損失を検出し、当該損失が所定値を超えた場合に、定電圧回路5から出力される直流電圧の電圧値が低下するよう定電圧回路5を制御する。
【0043】
ここで、抵抗R12、コンデンサC5、ダイオードD2、抵抗R18、トランジスタQ2のドレイン側の電圧(ドレイン電圧)、及びマイナス側のラインだけに着目すると、図2のような回路が得られる。
【0044】
抵抗R18は、トランジスタQ2がオンした際に、コンデンサC5の放電電流がトランジスタQ2のドレイン側に流れるため、その制限用である(検出誤差となるため、抵抗R18の値は小さい方が良い。)。ダイオードD2は、定電圧回路5からの定電圧(これを定電圧4という)の値が高く、且つトランジスタQ2がオフしているときの損失低減回路21の保護用である(検出誤差となるため、ダイオードD2の順方向降下電圧VF’は小さい方が望ましい。)。
【0045】
ドレイン電圧(定電圧値−VF値)×ドレイン電流(LED電流値)=損失であるから、トランジスタQ2のドレイン電圧値を検出したい。トランジスタQ2がオンすると、コンデンサC5の電圧VC5は定電圧4の値から次のように変わる(図3も参照)。
【0046】
【数1】

【0047】
ここで、抵抗R18≒0Ω、ダイオードD2のVF’≒0Vと仮定すれば、「コンデンサC5の電圧VC5≒ドレイン電圧」となる。これで、ドレイン電圧を検出できたので、損失目標値を抵抗R10,R11で決め、この2値を比較器22で比較し、損失量の大小が判定できる。この判定を、定電圧回路5の値を決める定電圧IC10にフィードバックして、損失が大きい場合には定電圧回路5の値を下げる。定電圧回路5の値が下がると、ドレイン電圧も下がり、損失低減を実現することができる。
【0048】
また、比較器22の反転入力端子には、損失を決める目標電圧の信号が入力されている。この目標電圧は、抵抗R17、コンデンサC7及びコンデンサC8によって予め設定されている。
【0049】
そして、比較器22は、非反転入力端子に入力された電圧(この電圧は、トランジスタQ2に発生した電圧にほぼ等しい)と、反転入力端子に入力された目標電圧とを比較し、非反転入力端子に入力された電圧(つまり、トランジスタQ2に発生した電圧)が目標電圧以上となったとき、定電圧IC10に対して制御信号を出力し、定電圧回路5の電圧値が低下するよう定電圧回路5を制御する。
【0050】
本実施例によれば、トランジスタQ2で発生する電圧が目標電圧以上になったとき、定電圧回路5の直流電圧の大きさが低下し、これによって、トランジスタQ2に発生する電圧を下げることができる。その結果、定電流回路6における損失を低減することができる。
【0051】
以上、本発明の実施例を図面により詳述してきたが、上記実施例は本発明の例示にしか過ぎないものであり、本発明は上記実施例の構成にのみ限定されるものではない。本発明の要旨を逸脱しない範囲の設計の変更等があっても、本発明に含まれることは勿論である。
【符号の説明】
【0052】
2 入力フィルタ回路
3 入力整流平滑回路
4 DC−DC変換回路
5 定電圧回路
6 定電流回路
11 比較器
20 LED点灯回路
21 損失低減回路
22 比較器
Q2 トランジスタ(スイッチング素子)
LED 発光ダイオード

【特許請求の範囲】
【請求項1】
交流電圧を整流するとともに平滑して直流電圧を出力する入力整流平滑回路と、
前記入力整流平滑回路から出力される直流電圧をオン・オフして交流電圧に変換し、その交流電圧を所定の交流電圧に変圧する一方、変圧後の交流電圧を整流するとともに平滑して直流電圧を出力するDC−DC変換回路と、
前記DC−DC変換回路から出力された直流電圧を所定電圧値に保持し出力する定電圧回路と、
前記定電圧回路から出力される直流電圧をLEDに印加するとともに、前記LEDに流れる直流電流が一定値になるよう制御を行うスイッチング素子を有する定電流回路とを備えたLED点灯装置であって、
前記LEDの点灯中、前記スイッチング素子における損失を検出し、当該損失が所定値を超えた場合に、前記定電圧回路における前記所定電圧値の大きさを変更する損失低減回路を設けたことを特徴とするLED点灯装置。
【請求項2】
前記損失低減回路は比較器を有し、
該比較器は、前記スイッチング素子に発生する電圧と目標電圧とを比較して、前記スイッチング素子に発生する電圧が前記目標電圧以上となったとき、前記定電圧回路における前記所定電圧値を下げるよう該定電圧回路を制御することを特徴とする請求項1に記載のLED点灯装置。
【請求項3】
前記損失低減回路は、前記定電圧回路及び前記定電流回路に接続されていることを特徴とする請求項1又は2に記載のLED点灯装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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