説明

LED照明装置

【課題】リフレクタを廃して奥行き方向の薄肉化を図ることができるLED照明装置を提供すること。
【解決手段】複数のLED8を配置して成る光源部と、該光源部の各LED8に隣接して配置された複数の光学レンズ11Aを備えたLED照明装置において、前記各光学レンズ11Aに前記各LED8からの光を屈折により制御する屈折制御部11aと各LED8からの光を反射により制御する反射制御部11bを設ける。又、反射制御部11bを屈折制御部11aの周囲にこれを取り囲むように配置する。ここで、前記反射制御部11bは、光学レンズ11Aと空気界面での全反射を利用するものとする。例えば、反射制御部11bを断面鋸刃状を成す入射面c,eと反射面d,fとで構成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光源としてのLEDとその配光を制御する光学レンズを備えたLED照明装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、屋外照明灯等の照明装置としては、大光量の水銀灯やハロゲンランプ等の光源とリフレクタ(反射鏡)とを組み合わせたものが使用されてきた(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
これに対して、近年は水銀灯やハロゲンランプ等の大光量ランプを光源とするものから、長寿命で低消費電力のLEDを光源とするLED照明装置への置き換えが進んでいるが、斯かるLED照明装置においても、LEDとリフレクタを組み合わせて用いる構成が採用されている。例えば、特許文献2には、リフレクタ(反射鏡)と非球面レンズ及び所定の光学特性を有するレンズカバーを組み合わせることによって、LEDから放出される光を任意の距離に任意の照明パターンを形成することができるLED照明装置が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2004−342570号公報
【特許文献2】特開2006−286615号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、光源としてLEDを用いる場合、例えば液晶ディスプレイのバックライト等では、LEDと散乱板等との組み合わせによって(つまり、リフレクタを使用することなく)非常に薄型の照明装置を実現しているが、このような照明装置は大光量が必要な屋外で使用される照明装置には光量が不足するために適用することができない。
【0006】
屋外で使用される大光量のLED照明装置には、特許文献2において提案されているように、放物面や自由曲面を有するリフレクタが使用されており、このリフレクタがLEDの周囲を取り囲む構成が採用されるために装置の奥行き方向の薄肉化を図ることができず、当該LED照明装置の建材等への取り付けに大きなスペースを要するという問題があった。
【0007】
従って、本発明の第1の目的とする処は、リフレクタを廃して奥行き方向の薄肉化を図ることができるLED照明装置を提供することにある。
【0008】
他方、LED照明装置に対しては更なる高出力化が要求されており、最近では1つのLED照明装置への投入電力が200Wを超えるものも開発されてきている。このようなLED照明装置の大電力化に伴ってLEDの発熱量も増加するため、温度によって寿命や出力が変化するLEDにおいては、温度をより低く安定して駆動するための冷却構造が重要な課題となっている。
【0009】
従って、本発明の第2の目的とする処は、LEDの温度上昇を抑えて高出力化を実現することができるLED照明装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記目的を達成するため、請求項1記載の発明は、複数のLEDを配置して成る光源部と、該光源部の各LEDに隣接して配置された複数の光学レンズを備えたLED照明装置において、前記各光学レンズに前記各LEDからの光を屈折により制御する屈折制御部と各LEDからの光を反射により制御する反射制御部を設けたことを特徴とする。
【0011】
請求項2記載の発明は、請求項1記載の発明において、前記各光学レンズに設けられた前記反射制御部を前記屈折制御部の周囲にこれを取り囲むように配置したことを特徴とする。
【0012】
請求項3記載の発明は、請求項1又は2記載の発明において、前記反射制御部は、光学レンズと空気界面での全反射を利用するものであることを特徴とする。
【0013】
請求項4記載の発明は、請求項3記載の発明において、前記各光学レンズの表面を凸曲面とし、同各光学レンズの裏面中央部の周囲に前記反射制御部を構成する断面鋸刃状を成す入射面と反射面を形成したことを特徴とする。
【0014】
請求項5記載の発明は、請求項1〜4の何れかに記載の発明において、前記各LEDとこれに対応する前記光学レンズを組み合わせた1組の光学系の隣接するもの同士のピッチ間隔をP、各光学系のLEDと光学レンズ間の距離をF、各光学レンズの厚みをT、各光学レンズへの光入射有効角度をθとしたとき、前記ピッチ間隔Pを次式:
(F+T)×tanθ×1.0≦P<(F+T)×tanθ×1.2
を満足する値に設定したことを特徴とする。
【0015】
請求項6記載の発明は、請求項1〜5の何れかに記載の発明において、水冷ジャケット、ラジエータ、循環ポンプ及びファンを備えた水冷ユニットを設けたことを特徴とする。
【0016】
請求項7記載の発明は、請求項1〜6の何れかに記載の発明において、前記光学レンズをポリカーボネートで構成したことを特徴とする。
【発明の効果】
【0017】
請求項1記載の発明によれば、各光学レンズは屈折制御部と反射制御部を備えるため、各LEDから出射される光は各光学レンズにおいて屈折制御及び反射制御されて所望の配光パターンが得られる。このように光学レンズのみで所望の配光パターンが得られるために従来必要であったリフレクタが不要となり、この結果、LED照明装置の奥行き方向の薄肉化が実現し、該LED照明装置の建材等への取り付けにスペースメリットが得られる。
【0018】
請求項2記載の発明によれば、各LEDからの光を各光学レンズへの光入射有効角度までの中央部分に配置された屈折制御部によって配光し、屈折制御部以外の周囲に入射する光を反射制御部によって反射制御することによって殆ど全ての光を漏れなく光学レンズに取り込むことができるため、リフレクタを設けなくても高効率で高精度な配光制御が可能となる。
【0019】
請求項3記載の発明によれば、反射制御部は、光学レンズと空気界面での全反射を利用するものであるため、反射膜を設ける方式を採用した場合の反射膜の生成工程等が不要となってコスト的に有利となる。
【0020】
請求項4記載の発明によれば、各光学レンズの裏面の中央部を囲む反射制御部を構成する面を断面鋸刃状を成す入射面と反射面とで構成したため、各LEDからの光は光学レンズによって効率良く集光されて利用効率が高められるとともに、高精度な配光制御が可能となる。
【0021】
請求項5記載の発明によれば、複数組の光学系の隣接するもの同士のピッチ間隔Pの許容範囲を設定することによって、1組の光学系からの光が隣接する光学系の光学レンズに入射しない範囲でピッチ間隔Pを可能な限り詰めて光源部、延いてはLED照明装置全体の小型コンパクト化を図ることができる。
【0022】
請求項6記載の発明によれば、LEDにおいて発生する熱は、水冷ユニットの循環経路を流れる冷却水によって冷却され、冷却水がLEDから受け取った熱はラジエータによって外気に放出される。このため、LEDが強制冷却されて温度上昇が抑えられ、この結果、LED照明装置の高出力化が実現される。
【0023】
請求項7記載の発明によれば、光学レンズをアクリル材等の他の樹脂材よりも光学屈折が高いポリカーボネートで構成したため、LED照明装置の奥行き方向の一層の薄肉化が可能となる。又、ポリカーボネートは機械的破壊強度と耐衝撃性が高いため、これによって構成される光学レンズの耐久性が高められる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】本発明に係るLED照明装置の斜視図である。
【図2】図1の矢視A方向の図である。
【図3】図1の矢視B方向の図である。
【図4】図3のC−C線断面図である。
【図5】図3のD−D線断面図である。
【図6】図3のE−E線断面図である。
【図7】本発明に係るLED照明装置の分解斜視図である。
【図8】本発明に係るLED照明装置の水冷ユニットの基本構成図である。
【図9】光源部の光学レンズを裏面側から見た正面図である。
【図10】図9のF−F線断面図である。
【図11】光学レンズによる配光パターンを示す図である。
【図12】隣接する光学系の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下に本発明の実施の形態を添付図面に基づいて説明する。
【0026】
先ず、本発明に係るLED照明装置の全体構成を図1〜図8に基づいて以下に説明する。尚、図1は本発明に係るLED照明装置の斜視図、図2は図1の矢視A方向の図、図3は図1の矢視B方向の図、図4は図3のC−C線断面図、図5は図3のD−D線断面図、図6は図3のE−E線断面図、図7は本発明に係るLED照明装置の分解斜視図、図8は同LED照明装置の水冷ユニットの基本構成図である。
【0027】
本発明に係るLED照明装置1は、図4〜図7に示すように、矩形ボックス状のハウジング2の内部に光源部3と空冷ユニット4及び水冷ユニット5を組み込んで構成されている。尚、以下の説明におけるLED照明装置1の上下は図1に示す状態においてのものであって、該LED照明装置1の設置が必ずしも図1に示す状態でなされる訳ではない。
【0028】
上記ハウジング2は、PC等の樹脂或はアルミニウム等の金属で構成されており、図1に示すように、その周面には縦方向の長い複数のスリットから成る吸気口6が形成され、上面には扇形の複数のスリットから成る排気口7が形成されている。そして、このハウジング2の下面は開口しており、この開口部には前記光源部3が嵌め込まれて固定されている。
【0029】
上記光源部3は、図4〜図7に示すように、光源であるLED8(図8参照)を実装して成る複数(図示例では9枚)のメタル基板9と、これらのメタル基板9を取り付ける矩形プレート状のベース10及びハウジング2の下面開口部に嵌め込まれる矩形プレート状の透明な樹脂製のレンズプレート11を含んで構成されている。ここで、レンズプレート11には、各LED8に対応して複数(図示例では9個)の凸レンズとしての光学レンズ11Aが形成されている。尚、図7において、12はケーブルコネクタである。
【0030】
本実施の形態では、LED8を実装して成る9枚のメタル基板9は縦横3列のマトリックス状に配置されており、これに対応してアルミダイキャスト製のベース10にもLED8と同数の台座10a(図4及び図6参照)が縦横3列のマトリックス状に一体に突設されている。又、レンズプレート11にも各LED8に対応する9個の光学レンズ11Aが縦横3列のマトリックス状に配置されている。そして、各メタル基板9は、矩形の熱伝導性シート13を介してベース10の各台座10aにネジ止めによって固定されている。尚、各熱伝導シート13は、絶縁性と熱伝導率の高いシリコン等によって構成されている。
【0031】
又、前記空冷ユニット4は、図7に示すように、下面が開口する矩形ボックス状の回路ケース14がヒートシンクとして機能しており、該回路ケース14の内部には不図示の各種電子部品が実装された回路基板15が組み込まれ、その下面開口部は矩形プレート状のカバー16によって覆われている。ここで、回路ケース14は熱伝導率の高いアルミダイキャスト等によって成形されており、その上面には放熱部を構成する多数の放熱ピン17が一体に突設されている。そして、この回路ケース14の内部上面には回路基板15が絶縁性と熱伝導率の高いシリコン等から成る矩形の熱伝導シート18を介して密着されている。尚、回路ケース14とカバー16との接合部にはOリング19が介装されており、このOリング19のシール作用によって回路ケース14内が密封され、外部から回路ケース14内への水等の浸入が防がれている。又、本実施の形態では、回路ケース14に放熱ピン17を突設したが、この放熱ピン17に代えて放熱フィンを回路ケース14に形成しても良い。
【0032】
前記水冷ユニット5は、図4〜図8に示すように、熱交換器である水冷ジャケット20と、該水冷ジャケット20において受熱して温度が高くなった冷却水を外気(冷却風)との熱交換によって冷却するラジエータ21と、該ラジエータ21に冷却風を供給するファン22と、冷却水を閉ループの循環経路内で循環させる循環ポンプ23及び冷却水を貯留するリザーブタンク24を備えており、ファン22はラジエータ21と対向してこれの上方に配置されている。
【0033】
ところで、上記水冷ジャケット20は、中空の矩形板状に成形されており、図4〜図6に示すように、その内部には冷却水通路が形成されている。そして、この冷却ジャケット10の一端上には、図5及び図7に示すように、ラジエータ21において外気(冷却風)との熱交換によって冷却された冷却水が流入する入口パイプ25と、当該水冷ジャケット20において受熱して温度が高くなった冷却水を排出する出口パイプ26が立設されている。
【0034】
而して、本実施の形態では、図4及び図6に示すように、ハウジング2内下部の底部に水冷ジャケット20が水平に配置されており、この水冷ジャケット20を挟んでこれの上下に空冷ユニット4と光源部3が配置されている。ここで、水冷ジャケット20の下面側に配された光源部3は、そのベース10が矩形の熱伝導シート27を介して水冷ジャケット20の下面に密着している。尚、本実施の形態では、熱伝導シート27は、絶縁性と熱伝導率の高いシリコン等によって構成されている。
【0035】
又、空冷ユニット4は、そのカバー16が水冷ジャケット20の上面に密着する状態で該水冷ジャケット20の上面側に配置されている。尚、本実施の形態では、冷却水として水にプロピレングリコールを混合して成る不凍液が使用されている。
【0036】
他方、図4及び図6に示すように、ハウジング2内の水冷ジャケット20から離間した上部には前記ラジエータ21とファン22が配置されており、水冷ジャケット20とラジエータ21との間には空間部Sが形成され、この空間部Sに空冷ユニット4と前記循環ポンプ23及び前記リザーブタンク24が配置されている。具体的には、水冷ジャケット20上には門型のシャーシ28が立設されており、このシャーシ28によって囲まれる空間に空冷ユニット4が配され、シャーシ28上に循環ポンプ23とリザーブタンク24が設置されている。
【0037】
ここで、図5及び図8に示すように、水冷ジャケット20の出口パイプ26から上方へ立ち上がる配管(ゴムホース)29は、ラジエータ21の入口パイプ30に連結されており、ラジエータ21の出口パイプ31から延びる配管(ゴムホース)32は、下方に延びた後に略直角に曲げられて循環ポンプ23の吸入側に接続されている。そして、循環ポンプ23の吐出側から延びる配管(ゴムホース)33は、図8に示すようにリザーブタンク24の入口側に接続されており、リザーブタンク24の出口側から下方に延びる配管(ゴムホース)34は水冷ジャケット20の入口パイプ25に接続されている。このように水冷ジャケット20、ラジエータ21、循環ポンプ23及びリザーブタンク24は配管(ゴムホース)29,32〜34によって連結されて開ループを成す循環経路が形成されており、この循環経路を冷却水が循環することによって所要の冷却作用がなされる。
【0038】
次に、本発明の要旨を構成する光源部3の構成の詳細と作用を図9〜図12に基づいて説明する。
【0039】
図9は光源部の光学レンズを裏面側から見た正面図、図10は図9のF−F線断面図、図11は光学レンズによる配光パターンを示す図、図12は隣接する光学系の断面図である。
【0040】
図9及び図10には1つのLED8とこれに対応する1つの光学レンズ11Aを示すが、各光学レンズ11AにはLED8からの光を屈折により制御する円形の屈折制御部11aがLED8に対向する中心部に設けられ、LED8からの光を反射により制御するリング状の反射制御部11bが前記屈折制御部11aの周囲にこれを囲むように設けられている。
【0041】
ところで、LED8から発光する指向角度特性は、一般的にランバシアン発光を有しているため、各光学レンズ11Aは、ランバシアン発光を漏れなく取り込み、取り込まれた光が光学レンズ11Aを透過した後に所望の配光角度特性を有するよう構成されている。具体的には、光学レンズ11Aの光軸X上は特にスポット的な配光を得るのに適しているため、図10に示す出射発光角度αの範囲に屈折制御部11aを配置し、その周囲の発光出射角度βまでのランバシアン発光部の領域に反射制御部11bを配置している。
【0042】
各光学レンズ11Aは、光学屈折率が1.58のポリカーボネートで構成されており、その表面aは円形の凸曲面で構成され、裏面中央部には前記屈折制御部11aを構成する円形の凸曲面bが形成され、その周囲には前記反射制御部11bを構成する断面鋸刃状を成す2つの凸部11c,11dが内外に同心状に形成されている。ここで、各凸部11c,11dには、LED8の光軸X方向と略平行な入射面c,eと、円弧状の凸曲面を成す反射面d,fをそれぞれ備えており、各反射面d,fは当該光学レンズ11Aと空気界面での全反射を利用するものである。尚、以上は1つのLED8とこれに対応する1つの光学レンズ11Aの構成を示したが、他のLED8と光学レンズ11Aも同様に構成されている。
【0043】
而して、以上のように構成された光源部3を備えたLED照明装置1が起動されて光源部3と回路ケース14内の回路基板15及び水冷ユニット5に電源が供給されると、光源部3の複数(本実施の形態では9個)のLED8が発光し、その光はレンズプレート11に設けられた各光学レンズ11Aを透過して図1の下方に向かって照射されることによって前方を照明する。ここで、各LED8から出射される光の経路を図10に矢印にて示すが、LED8から出射して光学レンズ11Aの中央部の屈折制御部11aへと入射する光L0は、屈折制御部11aによって屈折して光学レンズ11Aの表面aから矢印方向(図10の上方)に出射して照明に供される。
【0044】
又、LED8から出射して光学レンズ11Aの周囲の反射制御部11bの各凸部11c,11dの入射面c,eから光学レンズ11A内にそれぞれ入射した光L1,L2は各凸部11c,11d内で屈折した後に各反射面d,fに達し、各反射面d,fでそれぞれ全反射して光学レンズ11Aの表面aから図10に示すそれぞれの方向に出射して照明に供される。ここで、各LED8からの光が光学レンズ11Aを透過することによって屈折制御及び反射制御されることによって得られる配光パターンを図11に示すが、同図に示すように、光学レンズ11Aの屈折制御部11aによって屈折制御された光L0が中央部に分布し、その周囲に、反射制御部11bの断面鋸刃状の凸部11d,11cを透過して反射制御された光L2,L1が分布する。
【0045】
以上のように、本発明に係るLED照明装置1においては、各光学レンズ11Aは屈折制御部11aと反射制御部11bを備えているため、各LED8から出射される光L0〜L2は各光学レンズ11Aにおいて屈折制御及び反射制御されて図11に示すような所望の配光パターンが得られる。このように光学レンズ11Aのみで所望の配光パターンが得られるために従来必要であったリフレクタが不要となり、この結果、LED照明装置1の奥行き方向の薄肉化が実現し、該LED照明装置1の建材等への取り付けにスペースメリットが得られる。尚、従来はLEDの出射面と光学レンズ面との間に20mm以上の距離が必要であったが、本実施の形態ではその距離を10mmまで短縮することができた。
【0046】
そして、本実施の形態では、各LED8からの光を各光学レンズ11Aへの光入射有効角度αまでの中央部分に配置された屈折制御部11aによって配光し、屈折制御部11a以外の発光出射角度βまでのランバシアン発光部の領域に配置された反射制御部11bに入射する光を反射制御することによって殆ど全ての光を漏れなく光学レンズ11Aに取り込むことができるため、リフレクタを設けなくても高効率で高精度な配光制御が可能となる。
【0047】
又、本実施の形態では、光学レンズ11Aの反射制御部11aは、該光学レンズ11Aと空気界面での全反射を利用するものであるため、反射膜を設ける方式を採用した場合の反射膜の生成工程等が不要となってコスト的に有利となる。
【0048】
更に、本実施の形態では、光学レンズ11Aをアクリル材等の他の樹脂材よりも光学屈折が高いポリカーボネートで構成したため、LED照明装置1の奥行き方向の一層の薄肉化が可能となる。又、ポリカーボネートは機械的破壊強度と耐衝撃性が高いため、これによって構成される光学レンズ11Aの耐久性が高められる。
【0049】
ここで、1つのLED8とこれに対応する1つの光学レンズ11Aを組み合わせて1組の光学系とした場合、図12に示すように、隣接する光学系同士のピッチ間隔をP、各光学系のLED8と光学レンズ11A間の距離をF、各光学レンズ11Aの厚みをT、各光学レンズ11Aへの光入射有効角度をθとしたとき、ピッチ間隔Pは次式:
(F+T)×tanθ×1.0≦P<(F+T)×tanθ×1.2
を満足する値に設定されている。
【0050】
而して、複数組の光学系の隣接するもの同士のピッチ間隔Pの許容範囲を上式のように設定することによって、1組の光学系からの光が隣接する他の光学系の光学レンズ11Aに入射しない範囲でピッチ間隔Pを可能な限り詰めて光源部3、延いてはLED照明装置1全体の小型コンパクト化を図ることができる。
【0051】
ところで、LED照明装置1が起動されて光源部3のLED8が発光すると、該LED8とこれの点灯制御する回路基板15の各種電子部品(不図示)が発熱し、そのままでは光源部3と回路基板15が過熱されて温度が上昇する。
【0052】
然るに、本実施の形態では、水冷ユニット5が同時に駆動され、光源部3と空冷ユニット4のヒートシンクとしての回路ケース14は、図8に示す循環経路を循環する冷却水によって強制冷却されてその温度上昇が抑えられる。又、光源部3と回路基板15において発生した熱は回路ケース14へと伝導し、回路ケース14の表面及び多数の放熱ピン17から放熱し、この放熱はファン22によって吸気口6からハウジング2内に導入されて排気口7へと向かって流れる冷却風によって促進される。
【0053】
水冷ユニット5において、循環ポンプ23によって循環経路を循環する冷却水は、水冷ジャケット20において光源ユニット3及び回路基板15において発生する熱を受熱して光源部3及び回路ケース14とその内部の回路基板15を冷却し、受熱して温度の高くなった冷却水は、配管29を通ってラジエータ21へと導入される。
【0054】
他方、ファン22が不図示のモータによって回転駆動されると、外気がハウジング2の周面に形成された吸気口6から冷却風としてハウジング2内に側方から吸引され、この冷却風は水冷ジャケット20とラジエータ21との間に形成された空間部Sを上方に向かって流れ、その過程でラジエータ21を通過し、ハウジング2の上面に開口する排気口7から外部に排出される。そして、ラジエータ21においては、ここを通過する冷却風によって冷却水の熱が外部に放熱されて該冷却水が冷却され、温度の下がった冷却液水は、配管32を通って循環ポンプ23に吸引される。
【0055】
循環ポンプ23に吸引された冷却水は昇圧された後に循環ポンプ23から配管33を通ってリザーブタンク24へと送り出され、その一部はリザーブタンク24に貯留され、残りの冷却水はリザーブタンク24から配管34を通って水冷ジャケット20へと導入されて光源部3と回路ケース14とその内部の回路基板15の冷却に供される。そして、以上の作用(冷却サイクル)が連続的に繰り返されて光源部3と回路ケース14及び回路基板15が水冷ジャケット20を流れる冷却水によって強制冷却され、それらの温度上昇が一定値以下に抑えられる。
【0056】
而して、本実施の形態では、水冷ジャケット20を挟んでこれの上下に空冷ユニット4と光源部3を配置したため、循環ポンプ23によって冷却水が閉ループの循環経路を循環することによって、水冷ジャケット20の両側に配された光源部3と回路ケース14及び回路基板15が冷却水によって同時に強制冷却される。又、空冷ユニット4での放熱によって回路ケース14と回路基板15が空冷される。この結果、これらの光源部3と回路基板15の温度上昇が抑えられて当該LED照明装置1の高出力化が実現される。
【符号の説明】
【0057】
1 LED照明装置
2 ハウジング
3 光源部
4 空冷ユニット
5 水冷ユニット
6 吸気口
7 排気口
8 LED
9 メタル基板
10 ベース
10a ベースの台座
11 レンズプレート
11A 光学レンズ
11a 光学レンズの屈折制御部
11b 光学レンズの反射制御部
11c,11d 光学レンズの凸部
12 ケーブルコネクタ
13 熱伝導シート
14 回路ケース
15 回路基板
16 カバー
17 放熱ピン
18 熱伝導シート
19 Oリング
20 水冷ジャケット
21 ラジエータ
22 ファン
23 循環ポンプ
24 リザーブタンク
25 水冷ジャケットの入口パイプ
26 水冷ジャケットの出口パイプ
27 熱伝導シート
28 シャーシ
29 配管(ゴムホース)
30 ラジエータの入口パイプ
31 ラジエータの出口パイプ
32〜34 配管(ゴムホース)
a 光学レンズの表面
b 光学レンズ裏面の凸曲面
c,e 光学レンズの入射面
d,f 光学レンズの出射面
F LEDと光学レンズ間の距離
P 隣接する光学系同士のピッチ間隔
T 光学レンズの厚み
X 光軸
α,β 発光出射角度
θ 光学レンズへの光入射有効角度
S 空間部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数のLEDを配置して成る光源部と、該光源部の各LEDに隣接して配置された複数の光学レンズを備えたLED照明装置において、
前記各光学レンズに前記各LEDからの光を屈折により制御する屈折制御部と各LEDからの光を反射により制御する反射制御部を設けたことを特徴とするLED照明装置。
【請求項2】
前記各光学レンズに設けられた前記反射制御部を前記屈折制御部の周囲にこれを取り囲むように配置したことを特徴とする請求項1記載のLED照明装置。
【請求項3】
前記反射制御部は、光学レンズと空気界面での全反射を利用するものであることを特徴とする請求項1又は2記載のLED照明装置。
【請求項4】
前記各光学レンズの表面を凸曲面とし、同各光学レンズの裏面中央部の周囲に前記反射制御部を構成する断面鋸刃状を成す入射面と反射面を形成したことを特徴とする請求項3記載のLED照明装置。
【請求項5】
前記各LEDとこれに対応する前記光学レンズを組み合わせた1組の光学系の隣接するもの同士のピッチ間隔をP、各光学系のLEDと光学レンズ間の距離をF、各光学レンズの厚みをT、各光学レンズへの光入射有効角度をθとしたとき、前記ピッチ間隔Pを次式:
(F+T)×tanθ×1.0≦P<(F+T)×tanθ×1.2
を満足する値に設定することを特徴とする請求項1〜4の何れかに記載のLED照明装置。
【請求項6】
水冷ジャケット、ラジエータ、循環ポンプ及びファンを備えた水冷ユニットを設けたことを特徴とする請求項1〜5の何れかに記載のLED照明装置。
【請求項7】
前記光学レンズをポリカーボネートで構成したことを特徴とする請求項1〜6の何れかに記載のLED照明装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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