説明

Na+/グルコーストランスポーター阻害剤

【課題】 優れたNa+/グルコーストランスポーター阻害剤、及び糖尿病予防及び/又は治療剤の提供。
【解決手段】 マーキアイン、プテロカルピン、バリアビリン、ホルモノネチン、クラリノン、クシェノールN、クシェノールK、ソホラフラバノンG、又はクラリジンからなる群から選択される少なくとも1以上の化合物を有効成分とする、Na+/グルコーストランスポーター阻害剤、及び前記化合物からなる群から選択される少なくとも1以上の化合物を有効成分とする、糖尿病予防及び/又は治療剤。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はマーキアイン、プテロカルピン、バリアビリン、ホルモノネチン、クラリノン、クシェノールN、クシェノールK、ソホラフラバノンG、又はクラリジンからなる群から選択される少なくとも1以上の化合物を有効成分とする、Na+/グルコーストランスポーター阻害剤、及び前記化合物からなる群から選択される少なくとも1以上の化合物を有効成分とする糖尿病予防及び/又は治療剤に関する。
【背景技術】
【0002】
慢性的な高血糖がインスリン分泌を低下させると共にインスリン感受性を低下させ、これらがさらに血糖の上昇を引き起こし、糖尿病を悪化させると考えられている。これまでに糖尿病治療薬として、ビグアナイド薬、スルホニルウレア薬、グリコシダーゼ阻害薬、インスリン抵抗性改善薬等が使用されている。しかしながら、ビグアナイド薬には乳酸アシドーシス、スルホニルウレア薬には低血糖、グリコシダーゼ阻害薬には下痢等の副作用が報告されている。
【0003】
天然から単離されたグルコース誘導体であるフロリジンに、腎臓での過剰なグルコースの再吸収を阻害し、グルコースの排泄を促進して血糖降下作用があることが報告されている(非特許文献1)。その後、このグルコースの再吸収が、大部分は腎臓近位尿細管のS1サイトに存在するナトリウム依存性グルコース供輸送体2(SGLT2)によるものであることが明らかとなった(非特許文献2)。この様な背景から、SGLT2阻害作用に基づく糖尿病治療薬の研究が盛んに行われ、数多くのフロリジン誘導体が報告されている(特許文献1〜9等)。しかしながら、天然物由来のNa+/グルコーストランスポーター(SGLT)阻害剤の報告は他にない。
【0004】
【非特許文献1】ロゼッティら(L Rossetti et al.),ジャーナル・オブ・クリニカル・インベスティゲーション(Journal of Clinical Investigation),1987年,第80巻,第4号,p.1037-1044
【非特許文献2】カナイら(Y Kanai et al.),ジャーナル・オブ・クリニカル・インベスティゲーション(Journal of Clinical Investigation),1994年,第93巻,第1号,p.397-404
【特許文献1】国際公開第01/68660号パンフレット
【特許文献2】国際公開第01/16147号パンフレット
【特許文献3】国際公開第01/74834号パンフレット
【特許文献4】国際公開第01/74835号パンフレット
【特許文献5】国際公開第02/53573号パンフレット
【特許文献6】国際公開第02/68439号パンフレット
【特許文献7】国際公開第02/68440号パンフレット
【特許文献8】国際公開第02/36602号パンフレット
【特許文献9】国際公開第02/88157号パンフレット
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、これまでとは異なった新しい作用機序の糖尿病治療薬を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者らはNa+/グルコーストランスポーター(SGLT)阻害活性を有する物質を広く天然物に求め鋭意探索の結果、生薬であるクジン(苦参)の抽出物中に、Na+/グルコーストランスポーター阻害活性を有する化合物を見出し、本発明を完成させるに至った。
【発明の効果】
【0007】
本発明により、優れたNa+/グルコーストランスポーター阻害剤、及び糖尿病予防/又は治療剤が提供される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
本発明は、マーキアイン、プテロカルピン、バリアビリン、ホルムノネチン、クラリノン、クシェノールN、クシェノールK、ソホラフラバノンG、又はクラリジンからなる群から選択される少なくとも1以上の化合物を有効成分とする、Na+/グルコーストランスポーター阻害剤に関する。又、前記化合物からなる群から選択される少なくとも1以上の化合物を有効成分とする糖尿病予防及び/又は治療剤に関する。
【0009】
本発明の有効成分である各化合物は、それぞれ公知の化合物であり、マーキアイン(maackiain、構造式:化1)、プテロカルピン(pterocarpin、構造式:化2)は Shoji shibataら(Chem. Pharm. Bull., 11, 167-177(1963))、バリアビリン(variabilin、構造式:化3)、ホルモノネチン(formononetin、構造式:化4)、クラリノン(kurarinone、構造式:化5)、クシェノールN(kushenol N、構造式:化6)、クシェノールK(kushenol K、構造式:化7)、ソホラフラバノンG(sophoraflavanone G、構造式:化8)、クラリジン(kuraridin、構造式:化9)は、例えばShi Yong Ryuら(Arch. Pharm. Res., 20, 491-495(1997))に記載の方法等によってそれぞれ単離、精製することができる。
【0010】
【化1】

【化2】

【化3】

【化4】

【化5】

【化6】

【化7】

【化8】

【化9】

【0011】
又、本発明化合物は生薬である苦参(Sophorae Radix)から抽出して得ることもできる。苦参はマメ科のクララ(Sophora flavescens Aiton)の根を乾燥したものであり、生薬として容易に入手可能である。苦参の乾燥粉末にアルコールを加えて攪拌する。この時、アルコールとしては特に限定されないが、特に好ましくはメタノールが用いられる。続いて攪拌した液を濾過し、常法に従って濃縮する事で抽出物を得る。この時、濃縮方法としては例えば減圧濃縮、凍結濃縮、膜濃縮等が挙げられる。この抽出物を適当な溶媒、特に好ましくは水に懸濁し、この懸濁液を低極性溶媒を用いて分配抽出を行ない、低極性抽出液を常法に従って濃縮することにより、低極性抽出物を得る。この時、低極性溶媒としては、水と二層に分離する溶媒であれば特に限定されないが、例えばn-ブタノール、酢酸エチル、クロロホルム等が用いられる。得られた低極性抽出物を常法に従って精製することにより、本発明の各化合物を得ることができる。この時、精製方法としては特に好ましくはカラムクロマトグラフィーあるいは分取薄層クロマトグラフィーが用いられ、1〜数回付すのが好ましい。
あるいは、Theunis G. van Aardtら(Tetrahedron, 57, 7113-7126(2001))、Chusheng Huangら(J. Nat. Prod., 61, 1283-1285(1998) )に記載の方法等によって本発明化合物を合成することもできる。
【0012】
本発明剤は、Na+/グルコーストランスポーター阻害活性を有し、糖尿病の予防及び/又は治療剤として有用である。本発明剤は、本発明の有効成分である化合物群の少なくとも1以上の化合物を有効成分とし、ヒト及び動物に対し投与することができる。本発明剤を医薬として用いる場合、本発明の有効成分である化合物は、薬理学的に許容される塩としても良い。薬理学的に許容される酸との塩としては、塩酸、硫酸、硝酸、リン酸との無機酸や、ギ酸、酢酸、プロピオン酸、シュウ酸、マロン酸、コハク酸、フマル酸、マレイン酸、乳酸、リンゴ酸、クエン酸、酒石酸等の有機酸との酸付加塩が挙げられる。また塩基との塩としては、ナトリウム、カリウム、マグネシウム、カルシウム、アルミニウム等の無機塩基、メチルアミン、エチルアミン、エタノールアミン等の有機塩基、またはリジン、アルギニン、オルニチン等の塩基性アミノ酸との塩やアンモニウム塩が挙げられる。この化合物またはその薬理学的に許容される塩は、ヒト及び動物に対し、医薬として経口的あるいは非経口的に安全に投与される。非経口的投与には、例えば静脈注射、筋肉内注射、皮下注射、腹腔内注射、経皮投与、経肺投与、経鼻投与、経腸投与、口腔内投与、経粘膜投与等の投与方法が挙げられ、剤型としては例えば注射剤、坐剤、エアゾール剤、経皮吸収テープ等が挙げられる。また、経口投与製剤として、例えば糖衣錠、コーティング錠、バッカル錠等の錠剤、散剤、ソフトカプセルを含むカプセル剤、顆粒剤、丸剤、トローチ剤、あるいは懸濁剤、乳剤、ドライシロップを含むシロップ剤、エリキシル剤等の液剤が挙げられる。さらに、これらの製剤学的に許容され得る徐放化製剤等が挙げられる。
【0013】
これらの製剤は公知の製剤学的製法に準じ、製剤として薬理学的に許容され得る基剤、担体、賦形剤、崩壊剤、滑沢剤、着色剤等と共に医薬組成物として投与される。これらの製剤に用いる担体や賦形剤としては、例えば乳糖、ブドウ糖、白糖、マンニトール、馬鈴薯デンプン、トウモロコシデンプン、炭酸カルシウム、リン酸カルシウム、硫酸カルシウム、結晶セルロース等、結合剤としては、例えばデンプン、トラガントゴム、ゼラチン、シロップ、ポリビニルアルコール、ポリビニルエーテル、ポリビニルピロリドン、ヒドロキシプロピルセルロース、メチルセルロース、エチルセルロース、カルボキシメチルセルロースなど、崩壊剤としては例えばデンプン、寒天、ゼラチン末、カルボキシメチルセルロースナトリウム、カルボキシメチルセルロースカルシウム、結晶セルロース、炭酸カルシウム、炭酸水素ナトリウム、アルギン酸ナトリウムなど、滑沢剤としては例えばステアリン酸マグネシウム、タルク、水素添加植物油、マクロゴールなど、着色剤としては医薬品に添加することが許容されているものを、それぞれ用いることができる。錠剤、顆粒剤は必要に応じ白糖、ゼラチン、ヒドロキシプロピルセルロース、精製セラック、ゼラチン、グリセリン、ソルビトール、エチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ポリビニルピロリドン、フタル酸セルロースアセテート、ヒドロキシプロピルメチルセルロースフタレート、メチルメタクリレート、メタアクリル酸重合体などで、1以上の層で被膜しても良い。さらにエチルセルロースやゼラチンのような物質のカプセルでも良い。また、注射剤を調製する場合は、主薬に必要に応じpH調節剤、緩衝剤、安定化剤、可溶化剤などを添加して、常法により各注射剤とする。
【0014】
本発明剤を患者に投与する場合、症状の程度、患者の年齢、体重、健康状態などの条件により異なり特に限定はされないが、成人であれば100μg〜1000mg/kg/日を経口あるいは非経口的に1日1回もしくはそれ以上投与する。
【0015】
以下に本発明の実施例を記載するが、本発明はこれらに何ら限定されるものではない。
【実施例1】
【0016】
生薬からの抽出
生薬苦参から本発明剤の有効成分である化合物を含む成分の抽出を行った。即ち、苦参の乾燥粉末 1kg(株式会社前忠社製)にメタノール3Lを加えて一昼夜攪拌した。続いて攪拌した液を濾過し、減圧下で濃縮する事で抽出物を得た。この抽出物を水に懸濁し、酢酸エチルおよび/またはn-ブタノール等の低極性溶媒を用いて分配抽出を行ない、低極性抽出液を減圧下で濃縮することにより、低極性抽出物243gを得た。
【実施例2】
【0017】
マーキアイン(maackiain)の単離及び構造の確認
実施例1で得られた低極性抽出物を、溶出溶媒にメタノール水溶液を用いてODSカラムクロマトグラフィー(DM1020T;ダイセル化学工業社製)に3回付し、60%メタノール水溶液溶出画分を得た。この画分を減圧濃縮し、UV吸収のある物質を展開溶媒に5%メタノールクロロホルム混合溶媒を用いて分取薄層クロマトグラフィーを行い、Rf値0.69のスポットを分取する事で14.7mgの物質を単離した。得られた物質の構造解析は、NMRシグナル分析及びMSピーク分析により行なった。それぞれの結果を以下に示す。この結果、この物質はマーキアインであることが確認された。
【0018】
1H NMR (400 MHz, δ methanol-d4 ppm, J in Hz): 3.43 (1H, m), 3.52 (1H, m), 4.19 (1H, m), 5.42 (1H, brs.), 5.85 (1H, brs.), 6.29 (1H, d, J = 2.5), 6.36 (1H, s), 6.47 (1H, dd, J = 8.5, 2.5), 6.78 (1H, s), 7.24 (1H, d, J = 8.5).
EI-MS(m / z): 284 (M+), 267, 197, 162, 134.
【実施例3】
【0019】
プテロカルピン(ptrocarpin)の単離及び構造の確認
実施例1で得られた低極性抽出物を、溶出溶媒にメタノール水溶液を用いてODSカラムクロマトグラフィー(DM1020T;ダイセル化学工業社製)に3回付し、60%メタノール水溶液溶出画分を得た。この画分を減圧濃縮し、UV吸収のある物質を展開溶媒に5%メタノールクロロホルム混合溶媒を用いて分取薄層クロマトグラフィーを行い、Rf値0.81のスポットを分取する事で2.2mgの物質を単離した。得られた物質の構造解析は、NMRシグナル分析及びMSピーク分析により行なった。それぞれの結果を以下に示す。この結果、この物質はプテロカルピンであることが確認された。
【0020】
1H NMR (400 MHz, δ methanol-d4 ppm, J in Hz): 3.54 (1H, m), 3.57 (1H, m), 3.84 (3H, s), 4.31 (1H, m), 5.50 (1H, brs.), 5.86 (1H, brs.), 6.37 (1H, s), 6.68 (1H, d, J = 8.9), 6.81 (1H, s), 6.90 (1H, d, J = 8.9).
EI-MS(m / z): 298 (M+), 267, 197, 162, 134.
【実施例4】
【0021】
バリアビリン(variabillin)の単離及び構造の確認
実施例1で得られた低極性抽出物を、溶出溶媒にメタノール水溶液を用いてODSカラムクロマトグラフィー(DM1020T;ダイセル化学工業社製)に3回付し、60%メタノール水溶液溶出画分を得た。この画分を減圧濃縮し、UV吸収のある物質を展開溶媒に5%メタノールクロロホルム混合溶媒を用いて分取薄層クロマトグラフィーを行い、Rf値0.68のスポットを分取する事で1.4mgの物質を単離した。得られた物質の構造解析は、NMRシグナル分析及びMSピーク分析により行なった。それぞれの結果を以下に示す。この結果、この物質はバリアビリンであることが確認された。
【0022】
1H NMR (400 MHz, δ methanol-d4 ppm, J in Hz): 3.74 (3H, s), 3.75 (3H, s), 3.95(1H, d, J = 11.4), 4.13 (1H, d, J = 11.4), 5.23 (1H, s), 6.37 (1H, d, J = 2.3), 6.42 (1H, d, J = 2.3), 6.52 (1H, dd, J = 8.2, 2.2), 6.63 (1H, dd, J = 8.6, 2.2), 7.24 (1H, d, J = 8.2), 7.36 (1H, d, J = 8.6).
EI-MS(m / z): 300 (M+), 285, 272, 255, 241.
【実施例5】
【0023】
ホルモノネチン(formononetin)の単離及び構造の確認
実施例1で得られた低極性抽出物を、溶出溶媒にメタノール水溶液を用いてODSカラムクロマトグラフィー(DM1020T;ダイセル化学工業社製)に3回付し、60%メタノール水溶液溶出画分を得た。この画分を減圧濃縮し、UV吸収のある物質を展開溶媒に5%メタノールクロロホルム混合溶媒を用いて分取薄層クロマトグラフィーを行い、Rf値0.67のスポットを分取する事で13.8mgの物質を単離した。得られた物質の構造解析は、NMRシグナル分析及びMSピーク分析により行なった。それぞれの結果を以下に示す。この結果、この物質はホルモノネチンであることが確認された。
【0024】
1H NMR (400 MHz, δ methanol-d4 ppm, J in Hz): 3.81 (3H, s), 6.63 (1H, d, J = 2.3), 6.79 (1H, dd, J = 2.3, 9.0), 6.96 (2H, dd, J = 8.9, 2.0), 7.44 (2H, dd, J = 8.9, 2.0), 7.93 (1H, d, J = 9.0), 8.05 (1H, s).
EI-MS(m / z): 268 (M+), 253, 225, 132, 117.
【実施例6】
【0025】
クラリノン(kurarinone)の単離及び構造の確認
実施例1で得られた低極性抽出物を,溶出溶媒にメタノール水溶液を用いてODSカラムクロマトグラフィーを行ない、60%メタノール水溶液溶出画分を得た。この画分を減圧濃縮し、UV吸収のある物質を展開溶媒に15%メタノールクロロホルム混合溶媒を用いて分取薄層クロマトグラフィーを行い、488.2mgの物質を単離した。得られた物質の構造解析は、NMRシグナル分析及びMSピーク分析により行なった。それぞれの結果を以下に示す。この結果、この物質はクラリノンであることが確認された。
【0026】
1H NMR (400 MHz, δ methanol-d4 ppm, J in Hz): 1.46 (3H, s), 1.55 (3H, s), 1.62 (3H, s), 1.99 (2H, m), 2.48 (1H, m), 2.61 (2H, m), 2.68 (1H, dd, J = 16.8, 2.8), 2.86 (1H, dd, J = 16.8, 13.3), 3.79 (3H, s), 4.50 (1H, s), 4.56 (1H, s), 4.94 (1H, m), 5.53 (1H, dd, J = 13.3, 2.8), 6.32 (1H, d, J = 2.4), 6.34 (1H, dd, J = 8.0, 2.4), 7.29 (1H, d, J = 8.0).
EI-MS(m / z): 438 (M+), 422, 299, 179, 153.
【実施例7】
【0027】
クシェノールN(kushenol N)の単離及び構造の確認
実施例1で得られた低極性抽出物を、溶出溶媒にメタノール水溶液を用いてODSカラムクロマトグラフィー(DM1020T;ダイセル化学工業社製)に付し、80%メタノール水溶液溶出画分を得た。この画分を減圧濃縮し、UV吸収のある物質を展開溶媒に15%メタノールクロロホルム混合溶媒を用いて分取薄層クロマトグラフィーを行い、30.2mgの物質を単離した。得られた物質の構造解析は、NMRシグナル分析及びMSピーク分析により行なった。それぞれの結果を以下に示す。この結果、この物質はクシェノールNであることが確認された。
【0028】
1H NMR (400 MHz, δ methanol-d4 ppm, J in Hz): 1.47 (3H, s), 1.54 (3H, s), 1.56 (3H, s), 1.99 (1H, m), 2.48 (1H, m), 2.61 (2H, m), 3.79 (3H, s), 4.49 (1H, d, J = 12.0), 4.50 (1H, s), 4.56 (1H, s), 4.94 (1H, m), 5.29 (1H, d, J = 12.0), 6.03 (1H, s), 6.32 (1H, d, J = 2.4), 6.34 (1H, dd, J = 8.0, 2.4), 7.27 (1H, d, J = 8.0).
EI-MS(m / z): 454 (M+), 436, 313, 285, 179.
【実施例8】
【0029】
クシェノールK(kushenol K)の単離及び構造の確認
実施例1で得られた低極性抽出物を、溶出溶媒にメタノール水溶液を用いてODSカラムクロマトグラフィー(DM1020T;ダイセル化学工業社製)に付し、80%メタノール水溶液溶出画分を得た。この画分を減圧濃縮し、UV吸収のある物質を展開溶媒に15%メタノールクロロホルム混合溶媒を用いて分取薄層クロマトグラフィーを行い、21.5mgの物質を単離した。得られた物質の構造解析は、NMRシグナル分析及びMSピーク分析により行なった。それぞれの結果を以下に示す。この結果、この物質はクシェノールKであることが確認された。
【0030】
1H NMR (400 MHz, δ methanol-d4 ppm, J in Hz): 1.01 (6H, s), 1.21 (1H, m), 1.31 (1H, m), 1.33 (2H, m), 1.57 (3H, s), 2.38 (1H, m), 2.53 (1H, m), 3.79 (3H, s), 4.49 (1H, d, J = 12.0), 4.55 (1H, s), 4.60 (1H, s), 5.28 (1H, d, J = 12.0), 6.01 (1H, s), 6.32 (1H, d, J = 2.4), 6.34 (1H, dd, J = 8.0, 2.4), 7.27 (1H, d, J = 8.0).
EI-MS(m / z): 472 (M+), 454, 436, 313, 284, 270.
【実施例9】
【0031】
ソホラフラバノンG(sophoraflavanone G)の単離および構造の確認
実施例1で得られた低極性抽出物を、溶出溶媒にメタノール水溶液を用いてODSカラムクロマトグラフィー(DM1020T;ダイセル化学工業社製)に付し、70%メタノール水溶液溶出画分を得た。この画分を減圧濃縮し、UV吸収のある物質を展開溶媒に15%メタノールクロロホルム混合溶媒を用いて分取薄層クロマトグラフィーを行い、372.4mgの物質を単離した。得られた物質の構造解析は、NMRシグナル分析及びMSピーク分析により行なった。それぞれの結果を以下に示す。この結果、この物質はソホフラバノンGであることが確認された。
【0032】
1H NMR (400 MHz, δ methanol-d4 ppm, J in Hz): 1.47 (3H, s), 1.55 (3H, s), 1.62 (3H, s), 1.99 (2H, m), 2.49 (1H, m), 2.56 (2H, m), 2.71 (1H, dd, J = 17.1, 2.8), 2.97 (1H, dd, J = 17.1, 13.3), 4.51 (1H, s), 4.57 (1H, s), 4.96 (1H, m), 5.54 (1H, dd, J = 13.3, 2.8), 6.33 (1H, d, J = 2.3), 6.34 (1H, dd, J = 8.2, 2.3), 7.29 (1H, d, J = 8.2).
EI-MS(m / z): 424 (M+), 406, 301, 283, 165.
【実施例10】
【0033】
クラリジン(kuraridin)の単離及び構造の確認
実施例1で得られた低極性抽出物を、溶出溶媒にメタノール水溶液を用いてODSカラムクロマトグラフィー(DM1020T;ダイセル化学工業社製)に付し、80%メタノール水溶液溶出画分を得た。この画分を減圧濃縮し、UV吸収のある物質を展開溶媒に15%メタノールクロロホルム混合溶媒を用いて分取薄層クロマトグラフィーを行い、21.5mgの物質を単離した。得られた物質の構造解析は、NMRシグナル分析及びMSピーク分析により行なった。それぞれの結果を以下に示す。この結果、この物質はクラリジンであることが確認された。
【0034】
1H NMR (400 MHz, δ methanol-d4 ppm, J in Hz): 1.55 (3H, s), 1.64 (3H, s), 1.69 (3H, s), 2.06 (2H, m), 2.55 (1H, m), 2.62 (1H, m), 3.89 (3H, s), 4.56 (2H, m), 5.04 (1H, t, J = 7.1), 5.99 (1H, s), 6.33 (1H, d, J = 2.3), 6.34 (1H, dd, J =
8.2, 2.3), 7.39 (1H, d, J = 8.2), 7.92 (1H, d, J = 15.7), 7.99 (1H, d, J = 15.7).
EI-MS (m / z): 438 (M+), 422, 299, 179, 153.
【実施例11】
【0035】
本発明有効成分によるSGLT阻害活性
Hediger M.A.ら(Proc. Natl. Acad. Sci. U.S.A., 86, 5748-5752(1989) )及び Wells R.G.ら(Am. J. Physiol., 263, 459-465(1992))の情報をもとに、SGLT発現用プラスミドを構築した。即ち、ヒト由来のSGLT1(GenBank Acc. No.M24847)及びSGLT2(GenBankAcc. No.M95549)cDNAクローン遺伝子を、ヒトの小腸および腎臓のcDNAライブラリー(BD バイオサイエンシズ社製)からPCRによって増幅した。用いたプライマー(SGLT1:配列表配列番号1及び2、SGLT2:配列表配列番号3及び4)には、サブクローン用にEcoRIサイトを付与した。増幅された各PCR断片を、EcoRIを用いて約2kb(SGLT1: 1995bp、SGLT2: 2038bp)の断片に切断し、EcoRIで処理したプラスミドpBluescript SK+ (ストラタジーン社製)にサブクローニングした。得られたシーケンスを確認した後にEcoRIで消化したpcDNA3.1(+)(インヴィトロージェン社製)に再度サブクローニングし、SGLT1及びSGLT2発現プラスミドをそれぞれ得た。得られた発現プラスミドをpCMV-hSGLT-1及びpCMV-hSGLT-2とそれぞれ命名した。
【0036】
次に、このプラスミドをCOS-1細胞(理化学研究所、RCB0143)へ導入した。COS-1細胞は、ウシ胎仔血清を10%添加したダルベッコの改良したイーグル/ハムF12培地を用いて37℃で培養した。この培養細胞を24ウェルプレートに1×105cells/ウェルでまきこみ、サブコンフルーエントになったところで0.1-1μgのSGLT1またはSGLT2発現プラスミドをLipofectamine 2000(インヴィトロージェン社製)を用いて細胞に導入した。さらに、この細胞を2〜3日間培養した後にメチル−α−D−グルコピラノシドの取り込み試験に供した。まず、プレートを前処理用緩衝液(140mM NaCl、2mM KCl、1mM CaCl2、1mM MgCl2、10mM Hepes/Tris (pH 7.5))に置換して、37℃、30分間インキュベートした。次に、取り込み用の溶液(メチル−α−D−グルコピラノシドとメチル−α−D−[U-14C] グルコピラノシドを含む)をそれぞれのウェルに加えて(終濃度50μM メチル−α−D−グルコピラノシド、0.4μCi/ml メチル−α−D−[U-14C] グルコピラノシド)、37℃、30分間インキュベートした後、ウェルプレートを300μM フロリジンを含むよく冷えた反応停止液(140mM 塩化コリン、2mM KCl、1mM CaCl2、1mM MgCl2、及び10mM Hepes/Tris (pH 7.5))で3回洗浄した。洗浄後、細胞は0.1 M水酸化ナトリウム溶液0.5mlで溶解し、放射能を液体シンチレーションカウンター(3100TR;パーキンエルマー社製)で測定した。尚、被験物質はDMSOで溶解し、前処理用緩衝液に最終濃度50μMとなるように添加した。結果を表1に示す。阻害率は、対照群の取り込み量(SGLT発現プラスミドを導入した群)からベースとなる取り込み量(SGLT発現プラスミドの代わりにpcDNA3.1(+)プラスミドのみを導入した群)を差し引いた値を100%として算出した。
【0037】
【表1】

【0038】
この結果、本発明有効成分である各化合物が、優れたSGLT1及び/又はSGLT2阻害活性を有することが確認された。
【産業上の利用可能性】
【0039】
本発明により、優れたNa+/グルコーストランスポーター阻害剤、及び糖尿病予防及び/又は治療剤が提供され、医薬として有用である。
【配列表フリーテキスト】
【0040】
配列番号:1
プライマー
配列番号:2
プライマー
配列番号:3
プライマー
配列番号:4
プライマー

【特許請求の範囲】
【請求項1】
マーキアイン、プテロカルピン、バリアビリン、ホルモノネチン、クラリノン、クシェノールN、クシェノールK、ソホラフラバノンG、又はクラリジンからなる群から選択される少なくとも1以上の化合物を有効成分とする、Na+/グルコーストランスポーター阻害剤。
【請求項2】
マーキアイン、プテロカルピン、バリアビリン、ホルモノネチン、クラリノン、クシェノールN、クシェノールK、ソホラフラバノンG、又はクラリジンからなる群から選択される少なくとも1以上の化合物を有効成分とする、糖尿病予防及び/又は治療剤。

【公開番号】特開2008−222622(P2008−222622A)
【公開日】平成20年9月25日(2008.9.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−61137(P2007−61137)
【出願日】平成19年3月11日(2007.3.11)
【出願人】(000004189)日本水産株式会社 (119)
【Fターム(参考)】