説明

PTCサーミスタ用磁器組成物、及びPTCサーミスタ

【課題】 極力少ない半導体化元素を添加し、経時変化が小さく、上記PTC特性が実用レベルで満足するPTCサーミスタ用磁器組成物、及びPTCサーミスタを提供する。
【解決手段】 組成式が、(Ba1-x-yA1 x A2y)Tiz O3 (但し、A1はLa、Dy、Eu、Gdの一種又は二種以上の元素、A2はY、Ho、Er、Ybの一種又は二種以上の元素)で表され、
前記x、y、zが、0.0005≦x≦0.0045、0.0005≦y≦0.0045、1.00<z≦1.05であり、かつx+y≦0.005の範囲に有るPTCサーミスタ用磁器組成物。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、PTCヒータ、PTCスイッチ、温度検知器等に用いられる、PTCサーミスタ用磁器組成物、及びそれを用いたPTCサーミスタに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、PTCR特性(正の抵抗率温度係数:Positive Temperature Coefficient of Resistivity)を示す材料としてBaTiOで表される組成に様々な半導体化元素を加えた半導体の磁器組成物が提案されている。PTCR特性とはキュリー点以上の高温になると急激に抵抗値が増大する特性であり、PTCR効果を持つPTCサーミスタ用磁器組成物はPTCヒータ、PTCスイッチ、温度検知器などに用いられる。
【0003】
BaTiO系の半導体磁器組成物はコンデンサのような用途にも使用されるが、PTCサーミスタ用磁器組成物として用いる場合には、室温(25℃)での抵抗率(以下、「室温抵抗率」という)が低いこと、PTCR特性の指標となる抵抗温度係数(%/℃)が高いことが求められる。
【0004】
BaTiO(チタン酸バリウム)系磁器組成物において、室温抵抗率を低下させるために、チタン酸バリウムのBaやTiの一部を3価や5価の元素で置換した組成の磁器組成物が提案され、例えば、チタン酸バリウムのBaをLaに置換することが提案されている。
特許文献1は、半導体化元素としてY、La、Ce、Nb、Taを用い、また、これらの元素の1種又は2種以上として例えばY−Nb、Y−La、La−Taの同時添加が可能であるとしている。
【0005】
また、特許文献2では、チタン酸バリウムの原料にNb,Sb等の5価の半導体化元素を添加し、混合した原料粉末を空気中で仮焼して得た仮焼粉に、Y,La,Ce等の3価の半導体化元素と、SiおよびMnの各酸化物を添加、混合することが記載され、これにより室温抵抗率を下げることが可能であると記載している。
【0006】
また特許文献3は、チタン酸バリウムの副成分として、La,Nd,Sm,Gd,Dyから選ばれる少なくとも1種の元素R1と、Y,Ho,Er,Ybから選ばれる少なくとも1種の元素R2を添加した誘電体セラミックが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開平3−38802号公報
【特許文献2】特開平10−70008号公報
【特許文献3】特公表WO2009/041160号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
PTCサーミスタ用磁器組成物は、低い室温抵抗率R、高い抵抗温度係数α(%/℃))の他にも、電圧を印加した時の抵抗値の変化(以下、「経時変化」という)が小さい点が求められる。
しかし、特許文献1、特許文献2ともに、経時変化に関する点は考慮されておらず、PTCサーミスタ用磁器組成物の用途においてどの半導体化元素が経時変化の改善に効果が有るかは不明であった。
また、特許文献3のチタン酸バリウムは積層セラミックコンデンサを目的としたチタン酸バリウムであってPTCサーミスタ用磁器組成物とは用途が異なり、求められる特性も異なる。
【0009】
PTCサーミスタ用磁器組成物において、半導体化元素は添加量を増加させすぎると室温抵抗率も増大してしまう。そのために半導体化元素を極力少ない量に抑え、室温抵抗率の増大を抑制しつつ経時変化を小さくする必要が有る。また、半導体化元素は主組成のBaやTiよりも概ね高価な元素であり、半導体化元素の添加量が増えると原料コストが増大する。
【0010】
本発明は、極力少ない半導体化元素の添加量で、小さな経時変化で、実用に供しえる低い室温抵抗率及び抵抗温度係数を備えたPTCサーミスタ用磁器組成物、及びPTCサーミスタを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
発明者らは、BaTiO3に添加する元素に着目し、好適な半導体化元素を検討したところ、Y、Ho、Er、Ybを用いることで経時変化が抑制される点、及び、La、Dy、Eu、GdをY、Ho、Er、Ybと適量複合添加することで、経時変化が小さく、室温抵抗率、抵抗温度係数が共に実用的な値であるPTCサーミスタ用磁器組成物を得られることを見出した。
【0012】
第1の本発明は、組成式が、(Ba1-x-yA1 x A2y)Tiz O3 (但し、A1はLa、Dy、Eu、Gdの一種又は二種以上の元素、A2はY、Ho、Er、Ybの一種又は二種以上の元素)で表され、前記x、y、zが、0.0005≦x≦0.0045、0.0005≦y≦0.0045、1.00<z≦1.05であり、かつx+y≦0.005の範囲に有るPTCサーミスタ用磁器組成物である。
【0013】
第2の本発明は、第1の本発明に記載のPTCサーミスタ用磁器組成物であって、上記x、y、zが、0.0005<x≦0.0030、0.0005<y≦0.0030、1.00<z≦1.03であり、かつx+y≦0.005の範囲を満足することを特徴とする。
【0014】
第3の本発明は、第2の本発明に記載のPTCサーミスタ用磁器組成物であって、
室温抵抗率が4.7×10Ω・cm以下であり、抵抗温度係数αが3.0%/℃以上、抵抗の経時変化が5.0%以下であることを特徴とする。
【0015】
第4の本発明は、第1乃至第3の本発明のいずれかに記載のPTCサーミスタ用磁器組成物であって、前記A1元素はLaであり、前記A2元素がYであることを特徴とする。
【0016】
第5の本発明は、第1乃至第4の本発明のいずれかに記載のPTCサーミスタ用磁器組成物を焼結したPTCサーミスタである。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、極力少ない半導体化元素の添加量で、小さな経時変化で、十分実用的である低い室温抵抗率及び抵抗温度係数を備えたPTCサーミスタ用磁器組成物、及びPTCサーミスタを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】本発明の抵抗温度係数αを説明するためのグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0019】
本発明のPTCサーミスタ用磁器組成物は、組成式が、(Ba1-x-yA1 x A2y)Tiz O3 (但し、A1はLa、Dy、Eu、Gdの一種又は二種以上の元素、A2はY、Ho、Er、Ybの一種又は二種以上の元素)で表され、前記x、y、zが、0.0005≦x≦0.0045、0.0005≦y≦0.0045、1.00<z≦1.05であり、かつx+y≦0.005の範囲を満足する。上記組成のPTCサーミスタ用磁器組成物は、半導体化元素の添加量x+yが0.005以下であるにも拘らず、経時変化が小さく、室温抵抗率、抵抗温度係数とも実用に供しえるものである。
【0020】
このPTCサーミスタ用磁器組成物は、室温抵抗率が5.0×10Ω・cm以下であり、抵抗温度係数αが2.5%/℃以上、抵抗の経時変化が10%以下のものを得ることができる。
【0021】
上記の本発明において、La、Dy、Eu、Gdの一種又は二種以上の元素(以下、「A1」という)は室温抵抗率の低減に効果がある。BaTiO3のBaサイトにA1が置換されドナーとして働くことにより室温抵抗率が低減される。置換された3価のA1は2価のBaと置換して原子価が1価余剰となり、このときに4価のTiの一部が電子を捕捉して全体の電気的中性を保つが、捕捉された電子は準安定状態にあり、外部電界により容易に移動し導電性を示すことで室温抵抗率が低減するものと推定される。
Y、Ho、Er、Ybの一種又は二種以上の元素(以下、「A2」という)は経時変化を小さくする効果がある。この効果は、A2がBaサイトとTiサイトの両方に置換されることによって経時変化に悪影響を及ぼす格子欠陥の生成を抑制するため、もしくは、Yの添加によって、粒子の中心部とその周囲が、物理的・化学的に異なる2相から成っているコアシェル構造が発達し、不所望の酸素欠陥の移動を抑制するために経時変化が低減するものと推定される。
【0022】
組成式中、xはA1の成分範囲を示し、0.0005<x≦0.0045の範囲とする。xが0.0005未満では組成物が十分に半導体化せず、0.0045を超えると室温抵抗率が大きくなる。また、高価なA1が増えるので原材料のコストが増大する。なお、上記0.0005≦x≦0.0045は、mol%に換算すると半導体磁器組成物の全体を100%として0.05mol%以上0.45mol%以下となる。さらに好ましいxの範囲は0.0005<x≦0.0030である。A1としてLa、Dy、Eu、Gdの中でもLaが特に好ましい。Laのイオン半径は上記A1の中で最も大きく、かつ、Baのイオン半径に最も近いため、BaTiO3のBaサイトに固溶しやすく、また、固溶した際にTiサイトではなくBaサイトのみに置換される。その結果としてBaTiO3を他のA1よりも半導体化させるものと考えられる。
【0023】
また、組成式中yはA2の成分範囲を示し、0.0005≦y≦0.0045の範囲とする。yが0.0005未満では経時変化を抑制する効果が十分に得られず、0.0045を超えると原材料のコストが増大してしまう。なお、上記0.0005≦y≦0.0045は、mol%に換算すると半導体磁器組成物の全体を100%として0.05mol%以上0.45mol%以下となる。さらに好ましいyの範囲は0.0005<x≦0.0030である。A2としてYが特に好ましい。各元素のイオン半径を比較すると、Baのイオン半径はTiのイオン半径よりも大きく、希土類元素のイオン半径はそれらの間の値になっている。また、希土類元素の置換サイトは元素によって異なり、イオン半径の大きい希土類元素の場合はBaサイトに置換し、イオン半径の小さい希土類元素の場合はTiサイトに置換し、その中間のイオン半径を持つものはBaサイトとTiサイトの両方に置換し得ることが知られている。両方のサイトに置換し得る元素の場合でも、A2はそのイオン半径によってBaサイトとTiサイトへの置換されやすさが異なり、特にYはBaサイトとTiサイトに適切な比率で置換し得るため経時変化に良好な影響を及ぼすものと推定される。
【0024】
また、組成式中、zはTiの成分範囲を示し、1.00<z≦1.05の範囲とする。zが1.00以下では焼結性が十分でなく、1.05を超えると焼成時の液相生成量が多くなるか、もしくは粒界に存在する2次相が多くなる。好ましいzの範囲は1.00<z≦1.03である。
【0025】
上記x、y、zが、0.0005<x≦0.0030、0.0005<y≦0.0030、1.00<z≦1.03であり、かつx+y≦0.005の範囲を満足し、A1としてLa、A2としてYを用いた半導体磁器組成物であれば、室温抵抗率が4.7×10Ω・cm以下であり、抵抗温度係数αが3.0%/℃以上、抵抗の経時変化が5.0%以下であるPTCサーミスタ用磁器組成物を得ることができる。
【0026】
以下に本発明に係るPTCサーミスタ用磁器組成物の製造方法を説明する。
磁器組成物として(Ba1-x-yA1 x A2y)Tiz O3 (但し、A1はLa、Dy、Eu、Gdの一種又は二種以上の元素、A2はY、Ho、Er、Ybの一種又は二種以上の元素)で表され、前記x、yが、0.0005≦x≦0.0045、0.0005≦y≦0.0045、1.00<z≦1.05であり、かつx+y≦0.005の範囲になるように、BaCO、TiOとA1、A2の原料粉末、例えば、LaとYを混合し、混合原料粉末を作製する。
その後、混合原料粉末を仮焼して仮焼粉とする。仮焼き温度は900℃以上1300℃以下の範囲が好ましい。仮焼き時間は0.5時間以上が好ましい。仮焼き温度が900℃未満あるいは仮焼き時間が0.5時間未満ではBaと他の元素との反応が不十分であり、未反応のBaOが雰囲気中及び混合媒体の水分と反応し、組成ずれの原因となる。また、仮焼き温度が1300℃を超えると、仮焼粉中に焼結粒が生じ、後の粉砕工程に悪影響が出る。
仮焼の工程において、原料粉末の混合の際に、原料粉末の粒度に応じて粉砕を施しても良い。また、混合や粉砕の手段は純水やエタノールを用いた湿式または乾式のどちらでもよい。
【0027】
その後、仮焼粉を粉砕する。粉砕の手段は、純水やエタノールを用いた湿式粉砕または乾式粉砕などが使用できる。また、仮焼粉の粒度に応じて粉砕条件を変更してもよい。粉砕後の混合仮焼粉の平均粒度は、0.6μm〜1.5μmが好ましい。
その後、粉砕粉を成形する。圧縮成形等の既知の成形技術が用いられる。成形前に必要応じて粉砕粉を造粒装置によって造粒してもよい。成形後の成形体密度は2〜4g/cm3が好ましい。
この成形体を焼結し電極を形成することでPTCサーミスタとすることができる。成形体を大気中、還元雰囲気中、又は低酸素濃度の不活性ガス雰囲気中で、焼結温度1200℃〜1400℃、焼結時間2時間〜6時間で焼結する。なお、成形前に造粒を行った場合は、焼結前に300℃〜700℃で脱バインダー処理を行うことが好ましい。
【0028】
(実施例1)
上記製法によりA1としてLa、A2としてYを用い、組成{(Ba1−x−yA1A2)Tiの試料を作製し、評価を行った。以下にその詳細を述べる。
【0029】
BaCO、TiO、La、Yの原料粉末を準備し、所定の混合比でこれらの原料粉末を配合した。配合した原料粉末を純水で混合し、混合原料粉末を900℃で4時間大気中で仮焼して、仮焼粉を得た。
得られた仮焼粉をポットミルにより粉砕した。純水を媒体として仮焼粉の平均粒径が0.5〜2.0μmになるまで粉砕した。
この粉砕・調整工程の後、熱風乾燥機で仮焼粉の粉砕粉末を乾燥した。この粉砕された粉砕粉末にPVA(ポリビニルアルコール)を添加して造粒した。得られた造粒粉を一軸プレス機で成形し、成形体を700℃で脱バインダー後、窒素中にて焼結してPTCサーミスタ用磁器組成物を得た。
得られたPTCサーミスタ用磁器組成物からそれぞれ10mm×10mm×1mmの板状の試験片を作製した。この試験片の両面に、スクリーン印刷法によりオーミック電極として銀亜鉛電極を、その上にカバー電極として銀電極を夫々焼き付けて形成して評価素子とした。
【0030】
各特性の測定方法を説明する。
(室温抵抗率R25
室温抵抗率R25は、室温25℃で、4端子法で測定した。
【0031】
(抵抗温度係数α)
両端面に電極を設けた評価素子を用い、室温から260℃まで5℃間隔でそれぞれ両電極間の抵抗値を4端子法で測定し、図1のように横軸に温度、縦軸に抵抗値をプロットしたデータを取る。得られた測定点を基に近似曲線を作成する。
抵抗温度係数αは数1の式により求める。
T1はキュリー温度Tscを超えて抵抗値が室温での抵抗値の2倍になる温度、T2は最大抵抗値を示す温度、R1,R2はそれぞれ温度T1,T2の時の抵抗値である。この抵抗温度係数αは、電圧印加の前後でどれくらい抵抗率が増加したかを示し、数値が大きいほどPTCR特性に優れていることを示す。
【0032】
【数1】

【0033】
(経時変化)
通電試験は実際のヒータの使用条件に近い条件で行うために、150℃の評価素子に13Vを印加した状態で500時間経過後の経時変化を調べた。通電試験後の25℃での室温抵抗率を測定し、通電試験前と500時間通電後の室温抵抗率の差を通電試験前の室温抵抗率で除して抵抗変化率(%)を求め、数2で定義される経時変化を調べた。
【0034】
【数2】

【0035】
これらの測定結果を表1に示す。
なお、表1の試料No.に*のマークが付いているものは比較例であることを示す。
【0036】
【表1】

【0037】
試料No.1は上記の組成式において、La量xを0.0010、Y量yを0.0010とした実施例である。また試料No.2はLa量xを0、Y量yを0.0020とした比較例である。どちらもLa量xとY量yの総和x+yの値は0.0020で同じとした。
Yを単独添加した試料No.2の半導体磁器組成物は、室温抵抗率が大きく実用に耐えず、また、抵抗温度係数は測定不可能であった。対してLaとYを複合添加させた試料No.1の半導体磁器組成物は室温抵抗率が5.0×10Ω・cm以下、抵抗温度係数αが2.5%/℃以上、経時変化が10%以下であり、PTCサーミスタ用磁器組成物として十分な特性を備えている。
【0038】
試料No.3〜6はx+yを0.0035と一律同じ値とし、xとyの値を変えた実施例である。また試料No.7はLaのみをx=0.0035として製造した比較例、No.8はYのみをy=0.0035として製造した比較例である。
試料No.3〜6は室温抵抗率が5.0×10Ω・cm以下、抵抗温度係数αが2.5%/℃以上、経時変化が10%以下であり、PTCサーミスタ用磁器組成物として高い特性を持つ。
対してLa単独添加の試料No.7は経時変化が大きく実用に耐えない。また、Y単独添加の試料No.8は室温抵抗率が106Ω・cm以上と大きく実用に耐えない。
なお、試料No.13はYをy=0.0060として単独添加した比較例である。室温抵抗率R、抵抗温度係数α、経時変化とも目標値を満足する値で有るが、実施例3〜6(x+yの総量が0.0035)の磁器組成物よりもx+yの総量が大きい。つまり、LaとYを複合添加することで、Yを単独添加したときよりも室温抵抗率R、抵抗温度係数α、経時変化の全てを下げることができ、半導体化元素の使用量が少ないものでも高いPTCR特性をもつ磁器組成物を得ることができる。
【0039】
試料No.9はLa量xを0.0020、Y量yを0.0020とした実施例である。また試料No.10はLa量xを0.0040、Y量yを0として単独添加とした比較例である。試料No.11はLa量xを0、Y量yを0.0040として単独添加した比較例である。いずれもLa量xとY量yの総和x+yの値は0.0040で同じとした。
LaとYを複合添加させた試料No.9の磁器組成物は室温抵抗率が5.0×10Ω・cm以下、抵抗温度係数αが2.5%/℃以上、経時変化が10%以下であり、PTCサーミスタ用磁器組成物として高い特性を持つ。
La単独添加の試料No.10は経時変化が大きく実用に耐えない。また、Y単独添加の試料No.11は室温抵抗率が5.1×10Ω・cmと大きく実用に供することが難しい。
【0040】
La単独添加でx=0.0060添加した試料No.12は室温抵抗率Rが大きく実用に耐えない。
【0041】
(実施例2)
A1としてLaをDy,Eu,Gdに変えて評価を行なった。(実施例14〜16)また、A2としてYをHo,Er,Ybに変えて評価を行なった。(実施例17〜19)表2に示す組成になるように原材料を調整し、その他は実施例1と同様にして実験を行なった。
LaとYを用いた実施例4には及ばないものの、室温抵抗率R、抵抗温度係数α、経時変化が共に優れたPTCサーミスタ用磁器組成物が得られた。
【0042】
【表2】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
組成式が、(Ba1-x-yA1 x A2y)Tiz O3 (但し、A1はLa、Dy、Eu、Gdの一種又は二種以上の元素、A2はY、Ho、Er、Ybの一種又は二種以上の元素)で表され、
前記x、y、zが、0.0005≦x≦0.0045、0.0005≦y≦0.0045、1.00<z≦1.05であり、かつx+y≦0.005の範囲に有るPTCサーミスタ用磁器組成物。
【請求項2】
請求項1に記載のPTCサーミスタ用磁器組成物であって、
上記x、y、zが、0.0005<x≦0.0030、0.0005<y≦0.0030、1.00<z≦1.03であり、かつx+y≦0.005の範囲を満足することを特徴とするPTCサーミスタ用磁器組成物。
【請求項3】
請求項2に記載のPTCサーミスタ用磁器組成物であって、
室温抵抗率が4.7×10Ω・cm以下であり、抵抗温度係数αが3.0%/℃以上、抵抗の経時変化が5.0%以下であることを特徴とするPTCサーミスタ用磁器組成物。
【請求項4】
請求項1乃至請求項3のいずれかに記載のPTCサーミスタ用磁器組成物であって、
前記A1元素はLaであり、前記A2元素がYであることを特徴とするPTCサーミスタ用磁器組成物。
【請求項5】
請求項1乃至請求項4のいずれかに記載のPTCサーミスタ用磁器組成物を用いたPTCサーミスタ。


【図1】
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【公開番号】特開2013−79160(P2013−79160A)
【公開日】平成25年5月2日(2013.5.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−219096(P2011−219096)
【出願日】平成23年10月3日(2011.10.3)
【出願人】(000005083)日立金属株式会社 (2,051)
【Fターム(参考)】