X線CT検査方法及びX線CT検査用遮へい材
【課題】CT画像データを的確に取得することができ、かつ、人体への悪影響をできる限り少なくすることが可能なCT検査用X線遮へい材及びX線CT検査方法を提供する。
【解決手段】亜鉛や錫を含むCT検査用X線遮へい材で防護部位を覆って被検部位にX線を照射し、CT画像データの取得に不要なX線の40keV以下の低エネルギー成分をかかるX線遮へい材で遮へいしつつ、X線遮へい材を透過するX線の100keV以上の高エネルギー成分を用いてCT画像データを取得する。X線遮へい材で防護部位を覆っていることにより、低エネルギー成分が遮へいされて、防護部位における被曝低減効果が得られるとともに、高エネルギー成分が体内を通過し、X線CT画像のデータとして利用され、CT画像データも的確に取得することができる。
【解決手段】亜鉛や錫を含むCT検査用X線遮へい材で防護部位を覆って被検部位にX線を照射し、CT画像データの取得に不要なX線の40keV以下の低エネルギー成分をかかるX線遮へい材で遮へいしつつ、X線遮へい材を透過するX線の100keV以上の高エネルギー成分を用いてCT画像データを取得する。X線遮へい材で防護部位を覆っていることにより、低エネルギー成分が遮へいされて、防護部位における被曝低減効果が得られるとともに、高エネルギー成分が体内を通過し、X線CT画像のデータとして利用され、CT画像データも的確に取得することができる。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、X線CT検査方法及びX線CT検査用遮へい材に関する。さらに詳しくは、低エネルギー成分を遮へいするとともに、高エネルギー成分を透過して、CT画像データを的確に取得することができるCT検査用X線遮へい材、及び当該X線遮へい材を用いたCT検査方法に関する。
【背景技術】
【0002】
X線を用いたCT(Computed Tomography:コンピューター断層撮影)検査(X線CT検査)による被曝線量は、他のX線検査による被曝線量より多い。加えて、X線CT検査は、診断対象でない器官や臓器が撮影断面に多く含まれるため、診断対象以外の器官や臓器の被曝を極力抑えることが重要である。そこで、診断には不必要な臓器や部位を効果的に防護・遮へいすることが必要である。
【0003】
従来、放射線の遮へい材料としては、遮へい能力の高さと加工性、経済性などの面から、鉛が広く普及していた。しかし、鉛は、医療用として用いる場合にあっては、体表や消化器官に対する曝露により中毒症状など様々な健康被害を引き起こす可能性がある。また、近年、環境問題への配慮からも鉛の使用を制限する流れが強まっている。そこで、健康や環境上の問題がなく、軽量かつ放射線遮へい効果に優れた新たな防護・遮へい材として、タングステンやビスマス、硫酸バリウムなどを使用したものが開発されている(例えば、特許文献1、特許文献2及び特許文献3等を参照。)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2001−187829号公報
【特許文献2】特開2007−212304号公報
【特許文献3】特開2008−518274号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、従来提案されている含鉛シートや含ビスマスシート等の遮へい材は、いわゆるK吸収端が高く、X線CT検査の画像データを取得する際に必要となるX線の高エネルギー成分までをも遮へいしてしまうため、X線CT検査には適用できなかった。加えて、X線CT検査に適するX線遮へい材はこれまで提供されていないため、水晶体、甲状腺、乳房、胸線等については、防護・遮へいが必要な部位でありながら、効果的な対処ができていないのが実情である。
【0006】
ところで、X線CT装置から出力されるX線は連続エネルギー分布であり、このうち、X線の高エネルギー成分が体内を通過し、対向して配置される検出器に入射し、X線CT画像のデータとして利用されることになる。一方、X線の低エネルギー成分は、ほとんどが体内に吸収されてしまう。X線CT画像を作成ないし取得する目的においては、X線の低エネルギー成分は殆ど不要な成分である。従って、X線被曝を考慮すると、X線の低エネルギー成分をできるだけ除去することが重要である。従来は、例えば、X線を出力する窓の直後にフィルターを設けることで低エネルギー成分を除去するといった手段がとられていたが、かかる手段では低エネルギー成分の十分な除去がなされておらず、改善を求められていたのが実情であった。
【0007】
本発明は、前記のような知見に基づいてなされたもので、CT画像データを的確に取得することができ、かつ、人体への悪影響をできる限り少なくすることが可能なCT検査用X線遮へい材及びX線CT検査方法を提供しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
前記課題を解決するため、本発明に係るCT検査用X線遮へい材は、亜鉛の微粒子及び/または錫の微粒子と、前記微粒子を分散したバインダーを含み、前記微粒子の含有量が全体の70.0〜85.0質量%であることを特徴とする。
【0009】
本発明に係るCT検査用X線遮へい材は、前記した本発明において、X線の40keV以下の低エネルギー成分の遮へい能を有するとともに、X線の100keV以上のX線の高エネルギー成分の透過能を有することを特徴とする。
【0010】
本発明に係るCT検査用X線遮へい材は、前記した本発明において、前記バインダーがエラストマーであることを特徴とする。
【0011】
本発明に係るCT検査方法は、亜鉛の微粒子及び/または錫の微粒子が分散されたバインダーを含んでなるCT検査用X線遮へい材で防護部位を覆い、被検部位に対してX線を照射し、CT画像データを取得することを特徴とする。
【0012】
本発明に係るCT検査方法は、前記した本発明において、前記CT検査用X線遮へい材により、X線の40keV以下の低エネルギー成分を遮へいしつつ、前記X線遮へい材を透過するX線の100keV以上の高エネルギー成分を用いてCT画像データを取得することを特徴とする。
【0013】
本発明に係るCT検査方法は、前記した本発明において、前記CT検査用遮へい材における前記微粒子の含有量が前記CT検査用X線遮へい材全体の70.0〜85.0質量%であることを特徴とする。
【発明の効果】
【0014】
本発明に係るCT検査用X線遮へい材は、X線の40keV以下のエネルギー成分(低エネルギー成分)を遮へいするとともに、X線の100keV以上のエネルギー成分(高エネルギー成分)を透過するので、防護部位を覆って、X線CT検査に使用された場合にあっては、防護部位における低エネルギー成分の被曝低減効果が得られるとともに、被検部位におけるCT画像データを的確に取得することができる遮へい材となる。
【0015】
また、本発明に係るCT検査方法は、X線の40keV以下のエネルギー成分(低エネルギー成分)を遮へいするとともに、X線の100keV以上のエネルギー成分(高エネルギー成分)を透過するCT検査用X線遮へい材により防護部位を覆った状態で被検部位にX線照射するので、防護部位には低エネルギー成分の遮へいによる被曝低減効果が得られるとともに、高エネルギー成分がX線CT画像のデータとして利用され、被検部位に対する、CT画像データも的確に取得することができるCT検査方法となる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】総透過量で規格化したX線スペクトル図である。
【図2】透過X線スペクトルを示した図である。
【図3】ノイズの評価法の説明図である。
【図4】シート厚さによるノイズの比較結果を示すグラフである。
【図5】シート長さによるノイズの比較結果を示すグラフである。
【図6】シート高さによるノイズの比較結果を示すグラフである。
【図7】標準ノイズとの比較結果を示すグラフである。
【図8】低コントラスト分解能の評価法の説明図である。
【図9】シート厚さによる低コントラスト分解能の比較結果を示すグラフである。
【図10】シート長さによる低コントラスト分解能の比較結果を示すグラフである。
【図11】シート高さによる低コントラスト分解能の比較結果を示すグラフである。
【図12】標準低コントラスト分解能との比較結果を示すグラフである。
【図13】シート厚さによる水晶体線量の比較結果を示すグラフである。
【図14】シート長さによる水晶体線量の比較結果を示すグラフである。
【図15】シート高さによる水晶体線量の比較結果を示すグラフである。
【図16】標準水晶体線量との比較結果である。
【図17】画像の比較(線量比 0.48)である。
【図18】画像の比較(線量比 0.40)である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明の実施の一形態について説明する。本発明のCT検査用X線遮へい材(以下、単に「X線遮へい材」という場合がある。)は、亜鉛の微粒子及び/または錫の微粒子と、微粒子を分散したバインダーを含み、亜鉛の微粒子及び/または錫の微粒子の含有量がX線遮へい材全体の70.0〜85.0質量%であることを基本構成とする。本発明は、亜鉛又は錫の微粒子と、該亜鉛又は錫の微粒子を均一な分散状態に保持するバインダーを含み、前記亜鉛又は錫の微粒子を70〜85重量%含有し、CT画像データの取得に不要な、X線の40keV以下の低エネルギー成分の遮へい能を有すると共に、CT画像の取得に必要な、100keV以上のX線の高エネルギー成分の良好な透過性を有する、CT検査用遮へい材となる。
【0018】
本発明は、X線を用いたCT検査(X線CT検査)においてCT画像データを取得するのには不必要なX線の低エネルギー成分のみを遮へいし、CT画像データを取得するのに必要なX線の高エネルギー成分を用いてCT画像データを作成ないし取得することにより、CT検査時におけるX線被曝を可及的に回避し、かつ、有用な検査結果を得ようとするものである。
【0019】
そのためには、どのようにすればかかる低エネルギー成分のみを効果的に遮へいできるかが問題となる。前記したように、従来は、X線を出力する窓の直後にフィルターを設けることで低エネルギー成分を除去することが行われていたが、低エネルギー成分の十分な除去には至らなかった。そこで、本発明の発明者等は、X線の低エネルギー成分の遮へい機能に優れた遮へい材の開発に取り組んだ。得るべき遮へい材の条件は、下記(1)及び(2)に示すとおりである。
【0020】
(1)CT画像データの取得に不必要なX線の低エネルギー成分を確実に遮へいできること。
【0021】
(2)CT画像データの取得に必要なX線の高エネルギー成分は透過させること。
【0022】
ここで、(1)に示した「CT画像データの取得に不必要なX線の低エネルギー成分」とは、具体的には、40keV以下のエネルギー成分である。また、(2)に示した「CT画像データの取得に必要なX線の高エネルギー成分」とは、具体的には、100keV以上のエネルギー成分である。
【0023】
遮へい材を構成する金属材料(金属遮へい材料)として考えられる主な金属粉末としては、タングステン、鉛、ビスマス、錫、亜鉛等がある。このうち、鉛は、人の健康や環境への悪影響が大きいので、遮へい材の構成成分としては好ましくないので、対象からは除外する。その他遮へい材としてよく使用されている硫酸バリウムも含め、以下、参考として言及していく。
【0024】
図1には、硫酸バリウム(参考)、タングステン、ビスマス、錫、亜鉛及び鉛(参考)について、総透過量を揃えた時の、連続X線の透過スペクトルが示されている。各金属とも、配合比率100%の場合で透過量が一定となる厚さを求めて透過X線スペクトルを算出したものである。
【0025】
図1に示した透過X線スペクトルを求めるにあたって、各吸収体を透過した光子フルエンスのスペクトル形状を比較するため、以下の計算を行った。入射光子フルエンスは管電圧120kVのX線CT装置のX線スペクトルを算出した結果を用い、物理データはNIST Standard Reference Database(National Institute of Standards and Technology)を用いた。そして、光子フルエンスφが厚さtの吸収体を透過後のX線照射線量Xtを下記式により算出した。
【0026】
【数1】
【0027】
ここで、Xtは吸収体厚tを透過した照射線量、φ(E)はE+dE間の光子フルエンス、EはX線エネルギー、μtr/ρは質量エネルギー転移係数、μ(E)は光子エネルギーEに対する吸収体の線減弱係数、をそれぞれ示す。
【0028】
そして、金属成分ごとにXtの値が等しくなる吸収体厚tを求め、各吸収体厚tによる透過光子フルエンスを算出した結果が図1である。
【0029】
図1から、CT画像データの取得に必要な100keV前後の高エネルギー帯でのX線透過量は、吸収端により、亜鉛と錫以外の金属成分ではX線CT画像を得るのに重要な90keV以上のX線成分が顕著に低下する一方、亜鉛と錫が最も大きく、高いレベルを維持していることが確認できる。また、図1に示すように、かかる亜鉛と錫は、CT画像データの作成ないし取得にはほとんど不要な40keV以下の低エネルギー帯でのX線遮へい能力も、他の金属成分より優れている。よって、前記した(1)及び(2)の条件を満たす遮へい材の原料としては、亜鉛や錫が最も適しているといえるため、本発明にあっては、金属遮へい成分として亜鉛と錫を選択した。
【0030】
同様な方法により、遮へいシートにおける亜鉛の微粒子の部数(遮へいシート全体に対する亜鉛の微粒子の含有量)を変化させた場合の透過X線フルエンスを求めた結果を図2に示す。図2に示した含有量(69、74、76、77、80質量%)の範囲では、透過X線スペクトル形状はほとんど変化せず、前記した(1)及び(2)の条件を満足することができる。加えて、亜鉛や錫の含有量が85.0質量%程度までは、透過比及び鉛当量といった特性も含め、図2に載せた含有量のものと共通した特性を示すものと考えられる。以上の結果より、亜鉛の微粒子や錫の微粒子の含有量(亜鉛と錫とを併用した場合にあっては、合計の含有量。)は、遮へいシート全体に対して70.0〜85.0質量%としている。
【0031】
一方、亜鉛の微粒子や錫の微粒子の含有量を、全体の85.0質量%を超えるようにすると、バインダーの架橋が良好に進行せず、微粒子の含有量を全体の70.0質量%より少なくした場合には、母材の収縮によりシートの製造が困難になる場合がある。
【0032】
本発明において金属遮へい成分として使用される亜鉛や錫は、微粒子(粉末)状で使用され、亜鉛の微粒子は、金属亜鉛単体のほか、ダイカスト用亜鉛合金、硫化亜鉛、スズ酸亜鉛等の亜鉛化合物を使用することができる。錫の微粒子も、金属錫単体のほか、ピューター等のスズ合金、硫化錫(SnS)等の錫化合物が挙げられる。亜鉛や錫はコスト的にもリーズナブルな材料であり、また、鉛材料とは異なり、環境及び人体への悪影響を抑制することができ、安全で環境・衛生的にも良好となる。また、亜鉛と錫は、その1つを単独で使用してもよく、その2種を組み合わせて使用するようにしてもよい。
【0033】
亜鉛の微粒子や錫の微粒子の平均粒子径(平均1次粒子径)は、1〜100μmとすることが好ましい。亜鉛や錫の微粒子の平均粒子径をかかる範囲にすることにより、バインダーに対して分散性もよく、前記した効果を効率よく発揮することができる。亜鉛や錫の微粒子の平均粒子径は3〜15μmとすることが特に好ましい。なお、本発明において、「平均粒子径」は、例えば、レーザー回折・散乱法によって求めた粒度分布における積算値50%での粒子径を採用することができる。
【0034】
亜鉛や錫の微粒子を分散させるバインダーとしては、公知の樹脂材料を使用することができるが、エラストマーを使用することが好ましく、例えば、クロロプレンゴム(CR)、ニトリルゴム(NBR)、エチレン-プロピレンゴム(EPT(EPDM))、シリコーンゴム(Si)、エチレン−酢酸ビニル共重合体ゴム(EVA)、ポリウレタンゴム(PUR)、スチレン−ブタジエンゴム(SBR)等の従来公知の熱硬化性エラストマー、熱可塑性エラストマー等を使用することができる。
【0035】
かかるバインダーは、前記した亜鉛や錫の微粒子を除いた場合における、X線CT検査用遮へい材の主成分となるが、X線CT検査用遮へい材全体に対して、例えば、8.0〜30.0質量%含有するようにすることが好ましい。バインダーの含有量をかかる範囲とすることにより、錫や亜鉛といった金属遮へい成分がバインダーに良好に分散される。バインダーは、X線CT検査用遮へい材全体に対して、8.0〜25.0質量%含有するようにすることが特に好ましい。
【0036】
なお、本発明のCT検査用X線遮へい材には、本発明の目的及び効果を妨げない範囲において、前記した以外の各種の樹脂成分やゴム成分、及び各種の添加剤を必要に応じて適宜添加することができる。添加剤としては、従来公知のものを使用することができ、例えば、加硫剤、加硫助剤、老化防止剤、加工助剤、可塑剤、紫外線吸収剤、耐熱安定剤、酸化防止剤、あるいは加工性を向上させるための減粘剤や増粘剤等の各種添加剤を適宜添加することができる。
【0037】
本発明のCT検査用X線遮へい材を製造するには、例えば、金属遮へい成分となる亜鉛や錫の微粒子とバインダー及び必要により各種の添加剤を混合した混合材料を、亜鉛や錫のバインダー(エラストマー)への分散を確実にするために、ロール作業にて混練りし、室温で冷却してから再度ロール作業にて所定の厚さにシート状に分出した後、裁断してコンプレションモールドして加硫シートを作製し、これを必要な大きさに裁断して、シート状の遮へい材として使用することができる。また、熱可塑性エラストマーを使用する場合には、混合材料を押出成形、T型ダイス押出成形、カレンダー成形、プレス成形、射出成形、コーティング、金型成形等の公知の手段によって成形加工することにより、簡便に得ることができる。
【0038】
本発明のCT検査用X線遮へい材は、所望のサイズ(長さ、幅、厚さ)を有するシート状とすることが好ましい。シート状の遮へい材の厚さは、含有される錫や亜鉛の微粒子の含有量や平均粒子径、バインダーを構成する材料、求められる遮へい特性等により適宜決定されるが、0.5〜4.0mmとすることが好ましく、1.0〜4.0mmとすることがさらに好ましく、1.0〜3.0mmとすることが特に好ましい。
【0039】
また、CT検査用X線遮へい材は、X線を用いたCT検査を行う場合には、水晶体、乳房、甲状腺、胸腺等の防護すべき部位(防護部位、被曝防止箇所)を覆うように配設されるが、CT検査用X線遮へい材で防護部位を覆うに際しては、遮へい材の形状を、防護部位の輪郭等にあわせて形成する(例えば、水晶体を防護する場合にあっては、断面視略U字形状にして、顔に装着しやすくする等。)ことが好ましい。
【0040】
以上説明した本発明に係るCT検査用X線遮へい材は、X線の40keV以下のエネルギー成分(低エネルギー成分)を遮へいするとともに、X線の100keV以上のエネルギー成分(高エネルギー成分)を透過するので、防護部位を覆って、X線を用いたCT検査を行った場合にあっては、防護部位における被曝低減効果が得られるとともに、被検部位におけるCT画像データを的確に取得することができる遮へい材となる。
【0041】
かかるCT検査用X線遮へい材を用いてX線を用いたCT検査を行い、CT画像データを取得するには、まず、CT検査用X線遮へい材で水晶体、甲状腺、乳房、胸線等といった防護部位を覆って、被検部位にX線CT装置等のX線照射源からX線を照射するようにする。被検部位が防護部位付近である場合には、X線が被検部位だけでなく防護部位に照射されてしまう可能性があるが、CT検査用X線遮へい材で防護部位を覆っていることにより、X線の40keV以下のエネルギー成分(低エネルギー成分)が遮へいされて、防護部位における被曝低減効果が得られる。
【0042】
また、被検部位に対する、CT画像データも的確に取得することができる。前記したように、X線照射源から出力されるX線は連続エネルギー分布であるが、このうち、X線の100keV以上のエネルギー成分(高エネルギー成分)が体内を通過し、X線照射源と対向して配置される検出器に入射し、X線CT画像のデータとして利用されることになる。一方、X線の低エネルギー成分は、ほとんどが体内に吸収されてしまう。X線CT画像を作成ないし取得する目的においては、X線の低エネルギー成分は殆ど不要な成分であるため、CT画像データの取得等には悪影響はない。
【0043】
なお、CT検査用X線遮へい材で水晶体、甲状腺、乳房、胸線等といった防護部位を覆う場合にあっては、遮へい材と人体を密着させるよりは、適当な間隔を設けるようにすると、ノイズの発生を抑えることができたり、低コントラスト分解能が向上するため好ましい。かかる間隔は、防護部位の種類や位置、輪郭、含有される錫や亜鉛の微粒子の含有量や平均粒子径、バインダーを構成する材料、求められる遮へい特性等により適宜決定すればよい。
【実施例】
【0044】
以下、実施例に基づき本発明をさらに詳細に説明するが、本発明は、これらに限定されるものではない。
【0045】
[実施例1]
CT検査用X線遮へい材の製造(1):
金属遮へい成分として亜鉛の微粒子を用いて、下記の方法を用いて、表1の組成のCT検査用X線遮へい材(X線遮へいシート)を製造した。なお、亜鉛の微粒子の平均粒子径は、1〜100μmのものを用いた。
【0046】
(組成)
【表1】
【0047】
表1に示した組成において、亜鉛の微粒子はX線遮へい用の金属遮へい材料であり、エラストマー(エチレン−酢酸ビニル共重合体:EVA)はバインダー、酸化亜鉛華は受酸剤または加硫助剤、酸化チタンは色合いのバランスを取る役割、をそれぞれ果たす。
【0048】
また、実施例1のCT検査用X線遮へい材は、亜鉛の微粒子とエラストマーとの分散を確実にするために、ロール作業にて混練りし、室温で冷却してから再度ロール作業にて所定の厚さにシート状に分出した後、裁断してコンプレションモールドして加硫シートを作製し、これを必要な大きさに裁断して、X線遮へいシートとして使用した。下記の試験例1を実施するに際して、準備したシート状のCT検査用X線遮へい材のサイズは、表2に示したとおりであり、形状として、30mm×150mm、30mm×200mm、30mm×250mmのものを、厚さとして、前記した形状のものに対してそれぞれ1mm、2mm、3mmとして用意した。
【0049】
(CT検査用X線遮へい材のサイズ)
【表2】
【0050】
[試験例1]
前記のようにして得られた実施例1のCT検査用X線遮へい材からなる、表2に示したサイズの異なるX線遮へいシートを作製し、それらを用いてX線画像性能を確認するため、次の試験を実施した。また、各試験((A)、(B)、(C))の内容とその結果は以下のとおりである。
【0051】
(A)ノイズの評価法
(B)低コントラスト分解能の評価法
(C)防護部位におけるX線量の比較
【0052】
(A)ノイズの評価法
CT性能評価ファントム(Catphan600)を用い、X線遮へいシートの厚さ、サイズ(長さ)、位置(被検体との間隔)によるX線CT画像への影響を確認した。臨床画像において特に重要となるノイズと低コントラスト分解能に関するX線CT画像特性を評価した。
【0053】
ノイズの評価は、CT性能評価ファントムのノイズモジュールを撮影して得られたスキャン画像より、5か所に設定した関心領域内のCT値の標準偏差を求めた。図3(a)は撮影したノイズモジュールの画像例で、図3(b)に示したA、B、C、D、及びEの5か所を測定した。
【0054】
(A)の試験結果は、図4、図5及び図6のグラフに示すとおりである。各図において、厚さ、長さはX線遮へいシートの厚さ、長さであり、高さは、被検体とX線遮へいシートの間隔である(以下同じ。)。これらの試験結果から、概ね、X線遮へいシートの厚さが厚くなるほど、また、長さが長くなるほどノイズが増加する傾向があることが確認できた。また、概ね、X線遮へいシートを被検体から離して配置するとノイズが減少する傾向があることが確認できた。
【0055】
標準ノイズとの比較結果は、図7のグラフに示すとおりである。グラフ中横線は通常のノイズ位置を示し、各棒グラフはこの中横線以下になれば被検体が明確になる。
【0056】
(B)低コントラスト分解能の評価法
低コントラスト分解能の評価は、CT性能評価ファントムの低コントラスト分解能モジュールを撮影して得られたスキャン画像より求めた。低コントラスト分解能モジュールの撮影像例を図8(a)に、低コントラスト分解能モジュールの構造図を図8(b)に示した。低コントラスト分解能モジュールは、CT値の異なる直径3mmから15mmの円筒形ロッド配置されている。外側のロッドはZ軸の長さが全て40mm、内側のロッドはZ軸長さが3mm、5mm、7mmであり、スライド厚さ等の条件が異なるスキャンでも評価を行うことができる。低コントラスト分解能は、直径3mmから15mmのロッドが識別可能なコントラスト(%)として測定した。
【0057】
(B)の試験結果は、図9、図10及び図11のグラフに示すとおりである。これ等の試験結果から、概ね、X線遮へいシートの厚さが厚くなるほど、また、長さが長くなるほど低コントラスト分解能が低下する傾向があることが確認できた。また、概ね、X線遮へいシートを被検体から離して配置すると、低コントラスト分解能が向上する傾向があることが確認できた。
【0058】
標準低コントラスト分解能との比較結果は、図12のグラフに示したとおりである。なお、低コントラスト分解能は、%の数字が小さい方が分解能が高いことを示す。
【0059】
(C)防護部位におけるX線量の比較
試験内容は頭部CT検査であり、防護部位は水晶体、要検査部位は小脳である。この試験の結果は、図13、図14及び図15に示すとおりである。これらの試験結果から、概ね、X線遮へいシートの厚さが厚くなるほど、また、長さが長くなるほど水晶体線量が減少することが確認できた。また、概ね、X線遮へいシートを水晶体位置から離して使用すると水晶体線量が増加する傾向がある。さらに、X線遮へいシートの厚さ、長さ、水晶体からの距離によって、水晶体線量は最大で約71%,最小で約35%減少することが確認できた。
【0060】
標準水晶体線量との比較は図16、CT画像の比較結果は図17、図18に示すとおりである。これらの結果から、図18に示した厚さ3mm、長さ200mm、高さ40mmの遮へいシートを使用することにより、検査に支障なく水晶体線量を約60%減少させることが可能なことが、本試験より確認できた。
【0061】
なお、実施例1で得られたX線遮へいシートは、亜鉛の微粒子の含有量をCT検査用X線遮へい材(X線遮へいシート)全体に対して76.5%質量%として実施しているが、図2にも示したように、70.0〜85.0質量%の範囲においても同等の性能を有すると考えられる。
【0062】
[実施例2、実施例3及び実施例4]
CT検査用X線遮へい材の製造(2):
実施例1の組成に対して、亜鉛の微粒子等の成分の含有量を変更した下記表3に示した組成を用いた以外は、実施例1で示した方法と同様な方法を用いて、実施例2、実施例3及び実施例4のシート状のCT検査用X線遮へい材(X線遮へいシート)を製造した。なお、厚さは1mmとした。
【0063】
(組成)
【表3】
【0064】
[試験例2]
(透過比及び鉛当量の測定)
実施例2、実施例3及び実施例4で得られたCT検査用遮へい材(厚さ 1cm)について、管電圧120kVにおける透過比及び鉛当量を測定した。測定結果を表4に示す。
【0065】
(測定結果)
【表4】
【0066】
なお、比較対照として、亜鉛の微粒子の含有量を遮へい材全体に対して69.0、74.0、76.0、77.0及び80.0質量%として、厚さ1mmの厚さのシートを製造した場合をシミュレーションした半実験式を用いた理論計算値を表5に示す。
【0067】
(理論計算値)
【表5】
【0068】
表4に示すように、実施例2、実施例3及び実施例4のCT検査用遮へい材については、透過比及び鉛当量について、表5における透過比及び鉛当量とほぼ共通する値が得られ、共通した特性を示すことが確認できた。
【産業上の利用可能性】
【0069】
本発明は、X線CT検査を実施するに際して、CT画像データの取得に不要な、X線の低エネルギー成分を遮へいするとともに、CT画像の取得に必要なX線の高エネルギー成分を透過し、人体への悪影響をできる限り抑えながらCT画像データを的確に取得する手段として利用することができ、産業上の利用価値は高いものである。
【技術分野】
【0001】
本発明は、X線CT検査方法及びX線CT検査用遮へい材に関する。さらに詳しくは、低エネルギー成分を遮へいするとともに、高エネルギー成分を透過して、CT画像データを的確に取得することができるCT検査用X線遮へい材、及び当該X線遮へい材を用いたCT検査方法に関する。
【背景技術】
【0002】
X線を用いたCT(Computed Tomography:コンピューター断層撮影)検査(X線CT検査)による被曝線量は、他のX線検査による被曝線量より多い。加えて、X線CT検査は、診断対象でない器官や臓器が撮影断面に多く含まれるため、診断対象以外の器官や臓器の被曝を極力抑えることが重要である。そこで、診断には不必要な臓器や部位を効果的に防護・遮へいすることが必要である。
【0003】
従来、放射線の遮へい材料としては、遮へい能力の高さと加工性、経済性などの面から、鉛が広く普及していた。しかし、鉛は、医療用として用いる場合にあっては、体表や消化器官に対する曝露により中毒症状など様々な健康被害を引き起こす可能性がある。また、近年、環境問題への配慮からも鉛の使用を制限する流れが強まっている。そこで、健康や環境上の問題がなく、軽量かつ放射線遮へい効果に優れた新たな防護・遮へい材として、タングステンやビスマス、硫酸バリウムなどを使用したものが開発されている(例えば、特許文献1、特許文献2及び特許文献3等を参照。)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2001−187829号公報
【特許文献2】特開2007−212304号公報
【特許文献3】特開2008−518274号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、従来提案されている含鉛シートや含ビスマスシート等の遮へい材は、いわゆるK吸収端が高く、X線CT検査の画像データを取得する際に必要となるX線の高エネルギー成分までをも遮へいしてしまうため、X線CT検査には適用できなかった。加えて、X線CT検査に適するX線遮へい材はこれまで提供されていないため、水晶体、甲状腺、乳房、胸線等については、防護・遮へいが必要な部位でありながら、効果的な対処ができていないのが実情である。
【0006】
ところで、X線CT装置から出力されるX線は連続エネルギー分布であり、このうち、X線の高エネルギー成分が体内を通過し、対向して配置される検出器に入射し、X線CT画像のデータとして利用されることになる。一方、X線の低エネルギー成分は、ほとんどが体内に吸収されてしまう。X線CT画像を作成ないし取得する目的においては、X線の低エネルギー成分は殆ど不要な成分である。従って、X線被曝を考慮すると、X線の低エネルギー成分をできるだけ除去することが重要である。従来は、例えば、X線を出力する窓の直後にフィルターを設けることで低エネルギー成分を除去するといった手段がとられていたが、かかる手段では低エネルギー成分の十分な除去がなされておらず、改善を求められていたのが実情であった。
【0007】
本発明は、前記のような知見に基づいてなされたもので、CT画像データを的確に取得することができ、かつ、人体への悪影響をできる限り少なくすることが可能なCT検査用X線遮へい材及びX線CT検査方法を提供しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
前記課題を解決するため、本発明に係るCT検査用X線遮へい材は、亜鉛の微粒子及び/または錫の微粒子と、前記微粒子を分散したバインダーを含み、前記微粒子の含有量が全体の70.0〜85.0質量%であることを特徴とする。
【0009】
本発明に係るCT検査用X線遮へい材は、前記した本発明において、X線の40keV以下の低エネルギー成分の遮へい能を有するとともに、X線の100keV以上のX線の高エネルギー成分の透過能を有することを特徴とする。
【0010】
本発明に係るCT検査用X線遮へい材は、前記した本発明において、前記バインダーがエラストマーであることを特徴とする。
【0011】
本発明に係るCT検査方法は、亜鉛の微粒子及び/または錫の微粒子が分散されたバインダーを含んでなるCT検査用X線遮へい材で防護部位を覆い、被検部位に対してX線を照射し、CT画像データを取得することを特徴とする。
【0012】
本発明に係るCT検査方法は、前記した本発明において、前記CT検査用X線遮へい材により、X線の40keV以下の低エネルギー成分を遮へいしつつ、前記X線遮へい材を透過するX線の100keV以上の高エネルギー成分を用いてCT画像データを取得することを特徴とする。
【0013】
本発明に係るCT検査方法は、前記した本発明において、前記CT検査用遮へい材における前記微粒子の含有量が前記CT検査用X線遮へい材全体の70.0〜85.0質量%であることを特徴とする。
【発明の効果】
【0014】
本発明に係るCT検査用X線遮へい材は、X線の40keV以下のエネルギー成分(低エネルギー成分)を遮へいするとともに、X線の100keV以上のエネルギー成分(高エネルギー成分)を透過するので、防護部位を覆って、X線CT検査に使用された場合にあっては、防護部位における低エネルギー成分の被曝低減効果が得られるとともに、被検部位におけるCT画像データを的確に取得することができる遮へい材となる。
【0015】
また、本発明に係るCT検査方法は、X線の40keV以下のエネルギー成分(低エネルギー成分)を遮へいするとともに、X線の100keV以上のエネルギー成分(高エネルギー成分)を透過するCT検査用X線遮へい材により防護部位を覆った状態で被検部位にX線照射するので、防護部位には低エネルギー成分の遮へいによる被曝低減効果が得られるとともに、高エネルギー成分がX線CT画像のデータとして利用され、被検部位に対する、CT画像データも的確に取得することができるCT検査方法となる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】総透過量で規格化したX線スペクトル図である。
【図2】透過X線スペクトルを示した図である。
【図3】ノイズの評価法の説明図である。
【図4】シート厚さによるノイズの比較結果を示すグラフである。
【図5】シート長さによるノイズの比較結果を示すグラフである。
【図6】シート高さによるノイズの比較結果を示すグラフである。
【図7】標準ノイズとの比較結果を示すグラフである。
【図8】低コントラスト分解能の評価法の説明図である。
【図9】シート厚さによる低コントラスト分解能の比較結果を示すグラフである。
【図10】シート長さによる低コントラスト分解能の比較結果を示すグラフである。
【図11】シート高さによる低コントラスト分解能の比較結果を示すグラフである。
【図12】標準低コントラスト分解能との比較結果を示すグラフである。
【図13】シート厚さによる水晶体線量の比較結果を示すグラフである。
【図14】シート長さによる水晶体線量の比較結果を示すグラフである。
【図15】シート高さによる水晶体線量の比較結果を示すグラフである。
【図16】標準水晶体線量との比較結果である。
【図17】画像の比較(線量比 0.48)である。
【図18】画像の比較(線量比 0.40)である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明の実施の一形態について説明する。本発明のCT検査用X線遮へい材(以下、単に「X線遮へい材」という場合がある。)は、亜鉛の微粒子及び/または錫の微粒子と、微粒子を分散したバインダーを含み、亜鉛の微粒子及び/または錫の微粒子の含有量がX線遮へい材全体の70.0〜85.0質量%であることを基本構成とする。本発明は、亜鉛又は錫の微粒子と、該亜鉛又は錫の微粒子を均一な分散状態に保持するバインダーを含み、前記亜鉛又は錫の微粒子を70〜85重量%含有し、CT画像データの取得に不要な、X線の40keV以下の低エネルギー成分の遮へい能を有すると共に、CT画像の取得に必要な、100keV以上のX線の高エネルギー成分の良好な透過性を有する、CT検査用遮へい材となる。
【0018】
本発明は、X線を用いたCT検査(X線CT検査)においてCT画像データを取得するのには不必要なX線の低エネルギー成分のみを遮へいし、CT画像データを取得するのに必要なX線の高エネルギー成分を用いてCT画像データを作成ないし取得することにより、CT検査時におけるX線被曝を可及的に回避し、かつ、有用な検査結果を得ようとするものである。
【0019】
そのためには、どのようにすればかかる低エネルギー成分のみを効果的に遮へいできるかが問題となる。前記したように、従来は、X線を出力する窓の直後にフィルターを設けることで低エネルギー成分を除去することが行われていたが、低エネルギー成分の十分な除去には至らなかった。そこで、本発明の発明者等は、X線の低エネルギー成分の遮へい機能に優れた遮へい材の開発に取り組んだ。得るべき遮へい材の条件は、下記(1)及び(2)に示すとおりである。
【0020】
(1)CT画像データの取得に不必要なX線の低エネルギー成分を確実に遮へいできること。
【0021】
(2)CT画像データの取得に必要なX線の高エネルギー成分は透過させること。
【0022】
ここで、(1)に示した「CT画像データの取得に不必要なX線の低エネルギー成分」とは、具体的には、40keV以下のエネルギー成分である。また、(2)に示した「CT画像データの取得に必要なX線の高エネルギー成分」とは、具体的には、100keV以上のエネルギー成分である。
【0023】
遮へい材を構成する金属材料(金属遮へい材料)として考えられる主な金属粉末としては、タングステン、鉛、ビスマス、錫、亜鉛等がある。このうち、鉛は、人の健康や環境への悪影響が大きいので、遮へい材の構成成分としては好ましくないので、対象からは除外する。その他遮へい材としてよく使用されている硫酸バリウムも含め、以下、参考として言及していく。
【0024】
図1には、硫酸バリウム(参考)、タングステン、ビスマス、錫、亜鉛及び鉛(参考)について、総透過量を揃えた時の、連続X線の透過スペクトルが示されている。各金属とも、配合比率100%の場合で透過量が一定となる厚さを求めて透過X線スペクトルを算出したものである。
【0025】
図1に示した透過X線スペクトルを求めるにあたって、各吸収体を透過した光子フルエンスのスペクトル形状を比較するため、以下の計算を行った。入射光子フルエンスは管電圧120kVのX線CT装置のX線スペクトルを算出した結果を用い、物理データはNIST Standard Reference Database(National Institute of Standards and Technology)を用いた。そして、光子フルエンスφが厚さtの吸収体を透過後のX線照射線量Xtを下記式により算出した。
【0026】
【数1】
【0027】
ここで、Xtは吸収体厚tを透過した照射線量、φ(E)はE+dE間の光子フルエンス、EはX線エネルギー、μtr/ρは質量エネルギー転移係数、μ(E)は光子エネルギーEに対する吸収体の線減弱係数、をそれぞれ示す。
【0028】
そして、金属成分ごとにXtの値が等しくなる吸収体厚tを求め、各吸収体厚tによる透過光子フルエンスを算出した結果が図1である。
【0029】
図1から、CT画像データの取得に必要な100keV前後の高エネルギー帯でのX線透過量は、吸収端により、亜鉛と錫以外の金属成分ではX線CT画像を得るのに重要な90keV以上のX線成分が顕著に低下する一方、亜鉛と錫が最も大きく、高いレベルを維持していることが確認できる。また、図1に示すように、かかる亜鉛と錫は、CT画像データの作成ないし取得にはほとんど不要な40keV以下の低エネルギー帯でのX線遮へい能力も、他の金属成分より優れている。よって、前記した(1)及び(2)の条件を満たす遮へい材の原料としては、亜鉛や錫が最も適しているといえるため、本発明にあっては、金属遮へい成分として亜鉛と錫を選択した。
【0030】
同様な方法により、遮へいシートにおける亜鉛の微粒子の部数(遮へいシート全体に対する亜鉛の微粒子の含有量)を変化させた場合の透過X線フルエンスを求めた結果を図2に示す。図2に示した含有量(69、74、76、77、80質量%)の範囲では、透過X線スペクトル形状はほとんど変化せず、前記した(1)及び(2)の条件を満足することができる。加えて、亜鉛や錫の含有量が85.0質量%程度までは、透過比及び鉛当量といった特性も含め、図2に載せた含有量のものと共通した特性を示すものと考えられる。以上の結果より、亜鉛の微粒子や錫の微粒子の含有量(亜鉛と錫とを併用した場合にあっては、合計の含有量。)は、遮へいシート全体に対して70.0〜85.0質量%としている。
【0031】
一方、亜鉛の微粒子や錫の微粒子の含有量を、全体の85.0質量%を超えるようにすると、バインダーの架橋が良好に進行せず、微粒子の含有量を全体の70.0質量%より少なくした場合には、母材の収縮によりシートの製造が困難になる場合がある。
【0032】
本発明において金属遮へい成分として使用される亜鉛や錫は、微粒子(粉末)状で使用され、亜鉛の微粒子は、金属亜鉛単体のほか、ダイカスト用亜鉛合金、硫化亜鉛、スズ酸亜鉛等の亜鉛化合物を使用することができる。錫の微粒子も、金属錫単体のほか、ピューター等のスズ合金、硫化錫(SnS)等の錫化合物が挙げられる。亜鉛や錫はコスト的にもリーズナブルな材料であり、また、鉛材料とは異なり、環境及び人体への悪影響を抑制することができ、安全で環境・衛生的にも良好となる。また、亜鉛と錫は、その1つを単独で使用してもよく、その2種を組み合わせて使用するようにしてもよい。
【0033】
亜鉛の微粒子や錫の微粒子の平均粒子径(平均1次粒子径)は、1〜100μmとすることが好ましい。亜鉛や錫の微粒子の平均粒子径をかかる範囲にすることにより、バインダーに対して分散性もよく、前記した効果を効率よく発揮することができる。亜鉛や錫の微粒子の平均粒子径は3〜15μmとすることが特に好ましい。なお、本発明において、「平均粒子径」は、例えば、レーザー回折・散乱法によって求めた粒度分布における積算値50%での粒子径を採用することができる。
【0034】
亜鉛や錫の微粒子を分散させるバインダーとしては、公知の樹脂材料を使用することができるが、エラストマーを使用することが好ましく、例えば、クロロプレンゴム(CR)、ニトリルゴム(NBR)、エチレン-プロピレンゴム(EPT(EPDM))、シリコーンゴム(Si)、エチレン−酢酸ビニル共重合体ゴム(EVA)、ポリウレタンゴム(PUR)、スチレン−ブタジエンゴム(SBR)等の従来公知の熱硬化性エラストマー、熱可塑性エラストマー等を使用することができる。
【0035】
かかるバインダーは、前記した亜鉛や錫の微粒子を除いた場合における、X線CT検査用遮へい材の主成分となるが、X線CT検査用遮へい材全体に対して、例えば、8.0〜30.0質量%含有するようにすることが好ましい。バインダーの含有量をかかる範囲とすることにより、錫や亜鉛といった金属遮へい成分がバインダーに良好に分散される。バインダーは、X線CT検査用遮へい材全体に対して、8.0〜25.0質量%含有するようにすることが特に好ましい。
【0036】
なお、本発明のCT検査用X線遮へい材には、本発明の目的及び効果を妨げない範囲において、前記した以外の各種の樹脂成分やゴム成分、及び各種の添加剤を必要に応じて適宜添加することができる。添加剤としては、従来公知のものを使用することができ、例えば、加硫剤、加硫助剤、老化防止剤、加工助剤、可塑剤、紫外線吸収剤、耐熱安定剤、酸化防止剤、あるいは加工性を向上させるための減粘剤や増粘剤等の各種添加剤を適宜添加することができる。
【0037】
本発明のCT検査用X線遮へい材を製造するには、例えば、金属遮へい成分となる亜鉛や錫の微粒子とバインダー及び必要により各種の添加剤を混合した混合材料を、亜鉛や錫のバインダー(エラストマー)への分散を確実にするために、ロール作業にて混練りし、室温で冷却してから再度ロール作業にて所定の厚さにシート状に分出した後、裁断してコンプレションモールドして加硫シートを作製し、これを必要な大きさに裁断して、シート状の遮へい材として使用することができる。また、熱可塑性エラストマーを使用する場合には、混合材料を押出成形、T型ダイス押出成形、カレンダー成形、プレス成形、射出成形、コーティング、金型成形等の公知の手段によって成形加工することにより、簡便に得ることができる。
【0038】
本発明のCT検査用X線遮へい材は、所望のサイズ(長さ、幅、厚さ)を有するシート状とすることが好ましい。シート状の遮へい材の厚さは、含有される錫や亜鉛の微粒子の含有量や平均粒子径、バインダーを構成する材料、求められる遮へい特性等により適宜決定されるが、0.5〜4.0mmとすることが好ましく、1.0〜4.0mmとすることがさらに好ましく、1.0〜3.0mmとすることが特に好ましい。
【0039】
また、CT検査用X線遮へい材は、X線を用いたCT検査を行う場合には、水晶体、乳房、甲状腺、胸腺等の防護すべき部位(防護部位、被曝防止箇所)を覆うように配設されるが、CT検査用X線遮へい材で防護部位を覆うに際しては、遮へい材の形状を、防護部位の輪郭等にあわせて形成する(例えば、水晶体を防護する場合にあっては、断面視略U字形状にして、顔に装着しやすくする等。)ことが好ましい。
【0040】
以上説明した本発明に係るCT検査用X線遮へい材は、X線の40keV以下のエネルギー成分(低エネルギー成分)を遮へいするとともに、X線の100keV以上のエネルギー成分(高エネルギー成分)を透過するので、防護部位を覆って、X線を用いたCT検査を行った場合にあっては、防護部位における被曝低減効果が得られるとともに、被検部位におけるCT画像データを的確に取得することができる遮へい材となる。
【0041】
かかるCT検査用X線遮へい材を用いてX線を用いたCT検査を行い、CT画像データを取得するには、まず、CT検査用X線遮へい材で水晶体、甲状腺、乳房、胸線等といった防護部位を覆って、被検部位にX線CT装置等のX線照射源からX線を照射するようにする。被検部位が防護部位付近である場合には、X線が被検部位だけでなく防護部位に照射されてしまう可能性があるが、CT検査用X線遮へい材で防護部位を覆っていることにより、X線の40keV以下のエネルギー成分(低エネルギー成分)が遮へいされて、防護部位における被曝低減効果が得られる。
【0042】
また、被検部位に対する、CT画像データも的確に取得することができる。前記したように、X線照射源から出力されるX線は連続エネルギー分布であるが、このうち、X線の100keV以上のエネルギー成分(高エネルギー成分)が体内を通過し、X線照射源と対向して配置される検出器に入射し、X線CT画像のデータとして利用されることになる。一方、X線の低エネルギー成分は、ほとんどが体内に吸収されてしまう。X線CT画像を作成ないし取得する目的においては、X線の低エネルギー成分は殆ど不要な成分であるため、CT画像データの取得等には悪影響はない。
【0043】
なお、CT検査用X線遮へい材で水晶体、甲状腺、乳房、胸線等といった防護部位を覆う場合にあっては、遮へい材と人体を密着させるよりは、適当な間隔を設けるようにすると、ノイズの発生を抑えることができたり、低コントラスト分解能が向上するため好ましい。かかる間隔は、防護部位の種類や位置、輪郭、含有される錫や亜鉛の微粒子の含有量や平均粒子径、バインダーを構成する材料、求められる遮へい特性等により適宜決定すればよい。
【実施例】
【0044】
以下、実施例に基づき本発明をさらに詳細に説明するが、本発明は、これらに限定されるものではない。
【0045】
[実施例1]
CT検査用X線遮へい材の製造(1):
金属遮へい成分として亜鉛の微粒子を用いて、下記の方法を用いて、表1の組成のCT検査用X線遮へい材(X線遮へいシート)を製造した。なお、亜鉛の微粒子の平均粒子径は、1〜100μmのものを用いた。
【0046】
(組成)
【表1】
【0047】
表1に示した組成において、亜鉛の微粒子はX線遮へい用の金属遮へい材料であり、エラストマー(エチレン−酢酸ビニル共重合体:EVA)はバインダー、酸化亜鉛華は受酸剤または加硫助剤、酸化チタンは色合いのバランスを取る役割、をそれぞれ果たす。
【0048】
また、実施例1のCT検査用X線遮へい材は、亜鉛の微粒子とエラストマーとの分散を確実にするために、ロール作業にて混練りし、室温で冷却してから再度ロール作業にて所定の厚さにシート状に分出した後、裁断してコンプレションモールドして加硫シートを作製し、これを必要な大きさに裁断して、X線遮へいシートとして使用した。下記の試験例1を実施するに際して、準備したシート状のCT検査用X線遮へい材のサイズは、表2に示したとおりであり、形状として、30mm×150mm、30mm×200mm、30mm×250mmのものを、厚さとして、前記した形状のものに対してそれぞれ1mm、2mm、3mmとして用意した。
【0049】
(CT検査用X線遮へい材のサイズ)
【表2】
【0050】
[試験例1]
前記のようにして得られた実施例1のCT検査用X線遮へい材からなる、表2に示したサイズの異なるX線遮へいシートを作製し、それらを用いてX線画像性能を確認するため、次の試験を実施した。また、各試験((A)、(B)、(C))の内容とその結果は以下のとおりである。
【0051】
(A)ノイズの評価法
(B)低コントラスト分解能の評価法
(C)防護部位におけるX線量の比較
【0052】
(A)ノイズの評価法
CT性能評価ファントム(Catphan600)を用い、X線遮へいシートの厚さ、サイズ(長さ)、位置(被検体との間隔)によるX線CT画像への影響を確認した。臨床画像において特に重要となるノイズと低コントラスト分解能に関するX線CT画像特性を評価した。
【0053】
ノイズの評価は、CT性能評価ファントムのノイズモジュールを撮影して得られたスキャン画像より、5か所に設定した関心領域内のCT値の標準偏差を求めた。図3(a)は撮影したノイズモジュールの画像例で、図3(b)に示したA、B、C、D、及びEの5か所を測定した。
【0054】
(A)の試験結果は、図4、図5及び図6のグラフに示すとおりである。各図において、厚さ、長さはX線遮へいシートの厚さ、長さであり、高さは、被検体とX線遮へいシートの間隔である(以下同じ。)。これらの試験結果から、概ね、X線遮へいシートの厚さが厚くなるほど、また、長さが長くなるほどノイズが増加する傾向があることが確認できた。また、概ね、X線遮へいシートを被検体から離して配置するとノイズが減少する傾向があることが確認できた。
【0055】
標準ノイズとの比較結果は、図7のグラフに示すとおりである。グラフ中横線は通常のノイズ位置を示し、各棒グラフはこの中横線以下になれば被検体が明確になる。
【0056】
(B)低コントラスト分解能の評価法
低コントラスト分解能の評価は、CT性能評価ファントムの低コントラスト分解能モジュールを撮影して得られたスキャン画像より求めた。低コントラスト分解能モジュールの撮影像例を図8(a)に、低コントラスト分解能モジュールの構造図を図8(b)に示した。低コントラスト分解能モジュールは、CT値の異なる直径3mmから15mmの円筒形ロッド配置されている。外側のロッドはZ軸の長さが全て40mm、内側のロッドはZ軸長さが3mm、5mm、7mmであり、スライド厚さ等の条件が異なるスキャンでも評価を行うことができる。低コントラスト分解能は、直径3mmから15mmのロッドが識別可能なコントラスト(%)として測定した。
【0057】
(B)の試験結果は、図9、図10及び図11のグラフに示すとおりである。これ等の試験結果から、概ね、X線遮へいシートの厚さが厚くなるほど、また、長さが長くなるほど低コントラスト分解能が低下する傾向があることが確認できた。また、概ね、X線遮へいシートを被検体から離して配置すると、低コントラスト分解能が向上する傾向があることが確認できた。
【0058】
標準低コントラスト分解能との比較結果は、図12のグラフに示したとおりである。なお、低コントラスト分解能は、%の数字が小さい方が分解能が高いことを示す。
【0059】
(C)防護部位におけるX線量の比較
試験内容は頭部CT検査であり、防護部位は水晶体、要検査部位は小脳である。この試験の結果は、図13、図14及び図15に示すとおりである。これらの試験結果から、概ね、X線遮へいシートの厚さが厚くなるほど、また、長さが長くなるほど水晶体線量が減少することが確認できた。また、概ね、X線遮へいシートを水晶体位置から離して使用すると水晶体線量が増加する傾向がある。さらに、X線遮へいシートの厚さ、長さ、水晶体からの距離によって、水晶体線量は最大で約71%,最小で約35%減少することが確認できた。
【0060】
標準水晶体線量との比較は図16、CT画像の比較結果は図17、図18に示すとおりである。これらの結果から、図18に示した厚さ3mm、長さ200mm、高さ40mmの遮へいシートを使用することにより、検査に支障なく水晶体線量を約60%減少させることが可能なことが、本試験より確認できた。
【0061】
なお、実施例1で得られたX線遮へいシートは、亜鉛の微粒子の含有量をCT検査用X線遮へい材(X線遮へいシート)全体に対して76.5%質量%として実施しているが、図2にも示したように、70.0〜85.0質量%の範囲においても同等の性能を有すると考えられる。
【0062】
[実施例2、実施例3及び実施例4]
CT検査用X線遮へい材の製造(2):
実施例1の組成に対して、亜鉛の微粒子等の成分の含有量を変更した下記表3に示した組成を用いた以外は、実施例1で示した方法と同様な方法を用いて、実施例2、実施例3及び実施例4のシート状のCT検査用X線遮へい材(X線遮へいシート)を製造した。なお、厚さは1mmとした。
【0063】
(組成)
【表3】
【0064】
[試験例2]
(透過比及び鉛当量の測定)
実施例2、実施例3及び実施例4で得られたCT検査用遮へい材(厚さ 1cm)について、管電圧120kVにおける透過比及び鉛当量を測定した。測定結果を表4に示す。
【0065】
(測定結果)
【表4】
【0066】
なお、比較対照として、亜鉛の微粒子の含有量を遮へい材全体に対して69.0、74.0、76.0、77.0及び80.0質量%として、厚さ1mmの厚さのシートを製造した場合をシミュレーションした半実験式を用いた理論計算値を表5に示す。
【0067】
(理論計算値)
【表5】
【0068】
表4に示すように、実施例2、実施例3及び実施例4のCT検査用遮へい材については、透過比及び鉛当量について、表5における透過比及び鉛当量とほぼ共通する値が得られ、共通した特性を示すことが確認できた。
【産業上の利用可能性】
【0069】
本発明は、X線CT検査を実施するに際して、CT画像データの取得に不要な、X線の低エネルギー成分を遮へいするとともに、CT画像の取得に必要なX線の高エネルギー成分を透過し、人体への悪影響をできる限り抑えながらCT画像データを的確に取得する手段として利用することができ、産業上の利用価値は高いものである。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
亜鉛の微粒子及び/または錫の微粒子と、前記微粒子を分散したバインダーを含み、
前記微粒子の含有量が全体の70.0〜85.0質量%であることを特徴とするCT検査用X線遮へい材。
【請求項2】
X線の40keV以下の低エネルギー成分の遮へい能を有するとともに、X線の100keV以上のX線の高エネルギー成分の透過能を有することを特徴とする請求項1に記載のCT検査用X線遮へい材。
【請求項3】
前記バインダーがエラストマーであることを特徴とする請求項1または請求項2に記載のCT検査用X線遮へい材。
【請求項4】
亜鉛の微粒子及び/または錫の微粒子が分散されたバインダーを含んでなるCT検査用X線遮へい材で防護部位を覆い、被検部位に対してX線を照射し、CT画像データを取得することを特徴とするCT検査方法。
【請求項5】
前記CT検査用X線遮へい材により、X線の40keV以下の低エネルギー成分を遮へいしつつ、前記X線遮へい材を透過するX線の100keV以上の高エネルギー成分を用いてCT画像データを取得することを特徴とする請求項4に記載のCT検査方法。
【請求項6】
前記CT検査用遮へい材における前記微粒子の含有量が前記CT検査用X線遮へい材全体の70.0〜85.0質量%であることを特徴とする請求項4または請求項5に記載のCT検査方法。
【請求項1】
亜鉛の微粒子及び/または錫の微粒子と、前記微粒子を分散したバインダーを含み、
前記微粒子の含有量が全体の70.0〜85.0質量%であることを特徴とするCT検査用X線遮へい材。
【請求項2】
X線の40keV以下の低エネルギー成分の遮へい能を有するとともに、X線の100keV以上のX線の高エネルギー成分の透過能を有することを特徴とする請求項1に記載のCT検査用X線遮へい材。
【請求項3】
前記バインダーがエラストマーであることを特徴とする請求項1または請求項2に記載のCT検査用X線遮へい材。
【請求項4】
亜鉛の微粒子及び/または錫の微粒子が分散されたバインダーを含んでなるCT検査用X線遮へい材で防護部位を覆い、被検部位に対してX線を照射し、CT画像データを取得することを特徴とするCT検査方法。
【請求項5】
前記CT検査用X線遮へい材により、X線の40keV以下の低エネルギー成分を遮へいしつつ、前記X線遮へい材を透過するX線の100keV以上の高エネルギー成分を用いてCT画像データを取得することを特徴とする請求項4に記載のCT検査方法。
【請求項6】
前記CT検査用遮へい材における前記微粒子の含有量が前記CT検査用X線遮へい材全体の70.0〜85.0質量%であることを特徴とする請求項4または請求項5に記載のCT検査方法。
【図1】
【図2】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図3】
【図8】
【図17】
【図18】
【図2】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図3】
【図8】
【図17】
【図18】
【公開番号】特開2012−179353(P2012−179353A)
【公開日】平成24年9月20日(2012.9.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−27054(P2012−27054)
【出願日】平成24年2月10日(2012.2.10)
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第3項適用申請有り 博覧会名:産業交流展2010(平成22年6月23日付20100615特許004) 主催者名:産業交流展2010実行委員会 開催日:平成22年11月10日から11月12日までの3日間
【出願人】(390028783)株式会社フジックス (3)
【出願人】(591106462)茨城県 (45)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成24年9月20日(2012.9.20)
【国際特許分類】
【出願日】平成24年2月10日(2012.2.10)
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第3項適用申請有り 博覧会名:産業交流展2010(平成22年6月23日付20100615特許004) 主催者名:産業交流展2010実行委員会 開催日:平成22年11月10日から11月12日までの3日間
【出願人】(390028783)株式会社フジックス (3)
【出願人】(591106462)茨城県 (45)
【Fターム(参考)】
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