mCMVIE2プロモーターを含んで成る発現ベクター
【課題】mCMV−IE2遺伝子の新規エンハンサーを提供する。
【解決手段】特定の塩基配列を有する機能的な発現促進フラグメントから成るmCMV−IE2遺伝子のエンハンサーであって、前記配列の機能的な発現促進フラグメントが、mCMV IE2上流領域のヌクレオチド−387〜−189又はヌクレオチド−587〜−189、あるいはヌクレオチド−587〜−189又はヌクレオチド−387〜−189の間の、増強活性を保持する任意のフラグメント、から成り、当該ヌクレオチドの番号付けが前記IE2遺伝子の+1に対するものである、mCMV−IE2遺伝子のエンハンサー。
【解決手段】特定の塩基配列を有する機能的な発現促進フラグメントから成るmCMV−IE2遺伝子のエンハンサーであって、前記配列の機能的な発現促進フラグメントが、mCMV IE2上流領域のヌクレオチド−387〜−189又はヌクレオチド−587〜−189、あるいはヌクレオチド−587〜−189又はヌクレオチド−387〜−189の間の、増強活性を保持する任意のフラグメント、から成り、当該ヌクレオチドの番号付けが前記IE2遺伝子の+1に対するものである、mCMV−IE2遺伝子のエンハンサー。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、mCMV−IE2遺伝子のプロモーター、若しくはその機能的な発現促進フラグメント、及び/又はmCMV−IE2遺伝子のエンハンサー、若しくはその機能的な発現促進フラグメントを含んで成る発現ベクターであって、mCMVの完全な遺伝子を全く含まない発現ベクター、当該ベクターを含む宿主細胞、当該発現ベクターを用いて所望のポリペプチドを産生する方法、及び当該発現ベクターの使用、に関する。
【0002】
mCMV IE2プロモーター及びmCMV IE1プロモーターと、任意に新規mCMV IE2エンハンサーとを含んで成る発現ベクターは本発明において好ましく、特に両プロモーターが両方向的構造において配列されている場合に好ましい。
【背景技術】
【0003】
数十年前から、発現ベクターは、注目のポリペプチド又はタンパク質をコードする遺伝子又はcDNAを宿主細胞で発現させるための媒体として使用されている。強力なウイルス性又は細胞性のプロモーター及びエンハンサーは、宿主細胞への組換えDNAの一過性又は安定性のトランスフェクションを用いることにより高レベルで注目の遺伝子を発現させるために使用されている。ヒトサイトメガロウイルス(hCMV)の前初期(IE)領域は、この点特に適していることが証明されており、そしてこの領域由来の遺伝子因子を含んで成る発現ベクターは、例えばEP0323997B1で知られている。
【0004】
今日まで、マウスサイトメガロウイルス(mCMV)由来の遺伝子制御配列は、mCMV由来制御エレメントが非常に強力で、且つヒトの対応物と比較して遥かに強いことが確認されているが(Kim et al. 2002)、ほとんど使用されていない。
【0005】
US4,963,481(de Villiers)は、ウイルスゲノムから単離された約2270塩基対(bp)の制限エンドヌクレアーゼPstIフラグメントを含むmCMV IE領域由来のDNAフラグメントの転写制御下にある異種タンパク質をコードするDNAを有する発現ベクターを開示している。このフラグメントの1387bpの切断バージョンは、当該異種タンパク質の発現のためのプロモーターとしての前記DNAフラグメントの有効性における有意な向上をもたらした。
【0006】
US4,968,615(Kozinowski)は、真核細胞において構造遺伝子の転写を増強するために使用されうるマウスサイトメガロウイルス(MCMV)由来の転写エンハンサーを含む組換えDNA分子を記載している。当該mCMVエンハンサーは、de Villiers(US4,963,481)により同定された2.27kbのPstIフラグメント内に位置しているといわれている。
【0007】
Manning及びMocarski(1988)は、マウスサイトメガロウイルスの複製についてのmCMV IE2領域の機能的重要性を分析した。このために、mCMV IEエンハンサー/プロモーターの転写制御下にあるlacZレポーター遺伝子を有し、その結果IE2遺伝子が破壊されている組換えウイルスが構築された。実際にIE2遺伝子発現が無いことを観察することができ、そしてウイルスは普通に複製された。その結果、著者等は、サイトメガロウイルス、例えばmCMV及びhCMVの中で保存されていないIE2遺伝子がウイルス複製に必須ではなかったと結論付けた。IE2エンハンサー/プロモーター領域の何らかの特定の有用性についての指摘はManning及びMocarskiによって全く開示も示唆もされていない。
【0008】
最近の文献は、マウスとヒトとの間のCMV IE領域の更なる差異を示している。マウスの遺伝子座は、第一のIE遺伝子の反対方向に第二の主要なmRNAを発現している。この第二の前初期遺伝子はIE2と名づけられ、そのプロモーター配列はIE2プロモーターと称されている(Messerle et al. 1991)。
【0009】
mCMV由来のIE2領域は、これまでのところ異種タンパク質の発現のためのベクターに使用されてはいない。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明は、mCMVのIE2プロモーター領域を含んで成るDNAエレメントを有するベクターがトランスフェクションした宿主細胞における注目の遺伝子の発現を効率的に駆動させることができるという知見に基づいている。
【0011】
本発明は更にmCMV IE2領域における新規エンハンサーの同定に基づいており、これを本明細書ではmCMV IE2エンハンサーと称する。このエンハンサーは、エンハンサーの定義に一般的に適用される基準を満たし、すなわち、(1)位置、(2)配向、及び(3)異種プロモーターからの発現の増強、とは無関係に発現を増強させる。
【課題を解決するための手段】
【0012】
したがって、本発明の第一の側面は、mCMV−IE2遺伝子のプロモーター、若しくはその機能的な発現促進フラグメント、及び/又はmCMV−IE2遺伝子のエンハンサー、若しくはその機能的な発現促進フラグメントを含んで成る発現ベクターであって、mCMVの完全な遺伝子を全く含まない発現ベクター、に関する。
【0013】
第二の側面において、本発明は、本発明のベクターを含んで成る宿主細胞に関する。
【0014】
本発明の第三の側面は、注目のポリペプチドの産生方法であって、宿主細胞に本発明のベクターをトランスフェクションする工程を含んで成る方法に関する。
【0015】
第四の側面において、本発明は、注目のポリペプチドの産生方法であって、本発明の宿主細胞を培養する工程を含んで成る方法に関する。
【0016】
本発明の第五の側面は、注目の1又は複数の遺伝子又はcDNAの発現のための本発明のベクターの使用に関する。
【0017】
第六の側面において、本発明は、注目の遺伝子を大量に発現するクローンの選択のための本発明のベクターの使用に関する。
【0018】
第七の側面は、DNAベースの治療における本発明のベクターの使用に関する。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】図1は、発現コンストラクトに使用するためのmCMV IR領域由来の両方向性DNAエレメントの配列を示す。IE2及びIE1プロモーターの+1部位及びTATAボックスをそれぞれ示す。両遺伝子のコアプロモーターを四角の中に示す。HpaI及びXhoI制限部位を太字で示す。−682位はIE1の+1に対して示す。
【図2】図2は、レポーターコンストラクトA〜Gを示す。ルシフェラーゼレポーター遺伝子は太線として示し、そしてプロモーターは白抜きの矢印として示す。A:ネガティブなプロモーター無しの制御(pGL3ベーシック)。B:SV40プロモーター/エンハンサー駆動のルシフェラーゼレポーターベクター(pGL3コントロール)。C:IE1プロモーター駆動のルシフェラーゼ発現(pmCMVルシフェラーゼ、IE1駆動)。D:IE2プロモーター駆動のルシフェラーゼ発現(prevmCMVルシフェラーゼ、IE2駆動)。E:IE2プロモーター駆動のルシフェラーゼ発現、IE1プロモーターは欠失(prevmCMVルシフェラーゼ(ΔXhoI)、IE2駆動、IE1マイナス)。F:IE1プロモーター駆動のルシフェラーゼ発現、IE2プロモーターは欠失(pBS.MCMV3ルシフェラーゼ、IE1駆動(1.4kb)、IE2マイナス)。G:IE1プロモーターの短縮版によるルシフェラーゼ発現の駆動(p−680ルシフェラーゼ、IE1駆動(短いバージョン、0.68kb))。
【図3】図3は、IE2プロモーターと連結したIL−18BPのコード配列(太線)を有する、図2のコンストラクトに類似の両方向性コンストラクト(コンストラクトC−2)を示す。従って、このコンストラクトにおいて、mCMV IE1プロモーターがルシフェラーゼ発現を駆動させ、そして同時にmCMV IE2プロモーターがIL−18BP発現を駆動させる。三角:イントロン。黒の楕円:ポリA。
【図4】図4は、図2においてコンストラクトA〜Gで表した異なるレポーターコンストラクトからのルシフェラーゼレポーター遺伝子発現を示す。無血清培地(SFM)で生育したCHO−S細胞はコンストラクトA〜Gで一過性トランスフェクションし、あるいはモックトランスフェクションした。ルシフェラーゼ活性は、RLU=相対光単位として表す。
【図5】図5は、トランスフェクションしたCHO−S細胞の安定なプールにおいてRLUとして測定したルシフェラーゼ発現を示す。細胞は、図2でコンストラクトD、C、F及びEでトランスフェクションした後にSFM培地で生育した。ルシフェラーゼ発現は、選択してから21日後に評価した。
【図6】図6は、900、500、300及び100ngの、図3で示した両方向性コンストラクトC−2による一過性トランスフェクション後のRLUとして測定したルシフェラーゼ発現を示す。
【図7】図7は、図6の一過性トランスフェクション実験(コンストラクトC−2)由来の細胞培養上清中のIL−18BP量(ng/l)を示す。
【図8】図8は、図6及び7の実験で測定したIL−18BP量対ルシフェラーゼ量の比率を示す。
【図9】図9は、両方向性コンストラクトC−2(図3に示すとおり)によるトランスフェクションから8日後に選択した48の個々のクローンによって発現したルシフェラーゼの量(RLU)(左のy軸)及びIL−18BPの量(ng/ml)(右のy軸)を示す。ルシフェラーゼの検出限界は約500RLU、そしてIL−18BPは2.5ng/mlであった。X軸上のそれぞれの増加分は1つの単一のクローンを示している。
【図10.a】図10.aはレポーターコンストラクトH〜Nを示す。ルシフェラーゼレポーター遺伝子(Luc)は太線で示し、そしてそれぞれのIE1、IE2プロモーターは白抜きの矢印で示す。エンハンサーはグレーの楕円で示す:既知のIE1エンハンサーはライトグレー、そして新規IE2エンハンサーはダークグレー。H:ルシフェラーゼ発現を駆動させるIE2プロモーターを有する両方向性コンストラクト。J,K,L,M,N:短縮したmCMVプロモーターを含むコンストラクト。位置は、基準としてのIE2の+1に対するmCMVpからの塩基対の数に相当する。J:−1076からK:−783からL:−587からM:−387からN:−189から
【図10.b】図10.bは、無血清培地で生育したCHO−S細胞の一過性トランスフェクション後の、図10.aのレポーターコンストラクトH〜Nからのルシフェラーゼ発現(RLU)を示す。
【図11.a】図11.aは、新規IE2エンハンサー(グレーの楕円)とSV40プロモーターとを組み合わせた追加のレポーターコンストラクトO〜Yを示す。グレーの楕円は−587〜−189のIE2エンハンサーを表し、半分のグレーの楕円は−387〜−189のIE2エンハンサーを表す。IE2エンハンサーの上の矢印は、エンハンサー配列の方向を示す。ルシフェラーゼレポーター遺伝子は太線で示し、SV40プロモーターは白抜きのは矢印で示す。黒の楕円:ポリA。O:SV40プロモーターの5’側にクローニングされた長いIE2エンハンサー配列(−587/−189);P:SV40プロモーターの5’側にクローニングされた短いIE2エンハンサー配列(−387/−189);Q:SV40プロモーターの5’側に逆の配向でクローニングされた長いIE2エンハンサー配列(−587/−189);R:SV40プロモーターの5’側に逆の配向でクローニングされた短いIE2エンハンサー配列(−387/−189);S:SV40プロモーターの3’側にクローニングされた長いIE2エンハンサー配列(−587/−189);T:SV40プロモーターの3’側にクローニングされた短いIE2エンハンサー配列(−387/−189);U:SV40プロモーターの3’側に逆の配向でクローニングされた長いIE2エンハンサー配列(−587/−189);V:SV40プロモーターの3’側に逆の配向でクローニングされた短いIE2エンハンサー配列(−387/−189);W:コントロール。ルシフェラーゼのコード配列の3’側にSV40プロモーター及びSV40エンハンサー。X:コントロール。何らエンハンサー無しでSV40プロモーターにより駆動されるルシフェラーゼ発現。Y:ネガティブコントロール。プロモーター無し。
【図11.b】図11.bは、図11.aに示したレポーターコンストラクトO〜Yからのルシフェラーゼ発現を示す。無血清培地(SFM)中で生育したCHO−S細胞をコンストラクトO〜Yで一過性トランスフェクションした。ルシフェラーゼ活性はコントロールX(値1)、すなわち、何らエンハンサー無しでSV40プロモーターにより駆動される発現と比較した場合の誘導の倍数として表す。白抜きの棒:長いIE2エンハンサー(−587〜−189)、網掛けの棒:短いIE2エンハンサー(−387〜−189)。X軸は対数尺である。
【図12】図12は、新規IE2エンハンサーと既知のhCMVエンハンサーとを比較する実験である。細胞はコントロールのコンストラクトA(pGL3ベーシック、図2のプロモーター無しのものを参照のこと)、コントロールのコンストラクトB(pGL3ctrl、図2を参照のこと。ルシフェラーゼのコード領域の3’側にSV40プロモーターとSV40エンハンサー配列を有する)、コントロールのコンストラクトX(SV−Luc+。図11.aを参照のこと。SV40プロモーター。エンハンサー無し)、並びにコンストラクトO及びQ(図11.aを参照のこと)又はコンストラクトO−2又はQ−2(IE2エンハンサー配列(長いバージョン、−587〜−189)が既知のhCMVエンハンサー配列(配列番号2)で置換されている)でトランスフェクションされた。ルシフェラーゼが測定された(RLU)(x軸)。網掛けの棒:既知のhCMVエンハンサーによるもの。グレーの棒:新規IE2エンハンサーによるもの。
【図13】図13は、IL−18BPとルシフェラーゼの同時発現に使用する両方向性ベクターを示す。IE1及びIE2プロモーターは白抜きの矢印で示す。三角はhCMVのIE領域由来のイントロンAを表し、そしてグレーの楕円はポリアデニル化シグナルを表す。黒の四角はシグナルペプチドを表す。コンストラクト♯26:ルシフェラーゼはIE1プロモーターから発現し、そしてIL−18BPはIE2プロモーターから発現した。両プロモーター間の配列は図10.aのコンストラクトHにあるものである。コンストラクト♯140:ルシフェラーゼはIE2プロモーターにより発現し、そしてIL−18BPはIE1プロモーターから発現した。IE2エンハンサー(−587〜−189)は2つのプロモーターの間に位置する。
【図14】図14は、無血清培地中で生育したCHO細胞を図13のコンストラクト♯26又は♯140のいずれかで一過性トランスフェクションした後に発現したルシフェラーゼ量(RLU、左のy軸)及びIL−18Bp量(ng/ml、右のy軸)を示す。棒:ルシフェラーゼ発現。黒のひし形:IL−18BP発現。
【図15】図15は、図13のコンストラクト♯26又は♯140のいずれかでトランスフェクションした安定なプール中でのルシフェラーゼの発現(RLU、左のy軸)及びIL−18Bpの発現(ng/ml、右のy軸)を示す。発現は、トランスフェクションから7週間後に測定した。細胞は、ピューロマイシンによる選択の下で維持するか(+puro)、あるいはピューロマイシン選択無しで3週間維持した(−puro)。棒:ルシフェラーゼ発現。黒のひし形:IL−18BP発現。
【図16】図16は、図15の実験で見られるルシフェラーゼ発現の時間的経過を示す。x軸は時間(週)を表す。図15で示したデータは図16の3週のデータに相当する。黒のひし形:♯26+puro、小さい四角:♯140+puro、黒い三角:♯26−puro、大きい四角:♯140−puro。
【図17】図17は、図16の実験におけるIL−18BP発現の時間的経過を示す。レジェンドは図16のとおりである。
【図18】個々のプロトクローンをルシフェラーゼ発現(四角)(RLU)(左のy軸)及びIL−18BP発現(ひし形)(ng/ml)(右のy軸)について解析した。x軸上の増分は個々のプロトクローンを表す。プロトクローンはコンストラクト♯26で安定トランスフェクションしたCHO細胞から樹立し、そしてピューロマイシン選択の下維持した。
【図19】図19は、図18と同様であるが、プロトクローンはコンストラクト♯140でトランスフェクションした細胞から樹立した。
【図20】コンストラクト♯26又は♯140のいずれかをトランスフェクションしたプロトクローンを、ルシフェラーゼ発現について96ウェルフォーマットのinverted ChemiDoc viewにおいて解析した。
【発明を実施するための形態】
【0020】
本発明の詳細な説明
本発明によると、驚くべきことに、マウスサイトメガロウイルス(mCMV)の前初期(IE)2遺伝子のプロモーターがmCMV IE2タンパク質自体以外の注目のポリペプチド、すなわち異種ポリペプチド又はタンパク質の発現を促進するのに効率的であることが明らかとなった。この発現ベクターは、マウスサイトメガロウイルス自体であることはなく、あるいは完全なmCMVウイルス遺伝子を全く含まないが、組換えタンパク質発現のために着想されたベクターである。
【0021】
従って、本発明は、mCMV−IE2遺伝子のプロモーター、又はその機能的な発現促進フラグメントを含んで成る発現ベクターであって、mCMVの完全な遺伝子を全く含まない発現ベクター、に関する。
【0022】
これに加え、新規エンハンサーがmCMV IE2領域において同定されており、これを本明細書でmCMV IE2エンハンサー、又はIE2エンハンサーと称する。このエンハンサーは、遺伝子に対するその位置又は配向に関係なく発現を増強し、そして異種プロモーターからの発現を増強し、その結果エンハンサーの一般的基準を満たす。
【0023】
従って、本発明では、mCMV−IE2遺伝子のエンハンサー、又はその機能的な発現増強フラグメントを含んで成る発現ベクターであって、mCMVの完全な遺伝子を全く含まない発現ベクター、に関する。
【0024】
当業者は、本発明のベクターがmCMV IE2プロモーターを単独で、又は任意の適切な既知のエンハンサーと組み合わせて含んで成ることがあることを理解するであろう。当業者はまた、本発明のベクターがmCMV IE2エンハンサーを単独で、又は任意の適当なプロモーターと組み合わせて含んで成ることがあることを理解するであろう。更に、本発明のベクターは、mCMV IE2プロモーターをmCMV IE2エンハンサーと組み合わせて含んで成ることがある。
【0025】
mCMV IE2遺伝子自体は、例えばMesserle et al., 1991により知られている。
【0026】
用語「プロモーター」は、本明細書で使用する場合、1又は複数のDNA配列の転写を調節するよう機能し、且つDNA依存性RNAポリメラーゼの結合部位及びプロモーター機能を制御するよう相互作用する他のDNA配列の存在により構造的に同定されるDNAの領域を意味する。プロモーターの機能的発現促進フラグメントは、プロモーターとしての活性を保持する短縮又は切断されたプロモーター配列である。プロモーター活性は、当業界で既知のあらゆるアッセイ、例えばレポーター遺伝子としてルシフェラーゼを用いるレポーターアッセイで測定されうる(Wood,1991 ; Seliger and McElroy, 1960 ; de Wet et al.(1985)、又はPromega(登録商標)より市販されているもの)。
【0027】
本発明によると、IE2プロモーターは、例えば、図1に示す通り、+1位からTATAボックスに及ぶ配列を含んで成ることがある。IE2プロモーターはまた、図1で表す配列のヌクレオチド1〜39に及ぶ(四角)、本明細書で「コアプロモーター」と称する配列を含んで成ることがある。当業者は、mCMV IE2プロモーターの配列がそれを作用可能に連結したDNA配列の転写を駆動する限りコアプロモーターよりも長いか、又は短いことがありうることを理解するであろう。例えば、IE2プロモーターはまた、コアプロモーターの上流に100〜200塩基対含んで成ることがある。そのようなプロモーター領域はまた「近位プロモーター」と称される。当業者は更に、用語「プロモーター」と「エンハンサー」(以下を参照のこと)とが正確に定義されておらず、その結果、命名法及び文脈によって、プロモーターがエンハンサー領域を含んで成ることがあり、あるいはエンハンサー領域がプロモーター領域を含んで成ることがある。
【0028】
用語「ベクター」は、宿主細胞による外因性DNAの複製及び/又は適切な発現のための宿主細胞への外因性DNAの伝達にとって有用な外因性DNA又はRNAのあらゆる担体を意味する。
【0029】
用語「作用可能に連結」は、本明細書で使用する場合、プロモーターの制御下で、遺伝子、cDNA又は他のDNAを発現するよう適切なフレーム内で転写される構造遺伝子又はcDNA又は他のあらゆるDNA配列とプロモーターとが機能的に融合していることを意味する。用語「作用可能に連結」とは、本明細書で使用する場合、DNA配列の直接的な融合に限定されない。
【0030】
用語「mCMVの完全な遺伝子」とは、自身(内因性、ウイルス性)の5’及び3’制御エレメントを有するマウスサイトメガロウイルスのウイルス遺伝子を意味する。
【0031】
「エンハンサー領域」は、1又は複数の遺伝子の転写を増大させるよう機能するDNAの領域を意味する。更に具体的には、用語「エンハンサー」は、本明細書で使用する場合、発現する遺伝子に対するその位置及び配向に関係なく遺伝子の発現を増強、増大、改善、又は回復させるDNA制御エレメントであり、そして複数のプロモーターの発現を増強、増大、改善、又は回復させることがある。好ましくは、エンハンサーは、複数のプロモーターからの発現を同時に増強させる。エンハンサーの機能的発現増強フラグメントは、増強活性を保持する短縮又は切断されたエンハンサー配列である。
【0032】
本発明のベクターは、好ましくはmCMV IE2上流領域のヌクレオチド−387〜−189を含むフラグメントを含んで成り、ここで、このヌクレオチドの番号付けはIE2遺伝子の+1に対するものである。これは、エンハンサー機能を有するフラグメントであり、そして本明細書ではIE2エンハンサーの短いバージョンとも称される。
【0033】
更に好ましい態様において、ベクターは、mCMV IE2上流領域のヌクレオチド−587〜−189を含むフラグメントを含んで成り、ここで、このヌクレオチドの番号付けはIE2遺伝子の+1に対するものである。このフラグメントはエンハンサー機能を有し、そして本明細書ではまたIE2エンハンサーの長いバージョンとも称される。
【0034】
本発明のベクターはまた、更に追加のmCMV IEエンハンサー、又はその機能的発現増強フラグメントを含んで成ることがあり、これは、本明細書では「CMV IE1エンハンサー」と称する。
【0035】
そのようなmCMV IE1エンハンサーは当業界で知られており、例えばUS4,968,615号による。それは、例えば図1に示す配列の−587〜−147位、又は−682〜−147位に及び、ここで、この番号付けはIE1遺伝子の+1位に対するものである。本発明に従い使用されうるmCMV IE1エンハンサーは更に、図1のIE1の+1位に対し、塩基対−1330〜−488に及ぶ配列を含んで成ることがある。エンハンサー領域は、更にプロモーターの全部又は一部を含んで成ることがある。
【0036】
IE2プロモーターに加えmCMVエンハンサーを用いることによって、注目のポリペプチドの発現は更に増大しうる。
【0037】
本発明によると、ベクターは更に、mCMV−IE2プロモーターと異なるプロモーター、又はその機能的発現促進フラグメントを含んで成る。
【0038】
好ましい態様において、本発明のベクターは、ウイルス起源、細胞起源又は人工起源の第一及び第二プロモーター、又はそれらの機能的発現促進フラグメントを含んで成る。
【0039】
本発明により、第二プロモーターの存在がmCMV IE2プロモーターからの注目のポリペプチドの効率的な発現をもたらすことが示されている。従って、本発明の好ましい態様において、ベクターは、mCMV IE2プロモーターを、第二プロモーター、又はその機能的発現促進フラグメントと組み合わせて含んで成る。追加の適当なプロモーターの例には、hCMVプロモーター、メタロチオネインプロモーター(MT)、SV40プロモーター、又は人工プロモーターが含まれる。好ましくは、第二プロモーターはmCMV IE2プロモーターの追加のコピーである。そのような追加のプロモーターは、構成的な又は制御された発現を促進することがある。制御された発現は、誘導性又は抑制性の発現、あるいはその両方であってもよい。
【0040】
好ましくは、そのような第二プロモーターは、mCMV−IE1遺伝子のプロモーター、又はその機能的発現促進フラグメントである。従って、第一プロモーターがmCMV−IE2プロモーター、又はその機能的発現促進フラグメントであり、且つ第二プロモーターがnCMV−IE1プロモーター、又はその機能的発現促進フラグメントであることが好ましい。
【0041】
mCMV−IE1プロモーターは、例えばWO87/03905より知られている。これは、図1の配列の最後の47bp(四角)、又は追加の100〜200bp上流配列(すなわち近位プロモーター)を含むコアプロモーターを含んで成ることがあり、あるいは最大−1330位(IE1の+1位に対して。図1を参照のこと)の全遺伝子間領域を含んで成ることがある。
【0042】
好ましい態様において、ベクターは、IE1プロモーター及びIE2プロモーターの両方並びにIE1エンハンサー及び新規IE2エンハンサー、あるいはそれらの任意な機能的発現促進フラグメントを含む配列番号1のDNA配列を含んで成る。
【0043】
非常に好ましい態様において、本発明のベクターにおけるプロモーター、又はそれらの機能的な発現促進フラグメントは、少なくとも1つのポリペプチドをコードするDNA配列と作用可能に連結している。本発明の更に好ましい態様において、本発明のエンハンサーは少なくとも1つのポリペプチドをコードするDNA配列と一緒に発現ベクター上に存在する。
【0044】
好ましくは、前記DNA配列は注目のタンパク質をコードしている。
【0045】
更に好ましくは、前記DNA配列はマーカータンパク質をコードしているか、あるいは増幅可能な遺伝子である。
【0046】
前記DNA配列がレポータータンパク質をコードしているのも好ましい。
【0047】
本発明のベクターが複数のプロモーターを含む場合、注目のタンパク質、マーカー、レポーター、増幅可能な遺伝子等のあらゆるコンビネーション又はサブコンビネーションが同一のプラスミドから発現されることがある。
【0048】
本発明によると、注目のポリペプチドは、IE2ポリペプチド自体と異なる任意のポリペプチドであってもよく、細胞外タンパク質、例えばペプチドホルモン、サイトカイン又は増殖因子、あるいは膜貫通タンパク質、例えば増殖因子受容体又はホルモン受容体、あるいは細胞内タンパク質、例えばキナーゼ、ホスファターゼ又はDNA結合タンパク質であってもよく、これは注目のポリペプチド又はそれが発現される宿主細胞の用途によって左右される。
【0049】
本発明に従う適当なマーカータンパク質は、例えばネガティブ選択マーカー又はポジティブ選択マーカー、あるいは増幅可能な遺伝子である。例としては、アデノシンデアミナーゼ(ADA)、アミノグリコシドホスホトランスフェラーゼ(neo)、ジヒドロ葉酸還元酵素(DHFR)、ハイグロマイシン−B−ホスホトランスフェラーゼ(HPH)、チミジンキナーゼ(tk)、キサンチン−グアニンホスホリボシルトランスフェラーゼ(gpt)、多剤耐性遺伝子(MDR)、オルニチンデカルボキシラーゼ(ODC)及びN−(ホスホンアセチル)−L−アスパラギン酸耐性(CAD)、又はピューロマイシンアセチルトランスフェラーゼ(PAC)が含まれる。更なる例には、特定の代謝経路の使用による選択に使用される遺伝子、例えばガラクトキナーゼ(Schumperli et al., 1982)、葉酸受容体(Zhu et al., 2001)、又は還元葉酸担体(Assaraf et al., 1992)、が含まれる。
【0050】
また更に好ましい態様において、注目のポリペプチドはレポーター遺伝子である。
【0051】
用語「レポーター遺伝子」又は「レポータータンパク質」は、本明細書で使用する場合、単純であり高価でない方法又は試薬を用いて同定することができ、且つ本発明のプロモーター領域又はその活性フラグメントに作用可能に連結することができる遺伝子産物をコードする遺伝子を意味することが意図される。レポーター遺伝子は、スクリーニングアッセイにおいて転写活性を決定するのに使用されることがあり(例えば、Goeddel (ed. ), Methods Enymol., Vol. 185, San Diego. Academic Press, Inc. (1990)を参照のこと)、例えばレポーター遺伝子としてルシフェラーゼが用いられる(Wood, 1991; Seliger and McElroy, 1960 ; de Wet et al. (1985), 又はPromega(登録商標)より市販されているもの)。
【0052】
例は、ルシフェラーゼ、緑色蛍光タンパク質、アルカリホスファターゼ、O−ガラクトシダーゼ、あるいは西洋ワサビペルオキシダーゼ又は他のタンパク質との分子内組み合わせ、例えば緑色蛍光タンパク質(GFP)又は強化緑色蛍光タンパク質(EGFP)とピューロマイシンアセチルトランスフェラーゼ遺伝子(Abbate et al., 2001)、あるいはそれらの組み合わせから選択される。
【0053】
本発明の基となる実験データは、注目のポリペプチドの効率的な同時発現が、共に同一のプラスミド上に存在するIE2プロモーター及びIE1プロモーターで達成されうることを示した。従って、更に好ましい態様において、mCMV IE2プロモーター、及びmCMV−IE1プロモーターの両方、又はそれらの機能的発現促進フラグメントは、それぞれポリペプチドと作用可能に連結している。
【0054】
高い発現レベルは、両プロモーターが両方向的構造に存在する場合に達成されうる。従って、mCMV−IE2プロモーター、又はその機能的発現促進フラグメント、及びプロモーター、特に、mCMV−IE1プロモーター、あるいはその機能的発現促進フラグメントは、両方向的に配列される。
【0055】
用語「両方向的に配列」とは、本明細書で使用する場合、プロモーターが相対する方向に転写を駆動させることを意味することが意図される。このプラスミドDNAの配列は、ベクターの「両方向的構造」とも称される。
【0056】
mCMV−IE1若しくはmCMV−IE2遺伝子のプロモーター、又はその機能的発現促進フラグメント、あるいはmCMV−IE2プロモーターと組み合わせて又はIE2エンハンサーと組み合わせて使用されうる任意な追加のプロモーターは、更に翻訳開始シグナルを含むことがある。
【0057】
更に好ましい態様において、mCMV−IE2遺伝子のプロモーター、又はその機能的発現促進フラグメント、あるいはmCMV IE2エンハンサーは、転写を制御し、又は転写に影響を及ぼす他のエレメントと連結される。そのようなエレメントは、RNAのプロセシング、安定性又は翻訳の効率に影響を及ぼすことがある。適当なエレメントの例は、5’UTR、イントロン、3’UTR(例えば、Mazumder et al., 2003を参照のこと)、mRNA3’末端プロセシング配列(例えば、ポリアデニル化部位)、及びポリシストロン性の発現のためのIRES配列(例えば、Mountford and Smith, 1995)から成る群から選択される。
【0058】
ポリシストロン性mRNAの発現のためにIRESエレメントを使用するのが好ましく、ここで、コード配列は当該IRESによって分離されている。この利点は、複数の注目のポリペプチドが同一のmRNAから、そしてその結果同一のプロモーターから発現しうることである。
【0059】
より更に好ましい態様において、mCMV−IE2遺伝子のプロモーターは、単独で、あるいはmCMV IE1遺伝子のプロモーター、又は任意な他の天然プロモーター若しくは人工プロモーター、又はIE2エンハンサーと組み合わせて、追加の発現促進配列、例えばインスレーター、境界エレメント、LCR(例えば、Blackwood and Kadonga (1998)により説明されているもの)又はマトリックス/足場付着領域(例えば、Li et al., 1999により説明されているもの)と連結されることがある。
【0060】
当業者は、本発明のベクターがまた、追加のエンハンサー、例えば周知のSV40エンハンサー又はhCMVエンハンサーを含むことがあることを理解するであろう。
【0061】
本発明によると、第一プロモーター、好ましくはmCMV IE2プロモーターと作用可能に連結したポリペプチド、と、第二プロモーター、好ましくはmCMV IE1プロモーターと作用可能に連結したポリペプチド、とは同一であってもよい。この場合、同一の遺伝子の2つのコピーが同一のベクター上に存在するが、これらは2つの異なるプロモーターの調節下にある。従って、注目のポリペプチドをコードする遺伝子の単一のコピーからの発現よりも優れている発現率を達成するのが可能な場合がある。
【0062】
別の態様において、第一プロモーター、好ましくはmCMV IE2プロモーターと作用可能に連結したポリペプチド、と、第二プロモーター、好ましくはmCMV IE1プロモーターと作用可能に連結したポリペプチドとは異なる。従って、互いに別々に、しかし同一の宿主細胞において発現させることが望ましい場合、本発明は、2つの異なるポリペプチド、例えば選択マーカーと注目のタンパク質の同時発現のための効率的なベクター、同一タンパク質の2又はそれ以上のサブユニットの同時発現のための効率的なベクターを提供し、あるいは同一タンパク質の異なるドメインのものでさえも提供する。
【0063】
当業者は、本発明の複数の発現ベクターが、同一細胞内に同時トランスフェクションされることがあり、そして多数のタンパク質及び/又は極めて複雑な多量体タンパク質のサブユニットの発現について役割を果たすことがあることを理解するであろう。
【0064】
好ましくは、第一プロモーター、例えばmCMV IE2プロモーターと作用可能に連結したポリペプチドは、二量体又は多量体タンパク質の第一サブユニットであり、そして第二プロモーター、例えばmCMV IE1プロモーターと作用可能に連結したポリペプチドは、二量体又は多量体タンパク質の第二サブユニットである。二量体タンパク質の2つのサブユニットの同時発現は本発明において好ましい。同一タンパク質の2つのサブユニットの同時発現は特に有利であり、これは、両プロモーターからの発現が、使用するプロモーターの強度によって同程度の量のサブユニットの産生、又は既定の比率の両ポリペプチドの産生をもたらしうるためである。当該サブユニットは、続いて、同一細胞内で構築されて成熟タンパク質を形成しうる。
【0065】
本発明のベクターを用いて発現するのに適した二量体タンパク質の好ましい例は、ペプチドホルモン、例えばヒトFSH、ヒトLH、ヒトTSH及びヒトCGのα鎖及びβ鎖である。2つのサブユニットのうちいずれかは、本発明におけるプロモーター、好ましくはmCMV IE2プロモーターと連結されうる。当業者は、他の種由来のホルモン、例えばウマ、ブタ、ウシのホルモンが、例えば組換えポリペプチドの用途によって、本発明に従い同等に使用されうることを理解するであろう。
【0066】
本発明の別の態様において、第一サブユニットはイムノグロブリンの重鎖であり、そして第二サブユニットは軽鎖であり、あるいはその反対も同様である。適当なイムノグロブリンの好ましい例はIgGである。そのようなイムノグロブリンは治療用のヒト化抗体又はヒト抗体であってもよい。そのようなヒト化抗体の非常に好ましい例は、Raptive(登録商標)の商標名を有するヒト化抗CD11抗体である。
【0067】
多くの注目のポリペプチドが本発明のベクターを用いて発現されうる。好ましい態様において、当該ポリペプチドは、絨毛性ゴナドトロピン(chorionic gonadotropin)、卵胞刺激ホルモン、ルトロピン−絨毛性ゴナドトロピン(choriogonadotropic)ホルモン、甲状腺刺激ホルモン、ヒト成長ホルモン、インターフェロン(例えば、インターフェロンベータ−1a、インターフェロンベータ−1b)、インターフェロン受容体(例えば、インターフェロンガンマ受容体)、TNF受容体p55及びp65、インターロイキン(例えば、インターロイキン−2、インターロイキン−11)、インターロイキン結合タンパク質(例えば、インターロイキン−18結合タンパク質)、抗CD11a抗体、並びにそれらの突然変異タンパク質、フラグメント、可溶性形態、機能的誘導体、融合タンパク質から成る群から選択される。
【0068】
他の好ましい注目のポリペプチドには、例えば、エリスロポエチン、顆粒球コロニー刺激因子、顆粒球マクロファージコロニー刺激因子、下垂体ペプチドホルモン、閉経ゴナドトロピン、インスリン様増殖因子(例えば、ソマトメジンC)、ケラチノサイト増殖因子、グリア細胞系由来神経栄養因子、トロンボモジュリン、塩基性線維芽細胞増殖因子、インスリン、第VIII因子、ソマトロピン、骨形成タンパク質−2、血小板由来増殖因子、ヒルジン、エポイエチン(epoitetin)、組換えLFA−3/IgG1融合タンパク質、グルコセレブロシダーゼ、並びにそれらの突然変異タンパク質、フラグメント、可溶性形態、機能的誘導体、融合タンパク質が含まれる。
【0069】
本発明の第二の側面は、少なくとも1つの上述のベクターでトランスフェクションされた宿主細胞に関する。当業者は、当該宿主細胞が本発明の2又はそれ以上のベクターで同等に同時トランスフェクションされうることを理解するであろう。
【0070】
多くの宿主細胞が本発明に適しており、例えば広範な真核生物由来の一次又は樹立細胞系、例えば植物動物細胞及び動物細胞、哺乳類又はヒト細胞である。例えば、適当な宿主細胞は、CHO細胞、COS細胞、CV1細胞、マウスL細胞、HT1080細胞、BHK−21細胞、HEK293細胞、NIH−3T3細胞、LM細胞、YI細胞、NS0及びSP2/0マウスハイブリドーマ細胞等、Namalwa細胞、PRMI−8226細胞、ベロ細胞、WI−38細胞、MRC−5細胞あるいは他の不死化細胞及び/又は形質転換細胞を含む。
【0071】
好ましくは、宿主細胞はCHO細胞であり、そして更に好ましくはCHO−S細胞であり、これは例えば、Shotwellら(1982, J. Biol. Chem. 257: 2974-2980)により説明されている。CHO細胞は、雌のチャイニーズハムスター由来の卵巣の生検からPuck(J.Exp.Med. 108, 945, 1958)により最初に培養された。これらの最初の細胞から、種々の特徴を有する多数の亜系統が調製された。これらのCHO細胞系の1つであるCHO−K1はプロリン要求性であり、ジヒドロ葉酸還元酵素(DHFR)遺伝子について二倍体である。この細胞系由来の別の系は、DHFR欠損CHO細胞系(CHO DUK B11)(PNAS 77, 1980, 4216-4220)であり、これは1つのDHFR遺伝子の突然変異、続いて、その他の遺伝子の損失の結果としてDHFR機能の損失を特徴とする。
【0072】
これらの細胞の全てが、本発明のベクターにより、一過性、又は半安定(例えば、ベクターがエピソームである場合)又は安定(例えば、ゲノム内に組み込まれている状態)の様式でトランスフェクションされうる。注目のポリペプチドを構成的に発現するクローンを樹立するためには、安定トランスフェクションが好ましい。
【0073】
本発明のIE2プロモーター、又はIE2エンハンサーは、「内因性遺伝子活性化(endogenous gene activation)」と称される技術の枠内で制御エレメントとして使用されることがある。本発明のベクターは、相同組換えにより活性化されることが予想されるゲノムの遺伝子座に導入されることがあり、その結果制御配列(IE2プロモーター及び/又はエンハンサー)が、誘導又は増強に発現を必要とする注目の遺伝子と作用可能に連結される。この技術は、例えばWO91/09955に記載されている。
【0074】
第三の側面において、本発明は、注目のポリペプチドの産生方法であって、宿主細胞を本発明のベクターでトランスフェクションする工程を含んで成る方法に関する。
【0075】
注目のポリペプチドの性質によって、本発明の方法は、細胞培養の上清から収集されうる分泌タンパク質又はポリペプチド、あるいは既知の方法により細胞から単離されうる細胞膜タンパク質又は細胞内タンパク質をもたらす。本発明により産生されるポリペプチドは、あらゆる目的について役割を果たすことがあり、そして好ましくはそれはヒト又は動物に対する投与が意図される治療用のタンパク質である。
【0076】
用途によって、自身に前記ポリペプチドを組み込ませている細胞は、本発明の方法の産物でありうる。そのような細胞は、例えば細胞ベースの治療に使用されうる。
【0077】
第四の側面において、本発明は、注目のポリペプチドの産生方法であって、本発明の宿主細胞を培養する工程を含んで成る方法に関する。
【0078】
好ましい態様において、前記方法は更に、注目のポリペプチドを宿主細胞又は細胞培養上清から単離する工程を含んで成る。この工程は、細胞培養上清から単純に単離されうる分泌タンパク質の場合に実施するのが特に有利であり、そして簡便である。しかしながら、この工程は、宿主細胞から単離されうる細胞膜、又は細胞内区画からポリペプチドを単離するのに同等に適用される。
【0079】
当該工程は、一過性、安定性、エピソーム又はウイルスの発現系において使用されうる。以下の実施例に示す通り、本発明のベクターは、安定な発現系において使用される場合、所望のタンパク質の特に強力な発現をもたらした。従って、好ましい態様において、トランスフェクションは安定トランスフェクションである。
【0080】
第五の側面において、本発明のベクターは、注目の遺伝子の発現に使用される。注目の遺伝子は、例えば、上述の注目のポリペプチドのいずれかをコードする遺伝子であってもよい。本発明のベクターはまた、マーカー遺伝子、レポーター遺伝子、増幅可能な遺伝子等の発現に使用されうる。
【0081】
好ましくは、ベクターは、2又はそれ以上の注目の遺伝子又はcDNAの同時発現に使用される。それはまた、1つの注目の遺伝子及び1つのマーカー遺伝子又はレポーター遺伝子又は増幅可能な遺伝子等の同時発現に使用されうる。
【0082】
本発明の枠内で、驚くべきことに、本発明のベクター、特にIE2プロモーター、IE2エンハンサー及びIE1プロモーターを含んで成るベクターが、レポーター遺伝子及び注目の遺伝子を高度に発現したクローンの同定をもたらしたことが示された。従って、第六の側面において、本発明は、大量の注目の遺伝子を発現するクローンの選択のための本発明のベクターの使用に関する。
【0083】
第七の側面において、本発明は、プラスミド又はDNAベースの治療あるいは遺伝子治療における使用のための薬物の製造のための本発明のベクターの使用に関する。
【0084】
第八の側面において、本発明の宿主細胞は、細胞ベースの治療のための薬物の製造に使用される。細胞ベースの治療がヒトの治療を意図する場合、宿主細胞がヒト細胞又は細胞系であることが好ましく、更に好ましくは処置される患者由来の細胞又は細胞系である。
【0085】
本発明を十分に説明してきたが、当業者は、広範囲の同等のパラメーター又は濃度及び条件において、本発明の精神及び範囲を逸脱することなく、且つ過度の実験を必要とすることなく実施されうることが理解されよう。
【0086】
本発明はその特定の態様と関連して説明してきたが、更なる修正が可能であることが理解されよう。本願は、本発明が関連する業界内の既知のプラクティス又は慣行に入る場合、そして特許請求の範囲に従い上述の本質的特徴に適用されうる場合、通常本発明の原理に従い、且つ本願の開示からの前記逸脱を含む本発明のあらゆる変更、使用又は脚色を網羅することが意図される。
【0087】
本明細書で引用する全ての参考文献、例えば論文又は抄録、公開された又は公開されてない米国又は外国特許出願、交付された米国又は外国特許あるいはあらゆる他の参考文献が、引用により本明細書にその全体、例えば引用された参考文献において提示されている全てのデータ、表、図及び文書が組み入れられる。更に、当該参考文献において引用された参考文献の全内容も、引用によりその全体が組み入れられる。
【0088】
既知の方法の工程、常用の方法の工程、既知の方法又は常用の方法への言及は、本発明のあらゆる観点、記載又は態様が関連技術において開示され、教示され又は示唆されていることを承認するものではない。
【0089】
具体的な態様の前述の記載は、他の者が当業界の技術範囲内の知識(本明細書で引用する参考文献の内容を含む)を応用することにより、過度の実験無しに、本発明の一般的概念を逸脱することなく、種々の応用のためにそのような具体的な態様を容易に修飾及び/又は採用することができる本発明の一般的な性質を非常に十分に明らかにしている。従って、そのような採用及び修飾は、本明細書に示す教示及び手引きに基づき、開示された態様の均等の範囲内の意味の範囲内であることが意図される。本明細書の用語及び語法は説明目的であって、限定目的ではなく、その結果、本明細書の用語及び語法は、当業界の通常の技術のうちの1つの知識と組み合わせて、本明細書で示す教示及び手引きを考慮して当業者によって解釈されるべきである。
【実施例1】
【0090】
実施例1:一過性トランスフェクションにおける発現ベクターの評価
材料と方法
材料
細胞:CHO−S、起源Gibco/Invitrogen(カタログ番号11619)
図2及び3に表すように構築したプラスミドDNAは、Nucleobond PC 500キット(Macherey-Nagelカタログ番号740754)を用い、製品プロトコールに従い、一晩生育した標準培地から単離した。
【0091】
トランスフェクション:リポフェクタミン(Invitrogen、カタログ番号18324−012)
フォーマット:24ウェルプレート
細胞:指数増殖期のCHO−S細胞をトランスフェクション24時間前に継代した。低い細胞密度での定常期を回避するために、細胞を0.75x106細胞/mlに希釈した。トランスフェクションする細胞の総計は1,5x105であり、これを24ウェルプレート内でウェル当たり100μlの無血清培地SFM II(Invitrogen、カタログ番号12052−114)中で再懸濁した。
【0092】
トランスフェクション混合物は以下の通りである:
A)リポフェクタミン:2μl
SFM II培地:48μl
全量50μl
B)DNA:1μg(50ng発現ベクター+950ngのキャリアプラスミド、pBluescript II KS(+), Stratagene、カタログ番号212205−01)
SFM II培地:50μlに達するまで補足。
【0093】
溶液AとBを混合し、そして30分間室温でインキュベートした。
【0094】
この混合物を、1.5x105細胞を含む100μlのSFM II培地に添加した。細胞をインキュベーターに戻し、そして37℃、5%CO2で3時間インキュベートした。続いて、400μlのSFM II培地を添加してリポフェクタミンを希釈した。続いて、細胞を解析のための試料採取前に更に48時間インキュベートした。全てのトランスフェクションは3回一組で実施した。
【0095】
ルシフェラーゼ測定
PromegaのBright-Gloルシフェラーゼアッセイシステム(カタログ番号E2610)をルシフェラーゼ測定のために製品ガイドラインに従い使用した。
【0096】
要約すると、細胞懸濁液を複数回上下にピペッティングすることでホモジェナイズし、そして50μlのアリコートを抜き取り、そしてそれを白い96ウェルプレート(Nunc、カタログ番号236108)内に据えた。続いて、50μlの再構成したBright-Glo試薬を添加し、そして5分間室温でインキュベートした。発光をCentro LB 960ルミノメーター(Berthold Technologies)上で5秒の収集時間の間に測定した。
【0097】
結果
CHO−S細胞ベースの一過性発現系において使用した発現ベクターコンストラクトを図2に表す。この一連の実験において、ルシフェラーゼは遺伝子発現の評価のためのレポーター遺伝子として使用した。CHO−S細胞内でほとんど活性がない、プロモーターを全く有さないベクター(コンストラクトA)又はSV40プロモーター/エンハンサーを有するベクター(コンストラクトB)のいずれかをコントロールとして使用した。
【0098】
ベクターA〜Gによる一過性トランスフェクション実験の結果を図4に示す。コンストラクトC及びFにおいて、ルシフェラーゼ発現はIE1プロモーターにより駆動される。両コンストラクトはルシフェラーゼ発現をもたらした。コンストラクトCは更に、IE1プロモーターに対し両方向性に配列されたIE2プロモーターを含んだ。この両方向的な配列は、IE1プロモーター単独の使用(コンストラクトF)と比較して、IE1プロモーター(コンストラクトC)からの発現効率を低下させた。0.68kbの短いバージョンのIE1プロモーター(コンストラクトG)は、より長いバージョン(コンストラクトF)よりも効率的でなかった。
【0099】
同一コンストラクト内の第二プロモーターの存在、不在に関係なく、IE2プロモーターは効率的にルシフェラーゼ発現を駆動させ(コンストラクトD及びE)、そしてその結果注目のポリペプチドの発現のための発現ベクターにおけるプロモーターエレメントとして使用されうる。
【0100】
IE1プロモーターと対照的に、IE2プロモーターは、単独で使用した場合(コンストラクトE)、両方向的構造において使用する場合(コンストラクトD)よりもあまり効率的でなかった。従って、これは両方向性の発現における使用に特に適している。
【0101】
実施例2:安定トランスフェクションにおける発現ベクターの評価
材料と方法
材料
細胞:CHO−S、Gibco/Invitrogen(カタログ番号11619)由来
プラスミドDNA(図2に従う)は、Nucleobond PC 500キット(Macherey-Nagelカタログ番号740754)を用い、製品プロトコールに従い、一晩生育した標準培地から単離した。
【0102】
トランスフェクション:リポフェクタミン(Invitrogen、カタログ番号18324−012)
安定トランスフェクションのために、T75フラスコを使用した。指数増殖期のCHO−S細胞をトランスフェクション24時間前に継代した。低い細胞密度での定常期を回避するために、細胞を0.75x106細胞/mlに希釈した。トランスフェクションする細胞の総計は5x106であり、これをT75フラスコ中7mlのSFM II培地(Invitrogen、カタログ番号12052−114)中で再懸濁した。
【0103】
トランスフェクション混合物は以下の通りである:
A)リポフェクタミン:52.1μl
SFM II培地:517.9μl
全量570μl
B)DNA:10μgの直線型プラスミドDNA(9μgのLuc発現ベクター+1μgの選択用プラスミド:SV40駆動ピューロマイシン耐性遺伝子。全てのプラスミドをPvuIで直線化した)。
SFM II培地は570μlになるよう補足された。
【0104】
AとBを混合し、そして30分間室温でインキュベートした。5x106細胞を含む7mlのものを添加し、そして細胞を37℃、5%CO2のインキュベーター内に3時間戻した。続いて、培養物を800gで3分間遠心し、そして細胞のペレットを5mlのEX−CELL325(JRH、カタログ番号14335−1000M)中で再懸濁し、1xHT及び4.5mMのL−グルタミン(100xHT、Invitrogen、カタログ番号11067−030、L−グルタミン200nm、Sigma、G-7513)を補充した。5mlのEX−CELL325を直接T75フラスコに添加して接着している細胞を再懸濁し、そして当該懸濁液に添加した。合計で5x106細胞が10mlのEX−CELL325培地中にあった。
【0105】
選択手順:
選択は、培地を交換し、そして10μg/mlピューロマイシン(Sigma, P8833)を含む1x106細胞/ml(EX−CELL325)になるよう希釈することによりトランスフェクションから48時間後に行った。2日毎に、細胞を計数し、遠心し、そして新しい選択培地中で1x106生細胞に再懸濁した。生存度はこれらの時点で調べた。21〜35日後、選択は完了し、そして細胞の生存度は80%超であった。
【0106】
ルシフェラーゼ測定
培養物をサンプリングする2時間前に、細胞を計数し、そして培養物を0.2x106生細胞/mlに希釈した。
【0107】
PromegaのBright-Gloルシフェラーゼアッセイシステム(カタログ番号E2610)をルシフェラーゼ測定のために製品ガイドラインに従い使用した。
【0108】
要約すると、細胞懸濁液を複数回上下にピペッティングすることでホモジェナイズし、そして50μlのアリコートを抜き取り、そしてそれを白い96ウェルプレート(Nunc、カタログ番号236108)内に据えた。続いて、50μlの再構成したBright-Glo試薬を添加し、そして5分間室温でインキュベートした。発光をCentro LB 960ルミノメーター(Berthold Technologies)上で5秒の収集時間の間に測定した。
【0109】
続いてルシフェラーゼ活性を試験した試料中の生細胞の数、すなわち典型的には1x104細胞で正規化した。
【0110】
結果
コンストラクトC,D,E及びF(図2を参照のこと)を安定な発現系で試験した。結果を図5に表す。IE2プロモーターを単独で含んで成るコンストラクトEは、この系において最も強力な発現をもたらした。両方向の配列にIE1プロモーターが一緒に存在する場合(コンストラクトD)、IE2プロモーターは尚も、IE1プロモーターが単独で(コンストラクトF)又はIE2プロモーターとの両方向の配置で(コンストラクトC)駆動させる発現よりも優れたルシフェラーゼ発現をもたらした。
【0111】
実施例3:両方向性発現ベクターからの注目の2つのポリペプチドの同時発現
材料と方法
トランスフェクションは実施例1及び2に記載のとおり実施した。要約すると、CHO−S細胞(懸濁液中。Gibco SFMII)を900、500、300及び100ngのベクターDNA(コンストラクトC−2、図3を参照のこと)を24ウェルプレートにおいて一過性トランスフェクションした(各条件につき3回一組)。トランスフェクションの2日後、ルシフェラーゼアッセイは3回一組のものに由来する細胞抽出物を用いて行い、RLU(相対光単位)で表した。同じウェルからの上清を細胞の溶解前に採取し、プールし、そしてELISAでIL18BPについてアッセイした(下文を参照のこと)。
【0112】
IL−18BP ELISA
上清中の組換えヒトIL−18BP(rhIL−18BP)の量を、標準的なELISAにより、ビオチンとカップリングした、プロテインG精製モノクローナル抗rh−IL−18BP抗体を用いて測定した。Extravidine-HRP (Sigma)を検出試薬として用いた。
【0113】
図9は、両方向性mCMVプロモーターコンストラクト(図3を参照のこと)による安定トランスフェクションから90日目に48個のクローンが発現したIL−18BPの量(ng/ml)及びルシフェラーゼの量(RLU)を示す。ルシフェラーゼの検出限界は約5000RLUであり、そしてIL−18BPは2.5ng/mlであった。
【0114】
結果
この一連の実験において、図3で表すコンストラクトC−2からの2つの遺伝子の同時発現がアッセイされた。マーカー遺伝子(ルシフェラーゼ)はIE1プロモーターから発現し、そして注目の遺伝子であるIL−18BPはIE2プロモーターから発現した。IL−18BPは分泌タンパク質である。プロモーターは両方向的構造において配列され、すなわち両プロモーターは同時に反対方向に発現を駆動させた。
【0115】
この研究結果を図6〜9に表す。図6は、一過性発現系において測定される、RLUで表されるルシフェラーゼ発現の程度を示す。同一の一過性発現系において、IL−18BPは、ELISAにより細胞培養上清において測定した。図7は、分泌されたIL−18BPの結果(ng/ml)を示す。図8は、各一過性発現実験におけるIL−18BP対ルシフェラーゼの比率を示す。
【0116】
図6〜8に示す通り、異なる量のプラスミドDNAをトランスフェクションに使用した。使用した全ての量のDNAがルシフェラーゼとIL−18BPの両方の発現をもたらした。驚いたことに、IL−18BP及びルシフェラーゼについて一貫して、最低量のトランスフェクションされたDNA、すなわち100ngのベクターDNAにより最良の結果が得られた。
【0117】
更に、安定な比率(図8)は、両プロモーターの発現能力間の一定の関係を示す。
【0118】
結論として、これらのデータは、両遺伝子が2つのプロモーター単位から同時に発現することを証明し、更に、両発現単位が両方向性のプロモーター構造において十分に機能的であることを示している。
【0119】
続いて、コンストラクトC−2は安定トランスフェクションされ、そしてルシフェラーゼ及びIL−18BPの発現は48個の独立したクローンにおいてアッセイされた。
【0120】
安定トランスフェクションは、トランスフェクション後に使用した培地がProCho5(Cambrex、カタログ番号12766Q)であったことを除き、実施例2に記載のプロトコールに従い実施した。
【0121】
1つの細胞のクローニングのために、プールを384ウェルプレート(Nunc、カタログ番号164688)内に0.5細胞/ウェル(70μl/ウェル)の密度で、Multidropディスペンサー(ThermoLabsystems、カタログ番号5840150)を用いて配列した。8日後、192個のクローンをランダムに選び、そしてルシフェラーゼ発現について解析した。最高のLuc発現を有する48個のクローンを選択し、そしてルシフェラーゼ(ルミノメーターで)及びIL−18BP(手作業によるELISAで。上文を参照のこと)について再びアッセイした。
【0122】
図9は、この実験結果を示す。48個全てのクローンが、量の変化はあるが、ルシフェラーゼ及びIL−18BPを発現した。
【0123】
実施例4:最小エンハンサー配列の定義
材料と方法
プラスミドDNA
短縮されたmCMVプロモーターを含む一連のベクターが、PCR(ポリメラーゼ連鎖反応)及びmCMVpに沿って一致している特異的プライマー(表1)を用いて構築した。
【0124】
PCR条件は以下の通りである:
混合液:
10ngのDNAプラスミド(prevmCMV-ルシフェラーゼ(ΔXhoI)、図2のコンストラクトE)
50pmolのセンス、アンチセンス両方のプライマー(以下の表1を参照のこと。全てコモンアンチセンス)
200μMの各dNTP(dATP、dTTP、dGTP、dCTP)
1xDynazymeバッファー(1.5mMのMgCl2を含む)
4ユニットのDynazyme II DNAポリメラーゼ (Finnzymes、カタログ番号F−501S)
【0125】
【表1】
【0126】
5μlの各PCR反応液を1%アガロースゲル上に充填した。正確な長さを有するバンドを切り出し、そしてQiagen Minilute Gel Extractionキット(カタログ番号28606)を用いてクローニング前に精製した。
【0127】
【表2】
【0128】
mCMVpから保持された塩基対の数に相当する位置は、基準としてIE2から+1の位置を考慮すると、−1076、−783、−587、−387及び−189である。
【0129】
クローニングストラテジーは、プロモーターフラグメントのいずれについても同じであり、PCRは完全長mCMVp(prevmCMV−ルシフェラーゼ(ΔXhoI)、すなわち図2のコンストラクトE)に対し実施した。続いてフラグメントは、特異的プライマー配列の先端に加えられた2つの制限部位をXhoI/EcoRIで消化された。続いて、プロモーター配列は、それをXhoI/EcoRIで消化することによりコンストラクトEから除き、そしてより短いバージョンを全く同じ部位に挿入した。
【0130】
コンストラクトの評価は、一過性リポフェクタミントランスフェクション、続くルシフェラーゼ測定により行った。追加の材料と方法は実施例1に記載のとおりである。この実施例で使用したSFM培地はProCho5(Cambrex、カタログ番号12766Q)であった。
【0131】
結果
ルシフェラーゼ遺伝子を駆動させるmCMV IE2プロモーターを含んで成るベクターH〜N(図10.a)は、IE2プロモーターからの高い発現レベルに必要な最小配列を定義するために構築された。
【0132】
7個の発現ベクターコンストラクトH〜Nは、CHO−S細胞ベースの一過性発現系において使用した。結果を図10.bに表す。コンストラクトLはこの系において最も強力なルシフェラーゼ発現を保持している最も短いコンストラクトである。コンストラクトMでさえも、コンストラクトH〜Lで達成された発現レベルの約30%のレベルのルシフェラーゼ発現をもたらした。コンストラクトNで得られたルシフェラーゼ発現は非常に低かったが、尚も有意であり、これはTATAボックス及びイニシエーターを含む生産的な転写開始部位について予想される基礎のプロモーター活性を示している。
【0133】
結論として、これらの実験は、本明細書でmCMV IE2エンハンサーと称するmCMV IE2上流領域の新規エンハンサーを定義する。上記実験において、当該IE2エンハンサーは、コンストラクトN内で保持された最小IE2プロモーターからの転写を増大させる。高いレポーター遺伝子発現に必要とされる最小配列は−587〜−189bpのフラグメント(コンストラクトL)内にあり、そして−387〜−189bpフラグメントを含んで成るコンストラクトもルシフェラーゼ発現を増強させた(コンストラクトM)。
【0134】
実施例5:SV40最小プロモーターを活性化させる新規IE2エンハンサー。
新規IE2エンハンサーが実際にエンハンサー活性に必要な全ての基準を満たすか、すなわち、(1)位置、(2)配向、及び(3)プロモーターの同一性、とは無関係に発現を増強させるか否かを評価するために、追加の実験を実施した。そのために、コンストラクトO〜Vを構築し、新規IE2エンハンサーが、SV40プロモーターに対する配向、距離及び位置(5’又は3’)とは無関係に異種プロモーターであるSV40プロモーターの発現を増強しうることを評価した。コンストラクトW、X及びYはコントロールとし、ここで、WはSV40エンハンサーを含み、Xは全くエンハンサーを含まないがSV40プロモーターを含み、そしてYはエンハンサーもプロモーターも含まない。
【0135】
ベクターの構築
SV40プロモーターのみを含むpSV−Lucと称されるベクター(図11(a)のコンストラクトX)は、SV40プロモーター駆動ルシフェラーゼ遺伝子、及び前記遺伝子の3’側に位置するSV40エンハンサー、を含むpGL3−Ctrl(Promega, E2741)(コンストラクトW)、及びプロモーターとエンハンサーの両方を欠いているpGL3−Basic(Promega, E1751(コンストラクトY)から構築した。
【0136】
要約すると、pGL3−CtrlをNotI/XbaIで切り出して、SV40プロモーターを含むフラグメント、続いてルシフェラーゼ遺伝子を含むフラグメントを単離した。同様に、pGL3−BasicをNotI/XbaIで切り出し、そして、3’エンハンサーの無い、ポリA領域を含むベクターのバックボーンを単離した。2つのフラグメントを組み合わせることで、pSV−Luc(コンストラクトX)を得た。
【0137】
このベクターのSV40プロモーターの5’領域は、IE2エンハンサー配列(−587〜−189)を両方の配向でクローニングすることにより操作し、これらをp5'enh-SV-Luc(コンストラクトO)及びp5'reverse enh-SV.Luc(コンストラクトQ)と称した。更に、IE2エンハンサー配列(−587〜−189)もルシフェラーゼの3’領域に両方の配向でクローニングした。生じたベクターをp3'enh-SV-Luc+(コンストラクトS)及びp3'reverseenh-SV.Luc.(コンストラクトU)と称した。
【0138】
同じ手順をIE2エンハンサーの短いバージョン、すなわち−587〜−189の代わりに−387〜−189を有するもので実施し、そしてコンストラクトP,R,T及びVと称した。図11.aを参照のこと。
【0139】
コンストラクトO、P:レシピエントベクターは、NheI/SmaIで消化することにより開裂させたpSV−Luc+(図11.aのコンストラクトX)を用いた。完全長のエンハンサーをNdeIによる消化、続いて、クレノーポリメラーゼを用いた平滑末端化反応、精製及びNheIによる消化により単離した。同じストラテジーを短いエンハンサーコンストラクトの構築に利用した。
【0140】
コンストラクトQ、R:レシピエントベクターは、XhoI/SmaIで消化することにより開裂させたpSV−Luc+(図11.aのコンストラクトX)を用いた。完全長のエンハンサーをNdeIによる消化、続いて、クレノーポリメラーゼを用いた平滑末端化反応、精製及びXhoIによる消化により単離した。同じストラテジーを短いエンハンサーコンストラクトの構築に利用した。
【0141】
コンストラクトS、T、U及びV:レシピエントベクターは、BamHIによる消化、続くクレノーポリメラーゼを用いた平滑末端化により開裂させたpSV−Luc+(図11.aのコンストラクトX)を用いる。完全長のエンハンサーをNdeI/NheIによる消化、続いて、クレノーポリメラーゼを用いた平滑末端化反応により単離した。クローニングにより両方の配向が可能となり、これらを制限解析で確認した。両方の配向は解析のために維持された。同じストラテジーを短いエンハンサーコンストラクトの構築に利用した。
【0142】
コンストラクトpGL3−Basic(コンストラクトY)は発現しないコントロールとしての役割を果たした。pGL3−Ctrl(コンストラクトW)はSV40プロモーター/エンハンサーベクターとしての役割を果たした。pSV−LucはSV40プロモーターを単独で有するコントロールとした(コンストラクトX)。
【0143】
トランスフェクション及びルシフェラーゼ測定は前述の実施例のように実施した。
【0144】
結果
図11.aのコンストラクトO〜Yで得られた結果を図11.bに表す。エンハンサー無しのSV40プロモーターコンストラクトを追加されたエンハンサー活性のための基線として採用し、そしてコンストラクトXで測定された活性を1と設定した。長い又は短いIE2エンハンサーを有する全てのコンストラクトが、レポーター遺伝子の発現をもたらした。長いバージョンは、SV40プロモーターからのレポーター遺伝子の高発現を一貫してもたらし、これはSV40プロモーターとSV40エンハンサーの組み合わせ(コンストラクトO)で得られた発現レベルよりもはるかに高かった。従って、この実験は、位置及び配向と無関係に異種プロモーターを活性化させる正規のエンハンサーとして、−587〜−189の配列及び−387〜−189の配列を明確に定義する。
【0145】
実施例6:長いIE2エンハンサーのバージョン(−537〜−189)とhCMVエンハンサーとの比較
リポフェクタミンによるトランスフェクション、その後のルシフェラーゼ測定のための実験プロトコールは実施例1に記載されている。
【0146】
結果
この実験において、SV40プロモーターの5’側に両方の配向の新規IE2エンハンサーの長いバージョンを有するコンストラクトO及びQを既知の強力なエンハンサーであるhCMV(ヒトサイトメガロウイルス)エンハンサーとの比較に使用した。このために、mCMV IE2配列はコンストラクトOにおいてhCMVエンハンサー配列(配列番号2)で置換され、その結果コンストラクトO−2が生じた。同じことがコンストラクトQで行われ、その結果コンストラクトQ−2が生じた。
【0147】
クローニングに使用した、MluI部位(MluI=acgcgt)を隣接しているhCMVエンハンサー配列は以下の通りである:
【化1】
【0148】
SV−LUc+は、MluIで消化し、そしてウシ小腸アルカリホスファターゼで処理してセルフライゲーションを防いだ。hCMVプロモーター配列をMluI部位でクローニングした。両方の配向のクローンを同等のIE2コンストラクトとの比較のために維持した。
【0149】
ルシフェラーゼ発現の結果を図12に示す。新規IE2エンハンサー(長いバージョン)で得られたルシフェラーゼ発現レベルは、古典的なhCMVエンハンサーで得られるルシフェラーゼ発現レベルの少なくとも2倍の高さであった。
【0150】
実施例7:両方向性コンストラクトにおけるIE2エンハンサーの能力
図13に示すようなコンストラクト♯26及び♯140と称する2つの追加のコンストラクトを設計して、両方向的構造の新規エンハンサーを試験した。
【0151】
♯26:このベクターの土台にmCMV−Luc+(コンストラクトC、図13)を使用した。これをSacII/EcoRIで消化した。IL−18BPカセットをphCMV−IL18BP2から取り出した。このベクターをSacII/EcoRIで切断することで、イントロンA、続いてIL−18BPオープンリーディングフレーム及びSV40ポリA領域を含むフラグメントを単離した。
【0152】
♯140:このベクターの土台に図10.aのコンストラクトLを使用した。これをXhoI/NheIで消化してIE2エンハンサーの5’側でベクターを開いた。IE1プロモーターからIL18BPを発現するベクターをpBS.I IL18BP(IE1).Iと称し、インサートドナーとして使用した。このベクターをXhoI/SpeIで消化することにより、XhoIからのIE1プロモーター(図1を参照のこと)、続いてイントロンA−IL18Bp−SV40ポリAカセットを含むフラグメントを単離した。生じたコンストラクトは、基のmCMVプロモーター配列の−589からXhoIまでの配列を欠いていた。
【0153】
安定トランスフェクション及びルシフェラーゼ測定は、実施例2に記載の通り実施し、そしてIL18BPのELISAは実施例3に記載の通り実施した。
【0154】
しかしながら、コンストラクト♯140は、IE1プロモーターとIE2プロモーターが逆の配向にある点でコンストラクト♯26とは正確には似ていない。従って、ルシフェラーゼ発現は、コンストラクト♯26においてはIE1プロモーターで、一方、コンストラクト♯140においてはIE2プロモーターで駆動させ、そしてIL18BP発現は、コンストラクト♯26においてはIE2プロモーターで、そしてコンストラクト♯140においてはIE1プロモーターで駆動させた。
【0155】
両コンストラクトで得られた結果は、両方向性の発現ベクター(コンストラクト♯140)の2つのプロモーターに対する新規IE2エンハンサーの同時作用にとって重要であるので、以下に示す。
【0156】
図14は、ルシフェラーゼとIL−18BPの発現の観点での、コンストラクト♯26及び♯140で安定トランスフェクションしたプール由来の結果を表す。コンストラクト♯140は、マーカー遺伝子(ルシフェラーゼ)と注目の遺伝子(IL−18BP)両方のより高い発現をもたらした。
【0157】
ルシフェラーゼとIL−18Bpの発現の安定性を評価するために、プールを選択的条件下、すなわちピューロマイシン処理のもとで維持するか、あるいは選択圧無しで(ピューロマイシン無しで)3週間維持した。結果を図15〜17に示す。レポーター遺伝子であるルシフェラーゼ及びIL−18BPの発現レベルは長期間有意に変化しなかった。図16及び17を参照のこと。
【0158】
従って、コンストラクト♯26及び♯240はともに、選択圧に関係なく長期間類似の発現レベルを示したことが証明された。それ故に、新規IE2エンハンサーを有するコンストラクトは、2つの遺伝子の安定な且つ同時の発現に適している。
【0159】
上記結果がプールで得られたので、クローンは両プールからウェル当たり0.5細胞に限界希釈することで導いた。
【0160】
クローンはピューロマイシン選択のもとで培養し、クローンの発現レベルを評価した。続いて、単離したクローンをピューロマイシンの存在下、そして不在下で分離し、最終的にそれらの安定性をモニタリングした。図18及び19に示した結果は、クローンが+/−ピューロマイシン条件で分割される前に得られた。ピューロマイシン除去から2週間後の結果は、両コンストラクトについて有意な差異を示さず、これは安定であることを示している。この研究は更に10〜12週続けられる。
【0161】
両遺伝子の発現を評価するために、ハイスループットのフォーマットを使用し、すなわち96ウェルプレートで行った。
【0162】
1日目:1/2希釈の細胞、100μlのProCho5培養液(無血清)+5%ウシ胎児血清を含む100μlの新鮮なProCho5。2.5%FBSの終濃度で、細胞は接着することができた。メンテナンスプレートの毎週の継代は、1/20希釈係数で、全てProCho5培地で実施した。
【0163】
2日目:培地を捨て、200μlの1xPBS(Invitrogen, 10010-015)で一回洗浄し、そして5%FBSを含む75μlの新鮮なProCho5を添加し、そして24時間の発現のパルスでインキュベートした。
【0164】
3日目:50μlの上清を回収し、そして200μlのELISAバッファー(1xPBS、0.1%w/vBSA、0.2%v/vTween20)を添加した。100μlをIL−18BPについてELISAで解析した。
【0165】
ウェルを200μlの1xPBSで洗浄し(廃棄)、そして100μlのGlo溶解バッファー(Promega, E266a)を添加した。ウェルを30分間室温でインキュベートして細胞の溶解を評価した。ルシフェラーゼ測定は、白の96ウェルプレートに移した30μlの溶解した細胞及び30μlの再構成したBright−Glo試薬を用いて実施した。発光をCentro LB 960ルミノメーター(Berthold Technologies)上で5秒の収集時間の間に測定した。
【0166】
コンストラクト♯26による安定トランスフェクションから得られたクローンの解析を図18に表し、そしてコンストラクト♯140による安定トランスフェクションから生じたものと図19に表す。
【0167】
図18及び19に表したクローンは、それらのルシフェラーゼ値により、低下する順にランク付けした。IL18BPの発現はOD値として示した。ELISAをハイスループットのフォーマットで実施したので、IL−18BPレベルの実際の定量は得られなかった。しかしながら、2500ng/ml及び250ng/mlのコントロール並びにブランクを含めてプレート間の変動をモニターした。
【0168】
図20は、inverted ChemiDoc viewにおけるプレート上でのルシフェラーゼ発現を示す。このviewにCCDカメラ(Biorad)を使用し、その結果化学発光由来のシグナルを獲得することが可能となる(図20に示す通り)。Quantity One 4.2.3と称されるソフトウェアは、写真の管理、例えばシグナルの反転等を可能にし、これを本願で利用した。
【0169】
図18〜20に示す結果から明らかなように、コンストラクト♯140は多くの非発現クローンをもたらした。しかしながら、驚くべきことに、幾つかのポジティブクローンが両遺伝子を極度に強く発現した。
【0170】
従って、コンストラクト♯140は、非常に初期のクローニング段階における非常に高いエクスプレッサーについてのスクリーニングを可能にし、その結果注目の両遺伝子を高度に発現する幾つかのクローンを同定するために、多数のクローンについて試験し、そしてフォローアップする必要がなくなる。
【0171】
【表3】
【技術分野】
【0001】
本発明は、mCMV−IE2遺伝子のプロモーター、若しくはその機能的な発現促進フラグメント、及び/又はmCMV−IE2遺伝子のエンハンサー、若しくはその機能的な発現促進フラグメントを含んで成る発現ベクターであって、mCMVの完全な遺伝子を全く含まない発現ベクター、当該ベクターを含む宿主細胞、当該発現ベクターを用いて所望のポリペプチドを産生する方法、及び当該発現ベクターの使用、に関する。
【0002】
mCMV IE2プロモーター及びmCMV IE1プロモーターと、任意に新規mCMV IE2エンハンサーとを含んで成る発現ベクターは本発明において好ましく、特に両プロモーターが両方向的構造において配列されている場合に好ましい。
【背景技術】
【0003】
数十年前から、発現ベクターは、注目のポリペプチド又はタンパク質をコードする遺伝子又はcDNAを宿主細胞で発現させるための媒体として使用されている。強力なウイルス性又は細胞性のプロモーター及びエンハンサーは、宿主細胞への組換えDNAの一過性又は安定性のトランスフェクションを用いることにより高レベルで注目の遺伝子を発現させるために使用されている。ヒトサイトメガロウイルス(hCMV)の前初期(IE)領域は、この点特に適していることが証明されており、そしてこの領域由来の遺伝子因子を含んで成る発現ベクターは、例えばEP0323997B1で知られている。
【0004】
今日まで、マウスサイトメガロウイルス(mCMV)由来の遺伝子制御配列は、mCMV由来制御エレメントが非常に強力で、且つヒトの対応物と比較して遥かに強いことが確認されているが(Kim et al. 2002)、ほとんど使用されていない。
【0005】
US4,963,481(de Villiers)は、ウイルスゲノムから単離された約2270塩基対(bp)の制限エンドヌクレアーゼPstIフラグメントを含むmCMV IE領域由来のDNAフラグメントの転写制御下にある異種タンパク質をコードするDNAを有する発現ベクターを開示している。このフラグメントの1387bpの切断バージョンは、当該異種タンパク質の発現のためのプロモーターとしての前記DNAフラグメントの有効性における有意な向上をもたらした。
【0006】
US4,968,615(Kozinowski)は、真核細胞において構造遺伝子の転写を増強するために使用されうるマウスサイトメガロウイルス(MCMV)由来の転写エンハンサーを含む組換えDNA分子を記載している。当該mCMVエンハンサーは、de Villiers(US4,963,481)により同定された2.27kbのPstIフラグメント内に位置しているといわれている。
【0007】
Manning及びMocarski(1988)は、マウスサイトメガロウイルスの複製についてのmCMV IE2領域の機能的重要性を分析した。このために、mCMV IEエンハンサー/プロモーターの転写制御下にあるlacZレポーター遺伝子を有し、その結果IE2遺伝子が破壊されている組換えウイルスが構築された。実際にIE2遺伝子発現が無いことを観察することができ、そしてウイルスは普通に複製された。その結果、著者等は、サイトメガロウイルス、例えばmCMV及びhCMVの中で保存されていないIE2遺伝子がウイルス複製に必須ではなかったと結論付けた。IE2エンハンサー/プロモーター領域の何らかの特定の有用性についての指摘はManning及びMocarskiによって全く開示も示唆もされていない。
【0008】
最近の文献は、マウスとヒトとの間のCMV IE領域の更なる差異を示している。マウスの遺伝子座は、第一のIE遺伝子の反対方向に第二の主要なmRNAを発現している。この第二の前初期遺伝子はIE2と名づけられ、そのプロモーター配列はIE2プロモーターと称されている(Messerle et al. 1991)。
【0009】
mCMV由来のIE2領域は、これまでのところ異種タンパク質の発現のためのベクターに使用されてはいない。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明は、mCMVのIE2プロモーター領域を含んで成るDNAエレメントを有するベクターがトランスフェクションした宿主細胞における注目の遺伝子の発現を効率的に駆動させることができるという知見に基づいている。
【0011】
本発明は更にmCMV IE2領域における新規エンハンサーの同定に基づいており、これを本明細書ではmCMV IE2エンハンサーと称する。このエンハンサーは、エンハンサーの定義に一般的に適用される基準を満たし、すなわち、(1)位置、(2)配向、及び(3)異種プロモーターからの発現の増強、とは無関係に発現を増強させる。
【課題を解決するための手段】
【0012】
したがって、本発明の第一の側面は、mCMV−IE2遺伝子のプロモーター、若しくはその機能的な発現促進フラグメント、及び/又はmCMV−IE2遺伝子のエンハンサー、若しくはその機能的な発現促進フラグメントを含んで成る発現ベクターであって、mCMVの完全な遺伝子を全く含まない発現ベクター、に関する。
【0013】
第二の側面において、本発明は、本発明のベクターを含んで成る宿主細胞に関する。
【0014】
本発明の第三の側面は、注目のポリペプチドの産生方法であって、宿主細胞に本発明のベクターをトランスフェクションする工程を含んで成る方法に関する。
【0015】
第四の側面において、本発明は、注目のポリペプチドの産生方法であって、本発明の宿主細胞を培養する工程を含んで成る方法に関する。
【0016】
本発明の第五の側面は、注目の1又は複数の遺伝子又はcDNAの発現のための本発明のベクターの使用に関する。
【0017】
第六の側面において、本発明は、注目の遺伝子を大量に発現するクローンの選択のための本発明のベクターの使用に関する。
【0018】
第七の側面は、DNAベースの治療における本発明のベクターの使用に関する。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】図1は、発現コンストラクトに使用するためのmCMV IR領域由来の両方向性DNAエレメントの配列を示す。IE2及びIE1プロモーターの+1部位及びTATAボックスをそれぞれ示す。両遺伝子のコアプロモーターを四角の中に示す。HpaI及びXhoI制限部位を太字で示す。−682位はIE1の+1に対して示す。
【図2】図2は、レポーターコンストラクトA〜Gを示す。ルシフェラーゼレポーター遺伝子は太線として示し、そしてプロモーターは白抜きの矢印として示す。A:ネガティブなプロモーター無しの制御(pGL3ベーシック)。B:SV40プロモーター/エンハンサー駆動のルシフェラーゼレポーターベクター(pGL3コントロール)。C:IE1プロモーター駆動のルシフェラーゼ発現(pmCMVルシフェラーゼ、IE1駆動)。D:IE2プロモーター駆動のルシフェラーゼ発現(prevmCMVルシフェラーゼ、IE2駆動)。E:IE2プロモーター駆動のルシフェラーゼ発現、IE1プロモーターは欠失(prevmCMVルシフェラーゼ(ΔXhoI)、IE2駆動、IE1マイナス)。F:IE1プロモーター駆動のルシフェラーゼ発現、IE2プロモーターは欠失(pBS.MCMV3ルシフェラーゼ、IE1駆動(1.4kb)、IE2マイナス)。G:IE1プロモーターの短縮版によるルシフェラーゼ発現の駆動(p−680ルシフェラーゼ、IE1駆動(短いバージョン、0.68kb))。
【図3】図3は、IE2プロモーターと連結したIL−18BPのコード配列(太線)を有する、図2のコンストラクトに類似の両方向性コンストラクト(コンストラクトC−2)を示す。従って、このコンストラクトにおいて、mCMV IE1プロモーターがルシフェラーゼ発現を駆動させ、そして同時にmCMV IE2プロモーターがIL−18BP発現を駆動させる。三角:イントロン。黒の楕円:ポリA。
【図4】図4は、図2においてコンストラクトA〜Gで表した異なるレポーターコンストラクトからのルシフェラーゼレポーター遺伝子発現を示す。無血清培地(SFM)で生育したCHO−S細胞はコンストラクトA〜Gで一過性トランスフェクションし、あるいはモックトランスフェクションした。ルシフェラーゼ活性は、RLU=相対光単位として表す。
【図5】図5は、トランスフェクションしたCHO−S細胞の安定なプールにおいてRLUとして測定したルシフェラーゼ発現を示す。細胞は、図2でコンストラクトD、C、F及びEでトランスフェクションした後にSFM培地で生育した。ルシフェラーゼ発現は、選択してから21日後に評価した。
【図6】図6は、900、500、300及び100ngの、図3で示した両方向性コンストラクトC−2による一過性トランスフェクション後のRLUとして測定したルシフェラーゼ発現を示す。
【図7】図7は、図6の一過性トランスフェクション実験(コンストラクトC−2)由来の細胞培養上清中のIL−18BP量(ng/l)を示す。
【図8】図8は、図6及び7の実験で測定したIL−18BP量対ルシフェラーゼ量の比率を示す。
【図9】図9は、両方向性コンストラクトC−2(図3に示すとおり)によるトランスフェクションから8日後に選択した48の個々のクローンによって発現したルシフェラーゼの量(RLU)(左のy軸)及びIL−18BPの量(ng/ml)(右のy軸)を示す。ルシフェラーゼの検出限界は約500RLU、そしてIL−18BPは2.5ng/mlであった。X軸上のそれぞれの増加分は1つの単一のクローンを示している。
【図10.a】図10.aはレポーターコンストラクトH〜Nを示す。ルシフェラーゼレポーター遺伝子(Luc)は太線で示し、そしてそれぞれのIE1、IE2プロモーターは白抜きの矢印で示す。エンハンサーはグレーの楕円で示す:既知のIE1エンハンサーはライトグレー、そして新規IE2エンハンサーはダークグレー。H:ルシフェラーゼ発現を駆動させるIE2プロモーターを有する両方向性コンストラクト。J,K,L,M,N:短縮したmCMVプロモーターを含むコンストラクト。位置は、基準としてのIE2の+1に対するmCMVpからの塩基対の数に相当する。J:−1076からK:−783からL:−587からM:−387からN:−189から
【図10.b】図10.bは、無血清培地で生育したCHO−S細胞の一過性トランスフェクション後の、図10.aのレポーターコンストラクトH〜Nからのルシフェラーゼ発現(RLU)を示す。
【図11.a】図11.aは、新規IE2エンハンサー(グレーの楕円)とSV40プロモーターとを組み合わせた追加のレポーターコンストラクトO〜Yを示す。グレーの楕円は−587〜−189のIE2エンハンサーを表し、半分のグレーの楕円は−387〜−189のIE2エンハンサーを表す。IE2エンハンサーの上の矢印は、エンハンサー配列の方向を示す。ルシフェラーゼレポーター遺伝子は太線で示し、SV40プロモーターは白抜きのは矢印で示す。黒の楕円:ポリA。O:SV40プロモーターの5’側にクローニングされた長いIE2エンハンサー配列(−587/−189);P:SV40プロモーターの5’側にクローニングされた短いIE2エンハンサー配列(−387/−189);Q:SV40プロモーターの5’側に逆の配向でクローニングされた長いIE2エンハンサー配列(−587/−189);R:SV40プロモーターの5’側に逆の配向でクローニングされた短いIE2エンハンサー配列(−387/−189);S:SV40プロモーターの3’側にクローニングされた長いIE2エンハンサー配列(−587/−189);T:SV40プロモーターの3’側にクローニングされた短いIE2エンハンサー配列(−387/−189);U:SV40プロモーターの3’側に逆の配向でクローニングされた長いIE2エンハンサー配列(−587/−189);V:SV40プロモーターの3’側に逆の配向でクローニングされた短いIE2エンハンサー配列(−387/−189);W:コントロール。ルシフェラーゼのコード配列の3’側にSV40プロモーター及びSV40エンハンサー。X:コントロール。何らエンハンサー無しでSV40プロモーターにより駆動されるルシフェラーゼ発現。Y:ネガティブコントロール。プロモーター無し。
【図11.b】図11.bは、図11.aに示したレポーターコンストラクトO〜Yからのルシフェラーゼ発現を示す。無血清培地(SFM)中で生育したCHO−S細胞をコンストラクトO〜Yで一過性トランスフェクションした。ルシフェラーゼ活性はコントロールX(値1)、すなわち、何らエンハンサー無しでSV40プロモーターにより駆動される発現と比較した場合の誘導の倍数として表す。白抜きの棒:長いIE2エンハンサー(−587〜−189)、網掛けの棒:短いIE2エンハンサー(−387〜−189)。X軸は対数尺である。
【図12】図12は、新規IE2エンハンサーと既知のhCMVエンハンサーとを比較する実験である。細胞はコントロールのコンストラクトA(pGL3ベーシック、図2のプロモーター無しのものを参照のこと)、コントロールのコンストラクトB(pGL3ctrl、図2を参照のこと。ルシフェラーゼのコード領域の3’側にSV40プロモーターとSV40エンハンサー配列を有する)、コントロールのコンストラクトX(SV−Luc+。図11.aを参照のこと。SV40プロモーター。エンハンサー無し)、並びにコンストラクトO及びQ(図11.aを参照のこと)又はコンストラクトO−2又はQ−2(IE2エンハンサー配列(長いバージョン、−587〜−189)が既知のhCMVエンハンサー配列(配列番号2)で置換されている)でトランスフェクションされた。ルシフェラーゼが測定された(RLU)(x軸)。網掛けの棒:既知のhCMVエンハンサーによるもの。グレーの棒:新規IE2エンハンサーによるもの。
【図13】図13は、IL−18BPとルシフェラーゼの同時発現に使用する両方向性ベクターを示す。IE1及びIE2プロモーターは白抜きの矢印で示す。三角はhCMVのIE領域由来のイントロンAを表し、そしてグレーの楕円はポリアデニル化シグナルを表す。黒の四角はシグナルペプチドを表す。コンストラクト♯26:ルシフェラーゼはIE1プロモーターから発現し、そしてIL−18BPはIE2プロモーターから発現した。両プロモーター間の配列は図10.aのコンストラクトHにあるものである。コンストラクト♯140:ルシフェラーゼはIE2プロモーターにより発現し、そしてIL−18BPはIE1プロモーターから発現した。IE2エンハンサー(−587〜−189)は2つのプロモーターの間に位置する。
【図14】図14は、無血清培地中で生育したCHO細胞を図13のコンストラクト♯26又は♯140のいずれかで一過性トランスフェクションした後に発現したルシフェラーゼ量(RLU、左のy軸)及びIL−18Bp量(ng/ml、右のy軸)を示す。棒:ルシフェラーゼ発現。黒のひし形:IL−18BP発現。
【図15】図15は、図13のコンストラクト♯26又は♯140のいずれかでトランスフェクションした安定なプール中でのルシフェラーゼの発現(RLU、左のy軸)及びIL−18Bpの発現(ng/ml、右のy軸)を示す。発現は、トランスフェクションから7週間後に測定した。細胞は、ピューロマイシンによる選択の下で維持するか(+puro)、あるいはピューロマイシン選択無しで3週間維持した(−puro)。棒:ルシフェラーゼ発現。黒のひし形:IL−18BP発現。
【図16】図16は、図15の実験で見られるルシフェラーゼ発現の時間的経過を示す。x軸は時間(週)を表す。図15で示したデータは図16の3週のデータに相当する。黒のひし形:♯26+puro、小さい四角:♯140+puro、黒い三角:♯26−puro、大きい四角:♯140−puro。
【図17】図17は、図16の実験におけるIL−18BP発現の時間的経過を示す。レジェンドは図16のとおりである。
【図18】個々のプロトクローンをルシフェラーゼ発現(四角)(RLU)(左のy軸)及びIL−18BP発現(ひし形)(ng/ml)(右のy軸)について解析した。x軸上の増分は個々のプロトクローンを表す。プロトクローンはコンストラクト♯26で安定トランスフェクションしたCHO細胞から樹立し、そしてピューロマイシン選択の下維持した。
【図19】図19は、図18と同様であるが、プロトクローンはコンストラクト♯140でトランスフェクションした細胞から樹立した。
【図20】コンストラクト♯26又は♯140のいずれかをトランスフェクションしたプロトクローンを、ルシフェラーゼ発現について96ウェルフォーマットのinverted ChemiDoc viewにおいて解析した。
【発明を実施するための形態】
【0020】
本発明の詳細な説明
本発明によると、驚くべきことに、マウスサイトメガロウイルス(mCMV)の前初期(IE)2遺伝子のプロモーターがmCMV IE2タンパク質自体以外の注目のポリペプチド、すなわち異種ポリペプチド又はタンパク質の発現を促進するのに効率的であることが明らかとなった。この発現ベクターは、マウスサイトメガロウイルス自体であることはなく、あるいは完全なmCMVウイルス遺伝子を全く含まないが、組換えタンパク質発現のために着想されたベクターである。
【0021】
従って、本発明は、mCMV−IE2遺伝子のプロモーター、又はその機能的な発現促進フラグメントを含んで成る発現ベクターであって、mCMVの完全な遺伝子を全く含まない発現ベクター、に関する。
【0022】
これに加え、新規エンハンサーがmCMV IE2領域において同定されており、これを本明細書でmCMV IE2エンハンサー、又はIE2エンハンサーと称する。このエンハンサーは、遺伝子に対するその位置又は配向に関係なく発現を増強し、そして異種プロモーターからの発現を増強し、その結果エンハンサーの一般的基準を満たす。
【0023】
従って、本発明では、mCMV−IE2遺伝子のエンハンサー、又はその機能的な発現増強フラグメントを含んで成る発現ベクターであって、mCMVの完全な遺伝子を全く含まない発現ベクター、に関する。
【0024】
当業者は、本発明のベクターがmCMV IE2プロモーターを単独で、又は任意の適切な既知のエンハンサーと組み合わせて含んで成ることがあることを理解するであろう。当業者はまた、本発明のベクターがmCMV IE2エンハンサーを単独で、又は任意の適当なプロモーターと組み合わせて含んで成ることがあることを理解するであろう。更に、本発明のベクターは、mCMV IE2プロモーターをmCMV IE2エンハンサーと組み合わせて含んで成ることがある。
【0025】
mCMV IE2遺伝子自体は、例えばMesserle et al., 1991により知られている。
【0026】
用語「プロモーター」は、本明細書で使用する場合、1又は複数のDNA配列の転写を調節するよう機能し、且つDNA依存性RNAポリメラーゼの結合部位及びプロモーター機能を制御するよう相互作用する他のDNA配列の存在により構造的に同定されるDNAの領域を意味する。プロモーターの機能的発現促進フラグメントは、プロモーターとしての活性を保持する短縮又は切断されたプロモーター配列である。プロモーター活性は、当業界で既知のあらゆるアッセイ、例えばレポーター遺伝子としてルシフェラーゼを用いるレポーターアッセイで測定されうる(Wood,1991 ; Seliger and McElroy, 1960 ; de Wet et al.(1985)、又はPromega(登録商標)より市販されているもの)。
【0027】
本発明によると、IE2プロモーターは、例えば、図1に示す通り、+1位からTATAボックスに及ぶ配列を含んで成ることがある。IE2プロモーターはまた、図1で表す配列のヌクレオチド1〜39に及ぶ(四角)、本明細書で「コアプロモーター」と称する配列を含んで成ることがある。当業者は、mCMV IE2プロモーターの配列がそれを作用可能に連結したDNA配列の転写を駆動する限りコアプロモーターよりも長いか、又は短いことがありうることを理解するであろう。例えば、IE2プロモーターはまた、コアプロモーターの上流に100〜200塩基対含んで成ることがある。そのようなプロモーター領域はまた「近位プロモーター」と称される。当業者は更に、用語「プロモーター」と「エンハンサー」(以下を参照のこと)とが正確に定義されておらず、その結果、命名法及び文脈によって、プロモーターがエンハンサー領域を含んで成ることがあり、あるいはエンハンサー領域がプロモーター領域を含んで成ることがある。
【0028】
用語「ベクター」は、宿主細胞による外因性DNAの複製及び/又は適切な発現のための宿主細胞への外因性DNAの伝達にとって有用な外因性DNA又はRNAのあらゆる担体を意味する。
【0029】
用語「作用可能に連結」は、本明細書で使用する場合、プロモーターの制御下で、遺伝子、cDNA又は他のDNAを発現するよう適切なフレーム内で転写される構造遺伝子又はcDNA又は他のあらゆるDNA配列とプロモーターとが機能的に融合していることを意味する。用語「作用可能に連結」とは、本明細書で使用する場合、DNA配列の直接的な融合に限定されない。
【0030】
用語「mCMVの完全な遺伝子」とは、自身(内因性、ウイルス性)の5’及び3’制御エレメントを有するマウスサイトメガロウイルスのウイルス遺伝子を意味する。
【0031】
「エンハンサー領域」は、1又は複数の遺伝子の転写を増大させるよう機能するDNAの領域を意味する。更に具体的には、用語「エンハンサー」は、本明細書で使用する場合、発現する遺伝子に対するその位置及び配向に関係なく遺伝子の発現を増強、増大、改善、又は回復させるDNA制御エレメントであり、そして複数のプロモーターの発現を増強、増大、改善、又は回復させることがある。好ましくは、エンハンサーは、複数のプロモーターからの発現を同時に増強させる。エンハンサーの機能的発現増強フラグメントは、増強活性を保持する短縮又は切断されたエンハンサー配列である。
【0032】
本発明のベクターは、好ましくはmCMV IE2上流領域のヌクレオチド−387〜−189を含むフラグメントを含んで成り、ここで、このヌクレオチドの番号付けはIE2遺伝子の+1に対するものである。これは、エンハンサー機能を有するフラグメントであり、そして本明細書ではIE2エンハンサーの短いバージョンとも称される。
【0033】
更に好ましい態様において、ベクターは、mCMV IE2上流領域のヌクレオチド−587〜−189を含むフラグメントを含んで成り、ここで、このヌクレオチドの番号付けはIE2遺伝子の+1に対するものである。このフラグメントはエンハンサー機能を有し、そして本明細書ではまたIE2エンハンサーの長いバージョンとも称される。
【0034】
本発明のベクターはまた、更に追加のmCMV IEエンハンサー、又はその機能的発現増強フラグメントを含んで成ることがあり、これは、本明細書では「CMV IE1エンハンサー」と称する。
【0035】
そのようなmCMV IE1エンハンサーは当業界で知られており、例えばUS4,968,615号による。それは、例えば図1に示す配列の−587〜−147位、又は−682〜−147位に及び、ここで、この番号付けはIE1遺伝子の+1位に対するものである。本発明に従い使用されうるmCMV IE1エンハンサーは更に、図1のIE1の+1位に対し、塩基対−1330〜−488に及ぶ配列を含んで成ることがある。エンハンサー領域は、更にプロモーターの全部又は一部を含んで成ることがある。
【0036】
IE2プロモーターに加えmCMVエンハンサーを用いることによって、注目のポリペプチドの発現は更に増大しうる。
【0037】
本発明によると、ベクターは更に、mCMV−IE2プロモーターと異なるプロモーター、又はその機能的発現促進フラグメントを含んで成る。
【0038】
好ましい態様において、本発明のベクターは、ウイルス起源、細胞起源又は人工起源の第一及び第二プロモーター、又はそれらの機能的発現促進フラグメントを含んで成る。
【0039】
本発明により、第二プロモーターの存在がmCMV IE2プロモーターからの注目のポリペプチドの効率的な発現をもたらすことが示されている。従って、本発明の好ましい態様において、ベクターは、mCMV IE2プロモーターを、第二プロモーター、又はその機能的発現促進フラグメントと組み合わせて含んで成る。追加の適当なプロモーターの例には、hCMVプロモーター、メタロチオネインプロモーター(MT)、SV40プロモーター、又は人工プロモーターが含まれる。好ましくは、第二プロモーターはmCMV IE2プロモーターの追加のコピーである。そのような追加のプロモーターは、構成的な又は制御された発現を促進することがある。制御された発現は、誘導性又は抑制性の発現、あるいはその両方であってもよい。
【0040】
好ましくは、そのような第二プロモーターは、mCMV−IE1遺伝子のプロモーター、又はその機能的発現促進フラグメントである。従って、第一プロモーターがmCMV−IE2プロモーター、又はその機能的発現促進フラグメントであり、且つ第二プロモーターがnCMV−IE1プロモーター、又はその機能的発現促進フラグメントであることが好ましい。
【0041】
mCMV−IE1プロモーターは、例えばWO87/03905より知られている。これは、図1の配列の最後の47bp(四角)、又は追加の100〜200bp上流配列(すなわち近位プロモーター)を含むコアプロモーターを含んで成ることがあり、あるいは最大−1330位(IE1の+1位に対して。図1を参照のこと)の全遺伝子間領域を含んで成ることがある。
【0042】
好ましい態様において、ベクターは、IE1プロモーター及びIE2プロモーターの両方並びにIE1エンハンサー及び新規IE2エンハンサー、あるいはそれらの任意な機能的発現促進フラグメントを含む配列番号1のDNA配列を含んで成る。
【0043】
非常に好ましい態様において、本発明のベクターにおけるプロモーター、又はそれらの機能的な発現促進フラグメントは、少なくとも1つのポリペプチドをコードするDNA配列と作用可能に連結している。本発明の更に好ましい態様において、本発明のエンハンサーは少なくとも1つのポリペプチドをコードするDNA配列と一緒に発現ベクター上に存在する。
【0044】
好ましくは、前記DNA配列は注目のタンパク質をコードしている。
【0045】
更に好ましくは、前記DNA配列はマーカータンパク質をコードしているか、あるいは増幅可能な遺伝子である。
【0046】
前記DNA配列がレポータータンパク質をコードしているのも好ましい。
【0047】
本発明のベクターが複数のプロモーターを含む場合、注目のタンパク質、マーカー、レポーター、増幅可能な遺伝子等のあらゆるコンビネーション又はサブコンビネーションが同一のプラスミドから発現されることがある。
【0048】
本発明によると、注目のポリペプチドは、IE2ポリペプチド自体と異なる任意のポリペプチドであってもよく、細胞外タンパク質、例えばペプチドホルモン、サイトカイン又は増殖因子、あるいは膜貫通タンパク質、例えば増殖因子受容体又はホルモン受容体、あるいは細胞内タンパク質、例えばキナーゼ、ホスファターゼ又はDNA結合タンパク質であってもよく、これは注目のポリペプチド又はそれが発現される宿主細胞の用途によって左右される。
【0049】
本発明に従う適当なマーカータンパク質は、例えばネガティブ選択マーカー又はポジティブ選択マーカー、あるいは増幅可能な遺伝子である。例としては、アデノシンデアミナーゼ(ADA)、アミノグリコシドホスホトランスフェラーゼ(neo)、ジヒドロ葉酸還元酵素(DHFR)、ハイグロマイシン−B−ホスホトランスフェラーゼ(HPH)、チミジンキナーゼ(tk)、キサンチン−グアニンホスホリボシルトランスフェラーゼ(gpt)、多剤耐性遺伝子(MDR)、オルニチンデカルボキシラーゼ(ODC)及びN−(ホスホンアセチル)−L−アスパラギン酸耐性(CAD)、又はピューロマイシンアセチルトランスフェラーゼ(PAC)が含まれる。更なる例には、特定の代謝経路の使用による選択に使用される遺伝子、例えばガラクトキナーゼ(Schumperli et al., 1982)、葉酸受容体(Zhu et al., 2001)、又は還元葉酸担体(Assaraf et al., 1992)、が含まれる。
【0050】
また更に好ましい態様において、注目のポリペプチドはレポーター遺伝子である。
【0051】
用語「レポーター遺伝子」又は「レポータータンパク質」は、本明細書で使用する場合、単純であり高価でない方法又は試薬を用いて同定することができ、且つ本発明のプロモーター領域又はその活性フラグメントに作用可能に連結することができる遺伝子産物をコードする遺伝子を意味することが意図される。レポーター遺伝子は、スクリーニングアッセイにおいて転写活性を決定するのに使用されることがあり(例えば、Goeddel (ed. ), Methods Enymol., Vol. 185, San Diego. Academic Press, Inc. (1990)を参照のこと)、例えばレポーター遺伝子としてルシフェラーゼが用いられる(Wood, 1991; Seliger and McElroy, 1960 ; de Wet et al. (1985), 又はPromega(登録商標)より市販されているもの)。
【0052】
例は、ルシフェラーゼ、緑色蛍光タンパク質、アルカリホスファターゼ、O−ガラクトシダーゼ、あるいは西洋ワサビペルオキシダーゼ又は他のタンパク質との分子内組み合わせ、例えば緑色蛍光タンパク質(GFP)又は強化緑色蛍光タンパク質(EGFP)とピューロマイシンアセチルトランスフェラーゼ遺伝子(Abbate et al., 2001)、あるいはそれらの組み合わせから選択される。
【0053】
本発明の基となる実験データは、注目のポリペプチドの効率的な同時発現が、共に同一のプラスミド上に存在するIE2プロモーター及びIE1プロモーターで達成されうることを示した。従って、更に好ましい態様において、mCMV IE2プロモーター、及びmCMV−IE1プロモーターの両方、又はそれらの機能的発現促進フラグメントは、それぞれポリペプチドと作用可能に連結している。
【0054】
高い発現レベルは、両プロモーターが両方向的構造に存在する場合に達成されうる。従って、mCMV−IE2プロモーター、又はその機能的発現促進フラグメント、及びプロモーター、特に、mCMV−IE1プロモーター、あるいはその機能的発現促進フラグメントは、両方向的に配列される。
【0055】
用語「両方向的に配列」とは、本明細書で使用する場合、プロモーターが相対する方向に転写を駆動させることを意味することが意図される。このプラスミドDNAの配列は、ベクターの「両方向的構造」とも称される。
【0056】
mCMV−IE1若しくはmCMV−IE2遺伝子のプロモーター、又はその機能的発現促進フラグメント、あるいはmCMV−IE2プロモーターと組み合わせて又はIE2エンハンサーと組み合わせて使用されうる任意な追加のプロモーターは、更に翻訳開始シグナルを含むことがある。
【0057】
更に好ましい態様において、mCMV−IE2遺伝子のプロモーター、又はその機能的発現促進フラグメント、あるいはmCMV IE2エンハンサーは、転写を制御し、又は転写に影響を及ぼす他のエレメントと連結される。そのようなエレメントは、RNAのプロセシング、安定性又は翻訳の効率に影響を及ぼすことがある。適当なエレメントの例は、5’UTR、イントロン、3’UTR(例えば、Mazumder et al., 2003を参照のこと)、mRNA3’末端プロセシング配列(例えば、ポリアデニル化部位)、及びポリシストロン性の発現のためのIRES配列(例えば、Mountford and Smith, 1995)から成る群から選択される。
【0058】
ポリシストロン性mRNAの発現のためにIRESエレメントを使用するのが好ましく、ここで、コード配列は当該IRESによって分離されている。この利点は、複数の注目のポリペプチドが同一のmRNAから、そしてその結果同一のプロモーターから発現しうることである。
【0059】
より更に好ましい態様において、mCMV−IE2遺伝子のプロモーターは、単独で、あるいはmCMV IE1遺伝子のプロモーター、又は任意な他の天然プロモーター若しくは人工プロモーター、又はIE2エンハンサーと組み合わせて、追加の発現促進配列、例えばインスレーター、境界エレメント、LCR(例えば、Blackwood and Kadonga (1998)により説明されているもの)又はマトリックス/足場付着領域(例えば、Li et al., 1999により説明されているもの)と連結されることがある。
【0060】
当業者は、本発明のベクターがまた、追加のエンハンサー、例えば周知のSV40エンハンサー又はhCMVエンハンサーを含むことがあることを理解するであろう。
【0061】
本発明によると、第一プロモーター、好ましくはmCMV IE2プロモーターと作用可能に連結したポリペプチド、と、第二プロモーター、好ましくはmCMV IE1プロモーターと作用可能に連結したポリペプチド、とは同一であってもよい。この場合、同一の遺伝子の2つのコピーが同一のベクター上に存在するが、これらは2つの異なるプロモーターの調節下にある。従って、注目のポリペプチドをコードする遺伝子の単一のコピーからの発現よりも優れている発現率を達成するのが可能な場合がある。
【0062】
別の態様において、第一プロモーター、好ましくはmCMV IE2プロモーターと作用可能に連結したポリペプチド、と、第二プロモーター、好ましくはmCMV IE1プロモーターと作用可能に連結したポリペプチドとは異なる。従って、互いに別々に、しかし同一の宿主細胞において発現させることが望ましい場合、本発明は、2つの異なるポリペプチド、例えば選択マーカーと注目のタンパク質の同時発現のための効率的なベクター、同一タンパク質の2又はそれ以上のサブユニットの同時発現のための効率的なベクターを提供し、あるいは同一タンパク質の異なるドメインのものでさえも提供する。
【0063】
当業者は、本発明の複数の発現ベクターが、同一細胞内に同時トランスフェクションされることがあり、そして多数のタンパク質及び/又は極めて複雑な多量体タンパク質のサブユニットの発現について役割を果たすことがあることを理解するであろう。
【0064】
好ましくは、第一プロモーター、例えばmCMV IE2プロモーターと作用可能に連結したポリペプチドは、二量体又は多量体タンパク質の第一サブユニットであり、そして第二プロモーター、例えばmCMV IE1プロモーターと作用可能に連結したポリペプチドは、二量体又は多量体タンパク質の第二サブユニットである。二量体タンパク質の2つのサブユニットの同時発現は本発明において好ましい。同一タンパク質の2つのサブユニットの同時発現は特に有利であり、これは、両プロモーターからの発現が、使用するプロモーターの強度によって同程度の量のサブユニットの産生、又は既定の比率の両ポリペプチドの産生をもたらしうるためである。当該サブユニットは、続いて、同一細胞内で構築されて成熟タンパク質を形成しうる。
【0065】
本発明のベクターを用いて発現するのに適した二量体タンパク質の好ましい例は、ペプチドホルモン、例えばヒトFSH、ヒトLH、ヒトTSH及びヒトCGのα鎖及びβ鎖である。2つのサブユニットのうちいずれかは、本発明におけるプロモーター、好ましくはmCMV IE2プロモーターと連結されうる。当業者は、他の種由来のホルモン、例えばウマ、ブタ、ウシのホルモンが、例えば組換えポリペプチドの用途によって、本発明に従い同等に使用されうることを理解するであろう。
【0066】
本発明の別の態様において、第一サブユニットはイムノグロブリンの重鎖であり、そして第二サブユニットは軽鎖であり、あるいはその反対も同様である。適当なイムノグロブリンの好ましい例はIgGである。そのようなイムノグロブリンは治療用のヒト化抗体又はヒト抗体であってもよい。そのようなヒト化抗体の非常に好ましい例は、Raptive(登録商標)の商標名を有するヒト化抗CD11抗体である。
【0067】
多くの注目のポリペプチドが本発明のベクターを用いて発現されうる。好ましい態様において、当該ポリペプチドは、絨毛性ゴナドトロピン(chorionic gonadotropin)、卵胞刺激ホルモン、ルトロピン−絨毛性ゴナドトロピン(choriogonadotropic)ホルモン、甲状腺刺激ホルモン、ヒト成長ホルモン、インターフェロン(例えば、インターフェロンベータ−1a、インターフェロンベータ−1b)、インターフェロン受容体(例えば、インターフェロンガンマ受容体)、TNF受容体p55及びp65、インターロイキン(例えば、インターロイキン−2、インターロイキン−11)、インターロイキン結合タンパク質(例えば、インターロイキン−18結合タンパク質)、抗CD11a抗体、並びにそれらの突然変異タンパク質、フラグメント、可溶性形態、機能的誘導体、融合タンパク質から成る群から選択される。
【0068】
他の好ましい注目のポリペプチドには、例えば、エリスロポエチン、顆粒球コロニー刺激因子、顆粒球マクロファージコロニー刺激因子、下垂体ペプチドホルモン、閉経ゴナドトロピン、インスリン様増殖因子(例えば、ソマトメジンC)、ケラチノサイト増殖因子、グリア細胞系由来神経栄養因子、トロンボモジュリン、塩基性線維芽細胞増殖因子、インスリン、第VIII因子、ソマトロピン、骨形成タンパク質−2、血小板由来増殖因子、ヒルジン、エポイエチン(epoitetin)、組換えLFA−3/IgG1融合タンパク質、グルコセレブロシダーゼ、並びにそれらの突然変異タンパク質、フラグメント、可溶性形態、機能的誘導体、融合タンパク質が含まれる。
【0069】
本発明の第二の側面は、少なくとも1つの上述のベクターでトランスフェクションされた宿主細胞に関する。当業者は、当該宿主細胞が本発明の2又はそれ以上のベクターで同等に同時トランスフェクションされうることを理解するであろう。
【0070】
多くの宿主細胞が本発明に適しており、例えば広範な真核生物由来の一次又は樹立細胞系、例えば植物動物細胞及び動物細胞、哺乳類又はヒト細胞である。例えば、適当な宿主細胞は、CHO細胞、COS細胞、CV1細胞、マウスL細胞、HT1080細胞、BHK−21細胞、HEK293細胞、NIH−3T3細胞、LM細胞、YI細胞、NS0及びSP2/0マウスハイブリドーマ細胞等、Namalwa細胞、PRMI−8226細胞、ベロ細胞、WI−38細胞、MRC−5細胞あるいは他の不死化細胞及び/又は形質転換細胞を含む。
【0071】
好ましくは、宿主細胞はCHO細胞であり、そして更に好ましくはCHO−S細胞であり、これは例えば、Shotwellら(1982, J. Biol. Chem. 257: 2974-2980)により説明されている。CHO細胞は、雌のチャイニーズハムスター由来の卵巣の生検からPuck(J.Exp.Med. 108, 945, 1958)により最初に培養された。これらの最初の細胞から、種々の特徴を有する多数の亜系統が調製された。これらのCHO細胞系の1つであるCHO−K1はプロリン要求性であり、ジヒドロ葉酸還元酵素(DHFR)遺伝子について二倍体である。この細胞系由来の別の系は、DHFR欠損CHO細胞系(CHO DUK B11)(PNAS 77, 1980, 4216-4220)であり、これは1つのDHFR遺伝子の突然変異、続いて、その他の遺伝子の損失の結果としてDHFR機能の損失を特徴とする。
【0072】
これらの細胞の全てが、本発明のベクターにより、一過性、又は半安定(例えば、ベクターがエピソームである場合)又は安定(例えば、ゲノム内に組み込まれている状態)の様式でトランスフェクションされうる。注目のポリペプチドを構成的に発現するクローンを樹立するためには、安定トランスフェクションが好ましい。
【0073】
本発明のIE2プロモーター、又はIE2エンハンサーは、「内因性遺伝子活性化(endogenous gene activation)」と称される技術の枠内で制御エレメントとして使用されることがある。本発明のベクターは、相同組換えにより活性化されることが予想されるゲノムの遺伝子座に導入されることがあり、その結果制御配列(IE2プロモーター及び/又はエンハンサー)が、誘導又は増強に発現を必要とする注目の遺伝子と作用可能に連結される。この技術は、例えばWO91/09955に記載されている。
【0074】
第三の側面において、本発明は、注目のポリペプチドの産生方法であって、宿主細胞を本発明のベクターでトランスフェクションする工程を含んで成る方法に関する。
【0075】
注目のポリペプチドの性質によって、本発明の方法は、細胞培養の上清から収集されうる分泌タンパク質又はポリペプチド、あるいは既知の方法により細胞から単離されうる細胞膜タンパク質又は細胞内タンパク質をもたらす。本発明により産生されるポリペプチドは、あらゆる目的について役割を果たすことがあり、そして好ましくはそれはヒト又は動物に対する投与が意図される治療用のタンパク質である。
【0076】
用途によって、自身に前記ポリペプチドを組み込ませている細胞は、本発明の方法の産物でありうる。そのような細胞は、例えば細胞ベースの治療に使用されうる。
【0077】
第四の側面において、本発明は、注目のポリペプチドの産生方法であって、本発明の宿主細胞を培養する工程を含んで成る方法に関する。
【0078】
好ましい態様において、前記方法は更に、注目のポリペプチドを宿主細胞又は細胞培養上清から単離する工程を含んで成る。この工程は、細胞培養上清から単純に単離されうる分泌タンパク質の場合に実施するのが特に有利であり、そして簡便である。しかしながら、この工程は、宿主細胞から単離されうる細胞膜、又は細胞内区画からポリペプチドを単離するのに同等に適用される。
【0079】
当該工程は、一過性、安定性、エピソーム又はウイルスの発現系において使用されうる。以下の実施例に示す通り、本発明のベクターは、安定な発現系において使用される場合、所望のタンパク質の特に強力な発現をもたらした。従って、好ましい態様において、トランスフェクションは安定トランスフェクションである。
【0080】
第五の側面において、本発明のベクターは、注目の遺伝子の発現に使用される。注目の遺伝子は、例えば、上述の注目のポリペプチドのいずれかをコードする遺伝子であってもよい。本発明のベクターはまた、マーカー遺伝子、レポーター遺伝子、増幅可能な遺伝子等の発現に使用されうる。
【0081】
好ましくは、ベクターは、2又はそれ以上の注目の遺伝子又はcDNAの同時発現に使用される。それはまた、1つの注目の遺伝子及び1つのマーカー遺伝子又はレポーター遺伝子又は増幅可能な遺伝子等の同時発現に使用されうる。
【0082】
本発明の枠内で、驚くべきことに、本発明のベクター、特にIE2プロモーター、IE2エンハンサー及びIE1プロモーターを含んで成るベクターが、レポーター遺伝子及び注目の遺伝子を高度に発現したクローンの同定をもたらしたことが示された。従って、第六の側面において、本発明は、大量の注目の遺伝子を発現するクローンの選択のための本発明のベクターの使用に関する。
【0083】
第七の側面において、本発明は、プラスミド又はDNAベースの治療あるいは遺伝子治療における使用のための薬物の製造のための本発明のベクターの使用に関する。
【0084】
第八の側面において、本発明の宿主細胞は、細胞ベースの治療のための薬物の製造に使用される。細胞ベースの治療がヒトの治療を意図する場合、宿主細胞がヒト細胞又は細胞系であることが好ましく、更に好ましくは処置される患者由来の細胞又は細胞系である。
【0085】
本発明を十分に説明してきたが、当業者は、広範囲の同等のパラメーター又は濃度及び条件において、本発明の精神及び範囲を逸脱することなく、且つ過度の実験を必要とすることなく実施されうることが理解されよう。
【0086】
本発明はその特定の態様と関連して説明してきたが、更なる修正が可能であることが理解されよう。本願は、本発明が関連する業界内の既知のプラクティス又は慣行に入る場合、そして特許請求の範囲に従い上述の本質的特徴に適用されうる場合、通常本発明の原理に従い、且つ本願の開示からの前記逸脱を含む本発明のあらゆる変更、使用又は脚色を網羅することが意図される。
【0087】
本明細書で引用する全ての参考文献、例えば論文又は抄録、公開された又は公開されてない米国又は外国特許出願、交付された米国又は外国特許あるいはあらゆる他の参考文献が、引用により本明細書にその全体、例えば引用された参考文献において提示されている全てのデータ、表、図及び文書が組み入れられる。更に、当該参考文献において引用された参考文献の全内容も、引用によりその全体が組み入れられる。
【0088】
既知の方法の工程、常用の方法の工程、既知の方法又は常用の方法への言及は、本発明のあらゆる観点、記載又は態様が関連技術において開示され、教示され又は示唆されていることを承認するものではない。
【0089】
具体的な態様の前述の記載は、他の者が当業界の技術範囲内の知識(本明細書で引用する参考文献の内容を含む)を応用することにより、過度の実験無しに、本発明の一般的概念を逸脱することなく、種々の応用のためにそのような具体的な態様を容易に修飾及び/又は採用することができる本発明の一般的な性質を非常に十分に明らかにしている。従って、そのような採用及び修飾は、本明細書に示す教示及び手引きに基づき、開示された態様の均等の範囲内の意味の範囲内であることが意図される。本明細書の用語及び語法は説明目的であって、限定目的ではなく、その結果、本明細書の用語及び語法は、当業界の通常の技術のうちの1つの知識と組み合わせて、本明細書で示す教示及び手引きを考慮して当業者によって解釈されるべきである。
【実施例1】
【0090】
実施例1:一過性トランスフェクションにおける発現ベクターの評価
材料と方法
材料
細胞:CHO−S、起源Gibco/Invitrogen(カタログ番号11619)
図2及び3に表すように構築したプラスミドDNAは、Nucleobond PC 500キット(Macherey-Nagelカタログ番号740754)を用い、製品プロトコールに従い、一晩生育した標準培地から単離した。
【0091】
トランスフェクション:リポフェクタミン(Invitrogen、カタログ番号18324−012)
フォーマット:24ウェルプレート
細胞:指数増殖期のCHO−S細胞をトランスフェクション24時間前に継代した。低い細胞密度での定常期を回避するために、細胞を0.75x106細胞/mlに希釈した。トランスフェクションする細胞の総計は1,5x105であり、これを24ウェルプレート内でウェル当たり100μlの無血清培地SFM II(Invitrogen、カタログ番号12052−114)中で再懸濁した。
【0092】
トランスフェクション混合物は以下の通りである:
A)リポフェクタミン:2μl
SFM II培地:48μl
全量50μl
B)DNA:1μg(50ng発現ベクター+950ngのキャリアプラスミド、pBluescript II KS(+), Stratagene、カタログ番号212205−01)
SFM II培地:50μlに達するまで補足。
【0093】
溶液AとBを混合し、そして30分間室温でインキュベートした。
【0094】
この混合物を、1.5x105細胞を含む100μlのSFM II培地に添加した。細胞をインキュベーターに戻し、そして37℃、5%CO2で3時間インキュベートした。続いて、400μlのSFM II培地を添加してリポフェクタミンを希釈した。続いて、細胞を解析のための試料採取前に更に48時間インキュベートした。全てのトランスフェクションは3回一組で実施した。
【0095】
ルシフェラーゼ測定
PromegaのBright-Gloルシフェラーゼアッセイシステム(カタログ番号E2610)をルシフェラーゼ測定のために製品ガイドラインに従い使用した。
【0096】
要約すると、細胞懸濁液を複数回上下にピペッティングすることでホモジェナイズし、そして50μlのアリコートを抜き取り、そしてそれを白い96ウェルプレート(Nunc、カタログ番号236108)内に据えた。続いて、50μlの再構成したBright-Glo試薬を添加し、そして5分間室温でインキュベートした。発光をCentro LB 960ルミノメーター(Berthold Technologies)上で5秒の収集時間の間に測定した。
【0097】
結果
CHO−S細胞ベースの一過性発現系において使用した発現ベクターコンストラクトを図2に表す。この一連の実験において、ルシフェラーゼは遺伝子発現の評価のためのレポーター遺伝子として使用した。CHO−S細胞内でほとんど活性がない、プロモーターを全く有さないベクター(コンストラクトA)又はSV40プロモーター/エンハンサーを有するベクター(コンストラクトB)のいずれかをコントロールとして使用した。
【0098】
ベクターA〜Gによる一過性トランスフェクション実験の結果を図4に示す。コンストラクトC及びFにおいて、ルシフェラーゼ発現はIE1プロモーターにより駆動される。両コンストラクトはルシフェラーゼ発現をもたらした。コンストラクトCは更に、IE1プロモーターに対し両方向性に配列されたIE2プロモーターを含んだ。この両方向的な配列は、IE1プロモーター単独の使用(コンストラクトF)と比較して、IE1プロモーター(コンストラクトC)からの発現効率を低下させた。0.68kbの短いバージョンのIE1プロモーター(コンストラクトG)は、より長いバージョン(コンストラクトF)よりも効率的でなかった。
【0099】
同一コンストラクト内の第二プロモーターの存在、不在に関係なく、IE2プロモーターは効率的にルシフェラーゼ発現を駆動させ(コンストラクトD及びE)、そしてその結果注目のポリペプチドの発現のための発現ベクターにおけるプロモーターエレメントとして使用されうる。
【0100】
IE1プロモーターと対照的に、IE2プロモーターは、単独で使用した場合(コンストラクトE)、両方向的構造において使用する場合(コンストラクトD)よりもあまり効率的でなかった。従って、これは両方向性の発現における使用に特に適している。
【0101】
実施例2:安定トランスフェクションにおける発現ベクターの評価
材料と方法
材料
細胞:CHO−S、Gibco/Invitrogen(カタログ番号11619)由来
プラスミドDNA(図2に従う)は、Nucleobond PC 500キット(Macherey-Nagelカタログ番号740754)を用い、製品プロトコールに従い、一晩生育した標準培地から単離した。
【0102】
トランスフェクション:リポフェクタミン(Invitrogen、カタログ番号18324−012)
安定トランスフェクションのために、T75フラスコを使用した。指数増殖期のCHO−S細胞をトランスフェクション24時間前に継代した。低い細胞密度での定常期を回避するために、細胞を0.75x106細胞/mlに希釈した。トランスフェクションする細胞の総計は5x106であり、これをT75フラスコ中7mlのSFM II培地(Invitrogen、カタログ番号12052−114)中で再懸濁した。
【0103】
トランスフェクション混合物は以下の通りである:
A)リポフェクタミン:52.1μl
SFM II培地:517.9μl
全量570μl
B)DNA:10μgの直線型プラスミドDNA(9μgのLuc発現ベクター+1μgの選択用プラスミド:SV40駆動ピューロマイシン耐性遺伝子。全てのプラスミドをPvuIで直線化した)。
SFM II培地は570μlになるよう補足された。
【0104】
AとBを混合し、そして30分間室温でインキュベートした。5x106細胞を含む7mlのものを添加し、そして細胞を37℃、5%CO2のインキュベーター内に3時間戻した。続いて、培養物を800gで3分間遠心し、そして細胞のペレットを5mlのEX−CELL325(JRH、カタログ番号14335−1000M)中で再懸濁し、1xHT及び4.5mMのL−グルタミン(100xHT、Invitrogen、カタログ番号11067−030、L−グルタミン200nm、Sigma、G-7513)を補充した。5mlのEX−CELL325を直接T75フラスコに添加して接着している細胞を再懸濁し、そして当該懸濁液に添加した。合計で5x106細胞が10mlのEX−CELL325培地中にあった。
【0105】
選択手順:
選択は、培地を交換し、そして10μg/mlピューロマイシン(Sigma, P8833)を含む1x106細胞/ml(EX−CELL325)になるよう希釈することによりトランスフェクションから48時間後に行った。2日毎に、細胞を計数し、遠心し、そして新しい選択培地中で1x106生細胞に再懸濁した。生存度はこれらの時点で調べた。21〜35日後、選択は完了し、そして細胞の生存度は80%超であった。
【0106】
ルシフェラーゼ測定
培養物をサンプリングする2時間前に、細胞を計数し、そして培養物を0.2x106生細胞/mlに希釈した。
【0107】
PromegaのBright-Gloルシフェラーゼアッセイシステム(カタログ番号E2610)をルシフェラーゼ測定のために製品ガイドラインに従い使用した。
【0108】
要約すると、細胞懸濁液を複数回上下にピペッティングすることでホモジェナイズし、そして50μlのアリコートを抜き取り、そしてそれを白い96ウェルプレート(Nunc、カタログ番号236108)内に据えた。続いて、50μlの再構成したBright-Glo試薬を添加し、そして5分間室温でインキュベートした。発光をCentro LB 960ルミノメーター(Berthold Technologies)上で5秒の収集時間の間に測定した。
【0109】
続いてルシフェラーゼ活性を試験した試料中の生細胞の数、すなわち典型的には1x104細胞で正規化した。
【0110】
結果
コンストラクトC,D,E及びF(図2を参照のこと)を安定な発現系で試験した。結果を図5に表す。IE2プロモーターを単独で含んで成るコンストラクトEは、この系において最も強力な発現をもたらした。両方向の配列にIE1プロモーターが一緒に存在する場合(コンストラクトD)、IE2プロモーターは尚も、IE1プロモーターが単独で(コンストラクトF)又はIE2プロモーターとの両方向の配置で(コンストラクトC)駆動させる発現よりも優れたルシフェラーゼ発現をもたらした。
【0111】
実施例3:両方向性発現ベクターからの注目の2つのポリペプチドの同時発現
材料と方法
トランスフェクションは実施例1及び2に記載のとおり実施した。要約すると、CHO−S細胞(懸濁液中。Gibco SFMII)を900、500、300及び100ngのベクターDNA(コンストラクトC−2、図3を参照のこと)を24ウェルプレートにおいて一過性トランスフェクションした(各条件につき3回一組)。トランスフェクションの2日後、ルシフェラーゼアッセイは3回一組のものに由来する細胞抽出物を用いて行い、RLU(相対光単位)で表した。同じウェルからの上清を細胞の溶解前に採取し、プールし、そしてELISAでIL18BPについてアッセイした(下文を参照のこと)。
【0112】
IL−18BP ELISA
上清中の組換えヒトIL−18BP(rhIL−18BP)の量を、標準的なELISAにより、ビオチンとカップリングした、プロテインG精製モノクローナル抗rh−IL−18BP抗体を用いて測定した。Extravidine-HRP (Sigma)を検出試薬として用いた。
【0113】
図9は、両方向性mCMVプロモーターコンストラクト(図3を参照のこと)による安定トランスフェクションから90日目に48個のクローンが発現したIL−18BPの量(ng/ml)及びルシフェラーゼの量(RLU)を示す。ルシフェラーゼの検出限界は約5000RLUであり、そしてIL−18BPは2.5ng/mlであった。
【0114】
結果
この一連の実験において、図3で表すコンストラクトC−2からの2つの遺伝子の同時発現がアッセイされた。マーカー遺伝子(ルシフェラーゼ)はIE1プロモーターから発現し、そして注目の遺伝子であるIL−18BPはIE2プロモーターから発現した。IL−18BPは分泌タンパク質である。プロモーターは両方向的構造において配列され、すなわち両プロモーターは同時に反対方向に発現を駆動させた。
【0115】
この研究結果を図6〜9に表す。図6は、一過性発現系において測定される、RLUで表されるルシフェラーゼ発現の程度を示す。同一の一過性発現系において、IL−18BPは、ELISAにより細胞培養上清において測定した。図7は、分泌されたIL−18BPの結果(ng/ml)を示す。図8は、各一過性発現実験におけるIL−18BP対ルシフェラーゼの比率を示す。
【0116】
図6〜8に示す通り、異なる量のプラスミドDNAをトランスフェクションに使用した。使用した全ての量のDNAがルシフェラーゼとIL−18BPの両方の発現をもたらした。驚いたことに、IL−18BP及びルシフェラーゼについて一貫して、最低量のトランスフェクションされたDNA、すなわち100ngのベクターDNAにより最良の結果が得られた。
【0117】
更に、安定な比率(図8)は、両プロモーターの発現能力間の一定の関係を示す。
【0118】
結論として、これらのデータは、両遺伝子が2つのプロモーター単位から同時に発現することを証明し、更に、両発現単位が両方向性のプロモーター構造において十分に機能的であることを示している。
【0119】
続いて、コンストラクトC−2は安定トランスフェクションされ、そしてルシフェラーゼ及びIL−18BPの発現は48個の独立したクローンにおいてアッセイされた。
【0120】
安定トランスフェクションは、トランスフェクション後に使用した培地がProCho5(Cambrex、カタログ番号12766Q)であったことを除き、実施例2に記載のプロトコールに従い実施した。
【0121】
1つの細胞のクローニングのために、プールを384ウェルプレート(Nunc、カタログ番号164688)内に0.5細胞/ウェル(70μl/ウェル)の密度で、Multidropディスペンサー(ThermoLabsystems、カタログ番号5840150)を用いて配列した。8日後、192個のクローンをランダムに選び、そしてルシフェラーゼ発現について解析した。最高のLuc発現を有する48個のクローンを選択し、そしてルシフェラーゼ(ルミノメーターで)及びIL−18BP(手作業によるELISAで。上文を参照のこと)について再びアッセイした。
【0122】
図9は、この実験結果を示す。48個全てのクローンが、量の変化はあるが、ルシフェラーゼ及びIL−18BPを発現した。
【0123】
実施例4:最小エンハンサー配列の定義
材料と方法
プラスミドDNA
短縮されたmCMVプロモーターを含む一連のベクターが、PCR(ポリメラーゼ連鎖反応)及びmCMVpに沿って一致している特異的プライマー(表1)を用いて構築した。
【0124】
PCR条件は以下の通りである:
混合液:
10ngのDNAプラスミド(prevmCMV-ルシフェラーゼ(ΔXhoI)、図2のコンストラクトE)
50pmolのセンス、アンチセンス両方のプライマー(以下の表1を参照のこと。全てコモンアンチセンス)
200μMの各dNTP(dATP、dTTP、dGTP、dCTP)
1xDynazymeバッファー(1.5mMのMgCl2を含む)
4ユニットのDynazyme II DNAポリメラーゼ (Finnzymes、カタログ番号F−501S)
【0125】
【表1】
【0126】
5μlの各PCR反応液を1%アガロースゲル上に充填した。正確な長さを有するバンドを切り出し、そしてQiagen Minilute Gel Extractionキット(カタログ番号28606)を用いてクローニング前に精製した。
【0127】
【表2】
【0128】
mCMVpから保持された塩基対の数に相当する位置は、基準としてIE2から+1の位置を考慮すると、−1076、−783、−587、−387及び−189である。
【0129】
クローニングストラテジーは、プロモーターフラグメントのいずれについても同じであり、PCRは完全長mCMVp(prevmCMV−ルシフェラーゼ(ΔXhoI)、すなわち図2のコンストラクトE)に対し実施した。続いてフラグメントは、特異的プライマー配列の先端に加えられた2つの制限部位をXhoI/EcoRIで消化された。続いて、プロモーター配列は、それをXhoI/EcoRIで消化することによりコンストラクトEから除き、そしてより短いバージョンを全く同じ部位に挿入した。
【0130】
コンストラクトの評価は、一過性リポフェクタミントランスフェクション、続くルシフェラーゼ測定により行った。追加の材料と方法は実施例1に記載のとおりである。この実施例で使用したSFM培地はProCho5(Cambrex、カタログ番号12766Q)であった。
【0131】
結果
ルシフェラーゼ遺伝子を駆動させるmCMV IE2プロモーターを含んで成るベクターH〜N(図10.a)は、IE2プロモーターからの高い発現レベルに必要な最小配列を定義するために構築された。
【0132】
7個の発現ベクターコンストラクトH〜Nは、CHO−S細胞ベースの一過性発現系において使用した。結果を図10.bに表す。コンストラクトLはこの系において最も強力なルシフェラーゼ発現を保持している最も短いコンストラクトである。コンストラクトMでさえも、コンストラクトH〜Lで達成された発現レベルの約30%のレベルのルシフェラーゼ発現をもたらした。コンストラクトNで得られたルシフェラーゼ発現は非常に低かったが、尚も有意であり、これはTATAボックス及びイニシエーターを含む生産的な転写開始部位について予想される基礎のプロモーター活性を示している。
【0133】
結論として、これらの実験は、本明細書でmCMV IE2エンハンサーと称するmCMV IE2上流領域の新規エンハンサーを定義する。上記実験において、当該IE2エンハンサーは、コンストラクトN内で保持された最小IE2プロモーターからの転写を増大させる。高いレポーター遺伝子発現に必要とされる最小配列は−587〜−189bpのフラグメント(コンストラクトL)内にあり、そして−387〜−189bpフラグメントを含んで成るコンストラクトもルシフェラーゼ発現を増強させた(コンストラクトM)。
【0134】
実施例5:SV40最小プロモーターを活性化させる新規IE2エンハンサー。
新規IE2エンハンサーが実際にエンハンサー活性に必要な全ての基準を満たすか、すなわち、(1)位置、(2)配向、及び(3)プロモーターの同一性、とは無関係に発現を増強させるか否かを評価するために、追加の実験を実施した。そのために、コンストラクトO〜Vを構築し、新規IE2エンハンサーが、SV40プロモーターに対する配向、距離及び位置(5’又は3’)とは無関係に異種プロモーターであるSV40プロモーターの発現を増強しうることを評価した。コンストラクトW、X及びYはコントロールとし、ここで、WはSV40エンハンサーを含み、Xは全くエンハンサーを含まないがSV40プロモーターを含み、そしてYはエンハンサーもプロモーターも含まない。
【0135】
ベクターの構築
SV40プロモーターのみを含むpSV−Lucと称されるベクター(図11(a)のコンストラクトX)は、SV40プロモーター駆動ルシフェラーゼ遺伝子、及び前記遺伝子の3’側に位置するSV40エンハンサー、を含むpGL3−Ctrl(Promega, E2741)(コンストラクトW)、及びプロモーターとエンハンサーの両方を欠いているpGL3−Basic(Promega, E1751(コンストラクトY)から構築した。
【0136】
要約すると、pGL3−CtrlをNotI/XbaIで切り出して、SV40プロモーターを含むフラグメント、続いてルシフェラーゼ遺伝子を含むフラグメントを単離した。同様に、pGL3−BasicをNotI/XbaIで切り出し、そして、3’エンハンサーの無い、ポリA領域を含むベクターのバックボーンを単離した。2つのフラグメントを組み合わせることで、pSV−Luc(コンストラクトX)を得た。
【0137】
このベクターのSV40プロモーターの5’領域は、IE2エンハンサー配列(−587〜−189)を両方の配向でクローニングすることにより操作し、これらをp5'enh-SV-Luc(コンストラクトO)及びp5'reverse enh-SV.Luc(コンストラクトQ)と称した。更に、IE2エンハンサー配列(−587〜−189)もルシフェラーゼの3’領域に両方の配向でクローニングした。生じたベクターをp3'enh-SV-Luc+(コンストラクトS)及びp3'reverseenh-SV.Luc.(コンストラクトU)と称した。
【0138】
同じ手順をIE2エンハンサーの短いバージョン、すなわち−587〜−189の代わりに−387〜−189を有するもので実施し、そしてコンストラクトP,R,T及びVと称した。図11.aを参照のこと。
【0139】
コンストラクトO、P:レシピエントベクターは、NheI/SmaIで消化することにより開裂させたpSV−Luc+(図11.aのコンストラクトX)を用いた。完全長のエンハンサーをNdeIによる消化、続いて、クレノーポリメラーゼを用いた平滑末端化反応、精製及びNheIによる消化により単離した。同じストラテジーを短いエンハンサーコンストラクトの構築に利用した。
【0140】
コンストラクトQ、R:レシピエントベクターは、XhoI/SmaIで消化することにより開裂させたpSV−Luc+(図11.aのコンストラクトX)を用いた。完全長のエンハンサーをNdeIによる消化、続いて、クレノーポリメラーゼを用いた平滑末端化反応、精製及びXhoIによる消化により単離した。同じストラテジーを短いエンハンサーコンストラクトの構築に利用した。
【0141】
コンストラクトS、T、U及びV:レシピエントベクターは、BamHIによる消化、続くクレノーポリメラーゼを用いた平滑末端化により開裂させたpSV−Luc+(図11.aのコンストラクトX)を用いる。完全長のエンハンサーをNdeI/NheIによる消化、続いて、クレノーポリメラーゼを用いた平滑末端化反応により単離した。クローニングにより両方の配向が可能となり、これらを制限解析で確認した。両方の配向は解析のために維持された。同じストラテジーを短いエンハンサーコンストラクトの構築に利用した。
【0142】
コンストラクトpGL3−Basic(コンストラクトY)は発現しないコントロールとしての役割を果たした。pGL3−Ctrl(コンストラクトW)はSV40プロモーター/エンハンサーベクターとしての役割を果たした。pSV−LucはSV40プロモーターを単独で有するコントロールとした(コンストラクトX)。
【0143】
トランスフェクション及びルシフェラーゼ測定は前述の実施例のように実施した。
【0144】
結果
図11.aのコンストラクトO〜Yで得られた結果を図11.bに表す。エンハンサー無しのSV40プロモーターコンストラクトを追加されたエンハンサー活性のための基線として採用し、そしてコンストラクトXで測定された活性を1と設定した。長い又は短いIE2エンハンサーを有する全てのコンストラクトが、レポーター遺伝子の発現をもたらした。長いバージョンは、SV40プロモーターからのレポーター遺伝子の高発現を一貫してもたらし、これはSV40プロモーターとSV40エンハンサーの組み合わせ(コンストラクトO)で得られた発現レベルよりもはるかに高かった。従って、この実験は、位置及び配向と無関係に異種プロモーターを活性化させる正規のエンハンサーとして、−587〜−189の配列及び−387〜−189の配列を明確に定義する。
【0145】
実施例6:長いIE2エンハンサーのバージョン(−537〜−189)とhCMVエンハンサーとの比較
リポフェクタミンによるトランスフェクション、その後のルシフェラーゼ測定のための実験プロトコールは実施例1に記載されている。
【0146】
結果
この実験において、SV40プロモーターの5’側に両方の配向の新規IE2エンハンサーの長いバージョンを有するコンストラクトO及びQを既知の強力なエンハンサーであるhCMV(ヒトサイトメガロウイルス)エンハンサーとの比較に使用した。このために、mCMV IE2配列はコンストラクトOにおいてhCMVエンハンサー配列(配列番号2)で置換され、その結果コンストラクトO−2が生じた。同じことがコンストラクトQで行われ、その結果コンストラクトQ−2が生じた。
【0147】
クローニングに使用した、MluI部位(MluI=acgcgt)を隣接しているhCMVエンハンサー配列は以下の通りである:
【化1】
【0148】
SV−LUc+は、MluIで消化し、そしてウシ小腸アルカリホスファターゼで処理してセルフライゲーションを防いだ。hCMVプロモーター配列をMluI部位でクローニングした。両方の配向のクローンを同等のIE2コンストラクトとの比較のために維持した。
【0149】
ルシフェラーゼ発現の結果を図12に示す。新規IE2エンハンサー(長いバージョン)で得られたルシフェラーゼ発現レベルは、古典的なhCMVエンハンサーで得られるルシフェラーゼ発現レベルの少なくとも2倍の高さであった。
【0150】
実施例7:両方向性コンストラクトにおけるIE2エンハンサーの能力
図13に示すようなコンストラクト♯26及び♯140と称する2つの追加のコンストラクトを設計して、両方向的構造の新規エンハンサーを試験した。
【0151】
♯26:このベクターの土台にmCMV−Luc+(コンストラクトC、図13)を使用した。これをSacII/EcoRIで消化した。IL−18BPカセットをphCMV−IL18BP2から取り出した。このベクターをSacII/EcoRIで切断することで、イントロンA、続いてIL−18BPオープンリーディングフレーム及びSV40ポリA領域を含むフラグメントを単離した。
【0152】
♯140:このベクターの土台に図10.aのコンストラクトLを使用した。これをXhoI/NheIで消化してIE2エンハンサーの5’側でベクターを開いた。IE1プロモーターからIL18BPを発現するベクターをpBS.I IL18BP(IE1).Iと称し、インサートドナーとして使用した。このベクターをXhoI/SpeIで消化することにより、XhoIからのIE1プロモーター(図1を参照のこと)、続いてイントロンA−IL18Bp−SV40ポリAカセットを含むフラグメントを単離した。生じたコンストラクトは、基のmCMVプロモーター配列の−589からXhoIまでの配列を欠いていた。
【0153】
安定トランスフェクション及びルシフェラーゼ測定は、実施例2に記載の通り実施し、そしてIL18BPのELISAは実施例3に記載の通り実施した。
【0154】
しかしながら、コンストラクト♯140は、IE1プロモーターとIE2プロモーターが逆の配向にある点でコンストラクト♯26とは正確には似ていない。従って、ルシフェラーゼ発現は、コンストラクト♯26においてはIE1プロモーターで、一方、コンストラクト♯140においてはIE2プロモーターで駆動させ、そしてIL18BP発現は、コンストラクト♯26においてはIE2プロモーターで、そしてコンストラクト♯140においてはIE1プロモーターで駆動させた。
【0155】
両コンストラクトで得られた結果は、両方向性の発現ベクター(コンストラクト♯140)の2つのプロモーターに対する新規IE2エンハンサーの同時作用にとって重要であるので、以下に示す。
【0156】
図14は、ルシフェラーゼとIL−18BPの発現の観点での、コンストラクト♯26及び♯140で安定トランスフェクションしたプール由来の結果を表す。コンストラクト♯140は、マーカー遺伝子(ルシフェラーゼ)と注目の遺伝子(IL−18BP)両方のより高い発現をもたらした。
【0157】
ルシフェラーゼとIL−18Bpの発現の安定性を評価するために、プールを選択的条件下、すなわちピューロマイシン処理のもとで維持するか、あるいは選択圧無しで(ピューロマイシン無しで)3週間維持した。結果を図15〜17に示す。レポーター遺伝子であるルシフェラーゼ及びIL−18BPの発現レベルは長期間有意に変化しなかった。図16及び17を参照のこと。
【0158】
従って、コンストラクト♯26及び♯240はともに、選択圧に関係なく長期間類似の発現レベルを示したことが証明された。それ故に、新規IE2エンハンサーを有するコンストラクトは、2つの遺伝子の安定な且つ同時の発現に適している。
【0159】
上記結果がプールで得られたので、クローンは両プールからウェル当たり0.5細胞に限界希釈することで導いた。
【0160】
クローンはピューロマイシン選択のもとで培養し、クローンの発現レベルを評価した。続いて、単離したクローンをピューロマイシンの存在下、そして不在下で分離し、最終的にそれらの安定性をモニタリングした。図18及び19に示した結果は、クローンが+/−ピューロマイシン条件で分割される前に得られた。ピューロマイシン除去から2週間後の結果は、両コンストラクトについて有意な差異を示さず、これは安定であることを示している。この研究は更に10〜12週続けられる。
【0161】
両遺伝子の発現を評価するために、ハイスループットのフォーマットを使用し、すなわち96ウェルプレートで行った。
【0162】
1日目:1/2希釈の細胞、100μlのProCho5培養液(無血清)+5%ウシ胎児血清を含む100μlの新鮮なProCho5。2.5%FBSの終濃度で、細胞は接着することができた。メンテナンスプレートの毎週の継代は、1/20希釈係数で、全てProCho5培地で実施した。
【0163】
2日目:培地を捨て、200μlの1xPBS(Invitrogen, 10010-015)で一回洗浄し、そして5%FBSを含む75μlの新鮮なProCho5を添加し、そして24時間の発現のパルスでインキュベートした。
【0164】
3日目:50μlの上清を回収し、そして200μlのELISAバッファー(1xPBS、0.1%w/vBSA、0.2%v/vTween20)を添加した。100μlをIL−18BPについてELISAで解析した。
【0165】
ウェルを200μlの1xPBSで洗浄し(廃棄)、そして100μlのGlo溶解バッファー(Promega, E266a)を添加した。ウェルを30分間室温でインキュベートして細胞の溶解を評価した。ルシフェラーゼ測定は、白の96ウェルプレートに移した30μlの溶解した細胞及び30μlの再構成したBright−Glo試薬を用いて実施した。発光をCentro LB 960ルミノメーター(Berthold Technologies)上で5秒の収集時間の間に測定した。
【0166】
コンストラクト♯26による安定トランスフェクションから得られたクローンの解析を図18に表し、そしてコンストラクト♯140による安定トランスフェクションから生じたものと図19に表す。
【0167】
図18及び19に表したクローンは、それらのルシフェラーゼ値により、低下する順にランク付けした。IL18BPの発現はOD値として示した。ELISAをハイスループットのフォーマットで実施したので、IL−18BPレベルの実際の定量は得られなかった。しかしながら、2500ng/ml及び250ng/mlのコントロール並びにブランクを含めてプレート間の変動をモニターした。
【0168】
図20は、inverted ChemiDoc viewにおけるプレート上でのルシフェラーゼ発現を示す。このviewにCCDカメラ(Biorad)を使用し、その結果化学発光由来のシグナルを獲得することが可能となる(図20に示す通り)。Quantity One 4.2.3と称されるソフトウェアは、写真の管理、例えばシグナルの反転等を可能にし、これを本願で利用した。
【0169】
図18〜20に示す結果から明らかなように、コンストラクト♯140は多くの非発現クローンをもたらした。しかしながら、驚くべきことに、幾つかのポジティブクローンが両遺伝子を極度に強く発現した。
【0170】
従って、コンストラクト♯140は、非常に初期のクローニング段階における非常に高いエクスプレッサーについてのスクリーニングを可能にし、その結果注目の両遺伝子を高度に発現する幾つかのクローンを同定するために、多数のクローンについて試験し、そしてフォローアップする必要がなくなる。
【0171】
【表3】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
mCMV−IE2遺伝子のプロモーター、若しくはその機能的な発現促進フラグメント、及び/又はmCMV−IE2遺伝子のエンハンサー、若しくはその機能的な発現促進フラグメントを含んで成る発現ベクターであって、mCMVの完全な遺伝子を全く含まない発現ベクター。
【請求項2】
mCMV−IE2プロモーター、若しくはその機能的な発現促進フラグメントを更に含んで成る、請求項1に記載のベクター。
【請求項3】
ウイルス起源、細胞起源若しくは人工起源の第一及び第二プロモーター、又はそれらの機能的発現促進フラグメントを含んで成る、請求項1又は2に記載のベクター。
【請求項4】
第一プロモーターがmCMV−IE2プロモーター、又はその機能的発現促進フラグメントであり、且つ第二プロモーターがmCMV−IE1プロモーター、又はその機能的発現促進フラグメントである、請求項3に記載のベクター。
【請求項5】
配列番号1のDNA配列を含んで成る、請求項1〜4のいずれか1項に記載のベクター。
【請求項6】
mCMV IE2上流領域のヌクレオチド−387〜−189を含むフラグメントを含んで成り、ここで、このヌクレオチドの番号付けはIE2遺伝子の+1に対するものである、請求項1〜5のいずれか1項に記載のベクター。
【請求項7】
mCMV IE2上流領域のヌクレオチド−587〜−189を含むフラグメントを含んで成り、ここで、このヌクレオチドの番号付けはIE2遺伝子の+1に対するものである、請求項1〜6のいずれか1項に記載のベクター。
【請求項8】
プロモーター、又はその機能的な発現促進フラグメントが、少なくとも1つのポリペプチドをコードするDNA配列と作用可能に連結している、請求項1〜7のいずれか1項に記載のベクター。
【請求項9】
DNA配列が注目のタンパク質をコードしている、請求項8に記載のベクター。
【請求項10】
DNA配列がマーカータンパク質をコードしている、請求項8に記載のベクター。
【請求項11】
DNA配列がレポータータンパク質をコードしている、請求項8に記載のベクター。
【請求項12】
第一プロモーター、又はその機能的発現促進フラグメント、と、第二プロモーター、又はその機能的発現促進フラグメントとが両方向的に配列されている、請求項3〜11のいずれか1項に記載のベクター。
【請求項13】
5’UTR、イントロン、3’UTR、mRNA3’末端プロセシング配列、ポリアデニル化部位、内部リボソーム侵入配列(IRES配列)から選択される1又は複数の制御エレメントを更に含んで成る、請求項1〜12のいずれか1項に記載のベクター。
【請求項14】
制御エレメントがIRESであり、少なくともポリシストロン性mRMAをコードするDNA配列を更に含んで成る、請求項13に記載のベクター。
【請求項15】
インスレーター、境界エレメント、遺伝子座制御領域(LCR)、マトリックス付着領域(MAR)、並びに組換え及びカセット交換のためのエレメントから選択される1又は複数のDNAエレメントを更に含んで成る、請求項1〜14のいずれか1項に記載のベクター。
【請求項16】
第一プロモーターに作用可能に連結したポリペプチドをコードするDNA配列と第二プロモーターと作用可能に連結したポリペプチドをコードするDNA配列とが同一のポリペプチドをコードしている、請求項8〜15のいずれか1項に記載のベクター。
【請求項17】
第一プロモーターに作用可能に連結したポリペプチドをコードするDNA配列と第二プロモーターと作用可能に連結したポリペプチドをコードするDNA配列とが異なるポリペプチドをコードしている、請求項8〜15のいずれか1項に記載のベクター。
【請求項18】
第一プロモーターに作用可能に連結したポリペプチドをコードするDNA配列が二量体又は多量体タンパク質の第一サブユニットをコードし、且つ第二プロモーターと作用可能に連結したポリペプチドをコードするDNA配列が二量体又は多量体タンパク質の第二サブユニットをコードしている、請求項17に記載のベクター。
【請求項19】
一方のサブユニットが、ヒトFSH、ヒトLH、ヒトTSH及びヒトCGから選択されるホルモンのアルファ鎖であり、且つ他方のサブユニットがβ鎖である、請求項18に記載のベクター。
【請求項20】
一方のサブユニットがイムノグロブリンの重鎖であり、且つ他方のサブユニットが軽鎖である、請求項18に記載のベクター。
【請求項21】
注目のタンパク質が、FSH、LH、CG、TSH、成長ホルモン、インターフェロン、TNF結合タンパク質I、TNF結合タンパク質II、Raptiva(登録商標)、IL−18BP、あるいはそれらの突然変異タンパク質、フラグメント、機能的誘導体、融合タンパク質から選択される、請求項9〜20のいずれか1項に記載のベクター。
【請求項22】
マーカータンパク質が、アデノシンデアミナーゼ(ADA)、アミノグリコシドホスホトランスフェラーゼ(neo)、ジヒドロ葉酸還元酵素(DHFR)、ハイグロマイシン−B−ホスホトランスフェラーゼ(HPH)、チミジンキナーゼ(tk)、キサンチン−グアニンホスホリボシルトランスフェラーゼ(gpt)、多剤耐性遺伝子(MDR)、オルニチンデカルボキシラーゼ(ODC)及びN−(ホスホンアセチル)−L−アスパラギン酸耐性(CAD)、ピューロマイシンアセチルトランスフェラーゼ(PAC)、ガラクトキナーゼ、ヒト葉酸受容体、又は還元葉酸担体から選択される、請求項10〜21のいずれか1項に記載のベクター。
【請求項23】
ルシフェラーゼ、緑色蛍光タンパク質、アルカリホスファターゼ、及び西洋ワサビペルオキシダーゼ又はそれらの組み合わせから選択される、請求項11〜22に記載のベクター。
【請求項24】
請求項1〜23のいずれか1項に記載のベクターでトランスフェクションされた宿主細胞。
【請求項25】
CHO細胞である、請求項24に記載の宿主細胞。
【請求項26】
ポリペプチドの産生方法であって、宿主細胞を、請求項1〜23のいずれか1項に記載の少なくとも1つのベクターでトランスフェクションする工程を含んで成る方法。
【請求項27】
トランスフェクションが安定トランスフェクションである、請求項26に記載の方法。
【請求項28】
ポリペプチドの産生方法であって、請求項24又は25に記載の宿主細胞を、ポリペプチドの発現が可能な条件下で培養する工程を含んで成る方法。
【請求項29】
宿主細胞又は細胞培養上清からポリペプチドを単離する工程を更に含んで成る、請求項26又は27に記載の方法。
【請求項30】
注目の遺伝子の発現のための、請求項1〜23のいずれか1項に記載のベクターの使用。
【請求項31】
大量の注目の遺伝子を発現するクローンの選択のための、請求項1〜23のいずれか1項に記載のベクターの使用。
【請求項32】
2又はそれ以上の注目の遺伝子又はDNAの同時発現のための、請求項3〜23のいずれか1項に記載のベクターの使用。
【請求項33】
DNAベースの治療のための薬物の製造のための、請求項1〜23のいずれか1項に記載のベクターの使用。
【請求項34】
細胞ベースの治療のための薬物の製造のための、請求項24又は25に記載の宿主細胞の使用。
【請求項1】
mCMV−IE2遺伝子のプロモーター、若しくはその機能的な発現促進フラグメント、及び/又はmCMV−IE2遺伝子のエンハンサー、若しくはその機能的な発現促進フラグメントを含んで成る発現ベクターであって、mCMVの完全な遺伝子を全く含まない発現ベクター。
【請求項2】
mCMV−IE2プロモーター、若しくはその機能的な発現促進フラグメントを更に含んで成る、請求項1に記載のベクター。
【請求項3】
ウイルス起源、細胞起源若しくは人工起源の第一及び第二プロモーター、又はそれらの機能的発現促進フラグメントを含んで成る、請求項1又は2に記載のベクター。
【請求項4】
第一プロモーターがmCMV−IE2プロモーター、又はその機能的発現促進フラグメントであり、且つ第二プロモーターがmCMV−IE1プロモーター、又はその機能的発現促進フラグメントである、請求項3に記載のベクター。
【請求項5】
配列番号1のDNA配列を含んで成る、請求項1〜4のいずれか1項に記載のベクター。
【請求項6】
mCMV IE2上流領域のヌクレオチド−387〜−189を含むフラグメントを含んで成り、ここで、このヌクレオチドの番号付けはIE2遺伝子の+1に対するものである、請求項1〜5のいずれか1項に記載のベクター。
【請求項7】
mCMV IE2上流領域のヌクレオチド−587〜−189を含むフラグメントを含んで成り、ここで、このヌクレオチドの番号付けはIE2遺伝子の+1に対するものである、請求項1〜6のいずれか1項に記載のベクター。
【請求項8】
プロモーター、又はその機能的な発現促進フラグメントが、少なくとも1つのポリペプチドをコードするDNA配列と作用可能に連結している、請求項1〜7のいずれか1項に記載のベクター。
【請求項9】
DNA配列が注目のタンパク質をコードしている、請求項8に記載のベクター。
【請求項10】
DNA配列がマーカータンパク質をコードしている、請求項8に記載のベクター。
【請求項11】
DNA配列がレポータータンパク質をコードしている、請求項8に記載のベクター。
【請求項12】
第一プロモーター、又はその機能的発現促進フラグメント、と、第二プロモーター、又はその機能的発現促進フラグメントとが両方向的に配列されている、請求項3〜11のいずれか1項に記載のベクター。
【請求項13】
5’UTR、イントロン、3’UTR、mRNA3’末端プロセシング配列、ポリアデニル化部位、内部リボソーム侵入配列(IRES配列)から選択される1又は複数の制御エレメントを更に含んで成る、請求項1〜12のいずれか1項に記載のベクター。
【請求項14】
制御エレメントがIRESであり、少なくともポリシストロン性mRMAをコードするDNA配列を更に含んで成る、請求項13に記載のベクター。
【請求項15】
インスレーター、境界エレメント、遺伝子座制御領域(LCR)、マトリックス付着領域(MAR)、並びに組換え及びカセット交換のためのエレメントから選択される1又は複数のDNAエレメントを更に含んで成る、請求項1〜14のいずれか1項に記載のベクター。
【請求項16】
第一プロモーターに作用可能に連結したポリペプチドをコードするDNA配列と第二プロモーターと作用可能に連結したポリペプチドをコードするDNA配列とが同一のポリペプチドをコードしている、請求項8〜15のいずれか1項に記載のベクター。
【請求項17】
第一プロモーターに作用可能に連結したポリペプチドをコードするDNA配列と第二プロモーターと作用可能に連結したポリペプチドをコードするDNA配列とが異なるポリペプチドをコードしている、請求項8〜15のいずれか1項に記載のベクター。
【請求項18】
第一プロモーターに作用可能に連結したポリペプチドをコードするDNA配列が二量体又は多量体タンパク質の第一サブユニットをコードし、且つ第二プロモーターと作用可能に連結したポリペプチドをコードするDNA配列が二量体又は多量体タンパク質の第二サブユニットをコードしている、請求項17に記載のベクター。
【請求項19】
一方のサブユニットが、ヒトFSH、ヒトLH、ヒトTSH及びヒトCGから選択されるホルモンのアルファ鎖であり、且つ他方のサブユニットがβ鎖である、請求項18に記載のベクター。
【請求項20】
一方のサブユニットがイムノグロブリンの重鎖であり、且つ他方のサブユニットが軽鎖である、請求項18に記載のベクター。
【請求項21】
注目のタンパク質が、FSH、LH、CG、TSH、成長ホルモン、インターフェロン、TNF結合タンパク質I、TNF結合タンパク質II、Raptiva(登録商標)、IL−18BP、あるいはそれらの突然変異タンパク質、フラグメント、機能的誘導体、融合タンパク質から選択される、請求項9〜20のいずれか1項に記載のベクター。
【請求項22】
マーカータンパク質が、アデノシンデアミナーゼ(ADA)、アミノグリコシドホスホトランスフェラーゼ(neo)、ジヒドロ葉酸還元酵素(DHFR)、ハイグロマイシン−B−ホスホトランスフェラーゼ(HPH)、チミジンキナーゼ(tk)、キサンチン−グアニンホスホリボシルトランスフェラーゼ(gpt)、多剤耐性遺伝子(MDR)、オルニチンデカルボキシラーゼ(ODC)及びN−(ホスホンアセチル)−L−アスパラギン酸耐性(CAD)、ピューロマイシンアセチルトランスフェラーゼ(PAC)、ガラクトキナーゼ、ヒト葉酸受容体、又は還元葉酸担体から選択される、請求項10〜21のいずれか1項に記載のベクター。
【請求項23】
ルシフェラーゼ、緑色蛍光タンパク質、アルカリホスファターゼ、及び西洋ワサビペルオキシダーゼ又はそれらの組み合わせから選択される、請求項11〜22に記載のベクター。
【請求項24】
請求項1〜23のいずれか1項に記載のベクターでトランスフェクションされた宿主細胞。
【請求項25】
CHO細胞である、請求項24に記載の宿主細胞。
【請求項26】
ポリペプチドの産生方法であって、宿主細胞を、請求項1〜23のいずれか1項に記載の少なくとも1つのベクターでトランスフェクションする工程を含んで成る方法。
【請求項27】
トランスフェクションが安定トランスフェクションである、請求項26に記載の方法。
【請求項28】
ポリペプチドの産生方法であって、請求項24又は25に記載の宿主細胞を、ポリペプチドの発現が可能な条件下で培養する工程を含んで成る方法。
【請求項29】
宿主細胞又は細胞培養上清からポリペプチドを単離する工程を更に含んで成る、請求項26又は27に記載の方法。
【請求項30】
注目の遺伝子の発現のための、請求項1〜23のいずれか1項に記載のベクターの使用。
【請求項31】
大量の注目の遺伝子を発現するクローンの選択のための、請求項1〜23のいずれか1項に記載のベクターの使用。
【請求項32】
2又はそれ以上の注目の遺伝子又はDNAの同時発現のための、請求項3〜23のいずれか1項に記載のベクターの使用。
【請求項33】
DNAベースの治療のための薬物の製造のための、請求項1〜23のいずれか1項に記載のベクターの使用。
【請求項34】
細胞ベースの治療のための薬物の製造のための、請求項24又は25に記載の宿主細胞の使用。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10.a】
【図10.b】
【図11.a】
【図11.b】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10.a】
【図10.b】
【図11.a】
【図11.b】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【公開番号】特開2012−235787(P2012−235787A)
【公開日】平成24年12月6日(2012.12.6)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2012−157563(P2012−157563)
【出願日】平成24年7月13日(2012.7.13)
【分割の表示】特願2006−505456(P2006−505456)の分割
【原出願日】平成16年3月10日(2004.3.10)
【出願人】(309025524)メルク セローノ ソシエテ アノニム (49)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成24年12月6日(2012.12.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−157563(P2012−157563)
【出願日】平成24年7月13日(2012.7.13)
【分割の表示】特願2006−505456(P2006−505456)の分割
【原出願日】平成16年3月10日(2004.3.10)
【出願人】(309025524)メルク セローノ ソシエテ アノニム (49)
【Fターム(参考)】
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