説明

α−1,4−グルカンを含む粉末食品

【課題】
従来の澱粉から精製したアミロースやアミロース高含有澱粉では解決できなかった工業的利便性などや、シクロデキストリンでの包接による粉末化では汎用性が欠けていた点を改善する必要がある。
【解決手段】
グルカンホスホリラーゼにより酵素的に合成されたα−1,4−グルカンを用いることで、新規な粉末食品を製造することができるようになった。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、酵素合成α−1,4−グルカンを含むことを特徴とする粉末食品に関するものである。
【背景技術】
【0002】
α−1,4−グルカンとしてはアミロースが知られ、天然にも存在し、また酵素反応で合成することも試みられている。こうしたアミロースは様々な物性を呈し、包接などの作用に基づき、新規な粉末乾燥品や類縁する賦形剤用途での検討もなされ、粉末食品製造への期待が高まっている。
【0003】
天然の澱粉からアミロースを得る方法はいくつか公知である。たとえば、天然澱粉に、α−1,6−グルコシド結合のみを特異的に切断する酵素(例えば、イソアミラーゼまたはプルラナーゼ;これらは、枝切り酵素として既知として既知である)を作用させて分岐部分を分解することにより、アミロースを得る方法(いわゆる澱粉酵素分解法)がある。また澱粉糊液からアミロース/ブタノール複合体を沈殿させてアミロースのみを分離する方法がある。
【0004】
しかしこのようにして天然の澱粉から得られたアミロースには、次のような問題点が指摘されている:(a)天然澱粉に含まれるアミロースは、通常、分散度(Mw/Mn)が1.3以上と広い。これらのアミロースには、(i)結晶化度が高く、水に溶けにくい低分子量アミロース、(ii)結合力の高い高分子量アミロース、および(iii)その中間の分子量の、膨潤しやすいアミロースが混在する。そのため、これらの種々の分子量のアミロースは、互いに阻害しあい、分子量の異なる他のアミロースが有する優れた特性を打ち消してしまう。
(b)天然澱粉に含まれるアミロースの分子量は、通常、数十kDaから数百kDaであり、水溶性が期待できない;ならびに
(c)天然澱粉からのアミロースの分離は、操作が煩雑で、収率も低く、工業的製法になり得ない。
(d)得ることができても、水に溶かすには100℃を超える加熱が必要で、工業的利用にも制限がある。
【0005】
以上のような理由で、天然澱粉から得られたアミロースの食品への応用は進展しなかったものと思われ、粉末食品製造に当たっても例外ではない。
天然の澱粉からではなく、酵素の作用によりグルコース残基を連結してα−1,4−グルカンを合成する方法(酵素合成法)も検討され、いくつか公知である。
【0006】
一例として、スクロースを基質として、アミロスクラーゼ(amylosucrase、EC 2.4.1.4)を作用させる方法がある(以降、AMSU法と略す)。AMSU法で得られるα−1,4−グルカンは低重合度である。高度に精製されたアミロスクラーゼを用いて製造されるα−1,4−グルカンであっても、分子量は8,941Daであると報告されている(Montalkら、FEBS Letters 471、第219〜223頁(2000年);非特許文献1)。このような低重合度のα−1,4−グルカンでは水への溶解性が期待できない。
【0007】
酵素合成の別の方法として、グルカンホスホリラーゼ(α−glucan phosphorylase、EC 2.4.1.1;通常、ホスホリラーゼという)を用いる方法がある。このような方法には、ホスホリラーゼのみを基質(グルコース−1−リン酸)に作用させてそのグルコシル基をプライマー(例えば、マルトヘプタオース)に転移する方法(GP法と呼ばれる)およびホスホリラーゼに加えてスクロースホスホリラーゼを用いることによってスクロースからG−1−Pを合成してこのG−1−Pのグルコシル基をプライマーに転移する方法(SP−GP法と呼ばれる)がある(例えば、国際公開第WO02/097107号パンフレット(特許文献1)を参照のこと)。
【0008】
しかし、このパンフレットに記載されたアミロースを使用することは当業者に容易ではない。なぜなら、本パンフレットで用いているα−1,4−グルカンは、一般に市販されておらず、評価実験を行うこと自体が容易ではないためである。評価実験を行おうとするものは、自ら酵素を製造し、その酵素を用いてα−1,4−グルカンを製造しなくてはならない。その後ようやく、食品への応用を評価することが可能となる。なお、上述パンフレットの発明の実施の手順は煩雑であるが、上述パンフレットの発明を実施するに充分な記載が上記パンフレットにあることはいうまでもない。
【0009】
以上のような理由で、酵素合成で得られたα−1,4−グルカンの食品への応用は進展しなかったものと思われ、粉末食品製造に当たっても例外ではない。
【0010】
これまでに、アミロースの水素結合によって螺旋状の結晶を形成する性質を利用し、特表平10−506627号公報(特許文献2)では天然澱粉から得たアミロースを用いた賦形剤について述べられている
しかし、上述の通り、天然澱粉から得たアミロースは工業的に利用しにくいものである。
【0011】
また、シクロデキストリンと包接させることで粉末食品を製造する特許も数多く出願され、一例として、特開2003−70442号公報(特許文献3)があるが、シクロデキストリンにはα−シクロデキストリン、β−シクロデキストリン、γ−シクロデキストリンなどが存在し、各々のシクロデキストリンの作用が異なり、汎用性に欠けることが知られ、包接できない物質や成分も存在している。
【特許文献1】国際公開第WO02/097107号パンフレット(第127頁−第134頁)
【特許文献2】特表平10−506627号公報
【特許文献3】特開2003−70442号公報
【非特許文献1】Montalkら、FEBS Letters 471、2000年、第219〜223頁
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
従来の澱粉から精製したアミロースやアミロース高含有澱粉、または酵素合成法では解決できなかった1)アミロースの純度の低さ、2)水に溶解させるための高温加熱の必要性、3)工業的利便性が乏しいなどの短所やシクロデキストリンでの包接による粉末化では汎用性が欠けていた点である。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明者らは鋭意検討し、室温の水に易溶で、工業的に利用可能な酵素合成α−1,4−グルカンを用いることを最も主要な特徴とする本発明に至った。
【0014】
本発明に用いるα−1,4−グルカンは、グルカンホスホリラーゼにより酵素的に合成されたα−1,4−グルカンを有効成分とする。
一つの実施形態では、前記α−1,4−グルカンの重合度が600以上37000未満であり得る。
一つの実施形態では、前記α−1,4−グルカンの分散度が1.25以下であり得る。
一つの実施形態では、前記α−1,4−グルカンが修飾物を含有するものであり、その修飾が、エステル化、エーテル化、および架橋からなる群より選択される化学修飾であり得る。
【発明の効果】
【0015】
α−1,4−グルカンを粉末化基材として用いることで新規な粉末食品の製造が可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
(用語の定義)
(分散度Mw/Mn)
高分子化合物は、タンパク質のような特別の場合を除き、その由来が天然または非天然のいずれかであるかに関わらず、その分子量は単一ではなく、ある程度の幅を持っている。そのため、高分子化合物の分子量の分散程度を示すために、高分子化学の分野では通常、分子量分布Mw/Mnが用いられている。分子量分布Mw/Mnは、重量平均分子量Mwに対する数平均分子量Mnの比(すなわち、Mw÷Mn)で表わされる。分子量分布は、その高分子化合物の分子量分布の幅広さの指標である。分子量が完全に単一な高分子化合物であればMw/Mnは1であり、分子量の分布が広がるにつれてMw/Mnは1よりも大きな値になる。なお、この「分子量分布」は「分散度」と言われることもあり、これら「分子量分布」「分散度」は、本明細書においては同義語である。本明細書中で「分子量」という用語は、特に断りのない限り重量平均分子量を指す。
【0017】
(α−1,4−グルカン)
用語「α−1,4−グルカン」とは、D−グルコースを構成単位とする糖であって、α−1,4−グルコシド結合のみによって連結された糖単位を少なくとも2糖単位以上有する糖をいう。ただし、本明細書において、α−1,4−グルカンは、グルカンホスホリラーゼ(EC 2.4.1.1)により酵素的に合成された、α−1,4−グルカンを意味し、植物デンプン中に存在するアミロースやデンプンを酵素的に分解して製造されるα−1,4−グルカンは含まない。α−1,4−グルカンは、直鎖状の分子である。α−1,4−グルカンは、直鎖状グルカンとも呼ばれる。1分子のα−1,4−グルカンに含まれる糖単位の数を、重合度という。本明細書中で「重合度」という用語は、特に断りのない限り重量平均重合度を指す。α−1,4−グルカンの場合、重量平均重合度は、重量平均分子量をグルコース単位の分子量162で割ることによって算出される。
【0018】
本発明者らは上記の問題点に鑑み、 本発明者らは上記の問題点に鑑み、グルカンホスホリラーゼにより酵素的に合成されたα−1,4−グルカンを添加することにより、良好な粉末食品が提供できることを見出し、本発明を完成した。
【0019】
α−1,4−グルカンは、当該分野で公知の方法によって作製することができる。酵素合成法の例としては、グルカンホスホリラーゼ(α−glucan phosphorylase、EC 2.4.1.1;通常、ホスホリラーゼという)を用いる方法が挙げられる。ホスホリラーゼは、加リン酸分解反応を触媒する酵素である。
【0020】
ホスホリラーゼを用いた酵素合成法の一例は、ホスホリラーゼを作用させて、基質であるグルコース−1−リン酸(以降、G−1−Pという)のグルコシル基を、プライマーとして用いられる例えばマルトヘプタオースに転移する方法(以降、GP法という)である。GP法は、原料であるG−1−Pが高価であるため、α−1,4−グルカンを工業的に生産するのにはコストがかかるが、糖単位をα−1,4−グルコシド結合のみで逐次結合させることにより100%直鎖のα−1,4−グルカンが得られるという顕著な利点がある。GP法は、当該分野で公知である。
【0021】
ホスホリラーゼを用いた酵素合成法の別の例は、スクロ−スを基質とし、例えば、マルトオリゴ糖をプライマーとして用い、これらに無機リン酸の存在下でスクロースホスホリラーゼ(sucrose phosphorylase、EC 2.4.1.7)とグルカンホスホリラーゼとを同時に作用させることによってα−1,4−グルカンを酵素合成する方法(以降、SP−GP法という)である。SP−GP法は、GP法と同様100%直鎖のα−1,4−グルカンの分子量を自由に制御して製造できることに加え、安価なスクロ−スを原料とすることで、製造コストをより低くできるという利点を有する。SP−GP法は当該分野で公知である。SP−GP法の効率的な生産方法は、例えば、国際公開第WO02/097107号パンフレットに記載される。本発明で用いられる高分子量のα−1,4−グルカンは、このパンフレットに記載される方法に従って製造され得る。
【0022】
なお「プライマー」とは、グルカン合成の出発材料として機能する物質をいう。このようなプライマーとしてオリゴ糖を用いることができる。プライマーとして、マルトオリゴ糖、例えばマルトトリオース、マルトテトラオース、マルトペンタオース、マルトヘキサオース、またはアミロース(α−1,4−グルカン)などを用いるのが好ましい。プライマーとして、単一化合物を用いてもよく、2種以上の化合物の混合物を用いてもよい。
【0023】
上記GP法および/またはSP−GP法を採用して酵素合成されたα−1,4−グルカンは次のような特徴を有する:
(1)分子量分布が狭い(Mw/Mnが1.1以下);
(2)製造条件を適切に制御することによって任意の重合度(約60〜約37000)のものが得られる;
(3)完全に直鎖であり、天然澱粉から分画したアミロ−スに認められるわずかな分岐構造がない;
(4)天然澱粉と同様にグルコース残基のみで構成されており、α−1,4−グルカンも、その分解中間体も、そして最終分解物に至るまで生体に対して毒性がない;および
(5)必要に応じて澱粉と同様の化学修飾が可能である。
GP法および/またはSP−GP法により酵素合成された高分子量α−1,4−グルカンは、上記特徴により、本発明において好ましく用いられる。
【0024】
これらのα−1,4−グルカンは、修飾物であってもよく、非修飾物であってもよい。ここで「修飾物」とは、対象物に対して化学的に修飾を施すことによって得られるものをいう。このような修飾の例としては、エステル化、エーテル化および架橋が挙げられる。
エステル化は、例えば、α−1,4−グルカンを各種溶媒中でまたは無溶媒で、エステル化試薬(例えば、酸無水物、有機酸、酸塩化物、ケテンまたは他のエステル化試薬)と反応させることによって行われ得る。このようなエステル化によって、例えば、酢酸エステル、プロピオン酸エステルなどのアシル化エステルが得られる。
エーテル化は、例えば、α−1,4−グルカンを、アルカリ存在下でエーテル化剤(例えば、ハロゲン化アルキル、硫酸ジアルキルなど)と反応させることによって行われ得る。このようなエーテル化によって、例えば、カルボキシメチルエーテル、ヒドロキシプロピルエーテル、ヒドロキシメチルエーテル、メチルエーテル、エチルエーテルが得られる。
架橋は、例えば、α−1,4−グルカンを、架橋剤(ホルマリン、エピクロロヒドリン、グルタルアルデヒド、各種ジグリシジルエーテル、各種エステルなど)と反応させることによって行われ得る。
【0025】
このような化学修飾を単独であるいは組み合わせて施すことにより、α−1,4−グルカンの親水性、疎水性、水に対する溶解性、粘度などを変化させることができる。目的とする食品の特性に応じてこれらの化学修飾したα−1,4−グルカンを選択することができる。
【0026】
本発明で用いるα−1,4−グルカン類の平均重合度は、600以上37000未満であることが好ましい。平均重合度が600以下では、室温の水での溶解性が期待できない。また、優れた粉末食品も得られない。一方、平均重合度が37000以上のα−1,4−グルカン類は、酵素合成が困難であり、実現の可能性に乏しい。
【0027】
α−1,4−グルカン類の分子量分布が広い場合には水に可溶性と不溶性のα−1,4−グルカン類が混在してしまうが、分散度が1.25以下であるα−1,4−グルカン類の場合には、水に可溶性のα−1,4−グルカン類のみを添加することができるため、食品には使用しやすいものになる。分散度が1.25より大きいと、特徴の異なるα−1,4−グルカン類が混在してしまい、各分子量のα−1,4−グルカン類の有する特徴が打ち消されてしまうので、好ましくない。分散度はより好ましくは1.0〜1.2、さらに好ましくは1.0〜1.15である。
【0028】
本発明においては、目的とする粉末食品が得られるように、任意の重合度・分散度を有する酵素合成アミロースを使用する。さらに、異なる重合度のα−1,4−グルカン類を混合することが望ましい結果となる場合には、2種以上のα−1,4−グルカン類を添加することも可能である。
【0029】
本発明でのα−1,4−グルカンは、飲食用組成物または食品添加物用組成物に使用することが可能である。
【0030】
本発明での粉末食品は、α−1,4−グルカンをホストとし、ゲストとなる素材や成分を包接や収着作用などに基づいて取り込ませるが、どの様な作用であっても良好な粉末食品を調製することができる。
【0031】
粉末食品を調製するにあたり、α−1,4−グルカンを溶解して用いてもよい。この場合、α−1,4−グルカンは室温の水に易溶であるので、既存のどのような方法で溶解してもよい。例えば、高速攪拌させた水に本グルカンを添加していくことで容易に溶解液になる。また必要に応じて、加熱するとより速やかに溶解液を調製できる。次に、グルカン溶解液にゲスト素材を加えて攪拌し、乾燥化させることで調製できる。
【0032】
ゲスト素材の性状は、粉末、液状などどのような性状でもよく、粉末の場合、グルカン溶解液に溶解することが条件になる。無論、ゲスト粉末を予め水に溶解させてグルカン溶解液に添加する、あるいは、グルカン粉末とゲスト素材粉末を混合しておいて、これを水に溶解してもよいのは勿論である。
【0033】
ゲスト素材を有機溶媒に溶解させて添加してもよい。有機溶媒はどのようなものを用いても良いが、食品製造に利用できるものが好ましい。例えば、エタノールやアセトンがある。
【0034】
有機溶媒は、必要に応じて、除去することが望ましい。その方法は、既存のどのような方法でもよい。例えば、真空加熱法などがある。
【0035】
本グルカンの溶解濃度は、幅広く設定できるが、粉末食品の調製に当たっては、0.1重量から20重量%が好ましい。また、ホストである本グルカンとゲスト素材との配合割合は、グルカン100重量部に対して、10〜1,000重量部であるのがよい。この範囲外では、望んだ通りの食品を製造できない場合もある。
【0036】
攪拌方法としては、どのような方法でもよく、例えば、プロペラ攪拌、ニーダー攪拌などがある。
【0037】
また、粉末食品を調製するにあたり、α−1,4−グルカンを粉末のまま用いてもよい。粉末にゲスト素材を添加し、攪拌混合し、必要に応じ乾燥させることで粉末食品が得られる。この場合、ゲスト素材は液状物または液状に溶解しておく必要がある。
【0038】
粉末乾燥化方法としては、どのような方法でもよく、例えば、自然乾燥法、加熱乾燥法、真空乾燥法、噴霧乾燥法、ドラムドライ乾燥などが挙げられる。
【0039】
本発明においてゲストとなる素材は、特に制限されるものでなく、例えば、香料、脂肪酸等の油脂類、色素、調味料などが挙げられる。なお、当然のことながら、これらに限定されるものではない。
【0040】
本発明で使用する香料は、粉末香料製造に際して用いられているものであればどのようなものでもよい。例えば、L−メントール、メントン、リナロールなどの単一香料、植物性香料、動物性香料、調合香料などが挙げられる。
【0041】
本発明で使用する調味料は、ビーフエキス、ポークエキス、チキンエキスなどの畜肉エキス、鰹エキス、ホタテ貝・かきエキス、昆布エキスなどの魚貝エキス、オニオンエキス、椎茸エキスなどの植物性エキス、HAP、HVP、HPPなどの動植物蛋白加水分解物、醤油、みりん、みそなどの発酵調味料、グルタミン酸ナトリウム、イノシン酸ナトリウムなどの単一化学調味料等があげられる。
【0042】
本発明で使用する油脂類は、従来より食品、化粧品、医薬品等で用いられている油脂類が利用でき、例えば、大豆油、ゴマ油、ピーナッツ油、コーン油、菜種油、ヤシ油、パーム油などの植物油脂類及びそれらの硬化油;牛脂、豚脂、魚油などの動物油脂類及びそれらの硬化油;バター、マーガリン、ショートニングなどの加工油脂類;ビタミンE、DHA、EPA、リノール酸、γ−リノレン酸、α−リノレン酸、月見草油、ボラージ油、レシチン、オクタコサノール、γ−オリザノールなどの機能性油脂類;精油、香味油、オレオレジン、天然香料、合成香料およびそれらの2種以上の調合物などの油溶性香料類などが挙げられる。これらを1種または2種以上の混合物として使用することができる。
【0043】
この発明に用いられるα−1,4−グルカン以外の賦型剤としては、カゼインソーダ、ホエー、ゼラチン、乳類、卵白等の蛋白質、庶糖、乳糖等の少糖類、アラビアガム等の多糖類、澱粉またはその分解物などがあり、これらを単独または組み合わせて用いても何ら問題はない。
【0044】
また、本粉末食品には、この発明の効果を阻害しない限りにおいて、一般の食品製造に用いられる周知の乳化剤、酸化防止剤などを適宜配合してよいのは勿論である。乳化剤の具体的例としては、グリセリン脂肪酸エステル、レシチン、庶糖脂肪酸エステル、ソルビタン脂肪酸エステル、各種蛋白質、アラビアガムなどが挙げられ、これらの乳化剤は単独で用いてもよいし、2種類以上を組み合わせてもよい。
【0045】
また、上述のようにして得られる粉末食品は、例えばガム、錠菓、粉末スープ、飲料、粉末飲料、デザート類、キャンデー、キャラメル、チョコレート、スナック類、育児用粉乳、コーヒークリームパウダー、クリームスープパウダーなどの飲食品をはじめとして、化粧品、医薬品、室内芳香剤などの香粧品などの分野にも利用することができる。また、粉末化されることにより耐熱性などの加工適性が改善される為に、加熱処理により香料が散逸するおそれのあるスナック類やレトルト食品などへの利用も可能である。
以下、実施例にて具体的に述べる。
【実施例1】
【0046】
(粉末香料)
分子量1000kDa(重合度6170、分散度1.05)のα−1,4−グルカン1重量部を水99重量部に溶解し、これを攪拌しながら香料原料l-メントールまたはリナロール1重量部を加え、さらに10分間攪拌し、その液性を評価した。なお、l-メントールは55℃に加温して攪拌した。対照として、DE5のデキストリン、αシクロデキストリン、およびβシクロデキストリンの各々にて同様に検討した。その結果、両香料においてα−1,4−グルカンのみ包接による沈澱が形成され、これを回収、凍結乾燥させることで効率的に粉末香料を得ることができた。
【実施例2】
【0047】
(粉末香料を配合したガム)
ガムベース50重量部、粉糖152重量部、水アメ38重量部、グリセリン5重量部、実施例1でのα−1,4−グルカンでの粉末l-メントール香料をメントール重量換算で0.35重量部の配合にて、常法通りに板状のガムを調製し、7名のパネリストによる官能にて評価した。対照として、デキストリンでの粉末l-メントール香料市販品にて同様に検討した。その結果、全員がα−1,4−グルカンでのガムの方が香気立ちよく、好ましい官能を呈していると評価し、有意差(p<0.05)も認められた。
【実施例3】
【0048】
(粉末脂肪酸)
分子量1000kDa(重合度6170、分散度1.05)のα−1,4−グルカン1重量部を水99重量部に溶解し、これを攪拌しながらオレイン酸、リノール酸、αリノレン酸、またはドコサヘキサエン酸1重量部を加え、さらに10分間攪拌し、その液性を評価した。対照として、DE5のデキストリンにて同様に検討した。その結果、全脂肪酸においてα−1,4−グルカンのみ包接による沈澱が形成され、これを回収、凍結乾燥させることで効率的に粉末油脂を得ることができた。
【実施例4】
【0049】
(粉末油脂)
分子量1000kDa(重合度6170、分散度1.05)のα−1,4−グルカン粉末100重量部にサラダ油20重量部を加え、よく混合することで、粉末油脂を調製することができた。
【産業上の利用可能性】
【0050】
本発明では、α−1,4−グルカンを食品に添加することで新規な粉末食品を製造することができるものである。


【特許請求の範囲】
【請求項1】
グルカンホスホリラーゼにより酵素的に合成されたα−1,4−グルカンを粉末化基材として用いることを特徴とする粉末食品
【請求項2】
前記α−1,4−グルカンの重合度が600以上37000未満である請求項1に記載の食品
【請求項3】
前記α−1,4−グルカンの分散度が1.25以下である請求項1または2に記載の食品
【請求項4】
前記α−1,4−グルカンが修飾物を含有するものであり、その修飾が、エステル化、エーテル化、および架橋からなる群より選択される化学修飾である請求項1〜3のいずれかに記載の食品