説明

きのこ栽培瓶キャップ分離装置

【課題】 きのこ栽培瓶キャップの上蓋をキャップ本体から取り外す作業を効率よく短時間で行うことができるきのこ栽培瓶キャップ分離装置を提供する。
【解決手段】 きのこ栽培瓶のキャップ10を、キャップ本体14と上蓋16とに分離するきのこ栽培瓶キャップ分離装置30において、きのこ栽培瓶キャップ10が落下する落下通路32と、落下通路32を落下するきのこ栽培瓶キャップ10の側面に当接する駆動ローラ36と、駆動ローラ36を回転駆動する駆動手段37と、駆動ローラ36との間を通過するきのこ栽培瓶キャップ10を挟み込んでたわませることによってキャップ本体14と上蓋16とに分離するように、駆動ローラ36との距離がきのこ栽培瓶キャップの径よりも短くなるように配置された当接部40とを具備する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、きのこ栽培瓶のキャップを、キャップ本体と上蓋とに分離するきのこ栽培瓶キャップ分離装置に関する。
【背景技術】
【0002】
きのこ栽培においては、栽培瓶を用いた方法がよく知られている。
かかる栽培方法では、栽培瓶に培地を充填した後に行う培地殺菌の際や、培地に種菌を接種した後の培養期間中は、栽培瓶の開口部にきのこ栽培瓶キャップ(以下、本明細書中では単にキャップと称する場合もある)をかぶせることで栽培瓶内部に雑菌が進入することを防止している。
【0003】
図4および図5にキャップの構造を示す。
キャップ10は、内部にフィルタ12を収納可能な収納部13を有するキャップ本体14と、収納部の上面開口部を覆うように収納部に圧入される上蓋16とを備えている。
キャップ本体14の下部は、栽培瓶の開口部内に進入して栽培瓶にはめ込まれるように、栽培瓶の開口部の内径よりもやや小径の本体嵌入部17が形成されており、本体嵌入部17の上部にフィルタ12を収納する凹部である収納部13が形成されている。
【0004】
上蓋16は、キャップ本体14の収納部13内に進入してキャップ本体14にはめ込まれるように下方に突出し、収納部13の内径よりもやや小径の上蓋嵌入部18が形成されている。さらに、上蓋嵌入部18の側面には外方へ突出して収納部13の内壁面に当接し、上蓋16をキャップ本体14から外れにくくするための突起部19が形成されている。
【0005】
また、キャップ10をかぶせた際でも、菌の生育のためには栽培瓶内に空気を流通させる必要がある。そこで、上蓋16とキャップ本体14には、栽培瓶内と瓶の外部とを流通させる流通孔が形成されている(図示せず)。
【0006】
フィルタ12は、流通孔を介して空気を流通させる場合に、栽培瓶内に雑菌が入り込まないようにし、且つ空気の流通量を適度にセーブして栽培瓶内の温度・湿度を所要の温度・湿度にするために設けられているものである。フィルタとしては、スポンジが用いられることが多い。
【0007】
キャップを長期間使用していると、フィルタの目が詰まって空気の流通性が劣ってきたり、汚れが付着してくるため、フィルタを交換する必要がある。フィルタを交換するには、上蓋16をキャップ本体14から取り外す必要があるが、上蓋16はキャップ本体14に圧入されており、その取り外しには手間がかかる。
きのこ栽培の現場では、何万本、何十万本という数の栽培瓶で栽培を行っているため、手間がかかるフィルタ12の交換を効率よく行いたいという要請があった。
【0008】
そこで、キャップ10の上蓋16とキャップ本体14とを容易に分離するための分離装置が従来より開発されている(例えば、特許文献1、特許文献2参照)
【0009】
【特許文献1】実開平5−82239号公報
【特許文献2】特開平7−255274号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
特許文献1に示すような装置の場合、キャップを押圧体と挟圧壁との間に配置させ、揺動ハンドルを操作することによって押圧体をキャップに押し付け、キャップ本体をたわませて上蓋を取り外すようにしている。この装置では大きな力は必要とはしていないが、手動でハンドル操作をするため、多数のキャップを分離するには時間がかかり、結局作業者の労力も大きいものとなってしまうという課題がある。
【0011】
特許文献2に示すような装置の場合、キャップ本体から上蓋を自動的に取り外すことはできるが、キャップを1つ1つ装置の所定箇所にセットしなくてはならず、多数のキャップを分離するには時間がかかりすぎるという課題がある。
【0012】
そこで、本発明の目的は、上記課題を解決すべくなされ、その目的とするところは、キャップの上蓋をキャップ本体から取り外す作業を効率よく短時間で行うことができるきのこ栽培瓶キャップ分離装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明は上記目的を達成すべく、以下の構成を備える。
すなわち、本発明のきのこ栽培瓶キャップ分離装置によれば、きのこ栽培瓶のキャップを、キャップ本体と上蓋とに分離するきのこ栽培瓶キャップ分離装置において、きのこ栽培瓶キャップを落下させる落下通路と、該落下通路の一方の側面に配置され、落下通路を落下するきのこ栽培瓶キャップの側面に当接する駆動ローラと、該駆動ローラを回転駆動する駆動手段と、前記駆動ローラとの間を通過するきのこ栽培瓶キャップを挟み込んでたわませるように、前記落下通路の他方の側面に、前記駆動ローラとの距離がきのこ栽培瓶キャップの径よりも短くなるように配置された当接部とを具備することを特徴としている。
この構成を採用することによって、きのこ栽培瓶キャップを落下通路へ導入して落下させると、きのこ栽培瓶キャップは駆動ローラと当接部との間でたわみ、キャップ本体の収納部へ圧入されていた上蓋がキャップ本体から分離される。そして、駆動ローラはきのこ栽培瓶キャップをたわませつつ下方へ送りこむので、多数のきのこ栽培瓶キャップであっても短時間で分離することができる。このため、作業者は落下通路へ順次きのこ栽培瓶キャップを導入するだけで、上蓋とキャップ本体との分離を短時間で容易に行うことができる。
【0014】
また、前記当接部を前記駆動ローラ方向に向けて付勢する付勢手段が設けられていることを特徴としてもよい。
この構成によれば、きのこ栽培瓶キャップの径に多少のばらつきがあって、通常のきのこ栽培瓶キャップよりも若干大径のものであっても、付勢手段の付勢力に抗して当接部が駆動ローラと反対方向に移動し、確実にきのこ栽培瓶キャップを挟み込むことができる。
【0015】
さらに、前記付勢手段の付勢方向への移動を所定位置までとなるように規制する規制手段が設けられていることを特徴としてもよい。
この構成を採用することによって、当接部に付勢手段を設けた場合であっても付勢手段の付勢力によって当接部が駆動ローラに接近しすぎてしまうことに起因してきのこ栽培瓶キャップが当接部と駆動ローラとの間に挟み込まれなくなる、ということを防止し、当接部の位置を適正な位置にすることができる。
【0016】
さらに、前記当接部と前記駆動ローラとの間の距離を調整する間隔調整手段が設けられていることを特徴としてもよい。
これによれば、当接部と駆動ローラとの間の距離を調整することができ、きのこ栽培瓶キャップの径が大きく異なる場合であっても、距離を調整して当接部と駆動ローラとの間に確実にきのこ栽培瓶キャップを挟み込むことができる。
【0017】
また、きのこ栽培瓶キャップの落下をガイドするように、前記落下通路の両側にはきのこ栽培瓶キャップの落下方向に沿ってガイド部材が設けられ、該ガイド部材は、下方に向けてその間隔が徐々に狭くなるように設けられていることを特徴としてもよい。
この構成によれば、作業者が落下通路の上端からある程度ラフにきのこ栽培瓶キャップを投入した場合であっても、落下するきのこ栽培瓶キャップは確実に駆動ローラと当接部との間に導かれる。このため、作業者のきのこ栽培瓶キャップのセッティング時間をほとんどなくすことができ、作業の時間短縮を図ることができる。
【0018】
なお、前記ガイド部材のうちの一方が、前記当接部であることを特徴としてもよい。
【発明の効果】
【0019】
本発明にかかるきのこ栽培瓶キャップ分離装置によれば、キャップ本体と上蓋との分離を極めて短時間で行うことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
以下、本発明の好適な実施の形態を添付図面に基づいて詳細に説明する。
図1にきのこ栽培瓶キャップ分離装置(以下、単に分離装置と称する場合もある)の側面図を、図2に分離装置の正面図を、図3に図1を矢印A方向からみた場合のキャップを分離する部分の機構について示す。
分離装置30は、箱状の筐体31の一方の側面が傾斜して設けられており、この傾斜した面にキャップ10の落下通路32が形成されている。落下通路32は、キャップ10との接触面の摩擦抵抗を減らすために表面が滑らかな金属製の板34が筐体31に取り付けられて形成されている。
【0021】
落下通路32の一方側には、落下通路32を落下するキャップ10の側面に当接し、キャップ10を下方に送りだす方向に駆動する駆動ローラ36が設けられている。
駆動ローラ36は、筐体31内に配置されているモータ37によって回転駆動する。
【0022】
駆動ローラ36と対向する位置には、キャップ10の側面に当接し、駆動ローラ36とともにキャップ10を挟み込んでたわませるための当接部40が設けられている。
当接部40は、落下通路32の表面に対して垂直方向に延びる当接片40aと、落下通路32の表面に平行に形成されて筐体31に取り付けられる取り付け片40bとからなる断面L字状の部材である。
【0023】
当接部40の取り付け片40bは、断面L字状の部材である固定部42に取り付けられている。固定部42は、落下通路32の表面に対して垂直方向に延びるように形成され、後述する付勢手段を取り付けるためのストッパ片42aと、落下通路32の表面に平行に形成されて筐体31に取り付けられる取り付け片42bとからなる。
また、固定部42の取り付け片42bの長さは、当接部40の取り付け片40bの長さよりも長くなるように形成され、当接部40は取り付け片40bの長さの違い分(図3のh)だけ固定部42の取り付け片42bの上で移動可能に取り付けられている。
【0024】
当接部40は、付勢手段44によって駆動ローラ36側へ付勢されている。付勢手段44は、当接部40の当接片40aと固定部42のストッパ片42aとの間に挟み込まれたばねである。また、付勢方向および付勢力に抗する方向への移動をガイドするため、一端が当接部40の当接片40aに固定され、他端が固定部42のストッパ片42aの挿通孔(図示せず)に移動可能に挿通されたガイドシャフト48が設けられている。
したがって、ばね44が当接部40の当接片40aと固定部42のストッパ片42aとの間で圧縮されると、ガイドシャフト48の他端は固定部42のストッパ片42の挿通孔を貫通して他端方向に移動する。
【0025】
また、ガイドシャフト48にはねじ溝が形成されており、固定部42のストッパ片42aを貫通した位置においてナット46が螺合している。
ナット46は、ストッパ片42aの駆動ローラ36側とは反対側の面の挿通孔の周囲に当接しており、ばね44の付勢力によって当接部40が駆動ローラ36方向へ際限なく移動してしまうことを防止する規制手段としての役割を有している。
【0026】
なお、固定部42は、当接部40、ばね44およびガイドシャフト48を備えたままの状態で、駆動ローラ36方向に接離動可能に設けられている。
固定部42の取り付け片42bが取り付けられる筐体31の所定箇所には、取り付け片42bの取り付けボルト50が挿入される長穴52が形成されており、この長穴52は、駆動ローラ36方向に接離動する方向に沿って長く延びている。したがって、固定部42は、この長穴52に沿って移動可能である。
【0027】
固定部42のストッパ片42aには、ねじ穴(図示せず)が形成されており、一端が筐体31に回転可能に取り付けられたねじ棒54の他端がこのねじ穴に螺合している。固定部42を駆動ローラ36方向に接離動させて当接部40と駆動ローラ36との間の間隔を調整するには、ねじ棒54の一端に設けられているハンドル55を把持してねじ棒54を回転させることにより、固定部42を筐体31に対して移動させて行うことができる。このように筐体31に回転可能に取り付けられ、固定部42のねじ穴に螺合したねじ棒54が、特許請求の範囲にいう間隔調整手段を構成している。
【0028】
落下通路32の両側には断面L字状のガイド部材38,39が設けられている。
駆動ローラ36側に設けられているガイド部材39は、下流側の端部が駆動ローラ36に至るまでの長さに形成されている。
駆動ローラ36と対向する側に設けられているガイド部材38は、上述してきた当接部40が兼ねている。すなわち、当接部40は、落下通路32の上流側まで延出されており、落下通路32の上流側ではキャップ10の落下をガイドする役割を有しており、駆動ローラ36と対向する位置では、キャップを駆動ローラ36との間で挟み込んでたわませる役割を有しているものである。
【0029】
また、駆動ローラ36のキャップ10に当接する部位と、当接部40のキャップ10に当接する部位は、キャップ10との間の摩擦抵抗が大きくなるよう、表面が微小な凹凸を有するように粗く形成されている。
このため、キャップ10は駆動ローラ36と当接部40との間で滑ってしまうことがなく、駆動ローラ36と当接部40との間に確実に挟み込まれてたわませられる。
【0030】
以下、分離装置30を用いたキャップ10の分離動作について説明する。
まず、作業者はハンドル55を持ってねじ棒54を回転させることにより、当接部40の位置を移動させて、分離すべきキャップ10の径よりも当接部40と駆動ローラ36との間の距離が若干短くなるように調整する。
そして、作業者は、モータ37の電源を投入し、駆動ローラ36を回転駆動させる。
【0031】
作業者は、落下通路32の上流からキャップ10を順次落下させていく。落下通路32の両側には上流側に向けて幅が広がるようにガイド部材38,39が設けられているので、このときの落下位置はある程度ラフであってもキャップ10は確実に駆動ローラ36と当接部40との間に導かれる。
【0032】
駆動ローラ36と当接部40との間に挟み込まれたキャップ10はたわみ、キャップ本体14に圧入されていた上蓋16が浮き上がってキャップ本体14から外れ、分離がなされる。また、分離したキャップ10は駆動ローラ36の回転によって順次下流側に移動させられ、分離装置30から排出される。
【0033】
また、同じサイズのキャップ10であっても、その径には若干ばらつきがある場合もある。例えば、若干大径のキャップ10が挟み込まれた場合でも、ばね44が当接部40の当接片40aと固定部42のストッパ片42aとの間で圧縮される。このようにばね44を設けたことで、キャップ10の径にばらつきがあったとしても、そのばらつきを吸収して、確実に上蓋16とキャップ本体14との分離が行える。
【0034】
なお、付勢手段44のばね44の圧縮では吸収できないほどサイズが異なるキャップ10を分離させるには、ねじ棒54を回転させて当接部40と駆動ローラ36との間の間隔を調整することが必要である。
【0035】
以上本発明につき好適な実施形態を挙げて種々説明したが、本発明はこの実施形態に限定されるものではなく、発明の精神を逸脱しない範囲内で多くの改変を施し得るのはもちろんである。
【図面の簡単な説明】
【0036】
【図1】きのこ栽培瓶キャップ分離装置の側面図である。
【図2】きのこ栽培瓶キャップ分離装置の正面図である。
【図3】図1の矢印A方向からみた分離機構部分の説明図である。
【図4】きのこ栽培瓶キャップの側面図である。
【図5】きのこ栽培瓶キャップの分解図である。
【符号の説明】
【0037】
10 キャップ
12 フィルタ
13 収納部
14 キャップ本体
16 上蓋
17 本体嵌入部
18 上蓋嵌入部
19 突起部
30 分離装置
31 筐体
32 落下通路
34 板
36 駆動ローラ
37 モータ(駆動手段)
38,39 ガイド部材
40 当接部
40a 当接片
40b 取り付け片
42 固定部
42a ストッパ片
42b 取り付け片
44 ばね(付勢手段)
46 ナット
48 ガイドシャフト
50 ボルト
52 長穴
54 ねじ棒
55 ハンドル



【特許請求の範囲】
【請求項1】
きのこ栽培瓶のキャップを、キャップ本体と上蓋とに分離するきのこ栽培瓶キャップ分離装置において、
きのこ栽培瓶キャップが落下する落下通路と、
該落下通路を落下するきのこ栽培瓶キャップの側面に当接する駆動ローラと、
該駆動ローラを回転駆動する駆動手段と、
前記駆動ローラとの間を通過するきのこ栽培瓶キャップを挟み込んでたわませることによってキャップ本体と上蓋とに分離するように、前記駆動ローラとの距離がきのこ栽培瓶キャップの径よりも短くなるように配置された当接部とを具備することを特徴とするきのこ栽培瓶キャップ分離装置。
【請求項2】
前記当接部を前記駆動ローラ方向に向けて付勢する付勢手段が設けられていることを特徴とする請求項1記載のきのこ栽培瓶キャップ分離装置。
【請求項3】
前記付勢手段の付勢方向への移動を所定位置までとなるように規制する規制手段が設けられていることを特徴とする請求項2記載のきのこ栽培瓶キャップ分離装置。
【請求項4】
前記当接部と前記駆動ローラとの間の距離を調整する間隔調整手段が設けられていることを特徴とする請求項1〜請求項3のうちのいずれか1項記載のきのこ栽培瓶キャップ分離装置。
【請求項5】
きのこ栽培瓶キャップの落下をガイドするように、前記落下通路の両側にはきのこ栽培瓶キャップの落下方向に沿ってガイド部材が設けられ、
該ガイド部材は、下方に向けてその間隔が徐々に狭くなるように設けられていることを特徴とする請求項1〜請求項4のうちのいずれか1項記載のきのこ栽培瓶キャップ分離装置。
【請求項6】
前記ガイド部材のうちの一方が、前記当接部であることを特徴とする請求項5記載のきのこ栽培瓶キャップ分離装置。






【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate


【公開番号】特開2007−189915(P2007−189915A)
【公開日】平成19年8月2日(2007.8.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−8741(P2006−8741)
【出願日】平成18年1月17日(2006.1.17)
【出願人】(391047880)オギワラ精機株式会社 (6)
【Fターム(参考)】