説明

はんだペースト印刷システム

【課題】
従来のはんだペースト印刷工程においては、生産の最終工程で不良を検査しているので、後から不良の要因に対して対処検討〜対策処理する必要があり、不良に気がついた時には既に多くの不良品が発生している分無駄があり、更にはんだペーストの補充・交換や、使用したメタルマスクの洗浄等に多くの時間と、コストを要していた。
【解決手段】
印刷ユニットに不良要因と対策に関するデータベースによる蓄積手段と不良要因を監視・検知する監視手段と不良予測・判断を行い、品質予報・警報を表示する分析手段と、不良発生要因を取り除く処理手段とを備えた。さらに検査ユニットによる検査結果を元に、新規の印刷不良要因情報を収集し新規の知識として再分析し蓄積・利用することで生産改善を図れるようにした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はスクリーン印刷装置に係り、特にはんだペースト印刷システムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来のスクリーン印刷機として、特許文献1に示すものがある。このスクリーン印刷機は、基板搬入コンベア、基板搬出コンベア、昇降機構を備えたステージ部、転写パターンを開口部として有するマスク、スキージ、スキージ昇降機構および水平方向移動機構を備えたスキージヘッド、これらの機構を制御する制御装置を備え、装置に搬入され、ステージに載置上に基板を載置した後、ステージを上昇して基板をマスクに近接させ、スキージによってマスクを基板に接触させながらマスクの開口部にクリームはんだ等のペーストを充填し、さらにステージを下降して、基板とマスクを離すことによってペーストを基板上に転写し、その後、基板を装置から搬出することによって印刷がなされている。
【0003】
また、特許文献2には基板の厚さを測定するために、印刷テーブル上の印刷物に伸長部材を当接して、伸長部材の伸長量から厚さを測定する方法が提案されている。
【0004】
【特許文献1】特開平5−200975号公報
【特許文献2】特開2004−338248号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記従来技術では、はんだペースト量の管理で印刷結果が正確に印刷できているものとして取り扱っている。しかし、従来、スクリーン印刷法を用いたはんだ塗布工程は、使用するスキージ・メタルマスクの使用回数による消耗度合い、供給するはんだペーストの状態・粘度・供給量・供給位置の変化、メタルマスクの清掃状況の変化、印刷時の温度・湿度の変化、プリント基板とメタルマスクの製作精度差による位置ズレ、プリント基板のソリ・ネジレ等のため、印刷不良が発生する場合があった。
【0006】
そのため、はんだペースト印刷後に、はんだ印刷外観を観察して不良品を排除する目的で、はんだ外観検査する装置を使用するニーズが高まっている。特に近年、CSPやBGAと呼ばれている電子部品が多く採用され、これらの電子部品は、部品搭載後は端子部が部品の裏にあるために、はんだ付け外観検査装置では検査が出来ないため、はんだペースト印刷直後にはんだ印刷外観を検査することが必要となる。
【0007】
また、はんだペースト印刷後に、はんだ印刷外観を観察してOKであっても、電子部品搭載時に、はんだ量と搭載圧力のミスマッチや、はんだ印刷位置と搭載位置の精度差に起因した電子部品の浮き上がり不良・はんだボール発生等があるため、はんだ付け後に外観検査することも必要であり、その結果、前工程に遡り、印刷条件の変更或いは、不良のはんだペーストを取り除く必要が有り、その段取りに時間を要すると共に、生産効率や歩留まりが悪い状況が長く継続してしまう問題があった。
【0008】
そこで、本発明は、はんだペースト印刷工程に起因する不良に対して、はんだペーストを印刷する前に、はんだペースト印刷工程に起因する歩留まり悪化の要因について状態を監視し、不良発生等の影響による生産品質を予測・検出し、品質予報・警報を出すと共に、不良発生要因を早期に除去・処理することで、生産効率向上と歩留まり向上を図った、はんだペースト印刷システムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成するために、本発明では、基板面上にマスクを介してはんだペーストを塗布する印刷ユニットに、不良発生に起因する要素と各要素に対する処理方法を新規知識として記憶・蓄積・保存する蓄積手段と、はんだペースト印刷を実施する前に、不良発生に起因する要素の状態を把握・検査する監視手段と、各要素が不良を発生させる恐れがあるか否か判断・予測する分析手段と、分析した結果に基づきオペレータに予報・警報を出し、不良発生要因を取り除く処理手段とを備えたことを特徴とする。
【0010】
さらに、はんだペースト印刷システムに印刷はんだ外観検査手段や、はんだ付け外観検査手段を具備し、検査した情報を印刷ユニットにフィードバックし、新規知識として保有・使用することで、新しい製品や部品に対応した最適な、はんだペースト印刷を提供できるように、検査手段により検査した結果の情報を印刷装置に通信する通信手段と、検査手段により検査した結果の情報を分析し、新たな不良事例を新規知識として蓄積手段に随時整理・追加記憶を司る再分析手段

を備えたことを特徴とする。さらに、前記検査結果から不良部位を自動的に修復できるよう、前記はんだペースト印刷システムにおいて、前記印刷装置の下流側に、部分的にはんだペーストを塗布する複数のディスペンサユニットと、はんだ付け不良部を修正する複数のリワークユニットを配置した構成としたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
印刷実施前に、印刷不良となる要因を監視し、不良予報を発すると共に、不良要因を排除することで、印刷歩留まりの向上を図っている。また、印刷後の検査情報を蓄積し、分析することにより、新たな不良情報データを蓄積して行くことで、不良予報の精度向上及び検出不良モードの範囲拡大が可能になると共に、不良が修正可能な場合は、自動的に不良修正することで、印刷歩留まりの向上を図っている。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
図1に本発明のはんだペースト印刷システムの各装置の配置を示す。
【0013】
本発明の印刷システムの代表例としては、スクリーン印刷ユニット20に加えて、スクリーン印刷ユニット(以下、印刷ユニットと称する)20にて印刷した結果を検査する検査ユニット30と、場合によっては検査ユニット30が不良で修復可能な印刷状態を検出した場合に修復するための複数のディスペンサユニット40とを備えた構成となっている。
【0014】
従来、はんだペーストの塗布を行う場合、印刷ユニットおいて塗布するクリームはんだをマスクに供給して準備完了のうえ、認識マーク位置の教示後、自動運転を開始し、はんだペースト印刷後、下流装置に基板を搬送していた。これに対して、本発明のように、不良発生に起因する要素と各要素に対する処理方法を新規知識として記憶・蓄積・保存する蓄積手段と、はんだペースト印刷を実施する前に、不良発生に起因する要素の状態を把握・検査する監視手段と、各要素が不良を発生させる恐れがあるか否か判断・予測する分析手段と、分析した結果に基づきオペレータに品質予報・警報を出し、不良発生要因を取り除く処理手段とを備えることで、印刷する前に、生産品質を自動的に予測し、修復することで、生産品質を維持、不良を下流に流さないように図ることができる。さらに印刷ユニット20と検査ユニット30を組み合わせることで、新たな不良情報データの蓄積を図ることができる。
【0015】
印刷不良発生に起因する要素としては次の代表的な項目がある。(1)スキージ・マスクの磨耗状況、(2)マスクの損傷・テンション不足・開口部の目詰まり、(3)はんだの状態(供給量・供給高さ・供給位置・供給幅・空気混入有無)、(4)はんだの状態(粘度・タッキング性・温度・乾燥度合い)、(5)印刷ユニット内環境温度・湿度、(6)生産用基板の寸法ばらつき・そり・ネジレ。
【0016】
前記各要素に対する処理方法としては、各々次の代表的な方法がある。(1)スキージ・マスクを新品に交換、(2)マスクを新品に交換又は目詰まり部分の清掃実施、(3)及び(4)旧はんだの回収後に新規はんだを供給又はローリング動作実施、(5)温度・湿度制御、(6)不良基板の選別・排出。
【0017】
(1)のスキージ・マスクの磨耗状況については、従来、熟練者による現物の目視確認に依存するか、または、印刷ユニット20にはんだペーストを供給した後、何度か試し印刷し印刷結果に問題無いか目視確認又は別の検査方法で確認した上で、生産を開始していた。
【0018】
本発明の方法は、当該生産に使用されるスキージ・マスク及び基板品種に対し、印刷枚数カウンタ等による監視手段により、使用実績回数を使用回数カウントし、過去の不良率発生統計情報として、不良発生時点の使用回数情報を蓄積手段に入力・蓄積し、蓄積された情報を元に、分析手段により過去の不良発生回数と現時点の使用回数を比較分析し、推定発生不良率情報を品質予報として、印刷ユニットのモニタに表示することで、問題無く生産開始可能かオペレータが容易に判断できるようにした。
【0019】
適用スキージ及びマスクの材質等の品種管理一例として、該スキージ・該マスク及び当該生産用基板にマーキングされた識別情報(3次元バーコード等)を印刷ユニットに備えられた情報読込み器で自動読み取り又は手入力により簡単に管理可能である。
【0020】
スキージ及びマスクの使用限度に関しては、従来、生産した印刷ショット回数または使用した期間により管理しているが、一例としてショット回数や使用期間情報に対し、前記の識別情報により、スキージ材質・硬度、マスクの材質・板厚み及び生産適用基板の狭隣接実装状況等の実装密度情報などを関連係数とし、印刷ユニット内の分析手段を利用し不良発生率予測線図を作成し、現在の使用回数実績と比較し、現時点での品質予報として、推定不良率情報を表示することが可能である。
【0021】
また、前記不良発生率予測線図に対し、予め管理者機能にて設定・入力された当該生産基板品種に対する目標不良率と現時点状況を比較し、使用回数限度と判断された場合は、印刷ユニットのモニタに品質予報として、スキージ交換推奨マークを表示することで、オペレータは試刷又は生産確認することなく、適用スキージ又はマスクを新規品に交換してから生産開始が可能となる。
【0022】
次に、(2)のマスクの損傷・開口部の目詰まりについては、印刷ユニットに具備された認識カメラを用い、各印刷パターン部の形状認識を実施し、OK/NG判定が可能である。また、印刷ヘッドに具備したテンション計測用ロッドを所定推力にて、マスクの所定箇所を加圧し、この時の発生反力をロードセルにて測定することでテンションのOK/NG判定が可能である。本書で考案する方法は、何れも単なるOK/NG判定のみでなく、前記認識カメラによる監視手段により、開口部の実面積やテンション実反力を計測し、蓄積手段により情報を蓄積し、蓄積された統計データと、SMTラインの生産実績情報との突合せにより、不良発生予測線図を印刷ユニットの分析手段にて作成し、品質予報を表示する。何れも生産開始前に測定実施することで、現時点での印刷不良の発生を推定し、印刷ユニットのモニタに品質予報を表示することで、不良発生予防に貢献可能である。マスク開口の目詰まりを検出した場合は、処理手段として版下清掃装置により、マスク上の任意の目詰まり部位に対して自動で清掃することができる。
【0023】
また、(3)において、供給されたはんだペーストが問題なく塗布可能なペースト量か?供給されたはんだペーストの位置に問題が無いか?等は従来オペレータが定期的に目視で監視していた。一方、特許文献1に記載の方法によれば、ペースト量の監視作業不要で警報を出し、ペーストの補充が可能な印刷機が考案されている。しかしながら供給されたはんだペーストに空気が混入していないか?確認しなければ、現実的には印刷不良は予防困難である。
【0024】
そこで、マスクの印刷ストロークエンド近傍に大きな開口部を配置し、この部位にはんだが落下せず、かつ下部からはんだ状態を監視できるように透明材料を貼り付けたマスクを用い、印刷ユニット20に具備された認識用カメラにて、透明材料を通して下部から、はんだのマスク上への供給状態を監視することで、生産開始前にはんだの状態(供給量・供給位置・供給幅・空気混入有無)を監視・確認することが可能となる。もちろん自動運転中においても、予め印刷条件で設定されたインターバルにて、同様に監視・確認を自動化できる。
【0025】
はんだ状態を前記認識用カメラによる監視手段により確認後、蓄積手段のデータベース情報を元に、はんだ状態(供給量・供給位置・供給幅)による不良発生要因について分析手段にて、スキージ情報・生産基板の品種情報とつき合わせし、整合性について確認し、一例としてスキージ寸法及び基板寸法に対し、はんだ供給幅寸法が不整合であれば、品質予報を表示する。さらに、印刷ユニットに処理手段として、はんだペースト供給用シリンジを設置することで、はんだペーストが不足した部位に、適切な量のはんだペーストを補充可能となる。
【0026】
さらに前記監視手段により、はんだ内部に気泡があることを検出した場合は、品質予報を表示し、処理手段として、ダミー基板を用い往復スキージ動作を自動実行することで、はんだペーストのローリングにより気泡を消去することができる。
【0027】
更に、(4)において、供給されたはんだペーストの粘度に問題が無いか?供給されたはんだペーストのタッキング性が低下していないか?は熟練されたオペレータでも問題発見が困難であり、供給されたはんだペーストの温度に問題ないか?は冷蔵庫より取り出したはんだペーストの放置時間で管理するのが通常の方法であった。粘度及びタッキング性は非接触で直接測定することは出来ないが、粘度・タッキング性は温度・乾燥度合いとの相関関係があり、蓄積手段に相関値情報を蓄積し、はんだ状態としての温度・乾燥度合いを検知・監視する監視手段として、赤外線サーモグラフィーを印刷ユニットに配置、使用することで、供給されたはんだペーストの表面状態の温度バラツキを測定し、断片的に乾燥し印刷不良の要因となる部位が無いかを非接触で常時監視可能である。
【0028】
前記赤外線サーモグラフィーによる監視手段により、はんだの劣化状態を検知したら、分析手段により、品質予報を表示し、印刷不良を発生させる前に、劣化したはんだを交換することで歩留まり改善を図ることができる。
【0029】
更に、(5)印刷ユニット内環境温度・湿度変化による不良要因については、印刷ユニット内部に配置した、1個以上の温度・湿度センサによる監視手段により、急激な温度・湿度変化が無いか?印刷ユニット内部温度分布にムラが無いか?常時監視し、蓄積手段による情報を元に、分析手段により、異常と判断した場合は品質予報を表示する。また処理手段として温度・湿度制御を自動的に実施するよう印刷ユニットに温度・湿度制御装置を具備させることで、温度・湿度の自動調整が可能である。監視手段の他の一例として、メタルマスク表面全域を赤外線サーモグラフィーにより表面全域を一括して温度分布計測し、蓄積手段に実績データを保存・利用することでも良い。
【0030】
更に、(6)生産用基板の寸法ばらつき・そり・ネジレによる不良要因については、認識マークを認識した時に基準寸法に対してマーク間距離が所定値以上ばらついている場合はNGと判定することで基板不良品を判定可能である。また、ソリ・ネジレについては特許文献2で提案されている方法を応用して基板エッジ部等2箇所以上を測定比較することで検出が可能である。
【0031】
前記監視手段により、異常を検知した場合、分析手段により品質予報を表示するとともに、処理手段として不良基板ストッカーを設け、印刷ユニットから不良基板を排出し選別管理することで不良品を生産ラインに流さないことが可能となる。
【0032】
このように(1)〜(6)の代表的な印刷不良に対する要素を検出可能なセンサによる監視手段により、常時監視・検出し、分析手段により、(1)〜(6)の代表的な不良要因と対策に関するデータベースの蓄積手段と情報を突合せ・分析の上、品質予報・警報を発し、不良となると判断した場合は、処理手段により、処理対応することで、印刷不足等の不良を未然に防止し歩留まりを向上することが可能となる。
【0033】
さらに、印刷ユニット20にて印刷後、検査ユニット30にて印刷状態を検査して、不良箇所の有無を検査し、不良箇所があれば、図示してはいない通信手段により、不良情報を印刷ユニットに送信すると共に、修復用ディスペンサユニット40にも送信し、不良箇所を修復することで印刷のシステムの歩留まり向上を図ることができる。すなわち、修復用ディスペンサの1つとして、印刷ユニットにおいて、余分にクリームはんだを塗布した部分のクリームはんだを、複数台設置されているディスペンサユニットの内の少なくとも1つのユニットに吸引引用のディスペンサを設けて、そこで余分なクリームはんだを吸い取ることによって修復する構成としたものがある。また、印刷ユニットにおいて十分にクリームはんだが供給されずに印刷欠け等が発生した箇所のみ、少なくとも1つのディスペンユニットが、印刷に用いたクリームはんだと同種のクリームはんだを供給するディスペンサを備えたものとして、そこで欠け部分にクリームはんだを追加塗布するように構成したものがある。
【0034】
上記各ユニットの組合せとしては、図1(a)に示すように、印刷ユニット20と検査ユニット30を一体化することで、印刷開始前に、基板製作寸法精度を測定後、問題が無ければ印刷を開始し、不良を予測した場合、直ちに警報を発し、不良品を排除し図示に無いが、不良品検査ストッカーに排出することができる。さらには印刷した直後の状態を、検査ユニットで直ちに観測・検査することができるので、温度・風等により、はんだペーストの表面状態が変化しない段階でより精度の高い検査が可能となる。
【0035】
図1(b)に示すように、印刷ユニット20と検査ユニット30を一体化し、検査ユニット30の下流側に一台又は複数台のディスペンサユニット40を接続する構成とすることで、印刷欠け等にも対応できると共に、異種のクリームはんだによる塗布も可能になり、印刷コストを低減できる。また、ディスペンサユニットを複数台設けることで、同時間に、異なるディスペンサユニットでそのディスペンサユニットの受け持つ塗布範囲の塗布のみを行うようすることで、タクトタイムを短くすることが可能となる。さらに従来基板面上のみ可能であった印刷が、基板凹部の内側面・底面への塗布も可能となる。また、本構成とすることで、複数台設けたディスペンサユニット40のうちの少なくとも1台を、接着剤を塗布するディスペンサを設けた構成とすることで、大型部品とチップ部品の混在するプリント基板の製造において設計の自由度を向上させることが可能となる。即ち、従来は部品搭載面を片側の面に集約設計するなどして対応しているものを、印刷ユニット20にてクリームはんだを印刷後、ディスペンサユニット40部にて、接着剤を塗布してチップ部品を後付けすることが可能となる。即ち、ディスペンサを用いて狭小領域でも導電性接着剤等の異種材料を塗布することができる。このため、従来チップ部品面と大型部品面と生産工程に応じて実装領域を分けざるを得なかったこともあり回路設計に対して制約があった。しかし、本システムのように印刷ユニット20とディスペンサユニット40を組合せ、ディスペンサユニットの1つで接着剤を塗布する構成とすることで、設計の自由度が向上し、より高密度実装が可能となった。また、図示はしていないが、印刷ユニット20を設けずにディスペンサユニット40を複数台並べてその下流側に検査ユニット30を配置することも可能である。但し、この構成では印刷ユニット20を用いる構成に比べて印刷時間が多く必要となるが、複数台設置し工程分割することで問題解決が可能である。さらに、前記各構成において、複数台設置されたディスペンサユニット40の内の少なくとも1台を塗布用のディスペンサに代えて、基板上に塗布されたクリームはんだを吸引除去する吸引用ディスペンサを設けることで、印刷不良の基板をその場で修復することで、印刷歩留まりを大幅に向上できる。
【0036】
さらに、図1(c)に示すように印刷ユニット20と、その下流側に検査ユニット30と一台又は複数台のディスペンサユニット40、さらに下流側の搭載機50およびリフローはんだ付け装置60の下流側にはんだ付け後の検査ユニット30とリワークユニット70を構成とすることで、表面実装工程の全工程が完了した製品に対する印刷に起因した不良要因情報の収集が可能となる。またはんだ付け外観を検査する検査ユニット30の情報を元に、リワーク可能な場合は、リワークユニット70により、はんだ付け不良部位をスポットはんだ付け等を実施可能となる。
【0037】
次に、それぞれのユニットの構成と動作を説明する。
【0038】
図2に印刷ユニットの断面構成を、図3に上面図を示す。
図2または図3において、印刷ユニットの本体フレーム1の上部には、1対のガイドレール2によって案内され、図上前後方向(基板の搬入搬出方向に対して直角の方向)に移動可能にスキージヘッド3が設けられている。このスキージヘッド3は、図3に示すモータ22を駆動し、モータ軸に結合されたボールネジ4によって図の前後方向に移動される。また図3に示されるように、スキージヘッド3とは別に、基板とマスクの双方に設けた位置合わせマークを観測するためのカメラ16を設けたフレーム21が設けてある。
【0039】
スキージヘッド3にはスキージ5が搭載されている。スキージ5はスキージ昇降シリンダ6によって上下方向に移動できる。本体フレーム1には版枠受け7が設けられており、版枠受け7には印刷パターンを開口部として持つスクリーン(マスク)8を張った版枠9がセットされるように構成されている。スクリーンマスク8の下方にはマスクに対向するように印刷対象物である基板15を載置し保持する印刷テーブル10が設けて有る。この印刷テーブル10は、基板を水平方向に移動してマスクとの位置合わせを行うXYθテーブル11と、基板を受け取りコンベア12から受け取り、かつ基板をマスク面に近付けるか又は接触させるためのテーブル昇降機構(特に図示せず)とを備えている。印刷テーブル10の上面には基板受け取りコンベア12が設けられており、基板搬入コンベア13によって搬入された基板15を印刷テーブル10上に受け取り、印刷が終了すると基板搬出コンベア14に基板15を排出する。
【0040】
全自動スクリーン印刷ユニットにおいてはマスク8と基板15の位置合わせを自動的に行う機能を備えている。すなわち、CCDカメラ16によって、マスク8と基板15のそれぞれに設けられている位置合わせ用マークを撮像し、画像処理して位置ずれ量を求めて、そのずれ量を補正するようにXYθテーブル11を駆動して位置合わせを行うものである。
【0041】
なお、図示してはいないが、各駆動装置やCCDカメラ等の制御を行う制御装置は、本体テーブルの下部に設けてあり、装置の外側には、制御装置のデータの書き換えや、印刷条件の変更等を行うための入力手段や、印刷状況等をモニタするための表示装置が設けてある。
【0042】
次に図2及び図3を用いて本発明の印刷ユニットの動作を説明する。
【0043】
クリームはんだを印刷される基板15は、基板搬入コンベア13によって基板受け取りコンベア12に供給され、印刷テーブル10上の所定の位置に固定される。続いてCCDカメラ16が基板15及びマスク8に設けられた位置認識用マーク(図示せず)を撮像し、制御部(図示せず)に転送する。制御部内の画像処理部(図示せず)では、画像データからマスク8と基板15の位置ずれ量を求め、その結果に基づいて制御部は印刷テーブル10のXYθテーブル11を動作させてマスク8に対する基板15の位置を修正する。その後、印刷テーブル10が上昇し、基板15とマスク8を接触させる。その後、スキージ昇降シリンダ6によってスキージ5がマスク面上に下降し、スキージヘッド3の移動によってマスク8上に供給されていたクリームはんだがマスク8の開口部に充填され、基板に転写される。スキージ5は水平方向に一定距離ストロークした後に上昇する。そして、印刷テーブル10が下降し、マスク8と基板15が離れ、マスク8の開口部に充填されたクリームはんだは基板15に転写される。
【0044】
そして、クリームはんだが印刷された基板15は基板搬出コンベア14を経て次工程に送られる。
【0045】
次に、次工程側に検査ユニットが設置されている場合に関して説明する。
【0046】
図4に検査ユニットの構成を示す。
【0047】
検査ユニット30は、架台31に基板搬送方向に対して直角方向に移動可能なリニアモータ駆動方式の駆動機構32(又はサーボモータとボールネジからなる駆動機構)を備えた門型のフレームと、そのフレーム上に配置され、フレーム上を基板搬送方向に移動可能にリニアモータ35(又はサーボモータとボールネジ)からなる駆動機構を設けてある移動テーブル37と、それに取り付けた撮像用カメラ36とからなる。カメラ36は基板面を撮像できるように基板15に対して所定の間隔を開けて配置されている。
【0048】
ところで図2または図3で説明した、印刷ユニット20で印刷されたものには、印刷不良として、代表的に次の3つの状態が発生する。(1)電極部分に正常にクリームはんだが印刷されずに一部欠けている部分が存在する状態。(2)隣接する電極側までクリームはんだが付着したり、電極の外までクリームはんだが塗布されるいわゆる、ダレやブリッジ、またはニジミという状態。(3)全体的に電極に対してずれて印刷される状態。
【0049】
本検査ユニット30では、これらの状態を検出して、どのような不良であるかを判別し、通信手段により、印刷ユニットに情報をフィードバックするが、このとき、印刷ユニットの再分析手段により、各種不良モードに対し、一例としてABC評価を実施し、大分類した情報に加工することで、印刷ユニットの蓄積手段のデータベース情報と突合せ判定する処理効率が向上でき、処理時間も大幅に短縮できる。ABC評価以外の方法として他の統計的手法を採用しても良い。さらには3次元検査ユニット等における膨大な検査情報からオペレータにとって容易に判断可能な必要十分な品質予報情報に仕上げることが容易に実施できる。さらに、不良の状態によっては、次のディスペンサユニット40にて修復することで、不良品の発生を極力抑制するものである。
【0050】
まず、印刷ユニット20にて印刷された基板15は印刷ユニット20の基板排出コンベア14に接続された検査ユニット30の基板受け取りコンベア33上に受け渡される。基板受け取りコンベア33上の基板は所定位置に停止され、基板テーブル38上に受け渡される。基板テーブル38には基板保持機構39(例えば吸引吸着機構又はメカチャック機構)が設けてあり基板15が移動しないように保持される。検査ユニット30には、検査ユニット30の駆動部およびカメラで撮像した画像データから画像処理して、印刷の良否を判定するための制御部30Cが設けてあり、検査ユニット30単独でも動作できるようになっている。但し、単独で動作させる場合は、印刷の複数のパターンデータ等を予め記憶しておくために、制御部30Cには大きなメモリを必要とする。もし、印刷ユニット20又はディスペンサユニット40と連動する場合は、印刷ユニット20又はディスペンサユニット40側の制御部から印刷位置データ等を受け取り使用すればよいために大きなメモリは必要としない。
【0051】
また、図示してはいないが、基板テーブル38を設けずに、基板受け取りコンベア33面より突出して基板15の移動を阻止するストッパを設けて、ストッパにより基板を停止させた後受け取りコンベア33を停止させることで、基板15を所定位置に位置決めすることも可能である。
【0052】
次にカメラ36により、基板位置決めマークを観測し、その位置から、印刷ユニットで塗布したハンダ塗布(印刷)位置を求め、ハンダ塗布位置までカメラを移動し、塗布の状態を撮像する。撮像された画像は制御部30Cに設けられている画像処理部にて画像処理され、正規の印刷位置に正常にハンダが印刷されているか否かが判定される。カメラを移動することで、印刷領域全てについて検査を実行する。判定結果が正常であれば、印刷処理はそこで終了となる。ただし、検査ユニット30の下流側にディスペンサユニット40が設けてあれば、ディスペンサユニット40は搬送機能のみが動作されて、検査の終了した基板15はディスペンサユニット出口まで搬送される。
【0053】
もし、検査ユニット30が不良と判断した場合は、先に述べた(1)〜(3)のどの状態の不良がどの箇所に発生したかを、印刷ユニット20の制御部にそのデータを送信すると共に、印刷ユニット20に設けてある表示装置にその検査結果を表示する。なお検査ユニット30には図示はしていないが、検査条件の変更を行うための入力手段や検査状況等をモニタするための表示装置が設けることができる。また、ディスペンサユニット40に設けてある制御部40Cにも同じデータが送信される。
【0054】
ディスペンサユニット40では、欠陥が上記(1)印刷欠けの場合、その印刷欠け部分のみディスペンサによりクリームはんだを供給して欠けを修復する。また、(2)のようにダレやブリッジ又はニジミの欠陥であれば、該当基板を吸引用ディスペンサを設けたディスペンサユニットに搬送し、欠陥のある部分(電極以外の)のクリームはんだを吸引して取り除くことによりその部分を修復する。さらに、欠陥が(3)のズレによるものの場合、修復が可能か否かを判断して、修復が可能な場合は、(2)の場合と同様に、吸引用ディスペンサを設けたディスペンサユニットまで該当基板を搬送し、そこで修復が必要な個所のクリームはんだを吸引により取り除き、その後、電極部分に吐出用ディスペンサを設けてあるディスペンサユニットに搬送し、そこで該当箇所の電極にクリームはんだを追加塗布する。さらに、(3)のズレの場合は、印刷ユニット20側にそのズレ量を送信し、マスク欠陥か、印刷上のミスかを管理者に判断してもらい、マスクの欠陥であれば、正常なマスクと交換してもらう。また印刷上の問題(位置合わせ不良等)であれば印刷条件を修正する。
【0055】
ディスペンサユニットは、上記の動作を行うために、図5に示す構成となっている。
【0056】
先の検査ユニットと同様に、基板搬送路である基板受け取りコンベア42に直角に門型のフレーム44部分を配置し、クリームはんだを吸引して印刷面から取り除くために、吸引用のディスペンサ又は、クリームはんだを塗布するためのクリームはんだ吐出用ディスペンサ43のいずれか一方、又は両方を備えた構成としている。図5には吐出用ディスペンサを設けた構成としてある。なお、吸引用のディスペンサと塗布用のディスペンサとは取り付け取り外し可能に構成されている。ディスペンサユニット40の本体側にフレーム44を支持し、フレーム44を基板搬送方向に移動可能にサーボモータ55にボールネジ(図示せず)を設けた駆動機構が設けてある。なおこの駆動機構はリニアモータ方式にしても良い。フレーム44には、ディスペンサ43を保持し基板搬送方向に対して直角方向に移動させる移動テーブル47と、移動テーブル47を移動させるためのサーボモータ45とボールネジ46からなる駆動機構が設けてある。この駆動機構もまたリニアモータにしても良い。また移動テーブル47には、ディスペンサ46を取り付けたテーブル50を上下に移動させるためのZ軸駆動機構48が設けてある。尚、図示していないがテーブル50には基板の位置合わせマークを観測するためのカメラや、基板15とディスペンサ43の間隔を計測するための距離センサが設けてある。また、本ユニットの下部には、ユニット内の各装置を制御するための制御部40Cが設けてあり、この制御部40Cは印刷ユニット20や検査ユニット30の制御部と信号のやり取りが可能に構成してある。
【0057】
以上のように、本発明では、通常印刷ユニットで基板上に印刷する前に、印刷ユニットが持つ品質予報システムにより品質を予測し、問題が無ければ印刷を実施する。これにより、高効率で歩留まりの高い印刷が可能となる。さらに印刷された基板を検査ユニットで検査し、印刷箇所に不良があり、修復可能な不良であれば、ディスペンサユニットにて修復することが可能となり、印刷不良を低減することが可能となる。
【0058】
また、各部をユニット単位に構成したために、簡単にレイアウトを変更可能となる。
【0059】
さらに、印刷ユニットとディスペンサユニットを組み合わせることにより異種のクリームはんだ又は接着材等を用いて印刷することが必要な場合にも、異なるマスクを複数枚用意して印刷する必要がなくなり、マスク変え等の作業時間をなくして印刷時間の短縮を図ることやや設計自由度及びプロセスの自由度を拡大することで高密度実装に貢献することが可能となる。
【0060】
さらにまた、従来印刷機とディスペンサ装置、と検査装置は別々に独立していたため、それぞれにデータ入力装置や、表示装置、データ記憶装置等を設ける必要があったが、本システム構成とすることで、それらを共通にすることができ、装置の小型化を図ることも可能である。
【図面の簡単な説明】
【0061】
【図1】各ユニットの組合せの例を示した図である。
【図2】印刷ユニットの基板搬送方向の断面図である。
【図3】印刷ユニットの上面図である。
【図4】検査ユニットの断面図である。
【図5】ディスペンサユニットの斜視図である。
【符号の説明】
【0062】
1…印刷ユニット本体、2…ガイドレール、3…フレーム、4…サーボモータ、5…スキージ、6…スキージ昇降シリンダ、7…版枠受け、8…マスク、9…版枠、10…印刷テーブル、11…XYθテーブル、12…受け取りコンベア、13…搬入コンベア、14…搬出コンベア、15…基板、16…カメラ、20…印刷ユニット、30…検査ユニット、40…ディスペンサユニット、50…搭載機、60…リフローはんだ付け装置、70…リワークユニット。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板面上にマスクを介してはんだペーストを塗布するはんだペースト印刷システムにおいて、
不良発生に起因する要素と各要素に対する処理方法を知識として記憶・蓄積・保存する蓄積手段と、はんだペースト印刷を実施する前に、不良発生に起因する要素の状態を把握・検査する監視手段と、各要素が不良を発生させる恐れがあるか否か判断・予測し、分析した結果に基づきオペレータに品質予報・警報を発することが可能な分析手段と、不良発生要因を取り除く処理手段とを備えたことを特徴とするはんだペースト印刷システム。
【請求項2】
請求項1に記載のはんだペースト印刷システムにおいて、
はんだペースト印刷を実施した後に印刷結果を検査する検査手段と、検査手段により検査した結果の情報を印刷装置に通信する通信手段と、検査手段により検査した結果の情報を分析し、新たな不良事例を新規知識として蓄積手段に随時整理・追加記憶を司る再分析手段を備えたことを特徴とするはんだペースト印刷システム。
【請求項3】
請求項1に記載のはんだペースト印刷システムにおいて、
はんだペースト印刷を実施後、はんだペーストを加熱〜冷却しはんだ付けした後に、はんだ付け外観を検査する検査手段と、検査手段により検査した結果の情報を印刷装置に通信する通信手段と、検査手段により検査した結果の情報を分析し、新たな不良事例を新規知識として蓄積手段に随時整理・追加記憶を司る再分析手段を備えたことを特徴とするはんだペースト印刷システム。
【請求項4】
請求項1から3に記載のはんだペースト印刷システムにおいて、
前記印刷装置の下流側に、部分的にはんだペーストを塗布する複数のディスペンサユニットまたは、はんだ付け不良部を修正する複数のリワークユニットを配置した構成としたことを特徴とするはんだペースト印刷システム。
【請求項5】
請求項4に記載のはんだペースト印刷システムにおいて、
前記検査ユニットが印刷欠けの印刷欠陥を検出すると、前記ディスペンサユニットでは前記印刷欠け部分を修復するために、当該箇所にクリームはんだを塗布することを特徴とするはんだペースト印刷システム。
【請求項6】
請求項4に記載のはんだペースト印刷システムにおいて、
前記検査ユニットがクリームはんだのダレやブリッジ及びニジミの印刷欠陥を検出すると、前記複数のディスペンサユニットのうちの前記吸引用ディスペンサを備えたディスペンサユニットに当該基板を搬送し、そこで余分なクリームはんだを吸引することを特徴とするはんだペースト印刷システム。
【請求項7】
請求項4に記載のはんだペースト印刷システムにおいて、
前記検査ユニットが印刷のズレを検出すると、前記検査ユニットから前記印刷ユニット又は前記ディスペンサユニットに、ズレの発生した基板と位置情報とズレ量を前記印刷ユニットに送信する構成としたことを特徴とするはんだペースト印刷システム。
【請求項8】
請求項4に記載のはんだペースト印刷システムにおいて、
前記複数のディスペンサユニットのうちの少なくとも1つのユニットのディスペンサが接着剤等のクリームはんだ以外の異種材料を供給する構成であることを特徴とするはんだペースト印刷システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2007−96153(P2007−96153A)
【公開日】平成19年4月12日(2007.4.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−285832(P2005−285832)
【出願日】平成17年9月30日(2005.9.30)
【出願人】(000005452)株式会社日立プラントテクノロジー (1,767)
【Fターム(参考)】