説明

めねじの加工方法

【課題】めねじ加工工具によるめねじ加工に際して、めねじ加工工具にかかる荷重を低減して、めねじの精度を向上することが可能なめねじの加工方法を提供することを課題とする。
【解決手段】ワーク2に予め形成される鋳抜き穴3に対して下穴加工を施すエンドミル部10を先端に設け、エンドミル部10により形成される下穴5に対してめねじ加工を施すタップ部20をエンドミル部10と同軸上に連続して設けたマルチタップ1を用いてめねじ4を加工する際に、エンドミル部10と鋳抜き穴3の面取り部3aとが接触してから、タップ部20と面取り部3aとが接触するまでの間のマルチタップ1の回転当たりの送り量(第一送り量)を、形成するめねじ4のねじピッチよりも小さくした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、めねじの加工方法に関し、より詳細には、鋳抜き穴が形成された素材(ワーク)に下穴の加工とめねじ加工(タップ加工)とを一工程で行うめねじ加工工具、いわゆるマルチタップを用いためねじの加工方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、めねじ加工工具において、加工対象であるワークに下穴加工を施すエンドミル刃と、当該エンドミル刃によって形成される下穴にめねじ加工を施すねじ切り刃とを具備し、前記ワークにめねじ加工を施すに際し、当該めねじ加工工具の回転当たりの送り量をねじピッチと同一とし、下穴を開けながら、同時にめねじ加工を施す技術が広く知られている(例えば、特許文献1参照。)。
特許文献1に記載の技術は、めねじ加工工具の先端部の側部にねじ切り刃を設け、底部に凹部を形成するとともに底刃を設けたものである。これによれば、底刃の接触長が短いため、切削抵抗を小さくできる。
しかしながら、特許文献1に記載のめねじ加工工具では、底刃のワークへの食い付き性が悪く、ワークと接触するときの切削抵抗が大きくなり、めねじの位置精度を担保できなかった。
【0003】
そこで、上記のようなめねじ加工工具を用いてめねじ加工を施す際の切削抵抗を低減させるために、めねじ加工の前処理として、鋳造によって成形されるワークに予め鋳抜き穴を設ける技術が広く用いられている。
しかしながら、実用性を鑑みた場合に、鋳造工程における前記鋳抜き穴の精度維持等にかかる負担を増加させないために、概してその穴径及び穴位置に対して高い精度は要求されていない。
このため、ワークにめねじ加工を施す際には、フローティングホルダ等の別途特別な装置を用いてめねじ加工工具を保持し、前記鋳抜き穴に対する位置を調整する必要があった。さらに、鋳抜き穴の位置精度が低い場合には、抜き勾配で取代が増えるため浅い鋳抜き穴にしか適用できない等の制約があった。このような場合は、アルミダイキャスト法等の精度の良い鋳造法でワークを成形し、鋳抜き穴の位置精度を高くする必要が生じ、鋳抜き穴に対する精度維持等の負担が大きくなっていた。
【0004】
また、上記のようにフローティングホルダ等を用いない、又は、アルミダイキャスト法等の鋳造法を用いない場合では、形成された鋳抜き穴の位置とめねじの加工予定位置との位置ズレが許容範囲を超えている可能性がある。係る位置ズレが発生した場合、前記めねじ加工工具が鋳抜き穴に倣うため、当該めねじ加工工具に大きな横荷重がかかり形成されためねじの中心位置と加工予定位置の中心位置との芯ズレ、いわゆるめねじの位置度不良に繋がるおそれがあった。
【0005】
以上のような問題を解決する手段として、以下に示す特許文献2のような技術が開示されている。
特許文献2には、ねじ部が、山径が先端に向かって漸次小径となる食い付き部とこれに連続する完全山部とを有するめねじ加工工具において、前記食い付き部の先端面に下穴加工用の第一刃部(エンドミル刃)を形成することによって、ワークの鋳抜き穴の軸心がずれていた場合でも、当該食い付き部の先端面に形成された第一刃部によって修正しつつ、めねじ加工することを可能とする技術が開示されている。
さらに、上記特許文献2には、めねじ加工時に内径仕上げ用の第二刃部(リーマ刃)を前記完全山部の外周一部に1ピッチ以上の長さで形成することにより、加工されるめねじの内径を許容差内に仕上げることを可能とする技術が開示されている。
【0006】
しかしながら、特許文献2に開示された技術においても、所定の位置精度を有する鋳抜き穴に対する加工にしか適用できない(例えば、鋳抜き穴と加工予定位置との芯ずれ量が0.4mm以下に限定される)という課題がある。さらに、当該位置精度を担保できない場合には、鋳抜き穴の径を小さくする必要があり、このように鋳抜き穴の径を小さくした場合は、めねじ加工工具にかかる横荷重が大きくなってしまい、前記第一刃部(エンドミル刃)のチッピング等の当該めねじ加工工具の折損に繋がる可能性、又はめねじの口元がテーパ状に形成されてしまう等のめねじの精度不良が発生する可能性がある。
また、上述のように発生する切りくずが第二刃部(リーマ刃)と加工後のめねじの溝との間に入り込み、当該めねじのねじ面を傷つける可能性があり、めねじの精度不良を引き起こす可能性がある。
【0007】
また、めねじの開口部に所定の面取りを形成するために、前記鋳抜き穴に予め面取り部を形成しておく方法が一般的である。
このような面取り部においては、めねじ加工工具に横荷重がかかり易く、めねじの開口部がテーパ状に加工される、又はめねじの位置ズレ等を誘発してしまい、必然的にめねじの精度の悪化を招いていた。
【特許文献1】特開平9−225743号公報
【特許文献2】特開平11−309624号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、以上の如き状況を鑑みてなされたものであり、めねじ加工工具によるめねじ加工に際して、めねじ加工工具にかかる荷重を低減して、めねじの精度を向上することが可能なめねじの加工方法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
請求項1に記載のめねじの加工方法は、ワークに予め形成される鋳抜き穴に対して下穴加工を施す第一刃部を先端部に設け、前記第一刃部により形成される下穴に対してめねじ加工を施す第二刃部を前記第一刃部と同軸上に連続して設けためねじ加工工具を用いて、前記ワークに対してめねじを加工するめねじの加工方法であって、前記鋳抜き穴の開口部に面取り部を形成し、前記第一刃部と前記面取り部とが接触してから、前記第二刃部と前記面取り部とが接触するまでの間、前記めねじ加工工具の回転当たりの送り量を前記めねじのねじピッチよりも小さくしたものである。
これによれば、前記第一刃部が前記鋳抜き穴の面取り部を切削する際にめねじ加工工具にかかる横荷重を低減でき、下穴の加工精度を向上できる。
従って、前記鋳抜き穴の形成位置とめねじの加工予定位置との間にズレが生じている場合でも、前記下穴の形成によってそのズレを修正できる。さらに、前記第二刃部によって前記下穴に対してめねじ加工を施すに際してめねじ加工工具にかかる横荷重も低減できる。
なお、前記めねじ加工工具の回転当たりの送り量を前記めねじのねじピッチよりも小さくする時間(又は距離)は、前記鋳抜き穴の形成位置と前記めねじの加工予定位置との位置関係、つまり前記鋳抜き穴の位置精度に応じて調節することも可能であり、めねじ加工時に前記めねじ加工工具の回転当たりの送り量をめねじのねじピッチと同一にするものであれば良い。
【0010】
請求項2に記載のように、前記めねじ加工工具は、前記第一刃部の先端の中心が、前記第一刃部の先端の周端部に対して当該めねじ加工工具の基端部側に後退され、当該第一刃部の先端面は、周端部から前記中心に向かって傾斜する形状を有し、溝底の径が、前記第一刃部の先端から前記第二刃部に向かって徐々に小さくなる勾配を有することが好ましい。
これによれば、逆テーパ状に形成される前記溝底の径によって、前記めねじ加工工具を用いてめねじの下穴を加工する際に発生する切りくずを効率良くワーク(鋳抜き穴)の外部に排出することができる。このように、切りくずの排出性を向上できるので、めねじ加工工具の第一刃部及び第二刃部によるめねじの加工精度を向上できるとともに、当該めねじ加工工具の高寿命化を図れる。
また、前記めねじ加工工具が鋳抜き穴に接触する際に、前記第一刃部の先端の凹形状によって当該鋳抜き穴表面に食い付き易くなり、前記めねじ加工工具にかかる横荷重を低減できるので、前記鋳抜き穴の位置精度が悪い場合においても、前記めねじ加工工具が当該鋳抜き穴に倣わず、下穴の形成位置ズレを防止でき、めねじの位置精度を向上できる。
【0011】
請求項3に記載のように、前記めねじ加工工具は、前記第二刃部の最小円周が、前記第一刃部の最大円周より大きく構成されることが好ましい。
これによれば、前記第二刃部によってめねじの内径を仕上げることができ、めねじの精度を向上できる。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、めねじの精度を向上することが可能なめねじの加工方法を提供できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
以下では、図1〜図5を参照して、本発明に係るめねじ加工工具の実施の一形態であるマルチタップ1の全体構成について説明する。
【0014】
マルチタップ1は、ワーク2に予め形成された鋳抜き穴3に対して、めねじ4の下穴加工及びめねじ4のめねじ加工を施すめねじ加工工具である。図1に示すように、マルチタップ1は、主としてエンドミル部10、タップ部20、シャンク部30、クーラント供給穴40、排出溝50等を具備する。
【0015】
ワーク2は、鋳造法によって鋳造成形される部材である。ワーク2は、例えばアルミニウム合金を材料とするエンジンのシリンダブロック、シリンダヘッド等の部材である。本実施形態では、このワーク2の所定箇所に対してマルチタップ1によるめねじ4の加工が施される。
【0016】
鋳抜き穴3は、ワーク2の鋳造成形過程において鋳抜きピン等を用いて形成される穴である。また、鋳抜き穴3の径は、マルチタップ1によって加工されるめねじ4の径d2より小さく、マルチタップ1による加工時の切削抵抗を低減させるためにワーク2の所定箇所に設けられる穴であり、所定の精度にて(例えば、図2に示すように鋳抜き穴3の形成位置Aとめねじ4の加工予定位置Bとの芯ズレ量D=0.7mm以下)係る所定箇所に設けられている。
【0017】
図2に示すように、本実施形態では、鋳抜き穴3はその開口部において面取り部3aを有している。この面取り角度(図2に示すθ2)は40度であり、断面視における面取り形状(図2に示すθ1)は100度の直線形状である。また、図2及び図3に示すように、この面取り部3aの面取り径d1は、加工されるめねじ4の径d2より大きく、当該めねじ4を加工した後にその周囲に十分な面取り部分が残るような大きさに設定される。具体的には、面取り部3aの面取り径d1は、めねじ4の径d2に、芯ズレ量Dの最大値の2倍、及び所定の余裕量を加えた値としている。
なお、本発明に係る鋳抜き穴は、本実施形態の鋳抜き穴3に限定されず、面取り部3aにおいて、めねじ4の加工後に十分な面取り量を確保できる面取り角度θ2及び面取り径d1を有するものであれば良い。また、マルチタップ1にかかる横荷重を低減する観点からは、前記面取り角度θ2は40度〜60度(すなわち面取り形状θ1は60度〜100度)とすることが好ましく、加工されるべきめねじ4の有効ねじ長さ及び面取り量を確保する観点からは、面取り部3aの面取り径d1を、めねじ4の径d2に前記芯ズレ量Dの最大値の2倍及び所定の余裕量を加えた値(例えば、ねじの呼びM8×1.25、ねじ下穴径6.8mmのめねじ4を加工する場合は8mm+0.7mm×2+0.2mm=9.6mm程度)とすることが好ましい。
つまり、前記面取り部3aの面取り径d1は、前記鋳抜き穴3の位置精度等に応じて調整することが好ましい。
【0018】
エンドミル部10は、マルチタップ1の先端部に設けられ、鋳抜き穴3に対してめねじ4の下穴加工を施す部位である。図1及び図4に示すように、エンドミル部10は、複数刃(本実施形態では3枚刃)を有するエンドミル刃として形成されており、主としてバックテーパ部11・11・11、底刃12・12・12、切れ刃13・13・13、排出溝51・51・51等を具備する。
図1及び図4に示すように、バックテーパ部11は、エンドミル部10の外周部に一定のねじれ角を有する螺旋状に形成されている。底刃12は、エンドミル部10の底部(先端面)において、当該底部の周端部に対してマルチタップ1の基端部側に後退した位置に配置される中心Cから、径方向に突出して形成されている。また、底刃12は、エンドミル部10における底部の周端部(コーナ部)から前記底部の中心Cに向かって(図示においては、下方から上方へ向かって)角度θだけ傾斜して形成されている。切れ刃13は、バックテーパ部11と底刃12とが連続するコーナ部に鋭角状に形成されている。このように、エンドミル部10において、底刃12と切れ刃13とによって、いわゆるエンドミル刃を形成している。
【0019】
また、排出溝51・51・51は、エンドミル部10の外周部であって、前記エンドミル刃(厳密には、底刃12・12・12及び切れ刃13・13・13)の間に形成されるチップポケット15・15・15にそれぞれ連続するように設けられている螺旋状の溝である。
このように、エンドミル部10においては、切れ刃13・13・13によって、ワーク2の表面(鋳抜き穴3の面取り部3a)に食い付き、底刃12・12・12によってワーク2を切削して下穴5を形成する(図9参照)。そして、この切削された切りくずは排出溝51・51・51を通ってタップ部20の外周に設けられる排出溝52・52・52側へ排出される。
【0020】
タップ部20は、マルチタップ1においてエンドミル部10と同軸上に連設され、このエンドミル部10によって形成される下穴5の径を拡大するとともに、当該下穴5に対してめねじ4のめねじ加工を施す部位である。図1に示すように、タップ部20は、全長に亘って鋭角状のねじ切り刃21を有する、いわゆるエキセントリックレリーフのタップとして形成されており、主としてねじ切り刃21、排出溝52・52・52等を具備する。
図1に示すように、ねじ切り刃21は、タップ部20の全長に亘って形成されている。ねじ切り刃21の最小円周である谷部21aの径21bは、図5に示すように、エンドミル部10の底刃12・12・12が描く最大円周(図4に示す二点鎖線の円)の外径12aより大きくなるように形成されており、このねじ切り刃21の谷部21aによって、エンドミル部10により形成された下穴5をくり広げてねじ下穴6を形成することによってその径を拡大するとともに、めねじ4の内径仕上げを行っている(図9参照)。
これによれば、めねじ4の内径を良好に仕上げることができ、ひいてはめねじ4の精度を向上できる。また、従来のめねじ加工工具に具備される内径加工用の切り刃等を不要とし、係る内径加工用の切り刃と加工途中のめねじ4との間に切りくずを噛み込んでめねじ4の内径を傷つけることがなくなる。
【0021】
また、排出溝52・52・52はタップ部20の外周部に、そのタップ部20の全長に亘って形成される螺旋状の溝であり、ねじ切り刃21を分断するように設けられている。この排出溝52・52・52は、排出溝51・51・51とそれぞれ連続するように設けられている。
このように、ねじ切り刃21によって切削された切りくずはこの排出溝52・52・52を通って排出される。また、上述のようにエンドミル部10によって切削された切りくずについても排出溝51・51・51を通り、排出溝52・52・52を通ってワーク2外へ排出される。なお、本実施形態では、図1に示すように、排出溝52・52・52は、マルチタップ1の軸方向においてタップ部20を超えて形成されており、深いめねじ4を加工する場合においても排出溝52・52・52を通じてワーク2外に排出可能にしている。
【0022】
シャンク部30は、マルチタップ1の基端部に設けられており、シャンク部30の基端部31は略四角形断面に形成されている。この基端部31は、図示せぬマシニングセンタ、又は工作機械の主軸等に把持・固定される部位である。図1に示すように、シャンク部30は、タップ部20から所定寸法だけ後退した位置に、前記マシニングセンタ、又は工作機械の主軸等によって十分に把持・固定可能な長さを有するように設けられている。
【0023】
クーラント供給穴40は、マルチタップ1の軸方向の全長に亘って設けられ、ワーク2の被加工部位にクーラントを供給する穴である。このクーラントは、マルチタップ1によるめねじ4の加工時に発生する切りくずをワーク2の被加工部位(すなわち、鋳抜き穴3近傍)から除去するとともに、エンドミル部10の先端部を冷却するためのものである。図1に示すように、マルチタップ1の回転中心に、シャンク部30からタップ部20、エンドミル部10を通って、エンドミル部10の底部の中心Cまで貫通して設けられている。
ここで、クーラント供給穴40を通って供給される高圧のクーラントは、エンドミル部10の底部中心からワーク2の被加工部位に向けて発射され、エンドミル部10のチップポケット15(図4参照)から排出溝51・52に沿って流れる。このクーラントにより、エンドミル部10及びタップ部20によって切削されて発生するワーク2の切りくずが排出される構成である。
【0024】
排出溝50・50・50は、マルチタップ1によるめねじ4の加工時に発生する切りくずをワーク2外に排出するためのものである。図1に示すように、本実施形態における排出溝50は、排出溝51と排出溝52とからなる連続する溝によって構成されており、それぞれエンドミル部10の先端部からタップ部20の全長を超えて、これらの外周部に所定のねじれ角(例えば30度)にて螺旋状に設けられている。
なお、これらの排出溝50・50・50は、マルチタップ1の進行方向と逆方向に切りくずを排出可能なねじれ方向(右スパイラル)に形成されている。
【0025】
以上のように、本実施形態に係るマルチタップ1は、ワーク2に予め形成される鋳抜き穴3に対して下穴加工を施すエンドミル部10を先端部に設け、エンドミル部10により形成される下穴5に対してめねじ加工を施すタップ部20をエンドミル部10と同軸上に連続して設け、基端部に設けられるシャンク部30からエンドミル部10の底部(先端部)までの軸方向全長にかけて、軸方向に貫通するクーラント供給穴40を設け、エンドミル部10の底部(先端部)からタップ部20の軸方向の全長を超えて、外周部に螺旋状の排出溝50・50・50を設け、エンドミル部10の底部(先端)の中心Cを当該底部から前記基端部側に後退した位置とし、エンドミル部10の底部(先端)を周端部(コーナ部)から前記中心Cに向かって傾斜する形状(中心部が窪んだ凹形状)に構成したものである。
また、マルチタップ1は、上述のように螺旋状の排出溝50・50・50を具備する、いわゆるスパイラルタップとして形成される。これにより、めねじ4の加工時に発生する切りくずの排出性能が向上する。従って、マルチタップ1の摩耗を低減できるとともに、切りくずの噛み込みに起因する刃先のチッピングを低減でき、マルチタップ1の高寿命化を図れる。
また、マルチタップ1において、タップ部20の最小円周であるねじ切り刃21の谷部21aの径21bは、エンドミル部10の底刃12の最大円周の外径12aより大きく構成される。これにより、タップ部20の最小円周を描くねじ切り刃21の谷部21aによって、エンドミル部10の底刃12によって形成された下穴5の内径を拡大するとともに、めねじ4の内径を仕上げることが可能となる。従って、鋳抜き穴3の芯ズレ量Dが大きい場合に横荷重を受けてマルチタップ1にたわみが発生した場合にも、ねじ切り刃21による取代を設けているのでめねじ4の精度を向上できるとともに、めねじ4の内径仕上げに際して、ねじ切り刃21とめねじ4との間に切りくずが噛んでめねじ4の内径を傷つけることがなくなり、めねじ4の精度を向上できる。
また、マルチタップ1において、エンドミル部10及びタップ部20の表面全域に潤滑性を向上させるためのコーティングが施されている。このコーティングは例えば摩擦係数の小さいDLC(Diamond−like Carbon)、TiCN(Titanium Carbonitride)等からなり、プラズマCVD法等によって適宜の膜厚に形成されている。これにより、アルミニウム等の溶着性の高いワーク2に対してめねじ4を加工する際にも溶着が抑制されてマルチタップ1のさらなる高寿命化を図れる。
【0026】
以下では、図6を参照して、本実施形態に係るマルチタップ1の溝底の径Wについて詳細に説明する。ここで、「溝底の径」とは、めねじ加工工具の芯の厚みであり、つまり、底刃又はねじ切り刃等の溝の底に接する仮想的な円錐の直径である。本実施形態では、溝底の径Wは、底刃12又はねじ切り刃21の溝の底に接する仮想的な円錐の直径を示す。
図6(a)に示すように、従来のめねじ加工工具100では、溝底の径Xは先端部110からシャンク部120に向かって漸次大きくなるテーパ状に形成されていた。
一方、本実施形態では、図6(b)に示すように、溝底の径Wを、マルチタップ1の先端部からシャンク部30に向かって徐々に小さくなる勾配を有する逆テーパ状に構成している。言い換えれば、マルチタップ1において、切りくずの排出方向(マルチタップ1の進行方向と逆方向)に向けて、マルチタップ1により形成されるめねじ4とマルチタップ1(より厳密には、排出溝50)との間隙がより大きくなるように形成されている。
【0027】
また、本実施形態では、溝底の径Wの勾配の値は、−1/150に(具体的には、エンドミル部10の底部から軸方向に150mm進むに従って、溝底の径Wが1mm小さくなるように)設定されている。
なお、本発明に係る溝底の径Wの勾配の値は、本実施形態のものに限定されず、特にエンドミル部10の切削によって発生する切りくずの排出性を担保でき、かつ、マルチタップ1の強度を十分に確保できる範囲内であれば良く、具体的には、マルチタップ1の強度的な臨界点である−1/100を超えない範囲内であれば良い。また、この勾配の値が−1/100を超えた場合、マルチタップ1の横荷重に対する強度が急激に低下することが分かっており、強度的な観点から−1/100より大きい勾配(つまり、−1/100より小さい値)は好ましくない。
【0028】
以上のように、本実施形態に係るマルチタップ1の溝底の径Wは、マルチタップ1の先端部からシャンク部30に向かって徐々に小さくなる勾配を有する逆テーパ状に形成されるものである。
これによれば、マルチタップ1によってめねじ4を加工する際に、特にエンドミル部10の底刃12・12・12によって切削される切りくずをマルチタップ1の先端側から基端側へと排出溝50・50・50を通して排出し易くなる。従って、マルチタップ1の切りくず排出性を向上することができ、底刃12・12・12又はねじ切り刃21に切りくずが噛み込むことに起因するめねじ4の傷付き、及び刃先のチッピング又はマルチタップ1の折損を抑制できるので、マルチタップ1を用いて形成されるめねじ4の精度向上及びマルチタップ1の高寿命化を図れる。
また、本実施形態に係るマルチタップ1の溝底の径Wの勾配の値は、−1/100以上、かつ、0未満の範囲内に設定されるものである。
これによれば、マルチタップ1の排出性を担保しつつ、その横荷重に対する強度を確保することができる。従って、マルチタップ1の折損を防止でき、マルチタップ1のさらなる高寿命化を図れる。
【0029】
以下では、図7及び図8を参照して、本実施形態に係る底刃12の傾斜の角度(底刃のすかし角度)θについて詳細に説明する。ここで、「角度θ」とは、めねじ加工工具の底刃の傾斜角度であり、めねじ加工工具の軸線と直交する平面と、底刃とのなす角である。図7に示すように、本実施形態では、角度θは15度に設定されている。
なお、本発明に係る底刃の傾斜の角度θは、本実施形態のものに限定されず、底刃12において、鋳抜き穴3への十分な食い付き性及び底刃12の十分な強度を有するものであれば良く、より具体的には、角度θは底刃12の強度的な臨界点である15度を超えず、底刃12の食い付き性の臨界点である5度を下回らない範囲内であれば良い。
【0030】
また、図8は、底刃12の傾斜の角度θを(1)5度とした場合(2)10度とした場合(3)15度とした場合について、それぞれマルチタップ1によってめねじ4を加工する際にマルチタップ1にかかる横荷重及び形成されためねじ4の位置度を測定したものである。
ここで、「マルチタップ1にかかる横荷重」とは、マルチタップ1を取り付けた工作機械の主軸にかかる横荷重を適宜の測定方法により測定した値であり、「めねじ4の位置度」とは、めねじ4の加工予定位置Bとめねじ4の形成位置との芯ズレ量を適宜の測定方法により測定した値である。
図8に示すように、角度θが大きいほど横荷重の値が小さく、かつ、位置度が小さく(すなわち前記芯ズレ量が少なく)なっている。しかしながら、角度θが大きくなりすぎると、底刃12のチッピングの可能性が高くなってしまう(例えば20度では刃先の強度の低下が顕著に見られた)。すなわち、底刃12の傾斜の角度θは、5度〜15度の範囲内であることが特に好ましい。
【0031】
以上のように、エンドミル部10の底部の中心Cをエンドミル部10の底部(先端)から後退した位置に配置し、エンドミル部10の底部の底刃12を周端部から底部の中心Cに向かって傾斜する凹形状に形成するものである。
これによれば、底刃12・12・12が鋳抜き穴3に接触する際に、その表面に食い付き易くなり、マルチタップ1にかかる横荷重を低減することができるので、鋳抜き穴3の精度が比較的低い場合でも、マルチタップ1が鋳抜き穴3に倣わず、めねじ4の下穴加工の位置ズレを防止でき、ひいてはめねじ4の精度を向上できる。
また、エンドミル部10の底刃12・12・12の傾斜の角度(底刃のすかし角度)θを5度〜15度の範囲内とするものである。
これによれば、底刃12・12・12の鋳抜き穴3に対する食い付き性を担保しつつ、刃の強度も担保でき、チッピングを防止して底刃12・12・12の高寿命化、ひいてはマルチタップ1の高寿命化を図れる。
【0032】
以下では、図9〜図11を参照して、本発明に係るねじ加工方法の実施の一形態であるめねじの加工工程について説明する。
本実施形態において、マルチタップ1を用いて形成するめねじ4は、ねじの呼びM8、ねじピッチ1.25mm、ねじ下穴径6.8mmのメートルねじであり、鋳抜き穴3は、径4.5mm、穴深さ30mm、面取り角度θ2は40度、面取り径d1は9.6mmであり、鋳抜き穴3の形成位置Aとめねじ4の加工予定位置Bとの芯ズレ量Dは0.7mm(芯ズレ量Dの最大量)である。
【0033】
まず、図9(a)に示すように、マルチタップ1をワーク2に形成される鋳抜き穴3に向けて近接する方向に回転させながら送り込む。
そして、エンドミル部10の底刃12・12・12が鋳抜き穴3の面取り部3aと接触し、面取り部3aに食い付き、底刃12・12・12によって鋳抜き穴3が切削されて下穴5が形成される。エンドミル部10によって形成される下穴5の径は、形成されるめねじ4のねじ下穴6の径より小さく、本実施形態では6.6mmである。ここで、底刃12・12・12と面取り部3aとが接触してからのマルチタップ1の回転当たりの送り量(第一送り量)は、形成するめねじ4のねじピッチ1.25mmより小さく、0.15mmであり、マルチタップ1の回転速度は4000rpmである。
このとき、底刃12・12・12によってワーク2(面取り部3a)を切削する際に、マルチタップ1の送り量を小さくしているので、芯ズレ量Dの大きさに応じてマルチタップ1が受ける影響を緩和することができる。すなわち、マルチタップ1にかかる横荷重を低減することができる(図10参照)。これにより、底刃12・12・12によって形成される下穴5の位置精度を向上でき、鋳抜き穴3の形成位置Aとめねじ4の加工予定位置Bとのズレを修正できる。このように位置精度の高い下穴5が形成されるので、この下穴5に対してめねじ加工を施すねじ切り刃21にかかる横荷重も低減できる(図10参照)。従って、めねじ4の精度を向上できるとともに、マルチタップ1の高寿命化を図ることができる。
また、凹形状に形成される底刃12・12・12によって、鋳抜き穴3の面取り部3aに良好に食い付くことによって、マルチタップ1にかかる横荷重が低減され、鋳抜き穴3の芯ズレ量Dに関わらず面取り部3aと接触する際にかかる横方向の力が軽減されるので、より正確な位置に下穴5を加工することが可能となる。同時に、鋳抜き穴3の面取り部3aは、その面取り角度θ2が40度に形成されており、底刃12・12・12の面取り部3aへの食い付きを良好なものとしている。
また、マルチタップ1の溝底の径Wは、エンドミル部10からシャンク部30に向かって徐々に小さくなる勾配を有するように構成されているため、底刃12・12・12によって切削される切りくずは、螺旋状に形成される排出溝50・50・50(排出溝51・51・51)を通って良好に排出される。
【0034】
次に、図9(b)に示すように、マルチタップ1をワーク2に向けてさらに近接する方向に送り込むと、タップ部20のねじ切り刃21が底刃12・12・12によって形成された下穴5に食い付く。ここで、マルチタップ1の回転当たりの送り量(第二送り量)は、形成するめねじ4のねじピッチ1.25mmと同一であり、マルチタップ1の回転速度は2000rpmである。
そして、ねじ切り刃21によって下穴5にめねじを形成するとともに、ねじ切り刃21の谷部21aによって下穴5の径(6.6mm)をねじ下穴6の径まで拡大する。本実施形態では、前記谷部21aによって拡大された後のねじ下穴6の径は6.8mmである。
このとき、ねじ切り刃21の谷部21aの径21bは、底刃12の最大円周の外径12aより大きく構成されているので、この谷部21aによって下穴5の径を拡大するとともに、めねじ4の内径を仕上げている。これにより、めねじ4の内径を良好に仕上げることができる。
また、マルチタップ1の溝底の径Wは、エンドミル部10からシャンク部30に向かって徐々に小さくなる勾配を有するように構成されているため、底刃12・12・12によって切削される切りくず及びねじ切り刃21によって切削される切りくずは、螺旋状に形成される排出溝50・50・50(排出溝51・51・51及び排出溝52・52・52)を通って良好に排出される。
【0035】
所定の深さのめねじを形成した後、図9(c)に示すように、マルチタップ1をワーク2から離間する方向に回転させながら引き抜く。なお、マルチタップ1の回転当たりの送り量は、ねじピッチ1.25mmと同一である。
【0036】
このように、ワーク2の所定箇所に図9(d)に示すようなめねじ4が形成される。
このとき、鋳抜き穴3は、その開口部に直線形状の面取り部3aを有する。これにより、従来のR形状の面取りに対するめねじ加工工具の食い付きと比較して、直線形状に形成される鋳抜き穴3の面取り部3aに対してマルチタップ1が食い付き易くなり、マルチタップ1にかかる横荷重を低減できる。さらに、その面取り角度θ2を40度〜60度の範囲内(本実施形態では40度)、かつ、その面取り径d1を鋳抜き穴3の精度、特に芯ズレ量の最大値に応じた値(本実施形態では9.6mm)としたので、鋳抜き穴3の形成位置Aとめねじの加工予定位置Bとの間に最大の芯ズレが生じた場合においても、形成されるべきめねじ4に必要な面取りと有効ねじ長さを確保できる。
【0037】
以下では、図10を参照して、エンドミル部10と鋳抜き穴3の面取り部3aとが接触してから、タップ部20と面取り部3aとが接触するまでの間のマルチタップ1の回転当たりの送り量(第一送り量)について詳細に説明する。
【0038】
図10は、マルチタップ1の前記第一送り量を、(1)1.25mm(2)0.9mm(3)0.6mm(4)0.3mm(5)0.15mm(6)0.03mmとして、めねじ4を加工した場合の、マルチタップ1にかかる横荷重及び形成されためねじ4の位置度を測定した結果を示し、図10(a)は、面取り部3aを加工しているときの測定結果であり、図10(b)は、面取り部3a及びめねじ加工をしているときの測定結果である。
図10に示すように、前記第一送り量が小さいほどマルチタップ1にかかる横荷重の値が小さく、かつ、めねじ4の位置度が小さくなる傾向が見られる。
【0039】
図11は、マルチタップ1の前記第一送り量を、(1)1.25mm(2)0.9mm(3)0.6mm(4)0.3mm(5)0.15mm(6)0.03mmとして、めねじ4を加工した場合に、形成されためねじ4のねじ内径テーパ量を測定した結果を示している。
図11に示すように、前記第一送り量を小さくするほど、前記ねじ内径テーパ量が小さくなる傾向が見られる。
【0040】
以上のように、本発明に係るめねじの加工方法の実施の一形態において、エンドミル部10と鋳抜き穴3の面取り部3aとが接触してから、タップ部20と面取り部3aとが接触するまでの間のマルチタップ1の回転当たりの送り量(第一送り量)を、形成するめねじ4のねじピッチよりも小さくしたので、底刃12・12・12によってワーク2(面取り部3a)を切削する際に、マルチタップ1の送り量を小さくしているので、芯ズレ量Dの大きさに応じてマルチタップ1が受ける影響を緩和することができる。すなわち、マルチタップ1にかかる横荷重を低減することができる。これにより、底刃12・12・12によって形成される下穴5の位置精度を向上でき、鋳抜き穴3の形成位置Aとめねじ4の加工予定位置Bとのズレを修正できる。このように位置精度の高い下穴5が形成されるので、この下穴5に対してめねじ加工を施すねじ切り刃21にかかる横荷重も低減できる。ひいては、めねじ4の精度を向上できるとともに、マルチタップ1の高寿命化を図ることができる。
なお、本実施形態では、マルチタップ1の軸方向への送り量を前記第一送り量と第二送り量とを切り替えて連続的に加工したが、マルチタップ1を前記第一送り量で所定の深さ(厳密には、ねじ切り刃21が面取り部3aと接触する直前)まで送り、その後マルチタップ1をワーク2から退避させて、前記第二送り量で再び軸方向に送り込むことによって間欠的に加工しても良い。
また、マルチタップ1の回転当たりの送り量をめねじ4のねじピッチよりも小さくする時間(又は距離)は、鋳抜き穴3の形成位置Aとめねじ4の加工予定位置Bとの芯ズレ量D、つまり鋳抜き穴3の位置精度に応じて調節することも可能であり、タップ部20のねじ切り刃21によるめねじ加工時にマルチタップ1の回転当たりの送り量をめねじ4のねじピッチと同一にするものであれば良く、例えばワーク2の成形方法、用途、所望の寸法精度、作業時間等に応じて調節することが好ましい。
また、エンドミル部10と鋳抜き穴3の面取り部3aとが接触してから、タップ部20と面取り部3aとが接触するまでの間のマルチタップ1の回転速度は、本実施形態のように、めねじ加工時よりも速くすることも可能であり、例えばワーク2の成形方法、用途、所望の寸法精度、作業時間等に応じて調節することが好ましい。
【0041】
また、上述のように、前記第一送り量の条件を(1)〜(6)の何れか一つとしてめねじ4を加工したが、(1)〜(6)の全ての条件において、所定の条件を満たす鋳抜き穴3に対してマルチタップ1を用いてめねじ4を加工する際に、めねじ4の加工予定位置Bと実際の形成位置との位置度(芯ズレ量)は0.4mm以下とすることが確認でき、めねじ4の精度はJIS1級を満足することが確認できた。
このように、前記第一送り量は、所望のめねじ4の精度、ワーク2の材質又は精度、作業時間等に応じて調節することが好ましい。
【図面の簡単な説明】
【0042】
【図1】本発明に係るめねじ加工工具の実施の一形態を示す概略正面図である。
【図2】本発明に係るめねじ加工工具と鋳抜き穴との実施の一形態を示す模式図である。
【図3】本発明に係る鋳抜き穴の実施の一形態を示す平面図である。
【図4】本発明に係るめねじ加工工具の実施の一形態を示す底面図である。
【図5】本発明に係るめねじ加工工具の第一刃部と第二刃部との径を示す図である。
【図6】本発明に係るめねじ加工工具の溝底の径を示す図、(a)は従来のめねじ加工工具(b)は本発明に係るめねじ加工工具である。
【図7】図4におけるE−E線拡大断面図である。
【図8】本発明に係る第一刃部の先端の傾斜角度と、めねじ加工工具にかかる横荷重及び形成されるめねじの精度との関係を示すグラフである。
【図9】本発明に係るめねじの加工方法の実施の一形態を示す図である。
【図10】本発明に係るめねじ加工工具の送り量と、めねじ加工工具にかかる横荷重及び形成されるめねじの精度との関係を示すグラフである。
【図11】本発明に係るめねじ加工工具の送り量と、めねじの精度との関係を示すグラフである。
【符号の説明】
【0043】
1 マルチタップ(めねじ加工工具)
10 エンドミル部(第一刃部)
20 タップ部(第二刃部)
30 シャンク部
40 クーラント供給穴
50 排出溝
100 従来のめねじ加工工具
A 鋳抜き穴の形成位置
B めねじの加工予定位置
C エンドミル部の底部の中心
D 芯ズレ量
X 従来のめねじ加工工具の溝底の径
W 溝底の径

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ワークに予め形成される鋳抜き穴に対して下穴加工を施す第一刃部を先端部に設け、前記第一刃部により形成される下穴に対してめねじ加工を施す第二刃部を前記第一刃部と同軸上に連続して設けためねじ加工工具を用いて、前記ワークに対してめねじを加工するめねじの加工方法であって、
前記鋳抜き穴の開口部に面取り部を形成し、
前記第一刃部と前記面取り部とが接触してから、前記第二刃部と前記面取り部とが接触するまでの間、前記めねじ加工工具の回転当たりの送り量を前記めねじのねじピッチよりも小さくすることを特徴とするめねじの加工方法。
【請求項2】
前記めねじ加工工具は、
前記第一刃部の先端の中心が、前記第一刃部の先端の周端部に対して当該めねじ加工工具の基端部側に後退され、当該第一刃部の先端面は、周端部から前記中心に向かって傾斜する形状を有し、
溝底の径が、前記第一刃部の先端から前記第二刃部に向かって徐々に小さくなる勾配を有することを特徴とする、請求項1に記載のめねじの加工方法。
【請求項3】
前記めねじ加工工具は、前記第二刃部の最小円周が、前記第一刃部の最大円周より大きく構成されることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載のめねじの加工方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2009−262264(P2009−262264A)
【公開日】平成21年11月12日(2009.11.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−113517(P2008−113517)
【出願日】平成20年4月24日(2008.4.24)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【出願人】(000103367)オーエスジー株式会社 (180)