説明

アイアン型ゴルフクラブヘッド

【課題】フェース部材の背面を支持する受け部の幅を変化させて打球の飛距離や方向性を向上させる。
【解決手段】フェース部材2とヘッド本体3とを含むアイアン型ゴルフクラブヘッド1である。ヘッド本体3は、フェース部材2の背面5とは接触しない開口部Oを有し、かつ、該開口部Oの回りにフェース受け部15が設けられる。フェース受け部15は、フェース部材2の外周面6を支持する内周面部13と、該内周面部13からヘッド中心側に張り出すとともにフェース部材2の背面5の周縁部を支持する受け面14とからなる。受け面14は、トップ側部14c、ソール側部14s、トウ側部14t及びヒール側部14hを有する環状をなすとともに、Wt>Wc、Wt>Ws及びWt>Whを満足する。ただし、Wt:トウ側部の平均幅、Wc:トップ側部の平均幅、Ws:ソール側部の平均幅、Wh:ヒール側部の平均幅である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、フェース部材とヘッド本体とを固着したアイアン型ゴルフクラブヘッドに関し、詳しくはフェース部材の背面を支持するヘッド本体の受け部の幅を変化させることにより、打球の飛距離や方向性を向上させ得るアイアン型ゴルフクラブヘッドに関する。
【背景技術】
【0002】
図7(a)には、従来のアイアン型のゴルフクラブヘッドbの正面図、図7(b)には、そのA−A断面図が示される。該ゴルフクラブヘッドbは、それぞれ別材料で形成されたフェース部材cと、ヘッド本体dとを固着することにより形成されている(例えば下記特許文献1参照)。
【0003】
ヘッド本体dには、前後に貫通した開口部Oと、その回りに形成されたフェース受け部fとが設けられる。フェース受け部fは、フェース部材cの外周面e1を支持する内周面部f1と、フェース部材cの背面e2の周縁部を支持する実質的に一定の幅Wで環状に連続する受け面f2とからなる断面略ステップ状で形成されている。
【0004】
【特許文献1】特開2001−29523号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
このようなアイアン型のゴルフクラブヘッドbにおいて、打球の飛距離を増大させるためには、フェース部材cのヘッド本体dと接触していない部分の面積をより大きくし、打球時にフェース部材cが大きく撓む(弾性変形する)ように改善することが有効である。特に、フェース部材cは、横長形状をなすため、より撓み易くするには、開口部Oの上下方向の寸法を拡大することが有効である。
【0006】
一方、アイアン型ゴルフクラブヘッドは、ヒール側に重量物であるホーゼル部gを一体に有する。このため、トウ側の重量を増すことにより、ヘッド重心に関する慣性モーメントを効果的に増大させることができる。このようなクラブヘッドは、ミスショット時のヘッドのブレが小さなり、打球の方向性が向上する。
【0007】
また、トウ側の重量を増加させることにより、シャフト軸中心線に関するクラブヘッドの慣性モーメントも大きくなる。このようなクラブは、打撃されたボールの初速を高め、飛距離を増大させ得る。
【0008】
本発明は、以上のような実情に鑑み案出なされたもので、フェース部材の背面の周縁部を支持する受け面のトウ側部の平均幅を相対的に大きくし、かつ、受け面のトップ側部の平均幅、ソール側部の平均幅及びヒール側の平均幅を小さくすることを基本として、打球の飛距離と方向性とを向上しうるアイアン型ゴルフクラブヘッドを提供することを主たる目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、ボールを打球するフェースの少なくとも一部を構成するフェース部材と、前側に前記フェース部材が固着されるヘッド本体とを含むアイアン型ゴルフクラブヘッドであって、前記ヘッド本体は、前記フェース部材の背面とは接触しない開口部を有し、かつ、該開口部の回りにフェース受け部が設けられ、前記フェース受け部は、前記フェース部材の外周面を支持する内周面部と、該内周面部からヘッド中心側に張り出すとともにフェース部材の背面の周縁部を支持する受け面とからなり、しかも前記受け面は、ヘッド上部側をのびるトップ側部、ヘッド底部側をのびるソール側部、前記トップ側部と前記ソール側部との間をヘッド先端側でつなぐトウ側部、及び前記トップ側部と前記ソール側部との間をヒール側でつなぐヒール側部を有する環状をなすとともに、下式を満足することを特徴とする。
Wt>Wc
Wt>Ws
Wt>Wh
ただし、符号は次の通りである。
Wt:受け面のトウ側部の平均幅
Wc:受け面のトップ側部の平均幅
Ws:受け面のソール側部の平均幅
Wh:受け面のヒール側部の平均幅
【0010】
また、本発明に係る上記アイアン型ゴルフクラブヘッドにおいて、前記受け面のトウ側部は、下半分の平均幅Wt2が、その上半分の平均幅Wt1よりも大きくても良い。
【0011】
また、本発明に係る上記アイアン型ゴルフクラブヘッドにおいて、前記受け面は、トップ側部の平均幅Wc及びソール側部の平均幅Wsが下式を満足するものでも良い。
Ws>Wc
【発明の効果】
【0012】
本発明のゴルフクラブヘッドは、フェース部材の背面の周縁部が、ヘッド本体の受け面によって支持されるが、この受け面は、トップ側部の平均幅及びソール側部の平均幅が、トウ側の平均幅に比して相対的に小さく形成される。これにより、フェース部材の背面と接触しない開口部の上下寸法を大きく確保し、フェース部材を撓み易くして飛距離を増加させることができる。また、受け面は、トウ側部の平均幅が相対的に大きく形成されるので、ヘッドのトウ側重量を増加させることができる。これにより、クラブヘッドのヘッド重心又はシャフト軸中心線に関する慣性モーメントが大きくなり、ひいては打球の方向性や初速が向上する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
以下、本発明の実施の一形態が図面に基づき説明される。
図1は、本実施形態のアイアン型ゴルフクラブヘッド1を規定のライ角α及びロフト角β(ロフト角βは図3に示される。)に保持して水平面HPに接地させた基準状態の正面図、図2は図1の背面図、図3は図1のA−A拡大端面図、図4はアイアン型ゴルフクラブヘッドの組立前の分解斜視図をそれぞれ示す。
【0014】
本実施形態のアイアン型ゴルフクラブヘッド(以下、単に「クラブヘッド」又は「ヘッド」ということがある。)1は、ヘッド基体1A及びホーゼル部1Bを含んで構成される。
【0015】
前記ヘッド基体1Aは、ボールを打撃する面であるフェースFと、その反対側の面であるバックフェースBfと、これらの間を継ぐヘッド外周面Pとで区画される。前記ヘッド外周面Pは、フェースFの上縁からヘッド後方にのびヘッド上面をなすトップ面Tbと、前記フェースFの下縁からヘッド後方にのびヘッド底面をなすソール面Soと、前記トップ面Tbと前記ソール面Soとの間を継ぐトウ面Toとを含む。
【0016】
前記ホーゼル部1Bは、シャフト差込孔hが形成された筒状をなし、ヘッド基体1Aのヒール側に連設されて上方にのびている。シャフト差込孔hには、図示しないシャフトが装着される。このシャフト差込孔hの軸中心線CLは、ヘッド1を前記基準状態に保持する際に、シャフトの軸中心線の代わりとして用いられる。
【0017】
また、ヘッド1は、フェースFの少なくとも一部(本実施形態では主要部)を構成するフェース部材2と、前側に該フェース部材2が固着されるヘッド本体3とから構成される。即ち、本実施形態のクラブヘッド1は、2ピース構造である。
【0018】
本実施形態において、前記フェース部材2及びヘッド本体3は、いずれも金属材料で構成される。好ましい態様として、フェース部材2には、ヘッド本体3よりも比重が小さい金属材料が用いられる。これにより、軽量化を図りつつ慣性モーメント及びスイートエリアの大きいヘッド1が提供される。
【0019】
前記フェース部材2には、例えばチタン、チタン合金、アルミニウム合金、マレージング鋼又はアモルファス合金等が好適であり、とりわけ低比重かつ高強度のチタン合金又はアルミニウム合金が好ましい。また、前記ヘッド本体3には、例えばSUS630、SUS255又はSUS450等のようなステンレス鋼、マレージング鋼、Ni系合金又は軟鉄が好適であり、とりわけステンレス鋼、軟鉄又はマレージング鋼が好ましい。
【0020】
前記フェース部材2は、図3ないし4に示されるように、フェースFの主要部を構成する前面4と、その裏面である背面5と、それらの間を継ぐ外周面6とを含む。
【0021】
本実施形態において、フェース部材2の外周面6は、正面視において、ヘッド外周面Pとほぼ近似した輪郭を有する。具体的に述べると、フェース部材2の正面視において、外周面6は、トップ面Tbとほぼ平行にのびるトップ部側外周面6aと、ソール面Soとほぼ平行にのびるソール部側外周面6bと、トウ面Toとほぼ平行にのびるトウ側外周面6cとを含む。なおフェース部材2のヒール側外周面6dは、ホーゼル部1Bの手前で途切れかつ前記トップ部側外周面6aとソール部側外周面6bとの間をほぼ垂直にのびている。このようなフェース部材2は、フェースFのトウ〜ヒール方向及びトップ〜ソール方向の広い範囲を占めることが可能になり、より撓みやすく構成され得る。
【0022】
また本実施形態のフェース部材2は、フェースラインFLなどを除いて実質的に一定の厚さtfで形成されている。他の実施形態として、フェース部材2は、周辺部が薄くかつ中央部が厚く形成されても良い。このようなフェース部材2は、強度を損ねず反発性を高めるのに役に立つ。
【0023】
前記フェース部材2の厚さtfは、使用する材料に応じて適宜定めることができるため特に限定はされないが、小さすぎると耐久性が悪化する傾向があり、大きすぎると打球時に十分な撓みが得られず飛距離が低下する傾向がある。このような観点より、前記厚さtfは、好ましくは1.0mm以上、より好ましくは1.5mm以上、さらに好ましくは2.0mm以上が望ましく、かつ、上限については、好ましくは4.0mm以下、より好ましくは3.5mm以下、さらに好ましくは3.0mm以下が望ましい。
【0024】
前記ヘッド本体3は、図4に示されるように、前後に貫通した開口部Oの周りを形成する主枠部12と、そのヒール側に連設された前記ホーゼル部1Bとを含む。
【0025】
前記主枠部12は、トップ面Tbを含んでトウ、ヒール方向にのびるトップ部枠12aと、ソール面Soを含んでトウ、ヒール方向にのびるソール部枠12bと、トウ面Toを含んで前記トップ部枠12aとソール部枠12bとを継ぐトウ部枠12cと、ヒール側において前記トップ部枠12aとソール部枠12bとを継ぐネック部12dとを含む。
【0026】
また、ソール部枠12bには、そのバックフェース側で上部に立ち上がる背壁部19が設けられる。これにより、フェース部材2の背後にはポケット状のアンダーカットキャビティが形成される。このような背壁部19は、多くの重量をヘッド後方かつ底部に集中させ、スイートエリア及び慣性モーメントの増大やヘッド重心Gをより低く調整するのに有効である。なお、背壁部19は、打球時にフェース部材2の背面5と接触することがない位置および大きさで設けられる。
【0027】
本実施形態の開口部Oは、正面視において、フェース部材2の外周面6の輪郭と同様、トップ面Tb、ソール面So及びトウ面Toとほぼ平行にのびる開口輪郭を具えるとともに、そのヒール側は、ほぼ垂直にのびている。また、開口部Oは、フェースFのスイートスポットSS(ヘッド重心GからフェースFに立てた法線とフェースFとの交点)を囲むように形成される。
【0028】
また、ヘッド本体3は、開口部Oにより、多くの重量がフェース部材2の周辺に配分される。これは、ヘッドの慣性モーメントを増大させるのに役立つ。また、打球時、フェース部材2はバックフェース側に撓むが、開口部Oは、打球時のフェース部材2が自由に撓み得る大きな空間を提供する。従って、スプリング効果によって飛距離が伸びる。また、前記開口部Oはヘッド本体3を貫通するものに限定されるわけではなく、フェース部材2の背面5と接触しないバックフェース側の背壁部(図示せず)によって閉じられたものでも構わない。
【0029】
ヘッド本体3には、開口部Oの回りかつその前側にフェース受け部15が設けられる。該フェース受け部15は、フェース部材2の外周面6と向き合ってこれを支持する内周面部13と、該内周面部13からヘッド中心側(図1においてスイートスポットSS側)に張り出すとともにフェース部材2の背面5の周縁部を支持する受け面14とからなる断面略ステップ状で形成される。
【0030】
前記内周面部13は、開口部Oに沿って環状に連続して形成され、フェース部材2の外周面6よりも僅かに大きな輪郭形状で形成されている。また、受け面14は、フェースFと実質的に平行な平面で形成されている。
【0031】
そして、フェース部材2は、ヘッド本体3のフェース受け部15に嵌め込まれて、例えば接着、圧入、かしめ、溶接又はネジ止め等の1ないし複数の接合手段により一体に固着される。
【0032】
図5には、基準状態のヘッド本体3をロフト角βで前傾させることによりフェースが垂直となるように保持した垂直状態の正面図を示す。理解しやすいように、受け面14を着色しかつそれよりも後方にある背壁部19などは図示省略している。図5から明らかなように、受け面14は、ヘッド上部側をのびるトップ側部14cと、ヘッド底部側をのびるソール側部14sと、トップ側部14cとソール側部14sとの間をヘッド先端側でつなぐトウ側部14tと、トップ側部14cとソール側部14sとの間をヒール側でつなぐヒール側部14hとからなる環状で形成される。
【0033】
ここで、受け面14のトップ側部14c、ソール側部14s、トウ側部14t及びヒール側部14hは、ヘッド本体3の上記垂直状態の正面視において、次のように決定される。先ず、受け面14の最もトウ側の位置P1を通る垂直線L1及び受け面14の最もヒール側の位置P2を通る垂直線L2を定める。次に、これらの垂直線L1、L2間の水平方向の長さAWを4等分する垂直線L3ないしL5をトウ側から順次設定する。そして、受け面14において、垂直線L1−L3の区間をのびる部分をトウ側部14t、垂直線L2−L5の区間をのびる部分をヒール側部14h、垂直線L3−L5の区間の上側をのびる部分をトップ側部14c、及び、垂直線L3−L5の区間の下側をのびる部分をソール側部14sとして定める。
【0034】
そして、本実施形態のクラブヘッド1は、下式を満足するように、受け面14の幅を変化させることを特徴事項の一つとしている。
Wt>Wc
Wt>Ws
ここで、Wtは、受け面14のトウ側部14tの平均幅、Wcはトップ側部14cの平均幅、Wsはソール側部14sの平均幅である。前記各平均幅は、それぞれの領域をのびる受け面14の実際の幅Wti、Wci、Wsiをその長さで重み付けした加重平均として定められる。また、受け面14の任意の位置における幅は、受け面14の外側輪郭線Koから受け面14の内側輪郭線Kiまでの最短距離として測定される。
【0035】
このように、受け面14のトウ側部14tの平均幅Wtを、トップ側部14cの平均幅Wc及びソール側部14sの平均幅Wsよりも相対的に大きくすることにより、ヘッド1のトウ側の重量を相対的に大きくすることが可能になる。従って、本実施形態のクラブヘッド1は、ヘッド重心G(図3に示す)又はシャフト軸中心線CLに関するクラブヘッド1の慣性モーメントが大きくなり、ひいては打球の方向性や初速を向上させることができる。
【0036】
とりわけ、トウ側部14tの平均幅Wtとトップ側部14cの平均幅Wcとの比Wt/Wcは、好ましくは1.2以上、より好ましくは1.5以上が望ましく、また、好ましくは4.0以下、より好ましくは3.0以下が望ましい。とりわけ、トウ側部14tの平均幅Wtとソール側部14sの平均幅Wsとの比Wt/Wsは、好ましくは1.2以上、より好ましくは1.5以上が望ましく、また、好ましくは3.0以下、より好ましくは2.5以下が望ましい。
【0037】
これらの比Wt/Ws又はWt/Wcが過度に小さくなると、トウ側へ重量を配分する効果や開口部Oを大型化する作用が十分に得られないおそれがあり、逆に過度に大きくなると、トップ側部14c又はソール側部14sにおいてフェース部材2との接合強度の低下や、トウ側への過度の重量配分を招くおそれがある。
【0038】
また、上記作用をより有効に発揮させるために、受け面14のトウ側部14tの平均幅Wtは、ヒール側部14hの平均幅Whよりも大きいことが望ましい。即ち、下式を満足させることが望ましい。
Wt>Wh
【0039】
とりわけ、トウ側部14tの平均幅Wtとヒール側部14hの平均幅Whとの比Wt/Whは、好ましくは1.1以上、より好ましくは1.3以上が望ましく、また、好ましくは6.0以下、より好ましくは3.0以下が望ましい。前記比Wt/Whが過度に小さくなると、トウ側へ重量を配分する効果が十分に得られないおそれがあり、逆に過度に大きくなると、ヒール側部14hにおいてフェース部材2との接合強度の低下や、トウ側への過度の重量配分を招くおそれがある。
【0040】
さらに、上記作用を有効に発揮させるために、受け面14のトップ部側14cの平均幅Wc、ヒール側部14hの平均幅Wh及びソール側部14sの平均幅Wsについては、下式の関係を満足させるのが望ましい。即ち、ヒール側部14hの平均幅Whを受け面14の中で最も小さく構成することにより、上記慣性モーメントを増大させるのに役立つ。
Wc>Wh
Ws>Wh
【0041】
とりわけ、トップ側部14cの平均幅Wcとヒール側部14hの平均幅Whとの比Wc/Whは、好ましくは1.1以上、より好ましくは1.3以上が望ましく、また、好ましくは3.0以下、より好ましくは2.0以下が望ましい。また、ソール側部14sの平均幅Wsとヒール側部14hの平均幅Whとの比Ws/Whは、好ましくは1.1以上、より好ましくは1.3以上が望ましく、また、好ましくは4.0以下、より好ましくは3.0以下が望ましい。前記比Wc/Wh又はWs/Whが小さくなると、慣性モーメントの増大による方向性の向上が十分に期待できないおそれがあり、逆に大きすぎると、ヒール側部14hとフェース部材2との接合強度の低下が生じるおそれがある。
【0042】
また、本実施形態のクラブヘッド1では、受け面14のトップ側部14cの平均幅Wc及びソール側部14sの平均幅Wsが相対的に小さく形成されるため、開口部Oの上下寸法を大きく確保し、ボール打撃時にフェース部材2を十分に撓ませて飛距離を増加させることができる。
【0043】
上記のように受け面の平均幅を規定することにより、図3に示されるように、ヘッド重心GとスイートスポットSSとを通る断面において、開口部OのフェースFと平行に測定される開口高さOHは、好ましくは30mm以上、より好ましくは35mm以上、さらに好ましくは40mm以上に形成することができる。他方、開口高さOHが過度に大きくなると、トップ部枠12aが高所に位置し、ひいてはヘッド重心Gが高くなるおそれがある。このような観点より、前記高さOHは、好ましくは55mm以下、より好ましくは50mm以下、さらに好ましくは45mm以下が望ましい。
【0044】
なお、開口部Oのトウ・ヒール方向の最大巾OW(図5に示す)は、好ましくは60mm以上、より好ましくは65mm以上、さらに好ましくは70mm以上が望ましく、かつ、好ましくは85mm以下、より好ましくは80mm以下、さらに好ましくは75mm以下が望ましい。
【0045】
また、開口部Oの開口高さOHと最大巾OWとの比OH/OWは、好ましくは0.45以上、より好ましくは0.55以上が望ましく、また、好ましくは0.75以下、より好ましくは0.65以下が望ましい。
【0046】
また、受け面14は、トップ側部14cの平均幅Wcと、ソール側部14sの平均幅Wsとの関係においては、下式を満足することが望ましい。
Ws>Wc
【0047】
このように、受け面14のソール側部14sの平均幅Wsを、トップ側部14cの平均幅Wcよりも大きくすることにより、ヘッド底部側により多くの重量を配分することが可能になる。従って、ヘッド重心Gを低くし、バックスピンが少なく吹け上がり難い打球を得るのに役立つ。
【0048】
とりわけ、ソール側部14sの平均幅Wsとトップ側部14cの平均幅Wcとの比Ws/Wcは、好ましくは1.2以上、より好ましくは1.5以上が望ましく、また、好ましくは2.5以下、より好ましくは2.0以下が望ましい。前記比Ws/Wcが小さくなると、低重心化が十分に図れず、ひいては飛距離の向上が十分に期待できないおそれがあり、逆に大きすぎると、トップ側部14cでのフェース部材2との接合強度が低下するおそれがある。
【0049】
さらに、受け面14のトウ側部14tは、その下半分14t2の平均幅Wt2が、その上半分14t1の平均幅Wt1よりも大きいことが望ましい。このような構成では、トウ側部分においてもヘッド重量をソール側により多く配分することが可能になるため、さらにヘッド重心Gを低く位置させるのに役立つ。とりわけ、トウ側部14tの下半分14t2の平均幅Wt2と上半分14t1の平均幅Wt1との比Wt2/Wt1は、好ましくは1.1以上、より好ましくは1.3以上が望ましく、また、好ましくは3.0以下、より好ましくは2.0以下が望ましい。なお、トウ側部14tの上半分14t1及び下半分14t2とは、受け面14のトウ側部14tにおいて、その幅の中心線Cの長さの中間点CPよりも上側の部分及び下側の部分としてそれぞれ定められる。
【0050】
前記受け面14のトウ側部の平均幅Wtは、特に限定されるものではないが、小さすぎると、フェース部材2との接合強度が低下し、ヘッドの耐久性を悪化させるおそれがある。逆に、前記平均幅Wtが大き過ぎると、開口部Oが小さくなってヘッドの反発性能が低下する他、ヘッド重量の増加を招くおそれがある。このような観点より、トウ側部14tの平均幅Wtは、好ましくは2.0mm以上、より好ましくは3.0mm以上、さらに好ましくは4.0mm以上が望ましく、また好ましくは8.0mm以下、より好ましくは7.0mm以下、さらに好ましくは5.0mm以下が望ましい。
【0051】
また、本実施形態において、最も小さく形成されるヒール側部14hの平均幅Whは、慣性モーメントの増大を図りつつフェース部材2との十分な接合強度を確保するために、好ましくは0.5mm以上、より好ましくは1.0mm以上が望ましく、また、好ましくは4.0mm以下、より好ましくは3.0mm以下、さらに好ましくは2.0mm以下が望ましい。
【0052】
また、受け面14のトップ側部14cの平均幅Wcは、上下方向に大きな開口部Oを提供しつつフェース部材2との接合強度を確保するために、好ましくは1.0mm以上、より好ましくは1.5mm以上が望ましく、また、好ましくは5.0mm以下、より好ましくは4.0mm以下、さらに好ましくは3.0mm以下が望ましい。
【0053】
また、受け面14のソール側部14sの平均幅Wsは、上下方向に大きな開口部Oを提供しつつフェース部材2との接合強度の確保及び低重心化を図るために、好ましくは1.0mm以上、より好ましくは1.5mm以上が望ましく、また、好ましくは6.0mm以下、より好ましくは5.0mm以下、さらに好ましくは4.0mm以下が望ましい。
【0054】
また、上述した大小関係は、いずれも受け面14の平均幅に関する規定であるが、好ましくは各トウ側部14t、トップ側部14c、ソール側部14s及びヒール側部14hの任意の位置における実際の幅Wti、Wci、Wsi及びWhiについても一定の関係を満足させることが望ましい。
【0055】
例えば、トウ側部14tの平均幅Wtと、トップ側部14cの平均幅Wcとは、Wt>Wcの関係を満足するように定められるが、この場合、好ましくは、受け面14のトウ側部14tの最大幅Wti(max)は、トップ側部14cの最大幅Wci(max)以上、より好ましくは最大幅Wci(max)よりも大であるのが望ましい。同様に、トウ側部14tの最小幅Wti(min)は、トップ側部14cの最小幅Wci(min)以上、より好ましくは最小幅Wci(min)よりも大であるのが望ましい。さらに、トウ側部14tの最小幅Wti(min)は、トップ側部14cの平均幅Wc以上、より好ましくは平均幅Wcよりも大であるのが望ましい。これらの関係を数式で表すと、好ましくは式(7)〜(9)で表され、より好ましくは式(10)〜(12)で表される。
Wti(max)≧Wci(max) …(7)
Wti(min)≧Wci(min) …(8)
Wti(min)≧Wc …(9)
Wti(max)>Wci(max) …(10)
Wti(min)>Wci(min) …(11)
Wti(min)>Wc …(12)
【0056】
つまり、受け面14は、平均幅が大きい方の部分の最大幅及び最小幅が、平均幅が小さい方の部分の最大幅及び最小幅よりも大きく、かつ、平均幅が大きい方の部分の最小幅は、平均幅が小さい方の当該平均幅よりも大きい。このような関係が、上記の例以外の平均幅の大小関係にも適用されるのが望ましい。
【0057】
図6には、本発明の他の実施形態として、ヘッド本体3の垂直状態の正面図が示される。上記実施形態では、受け面14の幅は、局部的な段差なしに滑らかに変化するものが示した。しかし、この実施形態では、受け面14のトウ側部14t、トップ側部14c、ソール側部14s及びヒール側部14hの各幅Wt、Wc、Ws及びWhが、実質的に一定に構成される。従って、受け面14の各部の境界位置では、受け面14の幅は、段差を介して変化している。このように、本発明は、種々の態様で実施することができる。
【実施例】
【0058】
本発明の効果を確認するために、表1の仕様に基づいて複数種類のアイアン型ゴルフクラブヘッド(5番アイアン、ロフト角24度)が試作され、打球の飛距離及び方向性などがテストされた。
【0059】
各ヘッド本体にはSUS630のロストワックスの精密鋳造品が、またフェース部材にはTi−6Al−4Vがそれぞれ使用され、ヘッド本体にフェース部材を圧入してかしめることにより全長38インチのアイアン型ゴルフクラブヘッド(シャフトはSRIスポーツ社製のFRPシャフトMP500、フレックスSR)が試作された。各ヘッド本体の受け面は、図6に示したように、各部で一定幅を有するものとした。また、各フェース部材の厚さtfは3.0mmである。
テストの方法は次の通りである。
【0060】
<飛距離>
スイングロボットにテストクラブを装着し、フェースの中央でゴルフボール(SRIスポーツ社製の「XXIO」(同社の登録商標)DC)を10球打撃し、ボール停止位置までの平均距離が測定された。ヘッドスピードは43m/sとした。結果は、比較例1の平均飛距離を100とする指数であり、数値が大きいほど良好であることを示す。
【0061】
<飛距離のバラツキ>
ハンディキャップ5〜10のゴルファーが、10球練習打撃した後、さらに各10球を測定用に打撃し、ボール停止位置と目標との前後方向の距離のずれ量(飛びすぎ又はショートのいずれも場合でもプラス値)が測定され、平均ずれ量が求められた。結果は、比較例1の平均ずれ量を100とする指数であり、数値が大きいほど飛距離のバラツキが小さく良好であることを示す。
【0062】
<方向性のバラツキ>
飛距離のバラツキの試験時、同時に目標飛球線に対する左右のずれ量(右又は左のいずれにずれてもプラス値)が測定され、各例について、10球の平均ずれ量が計算された。結果は、比較例1の平均ずれ量を100とする指数であり、数値が大きいほど方向性のバラツキが小さく良好であることを示す。
【0063】
<上記各性能の効果率>
下式により計算した。数値が大きいほど、良好な結果が得られていることを示す。
(任意の例の指数−100)/(最高の指数−100)
テストの結果などを表1に示す。
【0064】
【表1】

【0065】
テストの結果、実施例のものは飛距離及び方向性に優れていることが確認できた。
【図面の簡単な説明】
【0066】
【図1】本発明の実施形態を示すゴルフクラブヘッドの正面図である。
【図2】その背面図である。
【図3】図1のA−A端面図である。
【図4】ヘッドの分解斜視図である。
【図5】ヘッド本体の垂直状態の正面図である。
【図6】本発明の他の実施形態を示すヘッド本体の垂直状態の正面図である。
【図7】(a)及び(b)は従来のヘッドの正面図及び断面図である。
【符号の説明】
【0067】
1 ゴルフクラブヘッド
2 フェース部材
3 ヘッド本体
6 フェース部材の外周面
13 内周面部
14 受け面
15 フェース受け部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ボールを打球するフェースの少なくとも一部を構成するフェース部材と、前側に前記フェース部材が固着されるヘッド本体とを含むアイアン型ゴルフクラブヘッドであって、
前記ヘッド本体は、前記フェース部材の背面とは接触しない開口部を有し、かつ、該開口部の回りにフェース受け部が設けられ、
前記フェース受け部は、前記フェース部材の外周面を支持する内周面部と、該内周面部からヘッド中心側に張り出すとともにフェース部材の背面の周縁部を支持する受け面とからなり、しかも
前記受け面は、ヘッド上部側をのびるトップ側部、ヘッド底部側をのびるソール側部、前記トップ側部と前記ソール側部との間をヘッド先端側でつなぐトウ側部、及び前記トップ側部と前記ソール側部との間をヒール側でつなぐヒール側部を有する環状をなすとともに、
下式を満足することを特徴とするアイアン型ゴルフクラブヘッド。
Wt>Wc
Wt>Ws
Wt>Wh
ただし、符号は次の通りである。
Wt:受け面のトウ側部の平均幅
Wc:受け面のトップ側部の平均幅
Ws:受け面のソール側部の平均幅
Wh:受け面のヒール側部の平均幅
【請求項2】
前記受け面のトウ側部は、下半分の平均幅Wt2が、その上半分の平均幅Wt1よりも大きい請求項1に記載のアイアン型ゴルフクラブヘッド。
【請求項3】
前記受け面は、トップ側部の平均幅Wc及びソール側部の平均幅Wsが下式を満足する請求項1又は2記載のアイアン型ゴルフクラブヘッド。
Ws>Wc

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2013−59680(P2013−59680A)
【公開日】平成25年4月4日(2013.4.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2013−611(P2013−611)
【出願日】平成25年1月7日(2013.1.7)
【分割の表示】特願2008−285684(P2008−285684)の分割
【原出願日】平成20年11月6日(2008.11.6)
【出願人】(504017809)ダンロップスポーツ株式会社 (701)
【Fターム(参考)】