説明

アナログ電子時計

【課題】複数の駆動電圧により電力消費を抑えながら時間のロス無く指針を早送り可能なアナログ電子時計を提供する。
【解決手段】複数の指針と、指針を駆動する駆動手段と、駆動手段に動作信号を出力する駆動制御手段と、指針の早送りの際に、早送りの方向及び指針毎にそれぞれ予め設定された早送り速度に基づいて指針の早送りの方向を定める早送り設定手段と、を備え、動作信号は、指針の移動方向に応じて指針毎に駆動電圧が予め設定されており、駆動制御手段は、複数の指針を早送りで移動させる場合に、駆動電圧が同一の複数の指針を駆動させる動作信号を各々の早送り速度で出力し、早送り設定手段は、一部の指針の早送りの方向を反転させて駆動電圧を変更することで、早送りの対象の指針全てを早送り移動先に移動させるのに必要な早送り時間が短縮される場合には、一部の指針の早送りの方向を反転させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、指針を用いたアナログ電子時計に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、指針を用いて文字盤上の標識を指し示すことにより時刻を表示するアナログ電子時計において、時刻の修正、指針位置の確認や修正、或いは、タイマー機能やストップウォッチ機能における数値のリセットといった種々の用途で指針の早送り動作が行われている。
【0003】
このような早送り動作では、正転(時計回り)での早送り、又は、逆転(反時計回り)での早送りが適宜選択されて利用される。早送り動作において、多くの指針では、正転での早送り速度と逆転での早送り速度が異なる。そこで、従来、予め移動先の指針位置が定められている指針の早送りを行う場合には、正転と逆転とで現在の指針位置から移動先の指針位置までの移動に要する時間をそれぞれ求め、より短時間で指針が移動先に到達する方向に指針を早送りさせる技術がある(例えば、特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平5−93784号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
近年、時針や分針といった時刻を表示する指針に加えて、より多くの指針を独立のモータで各々駆動させて多様な機能表示を実現するアナログ電子時計がある。このようなアナログ電子時計において、一部の指針を所定の向きに運針する場合の駆動電圧を低く設定することで電力消費を低減させているものがある。しかしながら、従来のアナログ電子時計の構成では、異なる駆動電圧による指針の駆動を同時に行うことが出来ないので、駆動電圧ごとに切り替えて順次指針を早送りさせる必要があった。従って、従来の早送り技術では、全ての指針の移動を終了するまでに時間を要する場合があるという課題があった。
【0006】
この発明の目的は、複数の駆動電圧により電力消費量を低減させながら時間のロス無く指針を早送り駆動させることの出来るアナログ電子時計を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、上記目的を達成するため、
複数の指針と、
前記複数の指針を各々独立に駆動する駆動手段と、
前記指針の移動タイミングで前記駆動手段に当該指針を駆動させるための動作信号を出力する駆動制御手段と、
前記指針を早送りで移動させる場合に、前記指針の早送りの方向に応じて当該指針毎にそれぞれ予め設定された早送り速度に基づいて、前記早送りの対象となる指針をそれぞれの早送り移動先に最短時間で移動させる早送りの方向を定める早送り設定手段と、
を備え、
前記動作信号は、前記複数の指針の移動の方向に応じて当該指針毎にそれぞれ駆動電圧が予め設定されており、
前記駆動制御手段は、前記複数の指針を早送りで移動させる場合に、前記駆動電圧が同一である複数の前記指針を駆動させる前記動作信号を各々設定された前記早送り速度で出力し、
前記早送り設定手段は、
前記早送りの対象となる指針のうち一部の早送りの方向を反転させて当該一部の指針の駆動電圧を変更して早送りで移動させることで、当該早送りの対象となる指針全てを前記早送り移動先に移動させるのに必要な早送り時間が短縮される場合には、前記一部の指針の早送りの方向を反転させる
ことを特徴とするアナログ時計である。
【発明の効果】
【0008】
本発明に従うと、アナログ電子時計において、複数の駆動電圧により指針を駆動することで電力消費量を低減させながら時間のロス無く最適な早送りを行うことが出来るという効果がある。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】本発明の第1実施形態のアナログ電子時計を示す正面図である。
【図2】アナログ電子時計の内部構成を示すブロック図である。
【図3】第1実施形態のアナログ電子時計の各指針の動作特性を示す図表である。
【図4】駆動回路における電圧制御の構成を説明する図である。
【図5】第1実施形態のCPUによる早送り制御処理の例を示すフローチャートである。
【図6】第1実施形態のCPUによる早送り制御処理の具体的な例を示すフローチャートである。
【図7】第2実施形態のアナログ電子時計の正面図である。
【図8】第2実施形態のアナログ電子時計の内部構成を示すブロック図である。
【図9】第2実施形態のアナログ電子時計の各指針の動作特性を示す図表である。
【図10】第2実施形態のCPUによる早送り制御処理の具体的な例を示すフローチャートである。
【図11】第2実施形態のCPUによる早送り制御処理の具体的な例を示すフローチャートである。
【図12】第2実施形態のCPUによる早送り制御処理の具体的な例を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。
[第1実施形態]
図1は、本発明の第1実施形態のアナログ電子時計1の正面図である。
【0011】
第1実施形態のアナログ電子時計1は、バンド10a、10bによりユーザの腕に装着可能な電子腕時計である。このアナログ電子時計1は、ケーシング7と、文字盤9と、文字盤9の上部を覆う図示略の風防ガラスとの間に回転可能に設けられた時針2、分針3、及び、秒針4と、文字盤9の下部に設けられたディスク状の機能針5と、ケーシング7の側面に設けられた押しボタンスイッチB1〜B3及びリュウズC1と、風防ガラスの周縁部に設けられたベゼル8と、などを備えている。
【0012】
文字盤9には、一の円周上に時刻を表示する目盛が等間隔に60個設けられている。また、この文字盤9の6時の方向には、小窓9aが設けられており、機能針5の上面に設けられた標識のうち一つが選択的に上部に露出される。
時針2、分針3、秒針4、及び、機能針5は、何れも文字盤9の中心に回転軸が設けられ、360度回転可能となっている。機能針5は、アナログ電子時計1が実行中の機能モードを表示するものであり、図1の例では、時刻表示モードを示す標識“WT”が小窓9aから露出されている。時針2、分針3、及び、機能針5は、それぞれ、1度ステップで360の角度位置を指示することが可能に構成され、また、秒針4は、6度ステップで60の角度位置を指示することが可能に構成されている。
【0013】
図2は、アナログ電子時計1の内部構成を示すブロック図である。
【0014】
アナログ電子時計1は、CPU(Central Processing Unit)11(早送り設定手段、初期設定手段、駆動電圧検索手段、早送り方向選択手段)と、ROM(Read Only Memory)12と、RAM(Random Access Memory)13と、電源部14と、操作部15と、発振回路16と、分周回路17と、計時回路18と、駆動制御手段としての駆動回路52と、輪列機構32を介して時針2を駆動するステッピングモータ42と、輪列機構33を介して分針3を駆動するステッピングモータ43と、輪列機構34を介して秒針4を駆動するステッピングモータ44と、輪列機構35を介して機能針5を駆動するステッピングモータ45とを備えている。ステッピングモータ42〜45は、駆動手段を構成する。
【0015】
CPU11は、種々の演算処理を行い、また、アナログ電子時計1全体の動作を制御統括する。ROM12は、CPU11が実行する各種制御プログラムやアプリケーションプログラム、及び、初期設定データを格納している。ROM12が格納するプログラムには、時針2、分針3、秒針4、及び、機能針5(以降、まとめて指針2〜5とも記す)を早送りする場合の指針2〜5の回転方向や回転順を設定する早送り設定プログラム12aが含まれている。
【0016】
RAM13は、CPU11に作業用のメモリ空間を提供し、実行時にROM12から読み出されて展開されたプログラムや一時データを記憶する揮発性メモリである。
【0017】
電源部14は、CPU11及びアナログ電子時計1の各部に電力を供給する。操作部15は、ユーザによる押しボタンスイッチB1〜B3及びリュウズC1への入力操作を電気信号に変換してCPU11に出力する。
【0018】
発振回路16は、例えば、水晶発振回路であり、所定の周波数信号を出力する。分周回路17は、発振回路16から入力された所定の周波数信号を計時回路18及びCPU11が利用する種々の周波数に変換して出力する。計時回路18は、分周回路17で生成された1Hz信号を計数することで現在時刻データを保持する。
【0019】
駆動回路52は、CPU11から入力された指針2〜5の動作に係る制御信号に基づいて、ステッピングモータ42〜45にそれぞれ所定の電圧及びパルス幅の駆動パルスを出力する。ステッピングモータ42〜45は、それぞれ、駆動回路52から入力された駆動パルスにより回転動作(例えば、180度)し、輪列機構32〜35を介して各々所定のギア比で指針2〜5を独立に駆動する。ここで、ステッピングモータ42〜45は、各々、指針2〜5を正転方向及び逆転方向に運針させることが出来る。ステッピングモータ42〜45が指針2〜5を正転方向または逆転方向に運針させる場合の各々に対し、指針2〜5各々のトルクといった条件を考慮してステッピングモータ42〜45が指針2〜5を最も早く駆動可能な最大駆動周波数及び指針2〜5を駆動するのに必要な駆動電圧が設定されている。早送り動作では、通常、この最大駆動周波数が早送り駆動周波数(早送り速度)に設定されて指針2〜5が駆動される。また、後述するように、正転方向への最大駆動周波数及び駆動電圧は、逆転方向への最大駆動周波数及び駆動電圧よりそれぞれ大きい場合が多い。
【0020】
図3は、指針2〜5を正転又は逆転で駆動する際の駆動電圧と最大駆動周波数とを示した図表である。
【0021】
本実施形態のアナログ電子時計1では、時針2、分針3、及び、秒針4(まとめて時刻針2〜4と記す)の駆動電圧は、正転方向への駆動、及び、逆転方向への駆動の何れの場合にも1.6Vに設定される。また、時刻針2〜4の駆動周波数は、正転方向への駆動の場合には、最大64pps(pulses per second)に設定可能であるが、逆転方向への駆動の場合には、最大32ppsに設定可能である。一方、機能針5の駆動電圧は、正転で駆動される場合には、1.9Vに設定され、逆転で駆動される場合には、1.6Vに設定される。また、機能針5の駆動周波数は、正転での駆動の場合には最大64ppsであり、逆転での駆動の場合には最大32ppsである。機能針5のようなディスク状の指針の駆動には、時刻針2〜4のような針状の指針の駆動と比して高い駆動電圧が必要になる場合がある。分針3及び秒針4の駆動電圧には、後述する補正パルス及び長パルスについての設定が含まれている。
【0022】
図4は駆動回路52の構成を説明する図である。
【0023】
駆動回路52は、CPU11からの制御信号に基づき、駆動対象の指針2〜5を駆動するステッピングモータ42〜45にそれぞれ動作信号としての駆動パルスを出力する。この駆動パルスとしては、指針2〜5を正転で駆動する通常パルス(正転パルス)と、指針2〜5を逆転で駆動する逆転パルスがある。これらの各駆動パルスの駆動電圧は、各々予め設定されており、設定された駆動電圧がレギュレータからソフトウェア制御されて選択出力される。従って、異なる駆動電圧の駆動パルスを同時に出力することは出来ない。また、駆動回路52には、秒針4及び分針3が適切に駆動されたか否かを検出する回転検出部が設けられ、これらの秒針4又は分針3が適切に駆動されていないことが検出された場合には、駆動回路52は、即座に駆動電圧が通常パルス及び逆転パルスより高く設定された(例えば、2.2V)補正パルス、又は、通常パルス及び逆転パルスよりパルス幅の長い長パルス(駆動電圧は、例えば、1.6V)を出力することで、再度指針を駆動する。なお、これらの場合の出力電圧2.2V、1.6Vは、優先的に出力される値であり、他の指針の正転パルス又は逆転パルスとして、同時にこれらの電圧の駆動パルスを出力することが出来ない。
【0024】
次に、第1実施形態のアナログ電子時計1における指針の早送り動作について説明する。
【0025】
図5は、CPU11が実行する指針早送り処理の制御手順を示すフローチャートである。
【0026】
この指針早送り処理は、時刻表示機能と他の種々の機能とを切り替える場合などで、指針の移動先が予め定まっている早送りを行う場合にCPU11が呼び出して実行する。
【0027】
指針早送り処理が呼び出されると、CPU11は、先ず、各指針2〜5に対して個別に早送りの正逆判定を行う(ステップS11)。具体的には、CPU11は、各指針2〜5の現在の指針位置と、移動先の指針位置とを取得する。そして、時針2、分針3、及び、機能針5については、現在位置から移動先位置までの正転方向への移動ステップ数が240ステップ以下の場合には、CPU11は、正転で早送りさせる判定を行い、移動ステップ数が240ステップよりも大きい場合には、CPU11は、逆転で早送りさせる判定を行う。また、秒針4については、現在位置から移動先位置までの正転方向への移動ステップ数が40ステップ以下の場合には、CPU11は、秒針4を正転で早送りさせる判定を行い、移動ステップ数が40ステップよりも大きい場合には、CPU11は、秒針4を逆転で早送りさせる判定を行う。
【0028】
次に、CPU11は、早送り対象の各指針を早送りさせる際に駆動回路52がステッピングモータに供給する早送り駆動電圧を取得し、全ての早送り駆動電圧が同一であるか否かを判別する(ステップS12)。全ての早送り駆動電圧が同一であると判別された場合には、CPU11の処理は、ステップ17の処理へ移行する。一方、異なる早送り駆動電圧が混在していると判別された場合には、CPU11は、続いて、何れかの指針の早送り方向を判定された向きから反転させることで駆動電圧が他の指針の駆動電圧と等しくなる場合があるか否かを判別する(ステップS13)。駆動電圧が等しくなる場合がないと判別された場合には、CPU11の処理は、そのままステップS17に移行する。駆動電圧が等しくなる場合があると判別された場合には、CPU11は、当該早送り方向を反転させて同一の駆動電圧となる他の指針と共に早送りさせる場合の早送り時間と、早送り方向を反転させずに順番に早送りさせる場合の早送り時間とをそれぞれ算出し(ステップS14)、早送り方向を反転させた場合の早送り時間が早送り方向を反転させない場合の早送り時間より短くなるか否かを判別する(ステップS15)。反転により早送り時間が短くならないと判別された場合には、CPU11の処理は、そのままステップS17に移行する。反転により早送り時間が短くなると判別された場合には、CPU11は、当該指針の早送り方向を反転させる(ステップS16)。それから、CPU11の処理は、ステップS17へ移行する。
【0029】
CPU11の処理がステップS17に移行すると、CPU11は、早送り対象の各指針を駆動電圧ごとに順番に設定された早送り方向へ早送り移動させる。即ち、一の駆動電圧のみの場合には、CPU11は、早送りの対象である指針全てに対して同時に早送りを開始させ、各々の早送り周波数で早送り先位置に到達するまで早送りを続ける。一方、一本の指針を駆動するステッピングモータの駆動電圧のみが他の駆動電圧と異なる場合には、CPU11は、当該他の駆動電圧で他の指針の早送りを行わせ、これら他の指針の早送りが全て終了した後に駆動電圧を切り替えて、残り一本の指針を駆動させる。そして、全ての指針の早送りが終了すると、CPU11は、指針早送り処理を終了する。
なお、早送り移動中の駆動パルスで秒針4又は分針3の駆動に失敗した場合、この秒針4又は分針3が32ppsで逆転方向に1.6Vの駆動電圧により駆動されている場合には、例えば、64Hzの駆動信号に対し、秒針4又は分針3の駆動信号が出力されないタイミングで2.2Vの補正パルスを挿入させることが可能である。一方、64ppsで正転方向に駆動されている場合などでは、例えば、当該一連の早送り動作が終了した後、次の駆動電圧による早送り動作に移行する前に、駆動に失敗した回数分まとめて補正パルス又は長パルスが挿入される。
【0030】
図6は、指針早送り処理において、時針2及び機能針5が早送りされる場合の具体的な制御手順を示すフローチャートである。
【0031】
CPU11は、先ず、時針2と機能針5の早送り方向の判定を行う(ステップS110)。CPU11は、時針2の早送り方向及び当該方向への移動ステップ数Nhと、機能針5の早送り方向及び当該方向への移動ステップ数Nfとを取得する。図3に示したように、時針2が正転で駆動される場合、及び、逆転で駆動される場合の何れであっても、ステッピングモータ42の駆動電圧が1.6Vであるのに対し、機能針5が正転で駆動される場合のステッピングモータ45の駆動電圧は、1.9Vであり、逆転で駆動される場合の駆動電圧は、1.6Vである。そこで、CPU11は、機能針5の早送り方向が正転方向であるか否かを判別する(ステップS120)。機能針5の早送り方向が正転方向ではないと判別された場合には、時針2及び機能針5を早送りさせる際の駆動電圧が何れも1.6Vになり、CPU11は、駆動回路52に制御信号を送って時針2を判定された早送り方向にステップ数Nh早送りさせると共に、機能針5をステップ数Nf逆転で早送りさせる(ステップS170)。そして、CPU11は指針早送り処理を終了する。
【0032】
ステップS120の判別処理で、機能針5の早送り方向が正転方向であると判別された場合には、時針2の早送り方向に関わらず時針2と機能針5を早送りする際の駆動電圧が異なることになる。そこで、CPU11は、次に、機能針5の早送り方向を反転して時針2の早送り駆動電圧と一致させた場合の早送り時間、及び、異なる駆動電圧のままで順番に早送り駆動させた場合の早送り時間を算出して比較する処理を行う。先ず、CPU11は、時針2の早送り方向が正転方向であるか否かを判別する(ステップS130)。時針2の早送り方向が正転方向であると判別された場合には、次いで、CPU11は、時針2を64ppsでステップ数Nh正転方向に早送りさせる時間と機能針5を64ppsでステップ数Nf正転方向に早送りさせる時間との和が、機能針5の早送り方向を反転して逆転方向に32ppsでステップ数(360−Nf)早送りさせる時間より短いか否かを判別する(ステップS151)。ここで、ステップ数Nhは240以下であり、また、ステップ数(360−Nf)は120以上である。従って、時針2を正転方向に駆動する時間Nh/64は、最大で3.75秒であり、機能針5を逆転方向に駆動する時間(360−Nf)/32(最小で3.75秒)以下となるので、機能針5の早送り方向を反転した場合の早送り時間は、この機能針5の早送りに必要な時間によって定められる。
【0033】
時針2と機能針5とを順番に正転で早送りさせる時間の和が機能針5を逆転で早送りさせる時間より短いと判別された場合には、CPU11は、駆動回路52に制御信号を送り、時針2をステップ数Nh正転で早送りさせた後、機能針5をステップ数Nf正転で早送りさせる(ステップS181)。そして、CPU11は、指針早送り処理を終了する。一方、時針2と機能針5とを順番に正転で早送りさせる時間の和が機能針5を逆転で早送りさせる時間より長いと判別された場合には、CPU11は、駆動回路52に制御信号を送って時針2をステップ数Nh正転で早送りさせると共に、機能針5をステップ数(360−Nf)逆転で早送りさせる(ステップS171)。そして、CPU11は、指針早送り処理を終了する。
【0034】
次に、ステップS130の判別処理で、時針2の早送り方向が逆転方向であると判別された場合には、次いで、CPU11は、時針2を32ppsでステップ数Nh逆転方向に早送りさせる時間と機能針5を64ppsでステップ数Nf正転方向に早送りさせる時間の和が、機能針5の早送り方向を反転させ、32ppsでステップ数(360−Nf)逆転方向に早送りさせる時間より短いか否かを判別する(ステップS152)。ここで、ステップ数Nfは240以下であり、また、ステップ数Nh、(360−Nf)は120以上である。従って、時針2を逆転駆動する時間Nh/32は、最大で3.75秒であり、この時間は、機能針5を逆転駆動する時間(360−Nf)/32(最小で3.75秒)以下となる。
【0035】
時針2を逆転で早送りさせ、次いで、機能針5を正転で早送りさせる時間が機能針5を逆転で早送りさせる時間より短いと判別された場合には、CPU11は、時針2をステップ数Nh逆転で早送りさせた後、機能針5をステップ数Nf正転で早送りさせる(ステップS182)。そして、CPU11は、指針早送り処理を終了する。一方、時針2を逆転で早送りさせた後、機能針5を正転で早送りさせる時間が機能針5を逆転で早送りさせる時間より長いと判別された場合には、CPU11は、時針2をステップ数Nh逆転で早送りさせると共に、機能針5をステップ数(360−Nf)逆転で早送りさせる(ステップS172)。そして、CPU11は、指針早送り処理を終了する。
【0036】
以上のように、第1実施形態のアナログ電子時計1は、時針2、分針3、秒針4、及び、機能針5を備え、これらの指針2〜5は、駆動回路52から入力する駆動パルスにより動作するステッピングモータ42〜45によって、各々独立に駆動される。また、これらのステッピングモータ42〜45には、指針2〜5を各々正転で駆動する場合と逆転で駆動する場合について、最大駆動周波数と駆動電圧とが設定されている。そして、例えば、時針2と機能針5とが早送り対象の指針である場合に、先ず、時針2及び機能針5の現在位置、早送り移動先位置、正転での早送り駆動周波数(最大駆動周波数)、及び、逆転での早送り駆動周波数に基づいて、時針2及び機能針5を各々より短い早送り時間で早送り移動先位置へ移動させるための早送り方向を設定する。このときに、機能針5の早送り方向が正転方向に設定されたことで駆動電圧が時針2の駆動電圧と異なる場合には、機能針5の早送り方向を逆転方向に反転させて駆動電圧を時針2と同一とし、機能針5と時針2とを同時に早送りさせる場合の早送り時間と、機能針5の早送り方向を正転方向のままとし、機能針5の早送りと時針2の早送りとを別個に順番に行った場合の早送り時間とを算出して比較する。機能針5の早送り方向を反転させた方が早送り時間が短くなる場合には、機能針5の早送り方向を反転して早送りを行う。このように、各指針2〜5の駆動電圧が個別に設定されている場合に、個々の指針の早送りに要する時間が最短ではなくても、全体として早送り時間が短くなる場合を検索して早送り動作を行うので、電力消費を低減させながら、早送りに要する時間の増加を抑えることが出来る。
【0037】
また、一の駆動電圧に係る指針の早送りを完了した後に他の駆動電圧に係る指針の早送りに移行するので、単純な制御で複数の駆動電圧に係る指針の早送りを必要最小限の時間で終了させることが出来る。
【0038】
[第2実施形態]
次に、第2実施形態のアナログ電子時計について説明する。
図7は、第2実施形態のアナログ電子時計1aの正面図である。また、図8は、第2実施形態のアナログ電子時計1aの内部構成を示すブロック図である。
【0039】
この第2実施形態のアナログ電子時計1aは、小窓9aから露出されるディスク状の機能針5の代わりに、針状の機能針5aと、小窓9bから露出される日車6とを備えている。日車6は、駆動回路52から出力された駆動パルスによって動作するステッピングモータ46により輪列機構36を介して駆動される。この日車6には、1〜31の31日分の日付を示す標識が等間隔に設けられ、1日当たり150ステップの合計4650ステップの回転動作により文字盤9の下面で一周する。その他の構成については、第1実施形態のアナログ電子時計1と同一であり、同一の符号を付して説明を省略する。また、このアナログ電子時計1aのCPU11が実行する指針早送り処理の全体の制御手順は、図5に示した第1実施形態のアナログ電子時計1における制御手順と同一であり、説明を省略する。
【0040】
図9は、第2実施形態のアナログ電子時計1aにおいて時針2、分針3、秒針4、機能針5、及び、日車6を正転及び逆転動作させる際の駆動電圧と駆動可能な最大周波数とを示した図表である。また、図10〜図12は、この駆動電圧設定における指針早送り処理の制御手順の具体的な例を示すフローチャートである。
【0041】
このアナログ電子時計1aでは、全ての指針2〜6が64ppsで正転方向への早送り駆動が可能であり、また、32ppsで逆転方向への早送り駆動が可能である。また、秒針4及び機能針5を正転で駆動する際の駆動電圧が1.9Vであるのに対し、逆転で駆動する際の駆動電圧は、1.6Vである。分針3及び日車6を駆動する際の駆動電圧は、正転での駆動及び逆転での駆動の何れの場合にも1.9Vである。時針2を駆動する際の駆動電圧は、正転での駆動及び逆転での駆動の何れの場合にも1.6Vである。
【0042】
図10〜図12のフローチャートでは、秒針4、時針2、及び、機能針5が早送り駆動される場合の制御手順について説明する。
【0043】
CPU11は、先ず、早送り対象の秒針4、時針2、及び、機能針5に対し、個別に通常の早送り正逆判定処理を行う(ステップS110)。また、CPU11は、この処理で判定された早送り方向への秒針4の移動ステップ数Ns、時針2の移動ステップ数Nh、及び、機能針5の移動ステップ数Nfをそれぞれ設定する。次に、CPU11は、異なる駆動電圧での駆動があるか否かを判別する。CPU11は、秒針4の早送り方向が正転であるか否かを判別する(ステップS121)。秒針4の早送り方向が正転であると判別された場合には、CPU11は、続いて、機能針5の早送り方向が正転であるか否かを判別する(ステップS122)。
【0044】
機能針5の早送り方向が正転であると判別された場合には、CPU11は、時針2の早送り方向が正転方向であるか否かを判別する(ステップS131)。時針2の早送り方向が正転方向であると判別された場合には、秒針4及び機能針5が1.9Vの駆動電圧で正転方向に早送り設定され、また、時針2が1.6Vの駆動電圧で正転方向に早送り設定されたことになる。このうち、秒針4及び機能針5は、逆転方向に早送りされる場合には駆動電圧が1.6Vになる。
【0045】
この場合には、CPU11は、次に、ステップS153の処理において、秒針4及び機能針5を正転でそれぞれステップ数Ns、Nf早送りさせ、続いて時針2を正転でステップ数Nh早送りさせた場合の早送り時間max(Ns、Nf)/64+Nh/64が、秒針4及び機能針5を逆転で早送りさせ、同時に、時針2を正転で早送りさせた場合の早送り時間(360−Nf)/32以下であるか否かを判別する。ここで、関数max(A、B、…、N)は、A、B…、Nのうち、最大の値を示す。また、秒針4の早送り方向を反転させた場合に秒針4の早送りに要する最大時間が59/32秒、機能針5の早送り方向を反転させた場合に機能針5の早送りに要する最小時間が120/32秒、時針2の早送りに要する最大時間が240/64秒であるので、秒針4及び機能針5の早送り方向を反転した場合の早送り時間は、機能針5の早送り時間により定まる。秒針4及び機能針5を逆転で早送りさせた方が早送り時間が短いと判別された場合には、“NO”に分岐して、CPU11は、駆動回路52に制御信号を送り、1.6Vの駆動電圧で秒針4をステップ数(60−Ns)逆転方向に早送りさせる処理と、機能針5をステップ数(360−Nf)逆転方向に早送りさせる処理と、時針2をステップ数Nh正転方向に早送りさせる処理とを並行して行う(ステップS173)。そして、秒針4、時針2、及び、機能針5の早送りが全て終了すると、CPU11は、指針早送り処理を終了する。秒針4及び機能針5を正転で早送りさせた場合のほうが早送り時間が短いと判別された場合には、“YES”に分岐して、CPU11は、駆動回路52に制御信号を出力し、先ず、1.9Vの駆動電圧で秒針4をステップ数Ns正転方向に早送りさせ、また、機能針5をステップ数Nf正転方向に早送りさせる。それから、CPU11は、1.6Vの駆動電圧で時針2をステップ数Nh正転方向に早送りさせる(ステップS183)。そして、CPU11は、指針早送り処理を終了する。
【0046】
ステップS131の判別処理で、時針2の早送り方向が逆転方向であると判別された場合には、秒針4及び機能針5が1.9Vの駆動電圧で正転方向に早送り設定され、また、時針2が1.6Vの駆動電圧で逆転方向に早送り設定されたことになる。秒針4及び機能針5が逆転で早送りされる場合の駆動電圧は、1.6Vである。そこで、ステップS154の処理において、CPU11は、秒針4及び機能針5を正転で早送りさせ、続いて時針2を逆転で早送りさせた場合の早送り時間max(Ns、Nf)/64+Nh/32が、秒針4及び機能針5を逆転で早送りさせると共に、時針2を逆転で早送りさせた場合の早送り時間(360−Nf)/32以下であるか否かを判別する。秒針4及び機能針5を逆転で早送りさせた方が早送り時間が短いと判別された場合には、“NO”に分岐して、CPU11は、1.6Vの駆動電圧で、秒針4をステップ数(60−Ns)逆転方向に早送りさせる処理と、機能針5をステップ数(360−Nf)逆転方向に早送りさせる処理と、時針2をステップ数Nh逆転方向に早送りさせる処理とを並行して行う(ステップS174)。そして、CPU11は、指針早送り処理を終了する。秒針4及び機能針5を正転で早送りさせた場合のほうが早送り時間が短いと判別された場合には、“YES”に分岐して、CPU11は、先ず、1.9Vの駆動電圧で秒針4をステップ数Ns正転方向に早送りさせると共に、機能針5をステップ数Nf正転方向に早送りさせる。それから、CPU11は、1.6Vの駆動電圧で、時針2をステップ数Nh逆転方向に早送りさせる(ステップS184)。そして、CPU11は、指針早送り処理を終了する。
【0047】
次に、ステップS122の判別処理において、機能針5の早送り方向が正転方向ではないと判別された場合には、図11に示すように、CPU11は、時針2の早送り方向が正転方向であるか判別する(ステップS132)。時針2の早送り方向が正転方向であると判別された場合には、秒針4が1.9Vの駆動電圧で正転方向に早送り設定され、また、機能針5及び時針2が1.6Vの駆動電圧でそれぞれ逆転方向及び正転方向に早送り設定されたことになる。このとき、秒針4が逆転方向に早送りされる場合には、駆動電圧が1.6Vになる。
【0048】
この場合に、CPU11は、次に、ステップS155の処理において、秒針4をステップ数Ns正転で早送りさせ、続いて、機能針5をステップ数Nf逆転で早送りさせると共に時針2をステップ数Nh正転で早送りさせた場合の早送り時間Ns/64+max(Nf/32、Nh/64)が、秒針4及び機能針5を逆転で早送りさせると共に、時針2を正転で早送りさせた場合の早送り時間max((60−Ns)/32、Nf/32、Nh/64)以下であるか否かを判別する。秒針4の早送り方向を反転して逆転で早送りさせた方が早送り時間が短いと判別された場合には、“NO”に分岐して、CPU11は、1.6Vの駆動電圧で、秒針4をステップ数(60−Ns)逆転方向に早送りさせる処理と、機能針5をステップ数Nf逆転方向に早送りさせる処理と、時針2をステップ数Nh正転方向に早送りさせる処理と、を並行して行う(ステップS175)。そして、CPU11は、指針早送り処理を終了する。秒針4を正転で早送りさせた方が早送り時間が短いと判別された場合には、“YES”に分岐して、CPU11は、先ず、1.9Vの駆動電圧で秒針4をステップ数Ns正転方向に早送りさせる。それから、CPU11は、1.6Vの駆動電圧で、機能針5をステップ数Nf逆転方向に早送りさせると共に、時針2をステップ数Nh正転方向に早送りさせる(ステップS185)。そして、CPU11は、指針早送り処理を終了する。
【0049】
ステップS132の判別処理で、時針2の早送り方向が逆転方向であると判別された場合には、秒針4が1.9Vの駆動電圧で正転方向に早送り設定され、また、機能針5及び時針2が1.6Vの駆動電圧で逆転方向に早送り設定されたことになる。ここで、秒針4が逆転方向に早送りされる場合の駆動電圧は、1.6Vである。そこで、ステップS156の処理において、CPU11は、秒針4を正転で早送りさせ、続いて機能針5及び時針2を逆転で早送りさせた場合の早送り時間Ns/64+max(Nf、Nh)/32が、秒針4、機能針5、及び、時針2を全て並列に逆転で早送りさせた場合の早送り時間max(60−Ns、Nf、Nh)/32以下であるか否かを判別する。秒針4、機能針5、及び、時針2を全て逆転で早送りさせた方が早送り時間が短いと判別された場合には、“NO”に分岐して、CPU11は、1.6Vの駆動電圧で、秒針4をステップ数(60−Ns)逆転方向に早送りさせる処理と、機能針5をステップ数Nf逆転方向に早送りさせる処理と、時針2をステップ数Nh逆転方向に早送りさせる処理とを並行して行う(ステップS176)。そして、CPU11は、指針早送り処理を終了する。秒針4を正転で早送りさせた方が早送り時間が短いと判別された場合には、“YES”に分岐して、CPU11は、先ず、1.9Vの駆動電圧で秒針4をステップ数Ns正転方向に早送りさせる。それから、CPU11は、1.6Vの駆動電圧で、機能針5をステップ数Nf逆転方向に早送りさせると共に、時針2をステップ数Nh逆転方向に早送りさせる(ステップS186)。そして、CPU11は、指針早送り処理を終了する。
【0050】
次に、ステップS121の判別処理において、秒針4の早送り方向が逆転方向であると判別された場合には、図12に示すように、CPU11は、機能針5の早送り方向が正転方向であるか否かを判別する(ステップS123)。機能針5の早送り方向が正転方向であると判別された場合には、CPU11は、時針2の早送り方向が正転方向であるか否かを判別する(ステップS133)。時針2の早送り方向が正転方向であると判別された場合には、機能針5が1.9Vの駆動電圧で正転方向に早送り設定され、また、秒針4及び時針2が1.6Vの駆動電圧でそれぞれ逆転方向及び正転方向に早送り設定されていることになる。このとき、機能針5が逆転方向に早送りされる場合には、駆動電圧が1.6Vになる。
【0051】
この場合には、CPU11は、次に、ステップS157の処理において、機能針5をステップ数Nf正転で早送りさせ、続いて秒針4をステップ数Ns逆転で早送りさせると共に、時針2をステップ数Nh正転で早送りさせた場合の早送り時間Nf/64+max(Ns/32、Ns/64)が、機能針5の早送り方向を反転して、機能針5及び秒針4を逆転で早送りさせると共に、時針2を正転で早送りさせた場合の早送り時間(360−Nf)/32以下であるか否かを判別する。ここで、秒針4の最大早送り時間が59/32秒、時針2の最大早送り時間が240/64秒であるのに対し、機能針5の早送り方向を反転した場合の最小早送り時間が120/32秒であるので、機能針5の早送り方向を反転した場合の早送り時間は、この機能針5の早送り時間により定まる。機能針5を逆転で早送りさせた方が早送り時間が短いと判別された場合には、“NO”に分岐して、CPU11は、1.6Vの駆動電圧で、秒針4をステップ数Ns逆転方向に早送りさせる処理と、機能針5をステップ数360−Nf逆転方向に早送りさせる処理と、時針2をステップ数Nh正転方向に早送りさせる処理とを並行して行う(ステップS177)。そして、CPU11は、指針早送り処理を終了する。機能針5を正転で早送りさせた方が早送り時間が短いと判別された場合には、“YES”に分岐して、CPU11は、先ず、1.9Vの駆動電圧で機能針5をステップ数Nf正転方向に早送りさせる。それから、CPU11は、1.6Vの駆動電圧で、秒針4をステップ数Ns逆転方向に早送りさせると共に、時針2をステップ数Nh正転方向に早送りさせる(ステップS187)。そして、CPU11は、指針早送り処理を終了する。
【0052】
ステップS133の判別処理で、時針2の早送り方向が逆転方向であると判別された場合には、機能針5が1.9Vの駆動電圧で正転方向に早送り設定され、また、秒針4及び時針2が1.6Vの駆動電圧でそれぞれ逆転方向に早送り設定されていることになる。ここで、機能針5が逆転で早送りされる場合の駆動電圧は、1.6Vである。そこで、ステップS158の処理において、CPU11は、機能針5を正転で早送りさせ、続いて秒針4及び時針2を逆転で早送りさせる場合の早送り時間Nf/64+max(Ns、Nh)/32が、機能針5の早送り方向を反転して、機能針5、秒針4、及び、時針2を何れも逆転で並列に早送りさせた場合の早送り時間(360−Nf)/32以下であるか否かを判別する。機能針5を逆転で早送りさせた方が早送り時間が短いと判別された場合には、“NO”に分岐して、CPU11は、1.6Vの駆動電圧で、秒針4をステップ数Ns逆転方向に早送りさせる処理と、機能針5をステップ数(360−Nf)逆転方向に早送りさせる処理と、時針2をステップ数Nh逆転方向に早送りさせる処理とを並行して行う(ステップS178)。そして、CPU11は、指針早送り処理を終了する。機能針5を正転で早送りさせた方が早送り時間が短いと判別された場合には、“YES”に分岐して、CPU11は、先ず、1.9Vの駆動電圧で機能針5をステップ数Nf正転方向に早送りさせる。それから、CPU11は、1.6Vの駆動電圧で、秒針4及び時針2をそれぞれステップ数Ns、Nh逆転方向に早送りさせる(ステップS188)。そして、CPU11は、指針早送り処理を終了する。
【0053】
ステップS123の判別処理において、機能針5の早送り方向が逆転方向であると判別された場合には、時針2の早送り方向に関わらず、秒針4、機能針5、及び、時針2を駆動する際の駆動電圧が全て1.6Vとなる。従って、この場合には、秒針4、機能針5、及び、時針2をそのまま並列的に駆動させることで、早送り時間を最も短くすることが出来る。CPU11は、時針2の早送り方向が正転方向であるか否かを判別し(ステップS124)、正転方向であると判別された場合には、CPU11は、秒針4をステップ数Ns逆転で早送りさせる処理と、機能針5をステップ数Nf逆転で早送りさせる処理と、時針2をステップ数Nh正転で早送りさせる処理とを並行して行う(ステップS179)。そして、CPU11は、指針早送り処理を終了する。一方、時針2の早送り方向が逆転方向であると判別された場合には、CPU11は、秒針4をステップ数Ns逆転で早送りさせる処理と、機能針5をステップ数Nf逆転で方向に早送りさせる処理と、時針2をステップ数Nh逆転で早送りさせる処理とを並行して行う(ステップS180)。そして、CPU11は、指針早送り処理を終了する。
【0054】
以上のように、第2実施形態のアナログ電子時計1aによれば、時針2、秒針4、及び、機能針5のように3本以上の指針を早送りする場合であっても、複数の駆動電圧が設定されていて、一部の指針の早送り方向を反転させることでトータルの早送り時間が短縮される場合には、各指針2、4、5に対して個別に求められた早送り方向を反転させて、同一の駆動電圧に係る指針のステッピングモータに対しては同時に指針を駆動させ、異なる駆動電圧に係る指針のステッピングモータに対しては、順番に指針を駆動させるように構成することが出来る。このように、複数の指針の早送りを行う場合に複数の駆動電圧が設定されている場合には、先ず、個別に早送り方向を設定した後に、早送り方向を反転することで駆動電圧が変更されるステッピングモータを選択し、当該ステッピングモータによる早送り方向を反転する場合と反転しない場合で各々トータルの早送り時間を算出し、これらの算出された早送り時間を比較することで早送り方向の反転の有無を決定する。従って、早送りの対象となる指針の本数に応じて処理を繰り返すことで、適宜早送りの方向を調整可能であるとともに、処理内容を複雑化せずに容易に早送り時間の短縮を図ることが出来る。
【0055】
なお、本発明は、上記実施の形態に限られるものではなく、様々な変更が可能である。
例えば、上記実施の形態では、早送り方向を反転させることで全ての指針の駆動電圧を一致させる場合について説明したが、複数の駆動電圧のままであっても、一部の指針の早送り方向を反転させることで全体の早送り時間を短縮することが出来る場合には、本発明を適用することが出来る。同様に、早送りに3種類以上の駆動電圧が設定されている場合でも、駆動電圧を1種類に統一する場合、2種類に減らす場合、3種類のままの場合の各状況において、全体の早送り時間を短縮することができる場合には、一部の指針の早送り方向を反転して各指針の早送りを行うこととしても良い。
【0056】
また、上記実施の形態では、駆動回路52をCPU11と別個の構成としたが、CPU11が全て指針の駆動制御に係る処理を行うこととしても良い。
【0057】
また、上記実施の形態では、2種類の最大駆動周波数の場合を示したが、3種類以上の最大駆動周波数があっても良い。
【0058】
また、上記実施の形態では、一の駆動電圧に係る指針の早送りが完了してから他の駆動電圧に係る指針の早送りに移行したが、所定の周期で複数の駆動電圧を順番に切り替えながら複数の指針を早送りさせることも可能である。その他、上記実施の形態で示した具体的な細部や数値、制御手順などは、本発明の趣旨を逸脱しない範囲において適宜変更可能である。
【0059】
本発明のいくつかの実施形態を説明したが、本発明の範囲は、上述の実施の形態に限定するものではなく、特許請求の範囲に記載された発明の範囲とその均等の範囲を含む。
以下に、この出願の願書に最初に添付した特許請求の範囲に記載した発明を付記する。付記に記載した請求項の項番は、この出願の願書に最初に添付した特許請求の範囲の通りである。
【0060】
[付記]
<請求項1>
複数の指針と、
前記複数の指針を各々独立に駆動する駆動手段と、
前記指針の移動タイミングで前記駆動手段に当該指針を駆動させるための動作信号を出力する駆動制御手段と、
前記指針を早送りで移動させる場合に、前記指針の早送りの方向に応じて当該指針毎にそれぞれ予め設定された早送り速度に基づいて、前記早送りの対象となる指針をそれぞれの早送り移動先に最短時間で移動させる早送りの方向を定める早送り設定手段と、
を備え、
前記動作信号は、前記複数の指針の移動の方向に応じて当該指針毎にそれぞれ駆動電圧が予め設定されており、
前記駆動制御手段は、前記複数の指針を早送りで移動させる場合に、前記駆動電圧が同一である複数の前記指針を駆動させる前記動作信号を各々設定された前記早送り速度で出力し、
前記早送り設定手段は、
前記早送りの対象となる指針のうち一部の早送りの方向を反転させて当該一部の指針の駆動電圧を変更して早送りで移動させることで、当該早送りの対象となる指針全てを前記早送り移動先に移動させるのに必要な早送り時間が短縮される場合には、前記一部の指針の早送りの方向を反転させる
ことを特徴とするアナログ電子時計。
<請求項2>
前記早送り設定手段は、
前記早送りの対象となる指針が各々最短時間で早送り移動先に移動可能な早送りの方向を設定する初期設定手段と、
当該初期設定手段によって得られた前記設定に複数の駆動電圧による前記駆動手段の動作が含まれる場合には、前記早送りの対象となる指針に、設定された早送りの方向を反転させた場合の駆動電圧が他の前記早送りの対象となる指針の駆動電圧と等しくなるものが含まれているか否かを判別する駆動電圧検索手段と、
前記駆動電圧検索手段により、前記早送りの対象となる指針に、早送りの方向を反転させた場合の駆動電圧が前記他の早送りの対象となる指針の駆動電圧と等しくなるものが含まれていると判別された場合には、当該指針の早送りの方向を反転させた場合の前記早送り時間と、前記早送りの方向を反転させない場合の前記早送り時間とを比較して、より短い早送り時間で全ての前記早送りの対象となる指針の早送り動作が終了する早送りの方向を選択する早送り方向選択手段と
を備える
ことを特徴とする請求項1記載のアナログ電子時計。
<請求項3>
前記駆動制御手段は、
複数の前記駆動電圧の動作信号により前記複数の指針を早送り移動させる場合には、当該複数の駆動電圧のうちの一つに対応する指針の早送り移動を完了させる毎に前記複数の駆動電圧を順番に切り替える
ことを特徴とする請求項1又は2に記載のアナログ電子時計。
【符号の説明】
【0061】
1、1a アナログ電子時計
2 時針
3 分針
4 秒針
5、5a 機能針
6 日車
7 ケーシング
8 ベゼル
9 文字盤
9a、9b 小窓
10a、10b バンド
11 CPU
12 ROM
12a 設定プログラム
13 RAM
14 電源部
15 操作部
16 発振回路
17 分周回路
18 計時回路
32〜36 輪列機構
42〜46 ステッピングモータ
52 駆動回路
B1〜B3 押しボタンスイッチ
C1 リュウズ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の指針と、
前記複数の指針を各々独立に駆動する駆動手段と、
前記指針の移動タイミングで前記駆動手段に当該指針を駆動させるための動作信号を出力する駆動制御手段と、
前記指針を早送りで移動させる場合に、前記指針の早送りの方向に応じて当該指針毎にそれぞれ予め設定された早送り速度に基づいて、前記早送りの対象となる指針をそれぞれの早送り移動先に最短時間で移動させる早送りの方向を定める早送り設定手段と、
を備え、
前記動作信号は、前記複数の指針の移動の方向に応じて当該指針毎にそれぞれ駆動電圧が予め設定されており、
前記駆動制御手段は、前記複数の指針を早送りで移動させる場合に、前記駆動電圧が同一である複数の前記指針を駆動させる前記動作信号を各々設定された前記早送り速度で出力し、
前記早送り設定手段は、
前記早送りの対象となる指針のうち一部の早送りの方向を反転させて当該一部の指針の駆動電圧を変更して早送りで移動させることで、当該早送りの対象となる指針全てを前記早送り移動先に移動させるのに必要な早送り時間が短縮される場合には、前記一部の指針の早送りの方向を反転させる
ことを特徴とするアナログ電子時計。
【請求項2】
前記早送り設定手段は、
前記早送りの対象となる指針が各々最短時間で早送り移動先に移動可能な早送りの方向を設定する初期設定手段と、
当該初期設定手段によって得られた前記設定に複数の駆動電圧による前記駆動手段の動作が含まれる場合には、前記早送りの対象となる指針に、設定された早送りの方向を反転させた場合の駆動電圧が他の前記早送りの対象となる指針の駆動電圧と等しくなるものが含まれているか否かを判別する駆動電圧検索手段と、
前記駆動電圧検索手段により、前記早送りの対象となる指針に、早送りの方向を反転させた場合の駆動電圧が前記他の早送りの対象となる指針の駆動電圧と等しくなるものが含まれていると判別された場合には、当該指針の早送りの方向を反転させた場合の前記早送り時間と、前記早送りの方向を反転させない場合の前記早送り時間とを比較して、より短い早送り時間で全ての前記早送りの対象となる指針の早送り動作が終了する早送りの方向を選択する早送り方向選択手段と
を備える
ことを特徴とする請求項1記載のアナログ電子時計。
【請求項3】
前記駆動制御手段は、
複数の前記駆動電圧の動作信号により前記複数の指針を早送り移動させる場合には、当該複数の駆動電圧のうちの一つに対応する指針の早送り移動を完了させる毎に前記複数の駆動電圧を順番に切り替える
ことを特徴とする請求項1又は2に記載のアナログ電子時計。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【公開番号】特開2013−83459(P2013−83459A)
【公開日】平成25年5月9日(2013.5.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−221526(P2011−221526)
【出願日】平成23年10月6日(2011.10.6)
【出願人】(000001443)カシオ計算機株式会社 (8,748)
【Fターム(参考)】