説明

アフィニティー粒子及びアフィニティー分離方法

【課題】有機粒子を利用したアフィニティー粒子により、簡便かつ高精度に目的物質を分離することが可能なアフィニティー分離方法を提供すること。
【解決手段】下記式(1)で示されるホスホリルコリン基を有機粒子の表面に共有結合で有し、ある目的物質に特異的に親和性を持つリガンドを有機粒子の表面に共有結合又は吸着で有することを特徴とするアフィニティー粒子である。


(1)

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はアフィニティー粒子及びアフィニティー分離方法に関する。さらに詳しくは、有機粒子を利用したアフィニティー粒子及び目的物質を高精度にかつ容易に分離することが可能なアフィニティー分離方法に関する。本発明のアフィニティー粒子は、目的物質を高感度かつ容易に検出可能な免疫沈降法、ラテックス凝集法等を始めとする各種の分離、精製、検査方法に対して極めて有用に活用される。
【背景技術】
【0002】
従来、生体物質の分離精製にはカラムクロマトグラフィーが用いられてきた。しかしながら、カラム分離には、下記(1)〜(3)に示す致命的な問題点があった。
(1)目的物質を得るまでに多種のカラムを用いなければならず、精製効率が悪い。
(2)分画成分中に目的物質が含まれているかどうかの確認試験を行う必要があることから、精製に多大な時間を要する。
(3)精製時のロスも大きいため多量のサンプルが必要となる。
【0003】
これに対して、目的物質の分離精製には、リガンドが担持されたアフィニティーカラムやアフィニティー粒子が使用されている(特許文献1、特許文献2)。
【0004】
しかしながら、アフィニティーカラムによる分離精製には下記の問題点があった。
(1)所望の目的物質が選択的に分離されない。すなわち、リガンドに捕捉される目的物質の他に、希望しない物質もカラムに吸着されてしまう。
(2)捕捉効率が低く、多量の液体試料が必要となる。
【0005】
また、アフィニティー粒子を液体試料中に分散させて分離するアフィニティー分離方法には、アガロースなどが使用されているが(非特許文献1)、所望の目的物質が選択的に分離されないという問題点があった。すなわち、リガンドに捕捉される目的物質の他に、希望しない物質もアフィニティー粒子に吸着されてしまう。
【0006】
有機粒子からなるアフィニティー粒子は、上記の致命的な問題点の他にも、高い塩濃度の試料中では、有機粒子の凝集が起こりやすくなる問題点があった。そのため、試料を希釈して測定を行う必要があった。
【0007】
【特許文献1】特公平8−26076号公報
【特許文献2】特表平2002−511141号公報
【非特許文献1】Bioconjugate Chem.; 2002; 13(2); 163-166
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は上述の課題の解決を目的とするもので、各種の分離、精製、検査方法等に使用される有機粒子からなるアフィニティー粒子を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
すなわち、本発明は、下記式(1)で示されるホスホリルコリン基を有機粒子の表面に共有結合で有することを特徴とするアフィニティー粒子を提供するものである。
【化4】

(1)
【0010】
また、本発明は、下記式(1)で示されるホスホリルコリン基を有機粒子の表面に共有結合で有し、ある目的物質に特異的に親和性を持つリガンドと結合可能な反応基又は吸着基を有機粒子の表面に共有結合又は吸着で有することを特徴とするアフィニティー粒子を提供するものである。
【化5】

(1)
【0011】
さらに、本発明は、下記式(1)で示されるホスホリルコリン基を有機粒子の表面に共有結合で有し、ある目的物質に特異的に親和性を持つリガンドを有機粒子の表面に共有結合又は吸着で有することを特徴とするアフィニティー粒子を提供するものである。
【化6】

(1)
【0012】
また、本発明は、前記有機粒子が、スチレン、メタクリル酸グリシジル、(メタ)アクリル酸、N−アルキルアクリルアミド、(メタ)アクリル酸アルキルのうち1種または2種以上のモノマー単位を重合体中に含む合成粒子、又は、アガロース若しくはセファロースからなる多糖類であって、その平均粒子径が20nm〜500μmであることを特徴とする上記のアフィニティー粒子を提供するものである。
【0013】
さらに、本発明は、前記リガンドが、各種抗体、抗原、酵素、基質、レセプター、ペプチド、DNA、RNA、アプタマー、プロテインA、プロテインG、アビジン、ビオチン、キレート化合物、各種金属イオンからなる群から選ばれた一種又は二種以上のリガンドであることを特徴とする上記のアフィニティー粒子を提供するものである。
【0014】
また、本発明は、(1)請求項1又は2に記載のアフィニティー粒子に任意のリガンドを結合させる第1工程、(2)第1工程で製造したアフィニティー粒子を、任意のリガンドにより選択的に捕捉される目的物質を含む液体試料に分散させる第2工程、(3)アフィニティー粒子から捕捉した目的物質を回収する第3工程を含むことを特徴とする有機粒子による目的物質のアフィニティー分離方法を提供するものである。
【0015】
さらに、本発明は、(1)請求項3記載のアフィニティー粒子を、任意のリガンドにより選択的に捕捉される目的物質を含む液体試料に分散させる第1工程、(2)アフィニティー粒子から捕捉した目的物質を回収する第2工程を含むことを特徴とする有機粒子による目的物質のアフィニティー分離方法を提供するものである。
なお、本発明のアフィニティー粒子を、免疫沈降法やラテックス凝集法等の抗体や蛋白の検出に用いる場合には、(2)の回収工程は不要であり、その分散状態の変化により目視で容易に確認できる。
【発明の効果】
【0016】
本発明のアフィニティー粒子は、ある目的物質(分離を希望する目的の物質)のみをリガンドにより捕捉し、その他の物質が粒子に吸着するのを抑制するため、分離選択性が極めて高い。そして、その優れた分散性と、血清中のよう各種の塩が存在する試料中でも、凝集が起こらずに、簡便かつ高精度に目的物質を分離することが可能となる。
【0017】
すなわち、本発明の目的物質の分離方法は、分離を目的とする目的物質を短時間に効率良く、かつ簡便に分離することが出来る。通常、物質は異物に対して吸着する性質を有しているため、従来のアフィニティー粒子では目的物質のみを効率良く単離するのは困難であるが、粒子表面をホスホリルコリン基で修飾することにより、目的物質のアフィニティー粒子に対する非特異的吸着を極めて効率良く防止でき、精製効率を高めることが可能である。
【0018】
また、ホスホリルコリン基は極めて高い親水性を有しており、水を含む液体試料中にて、アフィニティー粒子の分散性を向上させる機能も有する。
【0019】
さらに、通常の粒子は塩により凝集する傾向があるため、例えば、血清から目的物を単離したい場合、血清中の各種の塩により凝集し精製効率が低下するが、本発明のアフィニティー粒子は塩の存在下でも凝集が少なく、効率的に目的物を回収できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
以下に本発明を詳細に説明する。
【0021】
「有機粒子」
本発明において、アフィニティー粒子を構成する有機粒子は特に限定されない。有機粒子とは一般に平均粒径20nm〜500μm程度の有機の物体を意味する。具体的な粒子としては、スチレン、メタクリル酸グリシジル、(メタ)アクリル酸、N−アルキルアクリルアミド、(メタ)アクリル酸アルキル、(メタ)アクリル酸アミノアルキル、(メタ)アクリル酸ヒドロキシアルキルのうち1種または2種以上のモノマー単位を重合体の中に含むような合成粒子、或いはアガロース、セファロース等の有機粒子が挙げられる。また外層に有機の物体、内側に無機粒子を含むコア−シェル構造のハイブリッド粒子も含まれる。
【0022】
特に好ましい粒子は、スチレン−ジビニルベンゼン共重合体、スチレン−メタクリル酸グリシジル−ジビニルベンゼン共重合体、アクリル酸−N−イソプロピルアクリルアミド−メチレンビスアクリルアミド共重合体、2−ヒドロキシメタクリレート−スチレン−ジビニルベンゼン共重合体、2−アミノエチルメタクリレート−N−イソプロピルアクリルアミド−メチレンビスアクリルアミド共重合体など、乳化重合、懸濁重合などにより容易に合成可能な粒子である。
【0023】
上記(1)式のホスホリルコリン基と、リガンドが結合可能な反応基又は吸着基とが、粒子表面に共有結合によって導入させるため、その表面にアミノ基、カルボキシル基、水酸基、チオール基などの反応基を有する粒子が好ましい。
【0024】
また、有機粒子の平均粒子径が20nm〜500μmであるアフィニティー粒子が好ましい。
例えば、スチレン−ジビニルベンゼン共重合体、スチレン−メタクリル酸グリシジル−ジビニルベンゼン共重合体、アクリル酸−N−イソプロピルアクリルアミド−メチレンビスアクリルアミド共重合体、2−ヒドロキシメタクリレート−スチレン−ジビニルベンゼン共重合体、2−アミノエチルメタクリレート−N−イソプロピルアクリルアミド−メチレンビスアクリルアミド共重合体などである。
【0025】
「リガンドが結合可能な反応基又は吸着基」
リガンドが結合できる限り限定されない。例えば、共有結合形態では、アミド、エステル、ウレタン、エーテル、2級アミン、尿素結合、ジスルフィド結合などが好ましい。従って、リガンドがこれらの共有結合形態となり得る反応基が好ましく、アミノ基、水酸基、カルボキシル基、チオール基等が好ましい。また吸着形態は、アビジン−ビオチン、金属−キレート化合物などが好ましい。従って、リガンドがこれらの吸着形態となり得る吸着基が好ましく、アビジン、ビオチン、キレート化合物等が好ましい。
【0026】
「リガンド」
本発明において、リガンドとは、ある目的物質と特異的に結合する物質であり、各種抗体、抗原、酵素、基質、レセプター、リガンド、ペプチド、アプタマー、プロテインA、プロテインG、アビジン、ビオチン、キレート化合物、各種金属イオンなどである。例えば、各種抗体はIgG、IgM、IgA、IgD、IgE、IgY、多糖類、酵素はグルタチオン−S−トランスフェラーゼ、基質はグルタチオン、レセプターはホルモンレセプター、サイトカインレセプター、リガンドはレクチン、キレート化合物はニトリロ三酢酸、各種金属イオンはNi2+、Co2+、Cu2+、Zn2+、Fe3+である。
【0027】
「本発明のアフィニティー粒子の製造方法」
式(1)で示されるホスホリルコリン基を有機粒子の表面に共有結合で有し、ある目的物質に特異的に親和性を持つリガンドと結合可能な反応基又は吸着基を有機粒子の表面に共有結合又は吸着とを有機粒子の表面に直接的に存在していることが本発明の本質であるので、その製造方法は限定されず、いかなる方法により結合させてもよい。
但し、上述したように、ホスホリルコリン基及びリガンドが結合可能な反応基又は吸着基をあらかじめ有する重合体を用い、化学結合することなく粒子表面を単に被覆する態様は含まない。被覆された重合体が剥れてしまったり、被覆重合体による影響が生じたりするからである。
【0028】
本発明のアフィニティー粒子は下記方法等によって製造できる。
ステップ1:粒子に下記式(1)で示されるホスホリルコリン基とリガンドが結合可能な反応基又は吸着基を導入する。反応基又は吸着基は限定されないが、アミノ基や水酸基、カルボキシル基、チオール基などである。
ステップ2:粒子に導入した反応基又は吸着基に対して、式(1)で示されるホスホリルコリン基とリガンドとを結合させる。なお、ホスホリルコリン基又はリガンドと反応基又は吸着基の間に存在する化学構造(スペーサー)は任意である。例えば、任意なスペーサーとして、メチレン鎖、オキシエチレン鎖などの他、アミノ基を1つまたは複数含むアルキレン鎖でも良い。
【0029】
「粒子表面に存在している反応基又は吸着基がアミノ基の場合」
ステップ1:任意の粒子に、公知の方法若しくは今後開発される方法にてアミノ基を導入する。アミノ基は粒子表面に直接的に導入される。アミノ基は一級アミン若しくは二級アミンである。
ステップ2:アミノ基を有する粒子に対し、グリセロホスホリルコリンの酸化的開裂反応により得られたアルデヒド体又はハイドレート体を、還元的アミノ化反応によって、ホスホリルコリン基を粒子表面に直接的に付加させる。
すべてのアミノ基に対してホスホリルコリン基を結合させずに(反応量を調節する)、残存するアミノ基が、リガンドが結合可能な置換基となる。
または、アミノ基を有する粒子に対し、グリセロホスホリルコリンの酸化的開裂により得られたカルボキシル体を、アミド化反応によってホスホリルコリン基を粒子表面に直接的に付加させる。全てのアミノ基に対してホスホリルコリン基を結合させずに(反応量を調節する)、残存するアミノ基が、リガンドが結合可能な置換基となる。
【0030】
「粒子表面へのアミノ基の導入方法」
粒子にアミノ基を導入する公知の方法(ステップ1)としては、下記が挙げられる。
1.プラズマ処理の表面反応によるアミノ基の導入
窒素ガス雰囲気下で低温プラズマにより粒子表面にアミノ基を導入する。具体的には粒子をプラズマ反応容器内に収容し、反応容器内を真空ポンプで真空にした後、窒素ガスと水素ガスを導入する。続いてグロー放電により、粒子表面にアミノ基を導入できる。プラズマ処理した有機材料を機械的に粒子化することも可能である。プラズマ処理に関する文献を下記に示す。
1. M. Muller, C. oehr
Plasma aminofunctionalisation of PVDF microfiltration membranes: comparison of the in plasma modifications with a grafting method using ESCA and an amino-selective fluorescent probe
Surface and Coatings Technology 116-119 (1999) 802-807
2. Lidija Tusek, Mirko Nitschke, Carsten Werner, Karin Stana-Kleinschek, Volker Ribitsch
Surface characterization of NH3 plasma treated polyamide 6 foils
Colloids and Surfaces A: Physicochem. Eng. Aspects 195 (2001) 81-95
3. Fabienne Poncin-Epaillard, Jean-Claude Brosse, Thierry Falher
Reactivity of surface groups formed onto a plasma treated poly (propylene) film
Macromol. Chem. Phys. 200. 989-996 (1999)
【0031】
2.表面改質剤によるアミノ基の導入
アミノ基を有するアルコキシシラン、クロロシラン、シラザンなどの表面改質剤を用いて、アルコキシシリル基含有粒子等の有機粒子表面を処理する。
例えば、1級アミノ基を有する3−アミノプロピルトリメトキシシランにより、アルコキシシリル基含有粒子を処理してアミノ基を導入する。具体的には、3−トリメトキシシリルプロピル1−メタクリレート−メタクリル酸メチル−ジビニルベンゼン共重合粒子を水−2−プロパノール混合液中に浸し、3−アミノプロピルトリメトキシシランを添加後、50℃に加熱し6時間反応させる。室温に冷却後、上記重合体をメタノールで洗浄し、乾燥してアミノ基が上記共重合粒子表面に直接導入された粒子が得られる。
【0032】
3.シリコーン気相処理によるアミノ基の導入(特公平1−54379号公報、特公平1−54380号公報、特公平1−54381号公報参照)
粒子表面をまず1.3.5.7−テトラメチルシクロテトラシロキサンにより処理し、表面に導入されたSi−H基と、アミノ基を有するモノマーを反応させてアミノ化された表面を得る。例えば、スチレン−ジビニルベンゼン共重合粒子と1.3.5.7−テトラメチルシクロテトラシロキサンをデシケーター中に入れ、アスピレーターで脱気する。80℃で16時間反応させた後、上記粒子を取り出し、50℃で乾燥させる。得られた粒子をエタノール中に分散し、アリルアミンを添加、続いて塩化白金酸のエタノール溶液を添加し、60℃で2時間攪拌する。反応終了後、濾過、エタノール洗浄、減圧乾燥してアミノ化有機粒子を得る。
本法に用いるモノマーは、アミン系モノマーを用いることが出来る。アミン系モノマーとは、アリルアミンに限られず、アミノ基及び重合可能なビニル、アクリル等の反応性部位を有していれば良い。アミノ基は、ブトキシカルボニル基、ベンジルオキシカルボニル基などにより保護されていても良い。
また、アミン系モノマーでなくても、エポキシ基のように、例えばジアミンとの反応により簡単にアミノ基を導入可能な官能基を有するモノマーでも良い。
【0033】
「アミノ基を有する粒子にホスホリルコリン基を導入する方法」
次に、アミノ化された粒子表面にホスホリルコリン基を導入する方法(ステップ2)を以下に示す。
粒子をメタノール中に漬し、ホスファチジルグリセロアルデヒドを添加し、室温で6時間放置する。そして、シアノホウ素酸ナトリウムを0℃で添加、一晩加熱攪拌し、アミノ基にホスホリルコリン基を付加させる。粒子をメタノールで洗浄後、乾燥し、ホスホリルコリン基を表面に直接有する粒子が得られる。反応溶媒はメタノール以外にも水、エタノール、2−プロパノール等プロトン性溶媒であれば使用可能であるが、メタノールを用いた場合の導入率が高い傾向にある。
または、粒子をジメチルスルホキシド−水混合溶液に分散し、N−ヒドロキシスクシンイミド、1-エチル-3-(3-ジメチルアミノプロピル)カルボジイミド塩酸塩およびカルボキシメチルホスホリルコリンを溶解したジメチルスルホキシド−水混合溶液を添加する。室温で6時間攪拌し、粒子を水で充分洗浄後、乾燥し、ホスホリルコリン基を表面に直接有する粒子が得られる。反応溶媒は上記以外にもN,N’−ジメチルホルムアミド、テトラヒドロフラン、アセトニトリルなど非プロトン性溶媒が好ましく用いられる。或いは、カルボキシメチルホスホリルコリンと塩化チオニルを反応させて酸塩化物とし、N,N’−ジメチルホルムアミド、アセトニトリルなどを溶媒とした無水条件下で粒子と反応させて粒子を水で充分洗浄後、乾燥し、ホスホリルコリン基を表面に直接有する粒子が得られる。この方法は表面の水酸基とも効率良く反応を行わせることができ、粒子がアガロース、セファロースなど多糖類の場合や2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレートの場合に有効である。
【0034】
表面改質剤に3−アミノプロピルトリメトキシシランを用いてアミノ基を、アルコキシシリル基を有する有機粒子に導入し、次にホスホリルコリン基(PCと略す)を導入する方法のスキームを下記に示す。

【化7】

【0035】
上記で説明したように、アミノ基を有する粒子を調製し、グリセロホスホリルコリンの酸化的開裂反応により得られたアルデヒド体又はハイドレート体との還元的アミノ化反応によりホスホリルコリン基が粒子表面に直接付加した粒子を製造することができる。
この方法は、ホスホリルコリン基の導入率が高く、また、様々な有機粒子の表面を修飾できるという大きな利点がある。
【0036】
上記の方法は、グリセロホスホリルコリンの酸化的開裂反応により得られるアルデヒド体を含有する化合物が、公知のグリセロホスホリルコリン基を、公知の方法により酸化的開裂を行わせるもので、極めて簡単なステップである。この反応は、1,2−ジオールを過ヨウ素酸、或いは過ヨウ素酸塩を用いて酸化することにより結合を開裂させ、2つのアルデヒド体を得るものであり、本法の場合、ホスホリルコリンアルデヒド体とホルムアルデヒドを生成する。反応は通常水中または水を含む有機溶媒中で行われる。反応温度は0度から室温である。アルデヒド体は水中で平衡反応を経てハイドレートとなることもあるが、続くアミンとの反応には影響しない。下記にホスホリルコリン基を含有する一官能のアルデヒド体を調製するスキームを示す。
【化8】

【0037】
グリセロホスホリルコリンの酸化的開裂反応により得られるアルデヒド体(若しくはハイドレート体)を粒子のアミノ基に結合させる還元的アミノ化反応は、両者を溶媒中にて攪拌することにより容易に行うことが出来る。この反応は両者を水或いはアルコール中に溶解または分散し(第三成分の有機溶媒を混合しても良い)、イミンを形成させた後、これを還元剤により還元して2級アミンを得るものである。還元剤としてはシアノホウ素酸ナトリウム等マイルドな還元剤が好ましいが、ホスホリルコリンが安定な限り、他の還元剤を用いることも可能である。反応は通常0度から室温で行われるが、場合により加熱することもある。
【0038】
また、上記アミノ基には、式(2)で示される化合物を任意の量だけ常法により反応させて、残存するアミノ基をリガンドが結合可能な反応基又は吸着基としても良い。
【化9】

(2)
n=1〜12までの整数
【0039】
「リガンドが結合可能な反応基又は吸着基について」
上記反応においては、すべてのアミノ基に対してホスホリルコリン基を結合させずに(反応量を調節する)、残存するアミノ基が、リガンドが結合可能な反応基又は吸着基となる。この粒子が請求項2記載のアフィニティー粒子であり、式(1)で示されるホスホリルコリン基とリガンドが結合可能な反応基又は吸着基とが有機粒子の表面に直接的に存在する粒子となる。そして、この残存するアミノ基にリガンドを結合させたものが、請求項3記載のアフィニティー粒子となり、式(1)で示されるホスホリルコリン基とリガンドとが有機粒子の表面に直接的に存在する粒子となる。
請求項2記載のアフィニティー粒子は、捕捉したい物質(目的物質)に応じて使用者が任意のリガンドを結合させることが可能となる製品態様である。請求項3記載のアフィニティー粒子はあらかじめリガンドを結合させた製品態様である。なお、請求項1記載のアフィニティー粒子は、少なくとも式(1)のホスホリルコリン基が粒子表面に存在しているアフィニティー粒子であり、リガンドやこれを結合できる反応基又は吸着基の有無に限らず、捕捉したい物質(目的物質)に応じて使用者が任意のリガンドを結合させることが出来る製品態様である。また、少なくとも式(1)のホスホリルコリン基が粒子表面に存在している限り、いかなる態様のアフィニティー粒子を含むものであり、例えば請求項2及び請求項3の態様も含むものである。
【0040】
上記の反応において、リガンドが結合可能な反応基又は吸着基としてアミノ基を残存させておくには、3−アミノプロピルトリメトキシシランとホスホリルコリン基を導入した3−アミノプロピルトリメトキシシランとを競合反応させる方法又は反応量を調節するなどにより行うことが出来る。
なお、このアミノ基に任意の官能基を有する化合物を反応させて、その官能基をリガンドが結合可能な反応基又は吸着基としても良い。例えば、グルタルアルデヒド、アルキルジイミデート、アシルアジド類、イソシアネート類などが考えられる。
【0041】
なお、上記の表面改質剤に3−アミノプロピルトリメトキシシランを使用した場合のスキームにおいて、表面改質剤の反応量を調整して、粒子表面に存在する水酸基(OH)を残しておき、残存するOH基を、リガンドが結合可能な反応基又は吸着基として利用することも出来る。
【0042】
「アミノ基を持つ粒子へのリガンドの結合方法について」
リガンドが蛋白質の場合、有機粒子上のアミノ基にグルタルアルデヒドの片方のアルデヒド基を反応させ、もう一方のアルデヒド基に蛋白質中のアミノ基を反応させ、蛋白質を結合させる。
【0043】
「粒子表面に存在している反応基又は吸着基が水酸基の場合」
有機粒子に水酸基が存在する場合は、上記のアミノ基のようなリガンドが結合可能な反応基又は吸着基を新たに導入することなく、粒子表面に存在する水酸基(OH)をそのまま利用して、ホスホリルコリン基及びリガンド又はリガンドが結合可能な反応基又は吸着基を導入する。本発明のアフィニティー粒子はこの方法により製造することが好ましい。
【0044】
「水酸基を有する粒子にホスホリルコリン基を導入する方法」
粒子表面の水酸基と、下記式(3)または(4)の化合物のSi−OMeから脱水によって化学結合を形成させる。この化学反応はほとんどの有機溶媒中で、加熱・還流を行うことで極めて容易に定量的に進行する。この脱水反応によって化学的、物理的に極めて安定なホスホリルコリン基を導入することが出来るので好ましい。なお、下記式(3)または(4)で示されるホスホリルコリン基含有化合物は新規化合物である。
【化10】

(3)

【化11】

(4)
式中、mは2〜6、nは1〜4である。OMeは、OEt、Clであってもよい。またSiと結合するOMeまたはOEtまたはClの内、2つまではメチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、イソブチル基でも良い。
【0045】
「式(3)のホスホリルコリン基含有化合物の製造方法」
下記式(5)に示したホスホリルコリン誘導体を蒸留水に溶解させる。下記式(5)のホスホリルコリン誘導体は公知の化合物であり市販品を入手できる。
【化12】

(5)
【0046】
式(5)の化合物の水溶液を氷水浴中で冷却し、過ヨウ素酸ナトリウムを添加し、5時間攪拌した。反応液を減圧濃縮、減圧乾燥し、メタノールにより下記式(6)に示すアルデヒド基を有するホスホリルコリン誘導体を抽出する。
【化13】

(6)
【0047】
次に、式(6)のメタノール溶液に3−アミノプロピルトリメトキシシランを0.5当量添加する。この混合溶液を室温で所定時間撹拌したのち、氷冷し、シアノヒドロホウ素化ナトリウムを適量添加し、室温に戻して16時間撹拌する。この間も反応容器には乾燥窒素を流し続ける。沈殿をろ過した後、式(3)のメタノール溶液を得る。
【0048】
上記の手順は、式(3)に示した化合物中のm、nが変わっても全く同様に行うことができる。ここで示した手順はm=3、n=2の場合である。反応溶媒は特に限定されず、上述したメタノール以外にも水や、エタノール、プロパノール、ブタノールなどのアルコール、DMFやDMSOなどの非プロトン性溶媒を用いることができる。ただし、反応中の重合を防ぐためには脱水溶媒が好ましく、なかでも脱水メタノールが好適である。
また、(3)中のメトキシ基(OMe)がエトキシ基(OEt)の場合はメタノールをエタノールに変えて反応を行い、Clの場合はジメチルホルムアミドやジメチルスルホキシドに変更するだけでよい。
さらには、Siと結合するOMeまたはOEtまたはClの内、2つまたは1つがメチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、イソブチル基のいずれかで置換されている場合も上記の手法と全く同様に製造することができる。
「式(4)のホスホリルコリン基含有化合物の製造方法」
式(5)の化合物の水溶液を氷水浴中で冷却し、過ヨウ素酸ナトリウム及び触媒量の三塩化ルテニウムを添加し、3時間攪拌する。反応液を減圧濃縮、減圧乾燥し、メタノールにより下記式に示すカルボキシル基を有するホスホリルコリン誘導体(7)を抽出する。
【化14】

(7)
次に、式(7)のアセトニトリル或いはN,N−ジメチルホルムアミド分散液に塩化チオニル1.2当量を添加し、30分間攪拌した溶液に3−アミノプロピルトリメトキシシランを0.9当量添加する。この混合溶液を室温で4時間撹拌し、式(8)の化合物が得られる。
【化15】

(8)
また、上記縮合反応に用いる試薬は、塩化チオニル以外にも、五塩化リン、オキシ塩化リン、三臭化リン、オキザリルクロライドなど、一般的にカルボン酸ハロゲン化物を生成するものであれば問題なく使用できる。
また、式(8)のシランカップラーを用いる以外にも、式(7)の化合物を直接水酸基と反応させることが可能である。例えば、セファロースビーズを無水アセトニトリル中に分散し、式(7)の化合物及び1.2当量の塩化チオニルを混合して一晩攪拌したアセトニトリル溶液を添加、3時間攪拌して表面にホスホリルコリン化合物が導入された粒子を得る。
【0049】
「リガンドが結合可能な反応基又は吸着基について」
上記反応においては、すべての水酸基に対してホスホリルコリン基を結合させずに(反応量を調節する)、残存する水酸基が、リガンドが結合可能な反応基又は吸着基となる。この粒子が請求項2記載のアフィニティー粒子であり、式(1)で示されるホスホリルコリン基とリガンドが結合可能な反応基又は吸着基とが有機粒子の表面に直接的に存在する粒子となる。そして、この残存する水酸基にリガンドを結合させたものが、請求項3記載のアフィニティー粒子となり、式(1)で示されるホスホリルコリン基とリガンドとが有機粒子の表面に直接的に存在する粒子となる。
請求項2記載のアフィニティー粒子は、捕捉したい物質(目的物質)に応じて使用者が任意のリガンドを結合させることが可能となる製品態様である。請求項3記載のアフィニティー粒子はあらかじめリガンドを結合させた製品態様である。なお、請求項1記載のアフィニティー粒子は、少なくとも式(1)のホスホリルコリン基が粒子表面に存在しているアフィニティー粒子であり、リガンドやリガンドが結合可能な反応基又は吸着基の有無に限らず、捕捉したい物質(目的物質)に応じて使用者が任意のリガンドを結合させることが出来る製品態様である。また、少なくとも式(1)のホスホリルコリン基が粒子表面に存在している限り、いかなる態様のアフィニティー粒子を含むものであり、例えば請求項2及び請求項3の態様も含むものである。
【0050】
「水酸基を持つ粒子へのリガンドの結合方法について」
リガンドが蛋白質の場合、粒子上の水酸基を臭化シアンを用いて活性化する。ここに蛋白質中のアミノ基を反応させ、蛋白質を結合させる。
なお、この水酸基に、任意の官能基を有する化合物を反応させて、その官能基を蛋白質が結合可能な反応基又は吸着基としても良い。
【0051】
「粒子に導入した反応基又は吸着基がカルボキシル基の場合」
ステップ1:任意の粒子に、公知の方法若しくは今後開発される方法にてカルボキシル基を導入する。カルボキシル基は粒子表面に直接的に導入される。
ステップ2:カルボキシル基を有する粒子に対し、下記式(9)で示されるホスホリルコリン含有化合物を常法により反応させて、ホスホリルコリン基を酸アミド結合させ、残存するカルボキシル基をリガンドが結合可能な反応基又は吸着基としても良い。
すべてのカルボキシル基に対してホスホリルコリン基を結合させずに(反応量を調節する)、残存するカルボキシル基が、リガンドが結合可能な反応基又は吸着基となる。
【化16】

(9)
【0052】
「粒子表面へのカルボキシル基の導入方法」
粒子にカルボキシル基を導入する公知の方法(ステップ1)としては、下記が挙げられる。
1.表面改質剤によるカルボキシル基の導入
カルボキシル基を有するアルコキシシラン、クロロシラン、シラザンなどの表面改質剤を用いて、アルコキシシリル含有粒子等の有機粒子表面を処理する。
例えば、トリエトキシシリルプロピル無水コハク酸により、アルコキシシリル基を有する有機粒子を処理してカルボキシル基を導入する。具体的には、トリエトキシシリルプロピル無水コハク酸をN,N−ジメチルホルムアミドに溶解させ、蒸留水と4−ジメチルアミノピリジンを添加し、16時間室温で撹拌し、カルボン酸を有するシランカップリング剤を得る。本反応は無水コハク酸の4−ジメチルアミノピリジンによる加水分解反応である。
カルボン酸を有するシランカップリング剤により、アルコキシシリル基を有する有機粒子を水−2−プロパノール混合液中に浸し、カルボン酸を有するシランカップリング剤を添加後、50℃に加熱し6時間反応させる。室温に冷却後、有機粒子をメタノールで洗浄し、乾燥してカルボキシル基が有機粒子表面に直接導入された粒子が得られる。
【0053】
2.シリコーン気相処理によるカルボキシル基の導入(特公平1−54379号公報、特公平1−54380号公報、特公平1−54381号公報参照)
粒子表面をまず1.3.5.7−テトラメチルシクロテトラシロキサンにより処理し、表面に導入されたSi−H基と、カルボキシル基を有するモノマーを反応させてカルボキシル化された表面を得る。
本法に用いるモノマーは、カルボキシル系モノマーを用いることが出来る。カルボキシル系モノマーとは、カルボキシル基及び重合可能なビニル、アクリル等の反応性部位を有していれば良い。
【0054】
「カルボキシル基を有する粒子にホスホリルコリン基を導入する方法」
次に、カルボキシル化された粒子表面にホスホリルコリン基を導入する方法(ステップ2)を以下に示す。
カルボキシル基が表面にある粒子をN-ヒドロキシスクシンイミド(NHS)、1−エチル−3−(3−ジメチルアミノプロピル)−カルボジイミドの溶液に浸すと、粒子の表面が活性エステル基で覆われる。ここに式(9)に示すアミノ基を有するホスホリルコリン誘導体溶液を入れ、ホスホリルコリン基を導入する。
【0055】
「リガンドが結合可能な反応基又は吸着基について」
上記反応においては、すべてのカルボキシル基に対してホスホリルコリン基を結合させずに(反応量を調節する)、残存するカルボキシル基が、リガンドが結合可能な反応基又は吸着基となる。この粒子が請求項2記載のアフィニティー粒子であり、式(1)で示されるホスホリルコリン基とリガンドが結合可能な反応基又は吸着基とが有機粒子の表面に直接的に存在する粒子となる。そして、このリガンドが結合可能な反応基又は吸着基にリガンドを結合させたものが、請求項3記載のアフィニティー粒子となり、式(1)で示されるホスホリルコリン基とリガンドとが有機粒子の表面に直接的に存在する粒子となる。
請求項2記載のアフィニティー粒子は、捕捉したい物質(目的物質)に応じて使用者が任意のリガンドを結合させることが可能となる製品態様である。請求項3記載のアフィニティー粒子はあらかじめリガンドを結合させた製品態様である。なお、請求項1記載のアフィニティー粒子は、少なくとも式(1)のホスホリルコリン基が粒子表面に存在しているアフィニティー粒子であり、リガンドやリガンドが結合可能な反応基又は吸着基の有無に限らず、捕捉したい物質(目的物質)に応じて使用者が任意のリガンドを結合させることが出来る製品態様である。また、少なくとも式(1)のホスホリルコリン基が粒子表面に存在している限り、いかなる態様のアフィニティー粒子をも含むものであり、例えば請求項2及び請求項3の態様も含むものである。
【0056】
上記の反応において、カルボキシル基をリガンドが結合可能な反応基又は吸着基として残存させておくには、ホスホリルコリン基を導入したカルボン酸を有するシランカップリング剤の反応量を調節するなどにより行うことが出来る。
なお、このカルボキシル基に、任意の官能基を有する化合物を反応させて、その官能基をリガンドが結合可能な反応基又は吸着基としても良い。
【0057】
「カルボキシル基を持つ粒子へのリガンドの結合方法について」
リガンドが蛋白質の場合、有機粒子上のカルボキシル基にN-ヒドロキシスクシンイミド(NHS)、1−エチル−3−(3−ジメチルアミノプロピル)−カルボジイミドの溶液に浸し、粒子の表面を活性エステル化する。ここに蛋白質中のアミノ基を反応させ、蛋白質を結合させる。なお、この水酸基に、任意の官能基を有する化合物を反応させて、その官能基を蛋白質が結合可能な反応基又は吸着基としても良い。
【0058】
「目的物質のアフィニティー分離方法」
上記で得られる本発明のアフィニティー粒子を用いて、本発明の目的物質のアフィニティー分離方法が行われる。
本発明の方法は、有機粒子を利用して、高精度な分離が簡便に行われるという点で画期的な目的物質の分離方法である。
本発明の方法は、下記の3つの工程を含むものである。なお、あらかじめリガンドが結合されているアフィニティー粒子の場合は(請求項2)、第1工程はすでに行われているので省略される。
1.式(1)で示されるホスホリルコリン基を有機粒子の表面に共有結合で有するアフィニティー粒子又は式(1)で示されるホスホリルコリン基を有機粒子の表面に共有結合で有し、ある目的物質に特異的に親和性を持つリガンドを有機粒子の表面に共有結合又は吸着で有することを特徴とするアフィニティー粒子に、任意のリガンドを化学結合させる第1工程。
例えば、式(1)で示されるホスホリルコリン基とリガンドが結合可能な反応基又は吸着基とを有機粒子の表面に、前者は共有結合で後者は共有結合又は吸着で有するアフィニティー粒子と任意のリガンドのPBS溶液1mlを2mlエッペンチューブに入れて、30分間4℃で緩やかに振る。15000rpm、30分間遠心し、上清を捨てる。洗浄のため、PBS溶液1mlを加えて、緩やかに振り、15000rpm、30分間遠心して、上清を捨てる。この洗浄操作を3回繰り返す。
2.第1工程で製造したアフィニティー粒子を、任意のリガンドにより選択的に捕捉される目的物質を含む液体試料に分散させる第2工程。
例えば、第1工程で製造したアフィニティー粒子を、任意のリガンドにより選択的に捕捉される目的物質を含む液体試料に分散させ、30分間4℃で緩やかに振る。15000rpm、30分間遠心し、上清を捨てる。洗浄のため、PBS溶液1mlを加えて、緩やかに振り、15000rpm、30分間遠心して、上清を捨てる。この洗浄操作を3回繰り返す。
3.分離したアフィニティー粒子から捕捉した目的物質を回収する第3工程。
例えば、アフィニティー粒子から捕捉した目的物質を回収するため、溶出バッファー1mlを加え、30分間4℃で緩やかに振り、粒子から目的物質を溶出させ、上清を回収する。溶出バッファー1mlを加えて、緩やかに振り、15000rpm、30分間遠心して、上清を回収する。この操作を2回繰り返す。
図1は、本発明のアフィニティー粒子と従来のアフィニティー粒子による目的物質捕捉の選択性の違いを示す模式図である。
【実施例】
【0059】
次に、本発明を実施例に基づきさらに詳しく説明する。なお、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。粒子表面に導入されたホスホリルコリン基は以下の方法により確認されて定量出来る。
<定量方法>
得られた粒子を、過塩素酸に浸し、180℃に加熱して分解した。得られた溶液を水で希釈し、そこに七モリブデン酸六アンモニウム四水和物とLアスコルビン酸を入れ、95℃にて5分間発色させた後、710nmの吸光度測定して、導入量を求めた。検量線にはリン酸二水素ナトリウム水溶液を用いた。
【0060】
「合成例1」
「ホスホリルコリン基を含有するアルデヒド化合物」
1−α−グリセロホスホリルコリン(6.29g)を蒸留水210mlに溶解し、氷水浴中で冷却した。過ヨウ素酸ナトリウム(10.23g)を添加し、5時間攪拌した。反応液を減圧濃縮、減圧乾燥し、メタノールにより目的物を抽出した。下記に化合物(6)に構造を示す。
式(6)の化合物の重水中での1H NMRスペクトルを図2に示す。式(6)の化合物は水中において式(10)と平衡状態なので、実際のスペクトルは式(6)と式(10)の双方を反映したものとなる。
【化17】

(6)

【化18】

(10)
【0061】
「合成例2」
「ホスホリルコリン基を含有するカルボン酸化合物」
1−α−グリセロホスホリルコリン5gを水70ml−アセトニトリル30mlに溶解した。氷冷下、過ヨウ素酸ナトリウム17gと三塩化ルテニウム80mgを添加し、一晩攪拌した。沈殿物をろ過し、減圧濃縮、メタノール抽出により化学式(7)に示す目的とするカルボキシメチルホスホリルコリンを得た。
式(7)の化合物の重水中での1H NMRスペクトルを図3に示す。
【化19】

(7)
【0062】
「参考例1」
「スチレン−グリシジルメタクリレート粒子」
グリシジルメタクリレート3.6g、スチレン2.4g、ジビニルベンゼン0.08gを窒素置換により充分に脱気した精製水220mlに添加した。重合開始剤V-60 0.12gを添加し、70℃で1時間攪拌した。更にグリシジルメタクリレート0.6gを添加し、70℃で一晩攪拌した。室温まで冷却し、遠心分離(15000rpm x 30分 3回)により精製し、目的とする粒子を得た。
【0063】
「アミノ基導入スチレン−グリシジルメタクリレート粒子」
スチレン−グリシジルメタクリレート粒子1gを精製水80mlに分散し、25%アンモニア水溶液20mlを添加し、70℃で一晩過熱攪拌した。室温に冷却し、遠心分離(17000rpm x 60分 3回)により精製した。
【0064】
「ホスホリルコリン修飾粒子(PC粒子(A))」
アミノ基を導入したスチレン−グリシジルメタクリレート粒子0.5gをメタノール10mlに分散し、合成例1のアルデヒド体0.5gを添加し、一晩攪拌した。シアノホウ素酸ナトリウム140mgを氷水浴中で添加し、6時間攪拌後、遠心分離(17000rpm x 60分 3回)により精製して、PC粒子(A)を得た。
【0065】
「塩による凝集」
図4、5に参考例1で作製したスチレン−グリシジルメタクリレート粒子とPC粒子(A)の水中及び食塩水(0.1M水溶液)における粒度分布を示す。
図4から、アフィニティー粒子を使用したラテックス凝集法に一般的に用いられるスチレン−グリシジルメタクリレート粒子は、水中での粒度分布のサイズに比較して、NaCl水溶液中での粒度分布のサイズは大幅に大きくなっており、凝集が起こっていることを示している。一方、図5から、PC粒子(A)の食塩水溶液中での粒度分布の変化は、図4の場合と比較して小さくなっており、塩による凝集が起こりにくいことを示している。以上から、PC粒子(A)は式(1)のホスホリルコリンによる修飾により、塩などの妨害物質の影響を低減し、測定制度を高めることができる。
【0066】
「蛋白質非特異吸着抑制評価」
参考例1で作製したスチレン−グリシジルメタクリレート粒子とPC粒子(A)をそれぞれ25mgずつとり、蒸留水1ml加えて超音波処理を1分間行った。遠心で蒸留水を取り除き、アルブミン(100μg/mL)或いはリゾチーム(100μg/mL)を1mL加えて室温で1時間反応させ、遠心(5000g)後の上清をMICRO BCA法で定量した。その結果を図6に示す。スチレン−グリシジルメタクリレート粒子に比べホスホリルコリン基で処理されているPC粒子(A)はアルブミン、リゾチームともに吸着がかなり抑制されていることが分かった。これから、式(1)のホスホリルコリンによる修飾により、蛋白質の吸着量は大幅に減少していることがわかる。粒子同士の凝集と同時に、粒子に対する各種蛋白質の非特異的吸着も測定精度低下の大きな要因となるので、本発明のアフィニティー粒子は、リガンドにより選択的に目的蛋白質のみを捕捉する精度に優れている。
【0067】
「参考例2」
「2−アミノエチルメタクリレート−N−イソプロピルアクリルアミド−メチレンビスアクリルアミド粒子」
N−イソプロピルアクリルアミド1.35gとメチレンビスアクリルアミド58mgを窒素置換により充分に脱気した精製水200ml中に添加した。重合開始剤V−50 7mgを添加し、70℃で30分攪拌した。2−アミノエチルメタクリレート100mgを添加し、更に4時間70℃で攪拌し、室温まで冷却した後、水中で透析、凍結乾燥により目的とする粒子を得た。
【0068】
「ホスホリルコリン修飾粒子(PC粒子(B))」
得られた2−アミノエチルメタクリレート−N−イソプロピルアクリルアミド−メチレンビスアクリルアミド粒子0.1gをメタノール20mlに分散し、合成例1のアルデヒド体25mgを添加し、一晩攪拌した。シアノホウ素酸ナトリウム6mgを氷水浴中で添加し、6時間攪拌後、水中で透析により精製して、PC粒子(B)を得た。
【0069】
「ホスホリルコリン修飾粒子(PC粒子(C))」
得られた2−アミノエチルメタクリレート−N−イソプロピルアクリルアミド−メチレンビスアクリルアミド粒子0.1gをジメチルスルホキシド8ml−水2mlに分散し、合成例2のカルボキシル体25mg、N−ヒドロキシスクシンイミド20mg、1-エチル-3-(3-ジメチルアミノプロピル)カルボジイミド塩酸塩23mgを溶解した水1mlを添加、一晩攪拌した。水中で透析により精製して、PC粒子(C)を得た。
【0070】
「蛋白質非特異吸着抑制評価」
参考例1で作製したスチレン−グリシジルメタクリレート粒子と参考例2で作製したPC粒子(B)、(C)をそれぞれ25mgずつとり、蒸留水1ml加えて超音波処理を1分間行った。遠心で蒸留水を取り除き、アルブミン(100μg/mL)或いはリゾチーム(100μg/mL)を1mL加えて室温で1時間反応させ、遠心(5000g)後の上清をMICRO BCA法で定量した。その結果を図7に示す。スチレン−グリシジルメタクリレート粒子に比べホスホリルコリン基で処理されているPC粒子(B)、(C)はアルブミン、リゾチームともに吸着がかなり抑制されていることが分かった。これから、式(1)のホスホリルコリンによる修飾により、蛋白質の吸着量は大幅に減少していることがわかる。粒子同士の凝集と同時に、粒子に対する各種蛋白質の非特異的吸着も測定精度低下の大きな要因となるので、本発明のアフィニティー粒子は、リガンドにより選択的に目的蛋白質のみを捕捉する精度に優れている。
【0071】
「参考例3」
「ホスホリルコリン修飾粒子(PC粒子(D))」
アガローズビーズ(架橋率6%)100mgを無水N,N’−ジメチルホルムアミド10mlに分散、合成例2のカルボキシル体50mgと塩化チオニル25mgを無水N,N’−ジメチルホルムアミド1mlに溶解、反応させた溶液を添加し、室温で3時間攪拌した。N,N’−ジメチルホルムアミド、アセトニトリルで順次遠心分離により精製して、PC粒子(D)を得た。
【0072】
「蛋白質非特異吸着抑制評価」
参考例1で作製したスチレン−グリシジルメタクリレート粒子と参考例3で作製したPC粒子(D)をそれぞれ25mgずつとり、蒸留水1ml加えて超音波処理を1分間行った。遠心で蒸留水を取り除き、アルブミン(100μg/mL)或いはリゾチーム(100μg/mL)を1mL加えて室温で1時間反応させ、遠心(5000g)後の上清をMICRO BCA法で定量した。その結果を図8に示す。アガロースビーズに比べホスホリルコリン基で処理されているPC粒子(D)はアルブミン、リゾチームともに吸着がかなり抑制されていることが分かった。これから、式(1)のホスホリルコリンによる修飾により、蛋白質の吸着量は大幅に減少していることがわかる。粒子同士の凝集と同時に、粒子に対する各種蛋白質の非特異的吸着も測定精度低下の大きな要因となるので、本発明のアフィニティー粒子は、リガンドにより選択的に目的蛋白質のみを捕捉する精度に優れている。
【0073】
「実施例1」
「アフィニティー粒子」
次に、請求項6で示すアフィニティー分離法を示す。参考例2で得られた2−アミノエチルメタクリレート−N−イソプロピルアクリルアミド−メチレンビスアクリルアミド粒子0.1gに合成例1のアルデヒド体10mgを添加し、一晩攪拌した後、シアノホウ素酸ナトリウム3mgを氷水浴中で添加し、6時間攪拌後、水中で透析により精製して製造した。このアフィニティー粒子25mgにグルタルアルデヒド溶液(8%)1mLとシッフ塩基の安定化のためシアノトリヒドロホウ酸ナトリウム10mgを加えて室温で5時間反応させ、PBSで遠心・精製(5000g)5回で洗浄した。グルタルアルデヒドがリガンドが結合可能な反応基又は吸着基である請求項2のアフィニティー粒子を得た。次にウシアルブミン(1mg/mL)或いはヒトヘモグロビン(1mg/mL)1mLとトリヒドロホウ酸ナトリウム10mgを加えて室温で1日反応させ、PBSで遠心・精製(5000g)を4回行った。このウシアルブミン或いはヒトヘモグロビンがリガンドである。ここから、請求項7で示すアフィニティー分離法である。残っているグルタルアルデヒド基を不活性化するためエタノ−ルアミン塩酸塩(0.5M、pH7.1)1mLとトリヒドロホウ酸ナトリウム10mgを加えて室温で1時間反応させ、PBSで遠心・精製(5000g)を4回行い、請求項3のアフィニティー粒子を得た。次にHRP標識抗ウシアルブミン抗体(10μg/mL)或いはHRP標識抗ヒトヘモグロビン抗体(10μg/mL)を1mL加えて、室温で1時間反応させ、PBSで遠心・精製(5000g)を5回行った。さらにPBSを1mL加えて攪拌し、10μlを96穴ウェルプレートに移して基質TMBZを用いて発色試験を行い、450nmで測定を行った。その結果を図9に示す。どちらのリガンドを用いた場合でも、高選択的に目的抗体を捕捉していることが分かった。
【0074】
「比較例1」
参考例2で得られた2−アミノエチルメタクリレート−N−イソプロピルアクリルアミド−メチレンビスアクリルアミド粒子0.1gにホスホリルコリンによる修飾をしないで実施例と同じ操作を行った場合の結果を図10に示す。実施例1に比べどちらのリガンドを用いた場合でも、選択性が低いことが分かった。
【産業上の利用可能性】
【0075】
本発明のアフィニティー粒子は、分離を希望する目的物質のみを捕捉するため、選択性が極めて高い。そして、その優れた分散性と、液体試料からの分離が極めて容易である。また、塩による凝集も少ないので、簡便かつ高精度に目的物質を分離することが可能である。また、免疫沈降法、ラテックス凝集法などの試薬としても、塩の影響を受けることなく、感度良く検出が可能であることから、目的物質の高精度分離、検出が要求される生体関連の産業に有用である。
【図面の簡単な説明】
【0076】
【図1】本発明のアフィニティー粒子と従来のアフィニティー粒子による蛋白質捕捉の選択性の違いを示す模式図である。
【図2】合成例1で製造した化合物の構造式及びNMRスペクトルである。
【図3】合成例2で製造した化合物の構造式及びNMRスペクトルである。
【図4】従来のアフィニティー粒子の水中及び食塩水での粒度分布を示すグラフである。
【図5】本発明のアフィニティー粒子の水中及び食塩水での粒度分布を示すグラフである。
【図6】参考例1で作製したスチレン−グリシジルメタクリレート粒子とPC粒子(A)に対する蛋白質吸着量を比較するグラフである。
【図7】参考例2で作製したスチレン−グリシジルメタクリレート粒子とPC粒子(B)、(C)に対する蛋白質吸着量を比較するグラフである。
【図8】参考例3で作製したアガロースビーズとPC粒子(D)に対する蛋白質吸着量を比較するグラフである。
【図9】実施例1のアフィニティー粒子の抗体選択性を比較するグラフである。
【図10】比較例1のアフィニティー粒子の抗体選択性を比較するグラフである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記式(1)で示されるホスホリルコリン基を有機粒子の表面に共有結合で有することを特徴とするアフィニティー粒子。
【化1】

(1)
【請求項2】
下記式(1)で示されるホスホリルコリン基を有機粒子の表面に共有結合で有し、ある目的物質に特異的に親和性を持つリガンドと結合可能な反応基又は吸着基を有機粒子の表面に共有結合又は吸着で有することを特徴とするアフィニティー粒子。
【化2】

(1)
【請求項3】
下記式(1)で示されるホスホリルコリン基を有機粒子の表面に共有結合で有し、ある目的物質に特異的に親和性を持つリガンドを有機粒子の表面に共有結合又は吸着で有することを特徴とするアフィニティー粒子。
【化3】

(1)
【請求項4】
前記有機粒子が、スチレン、メタクリル酸グリシジル、(メタ)アクリル酸、N−アルキルアクリルアミド、(メタ)アクリル酸アルキルのうち1種または2種以上のモノマー単位を重合体中に含む合成粒子、又は、アガロース若しくはセファロースからなる多糖類であって、その平均粒子径が20nm〜500μmであることを特徴とする請求項1〜3記載のアフィニティー粒子。
【請求項5】
前記リガンドが、各種抗体、抗原、酵素、基質、レセプター、ペプチド、DNA、RNA、アプタマー、プロテインA、プロテインG、アビジン、ビオチン、キレート化合物、各種金属イオンからなる群から選ばれた一種又は二種以上のリガンドであることを特徴とする請求項1〜4記載のアフィニティー粒子。
【請求項6】
(1)請求項1又は2記載のアフィニティー粒子に任意のリガンドを結合させる第1工程、(2)第1工程で製造したアフィニティー粒子を、任意のリガンドにより選択的に捕捉される目的物質を含む液体試料に分散させる第2工程、(3)アフィニティー粒子から捕捉した目的物質を回収する第3工程を含むことを特徴とする、有機粒子による目的物質のアフィニティー分離方法。
【請求項7】
(1)請求項3記載のアフィニティー粒子を、任意のリガンドにより選択的に捕捉される目的物質を含む液体試料に分散させる第1工程、(2)アフィニティー粒子から捕捉した目的物質を回収する第2工程を含むことを特徴とする、有機粒子による目的物質のアフィニティー分離方法。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記式(1)で示されるホスホリルコリン基を有機粒子の表面に共有結合で有し、ある目的物質に特異的に親和性を持つリガンドと結合可能な反応基又は吸着基を有機粒子の表面に共有結合又は吸着で有することを特徴とするアフィニティー粒子であって、前記有機粒子が、スチレン、メタクリル酸グリシジル、(メタ)アクリル酸、N−アルキルアクリルアミド、(メタ)アクリル酸アルキルのうち1種または2種以上のモノマー単位を重合体中に含む合成粒子、又は、アガロース若しくはセファロースからなる多糖類であり、その平均粒子径が20nm〜500μmであることを特徴とするアフィニティー粒子。
【化2】

(1)
【請求項2】
下記式(1)で示されるホスホリルコリン基を有機粒子の表面に共有結合で有し、ある目的物質に特異的に親和性を持つリガンドを有機粒子の表面に共有結合又は吸着で有することを特徴とするアフィニティー粒子であって、前記有機粒子が、スチレン、メタクリル酸グリシジル、(メタ)アクリル酸、N−アルキルアクリルアミド、(メタ)アクリル酸アルキルのうち1種または2種以上のモノマー単位を重合体中に含む合成粒子、又は、アガロース若しくはセファロースからなる多糖類であり、その平均粒子径が20nm〜500μmであることを特徴とするアフィニティー粒子。
【化3】

(1)
【請求項3】
前記リガンドが、各種抗体、抗原、酵素、基質、レセプター、ペプチド、DNA、RNA、アプタマー、プロテインA、プロテインG、アビジン、ビオチン、キレート化合物、各種金属イオンからなる群から選ばれた一種又は二種以上のリガンドであることを特徴とする請求項1または2記載のアフィニティー粒子。
【請求項4】
前記有機粒子の表面にアミノ基を直接的に導入し、アミノ基を有する粒子に対し、グリセロホスホリルコリンの酸化的開裂反応により得られたアルデヒド体又はハイドレート体を、還元的アミノ化反応によって、前記式(1)のホスホリルコリン基を粒子表面に直接的に付加させるか、または、上記アミノ基に下記式(2)で示される化合物を反応させた
ことを特徴とする請求項1、2または3記載のアフィニティー粒子。
【化9−1】

(2)
【請求項5】
前記有機粒子の粒子表面に存在する水酸基と、下記式(3)または(4)の化合物のSi−OMeから脱水によって化学結合を形成させることによって、前記式(1)のホスホリルコリン基を粒子表面に直接的に付加させたことを特徴とする請求項1、2または3記載のアフィニティー粒子。
【化10−1】

(3)

【化11−1】

(4)
式中、mは2〜6、nは1〜4である。OMeは、OEt、Clであってもよい。またSiと結合するOMeまたはOEtまたはClの内、2つまではメチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、イソブチル基でも良い。
【請求項6】
前記有機粒子の粒子表面に存在する水酸基と、下記式(2)の化合物を反応させたことを特徴とする請求項1、2または3記載のアフィニティー粒子。
【化9−2】

(2)
【請求項7】
前記有機粒子の表面にカルボキシル基を直接的に導入し、カルボキシル基を有する粒子に対し、下記式(9)で示されるホスホリルコリン含有化合物を常法により反応させて、ホスホリルコリン基を酸アミド結合させて、前記式(1)のホスホリルコリン基を粒子表面に直接的に付加させたことを特徴とする請求項1、2または3記載のアフィニティー粒子。
【化16−1】

(9)
【請求項8】
(1)請求項1記載のアフィニティー粒子に任意のリガンドを結合させる第1工程、(2)第1工程で製造したアフィニティー粒子を、任意のリガンドにより選択的に捕捉される目的物質を含む液体試料に分散させる第2工程、(3)アフィニティー粒子から捕捉した目的物質を回収する第3工程を含むことを特徴とする、有機粒子による目的物質の選択的なアフィニティー分離方法。
【請求項9】
(1)請求項2記載のアフィニティー粒子を、任意のリガンドにより選択的に捕捉される目的物質を含む液体試料に分散させる第1工程、(2)アフィニティー粒子から捕捉した目的物質を回収する第2工程を含むことを特徴とする、有機粒子による目的物質の選択的なアフィニティー分離方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2006−7203(P2006−7203A)
【公開日】平成18年1月12日(2006.1.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−138551(P2005−138551)
【出願日】平成17年5月11日(2005.5.11)
【出願人】(000001959)株式会社資生堂 (1,748)
【Fターム(参考)】