説明

アプリケータキット

【課題】粒状骨置換材料、自己又は異種海綿骨、脱塩された骨マトリクス又はこれらの混合物を提供するための単純なアプリケータキットを開発する。
【解決手段】前端部にブレード付きシャッタ13を有しかつ後端部に第1の固定手段15が装備された中空管12と、一方の端部にハンドル21を有しかつ反対側の端部にプランジャ22を有するロッド2とを有し、該ロッド2が案内スリーブ内に配置されており、該案内スリーブはロッド2に沿って移動することができ、案内スリーブが、管12の内径よりも小さいか又は等しい直径と、アプリケータ1の固定手段15に可逆形式で結合することができる第2の固定手段23とを有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、粒状骨置換材料、自家又は異種海綿骨、脱塩骨マトリクス又はこれらの混合物を提供するためのアプリケータ及び前記アプリケータを含むアプリケータキットに関する。
【背景技術】
【0002】
骨欠損を自家海綿骨で埋めることは未だ慣習である。しかしながら、比較的小さな体積の自家海綿骨しか患者から収穫することができない。これは、その良好な骨一体化習性にもかかわらず、自家海綿骨の利用を制限する。この問題に対する一つの可能なソリューションは、自家海綿骨を合成又は半合成骨置換材料で増強することである。最も一般的に使用される骨置換材料は現在では、β−リン酸三カルシウム、ヒドロキシルアパタイト及びこれらの混合物のようなリン酸カルシウムである。これらは、概して多孔質又は非多孔質の顆粒として存在する。その他に、硫酸カルシウムをベースとする特定の骨置換材料も知られている。
【0003】
無菌容器において単に海綿骨と骨置換材料とを混合することによって、手術室において自家海綿骨と粒状骨置換材料とを混合することが慣習である。
【0004】
さらに、骨置換材料を海綿骨又は血液又は多血小板血漿(PRP)と混合するための多数の装置が開示されている。
【0005】
国際公開第2002/068010号は、吸い込まれた骨髄を多孔質の骨置換材料と容易に混合することができる装置を提案している。吸い込まれた骨髄は、2つのシリンジを使用して骨置換材料を通じて押し通されるか又は吸い込まれる。
【0006】
同様の効果を有する装置が米国特許第6049026号明細書から公知である。前記装置は、骨置換材料を取り上げる容器と、前記容器の上方に配置された第2の容器とから成る。第2の容器の目的は、吸い込まれた骨髄を取り上げることである。さらに、第3の容器が第1の容器の下方に配置されている。第2の弁が第1の容器と第2の容器との間に配置されている。別の弁が第1の容器と第3の容器との間に配置されている。第1の弁が開かれた後、吸い込まれた骨髄が第1の容器に流入し、骨置換材料を浸す。次いで、第2の弁が開かれ、過剰な骨髄が第3の容器へ流入する。
【0007】
極めて単純な装置が米国特許第7776594号明細書に開示されている。混合容器は、端部に2つのスクリューキャップを備えた管から成る。骨置換材料は単に管に導入され、次いで、吸い込まれた骨髄が注入によって付加される。
【0008】
米国特許第6793660号明細書は、骨置換材料を導入するための装置を開示しており、この装置は、雌ねじ山を有するシリンジと、雄ねじ山を有する回転可能なプランジャとから成る。骨置換材料は単にプランジャを回転させることによってシリンジヘッドの方向に絞り出される。一つの問題は、前記システムの極めて大きな排出力である。なぜならば、これは、顆粒骨置換材料を機械的に損傷するからである。さらに、自家海綿骨又は自家海綿骨と骨置換材料との混合物が使用される場合、これらが強い力に曝されると海綿骨細胞が損傷される恐れがある。
【0009】
手術室において繰り返し生ずる問題は、粒状骨材料、又は海綿骨又は血液又は多血小板血漿を含むその混合物が、単にスプーン、へら、又はシリンジヘッドが切り取られた変更されたシリンジを用いて導入するのが困難であるということである。特に、長い管状の骨における空洞の存在は問題である。したがって、長いシリンジ状のアプリケータを有することが好ましい。さらに、血液又は血液成分を有する混合物を、手術スタッフ及び手術野を汚染することなく、スプーン及びシリンジを使用することによって、変更されたシリンジに満たすことは、衛生の問題に関連する。これまで、混合容器から適切なシリンジ状アプリケータへの骨置換材料又はその混合物の単純で、安全でかつ衛生的な移し替えは知られていなかった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】国際公開第2002/068010号
【特許文献2】米国特許第6049026号明細書
【特許文献3】米国特許第7776594号明細書
【特許文献4】米国特許第6793660号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
本発明は、粒状骨置換材料、自己又は異種海綿骨、脱塩骨マトリクス又はこれらの混合物を提供するための単純なアプリケータキットを開発するという課題に基づき、このキットは従来技術の欠点を克服する。
【課題を解決するための手段】
【0012】
前記課題は、請求項1に係るアプリケータと、請求項10に係るアプリケータキットとによって達成された。
【0013】
本発明は、アプリケータであって、一方の端部におけるブレード付きシャッタ及び他方の端部における第1の固定手段を有する中空管を備え、一方の端部におけるハンドル及び反対側の端部におけるプランジャを有するロッドを備え、このロッドは、ロッドに沿って移動することができる案内スリーブ内に配置されており、案内スリーブが中空管の内径よりも小さいか又は等しい直径を有しており、アプリケータの固定手段に可逆形式で取り付け取り外し可能に結合することができる第2の固定手段を備える、アプリケータに関する。
【0014】
本発明は、アプリケータキットであって、先行する請求項のいずれか1項に記載のアプリケータと、混合カップとを含み、該混合カップが、下側において少なくとも1つの開口を有し、該開口が、外側において第2のスリーブによって包囲されており、第2のスリーブが、管の後端部における内径よりも小さいか又は等しい直径を有し、アプリケータの固定手段に可逆形式で結合することができる第3の固定手段を有する、アプリケータキットに関する。
【0015】
発明の範囲において、アプリケータの"後端部"とは、ロッドが導入される端部を示すと理解されるのに対し、"前端部"とは、顆粒骨置換材料が絞り出される、ブレード付きシャッタが設けられた端部を示すと理解される。
【0016】
原則として、アプリケータ管は、様々な横断面のうちのいずれかを有すると考えることができるが、円形の横断面を有する管が好適である。同様に、拡径された部分も、様々な横断面を有していてよい。拡径された部分の横断面は、必ずしも管の横断面と同じ形状でなくてもよいが、横断面の面積は管の横断面の面積よりも大きい。さらに、横断面が円形であると有利である。
【0017】
ロッド及び管は、医療用シリンジの場合と同様にアプリケータに配置されている。しかしながら、2つの設計エレメントは固定手段を介して互いに固定されている。広範囲の固定手段をこの関連で適用することができる。バヨネットキャッチは特に有利であることが証明された。なぜならば、バヨネットキャッチは、迅速に閉鎖することができかつ同様に迅速に解放することができるからである。しかしながら、その他の締結手段、例えばねじ込み式閉鎖手段も考えられる。
【0018】
固定手段は、管の後端部と、ロッドの案内スリーブとに配置されている。ロッドは案内スリーブ内で前後に移動することができる。好適には、管の後端部は拡径されており、管よりも大きな直径を有するシリンダ部分を形成している。この場合、案内スリーブは好適には、拡径部の内径に相当するか又はそれよりも僅かに小さい外径を有する。次いで、固定手段は、案内スリーブの外周面と、シリンダセクションの内周面とに取り付けられている。
【0019】
ブレード付きシャッタは、自家海綿骨のような質量を排出するのに理想的である。質量に圧力が加えられたときだけ、質量はブレードを外方へ押し付け、骨置換材料を排出する。ブレードが先端部を形成していることが好ましい。ブレードの間の距離は、顆粒に適応させられているべきであり、閉鎖された状態においては、材料が出ないように十分に小さくなっているべきである。ブレードを曲げて開放させると、材料がブレードから出るための十分に大きな開口を形成する。したがって、"閉鎖された状態"とは、必ずしもブレードが液密又は気密の閉鎖を形成することを意味するわけではなく、骨置換材料が出ることができないことを意味する。
【0020】
好適には、アプリケータの中空管は、4〜15mm、特に好適には8〜13mm、さらに特に好適には11〜13mmの外径を有する。ブレード付きシャッタを有する前端部から円筒形の拡径部の端部までの長さは、好適には、20〜40cm、特に好適には25〜35cm、さらに特に好適には28〜32cmである。
【0021】
したがって、その長さ及び直径の点でアプリケータの設計は、アプリケータが、いかなる困難をも生ずることなく、頸骨及び大腿骨のような管状骨に導入され、次いで、いかなる困難をも生ずることなく、アクセス部から最も遠い管状骨の空洞内でさえも粒状材料が安全に導入され、これにより、空洞は最大限に満たされることができるようになっている。
【0022】
好適には、アプリケータは、ある程度の弾性を有する材料から形成されている。材料は、例えばポリプロピレンのように、生体適合性であるべきである。弾性材料を選択することにより、アプリケータが挿入されるときに、アプリケータは管状骨の解剖学依存湾曲に従うことができる。
【0023】
好適には、混合スプーン又は混合へらが混合容器内に配置されており、混合へらの端部に、混合へらの軸線に対して垂直に配置されかつその断面積が混合カップの開口の横断面積よりも小さいか又は等しい二次元ストッパを有する混合へらを有することが特に好適である。
【0024】
アプリケータキットを使用することによる粒状骨置換材料、自己又は異種海綿骨、脱塩骨マトリクス又はこれらの混合物の提供は、まず、粒状骨置換材料、自己又は異種海綿骨、脱塩骨マトリクス又はこれらの混合物を混合カップに満たすことによって進行する。スライダは、このプロセスの間混合カップの開口を閉鎖している。次いで、混合カップは、コネクタを用いて円筒形拡径部に導入され、固定手段は可逆形式で互いに結合される。その後、混合カップの開口が開放させられて材料がアプリケータの中空管内に滴下するように、スライダが引っ張られる。適用可能であれば、混合へらのストッパを用いて材料をアプリケータの中空空間内へ詰め込むことができる。その後、アプリケータと混合カップとの間の結合は、固定手段の解放により解放される。次いで、案内スリーブを備えたロッドは、案内スリーブがアプリケータの拡径部に配置されるように挿入される。管及びロッドにおける固定手段は互いに係合させられる。ロッドを摺動させることにより材料はブレード付きシャッタの方向に押し込まれ、ブレード付きシャッタが曲がって開放し、材料が排出される。
【0025】
本発明によるアプリケータキットは、従来技術と比較して多くの利点を提供する。
【0026】
実際の適用の前に、アプリケータキットにより、粒状骨置換材料は、自家又は異種海綿骨又は脱塩骨マトリックスと混合させられ、クリーンにかつ安全にアプリケータへ移し替えられる。
【0027】
アプリケータは手で容易にかつ安全に作動させることができる。単にロッドを押すことにより、骨置換材料は、粒状骨置換材料が鋭いエッジによって損傷されることなくアプリケータから絞り出される。
【0028】
この手段により、慣用のアプリケータの使用に固有の幾つかの問題が回避される。骨材料は注入用管によって安全に取り上げられ、ブレード付きシャッタによって保持され、これにより、骨置換材料はアプリケータから誤って出ることはできず、これにより、実際の適用の前に手術野を汚染することはできない。骨を包囲する柔軟な組織から顆粒材料を除去しなければならないことは、外科手術を妨害し、外科手術時間を不必要に延長させる。さらに、管に固定されたロッドは、ロッドが手術野又は手術室の床に落下してこの落下が手術の進行を妨害することを防止する。
【0029】
以下に添付の図面に基づいて典型的な形態で発明を説明する。
【図面の簡単な説明】
【0030】
【図1】詳細図及び部分断面図の形式でアプリケータの好適な実施形態を示している。
【図2】アプリケータの別の詳細図を示している。
【図3】アプリケータキットの混合カップの斜視図を示している。
【発明を実施するための形態】
【0031】
図1は、アプリケータ1の部分的な断面図を示している。アプリケータ1は中空管12を有しており、この中空管には自家海綿骨が配置されている。管12は、後端部に拡径された円筒状部分14を有しており、この円筒状部分14には案内スリーブが挿入されている。案内スリーブの目的は、プランジャ22が固定されたロッド2を案内することである。案内スリーブはピン23を有しており、このピン23は、拡大された円筒状部分14におけるL字形凹所15と協働する。
【0032】
ロッド2に圧力を加えることにより、ロッドに配置されたプランジャ22は前方へシフトさせられ、自家海綿骨はブレード付きシャッタ13に対して押し付けられる。ブレード付きシャッタ13は弾性材料から形成されているので、海綿骨がブレードに対して押し付けられた時にそれぞれのブレードが外方へ曲げられるようになっている。
【0033】
図2は、ハンドル及び固定手段が強調されたアプリケータ1の部分を示している。ロッド2はアプリケータ1に完全に挿入されており、ハンドル21のみが見えたままである。案内スリーブに固定されたピン23はL字形凹所15における所定の位置に固定されている。取扱いを単純にするために拡径部14には第2のハンドル11が設けられている。この手段により、2つのハンドルを互いに引き寄せることによって、ユーザはロッド2に力を加えることができる。
【0034】
アプリケータの中空管12は、ロッド2と組み立てる前にまず満たされる必要がある。この目的のために、中空管12は、図3に示したような混合容器若しくは混合カップ3に結合される。混合カップ3は、ロッド2と同じ固定手段33を有しており、この場合、この固定手段は、バヨネット式閉鎖手段のためのピンであり、このピンによって混合カップ3をアプリケータ管12にしっかりと結合することができる。混合カップ3は漏斗と同様であり、排出開口はスライダ31によって閉鎖することができる。充填される材料がへら34を使用することにより混合カップ3において混合された後、スライダ31がずらされて排出開口が開放され、へら34を使用することにより材料が排出開口及び排出管32を介して管内へ絞り出される。
【符号の説明】
【0035】
1 アプリケータ
11 ハンドル
12 管
13 ブレード付きシャッタ
14 拡径された部分
15 第1の固定手段、案内溝
2 ロッド
22 ハンドル
22 プランジャ
23 第2の固定手段、ピン
3 混合カップ
31 閉鎖手段、スライダ
32 排出管
33 第3の固定手段、ピン
34 混合へら

【特許請求の範囲】
【請求項1】
骨置換材料のためのアプリケータ(1)において、
前端部にブレード付きシャッタ(13)を有しかつ後端部に第1の固定手段(15)が装備された中空管(12)と、
一方の端部にハンドル(21)を有しかつ反対側の端部にプランジャ(22)を有するロッド(2)とを有し、該ロッド(2)が案内スリーブ内に配置されており、該案内スリーブはロッド(2)に沿って移動することができ、案内スリーブが、中空管(12)の内径よりも小さいか又は等しい直径と、アプリケータ(1)の固定手段(15)に可逆形式で結合することができる第2の固定手段(23)とを有することを特徴とする、骨置換材料のためのアプリケータ(1)。
【請求項2】
管の後端部に拡径された部分(14)が設けられており、前記案内スリーブが、拡径された部分(14)の内径よりも小さいか又は等しい直径を有する、請求項1記載のアプリケータ。
【請求項3】
第1の固定手段(15)及び第2の固定手段(23)が共同してバヨネット式閉鎖手段を形成している、請求項1又は2記載のアプリケータ。
【請求項4】
第1の固定手段(15)及び第2の固定手段(24)が共同してねじ込み式閉鎖手段を形成している、請求項1又は2記載のアプリケータ。
【請求項5】
ブレード付きシャッタ(13)が先端部を形成している、請求項1から4までのいずれか1項記載のアプリケータ。
【請求項6】
前記中空管(12)が、4〜15mmの外径を有する、請求項1から5までのいずれか1項記載のアプリケータ。
【請求項7】
前記中空管(12)が、8〜13mmの外径を有する、請求項6記載のアプリケータ。
【請求項8】
前記中空管(12)が、20〜40cmの、ブレード付きシャッタ(13)を有する前端部から後端部までの長さを有する、請求項1から7までのいずれか1項記載のアプリケータ。
【請求項9】
前記中空管(12)が、25〜35cmの、ブレード付きシャッタ(13)を有する前端部から後端部までの長さを有する、請求項1から8までのいずれか1項記載のアプリケータ。
【請求項10】
アプリケータキットにおいて、
請求項1から9までのいずれか1項記載のアプリケータ(1)と、
混合カップ(3)とを備え、該混合カップは、下側に少なくとも1つの開口を有しており、該開口が、外側において排出管(32)によって包囲されており、該排出管(32)が、拡径された部分(14)の内径よりも小さいか又は等しい直径を有し、かつアプリケータ(1)の固定手段(15)に可逆形式で結合することができる第3の固定手段(33)を有することを特徴とする、アプリケータキット。
【請求項11】
混合カップ(3)の開口を閉鎖するために使用することができる閉鎖手段(31)を有する、請求項10記載のアプリケータキット。
【請求項12】
前記閉鎖手段(31)がロックスライダである、請求項11記載のアプリケータキット。
【請求項13】
混合スプーン(34)又は混合へらを有し、該混合スプーン(34)又は混合へらが、一方の端部に、混合スプーン又は混合へらの軸線に対して垂直に配置された二次元ストッパを有しており、該二次元ストッパの横断面積が、混合カップの排出管(32)の開口の横断面積よりも小さいか又は等しい、請求項10から12までのいずれか1項記載のアプリケータキット。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate


【公開番号】特開2013−22465(P2013−22465A)
【公開日】平成25年2月4日(2013.2.4)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2012−160757(P2012−160757)
【出願日】平成24年7月19日(2012.7.19)
【出願人】(508316210)ヘレーウス メディカル ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツング (21)
【氏名又は名称原語表記】Heraeus Medical GmbH
【住所又は居所原語表記】Philipp−Reis−Str. 8/13, D−61273 Wehrheim, Germany
【Fターム(参考)】