説明

アミンボランの合成

【課題】水素化ホウ素出発物質のための追加の溶媒を使用することなく、水素化ホウ素ナトリウムおよびアミン塩からアミンボランを製造するより効率的な方法を提供する。
【解決手段】水素化ホウ素アルカリ金属からアミンボランを製造する方法。水素化ホウ素アルカリ金属は、水とアミンを含む溶媒中で、0.95〜1.05当量のアミン塩と反応させられる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、概して、水素化ホウ素ナトリウムおよびアミン塩からアミンボランを製造する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
水素化ホウ素ナトリウムおよびアミン塩からアミンボランを製造する方法は周知であり、この反応は、通常、水素化ホウ素ナトリウムが可溶性である有機溶媒中で行われる。例えば、米国特許第6,060,623号は有機溶媒、例えば、1,2−ジメトキシエタン中での水素化ホウ素ナトリウムおよびアミン塩からのアミンボランの製造を記載する。このプロセスにおいては、最初の反応混合物は、アミンボラン生成物の単離の前に溶媒を除去するために蒸留されなければならない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】米国特許第6,060,623号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明により解決される課題は、水素化ホウ素出発物質のための追加の溶媒を使用することなく、水素化ホウ素ナトリウムおよびアミン塩からアミンボランを製造するさらに効率的な方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は水素化ホウ素アルカリ金属およびアミン塩からアミンボランを製造する方法に関する。この方法は、(i)アミン塩の塩基の形態であるアミンおよび(ii)水を含む溶媒中で、水素化ホウ素アルカリ金属を0.95〜1.05当量のアミン塩と反応させることを含み;重量比(前記溶媒中の全ての水、対、水素化ホウ素アルカリ金属)が0.5:1〜2.7:1であり;前記溶媒は水およびアミン以外の溶媒を5重量%より多く含まない。
【発明を実施するための形態】
【0006】
他に特定されない限りは、本明細書における全てのパーセンテージは重量パーセンテージとして示され、温度は℃単位である。100万あたりの部(ppm)での量は重量/体積をベースにする。水素化ホウ素アルカリ金属が二水和物として添加される場合には、水素化ホウ素アルカリ金属の量に対する量の割合は、含まれる水素化ホウ素アルカリ金属に対するのであり、二水和物に対するのではない。
【0007】
「アルキル」基は、1〜20の炭素原子を有し、線状、分岐または環式でありうる飽和ヒドロカルビル基である。本発明のある実施形態においては、アルキル基は線状または分岐であり、あるいはそれらは線状である。ある実施形態においては、アルキル基は1〜6つの炭素原子、あるいは1〜4つの炭素原子を有する。「炭化水素溶媒」は、炭素および水素だけを本質的に含み、0℃、100kPaの圧力で液体である、あらゆる物質である。炭化水素溶媒は炭素および水素以外の元素を不純物として痕跡量、すなわち、0.5%未満含むことができる。本発明のある実施形態においては、炭化水素溶媒は脂肪族炭化水素、脂環式炭化水素、芳香族炭化水素、またはこれらの混合物;あるいは飽和脂肪族炭化水素および/または芳香族炭化水素、あるいはC−C16飽和脂肪族炭化水素および/またはC−C20芳香族炭化水素である。芳香族炭化水素は芳香環を含むものであり、これはアルキル置換基を有しうる。特に好ましい炭化水素溶媒には、鉱油、トルエン、キシレン、エチルベンゼン、C−C16飽和脂肪族炭化水素、およびこれらの混合物があげられる。
【0008】
水素化ホウ素アルカリ金属とアミンとの反応は下記の式における一般的な形態で示される:
MBH+HA+RN→RNBH+MA+H
式中、Mはアルカリ金属カチオンであり;Aは鉱酸、ホウ酸またはカルボン酸に由来する共役塩基であり;Rは同じかまたは異なるアルキル基および/または水素を表すことができるが、ただし、少なくとも2つのアルキル基が存在する。好ましくは、このアルキル基はC−Cアルキル基であり、あるいはメチルもしくはエチルである。好ましくは、Rは水素を表さず、アミンはトリアルキルアミンである。好ましくは、Mはナトリウムまたはカリウムである。好ましくは、酸すなわちHAは塩酸または硫酸である。ある実施形態においては、アミン塩酸塩があらかじめ形成されており、式は以下の通りになる:
MBH+RNHA→RNBH+MA+H
これらの実施形態においては、好ましくは遊離アミンおよび水が溶媒として添加される。
【0009】
溶媒は、この用語が本明細書において使用される場合には、存在する全ての水、例えば、水素化ホウ素アルカリ金属からの水和の水、およびアミン塩がアミンおよび酸からその場で生じるこれらの実施形態において水性酸に存在するあらゆる水を含む。好ましくは、重量比(溶媒中の水、対、水素化ホウ素アルカリ金属)は、少なくとも0.7:1、あるいは少なくとも0.8:1、あるいは少なくとも0.9:1、あるいは少なくとも1:1、あるいは少なくとも1.5:1であり;好ましくはその比は2.5以下:1、あるいは2.2以下:1、あるいは2以下:1である。
【0010】
好ましくは、反応は5℃から、溶媒の大気圧沸点より5℃下までの範囲の温度で起こる。ある実施形態においては、その温度は少なくとも10℃、あるいは少なくとも15℃であり;好ましくは100℃以下、あるいは70℃以下、あるいは50℃以下である。
【0011】
本発明のある実施形態においては、溶媒は水および前記アミン以外の溶媒を5%より多く含まない。これらの実施形態においては、好ましくは、重量比(溶媒中の全ての水、対、水素化ホウ素アルカリ金属)は、0.5:1〜2.7:1、あるいは0.8:1〜2.7:1、あるいは1:1〜2.7:1、あるいは1.5:1〜2.7:1、あるいは1:1〜2.5:1、あるいは1.5:1〜2.5:1である。これらの実施形態においては、好ましくは水素化ホウ素アルカリ金属は二水和物の形態で導入される水素化ホウ素ナトリウムである。これらの実施形態においては、好ましくは、重量比(遊離アミン、すなわち塩の形態ではないアミン、対、水素化ホウ素アルカリ金属)は1:1〜6:1、あるいは1.5:1〜6:1、あるいは2:1〜6:1、あるいは2:1〜5:1、あるいは2.5:1〜4.5:1である。
【0012】
本発明のある実施形態においては、溶媒は炭化水素溶媒または炭化水素溶媒の組み合わせをさらに含む。これらの実施形態においては、好ましくは、重量比(全ての水、対、水素化ホウ素アルカリ金属)は0.5:1〜2.5:1、あるいは0.5:1〜2:1、あるいは0.7:1〜2:1、あるいは0.7:1〜1.5:1である。これらの実施形態においては、好ましくは、重量比(炭化水素溶媒、対、水素化ホウ素アルカリ金属)は、1.5:1〜12:1、あるいは2:1〜12:1、あるいは2:1〜10:1、あるいは1.5:1〜8:1である。これらの実施形態においては、好ましくは、炭化水素溶媒は反応物質および溶媒の合計重量の25重量%〜70重量%、あるいは30重量%〜65重量%、あるいは30重量%〜60重量%、あるいは35重量%〜60重量%である。これらの実施形態においては、好ましくは、全てのアミン、すなわち遊離アミン+アミン塩に含まれるアミンの重量、は反応物質および溶媒の合計重量の少なくとも20重量%、あるいは少なくとも22重量%、あるいは少なくとも24重量%;好ましくは、40重量%以下、あるいは36重量%以下、あるいは34重量%以下である。これらの実施形態においては、好ましくは、全ての水、すなわち遊離の水+水性酸または水和物に含まれる水の重量は、反応物質および溶媒の合計重量の少なくとも5重量%、あるいは少なくとも6重量%、あるいは少なくとも7重量%、あるいは少なくとも8重量%;および好ましくは、15重量%以下、あるいは14重量%以下、あるいは13重量%以下、あるいは12重量%以下である。
【0013】
好ましくは、溶媒は、水素化ホウ素アルカリ金属が少なくとも2%の範囲まで可溶性である溶媒を5%以下、あるいは2%以下含む。水素化ホウ素アルカリ金属が可溶性である溶媒には、C−C脂肪族アミン、C−C環式アミン、C−Cジアミン、C−Cアルカノールアミン、C−C10芳香族アミン、エチレングリコールおよびエチレングリコールオリゴマーのC−C12メチルエーテル、並びにC−Cアミドがあげられる。脂肪族アミンには、モノ−、ジ−およびトリ−アルキルアミン、特に、モノアルキルアミン、特に第1級および第2級モノアルキルアミンがあげられる。芳香族アミンにはピリジンがあげられる。最良のアミド溶媒には、N,N−ジアルキルアミド、特に、脂肪族アミドが挙げられる。一般的に使用される溶媒には、n−プロピルアミン、イソプロピルアミン、イソブチルアミン、sec−ブチルアミン、n−ブチルアミン、n−ペンチルアミン、1,2−ジメトキシエタン、ジエチレングリコールジメチルエーテル、ピリジン、ジメチルホルムアミド、およびジメチルアセトアミドが挙げられる。
【実施例】
【0014】
トルエン中、室温での、固体水素化ホウ素ナトリウムと固体トリエチルアミン塩酸塩(NEtHCl)
固体添加漏斗、温度計および窒素ガスパージを含む3つ首フラスコに、10グラムのSBH AFグラン(Grans)(80メッシュより大きく40メッシュより小さい粒子サイズを有するSBH)を入れた。次いで、100mLの無水トルエンおよび30mLのNEtが添加された。このスラリーが攪拌され、1当量の固体NEtHCl(36.2g)を添加した。添加プロセス中に気体は発生しなかった。反応は停止された。反応なし;収率=0%。
【0015】
イソプロピルアミン中の水素化ホウ素ナトリウムおよび固体NEtHCl
固体添加漏斗、温度計および窒素ガスパージを含む3つ首フラスコに、10グラムのSBH AFグラン、90グラムのイソプロピルアミンおよび50mLのトリエチルアミンを入れた。得られた溶液は攪拌され、1当量の固体NEtHCl(36.2g)が3時間にわたって添加された。固体NEtHClの添加の際に気体が瞬時に生じた。添加が完了した後、スラリーはさらに3時間攪拌され、そのとき50mLの脱イオン水が添加された。得られた2層の溶液が分離漏斗に入れられた。イソプロピルアミン相および水相の双方がHおよび11B NMRで分析された。イソプロピルアミン上層は98%のNHPrBHおよび2%のNEtBHを含んでいた。
NEtBHについての分光データ:11B NMR(トルエン d)、δ−30.8ppm、(q,JB−H=98.3Hz,1B)。H(トルエン d)δ=2.32ppm(q,j1−3=7.2Hz,6H)δ0.84ppm、(t,JH−H=7.3Hz,9H)。
NHPrBHについての分光データ:11B(トルエン d)=−38.7ppm、(q,JB−H=94.5Hz,1B)。H(トルエン d)δ=2.66ppm(sep,1H,JH−H=6.45Hz);δ=2.27ppm(dd,JH−H=4.5Hz,2H);δ1.42ppm(s,3H);δ0.92ppm(d,6H,JH−H=9.26Hz)。
【0016】
合成水素化ホウ素ナトリウム二水和物と100mLトルエンおよび固体NEtHCl
固体添加漏斗、温度計および窒素ガスパージを含む3つ首フラスコに、10グラムのSBH AFグラン、10グラムの水および0.1グラムのNaOHを入れた。固体の塊が形成されるまで、スラリーは24時間攪拌された。次いで、100mLの無水トルエンおよび30mLのNEtが添加された。このスラリーは攪拌され、1当量の固体NEtHCl(36.2g)が、反応温度が40℃を超えて上昇しないように添加された。
反応温度が30℃を超えたときに、多量の気体が発生した。6時間後、60mLの水が添加され、反応ポット中の全ての固体を溶解した。得られた2相の溶液は分離漏斗に入れられ、下層が新しいトルエン100mLで3回洗浄された。トルエン相の全てが合わせられた。トルエン相および水相の双方がHおよび11B NMRで分析された。
NEtBHについての分光データ:11B NMR(トルエン d)、δ−30.8ppm、(q,JB−H=98.3Hz,1B)。H(トルエン d)δ=2.32ppm(q,j1−3=7.2Hz,6H)δ0.84ppm、(t,JH−H=7.3Hz,9H)。
【0017】
【表1】

【0018】
合成水素化ホウ素ナトリウム二水和物と50mLのトルエンおよび固体NEtHCl
固体添加漏斗、温度計および窒素ガスパージを含む3つ首フラスコに、10グラムのSBH AFグラン、および0.1グラムのNaOHを含有する10グラムの水を入れた。固体の塊が形成されるまで、スラリーは24時間攪拌された。次いで、50mLの無水トルエンおよび10mLのNEtが添加された。このスラリーは攪拌され、1当量の固体NEtHCl(36.2g)が、反応温度が40℃を超て上昇しないように添加された。
反応温度が30℃を超えたときに、多量の気体が発生した。6時間後、60mLの水が添加され、反応ポット中の全ての固体を溶解した。得られた2相の溶液は分離漏斗に入れられ、下層が新しいトルエン30mLで3回洗浄された。トルエン相の全てが合わせられた。トルエン相および水相の双方がHおよび11B NMRで分析された。
NEtBHについての分光データ:11B NMR(トルエン d)、δ−30.8ppm、(q,JB−H=98.3Hz,1B)。H(トルエン d)δ=2.32ppm(q,j1−3=7.2Hz,6H)δ0.84ppm、(t,JH−H=7.3Hz,9H)。
【0019】
【表2】

【0020】
合成水素化ホウ素ナトリウム二水和物と50mLドデカンおよび固体NEtHCl(より少ないNEtHCl添加)
固体添加漏斗、温度計および窒素ガスパージを含む3つ首フラスコに、10グラムのSBH AFグラン、および0.1グラムのNaOHを含有する10グラムの水を入れた。固体の塊が形成されるまで、スラリーは24時間攪拌された。次いで、50mLの無水ドデカンおよび10mLのNEtが添加された。このスラリーは攪拌され、1当量の固体NEtHCl(26.4g)が、反応温度が40℃を超えて上昇しないように添加された。
反応温度が30℃を超えたときに、多量の気体が発生した。6時間後、60mLの水が添加され、反応ポット中の全ての固体を溶解した。得られた2相の溶液は分離漏斗に入れられ、下層が新しいトルエン30mLで3回洗浄された。トルエン相の全てが合わせられた。ドデカン相および水相の双方がHおよび11B NMRで分析された。
NEtBHについての分光データ:11B NMR(トルエン d)、δ−30.8ppm、(q,JB−H=98.3Hz,1B)。H(トルエン d)δ=2.32ppm(q,j1−3=7.2Hz,6H)δ0.84ppm、(t,JH−H=7.3Hz,9H)。
【0021】
【表3】

【0022】
KBHおよび50mLトルエンおよび固体NEtHCl
固体添加漏斗、温度計および窒素ガスパージを含む3つ首フラスコに、14.21グラムのKBH100、および10グラムの水(0.1グラムのNaOH含有)を入れた。次いで、50gの無水トルエンおよび10mLのNEtが添加された。このスラリーは攪拌され、1当量の固体NEtHCl(36.2g)が、反応温度が40℃を超えて上昇しないように添加された。
反応温度が30℃を超えたときに、多量の気体が発生した。6時間後、60mLの水が添加され、反応ポット中の全ての固体を溶解した。得られた2相の溶液は分離漏斗に入れられ、下層が新しいトルエン30mLで3回洗浄された。トルエン相の全てが合わせられた。トルエン相および水相の双方がHおよび11B NMRで分析された。
NEtBHについての分光データ:11B NMR(トルエン d)、δ−30.8ppm、(q,JB−H=98.3Hz,1B)。H(トルエン d)δ=2.32ppm(q,j1−3=7.2Hz,6H)δ0.84ppm、(t,JH−H=7.3Hz,9H)。
【0023】
【表4】

【0024】
合成水素化ホウ素ナトリウム二水和物と25mLトルエンおよび固体NEtHCl
固体添加漏斗、温度計および窒素ガスパージを含む3つ首フラスコに、10グラムのSBH AFグラン、および0.1グラムのNaOHを含有する10グラムの水を入れた。固体の塊が形成されるまで、スラリーは24時間攪拌された。次いで、25mLの無水トルエンおよび5mLのNEtが添加された。このスラリーは攪拌され、1当量の固体NEtHCl(36.2g)が、反応温度が40℃を超えて上昇しないように添加された。
反応温度が30℃を超えたときに、多量の気体が発生した。6時間後、60mLの水が添加され、反応ポット中の全ての固体を溶解した。得られた2相の溶液は分離漏斗に入れられ、下層が新しいトルエン30mLで3回洗浄された。トルエン相の全てが合わせられた。トルエン相および水相の双方がHおよび11B NMRで分析された。
NEtBHについての分光データ:11B NMR(トルエン d)、δ−30.8ppm、(q,JB−H=98.3Hz,1B)。H(トルエン d)δ=2.32ppm(q,j1−3=7.2Hz,6H)δ0.84ppm、(t,JH−H=7.3Hz,9H)。
【0025】
【表5】

【0026】
合成水素化ホウ素ナトリウム二水和物と25mLキシレンおよび固体NEtHCl
固体添加漏斗、温度計および窒素ガスパージを含む3つ首フラスコに、10グラムのSBH AFグラン、および0.1グラムのNaOHを含有する10グラムの水を入れた。固体の塊が形成されるまで、スラリーは24時間攪拌された。次いで、25mLの無水キシレンおよび5mLのNEtが添加された。このスラリーは攪拌され、1当量の固体NEtHCl(36.2g)が、反応温度が40℃を超えて上昇しないように添加された。
反応温度が30℃を超えたときに、多量の気体が発生した。6時間後、60mLの水が添加され、反応ポット中の全ての固体を溶解した。得られた2相の溶液は分離漏斗に入れられ、下層が新しいキシレン30mLで3回洗浄された。キシレン相の全てが合わせられた。キシレン相および水相の双方がHおよび11B NMRで分析された。
NEtBHについての分光データ:11B NMR(トルエン d)、δ−30.8ppm、(q,JB−H=98.3Hz,1B)。H(トルエン d)δ=2.32ppm(q,j1−3=7.2Hz,6H)δ0.84ppm、(t,JH−H=7.3Hz,9H)。
【0027】
【表6】

【0028】
合成水素化ホウ素ナトリウム二水和物と25mLトリエチルアミンおよび固体NEtHCl
固体添加漏斗、温度計および窒素ガスパージを含む3つ首フラスコに、10グラムのSBH AFグラン、および0.1グラムのNaOHを含有する10グラムの水を入れた。固体の塊が形成されるまで、スラリーは24時間攪拌された。次いで、25mLの無水トリエチルアミンが添加された。このスラリーは攪拌され、1当量の固体NEtHCl(36.2g)が、反応温度が40℃を超えて上昇しないように添加された。
反応温度が30℃を超えたときに、多量の気体が発生した。6時間後、60mLの水が添加され、反応ポット中の全ての固体を溶解した。得られた2相の溶液は分離漏斗に入れられ、下層が新しいNEtの5mLで3回洗浄された。トリエチルアミン相の全てが合わせられた。トリエチルアミン相および水相の双方がHおよび11B NMRで分析された。
NEtBHについての分光データ:11B NMR(トルエン d)、δ−30.8ppm、(q,JB−H=98.3Hz,1B)。H(トルエン d)δ=2.32ppm(q,j1−3=7.2Hz,6H)δ0.84ppm、(t,JH−H=7.3Hz,9H)。
【0029】
【表7】

【0030】
合成水素化ホウ素ナトリウム二水和物と100mLトルエンおよびあらかじめ形成されたNEtHCl
固体添加漏斗、温度計および窒素ガスパージを含む3つ首フラスコに、10グラムのSBH AFグラン、10グラムの水および0.1グラムのNaOHを入れた。固体の塊が形成されるまで、スラリーは24時間攪拌された。別の3つ首フラスコに1当量のNEtおよび1当量の37%HClを添加した。次いで、100mLの無水トルエンおよび30mLのNEtが添加された。このスラリーは攪拌され、フラスコナンバー1の内容物が、反応温度が40℃を超えて上昇しないように添加された。
反応温度が30℃を超えたときに、多量の気体が発生した。6時間後、60mLの水が添加され、反応ポット中の全ての固体を溶解した。得られた2相の溶液は分離漏斗に入れられ、下層が新しいトルエン100mLで3回洗浄された。トルエン相の全てが合わせられた。トルエン相および水相の双方がHおよび11B NMRで分析された。
NEtBHについての分光データ:11B NMR(トルエン d)、δ−30.8ppm、(q,JB−H=98.3Hz,1B)。H(トルエン d)δ=2.32ppm(q,j1−3=7.2Hz,6H)δ0.84ppm、(t,JH−H=7.3Hz,9H)。
【0031】
【表8】

【0032】
次の表は上記実験および結果をまとめる。
【表9】

【0033】
追加の実験の結果が下記の表にまとめられる。
【表10】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
水素化ホウ素アルカリ金属およびアミン塩からアミンボランを製造する方法であって、
(i)前記アミン塩の塩基の形態である遊離アミン、および(ii)水を含む溶媒中で、水素化ホウ素アルカリ金属を0.95〜1.05当量のアミン塩と反応させることを含み;重量比(全ての水、対、水素化ホウ素アルカリ金属)が0.5:1〜2.7:1であり;前記溶媒は水および前記アミン以外の溶媒を5重量%より多く含まない;
アミンボランを製造する方法。
【請求項2】
重量比(溶媒中の全ての水、対、水素化ホウ素アルカリ金属)が1:1〜2.7:1である、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
アミン塩がトリアルキルアミン塩である、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
重量比(遊離アミン、対、水素化ホウ素アルカリ金属)が1:1〜6:1である、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
水素化ホウ素アルカリ金属が、二水和物の形態で添加される水素化ホウ素ナトリウムである、請求項4に記載の方法。
【請求項6】
水素化ホウ素アルカリ金属が水素化ホウ素カリウムである、請求項4に記載の方法。

【公開番号】特開2010−126534(P2010−126534A)
【公開日】平成22年6月10日(2010.6.10)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2009−237238(P2009−237238)
【出願日】平成21年10月14日(2009.10.14)
【出願人】(590002035)ローム アンド ハース カンパニー (524)
【氏名又は名称原語表記】ROHM AND HAAS COMPANY
【Fターム(参考)】