説明

アリルアミン架橋重合体及び消臭剤

【課題】
アルデヒド系化合物及びイオウ系化合物に対して優れた吸着性を示し、耐水性及び耐湿性に優れ、水不溶性粘土物に担持させなくとも固形消臭剤として利用可能な、アリルアミン架橋重合体を提供すること。
【解決手段】
下記一般式(1)で表されるアリルアミン単位を繰り返し単位として含む樹脂と、架橋剤とを、金属塩存在下で反応させてなる、アリルアミン架橋重合体。



[式中、R及びRは、それぞれ独立に水素原子又は炭素数1〜4のアルキル基を示す。]

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、アリルアミン架橋重合体及びこの重合体からなる消臭剤に関する。
【背景技術】
【0002】
硫化水素を除去できる消臭剤としては、活性炭、シリカ、ゼオライト等の無機物を用いたものが知られている。
【0003】
また、硫化水素とアルデヒド系化合物の双方を除去できる消臭剤としては、例えば、ポリビニルアミン化合物と無機化合物を含む消臭剤が開示されている(特許文献1)。
【0004】
【特許文献1】特開平9−201405号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、無機物を用いた消臭剤は、硫化水素を除去効果はあるものの、中性物質であるアルデヒド系化合物を除去する効果が充分ではない。また、特許文献1に記載の消臭剤は、ゼオライト、セピオライト、ベンナイト等の水不溶性粘土物に、アルデヒド吸着能を有するポリビニルアミンを吸着させたものであり、吸着時の溶液のpHによってポリビニルアミンの吸着性が変化し不安定である。さらに、製造時に粘性の不溶物から水や残存ポリビニルアミン等を除去して精製するのに、多大な手間がかかる。
【0006】
そこで、本発明は、アルデヒド系化合物及びイオウ系化合物に対して優れた吸着性を示し、耐水性及び耐湿性に優れ、固体担体に担持させなくとも固形消臭剤として利用可能である、アリルアミン架橋重合体を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、下記一般式(1)で表されるアリルアミン単位を繰り返し単位として含む樹脂と、架橋剤とを、金属塩存在下で反応させてなる、アリルアミン架橋重合体を提供する。
【0008】
【化1】

【0009】
なお、式中、R及びRは、それぞれ独立に水素原子又は炭素数1〜4のアルキル基を示す。
【0010】
本発明のアリルアミン架橋重合体は、金属塩存在下で架橋されているため、アルデヒド系化合物、イオウ系化合物の双方に対して優れた吸着性を示す。上記樹脂と架橋剤との反応により架橋重合体を製造し、その後金属塩を添加した架橋重合体は、湿気等によりその消臭能が著しく低下するのに対し、本発明のアリルアミン架橋重合体、すなわち、上記樹脂と架橋剤を金属塩存在下で反応させた重合体は、水洗等によって消臭能が低下せず、優れた耐水性及び耐湿性を有するようになる。さらに、上記アリルアミン架橋重合体は、不溶性の固体とすることができるため、固体担体等に担持させることなく、固形消臭剤として簡便に利用できる。
【0011】
上記樹脂は、水溶性樹脂であることが好ましい。樹脂を水溶性樹脂とすることで、上記反応を、水を含む極性溶媒中で行うことができる。水を含む極性溶媒中で上記反応を行うことにより、アリルアミン架橋重合体の消臭能、耐水性及び耐湿性が、一層優れたものになる。
【0012】
一般式(1)で表されるアリルアミン単位を繰り返し単位として含む樹脂と、架橋剤とは、架橋剤の量が、樹脂中のアミノ基の総モル量に対して、0.5〜45モル%になるように反応させることが好ましい。
【0013】
架橋剤の量が0.5モル%未満では、架橋反応によるゲル化が十分に進行しないことがあり、45モル%を超えると、樹脂中のアミノ基の多くが架橋剤との反応に供され、架橋剤の量が上記範囲である場合と比較して、架橋重合体の消臭性能が低下することがある。
【0014】
架橋剤としては、例えば、エピクロロヒドリン、1,4−ブタンジオールジグリシジルエーテル、1,2−エタンジオールジグリシジルエーテル、1,3−ジクロロプロパン、1,2−ジクロロエタン、1,3−ジブロモプロパン、1,2−ジブロモエタン、スクシニルジクロリド、ジメチルスクシネート、トルエンジイソシアネート、アクリロイルクロリド及びピロメリティックジアンヒドリドからなる群より選ばれる少なくとも1種を含む架橋剤を使用することができる。
【0015】
これらの架橋剤は、一般式(1)で表されるアリルアミン単位を繰り返し単位として含む樹脂との架橋性に優れ、アルデヒド系化合物、イオウ系化合物の双方に対する吸着性が良好になるばかりでなく、耐水性及び耐湿性が顕著に改良される。
【0016】
上述したアリルアミン架橋重合体が、消臭剤として用いることができる。
【0017】
上記アリルアミン架橋重合体からなる消臭剤は、アルデヒド系化合物、イオウ系化合物の双方に対して優れた吸着性を示すとともに、優れた耐水性及び耐湿性を有する。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、アルデヒド系化合物及びイオウ系化合物に対して優れた吸着性を示し、耐水性及び耐湿性に優れ、固体担体に担持させることなく固形消臭剤として利用可能な、アリルアミン架橋重合体を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
以下、本発明の好適な実施形態について詳細に説明する。
【0020】
本発明のアリルアミン架橋重合体は、下記一般式(1)で表されるアリルアミン単位を繰り返し単位として含む樹脂(以下「アリルアミン重合体」という場合がある。)と、架橋剤とを、金属塩存在下で反応させて得られるものである。なお、式中、R及びRは、それぞれ独立に水素原子又は炭素数1〜4のアルキル基である。
【0021】
【化2】

【0022】
アリルアミン架橋重合体は、好適には、アリルアミン重合体中の一般式(1)で表されるアリルアミン単位が繰り返された主鎖が、架橋剤で化学的又は物理的に架橋された構造を有しており、反応時に使用される金属塩は金属イオン等の形態で架橋したアリルアミン重合体中に含有されている。
【0023】
アリルアミン重合体は、上記一般式(1)で表されるアリルアミン単位の含有量が、アリルアミン重合体の総量に対して、10質量%以上であることが好ましく、30質量%以上であることがより好ましい。さらにアリルアミン重合体は、水溶性の観点から、アリルアミン単独重合体であることが好ましい。アリルアミン単独重合体としては、例えば、ポリアリルアミン、ポリ(N−メチルアリルアミン)、ポリ(N−エチルアリルアミン)、ポリ(N,N−ジメチルアリルアミン)等が挙げられる。
【0024】
アリルアミン重合体としては、上記一般式(1)で表されるアリルアミン単位を構成するアリルアミン類と、アリルアミン類と共重合可能な単量体との共重合体を用いてもよい。上記アリルアミン類としては、モノアリルアミン、N−メチルアリルアミン、N−エチルアリルアミン、N,N−ジメチルアリルアミン等が挙げられる。また、上記アリルアミン類と共重合可能な単量体としては、N−メチルジアリルアミン、N−エチルジアリルアミン、N−プロピルジアリルアミン、N−(2−ヒドロキシエチル)ジアリルアミン、N−(2−ヒドロキシプロピル)ジアリルアミン、N−(3−ヒドロキシプロピル)ジアリルアミン、N,N−ジメチルジアリルアンモニウムクロリド、N,N−ジエチルジアリルアンモニウムクロリド、N,N−ジプロピルジアリルアンモニウムクロリド、N,N−ジブチルジアリルアンモニウムクロリド、ビニルピロリドン、ジメチルアミノエチルメタクリレート、β−メタクリロイルオキシエチルトリメチルアンモニウムクロリド、アクリルアミド、アクリロニトリル、ヒドロキシエチルアクリレート、酢酸ビニル、スチレン、アクリル酸、塩化ビニル、ビニルイソシアネート、メタクリロニトリル、メタクリル酸、メチルビニルケトン、メチルビニルエーテル、ビニルピリジン、アクロレイン、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸プロピル、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸プロピル等が挙げられる。
【0025】
アリルアミン重合体中のアミノ基は、一部が酸性化合物との塩を形成していてもよい。ここで酸性化合物としては、例えば、塩酸、酢酸、硫酸等が挙げられる。
【0026】
架橋剤としては、アリルアミン重合体中のアミノ基と共有結合を生成可能な官能基を、少なくとも2個含有する化合物が好ましい。このような官能基としては、例えば、ハロゲン基、アルデヒド基、エポキシ基、カルボキシル基、酸無水物基、酸ハライド基、N−クロロホルミル基、クロロホルメート基、イミドエーテル基、アミジニル基、イソシアネート基、ビニル基等が挙げられる。また、ホルムアルデヒドは、アミノ基2個と反応してアミナールを形成できるため、架橋剤として好適に使用できる。
【0027】
架橋剤としては、エチレングリコールジアクリレート、プロピレングリコールジアクリレート、ブチレングリコールジアクリレート、エチレングリコールジメタクリレート、プロピレングリコールジメタクリレート、ブチレングリコールジメタクリレート、ポリエチレングリコールジメタクリレート、ポリエチレングリコールジアクリレート、メチレンビスアクリルアミド、メチレンビスメタクリルアミド、エチレンビスアクリルアミド、エピクロロヒドリン、トルエンジイソシアネート、エチレンビスメタクリルアミド、エチリデンビスアクリルアミド、ジビニルベンゼン、ビスフェノール A ジメタクリレート、ビスフェノール A ジアクリレート、1,4−ブタンジオールジグリシジルエーテル、1,2−エタンジオールジグリシジルエーテル、1,3−ジクロロプロパン、1,2−ジクロロエタン、1,3−ジブロモプロパン、1,2−ジブロモエタン、スクシニルジクロリド、ジメチルスクシネート、アクリロイルクロリド、ピロメリティックジアンヒドリド等が挙げられる。これらの中でも、エピクロロヒドリン、1,4−ブタンジオールジクリシジルエーテル、1,2−エタンジオールジグリシジルエーテル(エチレングリコールジグリシジルエーテル)、1,3−ジクロロプロパン、1,2−ジクロロエタン、1,3−ジブロモプロパン、1,2−ジブロモエタン、スクシニルジクロリド、ジメチルスクシネート、トルエンジイソシアネート、アクリロイルクロリド及びピロメリティックジアンヒドリドからなる群より選ばれる少なくとも1種が好ましい。
【0028】
上記金属塩としては、特に制限はなく、例えば下記式(2)で表される金属塩を使用することができる。
(Ma+(Xb−(an/b) (2)
【0029】
なお式中、Mは金属を示し、aはMの価数を示し、Xはアニオンを示し、bはXの価数を示し、anは、aの値とnの値の積を示す。
【0030】
上記式(2)においてMで示される金属としては、第8族〜第12族の金属及びカルシウムからなる群より選ばれる少なくとも1種の金属が好ましい。また、上記第8族〜第12族の金属としては、消臭性が一層優れる観点から、銀、亜鉛、銅、鉄が好ましい。
【0031】
上記式(2)においてXで示されるアニオンとしては、例えば、ハロゲン化アニオン、硫酸アニオン、硝酸アニオン、カルボン酸アニオン等を用いることができる。これらの中でも、架橋反応時に溶媒を使う場合、その溶媒に対する溶解性が良好となる観点から、ハロゲン化アニオンが好ましい。
【0032】
上記アリルアミン架橋重合体は、アリルアミン重合体と架橋剤を、上記金属塩存在下で反応させて得られる(以下、この反応を「架橋反応」と記載する場合がある)。
【0033】
架橋反応は、架橋が完了する前に金属塩を添加して行えばよく、溶媒(極性溶媒、非極性溶媒又はこれらの組合せ)中に、アリルアミン重合体及び架橋剤を溶解又は分散させて、架橋剤の反応温度以上至適pHで行うことができる。また架橋反応は、非溶媒でアリルアミン重合体及び架橋剤を混合して行うこともできる。
【0034】
架橋反応における金属塩の使用量は、アリルアミン重合体の総量に対して、0.1〜10重量部であると好ましい。金属塩の使用量がこれより多くなると、架橋反応時に溶媒を使う場合、その溶媒に金属塩が溶解しにくくなる。また、金属塩の使用量がこれより少なくなると、消臭性が低下することがある。
【0035】
架橋反応は、溶媒存在下で行われることが好ましい。上記溶媒としては、水、極性溶媒、又は、水と極性溶媒との混合溶媒が挙げられる。上記極性溶媒としては、例えば、メタノール、エタノール、DMF、アセトニトリル、テトラハイドロフラン等が挙げられる。上記溶媒としては、これらの中でも、反応後の後処理が容易となる、金属塩の溶解性が向上する等の観点から、水又は水と極性溶媒との混合溶媒が好ましく、水がより好ましい。
【0036】
架橋反応における上記溶媒の使用量は、アリルアミン重合体の総量に対して、0.5〜15重量部であると好ましい。溶媒の使用量がこれより多くなると、後処理にかかる時間が増加する傾向にあり、溶媒の使用量がこれより少ないと、アリルアミン重合体が溶媒中に分散しにくくなる傾向にある。
【0037】
架橋反応において、アリルアミン重合体の少なくとも一部が上記溶媒に溶解していることが好ましい。アリルアミン重合体が上記溶媒に溶解していると、アリルアミン架橋重合体の消臭性、耐水性、及び耐湿性が一層優れる傾向にある。
【0038】
架橋反応の条件は、用いるアリルアミン重合体と架橋剤により適宜選択できる。例えば、ポリアリルアミンとエチレングリコールジグリシジルエーテルを、水中、金属塩存在下で反応させる場合の反応温度は、5〜60℃であると好ましく、10〜30℃であるとさらに好ましい。
【0039】
上記架橋反応により得られるアリルアミン架橋重合体は、通常、水に不溶性の固体であり、そのまま固体の消臭剤として好適に使用できる。また、例えば、乳鉢等で粉砕し、風乾させて、粉末状にした後、消臭剤として用いることもできる。
【実施例】
【0040】
以下、実施例及び比較例に基づいて本発明をより具体的に説明するが、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。
【0041】
(実施例1)
20.1%ポリアリルアミン水溶液56.81g(ポリアリルアミンの平均分子量:3000、ポリアリルアミンの含有量:0.2モル)に、塩化亜鉛0.57gを加え、室温で攪拌させて均一溶液とした。この溶液に、エチレングリコールジグリシジルエーテル10.45g(0.06モル)を加え、室温で攪拌し、ゲル状の架橋重合体を得た。得られたゲル状の架橋重合体を乳鉢で粉砕し、1週間風乾させた後、590μm径と300μm径のふるいにかけ、粒径300〜590μmの亜鉛含有ポリアリルアミン架橋体(亜鉛含有のアリルアミン架橋重合体)を得た。
【0042】
(実施例2)
実施例1と同様に亜鉛含有ポリアリルアミン架橋体1.5gを合成し、蒸留水を200mL加え、室温で1時間攪拌した。ろ布で架橋体をろ別し、ビーカーに移した後、再度蒸留水を200mL加え、室温で1時間攪拌した。同様の洗浄操作を10回繰り返した後、ろ別し、1週間風乾させ、洗浄後の亜鉛含有ポリアリルアミン架橋体を得た。
【0043】
(比較例1)
20.1%ポリアリルアミン水溶液56.81g(ポリアリルアミンの平均分子量:3000、ポリアリルアミンの含有量:0.2モル)に、エチレングリコールジグリシジルエーテル10.45g(0.06モル)を加え、室温で攪拌し、ゲル状の架橋重合体を得た。得られたゲルを乳鉢で粉砕し、1週間風乾させた後、590μm径と300μm径のふるいにかけ、粒径300〜590μmのポリアリルアミン架橋体を得た。このポリアリルアミン架橋重合体1.0gに、5%塩化亜鉛水溶液1.0gを加えて混合し、1週間風乾させ、亜鉛後添加ポリアリルアミン架橋体を得た。
【0044】
(比較例2)
比較例1と同様に粒径300〜590μmのポリアリルアミン架橋体を製造し、5%塩化亜鉛水溶液1.5gを加えて混合した後、蒸留水を200mL加え、室温で1時間攪拌した。ろ布で架橋重合体をろ別し、ビーカーに移した後、再度蒸留水を200mL加え、室温で1時間攪拌した。同様の洗浄操作を10回繰り返した後、ろ別し、1週間風乾させ、洗浄後の亜鉛後添加ポリアリルアミン架橋体を得た。
【0045】
(比較例3)
比較例1と同様に、粒径300〜590μmのポリアリルアミン架橋体を製造し、金属未添加ポリアリルアミン架橋体とした。
【0046】
(評価試験)
実施例1〜2、比較例1〜3で得られた架橋体について、硫化水素、メチルメルカプタン、アセトアルデヒドに対する消臭性能を、下記の方法で評価した。
【0047】
架橋体と、架橋体と同重量のイオン交換水を、シャーレ中で混合した。このシャーレを、攪拌子と共に300mLのコニカルビーカーに入れ、コニカルビーカーの口をパラフィルムで密閉し、一定量の悪臭ガス(硫化水素、メチルメルカプタン又はアセトアルデヒド)を注入した。悪臭ガス注入時のシリンジ針の穴をビニルテープで塞ぎ、マグネチックスターラーでコニカルビーカー内を攪拌した。一時間経過後、ガステック社製の検知管(硫化水素検知管No.4L、メチルメルカプタン検知管No.71、アセトアルデヒド検知管No.92M)を用いて、コニカルビーカー内の残存悪臭ガスの濃度を測定した。
【0048】
また、ブランクの残存悪臭ガス濃度の測定は、次のように行った。300mLコニカルビーカーに攪拌子をいれ、コニカルビーカーの口をパラフィルムで密閉し、一定量の悪臭ガス(硫化水素、メチルメルカプタン又はアセトアルデヒド)を注入した。悪臭ガス注入時のシリンジ針の穴をビニルテープで塞ぎ、マグネチックスターラーでコニカルビーカー内を攪拌した。一時間経過後、上記ガステック社製の検知管を用いて、コニカルビーカー内のブランクでの残存悪臭ガスの濃度を測定した。
【0049】
上記残存ガス濃度を基に、下記式(3)から消臭率を算出した。
消臭率(%)={(B−S)/B}×100 (3)
【0050】
なお、式中、Sは、架橋体存在下での残存悪臭ガス濃度(ppm)を示し、Bは、ブランクでの残存悪臭ガス濃度(ppm)を示す。
【0051】
上記評価試験において、架橋体の使用量は、悪臭ガスとして硫化水素を用いた際は0.02g、悪臭ガスとしてメチルメルカプタン又はアセトアルデヒドを用いた際は0.1gとした。
【0052】
評価試験の結果を、表1に示す。
【0053】
【表1】

【0054】
実施例1の架橋体は、硫化水素、メチルカプタン及びアセトアルデヒドに対して、高い消臭率を示した。これを水洗した実施例2の架橋体は、消臭率の低下がほとんど無く、高い消臭率を示した。
【0055】
比較例1の架橋体は、硫化水素、メチルカプタン及びアセトアルデヒドに対して、高い消臭率を示したものの、これを水で洗浄した比較例2の架橋体は、消臭率が大幅に低下した。
【0056】
以上の結果から、実施例1の架橋体は、架橋反応後に金属を添加した架橋体(比較例1)と比較して、耐水性及び耐湿性に優れることが確認された。


【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記一般式(1)で表されるアリルアミン単位を繰り返し単位として含む樹脂と、架橋剤とを、金属塩存在下で反応させてなる、アリルアミン架橋重合体。
【化1】


[式中、R及びRは、それぞれ独立に水素原子又は炭素数1〜4のアルキル基を示す。]
【請求項2】
前記樹脂が、水溶性樹脂である、請求項1に記載のアリルアミン架橋重合体。
【請求項3】
前記架橋剤の量が、前記樹脂のアミノ基の総モル量に対して、0.5〜45モル%になるように反応させる、請求項1又は2に記載のアリルアミン架橋重合体。
【請求項4】
前記架橋剤が、エピクロロヒドリン、1,4−ブタンジオールジグリシジルエーテル、1,2−エタンジオールジグリシジルエーテル、1,3−ジクロロプロパン、1,2−ジクロロエタン、1,3−ジブロモプロパン、1,2−ジブロモエタン、スクシニルジクロリド、ジメチルスクシネート、トルエンジイソシアネート、アクリロイルクロリド及びピロメリティックジアンヒドリドからなる群より選ばれる少なくとも1種を含む、請求項1〜3のいずれか1項に記載のアリルアミン架橋重合体。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれか1項に記載のアリルアミン架橋重合体からなる、消臭剤。

【公開番号】特開2010−47688(P2010−47688A)
【公開日】平成22年3月4日(2010.3.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−213151(P2008−213151)
【出願日】平成20年8月21日(2008.8.21)
【出願人】(000003975)日東紡績株式会社 (251)
【Fターム(参考)】