説明

アルコール改質のための金属支持銅触媒の使用

【課題】 本発明は、一般にアルコールの脱水素または改質に関する。より詳細には、本発明は、特に、電力の生成のための燃料電池に用いる水素を生成するためのメタノールまたはエタノールのごとき第一級アルコールを脱水素するプロセスに関する。
【解決手段】 本発明は、アルコールの改質方法に指向される。該改質方法は、アルコールと、金属支持構造、好ましくは、ニッケルを含む金属スポンジ支持構造の表面にて銅を含む触媒とを接触させることを含む。ある好ましい具体例において、該改質方法により生成した水素を水素燃料電池用の燃料源として用いて、特に、車両を駆動するための電力を生成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、一般にアルコールの脱水素または改質に関する。より詳細には、本発明は、特に、電力の生成のための燃料電池に用いる水素を生成するためのメタノールまたはエタノールのごとき第一級アルコールを脱水素するプロセスに関する。脱水素プロセスは、金属支持構造を含む銅含有触媒を用いる。
【背景技術】
【0002】
高温(例えば、200℃を超える)での第一級アルコールと適当な触媒との接触は、該アルコールを水素ガスおよび炭素含有種まで分解させることはよく知られている。このプロセスは、一般的に「アルコール改質」として知られている。例えば、メタノール改質は、以下の式1に示した水素および一酸化炭素の形成に導く:
【0003】
【化1】

【0004】
次いで、改質方法において生成した水素は、電力を生成するための燃料電池に供給できる。該改質方法は吸熱性であり、特に、始動にて高ピークパワーが必要である、特に、輸送適用(例えば、電気自動車)において、触媒に対する効率的な熱移動を必要とする。メタノール改質は、例えば、Gunterら, J. Catal. 203, 133-49(2001);Breenら, J. Chem. Soc. Chem. Comm., 2247-48(1999);European Chemical News, p. 22,(May 11, 1998);およびJiangら, Appl. Cat. 97A, 145-58(1993)に記載されている。メタノール改質および燃料電池用の水素源としてのメタノール改質の特定の適用は、例えば、Agrellら, Catalysis-Specialist Periodical Reports, vol. 16, pp. 67-132(J.J. Spivey編, Royal Society of Chemistry, Cambridge, UK, 2002)に記載されている。
【0005】
一酸化炭素は、燃料電池の電極に対して一般的に有害であることに注目することは重要である。例えば、燃料電池の効率および電力経済(power economy)は、典型的には、一酸化炭素のレベルが水素供給において約20ppmを超えると低下する。Petterssonら, Int'l J. Hydrogen Energy, vol. 26, p. 246(2001)参照。従って、以下の式2:
【0006】
【化2】

【0007】
に示すように蒸気との反応により一酸化炭素を二酸化炭素に変換することが望ましい。この変換は、水性ガスシフト反応として知られ、商業的に広範に実施されている。水性ガスシフト反応の触媒、プロセスおよび適用の記載は、例えば、Catalyst Handbook, pp. 283-339(第2版, M.V. Twigg編, Manson Publishing, London, 1996)に見られる。
【0008】
メタノールに関する前記と同様な条件下、エタノールの改質は、以下の式3:
【0009】
【化3】

【0010】
に示すように、アセトアルデヒドを最初に生成し、次いで、一酸化炭素およびメタンまで分解(すなわち、脱炭酸)できる。
【0011】
メタノール改質と同様に、エタノール改質は、好ましくは、水−ガス反応でカップリングして、一酸化炭素を二酸化炭素に変換し、次いでさらなる水素を生成する。かくして、エタノール改質に関連する水性ガスシフト反応は、以下の式4:
【0012】
【化4】

【0013】
に示すように二酸化炭素、メタンおよび水素を生成する。
【0014】
アルコール脱水素用の最も一般的な触媒および低温の水性ガスシフト反応は、酸化亜鉛を含む銅および、時々、耐熱性支持構造上の他の促進剤、一般的にはアルミナまたはシリカを含む。銅−亜鉛触媒は、メタノール合成につき優れた安定性を呈するが、Cheng, Appl. Cat. A, 130, p. 13-30(1995)およびAmphlettら, Stud. Surf. Sci. Catal., 139, p. 205-12(2001)により記載のごとくメタノール改質には適当でない安定性を有することが報告されている。
【0015】
アルコール改質に活性があると報告された他の大部分の触媒は、通常、触媒となる金属を含有する酸化金属からなる。Yeeら, J. Catal. 186, 279-95(1999)およびShengら, J. Catal. 208, 393-403(2002)は、CeO単独でまたはさらにロジウム、白金もしくはパラジウムを用いたエタノール改質を報告している。しかしながら、これらの論文は、エタノールが、アセトン、ケテンおよびブテンのごとき多数の好ましくない副生成物にまで分解しかねないことを報告している。
【0016】
銅−ニッケル触媒は、エタノールの脱水素について高活性を有することが知られている。例えば、アルミナ上に支持された銅−ニッケル触媒は、エタノール改質に活性がある。銅−ニッケル触媒でのエタノール改質は、MarinoらによりStud. Surf. Sci. Catal. 130C, 2147-52(2000)におよびFreniらによりReact. Kinet. Catal. Lett. 71, 143-52(2000)に記載されている。これらの引用文献は、アセトアルデヒドの脱カルボニル化に良好な選択性を提供する触媒を記載しているが、各引用文献は、300℃の温度にて、不完全な変換および最小の水性ガス転化活性を被った。さらに、通常のエタノール改質触媒は、コーキング(coking)として知られるプロセスである表面上の炭素の析出のために急速に失活する傾向にある。400℃を超える温度では、コーキングは、触媒表面上の酸部位の存在により促進され、エタノールのエチレンへの脱水を促し、次いで重合する。エタノール改質触媒に関連したコーキングの問題は、例えば、HagaらによりNippon Kagaku Kaishi, 33-6(1997)およびFreniらによりReact. Kinet. Catal. Lett., 71, p. 143-52(2000)に記載されている。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0017】
【非特許文献1】J. Catal. 203, 133-49(2001)
【非特許文献2】Catalysis-Specialist Periodical Reports, vol. 16, pp. 67-132(J.J. Spivey編, Royal Society of Chemistry, Cambridge, UK, 2002)
【非特許文献3】Petterssonら, Int'l J. Hydrogen Energy, vol. 26, p. 246(2001)
【非特許文献4】Catalyst Handbook, pp. 283-339(第2版, M.V. Twigg編, Manson Publishing, London, 1996)
【非特許文献5】J. Catal. 186, 279-95(1999)およびShengら, J. Catal. 208, 393-403(2002)
【非特許文献6】Stud. Surf. Sci. Catal. 130C, 2147-52(2000)
【非特許文献7】Nippon Kagaku Kaishi, 33-6(1997)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0018】
従って、穏やかな反応温度でかつ適切な変換にてアルコールを改質できるアルコール脱水素触媒およびプロセスの改良についての必要性が依然として存在する。
【課題を解決するための手段】
【0019】
従って、本発明のある目的は、アルコールを脱水素化して水素を形成するための新規でかつ改良されたプロセス、特に、先行技術のアルコール改質触媒より高密度を有する触媒を用いるそのようなプロセス;吸熱反応を支持するためにより良好な熱伝導率を供するアルコール改質触媒を用いる改良されたプロセス;穏やかな温度にてアセトアルデヒドのメタンおよび一酸化炭素への変換につき高活性および安定性の増加を有する触媒を用いる改良されたプロセス;電力の生成のために燃料電池における使用に適当な水素−含有生成混合物を生成する改良されたプロセス;およびより低コストの水素燃料電池ユニットを必要とする簡易化されたパワー系統を可能とし、エネルギー効率の改良を提供する約400℃未満の改質温度にてエタノールからパワーを生成する新規でかつ実用的な方法の提供にある。
【0020】
従って、略言すると、本発明は、アルコールの改質方法に指向される。当該プロセスは、金属を支持する構造の表面にてアルコールと、銅を含む改質触媒とを接触させることを含む。好ましい具体例において、改質触媒は、金属スポンジ支持構造、好ましくは、ニッケルを含む金属スポンジまたはニッケルおよび銅を含む金属スポンジの表面にて銅を含む。
【0021】
本発明は、さらに、エタノールを改質するためのプロセスに指向される。当該プロセスは、約400℃未満の温度にてエタノールを含む供給ガス混合物と改質触媒とを接触させて、水素を含む改質生成混合物を生成することを含む。該改質触媒は、金属支持構造の表面にて銅を含む。好ましい具体例において、当該プロセスは、約350℃未満の温度でニッケル支持体の表面にて、エタノールを含む供給ガス混合物と銅を含む触媒とを接触させることを含む。
【0022】
本発明は、さらに、燃料電池から電力を生成するためのプロセスに指向される。当該プロセスは、エタノールを含む供給ガス混合物と脱水素触媒とを脱水素反応ゾーンにて接触させて、水素を含む生成混合物を生成することを含む。脱水素触媒は、金属支持構造の表面にて銅を含む。該生成混合物からの水素、および酸素は燃料電池に導入され、電力およびメタンを含む燃料電池排出物を生成する。燃料電池排出物は、燃焼室に導入され、次いで酸素の存在下燃焼される。
【0023】
さらなる具体例において、本発明は、脱水素触媒の調製のための銅メッキ手順の改良に指向される。
【0024】
本発明の他の目的および要旨は以後に部分的に明らかとなり、部分的に指摘されるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】図1は、アルコールの改質において生成された水素−含有生成混合物を、水素燃料電池に燃料源として導入して電力を生成する本発明の一つの具体例によるパワー系統の模式図である。
【図2】図2は、アルコールの改質において生成された水素−含有生成混合物を、水素燃料電池に燃料源として導入して電力を生成し、かつ、水素燃料電池からの排出物を別々のアルコール供給によって供給された内燃機関に通過させる本発明のもう一つの具体例によるパワー系統の模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
本発明により、銅および他の金属の混合物、特に銅およびニッケルの混合物をアルコールの脱水素(すなわち、改質)用の触媒として用いる。金属支持構造を含む銅含有触媒、例えば、ニッケルスポンジ支持構造に銅を堆積(deposit)させることにより調製された触媒が、メタノールおよびエタノールのごとき第一級アルコールの気相改質において触媒としての活性の増加を示すことを発見した。本発明の実施に用いた触媒は、穏やかな温度にてアルコールの水素、メタン、一酸化炭素および二酸化炭素への熱分解に対してより安定であり、特に、その熱分解に活性がある。生成した水素は、例えば、燃料電池において水素の水への変換により、および燃料電池に存在するガス流中のいずれかの残余の水素に加えてメタンの燃焼によりパワーを生成するために用いることができる。燃焼プロセスは、発電機を駆動してさらなる電力を駆動するか、あるいは内燃機関において利用して機械力を生成できる。かかるパワー系統は、エタノールからパワーを得るための都合よい方法を提供し、これはさらに、その燃焼を用いて熱を改質器の触媒床へ供給しつつ望ましくない排出を最小化できるという利点がある。より一般的には、本発明による第一級アルコールの改質において生成した生成混合物を、化学プロセス適用(例えば、カルボニル化、水素化およびヒドロホルミル化)および材料加工適用において水素および/または一酸化炭素のソースとして用いることができる。加えて、本明細書に記載されたアルコール改質触媒を用いて、アルコール供給原料から合成ガスとして知られる水素および一酸化炭素を含む生成混合物を生成できる。
【0027】
A.触媒
本発明の一つの具体例において、アルコール脱水素または改質用の触媒は、銅および/または1以上の非銅金属を含む金属支持構造の表面にて、銅含有活性相を含む。該触媒は、通常、少なくとも約10重量%銅、好ましくは約10重量%〜約90重量%の銅、より好ましくは約20重量%〜約45重量%の銅を含む。触媒は、銅スポンジのごとき実質的に均質な構造、銅含有単相合金または1を超える区別される相を有する不均質構造を含み得る。かくして、銅含有活性相は、銅コーティングもしくは外層のごとき区別される相;表面層または均質触媒構造の一部分として支持構造の表面にて存在し得る。支持構造の表面にて区別される相を含む銅含有活性相の場合には、金属支持構造は、銅含有活性相により全体的または部分的に被覆され得る。例えば、後記の特に好ましい具体例において、触媒は、ニッケルを含む金属スポンジ支持構造の表面にて銅含有活性相を含む。かかる触媒は、約10重量%〜約80重量%の銅、より好ましくは約20重量%〜約45重量%の銅を含む。触媒のバランスは、好ましくはニッケルおよび約10重量%未満のアルミニウムおよび他の金属よりなる。さらに、金属支持構造がニッケルを含む好ましい具体例において、銅およびニッケルが全ての割合にて混和できることに注目することは重要である。かくして、ニッケル支持構造の表面にて銅含有活性相を含む触媒は、銅含有活性相と支持構造との間の界面を必ずしも有しない。
【0028】
触媒反応において一般的に、脱水素触媒の活性は表面積を増加させることにより改良される。かくして、典型的には、新たに調製された触媒は、ブルナウアー−エメット−テラー(Brunauer-Emmett-Teller:BET)法により測定された少なくとも約10m/gの表面積を有することが好ましい。より好ましくは、触媒は約10m/g〜約100m/gのBET表面積を有し、なおより好ましくは、触媒は約25m/g〜約100m/gのBET表面積を有し、さらにより好ましくは、触媒は約30m/g〜約80m/gのBET表面積を有する。
【0029】
エタノールの改質についてのある好ましい具体例において、触媒の表面は、アセトアルデヒドのごときアルデヒドの脱カルボニル化を促すある量のニッケルを含む。好ましくは、表面は、Schmidt, 「Surfaces of Raney Catalysts」、Catalysis of Organic Reactions, pp. 45-60(M.G. Scaros and M.L. Prunier, eds., Dekker, New York, 1995)に記載された方法により測定された約5〜約100μmol/gのニッケルを含む。より好ましくは、該表面ニッケル濃度は、約10μmol/g〜約80μmol/g、最も好ましくは、約15μmol/g〜約75μmol/gである。
【0030】
1.支持構造
アルコール脱水素触媒の支持構造は金属を含む。適当な金属支持構造は、非常に様々な構造および組成を含み得る。好ましくは、支持構造は、銅よりも大きな引張強度および/または降伏強度を有する金属を含む。かくして、好ましい具体例により、支持構造は、非銅金属を含む。非銅金属は、単一の金属または複数の金属を含み得る。かかる好ましい具体例において、少なくとも約10重量%の金属支持構造は非銅金属である。特に好ましいある具体例において、少なくとも約50重量%(より好ましくは、少なくとも約65重量%、少なくとも約80重量%、少なくとも約85重量%またはさらに少なくとも約90重量%)の金属支持構造は非銅金属である。特に好ましいもう一つの具体例において、支持構造は、少なくとも10重量%の非銅金属、および少なくとも50重量%(より好ましくは、約60重量%〜約80重量%)の銅を含む。
【0031】
金属支持構造が作成された金属または合金は、銅単独よりも大きな引張強度および/または降伏強度を有する。その組成物は、少なくとも約70MPa、より好ましくは約100MPa、さらにより好ましくは、少なくとも約110MPaの降伏強度を有することが特に好ましい。また、該組成物は、少なくとも約221MPa、より好ましくは約275MPa、さらにより好ましくは、少なくとも約300MPaの引張強度を有することが特に好ましい。例えば、90重量%銅および10重量%ニッケルを含有する組成物は、報告によると110MPaの降伏強度および303MPaの引張強度を有し;70重量%銅および30重量%ニッケルを含有する組成物は、報告によると138MPaの降伏強度および372MPaの引張強度を有し;および70重量%銅および30重量%亜鉛を含有する組成物は、報告によると124MPaの降伏強度および331MPaの引張強度を有する。KrisherおよびSiebert, Perry's Chemical Engineers' Handbook, pp. 23-42 to 23-49(第6版, McGraw Hill, New York, NY 1984)を参照されたし。
【0032】
好ましくは、金属支持構造の非銅金属は、ニッケル、コバルト、亜鉛、銀、パラジウム、金、スズ、鉄およびその混合物よりなる群から選択される。より好ましくは、金属支持構造は、ニッケルを含む。ニッケルは、例えば:(1)ニッケルはパラジウム、銀およびコバルトのごとき他の適当な金属に比較して相対的に安価であり、(2)ニッケルおよび銅の組合せは、アセトアルデヒドのメタンおよび一酸化炭素への脱カルボニル化を促すことが示され、および(3)ニッケル−含有支持構造への銅の堆積が十分な量の他の適当な金属を含有する支持構造上への銅の堆積に対し典型的には難しくはないために最も好ましい。例えば、銅は、電気化学的な置換析出(displacement deposition)の単純なプロセスを用いてニッケル−含有支持構造上に堆積し得る。しかしながら、他の手法(例えば、無電界メッキ法および金属−有機化学蒸着法)が存在し、それを用いて他の適当な非銅金属を含む支持構造上に銅を堆積し得る。
【0033】
より詳細に後記されるごとき(「浸漬メッキ法」としても当該技術分野で記載される)電気化学的置換析出を用いて、金属支持構造の表面上に銅を析出することがしばしば望ましい。その場合には、金属支持構造は、好ましくは、銅金属に対する還元電位より小さな金属に対する還元電位、すなわち、NHE(通常の水素電極)に対して約+343ミリボルト未満の金属に対する還元電位を有する金属を含有する。かかる還元電位を有する非銅金属は、例えば、ニッケル、亜鉛、スズ、鉄およびコバルトを含む。支持構造の表面付近のかかる金属の存在は、該表面と銅塩(通常Cu(II)塩)溶液との接触により支持構造の表面にて銅金属の容易な析出を可能とする。より詳細には、電気的置換析出中に、支持構造の表面付近のかかる金属は、銅イオン溶液と接触した場合に酸化される(およびイオンとして溶液に入る)傾向にある。これが起こると、支持構造表面付近の溶液中の銅イオンは金属銅に還元され、今度は、支持構造の表面上に析出する。例えば、ニッケルを含む支持構造を銅塩溶液と接触させた場合に生じる反応は、以下の式5に示される:
【0034】
【化5】

【0035】
前記に示したごとく、触媒が電気化学的置換析出を用いて支持構造の表面上に銅を析出させることにより調製される場合、ニッケルが、少なくとも4つの望ましい特性:(1)銅金属に対する還元電位より小さい金属に対する還元電位、(2)本発明のアルコール脱水素反応条件における相対的な安定性、(3)銅よりも大きな機械強度および摩耗耐性および(4)ニッケル/銅触媒は、アセトアルデヒドのメタンおよび一酸化炭素への脱カルボニル化を促すことを有するためにニッケル含有支持構造を用いることが特に好ましい。
【0036】
金属支持構造が、1を超える金属を含む場合、該支持構造中で少なくとも約80重量%(より好ましくは、少なくとも約85重量%、なおより好ましくは、少なくとも約90重量%、さらにより好ましくは、実質的に全て)の金属を合金の形態とすることが好ましい。特に好ましい具体例において、該金属は、置換型合金(単相合金としても知られる)を形成し、該合金は、単一の連続相を有する。多相合金(すなわち、少なくとも2つの区別される相を含む合金)は、支持構造として用いることができる。銅含有活性相を銅含有多相合金支持構造上に析出させる具体例において、銅は、好ましくは、表面の銅に乏しい部分に対して多相支持構造表面の銅富化部分を優先的に被覆する傾向にある。合金が単相または多相であるかは、合金の成分およびそれらの濃度に依存するであろう。典型的には、例えば、実質的にニッケルおよび銅によりなる金属支持構造は、いずれのニッケル濃度でも単相である。しかし、例えば、支持構造が実質的に銅および亜鉛よりなる場合、二相となる合金に導く多数の亜鉛濃度(典型的には、約35重量%を超える濃度)が存在する。
【0037】
また、支持構造は、その金属原子に加えて非金属原子(例えば、ホウ素、炭素、ケイ素、窒素、リン等)を含み得ることを認識すべきである。かかる非金属を含有する合金は、典型的には、「侵入型合金」として当該技術分野において言及されている。かかる合金を含む支持構造は、強化した機械強度のごとき種々の利点を有し得る。しかしながら、典型的には、侵入型合金を含む触媒は少なくとも約70重量%の金属を含有する。
【0038】
特に好ましい具体例において、支持構造は、銅および/または後記の1以上の適当な非銅金属を含む金属スポンジである。本明細書に用いた「金属スポンジ」なる用語は、少なくとも約10m/gのBET表面積を有する金属または金属合金の多孔形態をいう。好ましい金属スポンジ支持構造は、少なくとも約20m/g、より好ましくは少なくとも約35m/g、なおより好ましくは少なくとも約50m/g、さらにより好ましくは、少なくとも約70m/gのBET表面積を有する。本発明により、金属スポンジ支持構造の表面での銅含有活性相の結果、金属が、銅の所望の触媒活性と組み合わせたスポンジ支持構造の機械強度、大きな表面積、高熱伝導率および密度を示すことが判明した。
【0039】
金属スポンジ支持体および得られた触媒は、粉末またはペレットの形態で有り得る。さらに、そのアルコール脱水素触媒は、本発明の触媒を適当な小孔(foraminous)基材(例えば、ハニカム)に組み込むことにより生成されたモノリスの形態で用いることもできる。一般的には、ペレットおよびモノリスの形態での触媒は、後記の改質器内の戻し圧力を最小化するのに好ましい。さらに、モノリス触媒は、振動により引き起こされた機械的劣化(例えば、車両適用における)および/または反応媒体中での化学的攻撃に対してより安定で有り得る。
【0040】
本発明の触媒はペレットまたはモノリスの形態にて用いられる場合、ペレットまたはモノリスの部分のみが銅含有活性相を支持する金属スポンジを含み得ることに注目することは重要である。すなわち、該アルコール改質触媒は、銅含有活性相を支持するための少なくとも約10m/gのBET表面積を有する1以上の多孔性(すなわち、金属スポンジ)領域を依然として供しつつ、固定床またはモノリスの触媒へ強度および形状を供するための無孔基材を含み得る。固定床またはモノリスの基材として用いる適当な無孔材料は、メッキおよび改質条件下で熱および化学的に安定であるいずれの材料も含み得る。非金属基材を用いてもよいが、ステンレス鋼、銅、ニッケル、コバルト、亜鉛、銀、パラジウム、金、スズ、鉄およびその混合物のごとき金属基材が典型的にはより好ましい。
【0041】
金属スポンジ支持体が粉末の形態である場合、その金属スポンジの好ましい平均粒子サイズは、少なくとも約0.1μm、好ましくは約0.5〜約100μm、より好ましくは約15〜約100μm、なおより好ましくは約15〜約75μm、さらにより好ましくは約20〜約65μmである。触媒がペレットまたはモノリスである場合、本発明の触媒が組み込まれた、そのペレットまたはモノリス基材の寸法、ならびにいずれかのかかるモノリス構造での孔開口部(foramenal opening)のサイズは、当業者により理解される改質の設計により必要に応じて変更し得る。
【0042】
金属スポンジ支持構造は、当業者に一般的に知られた手法により調製できる。一般的には、LieberおよびMorritz、Adv. Catal., 5, 417(1953)(スポンジ金属に指向された一般的な総説)を参照。また、Hawley's Condensed Chemical Dictionary, 第13版., p. 621(Richard J. Lewis, Sr.により改訂, Van Nostrand Reinhold, New York, NY 1997)(鉄スポンジの製法を記載)を参照されたし。
【0043】
ニッケルスポンジの調製を記載する引用文献には、例えば、Augustine、Robert L.、Catalytic Hydrogenation Techniques and Applications in Organic Synthesis, 補遺,
pp. 147-49(Marcel Dekker、Inc., 1965) が含まれる。また、Hawley's Condensed Chemical Dictionary, 第13版, p. 955(Richard J. Lewis, Sr.により改訂、Van Nostrand Reinhold, New York, NY 1997)(25重量%の苛性ソーダ溶液を用いて、50重量%のニッケルおよび50重量%アルミニウムを含有する合金から、アルミニウムを浸出させることによりスポンジニッケルを作成する一般的に認識された手法が記載されている)。ニッケルスポンジの場合には、その金属支持構造は、好ましくは、不活性化領域が実質的になく、酸化アルミニウムが実質的に無いように洗浄される。未反応アルミニウムは、改質条件下で蒸気と反応して、酸化アルミニウムを形成する傾向にあり、それは拡散を妨害し、エタノール脱水のための酸部位を供し得る。
【0044】
銅/亜鉛スポンジの調製を記載する引用文献には、例えば、Bridgewaterら, Appl. Catal. , 7, 369(1983)が含まれる。また、かかる引用文献には、例えば、M.S. Wainwright, 「Raney Copper and Raney Copper-Zinc Catalysts」, Chem. Ind.(Dekker), 68, 213-30(1996)が含まれる。
【0045】
ニッケル/鉄スポンジの調製を記載する引用文献には、例えば、BeckerおよびSchmidt、「Raney Nickel-iron catalyst」, Ger. Offen. DE 2713374 19780928(1978)が含まれる。
【0046】
ニッケル/コバルトスポンジの調製を記載する引用文献には、例えば、Orchardら、「Preparation and Properties of Raney Nickel-Cobalt Catalysts」, J. Catal., 84, 189-99(1983)が含まれる。
【0047】
一つの好ましい具体例により、支持構造は、共同譲渡された(co-assigned)米国特許第6,376,708号に記載されたニッケル/銅スポンジ(すなわち、銅をドープしたニッケルスポンジまたはニッケルをドープした銅スポンジ)を含む。また、ニッケル/銅スポンジの調製を記載する引用文献には、例えば、Youngら, J. Catal., 64, 116-23(1980)ならびにWainwrightおよびAnderson、J. Catal., 64, 124-31(1980)が含まれる。
【0048】
適当な金属スポンジは、商標RANEY下でW.R. Grace & Co.(Davison Division、Chattanooga、TN)から入手可能な材料、ならびにソースとは関係なく「Raney金属」として当該技術分野において一般的に記載される材料を含む。Raney金属は、例えば、苛性ソーダ溶液でアルミニウムおよびベース金属(例えば、ニッケル、コバルト、銅)の合金からアルミニウムを浸出させることにより誘導できる。また、種々の金属スポンジは、例えば、Gorwara Chemical Industries (Udaipur, India); Activated Metals & Chemicals, Inc.(Sevierville, TN);Degussa-Huls Corp.(Ridgefield Park, NJ);Engelhard Corp.(Iselin, NJ);およびAldrich Chemical Co.(Milwaukee, WI)から商業的に入手できる。
【0049】
もう一つの好ましい具体例により、支持構造は、ニッケルスポンジを含む。適当な商業的に入手可能なニッケルスポンジの例には、例えば、RANEY 2800(製造者により、少なくとも89重量% Ni;9.5重量%以下のAl;0.8重量%以下のFe;20〜60μmの範囲の平均粒子サイズ;約7の比重;および水中の56%固体の触媒スラリー重量に基づき1.8〜2.0kg/l(15〜17 lbs/gal)のかさ密度を有すると特徴付けられる)、RANEY 4200(製造者により、少なくとも93重量% Ni;6.5重量%以下のAl;0.8重量%以下のFe;20〜50μmの範囲の平均粒子サイズ;約7の比重;および水中の56%固体の触媒スラリー重量に基づき1.8〜2.0kg/l(15〜17 lbs/gal)のかさ密度を有すると特徴付けられる)、RANEY 4310(製造者により、少なくとも90重量% Ni;8重量%以下のAl;0.5〜2.5重量% Mo;0.8重量%以下のFe;20〜50μmの範囲の平均粒子サイズ;約7の比重;および水中の56%固体の触媒スラリー重量に基づき1.8〜2.0kg/l(15〜17 lbs/gal)のかさ密度を有すると特徴付けられる)、RANEY 3110(製造者により、少なくとも90重量% Ni;0.5〜1.5重量% Mo;8.0重量%以下のAl;0.8重量%以下のFe;25〜65μmの範囲の平均粒子サイズ;約7の比重;および水中の56%固体の触媒スラリー重量に基づき1.8〜2.0kg/l(15〜17 lbs/gal)のかさ密度を有すると特徴付けられる)、RANEY 3201(製造者により、少なくとも92重量% Ni;6重量%以下のAl;0.8重量%以下のFe;0.5〜1.5重量% Mo;25〜55μmの範囲の平均粒子サイズ;約7の比重;および水中の56%固体の触媒スラリー重量に基づき1.8〜2.0kg/l(15〜17 lbs/gal)のかさ密度を有すると特徴付けられる)、RANEY 3300(米国特許第5,922,921号において、90〜99.1重量% Ni;8.0重量%以下のAl;0.8重量%以下のFe;0.5〜1.5重量% Mo;25〜65μmの範囲の平均粒子サイズ;約7の比重;および水中の56%固体の触媒スラリー重量に基づき1.8〜2.0kg/l(15〜17 lbs/gal)のかさ密度を有すると特徴付けられる)、RANEY 2724(Cr−促進)およびRANEY 2724(Cr−促進)、その全てがW.R. Grace & Co.により販売されている;Gorwara Chemical Industriesにより販売される「Raneyニッケル」と記載された触媒;Activated Metals & Chemicals、Inc.により販売されるA-4000およびA-5000;Degussa-Huls Corp.により販売されるニッケル ABMC;ならびにAldrich Chemical Co.により販売される「Raney ニッケル」カタログ番号22,167-8が含まれる。
【0050】
金属スポンジ支持構造を含む固定床基材の例には、欧州特許EP 0 648 534 A1および米国特許第6,284,703号(これらの開示をここに出典明示して本明細書の一部とみなす)に記載されたニッケルスポンジペレットが含まれる。特に固定床触媒として用いるニッケルスポンジペレットは、例えば、W.R. Grace & Co.(Chattanooga, TN)およびDegussa-Huls Corp.(Ridgefield Park, NJ)から商業的に入手可能である。
【0051】
2.銅含有活性相の堆積
銅含有活性相は、金属を金属表面に堆積させるための当該技術分野においてよく知られた種々の手法を用いて金属支持構造の表面に堆積し得る。これらの手法には、例えば、電気化学的置換析出および無電解メッキのごとき液相法;および物理的堆積および化学的堆積のごとき気相法を含む。金属支持構造の表面にて銅を堆積させる適当な方法は、共同譲渡された米国特許第6,376,708号、およびUS-2002-0019564-A1として公開された、共同譲渡および同時継続の米国特許出願シリアル番号09/832,541に記載されている。米国特許第6,376,708号および米国公開番号 US-2002-0019564-A1の全文をここに出典明示して本明細書の一部とみなす。
【0052】
銅は、注目する大部分の支持構造金属と少なくとも部分的に混和でき、ニッケルとは完全に混和できることに注目することは重要である。かくして、銅堆積プロセスの結果、触媒は、外層またはコーティングのごとき区別される相の一部分として支持構造の表面にて、表面層の一部分として支持構造の表面にて、銅、より詳細には、銅含有活性相を有するか、あるいはその銅は支持構造の表面から支持構造のバルクに移動し得ることが判明した。特殊な理論を持つことなく、触媒表面はその堆積およびアルコール改質方法の反応条件下で移動、焼結または再構築できる結果、銅含有活性相において形態を変更できると考えられる。それでもなお、銅堆積プロセスの結果、新たに調製された触媒の表面にて、またはその付近にて優位に存在する析出した銅で触媒の銅含量が全体的に増加し、析出前よりも銅が富化することが判明した。
【0053】
a.銅の電気化学的置換析出
前記のごとく、銅は、電気化学的置換析出を介して金属支持構造の表面に堆積でき、支持構造と接触する銅塩溶液中の銅イオンは、支持構造の表面付近の非銅金属が酸化されるにつれ銅金属に還元される。今度は、銅金属は、支持構造の表面上にコーティングを形成するが、非銅イオンは溶液に入る。電気化学的置換析出に関連した一般的な議論は、例えば、KrulikおよびMandich1, 「Metallic Coatings(Survey)」, Kirk-Othmer Encyclopedia of Chemical Technology, 第4版, Vol. 16, pp. 258-91(J.I. KroschwitzおよびM. Howe-Grant, eds., Wiley, New York, NY, 1995)に見出すことができる。銅の金属スポンジ支持構造への電気化学的置換析出のより具体的な議論は、共同譲渡された米国特許第6,376,708号(ここに出典明示して本明細書の一部とみなす)に見出すことができる。
【0054】
銅の金属支持構造への堆積についての特に好ましい方法において、電気化学的置換析出は、塩基性条件下で処理し、続いて、酸性条件下で電気化学置換析出を行う。同様の特に好ましい具体例において、酸性工程において銅を添加しないが、塩基性工程の間に支持体上に既に析出した一価の銅が溶解し、再析出するために銅の再析出は生じる。この手順は、後記の実施例6に記載されている。好ましくは、金属支持構造には、銅析出の時点にて実質的に表面酸化がない。金属支持構造が酸化された表面を有する(例えば、6ヶ月以上の間(水中でさせ)支持構造が空気に曝露される)場合において、支持構造を還元剤で前処理することが特に好ましい。例えば、支持構造は、好ましくは、25グラムの金属支持構造当たり少なくとも約1gの水素化ホウ素ナトリウムを好ましくは含み、かつpHが少なくとも約10を有する水素化ホウ素ナトリウム溶液中で撹拌できる。一般的には、室温にて約5分間〜約2時間室温にて該支持構造を還元剤と接触させると、表面酸化の支持構造を実質的になくすのに十分である。
【0055】
2工程の塩基性/酸性の電気化学的置換析出を開始するために、金属支持構造は、水またはアルコール溶液中、好ましくは水中でスラリー化させ、そのpHを7に調整する。銅塩を金属支持構造スラリーに、好ましくは銅およびキレート剤、特に、EDTAのごときアミンキレート剤を含む溶液として添加する。好ましくは、銅塩溶液は、金属支持構造について約10重量%〜約30重量%の銅を含有する。網羅的なリストを供することなく、置換析出に適当な銅塩には、例えば、銅の硝酸塩、硫酸塩、塩化物および酢酸塩が含まれる。二価の状態における銅(すなわち、Cu(II))を含有する塩は、典型的には、最も好ましい。一価および三価の銅を含有する塩を用いることができるが、それらは安定ではなく、商業的にほとんど入手できず、および/またはアルカリ混合物中で不溶性であるために典型的にはあまり好ましくはない。
【0056】
次いで、(NaOHのごとき)アルカリ金属水酸化物または他の適当な塩基の溶液を、好ましくは連続的に撹拌し窒素を分散させつつスラリーにゆっくり添加する。アルカリ金属水酸化物溶液は、好ましくは、銅塩について少なくとも1モル当量のアルカリ金属水酸化物、より好ましくは、銅塩について約1.1〜約1.6モル当量のアルカリ金属水酸化物を含有する。この工程は置換析出反応を含むが、支持構造からの酸化された一部分の金属は、支持構造と密接に関連したままであり、引き続いての酸性工程において除去される。さらに、その第一の塩基性置換析出の結果、その支持構造の表面にて酸化第一銅(CuO)ならびに金属性の銅を析出する。
【0057】
塩基性置換析出の後、その上澄みをデカントまたは他の手段により取り出し、銅をさらに、酸性条件下で触媒支持構造の表面上に析出させる。デカンテーション後に、金属支持構造をアルコールまたは水溶液で再度スラリー化させる。酸性緩衝溶液を金属支持構造スラリーに添加して、pHを約4未満に低下させる。緩衝液の温度は、好ましくは、約40℃と約90℃との間である。その酸性緩衝液は、溶液中の残存する金属をコントロールできるいずれかの適当なキレート剤を含み、引き続いてpHを低下できる。より詳細には、酸性緩衝液は、メッキ浴中のpHを約1〜約4に維持するために約1〜約4のpKaを有する。好ましくは、酸性緩衝液は、グルコン酸/グルコン酸塩緩衝液である。グルコン酸は、溶液中に存在する残留アルミニウムイオンに対する良好なキレート剤であるために、ニッケルを含む金属支持構造の表面上に銅を析出させるために好ましい。さらに、リン酸に基づく緩衝液の使用は、不溶性のリン酸塩沈殿物を形成するリスクのために一般的にはあまり好ましくはない。次いで、前記のごとき銅塩は、連続的に撹拌し窒素を加えつつ約5〜約40分間の期間にわたり金属支持構造スラリーに、好ましくは銅塩溶液として添加し得る。好ましくは、実施例6に記載のごとく、約0.2〜約0.4モル当量の硫酸は、銅塩溶液に代えて添加される。この手順は、水性ガスシフト反応につき活性の改良に導く。その後、撹拌を中断し、デカンテーションまたは他の手段により、触媒を沈降させ上澄みを除去できる。
【0058】
銅メッキ法は、触媒構造がペレットまたはモノリスの形態である場合の前記のものとは異なることに注目することは重要である。例えば、ペレットの形態で商業的に入手可能な金属スポンジ支持体はしばしば不完全に活性化される。一般的には、商業的に入手可能なペレット支持体の活性化は、ある深さまで、典型的には、約200μmまでの大部分のアルミニウムを除去し、金属スポンジ型構造を生成することを含む。しかしながら、ペレットのコアは、典型的には、ゼロ価のアルミニウムが豊富な、かなりの濃度の未活性化の合金を含む。かくして、該コア中のアルミニウムは、改質条件下で蒸気およびエタノールと反応し、クラックの形成に導く結果、機械強度を損失させる。結果的に、完全に活性化された金属スポンジ支持体が好ましい。完全に活性化された材料の例は、米国特許第6,284,703号に記載された活性化ニッケルの中空球(hollow sphere)である。
【0059】
さらに、拡散により固定床支持体の内部にメッキを限定できる。かくして、拡散速度−対−メッキ反応速度の比がより低温にてより好ましいために室温以下にて固定床支持体のメッキを行うことが好ましい。また、メッキ浴中の増大させた銅濃度の使用は、大部分の銅が支持体の外部領域で析出により消費されると生じかねない支持体の内部における銅濃度の過剰な枯渇を回避するために望ましい。固定床支持体のための好ましいメッキ手順の例を実施例10に記載する。
【0060】
改質条件下で機械的に丈夫である触媒調製のための別法の好ましい具体例は、まず、典型的には溶射により、メッキおよび改質条件下で熱および化学的に安定である基材にニッケル−アルミニウム合金の層を堆積させることである。非金属基材を用いることができるが、適当な基材は鋼またはもう一つの金属を一般的に含み得る。層の厚みは、好ましくは、5〜500μm、より好ましくは、10〜150μmである。支持された金属スポンジフィルムの調製は、米国特許第4,024,044号、およびSillittoら, Mat. Res. Soc. Sym. Proc., vol. 549, pp. 23-29(1999)に記載されている。ニッケル−アルミニウム合金の層は、金属支持構造を提供し、好ましくは銅メッキに先立ち活性化される。
【0061】
b.銅の無電解メッキ
別法として、無電解メッキを用いて、金属支持構造の表面上に銅含有活性相を堆積し得る。電気化学的置換析出のように、無電解メッキは、支持構造と接触する溶液中で銅イオンを銅金属に還元することを含む。しかしながら、電気化学的置換析出とは異なり、実質的に全ての銅イオンが支持構造自体よりもむしろ外部の還元剤により還元される。銅イオンは溶液中で銅金属まで還元されるので、銅金属は、支持構造の表面上にコーティングを形成する。金属支持構造の表面上に銅を堆積させる無電解メッキの使用は、共同譲渡された米国特許第6,376,708号(ここに出典明示して本明細書の一部とみなす)に詳細に記載されている。
【0062】
3.一体化された銅含有活性相
本発明のもう一つの具体例において、触媒は、金属支持構造上に被覆された銅を含まない(すなわち、触媒の表面上に析出したか、または触媒の表面を被覆する区別される銅含有活性化相は存在しない)。むしろ、銅は銅含有活性化相をその表面にて有する触媒組成物において所望の特性を供する他の金属と混合される。該触媒組成物は、実質的に均質であり得る。好ましくは、かかる触媒は、銅含有金属スポンジ(例えば、ニッケル/銅スポンジ)の形態である。
【0063】
4.任意の補足金属
触媒は、前記の触媒のバルクを含む銅および非銅金属に加えて、1以上の補足金属を所望により含有し得る。適当な補足金属は、クロム、チタン、ニオブ、タンタル、ジルコニウム、バナジウム、モリブデン、マンガン、タングステン、コバルト、ニッケル、ビスマス、アンチモン、鉛、ゲルマニウムおよび亜鉛よりなる群から選択される。例えば、銅触媒の寿命を延長し、水性ガスシフト反応に対するそれらの活性を保存または増強するための補足金属、特に、亜鉛およびクロムの使用は、当該技術分野においてよく知られており、Lloydら, Catalyst Handbook, pp. 309-312、(第2版, M.V. Twigg ed., Manson Publishing, London, 1996)により記載されている。1以上のかかる金属の存在は、触媒の寿命を延長する、すなわち、容認できないレベルまでのその活性低下の前に、触媒をアルコール改質に用いることができる期間を増加させる傾向にある。前記の元素のうちバナジウム、クロム、モリブデン、亜鉛およびその組合せは、特に好ましく、酸化物の形態で触媒の表面上に好ましくは存在する。
【0064】
補足金属の量は広範囲の限度内で変更できる。好ましくは、補足金属の合計濃度は、触媒中で100万重量部の銅当たり少なくとも約10重量部である。より好ましくは、触媒中の補足金属の合計濃度は、約0.002重量%〜約5重量%、より好ましくは約0.002重量%〜約2.5重量%、なおより好ましくは約0.005重量%〜約2重量%、さらにより好ましくは約0.5重量部%〜約1.5重量部%である。典型的は、補足金属の合計濃度は、約5重量%を超えない。より高濃度の補足金属を用いることができるが、かかる濃度を超えることにより通常さらなる利点は得られず、その触媒の活性は一般的に低下する。
【0065】
1以上の補足金属は、金属支持構造中および/または該支持構造の表面上の銅含有活性相中に含まれ得る。合金−金属支持構造中に補足金属を含むことが望ましい場合、その補足金属は、好ましくは、該合金が形成された時点にて合金に組み込まれる。支持構造の表面上の銅含有活性相中に補足金属を含むことが望ましい場合、その補足金属は、いくらかの場合には、銅と同時に堆積され得る。しかしながら、銅が(前記の)置換析出または無電解メッキを介して堆積される場合、補足金属が置換析出条件下で溶解でき、無電解メッキを阻害しかねないために、補足金属は、銅が堆積された後に触媒に好ましくは添加される。補足金属は、単に触媒と補足金属の塩(例えば、硫酸塩、硝酸塩、塩化物等)を含有する水溶液と接触させることにより触媒表面に典型的には添加し得る。メッキプロセスの完了後に本発明の金属支持構造の表面上の堆積にも適当である、補足金属の酸化物を銅スポンジ上に堆積させる方法は、Franczykら、米国特許第5,292,936号(ここにその全開示を出典明示して本明細書の一部とみなす)に見出すことがきる。
【0066】
B.好ましいアルコール改質反応条件およびパワー系統
本発明のアルコール改質方法は、一般的には、脱水素反応ゾーン内でアルコール反応物を含む供給ガス混合物と、前記の銅含有触媒を含む触媒床とを接触させることを含む。
【0067】
脱水素反応ゾーンは、吸熱反応を開始および持続するための低い背圧(back-pressure)および効率的な熱移動を保証するように構成された連続フローシステムを含む。効率的な熱移動を達成するための改質器デザインはよく知られ、例えば、Buswellら、米国特許第3,522,019号およびAutenriethら、米国特許第5,935,277号および第5,928,614号に記載されている。これらの各特許は、熱が熱伝導壁を介して熱源との熱交換により熱が供給される触媒性のアルコール改質反応器を記載する。脱水素反応ゾーンを加熱する好ましい熱源には、最もしばしば、改質されるべきアルコールの一部分の部分的酸化からのまたはアルコールもしくは他の燃料源を用いて別々の燃焼反応からの排出ガスを含む。後記のごとく、本発明の特に好ましい具体例は、燃焼室、好ましくは脱水素反応ゾーンの下流の燃焼室からの排出ガスを脱水素反応ゾーンのための熱源として使用する。
【0068】
アルコール改質反応は、強力に吸熱性であり、脱水素反応ゾーンへの効率的な熱移動は良好な変換に必要である。重要なことには、本明細書に記載された金属支持構造を含む銅含有触媒は、セラミック支持体を含む通常の改質触媒に比較して優れた熱伝導率を示す。例えば、Gerstenら, 「The Physics and Chemistry of Materials」, Wiley, New York, 2001, pg. 144に記載されるごとく、銅およびニッケルの300Kでの熱伝導率は、各々、401W/m Kおよび91W/m Kである。比較するならば、通常の改質触媒材料の300Kでの熱伝導率について、α−アルミナは36 W/m Kであり、シリカでは1.4 W/m K、マグネシアでは36 W/m Kである。本発明による金属支持構造を含む銅含有触媒は、好ましくは少なくとも約50 W/m K、より好ましくは少なくとも約70 W/m K、特に少なくとも約90 W/m Kの300Kでの熱伝導率を示す。
【0069】
アルコール改質反応は、約100℃を超える温度にてガス相中で一般的に行われる。しかしながら、本発明により、約400℃未満の温度にて供給ガス混合物中でアルコールを改質することが好ましい。より好ましくは、改質反応は、約150℃〜約400℃の温度、より好ましくは、約200℃〜約375℃の温度、最も好ましくは、約250℃〜約325℃の温度にて行われる。例えば、銅メッキ、金属スポンジ触媒、特に、ニッケルまたは銅でドープしたニッケルのいずれかを含む銅メッキ金属スポンジを本発明のプロセスにおいて用いる場合、エタノール改質は、約250〜約300℃の温度にて十分高い変換を行うことができることが判明した。
【0070】
改質反応は吸熱性であるので、熱を脱水素反応ゾーンにおいてさらなる所望の温度を維持するために供給しなければならない。一般的に、アルコール改質反応中の触媒床における改質反応の温度は、当該技術分野において知られたいずれかの手段により制御し得る。好ましくは、触媒床の温度をその長さを横切って等温性とするか、またはポジティブな温度勾配(すなわち、該床の入口および出口の間の温度増加)を有するように制御される。例えば、触媒床中の所望の温度プロフィールを維持するのに必要な脱水素反応ゾーンにさらなる熱を供給しつつ、そのアルコール反応物ガスは、所望の触媒床出口温度未満の約10℃〜約50℃の温度にて触媒床に導入し得る。
【0071】
エタノールを改質する場合、狭い温度範囲内の操作および過剰な温度の回避が、過剰なメタン副生成物の形成を減少させることに注目することは重要である。メタンの形成(すなわち、「メタン化」)は、反応物が生成メタンのモル当たり3モルの水素の割合にて有用な水素生成物を消費するために望ましくない。また、過剰なメタン化は、低圧にて操作することにより回避できる。結果的に、触媒床への入口での圧力は、好ましくは、約30psig未満、より好ましくは、約10psig未満である。
【0072】
脱水素化反応物は、電力の生成のために水素燃料電池へ導入し得る水素を含むガス状生成混合物を生成する。結果的に、本発明の特に好ましい具体例は、燃料電池内で電力を生成するのに用いる水素を生成するためのメタノール、エタノールまたはその混合物のごとき第一級アルコールの脱水素化である。例えば、本発明の生成混合物において生成された水素に適当な適用は、高分子電解質燃料電池、アルカリ燃料電池、リン酸燃料電池、溶融炭酸塩型燃料電池および固体酸化物燃料電池における水素燃料源としてのその使用を含む。高分子電解質燃料電池、特に、プロトン交換膜(PEM)燃料電池の燃料源としての水素の使用は、一般的に最も好ましい。PEM燃料電池は、典型的には、約80℃未満の温度で作動する。かくして、より低温でのアルコール改質を行う本発明の能力は、パワー系統の設計を単純化でき、エネルギー効率を改善できる点で有利である。
【0073】
本発明のアルコール改質の生成混合物を燃料電池のための水素源として用いる場合、生成混合物中の一酸化炭素の量を最小化するために前記の水性ガスシフト反応と組み合わせて脱水素反応を行うことが好ましい。結果的に、該アルコールと、脱水素ゾーンに供給された供給ガス混合物中の水とを混合して、水性ガスシフト反応により生成物質蒸気からの一酸化炭素の除去を促すことがしばしば好ましい。例えば、該アルコールは、脱水素反応ゾーンに導入する前に、好ましくは、少なくとも1モル当量の水、より好ましくは、約1.05〜約1.2モル当量の水と混合される。
【0074】
一般的には、本発明の前記の触媒は、水性ガスシフト反応に対していくらかの活性を有する。しかしながら、いくらかの具体例において、さらなる水性ガス転化触媒を使用して、生成混合物中の均質でより低い一酸化炭素濃度を達成することは好ましいであろう。さらなる水性ガス転化触媒を用いる場合、水性ガス転化触媒は、改質器触媒床内、または同一または別々の触媒床内の改質触媒の下流に位置するかのいずれかの改質触媒と混合し得る。
【0075】
別々の水性ガス転化触媒を利用する本発明の具体例について、最も通常の水性ガスシフト反応は典型的には本発明の改質触媒の典型的な操作温度より低温の約200℃にて操作されることに注目することは重要である。結果的に、水性ガス転化触媒を接触させる前に改質物質の生成混合物を冷却することが必要または望ましいであろう。一般的には、生成物質ガスを冷却するための当該技術分野において知られたいずれの手段も熱交換器を含めて用いることができる。1つの具体例において、水は、改質器と水性ガスシフト反応器との間の改質物質ガスに導入し得る。かかる具体例において、改質器後の水の導入は、改質器に供給されたアルコール−水供給ガス混合物中の水の量を低下または消失させるのを可能とするであろう。
【0076】
本発明に必要でないか、または非常には重要でないことであるが、本発明のある具体例において、脱水素反応ゾーン、水性ガス転化触媒床および/または燃料電池を出る改質物質蒸気中に残存する一酸化炭素の低下または他の管理のために1以上のさらなる手段を用いることが望ましいであろう。一酸化炭素の管理または低下のための適当な手段の例は、一般的に、Petterssonら, Int'l J. Hydrogen Energy, vol. 26, pgs 243-64(2001)により記載され、一酸化炭素の選択的酸化、一酸化炭素のメタン化およびアノードの空気ブリードの配置を含む。
【0077】
脱水素ゾーン内で生成された水素を燃料電池に供給して電力を生成する好ましい具体例において、脱水素反応は、好ましくは、前記の銅含有触媒の充填床を含む固定床反応器内で行われる。好ましくは、寸法は、例えば、触媒粒子を分離し、触媒粒子間の間隔を維持するように触媒床へ不活性固体希釈剤を添加することにより背圧を最小化するように設定される。希釈剤は、好ましくは、エタノールのエチレンへの脱水を触媒でき、反応条件下で熱的に安定である酸部位のない材料である。炭化ケイ素および酸活性化していない活性炭は、好ましい希釈剤の例である。
【0078】
別法として、背圧は、粉末よりもペレット形態の金属スポンジ支持構造を含む銅含有触媒を用いることにより最小化できる。かかる型の支持構造の例には、欧州特許番号EP 0 648 534 A1および米国特許第6,284,703号(これらの開示をここに出典明示して本明細書の一部とみなす)に記載されたニッケルスポンジペレットが含まれる。特に、固定床触媒として用いるニッケルスポンジペレットは、例えば、W.R. Grace & Co.(Chattanooga, TN)およびDegussa-Huls Corp.(Ridgefield Park, NJ)から商業的に入手可能である。さらに別法の好ましい具体例において、触媒は、改質反応器内の背圧を最小化するために本願発明の触媒を適当な小孔(foraminous)基材(例えば、ハニカム)の表面に組み込むことにより生成されたモノリスの形態で用いることもできる。
【0079】
図1を参照して、本発明によるエタノールの改質からのパワーの生成のためのシステムの一つの具体例が記載される。後記は、エタノールの脱水素を達成するための特に前記の銅含有触媒の使用を開示するが、その原理は、メタノール、またはエタノールおよびメタノールの混合物を含む他の第一アルコールを脱水素化するために一般的に適用可能であると認識すべきであろう。
【0080】
エタノールおよび水の混合物を含むアルコール/水供給は金属支持構造を含む銅含有脱水素触媒の充填床101を含む脱水素反応ゾーンへ導入される。エタノール、水混合物を含む供給は、好ましくは、アルコール改質の当該技術分野において一般的に知られるごとく、例えば、蒸発器内で気化した後に(示さず)、ガス状供給混合物として脱水素反応ゾーンに導入される。触媒床101は、熱ジャケット102で加熱して、脱水素ゾーン内を所望の温度に維持する。触媒床101内のエタノール/水の改質は、水素、一酸化炭素、二酸化炭素、水およびメタンを含む生成混合物を生成する。次いで、その生成混合物は、適当な水性ガス転化触媒を含むさらなる触媒床103を介して通過して、選択的に一酸化炭素を二酸化炭素に酸化する。コンパクトな水−気体転化モジュールが開発され、例えば、Hydrogen Source(South Windsor, CT)から商業的に入手可能である。次いで、触媒床103に存在する生成混合物を適当な温度(一般的には80℃以下)まで冷却し、酸素源(例えば、空気)と共に水素燃料電池105(例えば、プロトン交換膜燃料電池)に導入して、電力を生成する。電力は、その燃料電池内で水素と酸素との反応により生成して、水を生成する。燃料電池は、燃料電池適用において通常の複数の燃料電池(すなわち、燃料電池の「スタック」)を含み得ると理解されるべきである。
【0081】
次いで、水蒸気、メタンおよび二酸化炭素を含む燃料電池排出物は、酸素源(例えば、空気)を供給された燃焼室107内にて空気で燃焼される。適当な燃焼室は、さらなる電力を生成する発電機109を駆動するためにガスタービン、ヒートエンジン、内燃機関、または他の装置を含み得る。発電機109からの熱い燃焼排出物は、脱水素ゾーン中の改質器触媒床101を加熱するための熱源としての熱ジャケット102に再利用し得る。
【0082】
また、燃料電池排出物の燃焼は、パワー系統からの排出を処理する便利な手段を提供する。アセトアルデヒド、一酸化炭素、残余のアルコールおよび/またはメタンのごとき燃料電池排出物の望ましくない成分は、燃焼室107内の燃焼により二酸化炭素に主に変換されるであろう。残余の水素は水に酸化されるであろう。漏れた水素排気は、オゾン層に対する脅威を示し得ることが最近報告されている。(Trompら、Science, 300, 1740-2,(2003)参照。) 加えて、(通常のPEM燃料電池パワー系統の排気ガスとは異なり)内燃機関からの排気は、触媒変換器が効率的に機能するのを可能とし、有害な放出におけるさらなる低減を可能とするように十分熱い。
【0083】
好ましくは、車両のパワー適用において、燃焼電池排出物、主に、微量の水素を含む二酸化炭素およびメタン、水蒸気および一酸化炭素は、電力および/または機械力を提供できる燃焼系に導入される。かかる適用において、燃焼系には、車両を駆動するトルクを生成する内燃機関またはさらなる電力を生成するための発電機と組み合わせた内燃機関が含まれ得る。
【0084】
特に好ましい具体例において、該パワー系統には、アルコール、メタンまたはその混合物を燃焼できるフレキシブル燃料内燃機関が含まれ、それを用いて、燃料電池排出物を燃焼させ、機械力の源を供して、車両を駆動する。その燃料電池により生成された直流を供給された1以上の電動モーターは、さらなるパワーを供し、その配置はハイブリッド車両に用いたものと同様である。かかる好ましいパワー系統を燃料としてエタノールを用いて図2に示す。
【0085】
図2を今や参照すると、わずかにモル過剰の水を含む水−エタノール供給混合物を、銅メッキしたニッケルスポンジ改質触媒201Aおよび水性ガス転化触媒201Bを含む充填床201を含む脱水素反応ゾーンへ導入し、次いで、熱ジャケット202により加熱する。そのアルコールを改質して、従前に記載した充填床内の水素、二酸化炭素およびメタンを含む改質物質を生成する。脱水素ゾーンからの改質物質排出物を、酸素源(例えば、空気)と共に適当な温度にて水素燃料電池205に供給する。メタンおよび二酸化炭素は、PEM燃料電池の効率を低下させない。燃料電池205からの排出物、主としてメタンおよび二酸化炭素を内燃機関207内で酸素源(例えば、空気)と燃焼させる。次いで、内燃機関から熱排気を、好ましくは触媒変換器を介して、該システムを排気として去る前に熱ジャケット202についての熱源として用いる(示さず)。このように、内燃機関からの余熱を吸熱性エタノール改質反応に必要とされる熱を供給して用いるために配置する。別々の熱ガス流および改質触媒床との間の熱交換を可能とする改質器設計は、当該技術分野においてよく知られている。
【0086】
アルコール改質反応の吸熱性質のために、車両輸送適用における燃料電池の操作へのかなりの障害は、開始にて生じる。特に、燃料電池は、車両の「コールド・スタート(cold start)」(すなわち、改質器および燃料電池が十分なパワーを生成して車両を駆動する前にそれらの設計操作温度を達成するまでの始動での時間遅延である)を可能としない。かくして、本発明の特に好ましい具体例において、図2に関する前記燃焼駆動パワーサブシステムの内燃機関207は、アルコール供給または燃料電池排出物から分離したもう一つのコールド・スタート燃料源211を用いて操作し得るフレキシブル燃料内燃機関である。内燃機関へのアルコール供給は、好ましくは無水であり、従って改質反応器へのエタノール−水供給から分離する。始動にて、内燃機関は、燃料として別々のコールド・スタート燃料源211からのアルコールを用いて操作して、通常の内燃機関による動力を備えた車両と同様のコールド・スタート効率を提供する。正常な操作の間、改質器および燃料電池はそれらの設計操作温度に達した後、車両は、主として、水素燃料電池により発生した直流を供給された電気モーターにより動力を備え得る。内燃機関は、車両により必要とされるベースラインパワーのいくらかの部分を相殺するように機能し続けるが、内燃機関は、別々のコールド・スタート燃料源211からのアルコールよりむしろ燃料電池排出物からのメタンにより主として燃料を供給される。駆動条件がさらなる一時的パワーを必要とするならば、この時車両はさらなるトルクに内燃機関を利用し得る。さらに、内燃機関に対する燃料電池排出物中のメタンは、別々のコールド・スタート燃料源211からのさらなるアルコール供給により補足して、かかるさらなるトルクを生成し得る。また、さらなる補助パワーをバッテリーにより供給し得る。
【0087】
より良好なコールド・スタートおよび一時的パワー効率を供することに加えて、この好ましい配置は、パワー系統が、実質的に低コストで構築されるのを可能とする。水素燃料電池は、一般的に、車両用の燃料電池ベースのパワー系統の最も費用がかかる構成要素である。本明細書に記載されたパワー系統は、ピークパワーが内燃機関により補足されるために通常の設計よりも実質的に小さな燃料電池容量を必要とする。該設計は、十分な燃料電池容量のみを必要として、ベースラインパワーの一部分を提供し、他の部分は、アルコールおよび/またはメタンを操作する内燃機関により供される。
【0088】
実施例
以下の実施例は、本発明をさらに例示および説明することを単に意図するものである。従って、本発明は、これらの実施例におけるいずれかの細部に限定されるものではない。
【0089】
銅メッキ金属触媒の調製についてのさらなる実施例は、共同譲渡された米国特許第6,376,708号ならびに米国2002−0019564-A1として公開された、共同譲渡および同時係属の米国特許出願第09/832,541号に記載されている。米国特許第6,376,708号および米国公開番号 US-2002-0019564-A1の全テキストをここに出典明示して本明細書の一部とみなす。
【0090】
実施例1 銅メッキしたニッケルスポンジ触媒の調製
本実施例は、置換析出を用いる銅メッキしたニッケルスポンジ触媒の調製を示す。
ニッケルスポンジ支持構造(68.7g、W.R. Grace, Chattanooga, TNからのRANEY 4200)をガラス製ビーカー中の窒素を分散させた水に懸濁した。14M NaOH中の12% NaBH(50g)の溶液を撹拌しつつ添加した。活発な泡立ちが1分間観察された。10分間の撹拌後、触媒を沈降させ、上澄みをデカントした。さらなる部分の窒素を分散させた水(400ml)を添加し、短時間で撹拌した。触媒を沈降させた後、すすぎ液をデカントした。
【0091】
第3の部分の窒素を分散させた水(250ml)を触媒に添加した。氷酢酸(約8ml)を添加して、pHを5まで低下させた。次いで、触媒懸濁液を水(300ml)中のCuSO・5HO(54.0g、該触媒について20重量%銅)およびEDTA四ナトリウム2水和物(108.0g)の窒素を分散させた溶液と接触させた。撹拌を続け窒素を分散させつつ、NaOH(2.5N、73.0ml)を103分間にわたり添加した。懸濁液のpHを6.8から11.3まで上昇した。触媒を沈降させ、ビーカーを加熱テープで覆い、青色の上澄みをデカントした。
【0092】
CuSO・5HO(67.5g、触媒について25重量%銅)を窒素を分散させた水(200ml)に溶解して、銅溶液を形成した。触媒懸濁液は、50%グルコン酸(159.0g)、2.5N NaOH(54ml)および窒素を分散させた水(250ml)の熱(74℃)混合物を触媒に添加することにより形成させた。次いで、銅溶液を95分間にわたり撹拌しつつ触媒懸濁液に添加し、熱を熱テープでビーカーに適用した(最終温度72℃)。pHを3.8から3.1に低下させた。触媒を沈降させ、緑色の上澄みをデカントした。
【0093】
触媒は窒素を分散させた水(700ml)で濯いだ。そのすすぎ液をデカントし、75.6gの鈍い銅色触媒を回収し、次いで水中で貯蔵した。触媒の組成物は66.1% Ni、30.4% Cuおよび3.5% Alであった。
【0094】
該触媒は、小試料(約1g)の触媒を水に懸濁した場合に2つの画分よりなることが判明した。その画分は、銅色の下層および灰色の上層より構成された。そのBET表面積および表面ニッケル濃度をSchmidt、「Surfaces of Raney Catalysts」, Catalysis of Organic Reactions, pp. 45-60(M.G. ScarosおよびM.L. Prunier編, Dekker, New York,1995)に記載された方法により130℃にて水素乾燥後に決定した。その分析結果を表1に示す。RANEY 4200基質についてのデータを比較のために示す。
【0095】
【表1】

【0096】
実施例2 銅メッキしたニッケルスポンジ触媒を用いるエタノール改質
本実施例は、エタノール改質のための銅メッキされたニッケルスポンジ触媒の使用を示す。
実験は、コイルケーブルヒーターで覆われたステンレス鋼304管(457.2mm長さ、12.7mm内径)を含むステンレス鋼反応器内で行った。エタノール供給を予め加熱するための管を反応器の頂部に連結した。触媒塊は、管反応器の底部にて中空挿入部(hollow insert)に入れたガラスウールプラグ上に配置した。熱電対を触媒床の底部に配置させ、熱電対を用いて反応温度をモニターし、コイルケーブルヒーターを用いて反応温度を制御した。排出物は、熱伝導率検出器を用いてガスクロマトグラフィーにより分析した。その反応器の出口は雰囲気圧にあった。
【0097】
反応器は、下記の通り充填した。新たなグラスウールプラグを挿入後、325メッシュの炭化ケイ素の水性スラリー(1.0g)(Alfa Aesar、Ward Hill、MAから入手できる)を反応器に通し、ガラスウールの頂部上で触媒床のベースを形成した。次いで、炭化ケイ素のスラリー(1.5g)および実施例1の触媒(2.02g)を反応器に通した。漏出は観察されず、十分な触媒充填が反応器内に維持されたことを示した。触媒は、使用前に窒素下120℃にて一晩反応器内で乾燥させた。
【0098】
表2は、種々の温度、流速および供給における水の濃度を用いたエタノール改質の結果を示す。触媒は、合計約30時間エタノール改質を行い、表2のデータを得た。メタン収率およびメタンに基づく量バランスは、式6:
【0099】
【化6】

【0100】
に示された分析の不正確さおよびCOのメタン化のために100%を超え得る。また、水素収率が、表2および以下の実施例から省略されることに注目されたし。水素をガスクロマトグラフィー中で直接的に測定したが、熱伝導性検出器は、炭素含有分子に比較して水素に対して低感受性を示し、その結果、データにより多くのバラツキを生じさせた。結果的に、水素収率は、一酸化炭素、二酸化炭素およびメタンのごとき炭素含有化合物の収率からより正確に計算できる。
【0101】
【表2】


供給の残余はエタノールを含有した。
【0102】
実施例3 銅メッキしたニッケルスポンジ触媒を用いたメタノールの改質
本実施例は、銅メッキしたニッケルスポンジ触媒を用いたメタノールの改質を示す。
本実験は、70重量%メタノールおよび30重量%水よりなる供給を用いる以外は前記の実施例2に従い行った。その結果を以下の表3に示す。
【0103】
【表3】

【0104】
実施例4 延長された操作期間にわたるエタノールの改質
本実施例は、エタノールの改質における延長された期間の高変換を持続するための本発明の触媒の能力を示す。
【0105】
実験は、最初に反応器に炭化ケイ素(1.0g)を入れ、続いて、実施例1の触媒(2.50g)および炭化ケイ素(5.0g)を含むスラリーを充填する以外は前記の実施例2のごとき実質的に同様の条件下で行った。温度は、反応器の開口部(bore)下方に触媒床の底部上、約10.2cmの位置まで挿入した熱電対によりモニターした。
【0106】
反応器は、触媒床を出る生成混合物の温度が280℃を維持するように操作した。上部熱電対の温度は、相対的に約430℃で一定とした。エタノール/水供給混合物(重量ベースで70:30 エタノール/水)を100sccmの窒素で0.3ml/分の速度にて脱水素ゾーンに導入した。その反応器は、反応器内の圧力を28psigから80psigに上昇させた44時間の間操作した。エタノールおよびアセトアルデヒドはこの期間中生成混合物中で検出せず、メタンへの変換は分析の不正確さ内の100%であった。以下の表4は、実験中COおよびCOへの選択性を示す。
【0107】
【表4】

【0108】
実施例5 温度勾配を有する充填床におけるエタノールの改質
本実施例は、高変換および低メタン化が、低圧、300℃以下の出口温度、および入口温度が出口温度未満である温度勾配にて操作された充填床において銅メッキされたニッケルスポンジ触媒でのエタノールの改質により達成されることを示す。
エタノール供給ストリームを反応器の底にて導入し、触媒床を2つのガラスウールプラグ間の反応器の頂部に配置した実施例2におけるものと同様のコイルケーブルヒーターで覆われた垂直に装備されたステンレス鋼管状反応器(457.2mm長さ、12.7mm内径)を用いた。熱電対を触媒床の上流および下流に配置した。実施例1で調製した触媒(2.50g)を用いた。重量ベースで70%エタノール/30%水の混合物を0.1ml/分の速度にて反応器に供給し、反応器を制御された速度にて加熱して、触媒床排出物の出口温度を275℃に維持した。触媒床の上流の温度は、実験の期間中245℃にて定常であった。反応器の上流圧力は、5psigを超えなかった。
【0109】
表5は、200時間を超える連続的操作にわたる高変換の達成を示す。286時間のオンライン後、出口温度は、300℃に上昇した。この温度で得られたデータを表6に示す。アセトアルデヒドまたはエタノールは、生成混合物中に検出しなかった。また、300℃への温度の増加は、100%まで変換を増加させた。検出可能なメタン化は、実験を通して判明しなかった。
【0110】
【表5】

ND = 検出せず
【0111】
【表6】

【0112】
実施例6 銅メッキしたニッケルスポンジ触媒の調製
本実施例は、同様の変換および優れた二酸化炭素レベルを供給し、Morgensternら(米国特許第6,376,708号)または実施例1の方法よりも少ない硫酸銅を必要とする金属スポンジ基材についてのメッキ方法を示す。また、実験は、高い固体濃度を用い、それにより、排出物量を最小化した。本実施例において、基材および触媒量は、1.16の密度係数を仮定した水置換方法により決定した。
【0113】
ニッケルスポンジ支持構造を窒素を分散させた水を含む1Lビーカーに移し、過剰の水でデカントした。水(400ml)中のCuSO・5HO(47.45g)およびNaEDTA・2HO(94.92g)の窒素を分散させた溶液を触媒に添加し、スラリーを撹拌し、2.5N NaOH(91ml)を48分間にわたり添加した。pHは8.4から11.4に上昇した。青色の上澄みをデカントし、ビーカーを熱テープで覆った。
【0114】
50%グルコン酸(11g)および水(400ml)の熱混合物を触媒に添加した。熱を適用し、濃硫酸(5.70g)および水(50ml)の混合液を43分間にわたり添加した。温度を59℃および60℃の間で定常とし、pHを、5.2から2.2に低下させた。混合物をさらに45分間撹拌した。最終pHは2.8であった。
【0115】
青色の上清をデカントし、窒素を分散させた水(500ml)を添加し、次いでpHを水酸化ナトリウムで7に調整した。この工程は残余のニッケルおよびEDTAを除去するのを助ける。触媒を沈降させ、上澄みをデンカンテーションにより取り出した。51.3gの触媒を回収し、76.8% Ni、19.9% Cu、3.2% Alおよび0.2% Feの組成を有した。
【0116】
実施例7 銅メッキしたニッケルスポンジ触媒を用いたエタノールの改質
本実施例は、ニッケルスポンジ支持構造の表面にて銅を含む触媒の存在下でのエタノールの改質を示す。
実施例6で調製した触媒(2.50g)を前記の実施例2に記載されたものと同一の配置を有する反応器内に入れた。70重量%エタノールおよび30重量%水を含むアルコール供給を、0.1ml/分の速度にて反応器に導入した。出口温度を実験の最初の24時間にわたり300℃まで徐々に増加した。変換は実施例5よりわずかに低いが、COからCOの変換(その水性ガスシフト反応)がかなり大きな範囲まで進行することに注目されたし。また、メタン化は高いが、次の実施例に見られるように、経時的に減少する。
【0117】
【表7】

【0118】
実施例8 延長された操作期間にわたるエタノールの改質
本実施例は、延長された期間にわたるエタノールの等温改質を示す。さらに、実施例はCOの高変換を維持しつつ実施例6の触媒を用いたメタン化における漸減を示す。
【0119】
前記の実施例7のごとく、実施例2に記載されたものと同一の反応装置に、実施例6で調製された触媒(2.50g)を負荷し、70重量%エタノール/30重量%水を含む供給を用いて0.1ml/分の流速にて操作した。触媒床の出口温度を300℃に維持した。アルデヒドまたはエタノールは試行中に生成混合物において検出しなかった。メタン化は、表8に示すように、実験の経過にわたり徐々に低下した。
【0120】
【表8】

【0121】
実施例9 銅メッキしたニッケルスポンジ触媒を用いたメタノールの改質
本実施例は、穏やかな等温に近い条件下でのメタノールの改質についての本発明の触媒の活性および安定性を示す。
実施例1で調製した触媒(2.52g)をポリマービーズ希釈剤(Alltech Associates、Deerfield、ILからの1.0gのTenax TA、80-100メッシュ)と混合し、本実験ために水平に配向させた実施例2に記載した反応器に負荷した。反応器に、0.1ml/分の60%メタノール/40%水混合物(0.1ml/分、1.19:1のモル比の水:メタノール)を供給し、出口温度を320℃に維持した。圧力は試行を通して5psig未満とした。触媒床の上流温度は、約335℃であり、実験中309℃〜369℃に変化した。
【0122】
表9にその結果を示す。エタノールに必要とされるより高温が、90%を超えるメタノールの変換を得るのに必要である。メタン収率は、一般的には、エタノールの数値と同様の約1%である。
【0123】
【表9】

【0124】
実施例10 固定床操作のための銅メッキしたニッケルスポンジ触媒の調製
本実施例は、ニッケルスポンジ固定床支持構造上に銅をメッキすることによる固定床触媒の調製を記載する。
ペレット基材(Degussa AG、Hanau、Germanyから商業的に入手可能な6.79gのMetalyst alpha-1401-X018を含む45ペレット)上に配置したニッケルスポンジ支持構造を窒素パージした120℃での真空下で一晩乾燥した。ペレットを窒素雰囲気下のガラスウールプラグ間のある長さのプラスチックチューブ(9.525mm内径)に負荷し、水(300ml)中にCuSO・5HO(10.67g)およびNaEDTA・2HO(21.34g)を含有するメッキ浴溶液を室温にて触媒に循環させ、2.5N NaOH(26ml)および水(50ml)の混合物を124分間にわたり滴下した。メッキの間、メッキ浴溶液は、窒素雰囲気下で撹拌リザーバ中に保持し、蠕動ポンプを用いて触媒とリザーバとの間を循環させた。pHは、10.0から12.0に上昇した。次いで、触媒を水で濯いだ。
【0125】
次いで、CuSO・5HO(6.67g)、グルコン酸(5.2g)、2.5N NaOH(2.7g)および水(300ml)の混合液をリザーバに加え、室温にて2時間触媒上を循環させた。触媒を水で濯ぎ、次いで、窒素パージした真空下で120℃にて一晩乾燥させた。6.65g(98%)の触媒を回収した。
【0126】
実施例11 等温条件下でのエタノールの改質
本実施例は、(実施例7に記載の反応器を横切る温度勾配を有するエタノール改質に比較した)等温に近い条件下でエタノールを改質するための触媒の効率を示す。
実験は、280℃の温度にてほぼ等温に維持した触媒床を持つ実施例6で調製した触媒を用いたエタノールの改質を包含した。
温度勾配を消失させるために、修飾した反応器を用いた。その供給ガス混合物(70重量%エタノール/30重量%水)は、ステンレス鋼管(1.58mm外径)を通して、ステンレス鋼球(3mm直径および4mm直径)を充填し、ケーブルヒーターで覆われた垂直のステンレス鋼管(457.2mm長さ、9.525mm内径、12.7mm外径)よりなるプレ−ヒーターに0.10ml/分にてポンプで注入した。供給管をケーブルヒーターで渦巻きに覆い、次いで底部にてプレ−ヒーターに連結した。
【0127】
プレ−ヒーターの頂部(出口)は、2つの非活性化ガラスウールプラグ間に充填した実施例6で調製された触媒(2.49g)を含むステンレス鋼管(177.8mm長さ、9.525mm内径、12.7mm外径)に連結した。上部(反応器)管を別々のケーブルヒーターで覆った。プレ−ヒーターおよび反応器間に連結して位置した熱電対を用いて、プレ−ヒーターを制御し、触媒床の上流の温度を一定に維持し、一方、触媒床の(下流の)直上に配置した熱電対はケーブルヒーターを制御し、触媒床の下流(出口)温度を280℃に維持した。両温度は2時間以内に安定化し、1℃内で一定のままであった。全組立てを断熱し、ガスクロマトグラフィー分析のための下流システムは、実施例2記載されたものと同一であった。
【0128】
表10は、等温に近い条件下での操作により達成した高い変換および安定性を示す。プレ−ヒーターの上流圧力は、実験を通して15psi未満のままであった。等温条件下では、過剰なメタン形成が、8時間で約2%の定常状態値まで減衰したことに注目されたし。微量のエタノールがみられたが、定量限界未満であった。アセトアルデヒドは、試行の終了時だけに定量可能なレベルに達した。双方は、実験を通して1%未満であった。
【0129】
【表10】

【0130】
実施例12 銅メッキしたニッケルスポンジ固定床触媒でのエタノールの改質
本実施例は、エタノール改質における銅メッキした固定床触媒の効率を示す。
実験は、実施例11に記載された同一の装置内で300℃での等温条件下、実施例10で調製した触媒(1.46g、10ペレット)を用いたエタノールの改質を包含した。供給ガス混合物は、70重量%エタノールおよび30重量%水を含み、0.06ml/分の流速にて導入して、2.50gの触媒および0.10ml/分の供給ガスを用いた前記の実施例において供されたのと同等の流速ないし触媒比を供した。
【0131】
以下の表12にデータにより示すように、固定床材料は、300℃にて高変換(>85%)を達成した。また、固定床触媒は、メタン化の低下がよりゆっくりかつ連続的に引き起こされ、300℃にて約20時間を必要する点で、その粉末触媒とは異なる。
【0132】
【表11】

【0133】
実施例13 固定床触媒に関する種々の温度でのエタノールの改質
本実施例は、種々の温度でエタノールを改質するための固定床触媒の使用を記載する。
実験は、流速および温度を変更しつつ前記の実施例12に記載されたものの続きである。等温条件を維持した。表13に種々の流速での300℃および320℃での触媒の効率をまとめる。
【0134】
【表12】

実験の終わりに、多数の触媒が粉末まで減少することを発見した。構造完全性のかかる喪失は、反応条件下でアルミナを形成するために水蒸気と反応する基材のコアにてアルミニウムを不活性化することに寄与する。
* * * * * * * * *
【0135】
本発明は、前記の具体例に限定されず、また、種々に変更できる。前記の好ましい具体例は、当業者が特定の使用の要求に最も適し得る、その多数の形態において本発明を採用および提供できるように、当業者が本発明、その原理およびその実用化に精通することだけを意図する。
【0136】
(前記の特許請求の範囲を含めた)本明細書の全てにおける「含む」および「包含する」なる用語の使用に関して、特記しない限りは、それらの用語を基本的に用いられることに留意し、排他的により包括的にそれらが解釈されるべきものであり、それらの用語の各々が、この全明細書の構築においてそのように解釈されることを意図するという理解は明らかである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
エタノールを含む供給ガス混合物を約400℃未満の温度にて改質触媒と接触させて、水素を含む改質生成混合物を生成し、該改質触媒が金属支持構造の表面にて銅を含むことを特徴とするエタノールの改質方法。
【請求項2】
該供給ガス混合物を約250℃〜約300℃の温度にて該改質触媒と接触させることを特徴とする請求項1記載の改質方法。
【請求項3】
改質触媒が、300Kにて少なくとも約50W/mKの熱伝導率を有することを特徴とする請求項1記載の改質方法。
【請求項4】
さらに、改質生成混合物からの水素、および酸素を燃料電池に導入して、電力を生成することを特徴とする請求項1記載の改質方法。
【請求項5】
改質触媒が、ブルナウアー−エメット−テラー法により測定された約10m/g〜約100m/gの表面積を有することを特徴とする請求項1記載の改質方法。
【請求項6】
該改質触媒が、少なくとも約10重量%の銅を含むことを特徴とする請求項1記載の改質方法。
【請求項7】
該改質触媒が、約10重量%〜約90重量%の銅を含むことを特徴とする請求項6記載の改質方法。
【請求項8】
金属支持構造が、金属スポンジを含むことを特徴とする請求項1記載の改質方法。
【請求項9】
改質触媒の金属スポンジ支持構造が、ブルナウアー−エメット−テラー法により測定された少なくとも約10m/gの表面積を有することを特徴とする請求項8記載の改質方法。
【請求項10】
金属スポンジ支持構造が、ニッケルを含むことを特徴とする請求項8記載の改質方法。
【請求項11】
金属スポンジ支持構造が、少なくとも約50重量%のニッケルを含むことを特徴とする請求項10記載の改質方法。
【請求項12】
金属スポンジ支持構造が、少なくとも約85重量%のニッケルを含むことを特徴とする請求項11記載の改質方法。
【請求項13】
改質触媒が、約10重量%〜約80重量%の銅を含むことを特徴とする請求項10記載の改質方法。
【請求項14】
改質触媒が、該触媒の表面にて約5〜約100μmol/gのニッケルを含むことを特徴とする請求項10記載の改質方法。
【請求項15】
改質触媒が、ペレットまたはモノリス基材の表面に組み込まれる請求項1記載の改質方法。
【請求項16】
該改質生成混合物がさらにメタンを含むことを特徴とする請求項1記載の改質方法。
【請求項17】
さらに、該改質生成混合物で得られたメタンを内燃機関に供給することを特徴とする請求項16記載の改質方法。
【請求項18】
さらに、該改質生成混合物で得られた水素を内燃機関に供給することを特徴とする請求項16記載の改質方法。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2010−241681(P2010−241681A)
【公開日】平成22年10月28日(2010.10.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−112898(P2010−112898)
【出願日】平成22年5月17日(2010.5.17)
【分割の表示】特願2005−501449(P2005−501449)の分割
【原出願日】平成15年10月16日(2003.10.16)
【出願人】(501231613)モンサント テクノロジー エルエルシー (71)
【Fターム(参考)】