説明

アルミ積層チューブ容器

【課題】 強度や腰を有し、内容物を搾り出しにくい硬いアルミ積層チューブ容器であっても、外観を損なわず、容易に内容物を搾り出しやすいアルミ積層チューブ容器を提供する。
【解決手段】 表面樹脂層(21)、内面樹脂層(22)、バリア層(23)とから構成されるアルミ積層シート材からなるアルミ積層チューブ容器で、最内面の層である内面樹脂層(23)の内容物が接する面(22a)に、シール部の両端部に該当する位置から肩部方向に沿って少なくとも1条のグルーブを筒状胴部の両側内面に設けたことで、硬いアルミ積層チューブでも内容物を容易に搾り出すことが可能になり、かつ、外観意匠に影響を及ぼすことがなく意匠設計の自由度が高まるとともに、グルーブを外面に設けたときのように異物がグルーブ(24)に溜まることがないので極めて衛生的であり、化粧品、医薬部外品、医薬品、歯磨き、食品等が内容物である場合は極めて使い勝手の良い有益なアルミ積層チューブ容器を提供することが可能になった。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、化粧品、医薬部外品、医薬品、歯磨き、接着剤、食品等を収容するアルミ積層チューブ容器に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、アルミ積層チュ−ブ容器としては、特開2001−301777号公報(特許文献1)に開示されるように、少なくとも、表面樹脂層、中間層、および、内面樹脂層を順次に積層した構成からなる積層材であり、更に、該積層材の両端部の最外層である表面樹脂層面と最内層である内面樹脂層面とを重ね合わせ、その対向面をヒ−トシ−ルして筒状胴部を構成し、更に、該筒状胴部の一方の開口部に、肩部、口部からなる頭部を設けたラミネ−トチュ−ブ容器において、上記の表面樹脂層が、ポリエチレン系樹脂層の単層又はポリエチレン系樹脂層を少なくとも1層含む多層樹脂層からなり、また、中間層が、アルミニウム箔またはアルミニウム蒸着膜からなるバリア層からなり、更に、内面樹脂層が、ポリエチレン系樹脂層の単層又はポリエチレン系樹脂層を少なくとも1層含む多層樹脂層からなることを特徴とすることで、例えば、練り歯磨き等の内容物を充填包装して包装製品を製造する際、積層材、ラミネ−トチュ−ブ容器、内容物を充填包装する包装製品の製造時、あるいは、包装製品の貯蔵、販売時等において、十分に耐える強度、腰等を有し、内容物の保香性、保存性等に優れ、例えば、練り歯磨き、食品、化粧品、医薬品、その他等の内容物の充填包装に有用なラミネ−トチュ−ブ容器を製造し得ることができるものが知られている。
【0003】
また、特開2004−59132号公報(特許文献2)の第2の実施例では、当該公報の図5に開示されるように、基材層に対して、該基材層よりも硬い材料で前記基材層に積層された他層に軸対称に2本の凸部を形成したことで、チューブを簡単に扁平状に押し潰すことができるものが知られている。
【0004】
特開2001−219948号公報(特許文献3)では、筒状の胴部主体部分の押し潰し方向に対する両側端部に細溝状に成形された縦溝を設けたことで、容易に押し潰すことができるものが知られている。
【0005】
更に、特開平10−194361号公報(特許文献4)では、チューブ容器の内側に、内側どおしが結合できる凸凹加工を施し、内容物を容易に絞り出すことができるものが知られている。
【0006】
【特許文献1】特開2001−301777号公報
【特許文献2】特開2004−59132号公報
【特許文献3】特開2001−219948号公報
【特許文献4】特開平10−194361号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、特許文献1に開示されたような積層チューブ容器は、内容物からの水蒸気および容器外部から浸透する酸素ガス等を有効に遮断して内容物を保護するため、意匠性を向上させるため、強度、腰等を有するようにするために積層材料にアルミニウム箔を含んで構成されているため、チューブ容器が硬く使用時において、内容物を搾り出しにくいという問題があった。
【0008】
特許文献2に開示されたチューブ容器では、基材層に対して、該基材層よりも硬い材料で前記基材層に積層された他層に軸対称に2本の凸部を形成して、チューブを簡単に扁平状に押し潰すことができるとともに、装飾的効果と触感での識別力を有するようにしたものであるが、それらの装飾的効果や触感での識別力が不要な場合は、かえって外観意匠設計が限定される要因になっていた。
【0009】
特許文献3に開示されたチューブ容器にあっては、筒状の胴部主体部分の押し潰し方向に対する両側端部に細溝状に成形された縦溝を設けて、内容物を容易に押し出すことができるようにしたものであるが、縦溝は筒状の胴部主体部分の表面に半円弧状、U字状、V字状に凹まして構成されているため、使用課程において、手に付着した内容物や、手垢などが縦溝に入り込み易く、外観上、衛生上問題となるものであった。
【0010】
特許文献4に開示されたチューブ容器にあっては、チューブ容器の内側に、内側どおしが結合できる凸凹加工を施し、内容物を容易に搾り出すことができるように構成されているが、成形上の精度を要するとともに、スクラブのような粒子状の固形物を混入させた内容物にあっては、凸凹加工の凹部内に粒子状の固形物が詰まったり、摩擦係数の少ない内容物にあっては、結合が不可能になるという問題があった。
【0011】
本発明はこのような問題を解消し、強度や腰を有し、内容物を搾り出しにくい硬いアルミ積層チューブ容器であっても、外観を損なわず、容易に内容物を搾り出しやすいアルミ積層チューブ容器を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記の課題は請求項1によれば、表面樹脂層、内面樹脂層、バリア層とから構成されるアルミ積層シート材を筒状にした筒状胴部と、前記筒状胴部の端部を溶着して密閉したシール部と、内容物を排出する口部と、前記口部と前記筒状胴部を連結してなる肩部から構成されたアルミ積層チューブ容器であって、内面樹脂層の内容物が接する面に、シール部の両端部に該当する位置から肩部方向に沿って少なくとも1条のグルーブを筒状胴部の両側内面に設けたことで解決される。
【0013】
請求項2によれば、前記グルーブは、複数条であることで解決される。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、表面樹脂層、内面樹脂層、バリア層とから構成されるアルミ積層シート材からなるアルミ積層チューブ容器で、最も内面の層である内面樹脂層の内容物が接する面に、シール部の両端部に該当する位置から肩部方向に沿って少なくとも1条のグルーブを筒状胴部の両側内面に設けたので、使用時において筒状胴部を搾るとき、グルーブがガイドとなって折り畳まれやすくなりその結果、内容物を容易に搾り出すことが可能になるとともに、外観意匠に影響を及ぼさず意匠設計の自由度が高まるとともに、外面にグルーブを設けたときのように異物がグルーブ内に溜まることがないので極めて衛生的であり、化粧品、医薬部外品、医薬品、歯磨き、接着剤、食品等が内容物である場合は極めて使い勝手の良い有益なアルミ積層チューブ容器を提供することが可能になった。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
次に本発明を図1から8に示す実施の形態に基づいて詳細に説明する。
図1は、本発明のアルミ積層チューブ容器の全体を示したもので、(1)はアルミ積層チューブ容器で、アルミ積層シート材を筒状にした筒状胴部(2)、前記筒状胴部の端部を溶着して密閉したシール部(3)、内容物を排出する口部(4)、前記口部(4)と前記筒状胴部(2)を連結してなる肩部(5)から構成される。図2は、図1のアルミ積層チューブ容器の2点鎖線部分を切って展開し、アルミ積層シート材の内側を示した図であり、図3は図2で示されたA−A線断面図である。
【0016】
第1実施例において、アルミ積層チューブ容器(1)の筒状胴部(2)は、アルミ積層シート材からなり、該アルミ積層シート材は、図3に示すように表面樹脂層(21)、内面樹脂層(22)、バリア層(23)とから構成される。表面樹脂層(21)及び内面樹脂層(22)はポリエチレン系の樹脂フィルムからなり、バリア層(23)は内容物である化粧品、医薬部外品、医薬品、食品、接着剤等の成分が外部に浸出することを防止するため、及び容器外部から浸透する酸素ガス等を有効に遮断して内容物を保護し、変質を防止するためにアルミニウム箔から構成される。
このように構成された該アルミ積層シート材を筒状に成形し、端部に口部(4)及び肩部(5)を設けるとともに、もう一方の端部は筒状胴部を平坦に熱溶着してシール部(3)として、アルミ積層チューブ容器(1)としてなるものである。
【0017】
このように構成されたアルミ積層チューブ容器(1)の筒状胴部(2)は、図4から5に示すように通常、口部(4)からシール部(3)方向を見たときに、ほぼ真円、あるいは楕円で構成されるが、この筒状胴部(2)の内面、すなわちアルミ積層シート材の最内面層である内面樹脂層(22)の内容物が接する面(22a)には、シール部(3)の両端部に該当する位置から肩部(5)方向に沿って1条のグルーブ(24)を筒状胴部(2)の両側面に設けた。尚、本明細書において、グルーブとは、細い溝を意味する。
【0018】
このとき、グルーブ(24)は筒状胴部(2)を口部(4)からシール部(3)方向を見たときに真円であれば、シール部(3)と同一の直径方向に対向する両面にグルーブ(24)が設けられることになる(図4参照)。また、楕円であれば、シール部(3)と長径方向の向きは同一であり、長径方向の対向する両面にグルーブ(24)が設けられることになる(図5参照)。すなわち最もアルミ積層チューブ容器(1)の内容物を搾り出しやすいようにグルーブ(24)を設けたのである。
【0019】
また、グルーブ(24)は、断面形状をV字型の細い溝として構成されており、内容物を保護し、変質を防止するためのアルミニウム箔からなるバリア層(23)を損傷してその効果を損なうことがないように、最内面の層である内面樹脂層(22)に設けられている。
【0020】
このようにアルミ積層チューブ容器(1)の筒状胴部(2)の最内面の層である内面樹脂層(22)にシール部(3)の両端部側にグルーブ(24)を設けたので、図6に示す如く、使用時において筒状胴部(2)を搾るとき、グルーブ(24)がガイドとなって折り畳まれやすくなりその結果、内容物を容易に搾り出すことが可能になるものである。
【0021】
また、グルーブ(24)は筒状胴部(2)の最内面の層である内面樹脂層(22)に設けられているので、外観意匠に影響を及ぼすことがなく意匠設計の自由度が高まるとともに、外面にグルーブを設けたときのように異物がグルーブ(24)に溜まることがないので極めて衛生的であり、化粧品、医薬部外品、医薬品、歯磨き、接着剤、食品等を内容物とする場合、極めて使い勝手の良い有益なアルミ積層チューブ容器を提供することが可能になったものである。
【0022】
次に本発明の第2の実施例においては、図7から8に示すように前記グルーブ(24)を片側につき複数条設けて構成した。このように構成することにより、使用時において筒状胴部(2)を搾るとき、グルーブ(24)がガイドとなって、より折り畳まれやすくなり、その結果、内容物を更に容易に搾り出すことが可能になるものである。また、更なる効果としては、アルミ積層シート材の厚みに応じてグルーブ(24)の条数を適宜変更すれば、例えば薄めのアルミ積層シート材であれば、グルーブ(24)は1条、厚めのアルミ積層シート材であれば、グルーブの本数を複数条とすることにより、内容物を搾り出すにあたって最も効率の良くアルミ積層チューブ容器を平坦に折り畳むことが可能となる。
【0023】
本発明は、表面樹脂層(21)、内面樹脂層(22)、バリア層(23)とから構成されるアルミ積層シート材としたが、バリア層が含まれる積層シート材ならばこれに限定されるものではなく、複数の表面樹脂層や複数の内面樹脂層で構成されているものでもよい。例えば、表面樹脂層がポリエチレン系樹脂層の単層又はポリエチレン系樹脂層を少なくとも1層含む多層樹脂層からなり、又、中間層がアルミ箔又はアルミ蒸着からなるバリア層からなり、更に、内面樹脂層がポリエチレン系樹脂層の単層又はポリエチレン系樹脂層を少なくとも1層含む多層樹脂層からなる。内面樹脂層が複数の層で構成されている場合、グルーブ(24)は、実用上の問題がない限り、バリア層に達しない限度で深くするほど、より良好な結果が得られる。ここで、実用上の問題とは、グルーブを複数の層にまたがって設けたときに内容物や外力によって層間剥離する場合や、内容物によるアルミの腐食、物理的外力によるバリア層の亀裂などを指す。
【0024】
また、本発明はアルミ積層チューブ容器に適用したが、これに限定されるものではなく、アルミニウム箔等からなるバリア層のない単層、あるいは積層のチューブ容器であっても良好な結果が得られるものである。
【0025】
さらに、本発明ではグルーブ(24)は、断面形状をV字型としたがこれに限定されるものではなく、U字型、半円型であっても同様な効果が得られることはいうまでもなく、口部にバックレス弁が付いたチューブ容器に本発明を応用すれば、空気が再びチューブ容器内部に入ることがないので、更に使い勝手の良いチューブ容器を提供することが可能になるものである。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【図1】本発明のアルミ積層チューブ容器の全体を示した図である。
【図2】図1のアルミ積層チューブ容器の2点鎖線部分を切って展開した図 である。
【図3】図2で示されたA−A線断面図である。
【図4】真円の筒状胴部とグルーブの関係を示した図である。
【図5】楕円の筒状胴部とグルーブの関係を示した図である。
【図6】筒状胴部を搾る状態を示した図である。
【図7】本発明の第2実施例の展開した図である。
【図8】図7で示されたB−B線断面図である。
【符号の説明】
【0027】
(1)アルミ積層チューブ容器
(2)筒状胴部
(21)表面樹脂層
(22)内面樹脂層
(22a)内容物が接する面
(23)バリア層
(24)グルーブ
(3)シール部
(4)口部
(5)肩部


【特許請求の範囲】
【請求項1】
表面樹脂層、内面樹脂層、バリア層とから構成されるアルミ積層シート材を筒状にした筒状胴部と、前記筒状胴部の端部を溶着して密閉したシール部と、内容物を排出する口部と、前記口部と前記筒状胴部を連結してなる肩部から構成されたアルミ積層チューブ容器であって、内面樹脂層の内容物が接する面に、シール部の両端部に該当する位置から肩部方向に沿って少なくとも1条のグルーブを筒状胴部の両側内面に設けたことを特徴とするアルミ積層チューブ容器。
【請求項2】
前記グルーブは、複数条のグルーブであることを特徴とする請求項1に記載のアルミ積層チューブ容器。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2006−44768(P2006−44768A)
【公開日】平成18年2月16日(2006.2.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−230753(P2004−230753)
【出願日】平成16年8月6日(2004.8.6)
【出願人】(000001959)株式会社資生堂 (1,748)
【Fターム(参考)】