説明

アンカーテンドン送り出し装置

【課題】地中を上方に延在するボーリング孔内にアンカーテンドンを挿入する作業を省力化し、迅速且つ安全に行うことを可能とするアンカーテンドンの送り出し装置の提供。
【解決手段】本体部(100)と、油圧式のベースマシン(300)のアーム(320)先端に取り付けるための取付機構(200)を備えており、前記本体部(100)は、対向する一対の弾性材料製の無限軌道(2)を有し且つアンカーテンドン(400)を挟持して送り出す機能を有する送り出し機構(1;1A、1B)と、当該送り出し機構(1)を駆動する送り出し機構駆動装置(3)と、当該送り出し機構駆動装置(3)に対してベースマシン(300)からの圧油を供給する第1の油圧回路(L1)を備えている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、アンカー工事に用いられる装置に関する。より詳細には、アンカーにおける張力支持部材であるアンカーテンドンを地中に送り出すためのアンカーテンドン送り出し装置に関する。
【背景技術】
【0002】
地盤等の補強、安定化を目的とするアンカー工法は、従来より広く施工されている工法である。係るアンカー工法では、地盤等に削孔したボーリング孔内にPCケーブル等のアンカーテンドンを挿入し、グラウト材を注入して固結した後、アンカーテンドンを緊張、定着することにより、地盤の安定化が得られる。
アンカー工法に使用するアンカーテンドンの材料は、対象となる地盤、補強目的等により異なるが、一般的なPCケーブルの例として、外径12.7mmのPC鋼7本より線が用いられる。係る外径12.7mmのPC鋼7本より線では、1m当たりの重量は5kg以上であり、20mのPCケーブルでは、付属部品を考慮すると100kg以上の重量となる。
【0003】
アンカー工を施工する場合、前述したようにPCケーブル等をボーリング孔内に挿入するが、PCケーブルは重量物であるため、通常はクレーン等により吊り下げながら挿入する。しかしながら、現場条件等によりクレーンが使用できない場合や、上向きに打設するアンカー工法の場合には、人力により頼らざるを得ない。
例えば、トンネル内から上向きにアンカー工を施工する場合、トンネルの天端アーチ部から上方に向かって地中にボーリング孔を穿孔し、アンカーテンドンを上方に送り出して当該ボーリング孔に挿入する必要があるため、従来は、滑車やロープを用いて、人力により、アンカーテンドンを前記ボーリング孔内に挿入していた。
【0004】
しかし、アンカーテンドンは単位長さ当たりの重量が大きく、長さも長いため、アンカーテンドンを上方のボーリング孔内に送り出すためには、多大な労力と時間を必要としてしまう。
そして、アンカーテンドンを上方に送り出す作業を行なっている最中に、作業手順のミスがあると、上方の領域の地盤中に送り出したテンドンが下方に落下してしまい、作業空間内でテンドンの端部が弾性反撥力により跳ね返り、周囲の機器や作業者に損傷や危害を及ぼす可能性がある。
【0005】
ここで、その他の従来技術として、先端に検査プローブを備え、複数のフロートが取り付けられたケーブルを、圧力流体により被検査管内に挿入し、引き抜くため、溝付可撓体を有する一対のクローラを対向させ、該クローラの各々は、少なくとも複数個のフロートを把持出来る様に直線状部分を有している技術が提案されている(特許文献1参照)。
係る技術によれば、複数のフロートを一対のクローラで把持することにより、フロートの部分とフロート以外の部分で径寸法が異なるケーブルを、被検査管内に挿入することが出来る。
しかし、係る従来技術は、電線の送りに適用されるものであり、単位長さ当たりの重量が大きいアンカーテンドンを押し込むことに適用するのは、不都合である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2001−201453号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は上述した従来技術の問題点に鑑みて提案されたものであり、クレーン等を使用できない場合や、地中を上方に延在するボーリング孔内においても、アンカーテンドンを挿入する作業を省力化し、迅速且つ安全に行うことを可能とするアンカーテンドンの送り出し装置の提供を目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明のアンカーテンドン(400)の送り出し装置(M)は、対向する一対の弾性材料(例えば、ゴム)製の無限軌道(2)によりアンカーテンドン(400)を挟持して送り出す機能を有する送り出し機構(1)と、当該送り出し機構(1)を駆動する送り出し機構駆動装置(油圧モーター3)とを備えており、前記送り出し機構(1)は、一対の無限軌道(2)間の間隔を変更する無限軌道間隔調節機構(12)を有することを特徴としている。
【0009】
本発明のアンカーテンドン(400)の送り出し装置(M)において、前記送り出し機構(1)を有する本体部(100)と、油圧式のベースマシン(例えば、油圧ショベル300)のアーム(320)先端に取り付けるための取付機構(200)を備えており(油圧式のベースマシン300のアーム320先端に取付可能なアタッチメントとして構成されており)、本体部(100)の送り出し機構駆動装置(3)に対してベースマシン(300)からの圧油を供給する第1の油圧回路(L1)を備えており、
前記取付機構(200)を駆動する取付機構駆動装置(220、280)と、当該取付機構駆動装置(220、280)に対してベースマシン(300)からの圧油を供給する第2の油圧回路(L2)を備えていることを特徴としている。
【0010】
また本発明において、前記取付機構(200)は、油圧式のベースマシン(例えば、油圧ショベル300)のアーム(320)先端に対して旋回可能に配置されているのが好ましい。
【0011】
或いは本発明において、前記取付機構(200)は、アーム(320)先端と結合する場合には伸長し、アーム(320)先端との結合を解除する場合には収縮する油圧ピストン機構(280)を有しているのが好ましい。
【発明の効果】
【0012】
上述する構成を具備する本発明のアンカーテンドンの送り出し装置(M)によれば、無限軌道(2)によってアンカーテンドン(400)を挟持して送り出す機能を有する送り出し機構(1)を有しており、前記送り出し機構(1)は、無限軌道間隔調節機構(12)によって一対の弾性材料製の無限軌道(2)間の間隔を変更(収縮)することにより、一対の無限軌道間にアンカーテンドン(400)を挟持することが出来る。
また、アンカーテンドン(400)を挟持した一対の弾性材料製の無限軌道(2)を駆動することにより、その駆動する方向へアンカーテンドン(400)を送り出すことが出来る。
【0013】
ここで、鋼鉄製のアンカーテンドン(400)と、例えばゴムの様な弾性材料製無限軌道(2)との摩擦係数は大きいので、一対の弾性材料製無限軌道(2)間の間隔を収縮して、弾性材料製無限軌道(2)をアンカーテンドン(400)に押圧することにより、重量の大きなアンカーテンドン(400)であっても、アンカーテンドン(400)と無限軌道(2)との摩擦により、確実に保持することが出来る。
そして、アンカーテンドン(400)が確実に保持されるため、上方領域の地盤(G)中に送り出したテンドン(400)が下方に落下することはない。したがって、従来のような落下時のテンドン(400)端部の跳ね返りによって、作業空間内の機器や作業者が受けるような被害も発生しない。
【0014】
また、本発明のアンカーテンドンの送り出し装置(M)は、油圧式のベースマシン(例えば、油圧ショベル300)のアーム(320)先端に取付可能なアタッチメントとして構成されており、アーム(320)先端に対して旋回可能に配置することが出来るので、ベースマシン(300)のアーム(320)の操縦性に加えて、旋回可能に構成することにより、アンカーテンドン(400)の挿入位置や挿入方向に対応して、一対の弾性材料製の無限軌道(2)によるアンカーテンドン(400)の送り方向を、天端アーチ部(A)から上方に向かうボーリング孔(H)の穿孔方向と高精度で一致させることが出来る。換言すれば、アンカーテンドン(400)を送り出す方向を自在に設定することが出来る。
そのため、天端アーチ部から上方に向かって穿孔されたボーリング孔にアンカーテンドンを挿入する作業を、滑車とロープを用いた手作業で行う必要が無くなり、当該作業を省力化、省人化することが出来る。
【0015】
さらに、本発明のアンカーテンドンの送り出し装置(M)は、油圧式のベースマシン(例えば、油圧ショベル300)のアーム(320)先端に取り付けるための取付機構(200)を備えており、該取付機構(200)は、例えば、本体部(100)と結合する場合には伸長し、本体部(100)との結合を解除する場合には収縮する油圧ピストン機構(280)を有することにより、油圧式のベースマシンのアーム(320)先端に対して、簡易な操作で(例えば、ワンタッチで)着脱することが出来る。
ここで、油圧式のベースマシン(例えば、油圧ショベル300)は、天端アーチ部(A)から上方に向かって穿孔されたボーリング孔(H)にアンカーテンドン(400)を挿入する作業以外の作業でも使用される。そのため、本発明のアンカーテンドンの送り出し装置(M)において、ワンタッチでアーム(320)先端と着脱することが出来る様に構成すれば、例えば地中の深度が深い領域に地下発電所を新設する工事において、油圧式のベースマシンを使用する複数種類の作業を同時期に進行することが出来るので、単一のベースマシンを用いて、工期全体を短縮することに寄与することが出来る。
【0016】
これに加えて、本発明の本発明のアンカーテンドンの送り出し装置(M)においては、前記無限軌道間隔調節機構(12)が、流体圧機構の圧力(例えば、エアシリンダ12内の圧力)を一定に保つことによって、一対の弾性材料製の無限軌道(2)間の間隔を変更する機構を採用することが出来る。
その様に構成すれば、流体圧機構の圧力(例えば、エアシリンダ12内の圧力)を一定に保つことにより、アンカーテンドン(400)の径方向寸法が変動する(アンカーテンドン400に段部が存在する)場合であっても、一対の弾性材料製の無限軌道(2)がアンカーテンドン(400)を把持する力も一定に維持することが出来る。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本発明の実施形態を示す正面図である。
【図2】実施形態における取付機構の正面図である。
【図3】取付機構におけるブラケットの側面図である。
【図4】実施形態における送り出し機構の正面図である。
【図5】図4で示す送り出し機構の側面図である。
【図6】図4で示す送り出し機構の平面図である。
【図7】アンカーテンドンを示す参考図である。
【図8】実施形態における油圧配管を示すブロック図である。
【図9】アンカーテンドンの段部を送り出す状態を示す正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、添付図面を参照して、本発明の実施形態について説明する。
図1において、全体を符号Mで示すアンカーテンドンの送り出し装置は、ベースマシンである例えば油圧ショベル300の先端部分に取り付けられている。
そして、アンカーテンドンの送り出し装置Mは、アンカーテンドン送り出し本体部(以下、「本体部」と記載)100と、取付装置(以下、「アタッチメント」と記載)200を備えている。
【0019】
油圧ショベル300は、エンジンルーム301、走行装置302、オペレータ室303、第1のアーム310、第2のアーム320を備えている。
第1のアーム310は、概略アーム中央部にブラケット311が固設されている。ブラケット311には、ヒンジピン311Pが設けられている。ヒンジピン311Pによって、第1の油圧シリンダ312の一端が、回動可能に軸支されている。
第1のアーム310は、図示では明示していない駆動機構によって、矢印R1の揺動を行うことが可能である。
なお、図1において、第1の油圧シリンダ312は最も収縮した状態で示されており、第1の油圧シリンダ312のシリンダロッドは明確には示されていない。
【0020】
第2のアーム320において、第1のアーム310側の端部(図1では下方の端部)には、第1のブラケット321が固設されている。第1のブラケット321には、ヒンジピン321Pが設けられている。係るヒンジピン321Pによって、第1の油圧シリンダ312のシリンダロッド(図1では明確には図示せず)の先端が、回動可能に軸支されている。
第1の油圧シリンダ312の伸縮動作によって、第2のアーム320は、矢印R2で示す様に、ヒンジピン310Pを中心にして揺動する。
【0021】
第2のアーム320における第1のアーム310側の端部(図1では下方の端部)には、第2のブラケット322が固設されている。より詳細には、第1のブラケット321よりも第1のアーム310から離隔した位置に、換言すれば、図1において第1のブラケット321よりも上方の位置に、第2のブラケット322が設けられている。
第2のブラケット322はヒンジピン322Pを有しており、ヒンジピン322Pには、第2の油圧シリンダ323の一端が軸支されている。
【0022】
第2のアーム320において、第1のアーム310とは反対側の端部(図1では上方の端部)近傍には、ヒンジピン320Pが設けられている。
ヒンジピン320Pにはアイドラアーム324の一端が係合しており、その結果、アイドラアーム324は、ヒンジピン320Pを中心に揺動可能に軸支されている。
アイドラアーム324の他端には、ヒンジピン324Pが設けられている。ヒンジピン324Pは、第2の油圧シリンダ323のシリンダロッド323rの先端(図1では左上方の端部)と係合している。
係る構成により、アイドラアーム324は、第2の油圧シリンダ323の伸縮動作によって、ヒンジピン320Pを中心にして、揺動する。
【0023】
第2のアーム320の先端は、アタッチメント200のヒンジピン212と、回動自在に係合している。
アイドラアーム324の他端には、ヒンジピン324Pにより、リンク325の一端が揺動自在に軸支されている。リンク325は、シリンダロッド323rの延長線上に配置されている。そして、リンク325の一端(図1では右方端部)が、アイドラアーム324の他端には、ヒンジピン324Pにより、揺動自在に軸支されている。リンク325の他端(図1では左方端部)は、アタッチメント200のヒンジピン211により、揺動可能に軸支されている。
【0024】
ここで、第2のアーム320の先端部(図1では上方の端部)、アイドラアーム324、リンク325、アタッチメント200のブラケット210(より詳細には、ブラケット210のヒンジピン211とヒンジピン212との間の領域)の4つの部材により、いわゆる「平行リンク機構」が構成されている。
第2の油圧シリンダ323が伸縮動作を行うと、係る「平行リンク機構」では、アタッチメント200(のブラケット210)は、アイドラアーム324の揺動と同様に、ヒンジピン212を中心に矢印R3で示す方向に揺動する。
【0025】
図1において、符号Aは、上方の地盤Gに形成された天端アーチ部を示している。そして、符号Hは、天端アーチ部Aから地盤G上方に向かって削孔されたボーリング孔を示している。
また、図1における符号400は、送り出し装置Mによって上方に送り出されているアンカーテンドンを示している。
【0026】
次に、図2、図3を参照して、アタッチメント200について説明する。
図2において、アタッチメント200は、ブラケット210、油圧モーター220、円筒状回転部230、ヒンジブラケット250、上方フック260、下方フック270、送り出し機構着脱用油圧シリンダ(以下、「油圧シリンダ」と記載)280を備えている。
【0027】
ブラケット210は、図3に示すように、断面が概略「コ」字状であり、図3における上下両翼を貫通するように、ヒンジピン211、212が配置されている。
油圧モーター220は、円筒状回転部230を正転・逆転する(双方向に回転駆動する)ための油圧モーターであり、ブラケット210の「コ」字状の内側の領域に設けられている。
図2、図3では図示は省略しているが、「コ」字状のブラケット210の内側の領域には、動力伝達部材(例えば、ギヤキット)が設けられている。係る動力伝達部材により、油圧モーター220の回転軸(図示せず)の回転出力を、円筒状回転部230に伝達している。そして、油圧モーター220が回転すると、図示しない動力伝達部材によって、円筒状回転部230が、円筒状回転部230の回転軸CL回りに回転する(正転又は逆転:矢印R4参照)。
【0028】
図2において、ブラケット210の左方には、円筒状回転部230が配置されている。円筒状回転部230の左端面230fにおいて、上方の領域にはヒンジブラケット250が設けられ、下方の領域には下方フック270が設けられている。
ヒンジブラケット250には、ヒンジピン250Pが設けられている。ヒンジピン250Pには上方フック260が係合しており、上方フック260はヒンジピン250Pを中心にして揺動可能である。そして、上方フック260には湾曲部261が形成されており、湾曲部261は図2における左端上方側が開口する部分円弧状となっている。
上方フック260において、湾曲部261よりも下方フック270側(図2では下方)の領域には、ヒンジピン260Pが設けられている。ヒンジピン260Pは、図2の紙面に垂直な方向に延在している。
【0029】
下方フック270には、湾曲部271が形成されている。湾曲部271は、下方フック270の下端近傍であって、円筒状回転部230の左端面230fから離隔した位置に設けられている。そして湾曲部271は、下方側が開口するような部分円弧状に形成されている。
下方フック270の湾曲部271と、円筒状回転部230の左端面230f側端部の間の領域には、ヒンジピン270Pが固設されている。
【0030】
ヒンジピン270Pには、油圧シリンダ280の一端が軸支されている。油圧シリンダ280は、ヒンジピン270Pを中心に、揺動自在に取り付けられている。
油圧シリンダ280のシリンダロッド281の先端(詳細には、シリンダロッド281の先端に設けられたクレビス282)は、ヒンジピン260Pに係合している。
油圧シリンダ280のシリンダロッド281が伸縮すると、上方フック260は、ヒンジピン250Pを中心に、矢印R5で示す様に揺動する。
【0031】
図2で示す状態では、油圧シリンダ280に油圧が作用して、シリンダロッド281が伸張する方向に動作し、以って、平行ロッド11を押圧している。
図2で示す油圧シリンダ280は、複動シリンダタイプ(伸張時、収縮時共に油圧を以って作動させるタイプ)である。
なお、油圧シリンダ280を、リターンスプリング内蔵の単動シリンダタイプ(伸張時に油圧が作動し、収縮時にはリターンスプリングで作動するタイプ)とすることも可能である。
【0032】
図2において、上方フック260の湾曲部261の上方には、ロックピン28が設けられている。図2で示すように、本体部100をアタッチメント200に固定している状態では、ロックピン28は概略水平に配置され、図示しないロックピン28用のロック機構により、図2で示す状態を維持している。
また、下方フック270の湾曲部271の下方には、ロックピン29が設けられている。図2で示す状態では、ロックピン29は概略水平に配置され、図示しないロックピン29用のロック機構により、図2の状態を維持している。
なお、アタッチメント200を本体部100に取り付ける態様と、取り外す態様については、図8をも参照して後述する。
【0033】
次に、図4〜図6を参照して、本体部100を説明する。
図4、図5において、本体部100は、アンカーテンドン送り出しユニット(以下、「送り出しユニット」と記載)1を備えている。送り出しユニット1は、ユニット1A、ユニット1Bを有している。
ユニット1Aは、レール部材9に沿って、図4の左右方向へ移動可能に構成されている。
【0034】
本体部100は、ユニット1Aをレール部材9に沿って移動させるためのエアシリンダ12を備えている。
一方、ユニット1Bは、レール部材9の長手方向(図4では左右方向)については、レール部材9に対して相対移動はしない。しかし、ユニット1Bは、回転軸54を中心に、レール部材9に対して相対的に回動自在となっており、ユニット1Bとレール9との相対角度を自由に変更することができる(図9参照)。
【0035】
ユニット1Aとユニット1Bによって送り出されるアンカーテンドン400(図1、図7参照)の直径が一定の場合は、図4に示すように、ユニット1Aとユニット1Bは平行に配置されている。この時、ユニット1Aとユニット1Bは共にレール9に対して直交している。
ユニット1A及びユニット1Bは、弾性材料(例えば、ゴム)の無限軌道2、油圧モーター3、駆動用スプロケット4、フレーム部材5、アイドラプーリ6を備えている。
油圧モーター3は、フレーム部材5の一方の端部(図4では上端部)に取り付けられている。駆動用スプロケット4は、油圧モーター3の回転軸に直接取り付けられている。アイドラプーリ6は、フレーム部材5の他方の端部(図4では下端部)に取り付けられている。
【0036】
図4において、フレーム部材5の中央上面には、接続部材7が固設されている。図4及び図6において、接続部材7の上方には角パイプからなるガイド部材8が接続されている。そして、フレーム部材5とガイド部材8は、接続部材7によって接続されている。
図4で示す様に、ガイド部材8の長さ寸法(図4の左右方向寸法)は、ユニット1Aの幅方向寸法(図4の左右方向寸法)よりも、若干長くなる様に設定されている。
【0037】
図6において、ガイド部材8の長さ方向(図6の左右方向)の両端近傍には、一対のブラケット10が固着されている。一対のブラケット10は、平板から構成されている。
図示はされていないが、一対のブラケット10の各々において、中央下方には、ガイド部材8が貫通できる角孔が形成されている。この角孔(図示せず)にガイド部材8を貫通させた状態で、一対のブラケット10はガイド部材8に取り付けられている。
【0038】
一対のブラケット10には、平行に延在した一対のロッド11、11が貫通している。図5において、ブラケット10における左端部の上端及び下端に、一対のロッド11、11が各々貫通している。ロッド11、11は、図5の紙面に垂直な方向へ延在している。
この一対のロッド11、11は、図2を参照して説明した様に、アタッチメント200(図2参照)の上下のフック260、270と係合している。そして、油圧シリンダ280を伸長して、上下のフック260、270を一対のロッド11、11に押圧することで、本体部100(図4参照)を、アタッチメント200(図2参照)へ取り付けた状態が維持される。
【0039】
再び図4において、ガイド部材8は角パイプにより構成されており、ガイド部材8の内部をレール部材9が摺動可能に貫通している。
図4、図6では明確に示されていないが、ガイド部材8の内部に軸受部材(スラストベアリング)を取り付けて、当該軸受部材を介して、レール部材9がガイド部材8の内部を摺動する様に構成されている。
【0040】
図6において、レール部材9の右端には、接続部材91を介して、レール端部支持部材17が固着されている。レール端部支持部材17は、レール部材9と直交する方向(図6の上下方向)に延在している。
レール部材9の左端にも、接続部材92を介して、レール端部支持部材17が固着されている。レール部材9の左端におけるレール端部支持部材17も、レール部材9と直交する方向(図6の上下方向)に延在している。
【0041】
左右両端のレール端部支持部材17において、図6における下端には、設置用足18が固着されている。設置用足18は、レール端部支持部材17と直行する方向であって、図6の紙面に垂直な方向に延在している。
図5で示す様に、レール端部支持部材17と設置用足18との接合箇所には、補強部材19が設けられている。
【0042】
図6において、レール部材9の左端近傍には、軸受部材93を内蔵した円筒部材94が、レール部材9を(図6の上下方向に)貫通するように設けられている。
ユニット1Bのフレーム5の中央には、回転軸取付部材50を介して、回転軸54が立設されている。回転軸54は、図6の上下方向に延在しており、レール部材9側の軸受部材93に取り付けられている。
そのため、ユニット1Bは、レール部材9を中心にして(より詳細には、軸受部材93の中心点Ob(図9参照)を中心にして)、図9の矢印αで示す様に揺動することができる。
【0043】
図7は、送り出しユニット1によって送り出されるアンカーテンドン400の側面を示している(例えば、株式会社エスイー製の型式「アンボンドアンカーF−U」)。
図7において、アンカーテンドン400は、先端側(図7の右端側)の多重PCより線410から左端側のマンション470まで、構成部分によってその直径が異なる。
【0044】
図9は、送り出すアンカーテンドン400が送り出される際に、段部Dが、送り出しユニット1の下端近傍にさしかかった状態を示している。この時、ユニット1Bはレール部材9に対して、角度θだけ回転している。
アンカーテンドン400を送り出す際の、送り出しユニット1、エアシリンダ12、アンカーテンドン400の詳細動作・作用に関しては後述する。
【0045】
図6において、エアシリンダ12は、シリンダ本体121、シリンダトップ122、シリンダエンド123を有している。
図示では明確ではないが、シリンダトップ122側にはシリンダロッドが突出しており、該シリンダロッドの先端側には接続部材14を介してクレビス15が接続されている。
【0046】
ガイド部材8に固着したユニット1B側(図6の左側)のブラケット10において、その右側(ユニット1Bと離隔する側)の面10SR(図6で、右側のブラケット10と対向する面)には、シリンダエンドブラケット13が取り付けられている。シリンダエンドブラケット13とシリンダエンド123とは、ヒンジピン123Pによって接続されている。
図6の右側のブラケット(ガイド部材8に固着したブラケット)10には、明確には図示しない孔が形成されており、該孔にはエアシリンダ12の本体部121が貫通している。
【0047】
図6において、レール部材9右端の接続部材91の上面には、シリンダトップブラケット16が、例えばボルトによって取り付けられている。
エアシリンダ12に接続されたクレビス15は、クレビスピン156によって、ブラケット16の左端に接続されている。
【0048】
ここで、エアシリンダ12は、その内部圧力が一定となる様に構成されており、例えば、いわゆる「電空レギュレータ」を利用することが出来る。
図示の実施形態では、エアシリンダ12の内部におけるピストン(図示せず)の受圧面積は、ピストンロッドの断面積が含まれない様に構成されている。換言すれば、エアシリンダ12内の圧力は、エアシリンダ12の断面積全体に作用する様に構成されている。
【0049】
図4〜図6において、前述のようにシリンダエンドブラケット13は図6の左側のブラケット10の面10SRに取り付けられており、さらに、ブラケット10はガイド部材8に固着しているため、エアシリンダ12が伸張するとブラケット10を図6の左方向に押す力が作用し、ブラケット10に固着したガイド部材8は、レール部材9に沿って、図6の左方向に移動する。
ここで、図示の実施形態では、本体部100はロッド11を介してアタッチメント200に固着されているため、ロッド11に固着された一対のブラケット10及びガイド部材8が固定されていると考えることが出来る。そして、上述したエアシリンダ12の伸張により、ユニット1Bがユニット1Aに接近する。
【0050】
換言すれば、エアシリンダ12の内圧により、ユニット1Bがユニット1Aに接近する力が保持され、係る力は、アンカーテンドン400を送り出す際において、ユニット1B側の無限軌道2とユニット1A側の無限軌道2でアンカーテンドン400を挟持する力として作用する。
ここで、上述した様に、エアシリンダ12は、その内部圧力が常時一定となる様に構成されているので、ユニット1B側の無限軌道2とユニット1A側の無限軌道2でアンカーテンドン400を挟持する力も常に一定である。
【0051】
図4において、ユニット1Aにおいて、フレーム5の接続部材7の上下側の合計4箇所(図5参照)には、ブラケット23が取り付けられている。
図6で示すように、それぞれのブラケット23には、支持棒21を介して、円柱状ガイド20が固設されている。円柱状ガイド20は、アンカーテンドン400が、ユニット1A、ユニット1Bの図6における上下方向へ外れてしまうのを防止する機能を有している。
図6において、ガイド部材8は固定されている。エアシリンダ12の本体121も、ブラケット10を介して、ガイド部材8と接続されており、固定されている。
【0052】
エアシリンダ12は、その内部圧力が常時一定となる様に構成されており、ユニット1B側の無限軌道2とユニット1A側の無限軌道2でアンカーテンドン400を挟持する力が変動する場合には、係る変動を打ち消すべく、エアシリンダ12が伸縮する。
図6で示す状態において、ユニット1Bとユニット1Aとがアンカーテンドン400を挟持する力が弱まると、エアシリンダ12内部に圧縮エアが供給され、エアシリンダ12が伸長し、クレビス15は図6の右方に移動する。そして、ブラケット16を介して、レール部材9も右方に移動する。レール部材9が右方に移動する際に、ガイド部材8の内部を摺動する。レール部材9が右方に移動すると、ユニット1Bも図6の右方に移動する。その結果、ユニット1Bは、ユニット1A側に移動して接近する。
【0053】
一方、図6で示す状態において、ユニット1Bとユニット1Aとがアンカーテンドン400を挟持する力が強くなる場合には、エアシリンダ12内部から圧縮エアが排出され、エアシリンダ12が収縮する。
エアシリンダ12が収縮すると、クレビス15は図6の左方に移動する。そして、レール部材9、ユニット1Bも図6の左方に移動する。その結果、ユニット1Bは、ユニット1Aから離隔する側に移動する。
これにより、ユニット1Bとユニット1Aとがアンカーテンドン400を挟持する力は、常に一定に維持される。
【0054】
ここで、エアシリンダ12に代えて、作動流体として圧油を用いるシリンダ機構を採用することも考えられる。しかし、圧油を用いた場合には、瞬時の圧力調整は困難である。仮に、短時間で圧力調整が可能であっても、油圧を用いた場合は、アンカーテンドン400に段部Dが存在する場合には、当該段部Dがユニット1B、ユニット1A間に挟持された時の衝撃が十分に緩衝されず、ゴム製の無限軌道2が損傷してしまう。
これに対して、エアシリンダ12を用いた場合には、作動流体が空気であるため、段部Dがユニット1B、ユニット1Aにより挟持された際における衝撃は、エアシリンダ12内の圧縮エアが圧縮されることによって、瞬時に緩和される。そのため、ゴム製の無限軌道2が損傷してしまう恐れが無い。
【0055】
次に、本体部100及びアタッチメント200の駆動用油圧機器に作動油を供給する油圧回路について、図8を参照して説明する。
当該油圧回路には、図8で示す様に、積層弁500が介装されている。
積層弁500は、第1の切替弁510、第2の切替弁520、第3の切替弁530が3層に積層されて構成されており、3層に積層された第1〜第3の切替弁510、520、530は、図示しない複数本の通しボルトによって組み立てられている。
【0056】
第3の切替弁530には、第1の油圧回路L1が接続されている。
ここで、第1の油圧回路L1は、ベースマシンである油圧ショベル300(図1参照)からの圧油を供給する回路である。
図8において、第1の油圧回路L1は、ラインL11、ラインL12、ラインL13を有している。
【0057】
ラインL11は、油圧ショベル300側の油圧ポンプPにおける吐出孔Poと、積層弁500の流入孔500iを接続している。
ラインL12は、積層弁500の排出孔500oと、油圧ショベル300側のオイルタンクTを接続している。
ラインL13は、油圧ショベル300側のオイルタンクTと、油圧ショベル300側の油圧ポンプPの流入孔Piを接続している。
【0058】
積層弁500には、第2の油圧回路L2が設けられている。第2の油圧回路L2は、油圧ショベル300からの圧油を、本体部100及びアタッチメント200における駆動用油圧機器に対して供給するラインL21、L22、L210、L220、L23〜L26を、包括的に表現している。
換言すれば、第2の油圧回路L2は、ラインL21、ラインL22、ラインL210、ラインL220、ラインL23、ラインL24、ラインL25、ラインL26を有している。
【0059】
ラインL21は、第1の切替弁510の接続口510oから、送り出しユニット1におけるユニット1A及び1B(より詳細には、駆動用油圧モーター3の接続口3i)に連通している。
ラインL22は、ユニット1A及び1B(より詳細には、駆動用油圧モーター3の接続口3o)から、第1の切替弁510の接続口510iに連通している。
ラインL210は、ラインL21に設けた分岐点Bから、ユニット1Aの駆動用油圧モーター3の接続口3iに連通している。
ラインL220は、ユニット1Aの駆動用油圧モーター3の接続口3oから、ラインL22に設けた合流点Gに連通している。
【0060】
ラインL23は、第2の切替弁520の接続口520oと、アタッチメント200における油圧モーター220の接続口220iを接続している。
ラインL24は、油圧モーター220の接続口220oと、第2の切替弁520の接続口520iとを接続している。
ラインL25は、第3の切替弁530の接続口530oと、アタッチメント200における油圧シリンダ280の接続口280iを接続している。
ラインL26は、油圧シリンダ280の接続口280oと、第3の切替弁530の接続口530iとを接続している。
【0061】
図4及び図8において、実施形態の送り出しユニット1(図4)におけるユニット1A及びユニット1Bの油圧モーター3の回転方向は、第1の切替弁510、ラインL21、L210、L220、L2によって、圧油の供給方向を調節することにより、同期するように構成されている。
すなわち、図6において、ユニット1Aの油圧モーター3が、矢印R6方向に回転すれば、ユニット1Bの油圧モーター3は、矢印R7方向に回転する。その結果、ユニット1A、1Bは相互に逆回転する状態が維持されるので、協働して、アンカーテンドン400を送り出すように作用する。
【0062】
ここで、第1の切替弁510からの流路を切り替えて、ユニット1Aの油圧モーター3及びユニット1Bの油圧モーター3の回転方向を、図8の矢印R6、R7とは反対方向にして、ボーリング孔H(図1参照)内から引き出すことも可能である。この操作は、例えばアンカーテンドン400が、何らかの理由によってボーリング孔H内に送り出すことが出来なくなってしまった場合等において、行われる。
油圧モーター3を逆転する(ユニット1Aの油圧モーター3が矢印R7方向に回転し、ユニット1Bの油圧モーター3が矢印R6方向に回転する)ことにより、アンカーテンドン400はボーリング孔Hから、一時的に、引き出される。その後、油圧モーター3の回転方向を、再度、正転方向にする(ユニット1Aの油圧モーター3が矢印R6方向に回転し、ユニット1Bの油圧モーター3が矢印R7方向に回転する)ことによって、アンカーテンドン400をボーリング孔Hに挿入することができる。
【0063】
図2において、円筒状回転部230の回転方向、すなわち、本体部100をアタッチメント200に対して回転する方向については、ラインL23(図8)、ラインL24(図8)を流れる圧油の方向により、切り替えることが出来る。
換言すれば、図8において、第2の切替弁520によってラインL23、ラインL24を流れる圧油の方向を切り替えれば、アタッチメント200(図2参照)に対して本体部100(図2参照)が回転する方向(円筒状回転部230の回転方向における正転或いは逆転)を、切り替えることが出来る。
【0064】
次に、図2及び図8を参照して、本体部100をアタッチメント200に固定する態様と、本体部100をアタッチメント200から取り外す態様について、説明する。
図2で示すように、本体部100をアタッチメント200に固定しておく場合には、図8において、ラインL25経由で圧油を油圧シリンダ280の接続口280iに供給して、油圧シリンダ280を伸張させる。
油圧シリンダ280が伸張することにより、図2における上方のロッド11は上方フック260の湾曲部261に押圧され、図2における下方のロッド11は下方フック270の湾曲部271に押圧される。その結果、本体部100はアタッチメント200に取り付けられ、油圧シリンダ280が伸張方向に付勢されている限り、本体部100がアタッチメント200から離脱することはない。
【0065】
一方、本体部100をアタッチメント200から取り外す場合は、アタッチメント200を固定した状態で、図8におけるラインL26を経由して、油圧シリンダ280の接続口280oから圧油を排出して、油圧シリンダ280を収縮させる。
図2において、油圧シリンダ280が収縮すると、図2における上方のフック260は、ヒンジピン250Pを中心に反時計方向に回動(揺動)し、上方のフック260は上方のロッド11から外れる方向に移動する。そして、上方フック260の湾曲部261から上方のロッド11が外れる。さらに油圧シリンダ280を収縮すると、上方のロッド11は、上方のフック260の湾曲部261よりも左方に位置することになる。
係る状態で、本体部100(図1参照:図2では上方及び下方のロッド11のみを図示)を図2において上方へ移動すれば、下方のフック270は下方のロッド11から外れ、本体部100はアタッチメント200から完全に離脱する。
【0066】
なお、本体部100をアタッチメント200に取り付ける場合は、先ず、下方のフック270を下方のロッド11に係合する。そして、油圧シリンダ280を伸長して、上方のフック260を上方のロッド11と係合させれば良い。
【0067】
次に、図4、図8、図9を参照して、本体部100の送り出しユニット1によるアンカーテンドン400の送り出し動作について、説明する。
図4において、アンカーテンドン400を送り出しユニット1のユニット1Aとユニット1Bとで挟持するに際しては、先ずエアシリンダ12を収縮させて、ユニット1Aとユニット1Bとの間隔を広くする。
その状態で、図4における下方から、アンカーテンドン400の先端を、ユニット1A、ユニット1Bの間の領域に挿入する。より詳細には、図4の下方における1対のガイド部材20(図4の紙面に垂直な方向に延在する領域)と、ユニット1Aとユニット1Bとにより囲まれた領域に、アンカーテンドン400の先端を挿入する。
【0068】
次に、図6において、エアシリンダ12に圧縮エアを供給して、伸張せしめる。これにより、レール部材9が図6の右方に移動する。
レール部材9の右方へ移動するのに伴い、ユニット1Bがユニット1Aに接近して、アンカーテンドン400を、ユニット1Bとユニット1Aで挟持する。
アンカーテンドン400が送り出しユニット1によって挟持されたなら、積層弁500の第1切替弁510(図8参照)を操作して、ユニット1Aとユニット1Bの油圧モーター3を、図4の矢印R6、R7の方向に回転させる。これにより、アンカーテンドン400は、図4の上方に向かって送り出される。
【0069】
ここで、図7で示すように、アンカーテンドン400の直径は単一ではなく、変化する部分、すなわち段部Dが存在する。係る段部Dがユニット1A、1B間を通過する態様について、図9を参照して説明する。
図9において、アンカーテンドン400の段部Dが送り出しユニット1(ユニット1A、ユニット1B)の下部に当接すると、レール部材9における中心点Obを中心にして、ユニット1Bが矢印αi方向に傾斜する。そして、段部Dをユニット1B、ユニット1Aの無限軌道2によって挟持する。
図9では、アンカーテンドン400における段部D下方の領域の直径は、段部D上方の領域よりも大きいが、段部D下方の領域の直径が、段部D上方の領域よりも小さい場合には、ユニット1Bは矢印αo方向に傾斜する。
【0070】
図9の状態から、ユニット1Aの無限軌道2を矢印R6方向に回転し、ユニット1Bの無限軌道2を矢印R7方向に回転するのを続行すれば、アンカーテンドン400は上方に送り出され、ユニット1A、ユニット1B間には、段部D下方の直径が大きい領域のみが存在することに成る。係る状態においては、上述したエアシリンダ12の作用により、ユニット1Bがユニット1Aから離隔する方向(図9では左方)に移動して、ユニット1A、ユニット1Bの間隔を増大すると共に、ユニット1A、ユニット1Bによりアンカーテンドン400を挟み込む力を一定に保持する。
【0071】
図示の実施形態によれば、アンカーテンドン送り出し装置Mは、送り出しユニット1を有しており、送り出しユニット1は、無限軌道2によってアンカーテンドン400を挟持して送り出す機能を有している。そして、送り出しユニット1は、一対のユニット1A、1Bの間隔をエアシリンダ12によって変更(伸縮)することにより、一対のユニット1A、1Bの無限軌道2、2の間隔をアンカーテンドン400の直径に対応させることが出来る。それと共に、一対のユニット1A、1Bの無限軌道2、2間でアンカーテンドンを挟持する力を一定に保つことが出来る。
そして、アンカーテンドン400を挟持した一対の無限軌道2、2を駆動することにより、その駆動する方向(図示の実施形態では上方)へ、アンカーテンドン400を送り出すことが出来る。
【0072】
ここで、鋼鉄製のアンカーテンドン400と、例えばゴムの様な弾性体の無限軌道2との摩擦係数は大きいので、一対の無限軌道2、2間の間隔を伸縮して、無限軌道2、2をアンカーテンドン400に押圧することにより、重量の大きなアンカーテンドン400であっても、アンカーテンドン400と無限軌道2との摩擦により、確実に保持することが出来る。
そして、アンカーテンドン400が確実に保持されるため、下向きのアンカー工法においては、アンカーテンドン400が重量物であっても、ボーリング孔内に落下してしまうことが防止される。そして、上向きのアンカー工法では、上方領域の地盤中に送り出したアンカーテンドン400が落下して、アンカーテンドン400の端部が弾性反撥力によって跳ね返ってしまうという危険が、完全に防止される。
【0073】
また、実施形態のアンカーテンドン送り出し装置Mは、油圧式のベースマシン(例えば、油圧ショベル)300のアーム320先端に取付可能なアタッチメントとして構成されており、アーム320先端に対して旋回可能に配置することが出来る。したがって、ベースマシン300のアームの操縦性に加えて、旋回可能に構成することにより、アンカーテンドン400の挿入位置や挿入方向に対応して、アンカーテンドン400の送り方向を、天端アーチ部Aから上方に向かうボーリング孔Hの穿孔方向に対して、高精度で一致させることが出来る。
換言すれば、アンカーテンドン400を送り出す方向を自在に設定することが出来る。
そのため、天端アーチ部Aから上方に向かって穿孔されたボーリング孔Hに、アンカーテンドン400を挿入する作業を、従来の様に滑車とロープを用いた手作業で行う必要が無くなり、当該作業を省力化、省人化することが出来る。
【0074】
ここで、油圧式のベースマシン(例えば、油圧ショベル)300は、天端アーチ部Aから上方に向かって穿孔されたボーリング孔Hにアンカーテンドン400を挿入する作業以外の作業でも使用される。
図示の実施形態に係るアンカーテンドン送り出し装置Mは、油圧式のベースマシン300のアーム320先端に取り付けるためのアタッチメント200を備えており、アタッチメント200は、油圧シリンダ280を伸長、収縮することにより、油圧式のベースマシンのアーム320先端に対して、簡易な操作(例えば、ワンタッチ)で着脱することが出来る。
そして、図示の実施形態に係るアンカーテンドン送り出し装置Mは、ワンタッチでアーム320先端に着脱することが出来るので、例えばトンネル内からアンカーを打設する工事において、単一の油圧式のベースマシンを用いて複数種類の作業を進行しつつ、天端アーチ部Aから上方に向かって穿孔されたボーリング孔Hにアンカーテンドン400を挿入する作業を行なうことが可能である。そのため、工期全体を短縮し、工事全体のコストを低減することが出来る。
【0075】
図示の実施形態はあくまでも例示であり、本発明の技術的範囲を限定する趣旨の記述ではない。
【符号の説明】
【0076】
1・・・送り出しユニット
1A、1B・・・ユニット
2・・・弾性材料の無限軌道
3・・・油圧モータ
4・・・駆動用スプロケット
5・・・フレーム
7・・・接続部材
8・・・ガイド部材
9・・・レール部材
10・・・ブラケット
11・・・平行ロッド
12・・・エアシリンダ
13・・・シリンダエンドブラケット
15・・・クレビス
16・・・シリンダトップブラケット
17・・・レール端部支持部材
18・・・設置用足
20・・・ガイド部材
100・・・本体部
200・・・取付機構/アタッチメント
300・・・ベースマシン
320・・・アーム

【特許請求の範囲】
【請求項1】
対向する一対の弾性材料製の無限軌道によりアンカーテンドンを挟持して送り出す機能を有する送り出し機構と、当該送り出し機構を駆動する送り出し機構駆動装置とを備えており、前記送り出し機構は、一対の無限軌道間の間隔を変更する無限軌道間隔調節機構を有することを特徴とするアンカーテンドンの送り出し装置。
【請求項2】
前記送り出し機構を有する本体部と、油圧式のベースマシンのアーム先端に取り付けるための取付機構を備えており、本体部の送り出し機構駆動装置に対してベースマシンからの圧油を供給する第1の油圧回路と、前記取付機構を駆動する取付機構駆動装置と、当該取付機構駆動装置に対してベースマシンからの圧油を供給する第2の油圧回路(L2)を備えている請求項1のアンカーテンドンの送り出し装置。
【請求項3】
前記取付機構は、油圧式のベースマシンのアーム先端に対して旋回可能に配置されている請求項2のアンカーテンドンの送り出し装置。
【請求項4】
前記取付機構は、アーム先端と結合する場合には伸長し、アーム先端との結合を解除する場合には収縮する油圧ピストン機構を有している請求項2、3の何れかのアンカーテンドンの送り出し装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2011−252308(P2011−252308A)
【公開日】平成23年12月15日(2011.12.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−126492(P2010−126492)
【出願日】平成22年6月2日(2010.6.2)
【出願人】(390036504)日特建設株式会社 (99)
【Fターム(参考)】