説明

アンテナ装置及びその製造方法

【課題】従来のものよりも容易に製造でき、大量生産に対応できるとともに、低姿勢化を図ることができるアンテナ装置及びその製造方法を提供する。
【解決手段】アンテナ装置100は、ダイポールアンテナ素子として誘電体基板20上に形成されたアンテナ素子10と、誘電体基板20の裏面に形成された地板導体30と、アンテナ素子10上に設けられた給電素子50と、を備え、アンテナ素子10は、コプレーナ線路を構成する中心帯状導体11、外側帯状導体12及び13と、コプレーナ線路に隣接して形成されたストリップ線路14と、を有し、給電素子50は、中心帯状導体11に接続される入出力端子51と、同軸給電線40の中心導体41に接続される入出力端子53と、ストリップ線路14に接続されるグランド端子52及び54と、を有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば、位相配列アンテナ(フェーズドアレーアンテナ)に用いられるアンテナ装置及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、ダイポール素子を用いた位相配列アンテナとしては、図11に示すものが知られている。すなわち、従来の位相配列アンテナ1は、誘電体基板4の開口面側に放射素子としてのダイポール素子2が複数配列され、各ダイポール素子2と増幅器や移相器などの給電素子6とが接続された構成を有している。ここで、給電素子6は誘電体基板4の裏面側に配置され、ダイポール素子2と給電素子6との間は同軸給電線5などの線路で接続されていた。そのため、ダイポール素子2と同軸給電線5との間の伝搬モードを変換する平衡不平衡変換器(バラン)3が必要であった。その結果、従来の位相配列アンテナ1では、図12に示すように、ダイポール素子2と誘電体基板4の開口面との距離を約4分の1波長にする必要があり、アンテナをいわゆる低姿勢にできないという課題があった。
【0003】
この課題の解決を目的として、放射素子中にバラン機能を持たせて、放射素子と開口面との距離を約4分の1波長より遥かに狭くする、いわゆる低姿勢アンテナが提案されている(例えば、非特許文献1、2参照)。図13に示した従来の低姿勢アンテナ7は、誘電体基板4と、この誘電体基板4を貫通して設けられた同軸給電線8と、同軸給電線8に接合された線状導体9と、を備えている。同軸給電線8は、中心導体8a、外側導体8b、折り曲げ部8cを有し、折り曲げ部8cに線状導体9が接合されている。この構成により、従来の低姿勢アンテナ7は、同軸給電線8の外側導体8bを放射素子の一部として用いることでバラン機能を実現している。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0004】
【非特許文献1】A. Thunvichit, T. Takano and Y. Kamata, "Ultra Low Profile Dipole Antenna with a Simplified Feeding Structure and a Parasitic Element", Trans. of Institute of Electronics, Information and Communication and Communication Engineers, vol.89-B, no.2, pp. 576-580, 2006.
【非特許文献2】A. Thunvichit, T. Takano and Y. Kamata, "Characteristics Verification of a Half-wave Dipole Very Close to a Conducting Plane with Excellent Impedance Matching", IEEE Transactions on Antennas and Propagation, Vol.55, No.1, pp.53-58, 2007.
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、従来の低姿勢アンテナでは、誘電体基板の開口面側から裏面側に同軸給電線が貫通した構成となっており、開口面側に給電素子を設けることはできないので裏面側に給電素子が設けられていた。したがって、従来の低姿勢アンテナでは、開口面側からの作業と裏面側からの作業とを要し、作業が煩雑となって大量生産には対応できないという課題があった。
【0006】
本発明は、従来の課題を解決するためになされたものであり、従来のものよりも容易に製造でき、大量生産に対応できるとともに、低姿勢化を図ることができるアンテナ装置及びその製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明のアンテナ装置は、誘電体基板と、前記誘電体基板の一の面上に形成され、長手方向の長さが使用電波の半波長であるダイポールアンテナ素子と、前記誘電体基板の前記一の面の裏面に形成された地板導体と、を有し、前記ダイポールアンテナ素子は、前記長手方向と直交する軸線に対して一方の側の前記一の面上に設けられたストリップ線路と、前記軸線に対して他方の側の前記一の面上に設けられたコプレーナ線路と、を備え、前記コプレーナ線路は、前記ストリップ線路から所定の間隔をおいて設けられ前記長手方向に延びる第1の帯状導体と、前記ストリップ線路に接続され、前記第1の帯状導体から所定の間隔をおいて前記第1の帯状導体を挟む第2及び第3の帯状導体と、を備えた構成を有している。
【0008】
この構成により、本発明のアンテナ装置は、誘電体基板の裏面側に給電素子を設ける必要がなく、開口面側からの作業によって製造できるので、従来のものよりも容易に製造でき、大量生産に対応できるとともに、低姿勢化を図ることができる。
【0009】
また、本発明のアンテナ装置は、前記第2及び前記第3の帯状導体の前記長手方向における各長さは、前記第1の帯状導体の長さよりも短く、前記第2及び前記第3の帯状導体の先端部は、丸みを帯びた形状を有する構成を有している。
【0010】
この構成により、本発明のアンテナ装置は、第2及び第3の帯状導体の長手方向における各長さを調整することにより、アンテナ素子のインピーダンスと同軸給電線のインピーダンスとを整合させることができる。
【0011】
さらに、本発明のアンテナ装置は、前記コプレーナ線路及び前記ストリップ線路の上面を覆って電磁界を遮蔽する電磁界遮蔽部材をさらに備え、前記電磁界遮蔽部材は、前記使用電波の遮断波長よりも短い断面寸法を有する構成を有している。
【0012】
この構成により、本発明のアンテナ装置は、アンテナ素子上に給電素子を設けた場合に給電素子が発生する電磁界を遮蔽することができる。
【0013】
さらに、本発明のアンテナ装置は、前記ストリップ線路上に設けられた給電素子と、前記ストリップ線路の表面から前記誘電体基板及び前記地板導体を貫通し、給電線を通す貫通孔と、をさらに備え、前記給電素子は、前記第1の帯状導体に接続される第1端子と、前記給電線に接続される第2端子と、前記ストリップ線路に接続されるグランド端子と、を有する構成を有している。
【0014】
この構成により、本発明のアンテナ装置は、従来のように、誘電体基板の裏面側に給電素子を設ける必要がなく、開口面側からの作業によって製造することができるので、従来のものよりも容易に製造でき、大量生産に対応できるとともに、低姿勢化を図ることができる。
【0015】
本発明のアンテナ装置の製造方法は、前記誘電体基板の一の面上に前記ダイポールアンテナ素子を形成する工程と、前記ストリップ線路の表面から前記誘電体基板及び前記地板導体を貫通する貫通孔を形成する工程と、前記給電素子を前記ストリップ線路上に設ける工程と、前記第1端子を前記第1の帯状導体に接続する工程と、前記第2端子を前記給電線に接続する工程と、前記グランド端子を前記ストリップ線路に接続する工程と、前記電磁界遮蔽部材により前記コプレーナ線路及び前記ストリップ線路を覆う工程と、を含む構成を有している。
【0016】
この構成により、本発明のアンテナ装置の製造方法は、誘電体基板の裏面側に給電素子を設ける必要がなく、開口面側からの作業によって製造できるので、従来のものよりも容易に製造でき、大量生産に対応できるとともに、低姿勢化を図ることができる。
【発明の効果】
【0017】
本発明は、従来のものよりも容易に製造でき、大量生産に対応できるとともに、低姿勢化を図ることができるアンテナ装置及びその製造方法を提供することができるものである。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】本発明に係るアンテナ装置の一実施形態における構成図である。
【図2】本発明に係るアンテナ装置の一実施形態におけるコプレーナ線路の説明図である。
【図3】本発明に係るアンテナ装置の一実施形態におけるアンテナ素子に流れる電流の説明図である。
【図4】本発明に係るアンテナ装置の一実施形態における外側帯状導体先端部の変形例を示す図である。
【図5】本発明に係るアンテナ装置の一実施形態における電磁界遮蔽部材の構成例を示す図である。
【図6】本発明に係るアンテナ装置の一実施形態における製造方法の説明図である。
【図7】本発明に係るアンテナ装置の一実施形態において、シミュレータで解析したアンテナ装置のシミュレーションモデルを示す図である。
【図8】本発明に係るアンテナ装置の一実施形態において、シミュレーション解析による反射損失の周波数特性のデータを示す図である。
【図9】本発明に係るアンテナ装置の一実施形態において、シミュレーション解析によるアンテナ指向性を示す図である。
【図10】本発明に係るアンテナ装置の一実施形態において、シミュレーション解析における各軸X、Y及びZ、角度θ及びφの定義を示す図である。
【図11】従来の位相配列アンテナを示す図である。
【図12】従来の位相配列アンテナにおけるダイポール素子及びバランの構成図である。
【図13】従来の低姿勢アンテナを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明の実施形態について図面を用いて説明する。
【0020】
まず、本発明に係るアンテナ装置の一実施形態における構成について図1〜図5に基づき説明する。
【0021】
図1に示すように、本実施形態におけるアンテナ装置100は、アンテナ素子10、誘電体基板20、地板導体30、同軸給電線40、給電素子50を備えている。
【0022】
アンテナ素子10は、中心帯状導体11、外側帯状導体12及び13、ストリップ線路14、電磁界遮蔽部材15を備えている。このアンテナ素子10は、誘電体基板20の一の面(以下「開口面」という。)21上に例えば印刷されて形成される。誘電体基板20の開口面21の裏面には地板導体30が形成されている。なお、アンテナ素子10は、本発明に係るダイポールアンテナ素子を構成する。また、中心帯状導体11は、本発明に係る第1の帯状導体を構成する。また、外側帯状導体12及び13は、それぞれ、本発明に係る第2及び第3の帯状導体を構成する。
【0023】
同軸給電線40は、例えば50Ω〜100Ωのインピーダンスを有し、中心導体41、外部導体42を備えている。
【0024】
給電素子50は、その上流側(アンテナ素子10側)に接続される入出力端子51及びグランド端子52、下流側(回路側)に接続される入出力端子53及びグランド端子54を有する。ここで、入出力端子51及び53は、それぞれ、本発明に係る第1端子及び第2端子を構成する。
【0025】
図2に示すように、中心帯状導体11は、外側帯状導体12及び13によって挟まれた形状を有する。すなわち、中心帯状導体11、外側帯状導体12及び13は、コプレーナ線路(C0-Planar Wave-line:CPW)として構成された部分を含む。
【0026】
CPWは不平衡線路であるので、図2に示すように、中心帯状導体11を同軸給電線40の中心導体41に、外側帯状導体12及び13を同軸給電線40の外部導体42に各々接続した構成とすることができる。この構成において、電流は図3に示すように流れる。
【0027】
すなわち、図3に示すように、外側帯状導体12及び13の各外側(中心帯状導体11に対して遠い側)である外側帯状導体外縁部12a及び13aを流れてきた電流IB1は、外側帯状導体12及び13の各先端部である外側帯状導体先端部12b及び13bで向きを変えて、外側帯状導体12及び13の内側(中心帯状導体11に近い側)である外側帯状導体内縁部12c及び13cをIB2として流れていく。CPWの中心帯状導体11に流れている電流IA2は、外側帯状導体先端部12b及び13bの位置と関係なくそのまま流れていく。したがって、外側帯状導体外縁部12a及び13aと、中心帯状導体11とを一つの線路と見るとこの線路は平衡線路である。よって、CPWがバランの役目をしていることになる。
【0028】
中心帯状導体11は、誘電体基板20の裏面に設けられた地板導体30(図1参照)と対で、ストリップ線路を構成する部分を含む。以下、この線路を「小ストリップ線路」という。また、ストリップ線路14を以下「大ストリップ線路」という。この大ストリップ線路は、アンテナ素子10の長手方向と直交する軸線16の位置でCPWの外側帯状導体12及び13と接している。また、中心帯状導体11は、大ストリップ線路から所定の間隔をおいて設けられている。
【0029】
中心帯状導体11、外側帯状導体外縁部12a及び13a及び大ストリップ線路上には、同じ方向の電流が流れる。したがって、アンテナ素子10の長手方向の長さを共振長にすれば、アンテナ素子10はダイポールアンテナ素子として機能する。本実施形態では、アンテナ素子10が送信又は受信に使用する使用電波の波長をλで表すと、アンテナ素子10の長手方向における大ストリップ線路の長さは、λ/4としている。また、同方向におけるCPWと小ストリップ線路との合計の長さもλ/4としている。すなわち、アンテナ素子10の長手方向の長さはλ/2としている。
【0030】
中心帯状導体11と地板導体30とで構成される小ストリップ線路の電流は、中心帯状導体11の端部である中心帯状導体先端部11aでゼロとなり、インピーダンスは無限大ということになる。したがって、CPWと小ストリップ線路との境界付近において、CPWの中心帯状導体11の電流と小ストリップ線路の中心帯状導体11の電流とを等しくすることができる。両電流が等しくなった状態がインピーダンス整合状態である。したがって、アンテナ装置100は、外側帯状導体12及び13の長さを中心帯状導体11より短くし、外側帯状導体12及び13の長さを調整することにより、アンテナ素子10の全体のインピーダンスと同軸給電線40のインピーダンスとを整合させることができる。
【0031】
前述のようにインピーダンス整合させることにより、アンテナ装置100は、図1に示したように、アンプや移相器などの給電素子50をアンテナ素子10上、すなわち、開口面21側に設置することができる。
【0032】
なお、前述の実施例形態では、外側帯状導体先端部12b及び13bの形状を直線形状としたが、図4に示すように、各先端部の形状を、丸みを帯びた形状(例えば円弧状の凸形状)としてもよい。
【0033】
給電素子50とアンテナ素子10とを接続するため、入出力端子51は、中心帯状導体11の根元(大ストリップ線路側)に接続されている。また、グランド端子52は、ストリップ線路14上の、アンテナ素子10のほぼ中央部に相当する位置に接続されている。
【0034】
一方、給電素子50と下流側の回路とを接続するため、入出力端子53を誘電体基板20の裏面側の回路に接続する必要がある。そのため、アンテナ素子10のストリップ線路14に貫通孔14aを設けて同軸給電線40を通し、同軸給電線40の中心導体41と入出力端子53とが接続されている。また、グランド端子54は、ストリップ線路14上の、アンテナ素子10のほぼ中央部に相当する位置に接続されている。
【0035】
次に、電磁界遮蔽部材15について説明する。電磁界遮蔽部材15は、給電素子50によって発生する電磁界を遮蔽するようになっている。この電磁界遮蔽部材15は、図5(a)に示すように、例えば金属材料を用いて、その断面形状が半円形で構成される。電磁界遮蔽部材15によってアンテナ素子10の大ストリップとCPWとを覆うようにすれば、大ストリップ線路上を流れている電流IA1は、電磁界遮蔽部材15上を流れることとなる。また、CPWの外側帯状導体外縁部12a及び13aに流れている電流IB1も、電磁界遮蔽部材15上を流れることとなる。したがって、アンテナ装置100は、ダイポールアンテナの放射特性を損なわない。
【0036】
電磁界遮蔽部材15の断面形状は、使用形態に合わせることができ、半円形に限定されない。例えば、図5(b)に示すように、断面形状が長方形であってもよい。ただし、電磁界遮蔽部材15の内部には、給電素子50から電磁界が発生するので、その電磁界がアンテナ素子10と結合して帰還現象を起こすと望ましくない。したがって、電磁界遮蔽部材15の断面寸法は、電磁界遮蔽部材15と大ストリップとで形成される導波系が電磁界を伝えない(遮断されている)状態である必要がある。すなわち、電磁界遮蔽部材15の断面形状が半円形(図5(a))なら半径を、長方形(図5(b))なら縦横寸法を、それぞれ使用電波の遮断波長よりも短くする。なお、電磁界遮蔽部材15の長手方向の2つの端面のうち、CPW側の反対側の端面を遮蔽材で覆えば、遮蔽効果をより強くすることができる。
【0037】
給電素子50を比較的狭い電磁界遮蔽部材15の中に設けるので、給電素子50から生じる熱を防ぐあるいは逆にそれを利用することが重要である。例えば、給電素子50の発熱により電磁界遮蔽部材15の内部の温度が所定温度を超える場合は、電磁界遮蔽部材15に熱を吸収させて電磁界遮蔽部材15の外に伝導させることが好ましい。そのためには、電磁界遮蔽部材15の内面に熱放射率が比較的大きい物質を設けるのが好ましい。逆に例えば、寒冷地でアンテナ装置100を使用する場合は、給電素子50の発熱で電磁界遮蔽部材15の内部を暖めることができる。そのためには、電磁界遮蔽部材15の内部に熱放射率が比較的小さい物質を設けるのが好ましい。
【0038】
次に、本実施形態におけるアンテナ装置100の製造方法について図6に基づき説明する。
【0039】
最初に、中心帯状導体11、外側帯状導体12及び13、ストリップ線路14により構成されるアンテナ素子10のパターンを、公知の印刷技術を用いて誘電体基板20上に形成する(図6(a))。なお、誘電体基板20の裏面には地板導体30(図1参照)が形成されているものとする。
【0040】
次いで、ストリップ線路14の表面から地板導体30までを貫通する貫通孔14aを形成する(図6(b))。
【0041】
続いて、給電素子50をアンテナ素子10上に載せ、同軸給電線40を貫通孔14aに挿入する(図6(c))。
【0042】
そして、給電素子50の入出力端子51をCPWの中心帯状導体11に、給電素子50の入出力端子53を同軸給電線40の中心導体41に、グランド端子52及び54をストリップ線路14に、それぞれ半田付けする(図6(d))。
【0043】
次いで、遮蔽用の電磁界遮蔽部材15をアンテナ素子10上に載せる(図6(e))。そして、遮蔽用の電磁界遮蔽部材15とアンテナ素子10とを、例えば、半田付けや導電性接着剤、導電性テープなどにより電気的に接続し固定する(図6(f))。
【0044】
前述のように、本実施形態におけるアンテナ装置100は、従来のものよりも容易に製造できるので、大量生産に対応できる。
【0045】
次に、本実施形態のおけるアンテナ装置100のシミュレーション解析結果について説明する。シミュレータで解析したアンテナ装置100を図7に示す。また、シミュレーション解析による反射損失の周波数特性のデータを図8に、アンテナ指向性を表す放射パターンを図9に示す。また、図9における角度θ及びφの定義を図10に示す。
【0046】
図9に示すように、アンテナ装置100は、反射損失が最大で−15.3dB、3dB帯域幅は約10%(約0.3GHz)と優れた特性を有している。また、図10に示すように、アンテナ装置100は、電界面、磁界面共に満足すべき放射パターンの形状を有している。
【0047】
次に、本実施形態におけるアンテナ装置100の試作品の特性について説明する。試作品の電磁界遮蔽部材15は真鍮製で、断面は長方形とした。電磁界遮蔽部材15の内側には給電素子50として低雑音増幅器が入れてあり、その増幅率は10.9dBである。アンテナ装置100において、低雑音増幅器を動作させても発振は発生しなかった。アンテナ単体(低雑音増幅器なし)との比較により、低雑音増幅器を設けることで10dBの受信レベルの増加が確認された。この結果、アンテナ素子10側に給電素子50を統合実装した超低姿勢のアンテナ装置100が実現できた。
【0048】
以上のように、本実施形態におけるアンテナ装置100は、アンプや移相器などの給電素子50をアンテナ素子10上である開口面21側に設置する構成としたので、従来のように、誘電体基板20の裏面側に給電素子50を設ける必要がなく、開口面21側からの作業によって製造することができる。
【0049】
したがって、本実施形態におけるアンテナ装置100は、従来のものよりも容易に製造でき、大量生産に対応できるとともに、低姿勢化を図ることができる。
【0050】
その結果、本実施形態におけるアンテナ装置100は、製造コストの大幅な低減化を図ることが可能となり、位相配列アンテナを民生用への適用に資することができる。
【産業上の利用可能性】
【0051】
以上のように、本発明に係るアンテナ装置及びその製造方法は、従来のものよりも容易に製造でき、大量生産に対応できるとともに、低姿勢化を図ることができるという効果を有し、位相配列アンテナや、位相配列アンテナを備えた無線通信レーダ等として有用である。
【符号の説明】
【0052】
10 アンテナ素子(ダイポールアンテナ素子)
11 中心帯状導体(第1の帯状導体)
11a 中心帯状導体先端部
12 外側帯状導体(第2の帯状導体)
12a、13a 外側帯状導体外縁部
12b、13b 外側帯状導体先端部
12c、13c 外側帯状導体内縁部
13 外側帯状導体(第3の帯状導体)
14 ストリップ線路
14a 貫通孔
15 電磁界遮蔽部材
16 軸線
20 誘電体基板
21 開口面
30 地板導体
40 同軸給電線
41 中心導体
42 外部導体
50 給電素子
51 入出力端子(第1端子)
52、54 グランド端子
53 入出力端子(第2端子)
100 アンテナ装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
誘電体基板と、
前記誘電体基板の一の面上に形成され、長手方向の長さが使用電波の半波長であるダイポールアンテナ素子と、
前記誘電体基板の前記一の面の裏面に形成された地板導体と、を有し、
前記ダイポールアンテナ素子は、
前記長手方向と直交する軸線に対して一方の側の前記一の面上に設けられたストリップ線路と、
前記軸線に対して他方の側の前記一の面上に設けられたコプレーナ線路と、を備え、
前記コプレーナ線路は、
前記ストリップ線路から所定の間隔をおいて設けられ前記長手方向に延びる第1の帯状導体と、
前記ストリップ線路に接続され、前記第1の帯状導体から所定の間隔をおいて前記第1の帯状導体を挟む第2及び第3の帯状導体と、を備えたアンテナ装置。
【請求項2】
前記第2及び前記第3の帯状導体の前記長手方向における各長さは、前記第1の帯状導体の長さよりも短く、
前記第2及び前記第3の帯状導体の先端部は、丸みを帯びた形状を有する請求項1に記載のアンテナ装置。
【請求項3】
前記コプレーナ線路及び前記ストリップ線路の上面を覆って電磁界を遮蔽する電磁界遮蔽部材をさらに備え、
前記電磁界遮蔽部材は、前記使用電波の遮断波長よりも短い断面寸法を有する請求項1又は請求項2に記載のアンテナ装置。
【請求項4】
前記ストリップ線路上に設けられた給電素子と、
前記ストリップ線路の表面から前記誘電体基板及び前記地板導体を貫通し、給電線を通す貫通孔と、をさらに備え、
前記給電素子は、
前記第1の帯状導体に接続される第1端子と、
前記給電線に接続される第2端子と、
前記ストリップ線路に接続されるグランド端子と、を有する請求項1から請求項3までのいずれか1項に記載のアンテナ装置。
【請求項5】
請求項4に記載のアンテナ装置の製造方法であって、
前記誘電体基板の一の面上に前記ダイポールアンテナ素子を形成する工程と、
前記ストリップ線路の表面から前記誘電体基板及び前記地板導体を貫通する貫通孔を形成する工程と、
前記給電素子を前記ストリップ線路上に設ける工程と、
前記第1端子を前記第1の帯状導体に接続する工程と、
前記第2端子を前記給電線に接続する工程と、
前記グランド端子を前記ストリップ線路に接続する工程と、
前記電磁界遮蔽部材により前記コプレーナ線路及び前記ストリップ線路を覆う工程と、を含むアンテナ装置の製造方法。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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