アンテナ配置算出装置
【課題】アンテナ間の遮蔽を考慮に入れた探知性能が最も向上するアンテナ配置を高効率に求めるアンテナ配置算出装置を得る。
【解決手段】複数のアンテナ配置を保持するアンテナ配置保持手段101と、未評価アンテナ配置を選択して他のアンテナの遮蔽を考慮してアンテナ群遮蔽考慮利得グラフを生成するアンテナ群遮蔽評価手段103と、各アンテナの捜索方向範囲に関する利得を合成して捜索方向範囲に関する探知性能を求めるレーダ探知性能評価手段109と、探知性能からアンテナ配置の良さを表す単一の評価値を算出する評価値算出手段110と、アンテナ配置保持手段101から高評価アンテナ配置を抽出する高評価アンテナ配置抽出手段111と、高評価アンテナ配置を変化させることにより新たなアンテナ配置を生成してアンテナ配置保持手段101に記録する新アンテナ配置生成手段113と、を備えている。
【解決手段】複数のアンテナ配置を保持するアンテナ配置保持手段101と、未評価アンテナ配置を選択して他のアンテナの遮蔽を考慮してアンテナ群遮蔽考慮利得グラフを生成するアンテナ群遮蔽評価手段103と、各アンテナの捜索方向範囲に関する利得を合成して捜索方向範囲に関する探知性能を求めるレーダ探知性能評価手段109と、探知性能からアンテナ配置の良さを表す単一の評価値を算出する評価値算出手段110と、アンテナ配置保持手段101から高評価アンテナ配置を抽出する高評価アンテナ配置抽出手段111と、高評価アンテナ配置を変化させることにより新たなアンテナ配置を生成してアンテナ配置保持手段101に記録する新アンテナ配置生成手段113と、を備えている。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、電波を用いて目標を探知、追尾または標定するレーダ装置に関し、特に複数のアンテナの最適配置を算出するアンテナ配置算出装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
一般に、レーダ装置の探知性能を向上するためには、アンテナを大型化することや、送信電力を大きくすることが考えられるが、これらの方式では、装置規模が増大し、費用対効果の低下や抗堪性の劣化などの問題が生じる。
【0003】
そこで、上記問題を回避するために、複数個の小規模アンテナを分散して配置した分散型レーダを用い、各アンテナ出力を合成することにより、全体の探知性能を向上させる方式が提案されている(たとえば、非特許文献1参照)。
非特許文献1に記載の分散型レーダにおいては、グレーティングローブと呼ばれる不要な放射パターンを低減するためのアンテナ配置方式について述べられている。
【0004】
上記分散型レーダにおけるアンテナ配置方式は、グレーティングローブ低減を目的としているが、複数のアンテナを分散配置する状況においては、グレーティングローブの問題の他に、各アンテナ間の遮蔽問題が生じることも知られている。
【0005】
たとえば、水平面上に複数のアンテナを配置した分散型レーダにおいて、仰角0度を含む仰角範囲の全方位角にわたる捜索が求められる場合、必ず、いくつかのアンテナ(被遮蔽アンテナ)において、捜索対象となる方向に他のアンテナ(遮蔽アンテナ)が存在するとの状況が生じることになる。
【0006】
このとき、被遮蔽アンテナにおいて、遮蔽アンテナが存在する方向については、遮蔽アンテナおよび付随する設備によって電波が遮蔽されるので、被遮蔽アンテナの利得が低下する。これにともない、分散型レーダ全体としての実際の探知性能は、遮蔽が全くないと仮定した場合の探知性能と比較して、必然的に低下することになる。
【0007】
上記説明では、水平面上に複数個のアンテナを分散配置する場合について述べたが、これに限らず、地平面上に高さ調整可能な架台で支持される複数個のアンテナを分散配置する場合など、アンテナ間の遮蔽による探知性能低下を考慮すべき状況は種々想定される。
【0008】
以上のような状況下では、各アンテナ間の遮蔽に起因した分散型レーダの探知性能劣化は不可避ではあるが、探知性能劣化分を可能な限り小さくすることが望まれている。
しかし、アンテナ間の遮蔽に起因する探知性能劣化を最小限にとどめるためのアンテナ配置については、いずれの従来文献でも述べられていない。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0009】
【非特許文献1】R.C.Heimiller,J.E.Belyea and P.G.Tomlinson,「Distributed array radar,」IEEE Transaction on Aerospace and Electronics systems,vol.19,no.6,pp.831−839,Nov.1983.
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
従来の分散型レーダにおいては、各アンテナ間の遮蔽に起因した探知性能劣化を低減したい要求があるものの、探知性能劣化を最小限にとどめるためのアンテナ配置算出装置が提案されていないという課題があった。
【0011】
この発明は、上記のような課題を解決するためになされたものであり、分散型レーダにおいて、捜索対象とする方向の範囲(以下、「捜索方向範囲」という)の、アンテナ間の遮蔽を考慮に入れた探知性能が、最も向上するようなアンテナ配置を高効率に求めることのできるアンテナ配置算出装置を得ることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
この発明に係るアンテナ配置算出装置は、分散型レーダを構成する複数のアンテナの配置を算出するアンテナ配置算出装置であって、複数のアンテナのすべての位置情報を、アンテナ配置として評価値とともに保持するアンテナ配置保持手段と、アンテナ配置保持手段が保持するアンテナ配置のうち、評価値をまだ算出していない未評価アンテナ配置を1つ選択し、未評価アンテナ配置に関して、複数のアンテナごとに、他のすべてのアンテナの遮蔽を考慮し、捜索方向範囲における利得を評価してアンテナ群遮蔽考慮利得グラフを生成するアンテナ群遮蔽評価手段と、アンテナ群遮蔽評価手段から生成される、すべてのアンテナの捜索方向範囲に関する利得を合成することにより、分散型レーダとしての捜索方向範囲に関する探知性能を求めるレーダ探知性能評価手段と、レーダ探知性能評価手段から生成される、分散型レーダとしての捜索方向範囲に関する探知性能を入力情報として、アンテナ配置の良さを表す単一の評価値を算出してアンテナ配置保持手段に記録する評価値算出手段と、アンテナ配置保持手段が保持するアンテナ配置のうち、評価値の良い高評価アンテナ配置を抽出する高評価アンテナ配置抽出手段と、高評価アンテナ配置抽出手段によって抽出される高評価アンテナ配置を変化させることにより、新たなアンテナ配置を生成してアンテナ配置保持手段に記録する新アンテナ配置生成手段とを備えたものである。
【発明の効果】
【0013】
この発明によれば、アンテナ群遮蔽評価結果に基づいて算出した探知性能に基づき、最適なアンテナ配置を高効率に算出することにより、複数のアンテナの相互間の遮蔽に起因した探知性能劣化を最小限に抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】この発明の実施の形態1に係るアンテナ配置算出装置の機能構成を示すブロック図である。
【図2】この発明の実施の形態1が適用される分散型レーダのアンテナ配置例を示す説明図である。
【図3】被遮蔽アンテナと遮蔽アンテナとの関係を示す説明図である。
【図4】図1内の新アンテナ配置生成手段による動作を示す説明図である。
【図5】図1内の遮蔽状況導出手段により生成される遮蔽パターンを示す説明図である。
【図6】図1内の単一アンテナ遮蔽評価手段により算出される単一アンテナ遮蔽考慮利得グラフを示す説明図である。
【図7】図1内の遮蔽評価結果統合手段により算出されるアンテナ群遮蔽考慮利得グラフを示す説明図である。
【図8】図6の単一アンテナ遮蔽考慮利得グラフを複数の離散的なサンプル方向で表現した例を示す説明図である。
【図9】この発明の実施の形態2に係るアンテナ配置算出装置の機能構成を示すブロック図である。
【図10】図9内の遮蔽範囲拡大手段による動作を示す説明図である。
【図11】図9内の遮蔽評価結果統合手段で算出されるアンテナ群遮蔽考慮利得グラフを示す説明図である。
【図12】図9内の新アンテナ配置生成手段による動作を示す説明図である。
【図13】この発明の実施の形態3に係るアンテナ配置算出装置の機能構成を示すブロック図である。
【図14】被遮蔽アンテナと遮蔽アンテナとの関係を実際のアンテナサイズおよび拡大後のアンテナサイズの各場合で示す説明図である。
【図15】この発明の実施の形態4に係るアンテナ配置算出装置の機能構成を示すブロック図である。
【図16】図15内のアンテナ群遮蔽評価結果修正手段により加工されるアンテナ群遮蔽考慮利得グラフを示す説明図である。
【図17】この発明の実施の形態5に係るアンテナ群遮蔽評価結果修正手段により加工されるアンテナ群遮蔽考慮利得グラフを示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
実施の形態1.
以下、図1〜図8を参照しながら、この発明の実施の形態1について説明する。
図1はこの発明の実施の形態1に係るアンテナ配置算出装置の機能構成を示すブロック図である。
【0016】
図1において、この発明の実施の形態1に係るアンテナ配置算出装置は、アンテナ配置保持手段101と、アンテナ配置初期化手段102と、アンテナ群遮蔽評価手段103と、レーダ探知性能評価手段109と、評価値算出手段110と、高評価アンテナ配置抽出手段111と、アンテナ配置制約保持手段112と、新アンテナ配置生成手段113とを備えている。
【0017】
アンテナ群遮蔽評価手段103は、アンテナ間距離算出手段104と、遮蔽状況導出手段105と、アンテナ間角度算出手段106と、単一アンテナ遮蔽評価手段107と、遮蔽評価結果統合手段108とを備えている。
【0018】
図2はこの発明の実施の形態1が適用される分散型レーダのアンテナ配置例を示す説明図であり、分散型レーダを上から見た状態を示している。
図2において、複数のアンテナ10は、アンテナ設置可能領域R内に任意に配置され得る。
【0019】
各アンテナ10は、複数の素子から構成されるサブアレイアンテナであってもよく、単一の素子アンテナであってもよい。
ここでは、アンテナ設置可能領域Rおよび個々のアンテナ10の形状がそれぞれ円形状の場合を例にとり、各アンテナ10の形状やサイズが同一であるものとして説明する。
【0020】
個々のアンテナ10に関し、各方向について送信または受信できる電力の、ある基準値に対する比を「利得」と呼ぶ。
なお、利得の計算に際しては、利得算出対象となるアンテナの捜索方向に他のアンテナが存在する場合に、アンテナの利得は、遮蔽の効果により、他のアンテナが存在しない場合と比較して減少するので、遮蔽の効果も考慮して計算される。
【0021】
以下では、説明を簡略化するため、各アンテナ10は、全方向に均等に電波を送受信する等方向性を有するアンテナであることを前提とする。
また、利得を算出する際の基準値を、「遮蔽を考慮しない場合の電力」とする。この場合、アンテナによる電波の反射等の現象を考慮する必要がなければ、一般に、利得は0〜1の範囲内の実数となる。
【0022】
図3は2つのアンテナ10a、10bのみが存在する状態を一例として示す説明図である。
図3において、一方のアンテナ(被遮蔽アンテナ)10aから見て、他方のアンテナ(遮蔽アンテナ)10bへの範囲θの方向は、電波が遮蔽されるので、被遮蔽アンテナ10aの利得は低減する。
【0023】
ここでは、簡単な遮蔽モデルを用い、被遮蔽アンテナ10aから見て、遮蔽アンテナ10bによって幾何学的に遮蔽される範囲θ(遮蔽方位)では利得が「0」、それ以外の範囲では利得が「1」であるものとして説明する。
【0024】
また、説明を簡略化するため、すべてのアンテナ10が受信専用である場合、つまり、分散型レーダがパッシブレーダである場合を前提として説明する。ただし、説明の途中では、送信アンテナと受信アンテナとの両方が存在する場合(送受兼用のアンテナが存在する場合も含む)の処理内容についても触れる。
【0025】
また、説明を簡略化するため、2次元平面を想定した場合について説明する。具体的には、アンテナ設置可能領域Rを水平面内の2次元領域とし、捜索方向範囲が、方位角に関しては全方位角範囲(すなわち方位角が0〜360度の範囲)、仰角に関しては0度方向のみである場合について述べる。
【0026】
次に、図2および図3とともに、図4〜図8を参照しながら、図1に示したこの発明の実施の形態1に係るアンテナ配置算出装置の動作について説明する。
まず、アンテナ配置保持手段101は、分散型レーダ(図2)を構成するすべてのアンテナ10の位置情報を、評価値とともに保持する。この場合、2次元平面を想定しているので、個々のアンテナ10の位置情報は、2次元で表現される。
【0027】
アンテナ配置初期化手段102は、アンテナ10の初期配置を決定してアンテナ配置保持手段101に記録する。このときの初期配置の決定は、具体的には、たとえば、アンテナ配置に関する制約を満たす範囲内で、アンテナ10をランダムに配置することなどにより行われる。
【0028】
アンテナ群遮蔽評価手段103は、アンテナ配置保持手段101が保持するアンテナ配置のうち、未評価(評価値が未算出)のアンテナ配置を1つ選択し、未評価のアンテナ配置に関して、複数のアンテナ10の各々について、他のアンテナの遮蔽を考慮して、捜索方向範囲における利得を評価する。
【0029】
レーダ探知性能評価手段109は、アンテナ群遮蔽評価手段103から生成されるすべてのアンテナ10の捜索方向範囲に関する利得を合成することにより、分散型レーダとしての捜索方向範囲に関する探知性能を求める。
【0030】
評価値算出手段110は、レーダ探知性能評価手段109から生成される分散型レーダとしての捜索方向範囲に関する探知性能に基づき、アンテナ配置の最適さを表す単一の評価値を算出してアンテナ配置保持手段101に入力する。
算出された評価値は、評価値算出対象としたアンテナ配置に対応させて、アンテナ配置保持手段101に記録される。
【0031】
なお、評価値は、具体的には、捜索方向範囲に関する探知性能の平均値や最悪値などにより定めればよい。
また、各方向について要求される探知性能が与えられている場合、各方向の「探知性能の不足分」の総和などに基づいて評価値を定めてもよい。
【0032】
高評価アンテナ配置抽出手段111は、アンテナ配置保持手段101が保持するアンテナ配置のうち、評価値の良い高評価アンテナ配置を抽出する。
アンテナ配置制約保持手段112は、アンテナ配置に関する制約情報を保持する。
具体的には、たとえば、アンテナ設置可能領域R(図2参照)などの情報が、アンテナ配置に関する制約情報となる。
【0033】
新アンテナ配置生成手段113は、高評価アンテナ配置抽出手段111によって抽出されたアンテナ配置を少し変化させることにより、新たなアンテナ配置を生成する。
図4は新アンテナ配置生成手段113によるアンテナ配置生成の一例を示す説明図である。図4においては、1つのアンテナ10を選択して、その位置を少し移動することにより、新たなアンテナ配置を生成する例を示している。
こうして、評価値の良い高評価アンテナ配置を選択し、アンテナ配置の改善を試みる処理を反復実行することにより、最終的に評価値が最適に近いアンテナ配置が得られる。
【0034】
次に、アンテナ群遮蔽評価手段103の動作について、さらに詳細に説明する。
アンテナ群遮蔽評価手段103は、分散型レーダ(図2)のアンテナ配置に関し、1つのアンテナ(たとえば、図3内の被遮蔽アンテナ10a)に着目し、他のすべてのアンテナ(遮蔽アンテナ10b)の遮蔽を考慮して、捜索方向範囲における利得を評価するとともに、残りのすべてのアンテナ10を被遮蔽アンテナ10aとして、それぞれについて同様の評価を繰り返し行う。
【0035】
アンテナ群遮蔽評価手段103内において、アンテナ間距離算出手段104は、アンテナ配置保持手段101が保持するアンテナ配置に基づき、被遮蔽アンテナ10aと各遮蔽アンテナ10bとの距離を算出する。
遮蔽状況導出手段105は、被遮蔽アンテナ10aと各遮蔽アンテナ10bとの距離を入力情報として、アンテナ情報(アンテナ形状やアンテナサイズなど)に基づき、遮蔽アンテナ10bの方向を中心とした、被遮蔽アンテナ10aの(遮蔽による)利得低下状況を導出する。
【0036】
ここで、1台の遮蔽アンテナ10bの遮蔽による被遮蔽アンテナ10aの利得低下状況のことを「遮蔽パターン」と呼ぶ。遮蔽パターンは、具体的には、利得を算出するための表や数式で表現されるものである。
図5は遮蔽パターンをグラフで示す説明図である。ここでは単純な遮蔽モデルを想定しているので、図5において、遮蔽アンテナ中心を含む一定範囲内では利得が「0」となり、一定範囲外では利得が「1」となっている。
【0037】
アンテナ間角度算出手段106は、アンテナ配置保持手段101が保持するアンテナ配置に基づき、被遮蔽アンテナ10aを基準として、各遮蔽アンテナ10bの位置方向の角度を算出する。
単一アンテナ遮蔽評価手段107は、アンテナ間角度算出手段106から生成された位置方向の角度に基づき、各遮蔽アンテナ10bについて、1台分の遮蔽を考慮した、被遮蔽アンテナ10aの捜索方向範囲における利得を算出する。
【0038】
なお、捜索方向範囲の利得は、捜索方向範囲において、遮蔽パターンを、遮蔽アンテナ10bの方向角度に設定することにより算出される。
以下、1台の遮蔽アンテナの遮蔽を考慮した、被遮蔽アンテナの捜索方向範囲における利得変化を表したものを「単一アンテナ遮蔽考慮利得グラフ」と呼ぶ。
【0039】
図6は単一アンテナ遮蔽評価手段107により算出される単一アンテナ遮蔽考慮利得グラフを示す説明図である。
図6においては、図5と同様に、遮蔽アンテナ中心を含む一定範囲内では利得が「0」となり、一定範囲外では利得が「1」となっている。
【0040】
遮蔽評価結果統合手段108は、各遮蔽アンテナ10bに対して得られた単一アンテナ遮蔽考慮利得グラフ(図6)を統合することにより、被遮蔽アンテナ10aに対するすべての遮蔽アンテナ10bの遮蔽を考慮した、被遮蔽アンテナ10aの捜索方向範囲における利得を算出する。
以下、捜索方向範囲の利得変化を表したものを「アンテナ群遮蔽考慮利得グラフ」と呼ぶ。
【0041】
アンテナ群遮蔽考慮利得グラフは、捜索方向範囲における各方向について、当該方向における単一アンテナ遮蔽考慮利得グラフ(図6)の値を合成することにより生成される。
ここでは、幾何学的な遮蔽モデルを想定しているので、アンテナ群遮蔽考慮利得グラフの各方向の値は、当該方向における単一アンテナ遮蔽考慮利得グラフの値の最小値として計算される。
【0042】
図7は上記考え方に基づいて遮蔽評価結果統合手段108により算出されるアンテナ群遮蔽考慮利得グラフを示す説明図である。
図7においては、3つの遮蔽アンテナ10bA、10bB、10bCの遮蔽を考慮して生成された被遮蔽アンテナ10aに関する3つの単一アンテナ遮蔽考慮利得グラフと、各単一アンテナ遮蔽考慮利得グラフを統合して生成されたアンテナ群遮蔽考慮利得グラフとの例を示している。
【0043】
前述のように、アンテナ群遮蔽評価手段103は、すべてのアンテナ10を被遮蔽アンテナ10aとして、それぞれ繰り返し上記処理を行う。
この結果、すべてのアンテナ10の捜索方向範囲に関する(遮蔽を考慮した)利得情報として、複数のアンテナ10の各々のアンテナ群遮蔽考慮利得グラフ(図7)が得られることになる。
【0044】
レーダ探知性能評価手段109は、アンテナ群遮蔽評価手段103から生成されたすべてのアンテナ10のアンテナ群遮蔽考慮利得グラフを合成することにより、分散型レーダとしての捜索方向範囲に関する探知性能を求める。
このとき、探知性能は、捜索方向範囲における各方向について、当該方向における、すべてのアンテナのアンテナ群遮蔽考慮利得グラフの値に基づいて探知性能を評価することにより求められる。
【0045】
ここで、レーダ探知性能評価手段109による探知性能の評価方法について述べる。
まず、前提条件として、分散型レーダ(図2)を構成する各アンテナ10の諸元が同一で、また、捜索対象とする目標までの距離が、すべてのアンテナ10で同一と見做せるものとする。
【0046】
また、各アンテナ10で受信した電力をコヒーレントに合成できるものとすると、分散型レーダとしての受信電力は、「利得の平方根の和」の2乗に基づいて評価可能である。
したがって、受信電力のS/N比も「利得の平方根の和」の2乗に基づいて評価可能であることから、探知性能を、「利得の平方根の和」の2乗として評価することができる。
【0047】
上記説明では、分散型レーダが受信アンテナのみから構成される場合について述べたが、次に、分散型レーダが送信アンテナを含む場合の探知性能の評価方法について述べる。
電力の送信についても、受信の場合と全く同様の議論を行うことが可能であり、送信アンテナ群について、それぞれ、アンテナ群遮蔽考慮利得グラフを生成することができる。
【0048】
また、前述のように、受信アンテナ群についても、それぞれ、アンテナ群遮蔽考慮利得グラフが生成されているので、送信アンテナ群を含む2種のアンテナ群遮蔽考慮利得グラフに基づき、分散型レーダとしての、捜索方向範囲に関する探知性能を求めることができる。
【0049】
具体的には、たとえば、捜索方向範囲の各方向について、送信アンテナ群の「利得の平方根の和」の2乗と、受信アンテナ群の「利得の平方根の和」の2乗との積により、探知性能を評価すればよい。
なお、送信および受信を兼ねた送受信アンテナが存在する場合は、それを、送信アンテナ群と受信アンテナ群との両方の評価において考慮すればよい。
【0050】
前述では、単一アンテナ遮蔽考慮利得グラフ(図6)やアンテナ群遮蔽考慮利得グラフ(図7)が、捜索方向範囲において連続的に評価できるものとして示していた。
しかし、実際には、図8のように、捜索方向範囲をサンプリングして得られる離散的なサンプル(以下、「サンプル方向」という)について、利得や探知性能を評価することになる。
図8は図6の単一アンテナ遮蔽考慮利得グラフを複数の離散的なサンプル方向で表現した例を示す説明図である。
【0051】
以上では、説明を簡略化するために、各アンテナ10が等方向性のアンテナであることを前提として説明したが、指向性を有するアンテナであっても、同様に適用可能である。 また、2次元平面を想定した場合について説明したが、3次元空間を想定する場合であっても、同様に適用可能である。
【0052】
さらに、遮蔽を考慮した探知性能のみに基づいたアンテナ配置最適化を述べたが、他の要素(たとえば、グレーティングローブの低減など)も考慮したい場合には、評価値算出手段110において、他の要素も組込めばよい。
具体的には、たとえば、「遮蔽を考慮した探知性能」、「グレーティングローブを抑圧できる度合い」などの評価値の線形和を、最適化対象とする最終的な評価値とすることができる。この場合も、遮蔽による利得低下が重要な要素であれば、この発明の実施の形態1(図1)の構成は有効である。
【0053】
以上のように、この発明の実施の形態1(図1〜図8)に係るアンテナ配置算出装置は、分散型レーダを構成する複数のアンテナ10の配置を算出するために、複数のアンテナ10のすべての位置情報を、アンテナ配置として評価値とともに保持するアンテナ配置保持手段101と、アンテナ配置保持手段101が保持するアンテナ配置のうち、評価値をまだ算出していない未評価アンテナ配置を1つ選択し、未評価アンテナ配置に関して、複数のアンテナ10ごとに、他のすべてのアンテナの遮蔽を考慮し、捜索方向範囲における利得を評価してアンテナ群遮蔽考慮利得グラフを生成するアンテナ群遮蔽評価手段103と、アンテナ群遮蔽評価手段103から生成される、すべてのアンテナの捜索方向範囲に関する利得を合成することにより、分散型レーダとしての捜索方向範囲に関する探知性能を求めるレーダ探知性能評価手段109と、レーダ探知性能評価手段109から生成される、分散型レーダとしての捜索方向範囲に関する探知性能を入力情報として、アンテナ配置の良さを表す単一の評価値を算出してアンテナ配置保持手段101に記録する評価値算出手段110と、アンテナ配置保持手段101が保持するアンテナ配置のうち、評価値の良い高評価アンテナ配置を抽出する高評価アンテナ配置抽出手段111と、高評価アンテナ配置抽出手段111によって抽出される高評価アンテナ配置を変化させることにより、新たなアンテナ配置を生成してアンテナ配置保持手段101に記録する新アンテナ配置生成手段113とを備えている。
【0054】
アンテナ群遮蔽評価手段103は、複数のアンテナ間の距離を算出するアンテナ間距離算出手段104と、複数のアンテナ間の角度を算出するアンテナ間角度算出手段106と、アンテナ間距離算出手段104から生成されるアンテナ間の距離を入力情報として、利得算出対象となる被遮蔽アンテナ10aの利得低下状況を、遮蔽する側の複数の遮蔽アンテナ10bの各々について、各遮蔽アンテナ10bの方向を中心とした各1台の遮蔽アンテナ10bによる遮蔽パターン(図5)として、個々に導出する遮蔽状況導出手段105と、アンテナ間角度算出手段106から生成されるアンテナ間の角度と遮蔽状況導出手段105から生成される遮蔽パターン(図5)とを入力情報として、各遮蔽アンテナ10bの1台分の遮蔽のみを考慮した、被遮蔽アンテナ10aの捜索方向範囲における利得を表す単一アンテナ遮蔽考慮利得グラフ(図6)を導出する単一アンテナ遮蔽評価手段107と、単一アンテナ遮蔽評価手段107から生成される、各遮蔽アンテナ10bに対して得られた単一アンテナ遮蔽考慮利得グラフ(図6)を統合することにより、各遮蔽アンテナ10bのすべての遮蔽を考慮した、被遮蔽アンテナ10aの捜索方向範囲における利得を表すアンテナ群遮蔽考慮利得グラフ(図7)を導出する遮蔽評価結果統合手段108とを備えている。
【0055】
このように、分散型レーダにおいて、複数のアンテナ10の相互間の遮蔽を考慮して評価した探知性能に基づいてアンテナ配置を評価し、高評価のアンテナ配置に基づく新たなアンテナ配置の生成および評価を反復実行することにより、アンテナ10の相互間の遮蔽を考慮に入れた探知性能が最適に近いアンテナ配置を求めることができる。
【0056】
また、個々の被遮蔽アンテナ10aの、他のすべての遮蔽アンテナ10bの遮蔽を考慮した利得評価においては、各遮蔽アンテナ10bの遮蔽を考慮した利得を算出後に、利得を統合することによって計算するので、すべての遮蔽アンテナ10bの影響を同時に考慮する場合と比較して、複数のアンテナ10が関与する複雑な電波の回り込みなどの効果を考慮することがなく、正確さは若干落ちる可能性があるものの、計算処理が容易になるという効果がある。
【0057】
実施の形態2.
上記実施の形態1(図1〜図8)では、アンテナ群遮蔽評価手段103内の遮蔽状況導出手段105で得られた遮蔽パターンを単一アンテナ遮蔽評価手段107に直接入力したが、図9のように、遮蔽範囲拡大手段901を介した遮蔽パターンを単一アンテナ遮蔽評価手段107に入力してもよい。
以下、図2〜図4および図9〜図12を参照しながら、この発明の実施の形態2について説明する。
【0058】
図9はこの発明の実施の形態2に係るアンテナ配置算出装置の機能構成を示すブロック図であり、前述(図1参照)と同様のものについては、前述と同一符号を付して、または符号の後に「A」を付して詳述を省略する。
【0059】
図9において、この発明の実施の形態2に係るアンテナ配置算出装置は、前述(図1)の各手段101、102、103A、109〜113に加えて、収束判定手段903を備えている。
収束判定手段903は、評価値算出手段110とアンテナ群遮蔽評価手段103Aとの間に挿入されている。
【0060】
また、アンテナ群遮蔽評価手段103Aは、前述の各手段104〜108に加えて、遮蔽範囲拡大手段901と、遮蔽範囲サイズ調整手段902とを備えている。
遮蔽範囲拡大手段901は、遮蔽状況導出手段105と単一アンテナ遮蔽評価手段107との間に挿入されており、遮蔽範囲サイズ調整手段902は、収束判定手段903と遮蔽範囲拡大手段901との間に挿入されている。
【0061】
この発明の実施の形態2においては、収束判定手段903が追加され、アンテナ群遮蔽評価手段103A内に遮蔽範囲拡大手段901および遮蔽範囲サイズ調整手段902が追加された点、のみが前述の実施の形態1と異なる。
この発明の実施の形態2における他の構成および基本的機能は、前述と同様である。
【0062】
次に、図10を参照しながら、図9に示したこの発明の実施の形態2に係るアンテナ配置算出装置の動作について説明する。
遮蔽範囲拡大手段901は、遮蔽状況導出手段105から生成された遮蔽パターンを加工して、利得低下範囲を広げる。
【0063】
図10は図9内の遮蔽範囲拡大手段901による動作を示す説明図であり、遮蔽状況導出手段105からの元の遮蔽パターン(図10(a))と、遮蔽範囲拡大手段901により利得低下範囲(遮蔽範囲)を拡大した後の遮蔽パターン(図10(b))とを示している。
【0064】
なお、図10では、遮蔽パターンを引き延ばした例を示しているが、たとえば、利得が「0」と「1」以外の値も取る場合には、ある閾値よりも利得が低い部分の値を、一律に「0」に置き換えることによっても、利得低下範囲を広げることができる。
【0065】
遮蔽範囲サイズ調整手段902は、遮蔽範囲拡大手段901による利得低下範囲の拡大サイズを調整する。
利得低下範囲の拡大サイズは、初めは大きめに設定されているが、その後は、収束判定手段903によって順次に縮小制御される。
【0066】
収束判定手段903は、評価値算出手段110から生成される評価値の系列を解析し、評価値の向上が続いているか、または、評価値の向上が止まったかを判定する。この評価値向上が継続しているか否かの判定は、アンテナ配置最適化の収束判定に相当する。
【0067】
具体的には、収束判定手段903は、たとえば、あらかじめ定めた回数分にわたって、より良い評価値が出力されない場合には、最適化が収束した(評価値の向上が止まった)と判定し、この収束判定時点で、遮蔽範囲サイズ調整手段902に対し、利得低下範囲の拡大サイズを縮小するように指示する。
【0068】
ただし、拡大サイズの縮小の結果、利得低下範囲の拡大を行わないところまで処理が進むと、収束判定手段903から遮蔽範囲サイズ調整手段902への指示は生成されず、この時点でアンテナ配置最適化処理は終了する。
すなわち、アンテナ配置最適化が収束するごとに、遮蔽パターンの利得低下範囲の拡大サイズが縮小されていき、最終的には、遮蔽パターンの利得低下範囲の拡大を行わない状況で、最適化が行われたところで処理が終了する。
【0069】
次に、図2〜図4とともに、図11および図12を参照しながら、図10のように遮蔽パターンの利得低下範囲を拡大した場合に、アンテナ群遮蔽考慮利得グラフがどのように変化するかについて説明する。
【0070】
図11は遮蔽評価結果統合手段108で算出されるアンテナ群遮蔽考慮利得グラフを示す説明図であり、元(利得低下範囲が拡大される前)の遮蔽パターンに対するアンテナ群遮蔽考慮利得グラフ(図11(a))と、利得低下範囲拡大後の遮蔽パターンに対するアンテナ群遮蔽考慮利得グラフ(図11(b))と比較して示している。
【0071】
図11から明らかなように、元のアンテナ群遮蔽考慮利得グラフ(図11(a))においては、小さな利得低下範囲が連続的に発生する範囲が、利得低下範囲拡大後のアンテナ群遮蔽考慮利得グラフ(図11(b))においては、利得低下範囲の拡大により統合(マージ)されていることが分かる。
【0072】
このとき、新アンテナ配置生成手段113は、新アンテナ配置生成に際し、図4のように、1つのアンテナ10の位置を少しだけ移動するものと想定する。
図12は新アンテナ配置生成手段113の動作を示す説明図であり、新配置への移動対象となったアンテナ10を被遮蔽アンテナ10aとした場合の、被遮蔽アンテナ10aの移動前後におけるアンテナ群遮蔽考慮利得グラフの変化状況を示している。
【0073】
図12においては、元の遮蔽パターンに対する被遮蔽アンテナ10aの移動後におけるアンテナ群遮蔽考慮利得グラフの変化状況(図12(a))と、利得低下範囲拡大後の遮蔽パターンに対する被遮蔽アンテナ10aの移動後におけるアンテナ群遮蔽考慮利得グラフの変化状況(図12(b))とを示している。
図12(a)、図12(b)において、それぞれ、上のグラフがアンテナ移動前、下のグラフがアンテナ移動後の、当該アンテナに関するアンテナ群遮蔽考慮利得グラフを示している。
【0074】
まず、元の遮蔽パターンを前提とした場合(図12(a))には、アンテナ群遮蔽考慮利得グラフにおいて小さな利得低下範囲が近接して生じることから、アンテナ移動前後で利得が変化する方向範囲が広いので、アンテナ移動にともない、探知性能が変化する方向範囲も広くなり、結果的に、評価値の変化も大きくなる。
このことは、アンテナ配置に対する評価値の変化が複雑であることを意味しており、したがって、局所最適解が多くなり、このような性質を有する最適化問題においては、質の悪い局所最適解に陥る可能性が高くなる。
【0075】
これに対し、この発明の実施の形態2による利得低下範囲拡大後の遮蔽パターンを前提とした場合(図12(b))には、アンテナ群遮蔽考慮利得グラフにおいて、利得低下範囲が1つにまとまっていることから、アンテナ移動前後で利得が変化する方向範囲が狭いので、アンテナ移動にともない探知性能が変化する方向範囲も狭くなり、結果的に、評価値の変化も小さくなる。
このことは、アンテナ配置に対する評価値の変化がなだらかであることを意味しており、したがって、局所最適解が少なく、このような性質を有する最適化問題においては、質の悪い局所最適解に陥る可能性が低く抑制されることになる。
【0076】
遮蔽パターンの加工により利得低下範囲を拡大すると、上記のように、アンテナ配置に対する評価値の変化の仕方が変わるが、(細かい評価値の変化を無視した)大まかな傾向自体は変わらない。
【0077】
したがって、初めに利得低下範囲を拡大して算出した評価値に基づいてアンテナ配置最適化を行うことにより、質の悪い局所最適解に陥らず、比較的高評価のアンテナ配置が得られる。その後、利得低下範囲の拡大サイズを縮小しつつ、アンテナ配置最適化を繰り返し行うことにより、最終的に、元の遮蔽パターンに対する評価値に関して良いと判定される高評価のアンテナ配置が得られる可能性が高くなる。
【0078】
以上のように、この発明の実施の形態2(図9〜図12)に係るアンテナ配置算出装置は、図1の構成に加えて、評価値算出手段110から生成される評価値の系列を解析してアンテナ配置最適化の収束判定を行う収束判定手段903を備えている。
【0079】
また、アンテナ群遮蔽評価手段103Aは、図1に示した構成に加えて、遮蔽状況導出手段105から生成される遮蔽パターンを、利得低下範囲が拡大するように加工して、単一アンテナ遮蔽評価手段107に入力する遮蔽範囲拡大手段901と、遮蔽範囲拡大手段901による利得低下範囲の拡大サイズを調整する遮蔽範囲サイズ調整手段902とを備えている。
【0080】
収束判定手段903は、アンテナ配置最適化が収束したと判定された時点で、遮蔽範囲サイズ調整手段902に対し、利得低下範囲の拡大サイズを縮小するように指示する。
このように、遮蔽パターンの利得低下範囲の拡大サイズを縮小しつつ、アンテナ配置最適化を繰り返し行うことにより、質の悪い局所最適解に陥らず、高評価のアンテナ配置に到達できる可能性を高くすることができる。
【0081】
実施の形態3.
上記実施の形態2(図9〜図12)では、アンテナ群遮蔽評価手段103A内に、遮蔽範囲拡大手段901および遮蔽範囲サイズ調整手段902を設けたが、図13のように、アンテナ群遮蔽評価手段103A内に、遮蔽状況導出手段105Bを制御するアンテナサイズ調整手段1301を設けてもよい。
以下、図13および図14を参照しながら、この発明の実施の形態3について説明する。
【0082】
図13はこの発明の実施の形態3に係るアンテナ配置算出装置の機能構成を示すブロック図であり、前述(図1、図9参照)と同様のものについては、前述と同一符号を付して、または符号の後に「B」を付して詳述を省略する。
【0083】
図13において、この発明の実施の形態3に係るアンテナ配置算出装置は、前述(図9)の各手段101、102、103B、109〜113、903を備えているが、アンテナ群遮蔽評価手段103Bの一部構成が、前述と異なる。
アンテナ群遮蔽評価手段103Bは、前述(図9)の遮蔽範囲拡大手段901および遮蔽範囲サイズ調整手段902に代えて、アンテナサイズ調整手段1301を備えている。
【0084】
アンテナ群遮蔽評価手段103B内の遮蔽状況導出手段105Bは、前述のように、すべてのアンテナ(被遮蔽アンテナ)ごとに、アンテナ情報(アンテナ形状やサイズなど)と、各遮蔽アンテナとの距離と、に基づいて、被遮蔽アンテナの、遮蔽アンテナ方向を中心とした遮蔽パターンを導出する。
また、遮蔽状況導出手段105Bは、上記アンテナ情報を保持し、アンテナ情報に基づいて遮蔽パターンを導出しているものとする。
【0085】
アンテナサイズ調整手段1301は、遮蔽状況導出手段105Bが保持するアンテナ情報内のアンテナサイズを調整する。なお、アンテナサイズは、初めは大きめに設定されており、収束判定手段903によって順次に縮小制御される。
【0086】
収束判定手段903は、評価値算出手段110から生成される評価値の系列を解析してアンテナ配置最適化の収束判定を行い、収束したと判定された時点で、アンテナサイズ調整手段1301に対し、アンテナサイズを縮小するように指示する。
【0087】
ただし、アンテナサイズが実際のサイズに至るまで処理が進むと、アンテナサイズ調整手段1301への指示は生成されず、この時点でアンテナ配置最適化処理は終了する。
すなわち、アンテナ配置最適化が収束するごとに、アンテナサイズが縮小されていき、最終的には、アンテナサイズが実際のサイズに至って最適化が行われたところで処理が終了する。
【0088】
図14はアンテナサイズを拡大した状況を示す説明図であり、被遮蔽アンテナ10aと遮蔽アンテナ10bとの関係を、実際のアンテナサイズ(図14(a))および拡大後のアンテナサイズ(図14(b))の各場合で示している。
【0089】
図14から明らかなように、図14(a)の状態から、図14(b)のようにアンテナサイズを拡大すると、遮蔽アンテナ10bによる遮蔽方位θが大きくなり、遮蔽パターンの利得低下範囲も拡大されることが分かる。
したがって、前述の実施の形態2(図10〜図12)と同様に、図14のようにアンテナサイズを拡大することにより、質の悪い局所最適解に陥らず、評価値の良いアンテナ配置に到達できる可能性が高くなる。
【0090】
以上のように、この発明の実施の形態3(図13、図14)に係るアンテナ配置算出装置は、図1の構成に加えて、評価値算出手段110から生成される評価値の系列を解析してアンテナ配置最適化の収束判定を行う収束判定手段903を備えている。
また、アンテナ群遮蔽評価手段103Bは、図1に示した構成に加えて、遮蔽状況導出手段105Bが保持するアンテナサイズを調整するアンテナサイズ調整手段1301を備えている。
【0091】
遮蔽状況導出手段105Bは、アンテナサイズ調整手段1301で調整されたアンテナサイズに基づいて遮蔽パターンを導出し、収束判定手段903は、アンテナ配置最適化が収束したと判定された時点で、アンテナサイズ調整手段1301に対し、アンテナサイズを縮小するように指示する。
このように、遮蔽パターンの導出において前提とするアンテナサイズを大きめの値から出発して徐々に縮小しつつ、アンテナ配置最適化を繰り返し行うことにより、質の悪い局所最適解に陥らず、高評価のアンテナ配置に到達できる可能性を高くすることができる。
【0092】
実施の形態4.
上記実施の形態2、3(図9〜図14)では、アンテナ群遮蔽評価手段103A、103B内に、遮蔽範囲拡大手段901および遮蔽範囲サイズ調整手段902、またはアンテナサイズ調整手段1301を設けたが、図15のように、アンテナ群遮蔽評価手段103の外部に、アンテナ群遮蔽評価結果修正手段1501および修正サイズ調整手段1502を設けてもよい。
【0093】
以下、図15および図16を参照しながら、この発明の実施の形態4について説明する。
図15はこの発明の実施の形態4に係るアンテナ配置算出装置の機能構成を示すブロック図であり、前述(図1、図9、図13参照)と同様のものについては、前述と同一符号を付して詳述を省略する。
【0094】
図15において、この発明の実施の形態4に係るアンテナ配置算出装置は、前述(図1)の各手段101〜103、109〜113に加えて、収束判定手段903と、アンテナ群遮蔽評価結果修正手段1501と、修正サイズ調整手段1502とを備えている。
他の構成および基本的な動作については、前述の実施の形態1と同様である。
【0095】
アンテナ群遮蔽評価結果修正手段1501は、遮蔽評価結果総合手段108とレーダ探知性能評価手段109との間に挿入さている。
修正サイズ調整手段1502は、収束判定手段903とアンテナ群遮蔽評価結果修正手段1501との間に挿入さている。
【0096】
アンテナ群遮蔽評価結果修正手段1501は、アンテナ群遮蔽評価手段103から生成されるアンテナ群遮蔽考慮利得グラフ(図7)を加工する。
ここで、図16を参照しながら、アンテナ群遮蔽評価結果修正手段1501による、アンテナ群遮蔽考慮利得グラフの加工の内容について説明する。
【0097】
図16はアンテナ群遮蔽評価結果修正手段1501により加工されるアンテナ群遮蔽考慮利得グラフを示す説明図である。
図16においては、アンテナ群遮蔽考慮利得グラフが、離散的なサンプル方向における利得によって表されているものとする。
【0098】
アンテナ群遮蔽評価結果修正手段1501は、まず、捜索方向範囲の各方向について、当該方向を中心として、ある幅(以下、「ウィンドウ幅」という)Wを有するウィンドウを設定する。
そして、アンテナ群遮蔽評価結果修正手段1501は、アンテナ群遮蔽考慮利得グラフに関し、捜索方向範囲の各方向について、その利得を、ウィンドウ内の方向の利得を合成して得られる値で置き換える処理を行う。
【0099】
具体的には、アンテナ群遮蔽評価結果修正手段1501は、各サンプル方向の利得を、ウィンドウ内の各サンプル方向の「利得の最小値」などで置き換えればよい。
図16内の上段のグラフにおいては、元のアンテナ群遮蔽考慮利得グラフがサンプル方向の利得で表されている例を示しており、ウィンドウ幅Wを「3」(3つ分のサンプル方向)に設定した例を示している。
【0100】
一方、図16内の下段のグラフにおいては、上記加工処理を適用した結果を示しており、ウィンドウ幅W内に利得の最小値「0」のサンプル方向を含む場合には、すべての利得が「0」に置き換えられている。
【0101】
修正サイズ調整手段1502は、アンテナ群遮蔽評価結果修正手段1501による加工で利用するウィンドウ幅Wを調整する。なお、ウィンドウ幅Wは、初めは大きめに設定されており、収束判定手段903によって順次に縮小制御される。
【0102】
収束判定手段903は、評価値算出手段110が出力する評価値の系列を解析してアンテナ配置最適化の収束判定を行い、収束したと判定された時点で、修正サイズ調整手段1502に対し、ウィンドウ幅Wを縮小するように指示する。
ただし、ウィンドウ幅Wが「1」となって、アンテナ群遮蔽評価結果修正手段1501においてアンテナ群遮蔽考慮利得グラフの加工を行わないところまで処理が進むと、修正サイズ調整手段1502への指示は生成されず、この時点でアンテナ配置最適化処理は終了する。
【0103】
この結果、前述と同様の理由により、ウィンドウ幅Wを拡大した場合、アンテナ配置に対する評価値の変化がなだらかになり、局所最適解が少なくなるので、このような性質を有する最適化問題においては、質の悪い局所最適解に陥る可能性が低く抑制されることになる。
【0104】
アンテナ群遮蔽評価結果修正手段1501において、アンテナ群遮蔽考慮利得グラフを上記のように加工した場合、アンテナ配置に対する評価値の変化の仕方は変わるものの、大まかな(細かい評価値の変化を無視した)傾向自体は変わらない。
【0105】
したがって、初めに大きめのウィンドウ幅Wでアンテナ群遮蔽考慮利得グラフを加工して算出した評価値に基づいてアンテナ配置最適化を行うことにより、質の悪い局所最適解に陥らず、比較的高評価のアンテナ配置が得られる。
その後、ウィンドウ幅Wを縮小しつつ、アンテナ配置最適化を繰り返し行うことにより、最終的に、元のアンテナ群遮蔽考慮利得グラフに基づく評価値に関して良いと判定されるアンテナ配置が得られる可能性が高くなる。
【0106】
以上のように、この発明の実施の形態4(図15、図16)に係るアンテナ配置算出装置は、図1の構成に加えて、アンテナ群遮蔽評価結果修正手段1501と、修正サイズ調整手段1502と、収束判定手段903とを備えている。
【0107】
アンテナ群遮蔽評価結果修正手段1501は、アンテナ群遮蔽評価手段103から生成されるアンテナ群遮蔽考慮利得グラフに関し、捜索方向範囲内の各方向の利得を、各方向を含むウィンドウ内の方向の利得を合成して得られる値で置き換える処理を行う。
具体的には、図16のように、アンテナ群遮蔽評価結果修正手段1501は、アンテナ群遮蔽考慮利得グラフに関し、捜索方向範囲の各方向の利得を、ウィンドウ内の利得の最小値で置き換える。
【0108】
修正サイズ調整手段1502は、アンテナ群遮蔽評価結果修正手段1501による加工において利用するウィンドウ幅Wを調整する。
収束判定手段903は、評価値算出手段から生成される評価値の系列を解析してアンテナ配置最適化の収束判定を行い、アンテナ配置最適化が収束したと判定された時点で、修正サイズ調整手段1502に対し、ウィンドウ幅Wを縮小するように指示する。
【0109】
このように、アンテナ群遮蔽考慮利得グラフの加工におけるウィンドウ幅Wを縮小しつつ、アンテナ配置最適化を繰り返し行うことにより、質の悪い局所最適解に陥らず、高評価のアンテナ配置に到達できる可能性を高くすることができる。
【0110】
実施の形態5.
上記実施の形態4(図15、図16)では、アンテナ群遮蔽評価結果修正手段1501において、捜索方向範囲の各方向の利得をウィンドウ内の利得の最小値で置き換えたが、図17のように、ウィンドウ内の各方向の両側に各方向の利得よりも低い利得を有する方向が存在する場合に限り、利得の置き換え処理を行うように構成してもよい。
【0111】
以下、図15および図17を参照しながら、この発明の実施の形態5について説明する。
図17はこの発明の実施の形態5に係るアンテナ群遮蔽評価結果修正手段1501により加工されるアンテナ群遮蔽考慮利得グラフを示す説明図である。
なお、この発明の実施の形態5の機能構成は、図15に示した通りであり、アンテナ群遮蔽評価結果修正手段1501の一部処理内容のみが、前述と異なる。
【0112】
以下、アンテナ群遮蔽評価結果修正手段1501による、アンテナ群遮蔽考慮利得グラフの加工の内容について説明する。
アンテナ群遮蔽評価結果修正手段1501は、前述と同様に、捜索方向範囲の各方向についてウィンドウを設定し、アンテナ群遮蔽考慮利得グラフに関し、捜索方向範囲の各方向について、当該方向の利得を、ウィンドウ内の方向の利得を合成して得られる値で置き換える処理を行う。
【0113】
具体的には、アンテナ群遮蔽評価結果修正手段1501は、前述の実施の形態4と同様に、各方向の利得を、ウィンドウ内の方向の利得の最小値などで置き換える。
ただし、前述とは異なり、アンテナ群遮蔽評価結果修正手段1501による利得の置き換え処理は、以下の条件が満たされる場合に限って行い、そうでない場合には、置き換え処理を行わないものとする。
【0114】
すなわち、利得の置き換え処理の実行条件は、ウィンドウにおいて、当該方向の両方の側(具体的には、当該方向より方位角が小さい側と大きい側)に、当該方向の利得よりも低い利得を有するサンプル方向が存在すること、である。
【0115】
図17において、上段のグラフは、元のアンテナ群遮蔽考慮利得グラフがサンプル方向の利得で表されている例を示す。
図17の下段のグラフは、上段のグラフにおいて、ウィンドウ幅Wを5つ分のサンプル方向として、上記加工処理を適用した結果を示す。
【0116】
図17の下側のグラフを前述の図16と比較すると、図16の下段のグラフでは、アンテナ群遮蔽考慮利得グラフの変化の激しい部分の左右にある1つずつのサンプル方向の利得が「1」から「0」に変化しているのに対し、図17の下段のグラフでは、変化の激しい部分のサンプル方向の左右にある、1つずつのサンプル方向の利得が「1」のままであることが分かる。
【0117】
すなわち、図16および図17においては、いずれも、アンテナ群遮蔽考慮利得グラフを加工することにより、アンテナ配置の変化に対する評価値の変化をなだらかにしているものの、図16においては、加工処理の目的から逸脱した不要な部分のサンプル方向に対しても利得を変更している。
これに対し、図17においては、加工処理の目的に必要な範囲のサンプル方向のみについて、利得を変更していることが分かる。
【0118】
つまり、この発明の実施の形態5(図17)によれば、前述の実施の形態4(図16)と比べて、利得の置き換え処理の実行条件という余分な判定処理の追加が必要になるが、さらに正確なアンテナ群遮蔽考慮利得グラフに基づいてアンテナ配置最適化処理を行うことができる。
【0119】
以上のように、この発明の実施の形態5(図15、図17)に係るアンテナ配置算出装置のアンテナ群遮蔽評価結果修正手段1501は、アンテナ群遮蔽考慮利得グラフに関し、捜索方向範囲の各方向について設定したウィンドウにおいて、各方向の両方の側に、各方向の利得よりも低い利得を有する方向が存在する場合に限り、利得の置き換え処理を行う。
【0120】
また、前述の実施の形態4と同様に、アンテナ群遮蔽考慮利得グラフの加工におけるウィンドウ幅Wを縮小しつつ、アンテナ配置最適化を繰り返し行うことにより、質の悪い局所最適解に陥らず、良いアンテナ配置に到達できる可能性を高くすることができる。
また、不要な部分のサンプル方向の利得変更処理を行わないことにより、より正確な評価値に基づいて最適化を行うことができるので、さらに高評価のアンテナ配置に至る可能性を高くすることができる。
【符号の説明】
【0121】
10 アンテナ、10a 被遮蔽アンテナ、10b、10bA、10bB、10bC 遮蔽アンテナ、101 アンテナ配置保持手段、102 アンテナ配置初期化手段、103、103A、103B アンテナ群遮蔽評価手段、104 アンテナ間距離算出手段、105 遮蔽状況導出手段、106 アンテナ間角度算出手段、107 単一アンテナ遮蔽評価手段、108 遮蔽評価結果統合手段、109 レーダ探知性能評価手段、110 評価値算出手段、111 高評価アンテナ配置抽出手段、112 アンテナ配置制約保持手段、113 新アンテナ配置生成手段、901 遮蔽範囲拡大手段、902 遮蔽範囲サイズ調整手段、903 収束判定手段、1301 アンテナサイズ調整手段、1501 アンテナ群遮蔽評価結果修正手段、1502 修正サイズ調整手段、R アンテナ設置可能領域、W ウィンドウ幅、θ 遮蔽方位。
【技術分野】
【0001】
この発明は、電波を用いて目標を探知、追尾または標定するレーダ装置に関し、特に複数のアンテナの最適配置を算出するアンテナ配置算出装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
一般に、レーダ装置の探知性能を向上するためには、アンテナを大型化することや、送信電力を大きくすることが考えられるが、これらの方式では、装置規模が増大し、費用対効果の低下や抗堪性の劣化などの問題が生じる。
【0003】
そこで、上記問題を回避するために、複数個の小規模アンテナを分散して配置した分散型レーダを用い、各アンテナ出力を合成することにより、全体の探知性能を向上させる方式が提案されている(たとえば、非特許文献1参照)。
非特許文献1に記載の分散型レーダにおいては、グレーティングローブと呼ばれる不要な放射パターンを低減するためのアンテナ配置方式について述べられている。
【0004】
上記分散型レーダにおけるアンテナ配置方式は、グレーティングローブ低減を目的としているが、複数のアンテナを分散配置する状況においては、グレーティングローブの問題の他に、各アンテナ間の遮蔽問題が生じることも知られている。
【0005】
たとえば、水平面上に複数のアンテナを配置した分散型レーダにおいて、仰角0度を含む仰角範囲の全方位角にわたる捜索が求められる場合、必ず、いくつかのアンテナ(被遮蔽アンテナ)において、捜索対象となる方向に他のアンテナ(遮蔽アンテナ)が存在するとの状況が生じることになる。
【0006】
このとき、被遮蔽アンテナにおいて、遮蔽アンテナが存在する方向については、遮蔽アンテナおよび付随する設備によって電波が遮蔽されるので、被遮蔽アンテナの利得が低下する。これにともない、分散型レーダ全体としての実際の探知性能は、遮蔽が全くないと仮定した場合の探知性能と比較して、必然的に低下することになる。
【0007】
上記説明では、水平面上に複数個のアンテナを分散配置する場合について述べたが、これに限らず、地平面上に高さ調整可能な架台で支持される複数個のアンテナを分散配置する場合など、アンテナ間の遮蔽による探知性能低下を考慮すべき状況は種々想定される。
【0008】
以上のような状況下では、各アンテナ間の遮蔽に起因した分散型レーダの探知性能劣化は不可避ではあるが、探知性能劣化分を可能な限り小さくすることが望まれている。
しかし、アンテナ間の遮蔽に起因する探知性能劣化を最小限にとどめるためのアンテナ配置については、いずれの従来文献でも述べられていない。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0009】
【非特許文献1】R.C.Heimiller,J.E.Belyea and P.G.Tomlinson,「Distributed array radar,」IEEE Transaction on Aerospace and Electronics systems,vol.19,no.6,pp.831−839,Nov.1983.
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
従来の分散型レーダにおいては、各アンテナ間の遮蔽に起因した探知性能劣化を低減したい要求があるものの、探知性能劣化を最小限にとどめるためのアンテナ配置算出装置が提案されていないという課題があった。
【0011】
この発明は、上記のような課題を解決するためになされたものであり、分散型レーダにおいて、捜索対象とする方向の範囲(以下、「捜索方向範囲」という)の、アンテナ間の遮蔽を考慮に入れた探知性能が、最も向上するようなアンテナ配置を高効率に求めることのできるアンテナ配置算出装置を得ることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
この発明に係るアンテナ配置算出装置は、分散型レーダを構成する複数のアンテナの配置を算出するアンテナ配置算出装置であって、複数のアンテナのすべての位置情報を、アンテナ配置として評価値とともに保持するアンテナ配置保持手段と、アンテナ配置保持手段が保持するアンテナ配置のうち、評価値をまだ算出していない未評価アンテナ配置を1つ選択し、未評価アンテナ配置に関して、複数のアンテナごとに、他のすべてのアンテナの遮蔽を考慮し、捜索方向範囲における利得を評価してアンテナ群遮蔽考慮利得グラフを生成するアンテナ群遮蔽評価手段と、アンテナ群遮蔽評価手段から生成される、すべてのアンテナの捜索方向範囲に関する利得を合成することにより、分散型レーダとしての捜索方向範囲に関する探知性能を求めるレーダ探知性能評価手段と、レーダ探知性能評価手段から生成される、分散型レーダとしての捜索方向範囲に関する探知性能を入力情報として、アンテナ配置の良さを表す単一の評価値を算出してアンテナ配置保持手段に記録する評価値算出手段と、アンテナ配置保持手段が保持するアンテナ配置のうち、評価値の良い高評価アンテナ配置を抽出する高評価アンテナ配置抽出手段と、高評価アンテナ配置抽出手段によって抽出される高評価アンテナ配置を変化させることにより、新たなアンテナ配置を生成してアンテナ配置保持手段に記録する新アンテナ配置生成手段とを備えたものである。
【発明の効果】
【0013】
この発明によれば、アンテナ群遮蔽評価結果に基づいて算出した探知性能に基づき、最適なアンテナ配置を高効率に算出することにより、複数のアンテナの相互間の遮蔽に起因した探知性能劣化を最小限に抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】この発明の実施の形態1に係るアンテナ配置算出装置の機能構成を示すブロック図である。
【図2】この発明の実施の形態1が適用される分散型レーダのアンテナ配置例を示す説明図である。
【図3】被遮蔽アンテナと遮蔽アンテナとの関係を示す説明図である。
【図4】図1内の新アンテナ配置生成手段による動作を示す説明図である。
【図5】図1内の遮蔽状況導出手段により生成される遮蔽パターンを示す説明図である。
【図6】図1内の単一アンテナ遮蔽評価手段により算出される単一アンテナ遮蔽考慮利得グラフを示す説明図である。
【図7】図1内の遮蔽評価結果統合手段により算出されるアンテナ群遮蔽考慮利得グラフを示す説明図である。
【図8】図6の単一アンテナ遮蔽考慮利得グラフを複数の離散的なサンプル方向で表現した例を示す説明図である。
【図9】この発明の実施の形態2に係るアンテナ配置算出装置の機能構成を示すブロック図である。
【図10】図9内の遮蔽範囲拡大手段による動作を示す説明図である。
【図11】図9内の遮蔽評価結果統合手段で算出されるアンテナ群遮蔽考慮利得グラフを示す説明図である。
【図12】図9内の新アンテナ配置生成手段による動作を示す説明図である。
【図13】この発明の実施の形態3に係るアンテナ配置算出装置の機能構成を示すブロック図である。
【図14】被遮蔽アンテナと遮蔽アンテナとの関係を実際のアンテナサイズおよび拡大後のアンテナサイズの各場合で示す説明図である。
【図15】この発明の実施の形態4に係るアンテナ配置算出装置の機能構成を示すブロック図である。
【図16】図15内のアンテナ群遮蔽評価結果修正手段により加工されるアンテナ群遮蔽考慮利得グラフを示す説明図である。
【図17】この発明の実施の形態5に係るアンテナ群遮蔽評価結果修正手段により加工されるアンテナ群遮蔽考慮利得グラフを示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
実施の形態1.
以下、図1〜図8を参照しながら、この発明の実施の形態1について説明する。
図1はこの発明の実施の形態1に係るアンテナ配置算出装置の機能構成を示すブロック図である。
【0016】
図1において、この発明の実施の形態1に係るアンテナ配置算出装置は、アンテナ配置保持手段101と、アンテナ配置初期化手段102と、アンテナ群遮蔽評価手段103と、レーダ探知性能評価手段109と、評価値算出手段110と、高評価アンテナ配置抽出手段111と、アンテナ配置制約保持手段112と、新アンテナ配置生成手段113とを備えている。
【0017】
アンテナ群遮蔽評価手段103は、アンテナ間距離算出手段104と、遮蔽状況導出手段105と、アンテナ間角度算出手段106と、単一アンテナ遮蔽評価手段107と、遮蔽評価結果統合手段108とを備えている。
【0018】
図2はこの発明の実施の形態1が適用される分散型レーダのアンテナ配置例を示す説明図であり、分散型レーダを上から見た状態を示している。
図2において、複数のアンテナ10は、アンテナ設置可能領域R内に任意に配置され得る。
【0019】
各アンテナ10は、複数の素子から構成されるサブアレイアンテナであってもよく、単一の素子アンテナであってもよい。
ここでは、アンテナ設置可能領域Rおよび個々のアンテナ10の形状がそれぞれ円形状の場合を例にとり、各アンテナ10の形状やサイズが同一であるものとして説明する。
【0020】
個々のアンテナ10に関し、各方向について送信または受信できる電力の、ある基準値に対する比を「利得」と呼ぶ。
なお、利得の計算に際しては、利得算出対象となるアンテナの捜索方向に他のアンテナが存在する場合に、アンテナの利得は、遮蔽の効果により、他のアンテナが存在しない場合と比較して減少するので、遮蔽の効果も考慮して計算される。
【0021】
以下では、説明を簡略化するため、各アンテナ10は、全方向に均等に電波を送受信する等方向性を有するアンテナであることを前提とする。
また、利得を算出する際の基準値を、「遮蔽を考慮しない場合の電力」とする。この場合、アンテナによる電波の反射等の現象を考慮する必要がなければ、一般に、利得は0〜1の範囲内の実数となる。
【0022】
図3は2つのアンテナ10a、10bのみが存在する状態を一例として示す説明図である。
図3において、一方のアンテナ(被遮蔽アンテナ)10aから見て、他方のアンテナ(遮蔽アンテナ)10bへの範囲θの方向は、電波が遮蔽されるので、被遮蔽アンテナ10aの利得は低減する。
【0023】
ここでは、簡単な遮蔽モデルを用い、被遮蔽アンテナ10aから見て、遮蔽アンテナ10bによって幾何学的に遮蔽される範囲θ(遮蔽方位)では利得が「0」、それ以外の範囲では利得が「1」であるものとして説明する。
【0024】
また、説明を簡略化するため、すべてのアンテナ10が受信専用である場合、つまり、分散型レーダがパッシブレーダである場合を前提として説明する。ただし、説明の途中では、送信アンテナと受信アンテナとの両方が存在する場合(送受兼用のアンテナが存在する場合も含む)の処理内容についても触れる。
【0025】
また、説明を簡略化するため、2次元平面を想定した場合について説明する。具体的には、アンテナ設置可能領域Rを水平面内の2次元領域とし、捜索方向範囲が、方位角に関しては全方位角範囲(すなわち方位角が0〜360度の範囲)、仰角に関しては0度方向のみである場合について述べる。
【0026】
次に、図2および図3とともに、図4〜図8を参照しながら、図1に示したこの発明の実施の形態1に係るアンテナ配置算出装置の動作について説明する。
まず、アンテナ配置保持手段101は、分散型レーダ(図2)を構成するすべてのアンテナ10の位置情報を、評価値とともに保持する。この場合、2次元平面を想定しているので、個々のアンテナ10の位置情報は、2次元で表現される。
【0027】
アンテナ配置初期化手段102は、アンテナ10の初期配置を決定してアンテナ配置保持手段101に記録する。このときの初期配置の決定は、具体的には、たとえば、アンテナ配置に関する制約を満たす範囲内で、アンテナ10をランダムに配置することなどにより行われる。
【0028】
アンテナ群遮蔽評価手段103は、アンテナ配置保持手段101が保持するアンテナ配置のうち、未評価(評価値が未算出)のアンテナ配置を1つ選択し、未評価のアンテナ配置に関して、複数のアンテナ10の各々について、他のアンテナの遮蔽を考慮して、捜索方向範囲における利得を評価する。
【0029】
レーダ探知性能評価手段109は、アンテナ群遮蔽評価手段103から生成されるすべてのアンテナ10の捜索方向範囲に関する利得を合成することにより、分散型レーダとしての捜索方向範囲に関する探知性能を求める。
【0030】
評価値算出手段110は、レーダ探知性能評価手段109から生成される分散型レーダとしての捜索方向範囲に関する探知性能に基づき、アンテナ配置の最適さを表す単一の評価値を算出してアンテナ配置保持手段101に入力する。
算出された評価値は、評価値算出対象としたアンテナ配置に対応させて、アンテナ配置保持手段101に記録される。
【0031】
なお、評価値は、具体的には、捜索方向範囲に関する探知性能の平均値や最悪値などにより定めればよい。
また、各方向について要求される探知性能が与えられている場合、各方向の「探知性能の不足分」の総和などに基づいて評価値を定めてもよい。
【0032】
高評価アンテナ配置抽出手段111は、アンテナ配置保持手段101が保持するアンテナ配置のうち、評価値の良い高評価アンテナ配置を抽出する。
アンテナ配置制約保持手段112は、アンテナ配置に関する制約情報を保持する。
具体的には、たとえば、アンテナ設置可能領域R(図2参照)などの情報が、アンテナ配置に関する制約情報となる。
【0033】
新アンテナ配置生成手段113は、高評価アンテナ配置抽出手段111によって抽出されたアンテナ配置を少し変化させることにより、新たなアンテナ配置を生成する。
図4は新アンテナ配置生成手段113によるアンテナ配置生成の一例を示す説明図である。図4においては、1つのアンテナ10を選択して、その位置を少し移動することにより、新たなアンテナ配置を生成する例を示している。
こうして、評価値の良い高評価アンテナ配置を選択し、アンテナ配置の改善を試みる処理を反復実行することにより、最終的に評価値が最適に近いアンテナ配置が得られる。
【0034】
次に、アンテナ群遮蔽評価手段103の動作について、さらに詳細に説明する。
アンテナ群遮蔽評価手段103は、分散型レーダ(図2)のアンテナ配置に関し、1つのアンテナ(たとえば、図3内の被遮蔽アンテナ10a)に着目し、他のすべてのアンテナ(遮蔽アンテナ10b)の遮蔽を考慮して、捜索方向範囲における利得を評価するとともに、残りのすべてのアンテナ10を被遮蔽アンテナ10aとして、それぞれについて同様の評価を繰り返し行う。
【0035】
アンテナ群遮蔽評価手段103内において、アンテナ間距離算出手段104は、アンテナ配置保持手段101が保持するアンテナ配置に基づき、被遮蔽アンテナ10aと各遮蔽アンテナ10bとの距離を算出する。
遮蔽状況導出手段105は、被遮蔽アンテナ10aと各遮蔽アンテナ10bとの距離を入力情報として、アンテナ情報(アンテナ形状やアンテナサイズなど)に基づき、遮蔽アンテナ10bの方向を中心とした、被遮蔽アンテナ10aの(遮蔽による)利得低下状況を導出する。
【0036】
ここで、1台の遮蔽アンテナ10bの遮蔽による被遮蔽アンテナ10aの利得低下状況のことを「遮蔽パターン」と呼ぶ。遮蔽パターンは、具体的には、利得を算出するための表や数式で表現されるものである。
図5は遮蔽パターンをグラフで示す説明図である。ここでは単純な遮蔽モデルを想定しているので、図5において、遮蔽アンテナ中心を含む一定範囲内では利得が「0」となり、一定範囲外では利得が「1」となっている。
【0037】
アンテナ間角度算出手段106は、アンテナ配置保持手段101が保持するアンテナ配置に基づき、被遮蔽アンテナ10aを基準として、各遮蔽アンテナ10bの位置方向の角度を算出する。
単一アンテナ遮蔽評価手段107は、アンテナ間角度算出手段106から生成された位置方向の角度に基づき、各遮蔽アンテナ10bについて、1台分の遮蔽を考慮した、被遮蔽アンテナ10aの捜索方向範囲における利得を算出する。
【0038】
なお、捜索方向範囲の利得は、捜索方向範囲において、遮蔽パターンを、遮蔽アンテナ10bの方向角度に設定することにより算出される。
以下、1台の遮蔽アンテナの遮蔽を考慮した、被遮蔽アンテナの捜索方向範囲における利得変化を表したものを「単一アンテナ遮蔽考慮利得グラフ」と呼ぶ。
【0039】
図6は単一アンテナ遮蔽評価手段107により算出される単一アンテナ遮蔽考慮利得グラフを示す説明図である。
図6においては、図5と同様に、遮蔽アンテナ中心を含む一定範囲内では利得が「0」となり、一定範囲外では利得が「1」となっている。
【0040】
遮蔽評価結果統合手段108は、各遮蔽アンテナ10bに対して得られた単一アンテナ遮蔽考慮利得グラフ(図6)を統合することにより、被遮蔽アンテナ10aに対するすべての遮蔽アンテナ10bの遮蔽を考慮した、被遮蔽アンテナ10aの捜索方向範囲における利得を算出する。
以下、捜索方向範囲の利得変化を表したものを「アンテナ群遮蔽考慮利得グラフ」と呼ぶ。
【0041】
アンテナ群遮蔽考慮利得グラフは、捜索方向範囲における各方向について、当該方向における単一アンテナ遮蔽考慮利得グラフ(図6)の値を合成することにより生成される。
ここでは、幾何学的な遮蔽モデルを想定しているので、アンテナ群遮蔽考慮利得グラフの各方向の値は、当該方向における単一アンテナ遮蔽考慮利得グラフの値の最小値として計算される。
【0042】
図7は上記考え方に基づいて遮蔽評価結果統合手段108により算出されるアンテナ群遮蔽考慮利得グラフを示す説明図である。
図7においては、3つの遮蔽アンテナ10bA、10bB、10bCの遮蔽を考慮して生成された被遮蔽アンテナ10aに関する3つの単一アンテナ遮蔽考慮利得グラフと、各単一アンテナ遮蔽考慮利得グラフを統合して生成されたアンテナ群遮蔽考慮利得グラフとの例を示している。
【0043】
前述のように、アンテナ群遮蔽評価手段103は、すべてのアンテナ10を被遮蔽アンテナ10aとして、それぞれ繰り返し上記処理を行う。
この結果、すべてのアンテナ10の捜索方向範囲に関する(遮蔽を考慮した)利得情報として、複数のアンテナ10の各々のアンテナ群遮蔽考慮利得グラフ(図7)が得られることになる。
【0044】
レーダ探知性能評価手段109は、アンテナ群遮蔽評価手段103から生成されたすべてのアンテナ10のアンテナ群遮蔽考慮利得グラフを合成することにより、分散型レーダとしての捜索方向範囲に関する探知性能を求める。
このとき、探知性能は、捜索方向範囲における各方向について、当該方向における、すべてのアンテナのアンテナ群遮蔽考慮利得グラフの値に基づいて探知性能を評価することにより求められる。
【0045】
ここで、レーダ探知性能評価手段109による探知性能の評価方法について述べる。
まず、前提条件として、分散型レーダ(図2)を構成する各アンテナ10の諸元が同一で、また、捜索対象とする目標までの距離が、すべてのアンテナ10で同一と見做せるものとする。
【0046】
また、各アンテナ10で受信した電力をコヒーレントに合成できるものとすると、分散型レーダとしての受信電力は、「利得の平方根の和」の2乗に基づいて評価可能である。
したがって、受信電力のS/N比も「利得の平方根の和」の2乗に基づいて評価可能であることから、探知性能を、「利得の平方根の和」の2乗として評価することができる。
【0047】
上記説明では、分散型レーダが受信アンテナのみから構成される場合について述べたが、次に、分散型レーダが送信アンテナを含む場合の探知性能の評価方法について述べる。
電力の送信についても、受信の場合と全く同様の議論を行うことが可能であり、送信アンテナ群について、それぞれ、アンテナ群遮蔽考慮利得グラフを生成することができる。
【0048】
また、前述のように、受信アンテナ群についても、それぞれ、アンテナ群遮蔽考慮利得グラフが生成されているので、送信アンテナ群を含む2種のアンテナ群遮蔽考慮利得グラフに基づき、分散型レーダとしての、捜索方向範囲に関する探知性能を求めることができる。
【0049】
具体的には、たとえば、捜索方向範囲の各方向について、送信アンテナ群の「利得の平方根の和」の2乗と、受信アンテナ群の「利得の平方根の和」の2乗との積により、探知性能を評価すればよい。
なお、送信および受信を兼ねた送受信アンテナが存在する場合は、それを、送信アンテナ群と受信アンテナ群との両方の評価において考慮すればよい。
【0050】
前述では、単一アンテナ遮蔽考慮利得グラフ(図6)やアンテナ群遮蔽考慮利得グラフ(図7)が、捜索方向範囲において連続的に評価できるものとして示していた。
しかし、実際には、図8のように、捜索方向範囲をサンプリングして得られる離散的なサンプル(以下、「サンプル方向」という)について、利得や探知性能を評価することになる。
図8は図6の単一アンテナ遮蔽考慮利得グラフを複数の離散的なサンプル方向で表現した例を示す説明図である。
【0051】
以上では、説明を簡略化するために、各アンテナ10が等方向性のアンテナであることを前提として説明したが、指向性を有するアンテナであっても、同様に適用可能である。 また、2次元平面を想定した場合について説明したが、3次元空間を想定する場合であっても、同様に適用可能である。
【0052】
さらに、遮蔽を考慮した探知性能のみに基づいたアンテナ配置最適化を述べたが、他の要素(たとえば、グレーティングローブの低減など)も考慮したい場合には、評価値算出手段110において、他の要素も組込めばよい。
具体的には、たとえば、「遮蔽を考慮した探知性能」、「グレーティングローブを抑圧できる度合い」などの評価値の線形和を、最適化対象とする最終的な評価値とすることができる。この場合も、遮蔽による利得低下が重要な要素であれば、この発明の実施の形態1(図1)の構成は有効である。
【0053】
以上のように、この発明の実施の形態1(図1〜図8)に係るアンテナ配置算出装置は、分散型レーダを構成する複数のアンテナ10の配置を算出するために、複数のアンテナ10のすべての位置情報を、アンテナ配置として評価値とともに保持するアンテナ配置保持手段101と、アンテナ配置保持手段101が保持するアンテナ配置のうち、評価値をまだ算出していない未評価アンテナ配置を1つ選択し、未評価アンテナ配置に関して、複数のアンテナ10ごとに、他のすべてのアンテナの遮蔽を考慮し、捜索方向範囲における利得を評価してアンテナ群遮蔽考慮利得グラフを生成するアンテナ群遮蔽評価手段103と、アンテナ群遮蔽評価手段103から生成される、すべてのアンテナの捜索方向範囲に関する利得を合成することにより、分散型レーダとしての捜索方向範囲に関する探知性能を求めるレーダ探知性能評価手段109と、レーダ探知性能評価手段109から生成される、分散型レーダとしての捜索方向範囲に関する探知性能を入力情報として、アンテナ配置の良さを表す単一の評価値を算出してアンテナ配置保持手段101に記録する評価値算出手段110と、アンテナ配置保持手段101が保持するアンテナ配置のうち、評価値の良い高評価アンテナ配置を抽出する高評価アンテナ配置抽出手段111と、高評価アンテナ配置抽出手段111によって抽出される高評価アンテナ配置を変化させることにより、新たなアンテナ配置を生成してアンテナ配置保持手段101に記録する新アンテナ配置生成手段113とを備えている。
【0054】
アンテナ群遮蔽評価手段103は、複数のアンテナ間の距離を算出するアンテナ間距離算出手段104と、複数のアンテナ間の角度を算出するアンテナ間角度算出手段106と、アンテナ間距離算出手段104から生成されるアンテナ間の距離を入力情報として、利得算出対象となる被遮蔽アンテナ10aの利得低下状況を、遮蔽する側の複数の遮蔽アンテナ10bの各々について、各遮蔽アンテナ10bの方向を中心とした各1台の遮蔽アンテナ10bによる遮蔽パターン(図5)として、個々に導出する遮蔽状況導出手段105と、アンテナ間角度算出手段106から生成されるアンテナ間の角度と遮蔽状況導出手段105から生成される遮蔽パターン(図5)とを入力情報として、各遮蔽アンテナ10bの1台分の遮蔽のみを考慮した、被遮蔽アンテナ10aの捜索方向範囲における利得を表す単一アンテナ遮蔽考慮利得グラフ(図6)を導出する単一アンテナ遮蔽評価手段107と、単一アンテナ遮蔽評価手段107から生成される、各遮蔽アンテナ10bに対して得られた単一アンテナ遮蔽考慮利得グラフ(図6)を統合することにより、各遮蔽アンテナ10bのすべての遮蔽を考慮した、被遮蔽アンテナ10aの捜索方向範囲における利得を表すアンテナ群遮蔽考慮利得グラフ(図7)を導出する遮蔽評価結果統合手段108とを備えている。
【0055】
このように、分散型レーダにおいて、複数のアンテナ10の相互間の遮蔽を考慮して評価した探知性能に基づいてアンテナ配置を評価し、高評価のアンテナ配置に基づく新たなアンテナ配置の生成および評価を反復実行することにより、アンテナ10の相互間の遮蔽を考慮に入れた探知性能が最適に近いアンテナ配置を求めることができる。
【0056】
また、個々の被遮蔽アンテナ10aの、他のすべての遮蔽アンテナ10bの遮蔽を考慮した利得評価においては、各遮蔽アンテナ10bの遮蔽を考慮した利得を算出後に、利得を統合することによって計算するので、すべての遮蔽アンテナ10bの影響を同時に考慮する場合と比較して、複数のアンテナ10が関与する複雑な電波の回り込みなどの効果を考慮することがなく、正確さは若干落ちる可能性があるものの、計算処理が容易になるという効果がある。
【0057】
実施の形態2.
上記実施の形態1(図1〜図8)では、アンテナ群遮蔽評価手段103内の遮蔽状況導出手段105で得られた遮蔽パターンを単一アンテナ遮蔽評価手段107に直接入力したが、図9のように、遮蔽範囲拡大手段901を介した遮蔽パターンを単一アンテナ遮蔽評価手段107に入力してもよい。
以下、図2〜図4および図9〜図12を参照しながら、この発明の実施の形態2について説明する。
【0058】
図9はこの発明の実施の形態2に係るアンテナ配置算出装置の機能構成を示すブロック図であり、前述(図1参照)と同様のものについては、前述と同一符号を付して、または符号の後に「A」を付して詳述を省略する。
【0059】
図9において、この発明の実施の形態2に係るアンテナ配置算出装置は、前述(図1)の各手段101、102、103A、109〜113に加えて、収束判定手段903を備えている。
収束判定手段903は、評価値算出手段110とアンテナ群遮蔽評価手段103Aとの間に挿入されている。
【0060】
また、アンテナ群遮蔽評価手段103Aは、前述の各手段104〜108に加えて、遮蔽範囲拡大手段901と、遮蔽範囲サイズ調整手段902とを備えている。
遮蔽範囲拡大手段901は、遮蔽状況導出手段105と単一アンテナ遮蔽評価手段107との間に挿入されており、遮蔽範囲サイズ調整手段902は、収束判定手段903と遮蔽範囲拡大手段901との間に挿入されている。
【0061】
この発明の実施の形態2においては、収束判定手段903が追加され、アンテナ群遮蔽評価手段103A内に遮蔽範囲拡大手段901および遮蔽範囲サイズ調整手段902が追加された点、のみが前述の実施の形態1と異なる。
この発明の実施の形態2における他の構成および基本的機能は、前述と同様である。
【0062】
次に、図10を参照しながら、図9に示したこの発明の実施の形態2に係るアンテナ配置算出装置の動作について説明する。
遮蔽範囲拡大手段901は、遮蔽状況導出手段105から生成された遮蔽パターンを加工して、利得低下範囲を広げる。
【0063】
図10は図9内の遮蔽範囲拡大手段901による動作を示す説明図であり、遮蔽状況導出手段105からの元の遮蔽パターン(図10(a))と、遮蔽範囲拡大手段901により利得低下範囲(遮蔽範囲)を拡大した後の遮蔽パターン(図10(b))とを示している。
【0064】
なお、図10では、遮蔽パターンを引き延ばした例を示しているが、たとえば、利得が「0」と「1」以外の値も取る場合には、ある閾値よりも利得が低い部分の値を、一律に「0」に置き換えることによっても、利得低下範囲を広げることができる。
【0065】
遮蔽範囲サイズ調整手段902は、遮蔽範囲拡大手段901による利得低下範囲の拡大サイズを調整する。
利得低下範囲の拡大サイズは、初めは大きめに設定されているが、その後は、収束判定手段903によって順次に縮小制御される。
【0066】
収束判定手段903は、評価値算出手段110から生成される評価値の系列を解析し、評価値の向上が続いているか、または、評価値の向上が止まったかを判定する。この評価値向上が継続しているか否かの判定は、アンテナ配置最適化の収束判定に相当する。
【0067】
具体的には、収束判定手段903は、たとえば、あらかじめ定めた回数分にわたって、より良い評価値が出力されない場合には、最適化が収束した(評価値の向上が止まった)と判定し、この収束判定時点で、遮蔽範囲サイズ調整手段902に対し、利得低下範囲の拡大サイズを縮小するように指示する。
【0068】
ただし、拡大サイズの縮小の結果、利得低下範囲の拡大を行わないところまで処理が進むと、収束判定手段903から遮蔽範囲サイズ調整手段902への指示は生成されず、この時点でアンテナ配置最適化処理は終了する。
すなわち、アンテナ配置最適化が収束するごとに、遮蔽パターンの利得低下範囲の拡大サイズが縮小されていき、最終的には、遮蔽パターンの利得低下範囲の拡大を行わない状況で、最適化が行われたところで処理が終了する。
【0069】
次に、図2〜図4とともに、図11および図12を参照しながら、図10のように遮蔽パターンの利得低下範囲を拡大した場合に、アンテナ群遮蔽考慮利得グラフがどのように変化するかについて説明する。
【0070】
図11は遮蔽評価結果統合手段108で算出されるアンテナ群遮蔽考慮利得グラフを示す説明図であり、元(利得低下範囲が拡大される前)の遮蔽パターンに対するアンテナ群遮蔽考慮利得グラフ(図11(a))と、利得低下範囲拡大後の遮蔽パターンに対するアンテナ群遮蔽考慮利得グラフ(図11(b))と比較して示している。
【0071】
図11から明らかなように、元のアンテナ群遮蔽考慮利得グラフ(図11(a))においては、小さな利得低下範囲が連続的に発生する範囲が、利得低下範囲拡大後のアンテナ群遮蔽考慮利得グラフ(図11(b))においては、利得低下範囲の拡大により統合(マージ)されていることが分かる。
【0072】
このとき、新アンテナ配置生成手段113は、新アンテナ配置生成に際し、図4のように、1つのアンテナ10の位置を少しだけ移動するものと想定する。
図12は新アンテナ配置生成手段113の動作を示す説明図であり、新配置への移動対象となったアンテナ10を被遮蔽アンテナ10aとした場合の、被遮蔽アンテナ10aの移動前後におけるアンテナ群遮蔽考慮利得グラフの変化状況を示している。
【0073】
図12においては、元の遮蔽パターンに対する被遮蔽アンテナ10aの移動後におけるアンテナ群遮蔽考慮利得グラフの変化状況(図12(a))と、利得低下範囲拡大後の遮蔽パターンに対する被遮蔽アンテナ10aの移動後におけるアンテナ群遮蔽考慮利得グラフの変化状況(図12(b))とを示している。
図12(a)、図12(b)において、それぞれ、上のグラフがアンテナ移動前、下のグラフがアンテナ移動後の、当該アンテナに関するアンテナ群遮蔽考慮利得グラフを示している。
【0074】
まず、元の遮蔽パターンを前提とした場合(図12(a))には、アンテナ群遮蔽考慮利得グラフにおいて小さな利得低下範囲が近接して生じることから、アンテナ移動前後で利得が変化する方向範囲が広いので、アンテナ移動にともない、探知性能が変化する方向範囲も広くなり、結果的に、評価値の変化も大きくなる。
このことは、アンテナ配置に対する評価値の変化が複雑であることを意味しており、したがって、局所最適解が多くなり、このような性質を有する最適化問題においては、質の悪い局所最適解に陥る可能性が高くなる。
【0075】
これに対し、この発明の実施の形態2による利得低下範囲拡大後の遮蔽パターンを前提とした場合(図12(b))には、アンテナ群遮蔽考慮利得グラフにおいて、利得低下範囲が1つにまとまっていることから、アンテナ移動前後で利得が変化する方向範囲が狭いので、アンテナ移動にともない探知性能が変化する方向範囲も狭くなり、結果的に、評価値の変化も小さくなる。
このことは、アンテナ配置に対する評価値の変化がなだらかであることを意味しており、したがって、局所最適解が少なく、このような性質を有する最適化問題においては、質の悪い局所最適解に陥る可能性が低く抑制されることになる。
【0076】
遮蔽パターンの加工により利得低下範囲を拡大すると、上記のように、アンテナ配置に対する評価値の変化の仕方が変わるが、(細かい評価値の変化を無視した)大まかな傾向自体は変わらない。
【0077】
したがって、初めに利得低下範囲を拡大して算出した評価値に基づいてアンテナ配置最適化を行うことにより、質の悪い局所最適解に陥らず、比較的高評価のアンテナ配置が得られる。その後、利得低下範囲の拡大サイズを縮小しつつ、アンテナ配置最適化を繰り返し行うことにより、最終的に、元の遮蔽パターンに対する評価値に関して良いと判定される高評価のアンテナ配置が得られる可能性が高くなる。
【0078】
以上のように、この発明の実施の形態2(図9〜図12)に係るアンテナ配置算出装置は、図1の構成に加えて、評価値算出手段110から生成される評価値の系列を解析してアンテナ配置最適化の収束判定を行う収束判定手段903を備えている。
【0079】
また、アンテナ群遮蔽評価手段103Aは、図1に示した構成に加えて、遮蔽状況導出手段105から生成される遮蔽パターンを、利得低下範囲が拡大するように加工して、単一アンテナ遮蔽評価手段107に入力する遮蔽範囲拡大手段901と、遮蔽範囲拡大手段901による利得低下範囲の拡大サイズを調整する遮蔽範囲サイズ調整手段902とを備えている。
【0080】
収束判定手段903は、アンテナ配置最適化が収束したと判定された時点で、遮蔽範囲サイズ調整手段902に対し、利得低下範囲の拡大サイズを縮小するように指示する。
このように、遮蔽パターンの利得低下範囲の拡大サイズを縮小しつつ、アンテナ配置最適化を繰り返し行うことにより、質の悪い局所最適解に陥らず、高評価のアンテナ配置に到達できる可能性を高くすることができる。
【0081】
実施の形態3.
上記実施の形態2(図9〜図12)では、アンテナ群遮蔽評価手段103A内に、遮蔽範囲拡大手段901および遮蔽範囲サイズ調整手段902を設けたが、図13のように、アンテナ群遮蔽評価手段103A内に、遮蔽状況導出手段105Bを制御するアンテナサイズ調整手段1301を設けてもよい。
以下、図13および図14を参照しながら、この発明の実施の形態3について説明する。
【0082】
図13はこの発明の実施の形態3に係るアンテナ配置算出装置の機能構成を示すブロック図であり、前述(図1、図9参照)と同様のものについては、前述と同一符号を付して、または符号の後に「B」を付して詳述を省略する。
【0083】
図13において、この発明の実施の形態3に係るアンテナ配置算出装置は、前述(図9)の各手段101、102、103B、109〜113、903を備えているが、アンテナ群遮蔽評価手段103Bの一部構成が、前述と異なる。
アンテナ群遮蔽評価手段103Bは、前述(図9)の遮蔽範囲拡大手段901および遮蔽範囲サイズ調整手段902に代えて、アンテナサイズ調整手段1301を備えている。
【0084】
アンテナ群遮蔽評価手段103B内の遮蔽状況導出手段105Bは、前述のように、すべてのアンテナ(被遮蔽アンテナ)ごとに、アンテナ情報(アンテナ形状やサイズなど)と、各遮蔽アンテナとの距離と、に基づいて、被遮蔽アンテナの、遮蔽アンテナ方向を中心とした遮蔽パターンを導出する。
また、遮蔽状況導出手段105Bは、上記アンテナ情報を保持し、アンテナ情報に基づいて遮蔽パターンを導出しているものとする。
【0085】
アンテナサイズ調整手段1301は、遮蔽状況導出手段105Bが保持するアンテナ情報内のアンテナサイズを調整する。なお、アンテナサイズは、初めは大きめに設定されており、収束判定手段903によって順次に縮小制御される。
【0086】
収束判定手段903は、評価値算出手段110から生成される評価値の系列を解析してアンテナ配置最適化の収束判定を行い、収束したと判定された時点で、アンテナサイズ調整手段1301に対し、アンテナサイズを縮小するように指示する。
【0087】
ただし、アンテナサイズが実際のサイズに至るまで処理が進むと、アンテナサイズ調整手段1301への指示は生成されず、この時点でアンテナ配置最適化処理は終了する。
すなわち、アンテナ配置最適化が収束するごとに、アンテナサイズが縮小されていき、最終的には、アンテナサイズが実際のサイズに至って最適化が行われたところで処理が終了する。
【0088】
図14はアンテナサイズを拡大した状況を示す説明図であり、被遮蔽アンテナ10aと遮蔽アンテナ10bとの関係を、実際のアンテナサイズ(図14(a))および拡大後のアンテナサイズ(図14(b))の各場合で示している。
【0089】
図14から明らかなように、図14(a)の状態から、図14(b)のようにアンテナサイズを拡大すると、遮蔽アンテナ10bによる遮蔽方位θが大きくなり、遮蔽パターンの利得低下範囲も拡大されることが分かる。
したがって、前述の実施の形態2(図10〜図12)と同様に、図14のようにアンテナサイズを拡大することにより、質の悪い局所最適解に陥らず、評価値の良いアンテナ配置に到達できる可能性が高くなる。
【0090】
以上のように、この発明の実施の形態3(図13、図14)に係るアンテナ配置算出装置は、図1の構成に加えて、評価値算出手段110から生成される評価値の系列を解析してアンテナ配置最適化の収束判定を行う収束判定手段903を備えている。
また、アンテナ群遮蔽評価手段103Bは、図1に示した構成に加えて、遮蔽状況導出手段105Bが保持するアンテナサイズを調整するアンテナサイズ調整手段1301を備えている。
【0091】
遮蔽状況導出手段105Bは、アンテナサイズ調整手段1301で調整されたアンテナサイズに基づいて遮蔽パターンを導出し、収束判定手段903は、アンテナ配置最適化が収束したと判定された時点で、アンテナサイズ調整手段1301に対し、アンテナサイズを縮小するように指示する。
このように、遮蔽パターンの導出において前提とするアンテナサイズを大きめの値から出発して徐々に縮小しつつ、アンテナ配置最適化を繰り返し行うことにより、質の悪い局所最適解に陥らず、高評価のアンテナ配置に到達できる可能性を高くすることができる。
【0092】
実施の形態4.
上記実施の形態2、3(図9〜図14)では、アンテナ群遮蔽評価手段103A、103B内に、遮蔽範囲拡大手段901および遮蔽範囲サイズ調整手段902、またはアンテナサイズ調整手段1301を設けたが、図15のように、アンテナ群遮蔽評価手段103の外部に、アンテナ群遮蔽評価結果修正手段1501および修正サイズ調整手段1502を設けてもよい。
【0093】
以下、図15および図16を参照しながら、この発明の実施の形態4について説明する。
図15はこの発明の実施の形態4に係るアンテナ配置算出装置の機能構成を示すブロック図であり、前述(図1、図9、図13参照)と同様のものについては、前述と同一符号を付して詳述を省略する。
【0094】
図15において、この発明の実施の形態4に係るアンテナ配置算出装置は、前述(図1)の各手段101〜103、109〜113に加えて、収束判定手段903と、アンテナ群遮蔽評価結果修正手段1501と、修正サイズ調整手段1502とを備えている。
他の構成および基本的な動作については、前述の実施の形態1と同様である。
【0095】
アンテナ群遮蔽評価結果修正手段1501は、遮蔽評価結果総合手段108とレーダ探知性能評価手段109との間に挿入さている。
修正サイズ調整手段1502は、収束判定手段903とアンテナ群遮蔽評価結果修正手段1501との間に挿入さている。
【0096】
アンテナ群遮蔽評価結果修正手段1501は、アンテナ群遮蔽評価手段103から生成されるアンテナ群遮蔽考慮利得グラフ(図7)を加工する。
ここで、図16を参照しながら、アンテナ群遮蔽評価結果修正手段1501による、アンテナ群遮蔽考慮利得グラフの加工の内容について説明する。
【0097】
図16はアンテナ群遮蔽評価結果修正手段1501により加工されるアンテナ群遮蔽考慮利得グラフを示す説明図である。
図16においては、アンテナ群遮蔽考慮利得グラフが、離散的なサンプル方向における利得によって表されているものとする。
【0098】
アンテナ群遮蔽評価結果修正手段1501は、まず、捜索方向範囲の各方向について、当該方向を中心として、ある幅(以下、「ウィンドウ幅」という)Wを有するウィンドウを設定する。
そして、アンテナ群遮蔽評価結果修正手段1501は、アンテナ群遮蔽考慮利得グラフに関し、捜索方向範囲の各方向について、その利得を、ウィンドウ内の方向の利得を合成して得られる値で置き換える処理を行う。
【0099】
具体的には、アンテナ群遮蔽評価結果修正手段1501は、各サンプル方向の利得を、ウィンドウ内の各サンプル方向の「利得の最小値」などで置き換えればよい。
図16内の上段のグラフにおいては、元のアンテナ群遮蔽考慮利得グラフがサンプル方向の利得で表されている例を示しており、ウィンドウ幅Wを「3」(3つ分のサンプル方向)に設定した例を示している。
【0100】
一方、図16内の下段のグラフにおいては、上記加工処理を適用した結果を示しており、ウィンドウ幅W内に利得の最小値「0」のサンプル方向を含む場合には、すべての利得が「0」に置き換えられている。
【0101】
修正サイズ調整手段1502は、アンテナ群遮蔽評価結果修正手段1501による加工で利用するウィンドウ幅Wを調整する。なお、ウィンドウ幅Wは、初めは大きめに設定されており、収束判定手段903によって順次に縮小制御される。
【0102】
収束判定手段903は、評価値算出手段110が出力する評価値の系列を解析してアンテナ配置最適化の収束判定を行い、収束したと判定された時点で、修正サイズ調整手段1502に対し、ウィンドウ幅Wを縮小するように指示する。
ただし、ウィンドウ幅Wが「1」となって、アンテナ群遮蔽評価結果修正手段1501においてアンテナ群遮蔽考慮利得グラフの加工を行わないところまで処理が進むと、修正サイズ調整手段1502への指示は生成されず、この時点でアンテナ配置最適化処理は終了する。
【0103】
この結果、前述と同様の理由により、ウィンドウ幅Wを拡大した場合、アンテナ配置に対する評価値の変化がなだらかになり、局所最適解が少なくなるので、このような性質を有する最適化問題においては、質の悪い局所最適解に陥る可能性が低く抑制されることになる。
【0104】
アンテナ群遮蔽評価結果修正手段1501において、アンテナ群遮蔽考慮利得グラフを上記のように加工した場合、アンテナ配置に対する評価値の変化の仕方は変わるものの、大まかな(細かい評価値の変化を無視した)傾向自体は変わらない。
【0105】
したがって、初めに大きめのウィンドウ幅Wでアンテナ群遮蔽考慮利得グラフを加工して算出した評価値に基づいてアンテナ配置最適化を行うことにより、質の悪い局所最適解に陥らず、比較的高評価のアンテナ配置が得られる。
その後、ウィンドウ幅Wを縮小しつつ、アンテナ配置最適化を繰り返し行うことにより、最終的に、元のアンテナ群遮蔽考慮利得グラフに基づく評価値に関して良いと判定されるアンテナ配置が得られる可能性が高くなる。
【0106】
以上のように、この発明の実施の形態4(図15、図16)に係るアンテナ配置算出装置は、図1の構成に加えて、アンテナ群遮蔽評価結果修正手段1501と、修正サイズ調整手段1502と、収束判定手段903とを備えている。
【0107】
アンテナ群遮蔽評価結果修正手段1501は、アンテナ群遮蔽評価手段103から生成されるアンテナ群遮蔽考慮利得グラフに関し、捜索方向範囲内の各方向の利得を、各方向を含むウィンドウ内の方向の利得を合成して得られる値で置き換える処理を行う。
具体的には、図16のように、アンテナ群遮蔽評価結果修正手段1501は、アンテナ群遮蔽考慮利得グラフに関し、捜索方向範囲の各方向の利得を、ウィンドウ内の利得の最小値で置き換える。
【0108】
修正サイズ調整手段1502は、アンテナ群遮蔽評価結果修正手段1501による加工において利用するウィンドウ幅Wを調整する。
収束判定手段903は、評価値算出手段から生成される評価値の系列を解析してアンテナ配置最適化の収束判定を行い、アンテナ配置最適化が収束したと判定された時点で、修正サイズ調整手段1502に対し、ウィンドウ幅Wを縮小するように指示する。
【0109】
このように、アンテナ群遮蔽考慮利得グラフの加工におけるウィンドウ幅Wを縮小しつつ、アンテナ配置最適化を繰り返し行うことにより、質の悪い局所最適解に陥らず、高評価のアンテナ配置に到達できる可能性を高くすることができる。
【0110】
実施の形態5.
上記実施の形態4(図15、図16)では、アンテナ群遮蔽評価結果修正手段1501において、捜索方向範囲の各方向の利得をウィンドウ内の利得の最小値で置き換えたが、図17のように、ウィンドウ内の各方向の両側に各方向の利得よりも低い利得を有する方向が存在する場合に限り、利得の置き換え処理を行うように構成してもよい。
【0111】
以下、図15および図17を参照しながら、この発明の実施の形態5について説明する。
図17はこの発明の実施の形態5に係るアンテナ群遮蔽評価結果修正手段1501により加工されるアンテナ群遮蔽考慮利得グラフを示す説明図である。
なお、この発明の実施の形態5の機能構成は、図15に示した通りであり、アンテナ群遮蔽評価結果修正手段1501の一部処理内容のみが、前述と異なる。
【0112】
以下、アンテナ群遮蔽評価結果修正手段1501による、アンテナ群遮蔽考慮利得グラフの加工の内容について説明する。
アンテナ群遮蔽評価結果修正手段1501は、前述と同様に、捜索方向範囲の各方向についてウィンドウを設定し、アンテナ群遮蔽考慮利得グラフに関し、捜索方向範囲の各方向について、当該方向の利得を、ウィンドウ内の方向の利得を合成して得られる値で置き換える処理を行う。
【0113】
具体的には、アンテナ群遮蔽評価結果修正手段1501は、前述の実施の形態4と同様に、各方向の利得を、ウィンドウ内の方向の利得の最小値などで置き換える。
ただし、前述とは異なり、アンテナ群遮蔽評価結果修正手段1501による利得の置き換え処理は、以下の条件が満たされる場合に限って行い、そうでない場合には、置き換え処理を行わないものとする。
【0114】
すなわち、利得の置き換え処理の実行条件は、ウィンドウにおいて、当該方向の両方の側(具体的には、当該方向より方位角が小さい側と大きい側)に、当該方向の利得よりも低い利得を有するサンプル方向が存在すること、である。
【0115】
図17において、上段のグラフは、元のアンテナ群遮蔽考慮利得グラフがサンプル方向の利得で表されている例を示す。
図17の下段のグラフは、上段のグラフにおいて、ウィンドウ幅Wを5つ分のサンプル方向として、上記加工処理を適用した結果を示す。
【0116】
図17の下側のグラフを前述の図16と比較すると、図16の下段のグラフでは、アンテナ群遮蔽考慮利得グラフの変化の激しい部分の左右にある1つずつのサンプル方向の利得が「1」から「0」に変化しているのに対し、図17の下段のグラフでは、変化の激しい部分のサンプル方向の左右にある、1つずつのサンプル方向の利得が「1」のままであることが分かる。
【0117】
すなわち、図16および図17においては、いずれも、アンテナ群遮蔽考慮利得グラフを加工することにより、アンテナ配置の変化に対する評価値の変化をなだらかにしているものの、図16においては、加工処理の目的から逸脱した不要な部分のサンプル方向に対しても利得を変更している。
これに対し、図17においては、加工処理の目的に必要な範囲のサンプル方向のみについて、利得を変更していることが分かる。
【0118】
つまり、この発明の実施の形態5(図17)によれば、前述の実施の形態4(図16)と比べて、利得の置き換え処理の実行条件という余分な判定処理の追加が必要になるが、さらに正確なアンテナ群遮蔽考慮利得グラフに基づいてアンテナ配置最適化処理を行うことができる。
【0119】
以上のように、この発明の実施の形態5(図15、図17)に係るアンテナ配置算出装置のアンテナ群遮蔽評価結果修正手段1501は、アンテナ群遮蔽考慮利得グラフに関し、捜索方向範囲の各方向について設定したウィンドウにおいて、各方向の両方の側に、各方向の利得よりも低い利得を有する方向が存在する場合に限り、利得の置き換え処理を行う。
【0120】
また、前述の実施の形態4と同様に、アンテナ群遮蔽考慮利得グラフの加工におけるウィンドウ幅Wを縮小しつつ、アンテナ配置最適化を繰り返し行うことにより、質の悪い局所最適解に陥らず、良いアンテナ配置に到達できる可能性を高くすることができる。
また、不要な部分のサンプル方向の利得変更処理を行わないことにより、より正確な評価値に基づいて最適化を行うことができるので、さらに高評価のアンテナ配置に至る可能性を高くすることができる。
【符号の説明】
【0121】
10 アンテナ、10a 被遮蔽アンテナ、10b、10bA、10bB、10bC 遮蔽アンテナ、101 アンテナ配置保持手段、102 アンテナ配置初期化手段、103、103A、103B アンテナ群遮蔽評価手段、104 アンテナ間距離算出手段、105 遮蔽状況導出手段、106 アンテナ間角度算出手段、107 単一アンテナ遮蔽評価手段、108 遮蔽評価結果統合手段、109 レーダ探知性能評価手段、110 評価値算出手段、111 高評価アンテナ配置抽出手段、112 アンテナ配置制約保持手段、113 新アンテナ配置生成手段、901 遮蔽範囲拡大手段、902 遮蔽範囲サイズ調整手段、903 収束判定手段、1301 アンテナサイズ調整手段、1501 アンテナ群遮蔽評価結果修正手段、1502 修正サイズ調整手段、R アンテナ設置可能領域、W ウィンドウ幅、θ 遮蔽方位。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
分散型レーダを構成する複数のアンテナの配置を算出するアンテナ配置算出装置であって、
前記複数のアンテナのすべての位置情報を、アンテナ配置として評価値とともに保持するアンテナ配置保持手段と、
前記アンテナ配置保持手段が保持するアンテナ配置のうち、評価値をまだ算出していない未評価アンテナ配置を1つ選択し、前記未評価アンテナ配置に関して、前記複数のアンテナごとに、他のすべてのアンテナの遮蔽を考慮し、捜索方向範囲における利得を評価してアンテナ群遮蔽考慮利得グラフを生成するアンテナ群遮蔽評価手段と、
前記アンテナ群遮蔽評価手段から生成される、すべてのアンテナの捜索方向範囲に関する利得を合成することにより、前記分散型レーダとしての捜索方向範囲に関する探知性能を求めるレーダ探知性能評価手段と、
前記レーダ探知性能評価手段から生成される、前記分散型レーダとしての捜索方向範囲に関する探知性能を入力情報として、アンテナ配置の良さを表す単一の評価値を算出して前記アンテナ配置保持手段に記録する評価値算出手段と、
前記アンテナ配置保持手段が保持するアンテナ配置のうち、評価値の良い高評価アンテナ配置を抽出する高評価アンテナ配置抽出手段と、
前記高評価アンテナ配置抽出手段によって抽出される高評価アンテナ配置を変化させることにより、新たなアンテナ配置を生成して前記アンテナ配置保持手段に記録する新アンテナ配置生成手段と
を備えたことを特徴とするアンテナ配置算出装置。
【請求項2】
前記アンテナ群遮蔽評価手段は、
前記複数のアンテナ間の距離を算出するアンテナ間距離算出手段と、
前記複数のアンテナ間の角度を算出するアンテナ間角度算出手段と、
前記アンテナ間距離算出手段から生成されるアンテナ間の距離を入力情報として、利得算出対象となる被遮蔽アンテナの利得低下状況を、遮蔽する側の複数の遮蔽アンテナの各々について、各遮蔽アンテナの方向を中心とした各1台の遮蔽アンテナによる遮蔽パターンとして、個々に導出する遮蔽状況導出手段と、
前記アンテナ間角度算出手段から生成されるアンテナ間の角度と前記遮蔽状況導出手段から生成される遮蔽パターンとを入力情報として、前記各遮蔽アンテナの1台分の遮蔽のみを考慮した、前記被遮蔽アンテナの捜索方向範囲における利得を表す単一アンテナ遮蔽考慮利得グラフを導出する単一アンテナ遮蔽評価手段と、
前記単一アンテナ遮蔽評価手段から生成される、前記各遮蔽アンテナに対して得られた単一アンテナ遮蔽考慮利得グラフを統合することにより、前記各遮蔽アンテナのすべての遮蔽を考慮した、前記被遮蔽アンテナの捜索方向範囲における利得を表す前記アンテナ群遮蔽考慮利得グラフを導出する遮蔽評価結果統合手段と
を含むことを特徴とする請求項1に記載のアンテナ配置算出装置。
【請求項3】
前記評価値算出手段から生成される評価値の系列を解析してアンテナ配置最適化の収束判定を行う収束判定手段を備え、
前記アンテナ群遮蔽評価手段は、
前記遮蔽状況導出手段から生成される遮蔽パターンを、利得低下範囲が拡大するように加工して、前記単一アンテナ遮蔽評価手段に入力する遮蔽範囲拡大手段と、
前記遮蔽範囲拡大手段による前記利得低下範囲の拡大サイズを調整する遮蔽範囲サイズ調整手段と、を含み、
前記収束判定手段は、前記アンテナ配置最適化が収束したと判定された時点で、前記遮蔽範囲サイズ調整手段に対し、前記利得低下範囲の拡大サイズを縮小するように指示することを特徴とする請求項2に記載のアンテナ配置算出装置。
【請求項4】
前記評価値算出手段から生成される評価値の系列を解析してアンテナ配置最適化の収束判定を行う収束判定手段を備え、
前記アンテナ群遮蔽評価手段は、前記遮蔽状況導出手段が保持するアンテナサイズを調整するアンテナサイズ調整手段を含み、
前記遮蔽状況導出手段は、前記アンテナサイズ調整手段で調整されたアンテナサイズに基づいて前記遮蔽パターンを導出し、
前記収束判定手段は、前記アンテナ配置最適化が収束したと判定された時点で、前記アンテナサイズ調整手段に対し、前記アンテナサイズを縮小するように指示することを特徴とする請求項2に記載のアンテナ配置算出装置。
【請求項5】
前記アンテナ群遮蔽評価手段から生成される前記アンテナ群遮蔽考慮利得グラフに関し、前記捜索方向範囲内の各方向の利得を、前記各方向を含むウィンドウ内の方向の利得を合成して得られる値で置き換える処理を行うアンテナ群遮蔽評価結果修正手段と、
前記アンテナ群遮蔽評価結果修正手段による加工において利用するウィンドウ幅を調整する修正サイズ調整手段と、
前記評価値算出手段から生成される評価値の系列を解析してアンテナ配置最適化の収束判定を行い、前記アンテナ配置最適化が収束したと判定された時点で、前記修正サイズ調整手段に対し、前記ウィンドウ幅を縮小するように指示する収束判定手段と
を備えたことを特徴とする請求項1または請求項2に記載のアンテナ配置算出装置。
【請求項6】
前記アンテナ群遮蔽評価結果修正手段は、前記アンテナ群遮蔽考慮利得グラフに関し、前記捜索方向範囲の各方向の利得を、ウィンドウ内の利得の最小値で置き換えることを特徴とする請求項5に記載のアンテナ配置算出装置。
【請求項7】
前記アンテナ群遮蔽評価結果修正手段は、前記アンテナ群遮蔽考慮利得グラフに関し、前記捜索方向範囲の各方向について設定したウィンドウにおいて、前記各方向の両方の側に、前記各方向の利得よりも低い利得を有する方向が存在する場合に限り、前記利得の置き換え処理を行うことを特徴とする請求項5または請求項6に記載のアンテナ配置算出装置。
【請求項1】
分散型レーダを構成する複数のアンテナの配置を算出するアンテナ配置算出装置であって、
前記複数のアンテナのすべての位置情報を、アンテナ配置として評価値とともに保持するアンテナ配置保持手段と、
前記アンテナ配置保持手段が保持するアンテナ配置のうち、評価値をまだ算出していない未評価アンテナ配置を1つ選択し、前記未評価アンテナ配置に関して、前記複数のアンテナごとに、他のすべてのアンテナの遮蔽を考慮し、捜索方向範囲における利得を評価してアンテナ群遮蔽考慮利得グラフを生成するアンテナ群遮蔽評価手段と、
前記アンテナ群遮蔽評価手段から生成される、すべてのアンテナの捜索方向範囲に関する利得を合成することにより、前記分散型レーダとしての捜索方向範囲に関する探知性能を求めるレーダ探知性能評価手段と、
前記レーダ探知性能評価手段から生成される、前記分散型レーダとしての捜索方向範囲に関する探知性能を入力情報として、アンテナ配置の良さを表す単一の評価値を算出して前記アンテナ配置保持手段に記録する評価値算出手段と、
前記アンテナ配置保持手段が保持するアンテナ配置のうち、評価値の良い高評価アンテナ配置を抽出する高評価アンテナ配置抽出手段と、
前記高評価アンテナ配置抽出手段によって抽出される高評価アンテナ配置を変化させることにより、新たなアンテナ配置を生成して前記アンテナ配置保持手段に記録する新アンテナ配置生成手段と
を備えたことを特徴とするアンテナ配置算出装置。
【請求項2】
前記アンテナ群遮蔽評価手段は、
前記複数のアンテナ間の距離を算出するアンテナ間距離算出手段と、
前記複数のアンテナ間の角度を算出するアンテナ間角度算出手段と、
前記アンテナ間距離算出手段から生成されるアンテナ間の距離を入力情報として、利得算出対象となる被遮蔽アンテナの利得低下状況を、遮蔽する側の複数の遮蔽アンテナの各々について、各遮蔽アンテナの方向を中心とした各1台の遮蔽アンテナによる遮蔽パターンとして、個々に導出する遮蔽状況導出手段と、
前記アンテナ間角度算出手段から生成されるアンテナ間の角度と前記遮蔽状況導出手段から生成される遮蔽パターンとを入力情報として、前記各遮蔽アンテナの1台分の遮蔽のみを考慮した、前記被遮蔽アンテナの捜索方向範囲における利得を表す単一アンテナ遮蔽考慮利得グラフを導出する単一アンテナ遮蔽評価手段と、
前記単一アンテナ遮蔽評価手段から生成される、前記各遮蔽アンテナに対して得られた単一アンテナ遮蔽考慮利得グラフを統合することにより、前記各遮蔽アンテナのすべての遮蔽を考慮した、前記被遮蔽アンテナの捜索方向範囲における利得を表す前記アンテナ群遮蔽考慮利得グラフを導出する遮蔽評価結果統合手段と
を含むことを特徴とする請求項1に記載のアンテナ配置算出装置。
【請求項3】
前記評価値算出手段から生成される評価値の系列を解析してアンテナ配置最適化の収束判定を行う収束判定手段を備え、
前記アンテナ群遮蔽評価手段は、
前記遮蔽状況導出手段から生成される遮蔽パターンを、利得低下範囲が拡大するように加工して、前記単一アンテナ遮蔽評価手段に入力する遮蔽範囲拡大手段と、
前記遮蔽範囲拡大手段による前記利得低下範囲の拡大サイズを調整する遮蔽範囲サイズ調整手段と、を含み、
前記収束判定手段は、前記アンテナ配置最適化が収束したと判定された時点で、前記遮蔽範囲サイズ調整手段に対し、前記利得低下範囲の拡大サイズを縮小するように指示することを特徴とする請求項2に記載のアンテナ配置算出装置。
【請求項4】
前記評価値算出手段から生成される評価値の系列を解析してアンテナ配置最適化の収束判定を行う収束判定手段を備え、
前記アンテナ群遮蔽評価手段は、前記遮蔽状況導出手段が保持するアンテナサイズを調整するアンテナサイズ調整手段を含み、
前記遮蔽状況導出手段は、前記アンテナサイズ調整手段で調整されたアンテナサイズに基づいて前記遮蔽パターンを導出し、
前記収束判定手段は、前記アンテナ配置最適化が収束したと判定された時点で、前記アンテナサイズ調整手段に対し、前記アンテナサイズを縮小するように指示することを特徴とする請求項2に記載のアンテナ配置算出装置。
【請求項5】
前記アンテナ群遮蔽評価手段から生成される前記アンテナ群遮蔽考慮利得グラフに関し、前記捜索方向範囲内の各方向の利得を、前記各方向を含むウィンドウ内の方向の利得を合成して得られる値で置き換える処理を行うアンテナ群遮蔽評価結果修正手段と、
前記アンテナ群遮蔽評価結果修正手段による加工において利用するウィンドウ幅を調整する修正サイズ調整手段と、
前記評価値算出手段から生成される評価値の系列を解析してアンテナ配置最適化の収束判定を行い、前記アンテナ配置最適化が収束したと判定された時点で、前記修正サイズ調整手段に対し、前記ウィンドウ幅を縮小するように指示する収束判定手段と
を備えたことを特徴とする請求項1または請求項2に記載のアンテナ配置算出装置。
【請求項6】
前記アンテナ群遮蔽評価結果修正手段は、前記アンテナ群遮蔽考慮利得グラフに関し、前記捜索方向範囲の各方向の利得を、ウィンドウ内の利得の最小値で置き換えることを特徴とする請求項5に記載のアンテナ配置算出装置。
【請求項7】
前記アンテナ群遮蔽評価結果修正手段は、前記アンテナ群遮蔽考慮利得グラフに関し、前記捜索方向範囲の各方向について設定したウィンドウにおいて、前記各方向の両方の側に、前記各方向の利得よりも低い利得を有する方向が存在する場合に限り、前記利得の置き換え処理を行うことを特徴とする請求項5または請求項6に記載のアンテナ配置算出装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【公開番号】特開2011−232158(P2011−232158A)
【公開日】平成23年11月17日(2011.11.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−102257(P2010−102257)
【出願日】平成22年4月27日(2010.4.27)
【出願人】(000006013)三菱電機株式会社 (33,312)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成23年11月17日(2011.11.17)
【国際特許分類】
【出願日】平成22年4月27日(2010.4.27)
【出願人】(000006013)三菱電機株式会社 (33,312)
【Fターム(参考)】
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