説明

イオンビームエッチング装置、方法及び制御装置

【課題】IBEにおいてイオンビームの斜め入射を行って基板上に凹凸構造を形成する際に、入射方向ごとに入射量が異なることによる影響を低減し、基板面内において、作製された素子間の特性のバラつきを低減させる。
【解決手段】基板がイオン引き出し用グリッド電極の斜向かいにある場合に、イオンビームエッチングによって形成される被処理面に平行であり且つ基板面に平行である第1の方向側に前記グリッド電極が位置する状態を第1の状態とし、該第1の方向と垂直であり且つ基板面に平行である第2の方向側に前記グリッド電極が位置する状態を第2の状態としたとき、前記第1の状態における基板の回転速度を前記第2の状態における基板の回転速度よりも速くする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体デバイス、電子デバイス、磁気デバイス、表示デバイス等の製造工程、特にハードディスク装置の磁気ヘッドにおける読み出し部の加工工程において、凹凸構造を形成するためのエッチング装置、エッチング方法及び制御装置に関する。
【背景技術】
【0002】
コンピュータ等の情報処理装置の外部記録装置として使用される磁気記録再生装置であるハードディスク装置は、近年大容量化、小型化が要求され続けている。この要求に伴い、磁気記録の高記録密度化が進んでいる。
【0003】
この磁気記録の高密度化に伴い、記録情報の再生に巨大磁気抵抗(以下GMRという)効果やトンネル磁気抵抗(以下TMRという)効果を用いた磁気抵抗効果(以下MRという)素子が用いられている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従来、MR素子を形成する場合には、MR膜を成膜してからイオンビームエッチング(以下IBEという)によって加工が行われている。通常IBEの加工では、基板を一定の速度で回転させながら行われている。
【0005】
しかし、この加工方法では、イオンビームの発散とイオンエネルギーの減衰によって、基板上の各素子のエッチング量及び加工後のテーパ角度に分布が生じるという問題がある。この様な素子形状のばらつきは素子の微細化に伴い、動作不良、歩留まり等の原因となる可能性がある。
【0006】
具体的に図1を用いて説明する。図1はMR膜を形成した基板に対してIBEを行う様子を表している。ここで実際のイオンビームには図2に示すように発散が存在する。よってプラズマ形成空間からイオンビームを引き出すグリッドと基板間の距離が長くなるにつれイオンビームが発散するため、グリッドから遠い点ではイオンビームの入射量が減少する。またイオンビームのエネルギーはグリッドと基板間の距離が長くなるにつれ減衰していく。即ち、グリッドと距離が近い部分ではイオンビームの入射量及び入射エネルギーが大きくなり、グリッドと距離が遠い部分ではイオンビームの入射量及び入射エネルギーが小さくなる。この様子を図3の拡大表示部に模式的に示す。グリッドと基板の距離が近い点Xは入射するイオンビーム量及びエネルギーが大きく、グリッドと基板の距離が遠い点Yは入射するイオンビーム量及びエネルギーが小さくなる様子を表している。この結果、点Xと点Yではエッチング量に差が生じてしまう。
【0007】
上述した基板面内のエッチング量の分布は、基板を一定速度で回転制御しながら行うことで各点の平均のエッチング量を均一にすることが可能になる。しかし、この方法によれば、また新たな問題が生じる。
【0008】
具体的に図3及び図4を用いて説明する。まず、図3において、グリッドと距離が近い点Xが遠い点Yよりもイオンビームの入射量及びエネルギーが多くなる。この様子を、イオンビームを表す矢印を用いて模式的に示している。次に基板が180度回転し、グリッドと点X及び点Yの位置関係が図3と反対になった状態を図4に示す。この状態では、点Xはグリッドからの距離が遠く、イオンビームの入射量及びエネルギーが小さくなり、点Yはグリッドからの距離が近く、イオンビームの入射量及びエネルギーが大きくなる。ここで図3と図4のそれぞれの状態において入射したイオンビーム量及びその入射方向を比較したものを図5に示す。破線の矢印は図3の状態において入射したイオンビーム、実線の矢印は図4の状態において入射したイオンビームを表している。図5から分かるように、基板を一定速度で回転制御することにより、基板面内の各点における平均のイオンビームの入射量を均一にできるが、イオンビームの入射方向によってイオンビームの入射量が異なるという問題が生じる。
【0009】
このため、基板を一定速度で回転制御しながらIBEを行った場合、点Xと点Yでは同じ方向を向く面でもそのエッチング量やテーパ角度が均一とはならない。このような問題は基板が大面積となるに連れより顕著となってくる。
【0010】
本発明は上述した問題に鑑み、IBEにおいてイオンビームの斜め入射を行って凹凸構造を形成する際に、入射方向ごとに入射量が異なることによる影響を低減し、作製された素子間の特性のバラつきを低減させることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記課題を解決するために、本発明は、プラズマを形成するためのプラズマ形成手段と、前記プラズマ形成手段によってプラズマが形成されるプラズマ形成空間と、前記プラズマ形成空間で形成されたプラズマからイオンを引き出すグリッドと、基板を保持するための基板ホルダとを備えたイオンビームエッチング装置であって、前記基板ホルダは回転可能であり、且つ前記グリッドに対しての傾斜角度が変更可能であり、前記基板の回転位置を検出するための位置検出手段と、前記基板の回転速度を制御するための回転制御手段とを備え、前記回転制御手段は、前記基板が前記グリッドの斜向かいにある場合に、イオンビームエッチングによって形成される被処理面に平行であり且つ前記基板面に平行である第1の方向側に前記グリッドが位置する状態を第1の状態とし、前記第1の方向と垂直であり且つ前記基板面に平行である第2の方向側に前記グリッドが位置する状態を第2の状態としたとき、前記第2の状態における前記基板の前記回転速度を前記第2の状態における前記基板の前記回転速度よりも速くすることを特徴とする。
また、本発明は、プラズマを形成するためのプラズマ形成手段と、前記プラズマ形成手段によってプラズマが形成されるプラズマ形成空間と、前記プラズマ形成空間で形成されたプラズマからイオンを引き出すグリッドと、基板を保持するための基板ホルダとを備えたイオンビームエッチング装置であって、前記基板ホルダは回転可能であり、且つ前記グリッドに対しての傾斜角度が変更可能であり、前記基板の回転位置を検出するための位置検出手段と、前記基板の回転停止時間を制御するための回転制御手段とを備え、前記回転制御手段は、前記基板が前記グリッドの斜向かいにある場合に、イオンビームエッチングによって形成される被処理面に平行であり且つ前記基板面に平行である第1の方向側に前記グリッドが位置する状態を第1の状態とし、前記第1の方向と垂直であり且つ前記基板面に平行である第2の方向側に前記グリッドが位置する状態を第2の状態としたとき、前記第1の状態における前記基板の前記回転停止時間を前記第2の状態における前記基板の前記回転停止時間よりも長くすることを特徴とする。
また、本発明は、プラズマを形成するためのプラズマ形成手段と、前記プラズマ形成手段によってプラズマが形成されるプラズマ形成空間と、前記プラズマ形成空間で形成されたプラズマからイオンを引き出すグリッドと、基板を保持するための基板ホルダとを備えたイオンビームエッチング装置であって、前記基板ホルダは回転可能であり、且つ前記グリッドに対しての傾斜角度が変更可能であり、前記基板の回転位置を検出するための位置検出手段と、前記プラズマ形成手段への供給電力を制御するための電力制御手段とを備え、前記電力制御手段は、前記基板が前記グリッドの斜向かいにある場合に、イオンビームエッチングによって形成される被処理面に平行であり且つ前記基板面に平行である第1の方向側に前記グリッドが位置する状態を第1の状態とし、前記第1の方向と垂直であり且つ前記基板面に平行である第2の方向側に前記グリッドが位置する状態を第2の状態としたとき、前記第1の状態における前記プラズマ形成手段への前記供給電力を前記第2の状態における前記プラズマ形成手段への前記供給電力よりも大きくすることを特徴とする。
また、本発明は、プラズマを形成するためのプラズマ形成手段と、前記プラズマ形成手段によってプラズマが形成されるプラズマ形成空間と、前記プラズマ形成空間で形成されたプラズマからイオンを引き出すグリッドと、基板を保持するための基板ホルダとを備えたイオンビームエッチング装置であって、前記基板ホルダは回転可能であり、且つ前記グリッドに対しての傾斜角度が変更可能であり、前記基板の回転位置を検出するための位置検出手段と、前記グリッドへの印加電圧を制御することで、ビーム引き出し電圧を制御する電圧制御手段と、前記電圧制御手段は、前記基板が前記グリッドの斜向かいにある場合に、イオンビームエッチングによって形成される被処理面に平行であり且つ前記基板面に平行である第1の方向側に前記グリッドが位置する状態を第1の状態とし、前記第1の方向と垂直であり且つ前記基板面に平行である第2の方向側に前記グリッドが位置する状態を第2の状態としたとき、前記第1の状態における前記ビーム引き出し電圧を前記第2の状態における前記ビーム引き出し電圧よりも大きくすることを特徴とする。
また、本発明は、イオンビームエッチング方法であって、回転可能であり、且つグリッドに対して傾斜可能な基板ホルダ上に基板を載置する基板載置工程と、プラズマ形成空間に放電用ガスを導入し、プラズマ形成手段によってプラズマを形成するプラズマ形成工程と、前記プラズマ形成空間に形成されたプラズマからグリッドによってイオンを引き出し、イオンビームを形成するイオンビーム形成工程と、前記基板と前記グリッドが斜向かいに位置するように前記基板ホルダを傾斜させる傾斜工程と、前記基板を回転させながら前記イオンビームを照射し、前記基板を処理する基板処理工程とを有し、前記基板処理工程は、前記基板の回転位置を検出する回転位置検出工程と、前記回転位置検出工程により検出された前記基板の回転位置に基づき、イオンビームエッチングによって形成される被処理面に平行であり且つ前記基板面に平行である第1の方向側に前記グリッドが位置する状態を第1の状態とし、前記第1の方向と垂直であり且つ前記基板面に平行である第2の方向側に前記グリッドが位置する状態を第2の状態としたとき、前記第1の状態における前記基板のエッチング量を前記第2の状態における前記基板のエッチング量よりも大きくなるように制御を行う制御工程とを有することを特徴とする。
また、本発明は、プラズマを形成するためのプラズマ形成手段と、前記プラズマ形成手段によってプラズマが形成されるプラズマ形成空間と、前記プラズマ形成空間で形成されたプラズマからイオンを引き出すグリッドと、回転可能であり、且つ前記グリッドに対して傾斜可能な基板ホルダと、前記基板ホルダ上に基板が保持された際に、前記基板の回転位置を検出するための位置検出手段と、前記基板ホルダの回転を制御する回転制御手段とを備えたイオンビームエッチング装置を制御するための制御装置であって、前記位置検出手段から前記回転位置に関する情報を取得する手段と、前記基板が前記グリッドの斜向かいにある場合に、イオンビームエッチングによって形成される被処理面に平行であり且つ前記基板面に平行である第1の方向側に前記グリッドが位置する状態を第1の状態とし、前記第1の方向と垂直であり且つ前記基板面に平行である第2の方向側に前記グリッドが位置する状態を第2の状態としたとき、前記第2の状態における前記基板の回転速度を前記第1の状態における前記基板の回転速度よりも速くなるように、前記回転制御手段を制御するための制御信号を生成する手段と、前記生成された制御信号を前記回転制御手段に送信する手段とを有することを特徴とする。
また、本発明は、プラズマを形成するためのプラズマ形成手段と、前記プラズマ形成手段によってプラズマが形成されるプラズマ形成空間と、前記プラズマ形成空間で形成されたプラズマからイオンを引き出すグリッドと、回転可能であり、且つ前記グリッドに対して傾斜可能な基板ホルダと、前記基板ホルダ上に基板が保持された際に、前記基板の回転位置を検出するための位置検出手段と、前記位置検出手段の検出した回転位置に応じて、前記基板の回転停止時間を制御する回転制御手段とを備えたイオンビームエッチング装置を制御するための制御装置であって、前記位置検出手段から前記回転位置に関する情報を取得する手段と、前記基板が前記グリッドの斜向かいにある場合に、イオンビームエッチングによって形成される被処理面に平行であり且つ前記基板面に平行である第1の方向側に前記グリッドが位置する状態を第1の状態とし、前記第1の方向と垂直であり且つ前記基板面に平行である第2の方向側に前記グリッドが位置する状態を第2の状態としたとき、前記第1の状態における前記基板の回転停止時間を前記第2の状態における前記基板の回転停止時間よりも長くなるように、前記回転制御手段を制御するための制御信号を生成する手段と、
前記生成された制御信号を前記回転制御手段に送信する手段とを有することを特徴とする。
また、本発明は、プラズマを形成するためのプラズマ形成手段と、前記プラズマ形成手段によってプラズマが形成されるプラズマ形成空間と、前記プラズマ形成空間で形成されたプラズマからイオンを引き出すグリッドと、回転可能であり、且つ前記グリッドに対して傾斜可能な基板ホルダと、前記基板ホルダ上に基板が保持された際に、前記基板の回転位置を検出するための位置検出手段と、前記プラズマ形成手段への供給電力を制御する電力制御手段とを備えたイオンビームエッチング装置を制御するための制御装置であって、前記位置検出手段から前記回転位置に関する情報を取得する手段と、前記基板が前記グリッドの斜向かいにある場合に、イオンビームエッチングによって形成される被処理面に平行であり且つ前記基板面に平行である第1の方向側に前記グリッドが位置する状態を第1の状態とし、前記第1の方向と垂直であり且つ前記基板面に平行である第2の方向側に前記グリッドが位置する状態を第2の状態としたとき、前記第1の状態における前記供給電力を前記第2の状態における前記供給電力よりも大きくなるように、前記電力制御手段を制御するための制御信号を生成する手段と、前記生成された制御信号を前記電力制御手段に送信する手段とを有することを特徴とする。
さらに、本発明は、プラズマを形成するためのプラズマ形成手段と、前記プラズマ形成手段によってプラズマが形成されるプラズマ形成空間と、前記プラズマ形成空間で形成されたプラズマからイオンを引き出すグリッドと、回転可能であり、且つ前記グリッドに対して傾斜可能な基板ホルダと、
前記基板ホルダ上に基板が保持された際に、前記基板の回転位置を検出するための位置検出手段と、前記グリッドへの印加電圧を制御することでビーム引き出し電圧を制御する電圧制御手段とを備えたイオンビームエッチング装置を制御するための制御装置であって、前記位置検出手段から前記回転位置に関する情報を取得する手段と、前記基板が前記グリッドの斜向かいにある場合に、イオンビームエッチングによって形成される被処理面に平行であり且つ前記基板面に平行である第1の方向側に前記グリッドが位置する状態を第1の状態とし、前記第1の方向と垂直であり且つ前記基板面に平行である第2の方向側に前記グリッドが位置する状態を第2の状態としたとき、前記第1の状態における前記ビーム引き出し電圧を前記第2の状態における前記ビーム引き出し電圧よりも大きくなるように、前記電圧制御手段を制御するための制御信号を生成する手段と、前記生成された制御信号を前記電圧制御手段に送信する手段とを有することを特徴とする。
【発明の効果】
【0012】
本発明を用いることで、従来のIBEによって処理された素子に比べ、作製された素子間の特性のバラつきを低減させることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】イオンビームエッチングを模式的に示した図である。
【図2】イオンビームの発散を模式的に示す図である。
【図3】イオンビーム入射量とイオンエネルギーの基板面内の分布を模式的に示した図である。
【図4】イオンビーム入射量とイオンエネルギーの基板面内の分布を模式的に示した図である。
【図5】イオンビーム入射方向と、イオンビームの入射量及びイオンエネルギーの関係を模式的に示した図である。
【図6】本発明の一実施形態に係るイオンビームエッチング装置を示す図である。
【図7】本発明の一実施形態に係る制御装置を示すブロック図である。
【図8】本発明の一実施形態に係る、グリッドと基板との位置関係および基板の位相を説明するための図である。
【図9】本発明の一実施形態に係るイオンビームエッチングにおける基板ホルダの回転速度の制御マップを示す説明図である。
【図10】従来のイオンビームエッチングによって基板を加工する様子を示す図である。
【図11】従来のイオンビームエッチングによって加工された基板を示す図である。
【図12】従来のイオンビームエッチングによって加工された基板を示す図である。
【図13】本発明の一実施形態に係るイオンビームエッチングを用いる処理対象の一例としての磁気抵抗効果膜を示す図である。
【図14】磁気抵抗効果素子を示す図である。
【図15】(a)は、本発明の一実施形態に係る、基板回転の回転速度を制御する場合の、連続で基板(基板ホルダ)を回転する場合についての説明図であり、(b)は、本発明の一実施形態に係る、基板回転の回転速度を制御する場合の、非連続で基板(基板ホルダ)を回転する場合についての説明図である。
【図16】本発明の一実施形態に係る制御装置を示すブロック図である。
【図17】(a)は、本発明の一実施形態に係る、プラズマ形成空間への投入電力を制御する場合の、連続で基板(基板ホルダ)を回転する場合についての説明図であり、(b)は、本発明の一実施形態に係る、プラズマ形成空間への投入電力を制御する場合の、非連続で基板(基板ホルダ)を回転する場合についての説明図である。
【図18】本発明の一実施形態に係るグリッドの構成及び機能を説明するための図である。
【図19】本発明の一実施形態に係る制御装置を示すブロック図である。
【図20】(a)は、本発明の一実施形態に係る、グリッドへの印加電圧を制御する場合の、連続で基板(基板ホルダ)を回転する場合についての説明図であり、(b)は、本発明の一実施形態に係る、グリッドへの印加電圧を制御する場合の、非連続で基板(基板ホルダ)を回転する場合についての説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
(第1の実施形態)
以下、図面を参照して、本発明の実施の形態を説明するが、本発明は本実施形態に限定されるものではない。なお、以下で説明する図面で、同機能を有するものは同一符号を付け、その繰り返しの説明は省略することもある。
【0015】
図6は本発明に係るイオンビームエッチング装置の概略図を示す。
イオンビームエッチング装置100は処理空間1とプラズマ形成空間2で構成されている。
プラズマ形成空間2にプラズマを形成するためのプラズマ形成手段として、ベルジャー4、ガス導入部5、ベルジャー4内に誘導磁界を発生するアンテナ6、アンテナ6に高周波電力(ソース電力)を供給する放電用電源12、放電用電源12とアンテナ6の間に設けられた整合器7、電磁コイル8が設置されており、処理空間1との境界にはグリッド9が設置されている。放電用電源12から供給された高周波電力がアンテナ6に供給され、ベルジャー4内部のプラズマ形成空間2にプラズマが形成されるようになっている。
処理空間1には排気ポンプ3が設置されている。また、処理空間1内には基板ホルダ10があり、基板11が載置されている。基板11は基板ホルダ10により固定される。基板11の固定手段としてESC電極を用いた静電吸着やクランプチャックなど種々の固定手段を用いることが可能である。
放電用ガスは、放電用ガスを溜めている不図示のボンベから、不図示の配管、不図示のバルブ、不図示の流量調整器を介して、ガス導入部5よりプラズマ形成空間2内に導入される。
プラズマ形成空間2にプラズマが形成された後、グリッド9に電圧を印加して、プラズマ形成空間2内のイオンをビームとして引き出す。引き出されたイオンビームは、ニュートラライザー13により電気的に中和されて、基板11に照射される。基板ホルダ10は、イオンビームに対して傾斜角度が変更可能となっており、また基板11をその面内方向に回転(自転)できる構造となっている。
【0016】
基板ホルダ10には、位置検出手段としての位置センサ14が設けられており、基板11の回転位置を検出することができる。本実施形態では、位置センサ14として、ロータリーエンコーダを用いている。位置センサ14としては、上述のロータリーエンコーダのように回転する基板11の回転位置を検出できるものであればいずれの構成を用いても良い。
【0017】
なお、本実施形態では、位置センサ14等のセンサによって基板11や基板ホルダ10の回転位置を直接検出することによって基板ホルダ10に保持された基板11の回転位置を検出しているが、基板11の回転位置を検出できればいずれの構成を用いても良い。例えば、基板ホルダ10の回転速度や回転時間から計算により求めるなど、基板11の回転位置を間接的に求めても良い。
【0018】
基板11は、基板ホルダ10の載置面上に水平状態を保って保持されている。基板11の材料としては、例えば、円板状のシリコンウェハを用いるが、これに限定されるものではない。
【0019】
次に、図7を参照して、本実施形態のイオンビームエッチング装置100に備えられ、上述の各構成要素を制御する制御装置20について説明する。図7は本実施形態における制御装置を示すブロック図である。
【0020】
図7に示すように、本実施形態の制御装置20は、例えば、一般的なコンピュータと各種のドライバを備える。すなわち、制御装置20は、種々の演算、制御、判別などの処理動作を実行するCPU(不図示)と、このCPUによって実行される様々な制御プログラムなどを格納するROM(不図示)とを有する。また、制御装置20は、上記CPUの処理動作中のデータや入力データなどを一時的に格納するRAM、およびフラッシュメモリやSRAM等の不揮発性メモリなど(不図示)を有する。このような構成において、制御装置20は、上記ROMに格納された所定のプログラム又は上位装置の指令に従ってイオンビームエッチングを実行する。その指令に従って放電時間、放電電力、グリッドへの印加電圧、プロセス圧力、および基板ホルダ10の回転などの各種プロセス条件がコントロールされる。また、イオンビームエッチング装置100内の圧力を計測する圧力計(不図示)や、基板の回転位置を検出する位置検出手段としての位置センサ14などのセンサの出力値も取得可能であり、装置の状態に応じた制御も可能である。
【0021】
また、制御装置20は、位置センサ14の検出した回転位置に応じて、基板11の回転速度を制御する回転制御手段としてホルダ回転制御部21を備える。ホルダ回転制御部21は、目標速度算出部21aと、駆動信号生成部21bと、を備え、基板11の回転位置とグリッド9との位置関係に基づいて、基板の回転位置に応じて基板ホルダ10の回転部の回転を制御して基板11の回転速度を制御する機能を有する。制御装置20は、位置センサ14から、基板11の回転位置に関する情報を受信するように構成されている。制御装置20が上記回転位置に関する情報を受信すると、目標速度算出部21aは、基板11の回転位置を検知する位置センサ14から出力される基板11の現在の回転位置の値に基づいて、当該位置における目標回転速度を算出する。この目標回転速度の値は、例えば、基板11の回転位置と、目標回転速度との対応関係を予めマップとして保持しておくことで、演算可能である。駆動信号生成部21bは、目標速度算出部21aにより算出された目標回転速度に基づき、当該目標回転速度とするための駆動信号を生成し、回転駆動機構30に出力する。制御装置20は、駆動信号生成部21bにて生成された上記駆動信号を回転駆動機構30に送信するように構成されている。
【0022】
なお、図7の例では、回転駆動機構30は、基板ホルダ10を駆動するモータなどのホルダ回転駆動部31と、目標値と位置センサ14から出力される実値(回転位置や回転速度)との偏差に基づきホルダ回転駆動部31の操作値を決定するフィードバック制御部32と、を備え、サーボ機構により基板ホルダ10を駆動する。しかし、フィードバック制御は本発明の必須の構成ではなく、モータもDCモータ、ACモータのいずれであってもよい。回転駆動機構30は、制御装置20から受信した駆動信号に基づいて、ホルダ回転駆動部31を駆動し、基板ホルダ10を回転させる。
【0023】
次に、本実施形態のイオンビームエッチング装置100の作用と、この装置を用いて実施するイオンビームエッチング方法について説明する。
【0024】
本実施形態に係るイオンビームエッチング装置100を用いたイオンビームエッチング方法は、まず、基板ホルダ10上に処理対象である基板11を設置する。基板11は、例えば、隣接する真空搬送チャンバ(不図示)に備えられたハンドリング・ロボットにより、ゲートバルブ(不図示)を通じて処理空間1内の基板ホルダ10上に運ばれる。
【0025】
次に、プラズマ形成空間2の内部にガス導入部5からAr等の放電用ガスを導入する。反応性イオンビームエッチングを行う場合には、プラズマ形成空間2の内部にアルコールガス、炭化水素ガス、酸化炭素ガス等を導入する。
【0026】
その後、放電用電源12から高周波電力を供給し、プラズマ形成空間2で放電を行う。そして、グリッド9に電圧を印加し、プラズマ形成空間2よりイオンを引き出してイオンビームを形成する。グリッド9により引き出されたイオンビームはニュートラライザー13により中和され、電気的に中性となる。中和されたイオンビームは基板ホルダ10上の基板11に照射され、イオンビームエッチングが行われる。
【0027】
イオンビームエッチング中に、基板ホルダ10が回転して基板11の処理が行われる。そして、基板ホルダ10が回転中にグリッド9に対して斜向かいの状態において、位置センサ14が基板11の回転位置を検出する。該検出された回転位置に応じたホルダ回転制御部21の制御により、位置センサ14が検出した回転位置に応じて、基板11の回転速度を制御する。なお、本発明に斜向かいとは、基板ホルダ10とグリッド9が対向した状態で、さらに基板ホルダ10がグリッド9に対して傾斜した状態を指す。
【0028】
以下に、基板11の回転速度の制御についてさらに詳しく説明する。図8は、本実施形態のグリッド9と基板11の位置関係および基板11の位相を説明するための図である。また、図9は、HDD用の磁気ヘッドの読み出し部の加工を行う際の、本実施形態に係る装置を用いたイオンビームエッチング方法における基板の回転速度の制御マップを示す説明図である。
【0029】
図8を用いて本実施形態におけるグリッド9と基板11の位置関係を説明する。基板11は回転可能な基板ホルダ10の上に載置され、イオンビームエッチング中に、基板ホルダ10がグリッド9と斜向かいとなるように傾斜させる。なお、本実施形態に係るイオンビームエッチング装置100におけるイオンビームエッチングは基板11とグリッド9が常に斜向かいの位置関係にある必要は無く、斜向かいの位置関係となるのがイオンビームエッチングプロセスの一部であったとしても適用可能である。
図8に示すように、基板の回転位相(回転角)θは、グリッド9に最も近い位置を90°、最も遠い位置を270°と定義し、回転角θが90°の位置から時計回りに90°回転した点を0°、該90°の位置から反時計回りに90°回転した点を180°と定義している。便宜的に基板回転の始点を、基板11のノッチまたはオリフラ15が180°の位置にある時としているが、これに限定するものではない。
【0030】
本実施形態に係る装置を用いたイオンビームエッチング方法の一例では、図8、図9、および下記式(1)に示すように、基板の回転位相θに対し、基板の回転速度yが正弦波となるように、回転速度を制御する。
【0031】
y=Asin(2(θ−α))+B ・・・(1)
A=a・B ・・・(2)
【0032】
すなわち、本発明の回転制御手段としてのホルダ回転制御部21は、上記式(1)に基づいて、基板11の回転角θの2倍周期の正弦波関数として回転速度を算出する。ここで、Aは回転速度の振幅であり、式(2)に示すように、基準速度Bに変動率aを乗じたものである。αは位相差であり、変動率aと位相差αを変えることによって、基板面内のイオンビーム入射角毎のエッチング量及びテーパ角度の分布を最適化することができる。なお、基板の回転位相θの範囲は0°≦θ<360°である。
【0033】
図9の例では、基準速度Bを30rpmに設定し、変動率aを0.3とし、位相差αを45°とした時の基板回転位相θに対する基板回転速度yを示している。この場合、基板11のノッチまたはオリフラ15が0°および180°の位置にある時に基板回転数(回転速度)が最も遅くなり、90°および270°の位置にある時に最も速くなることを意味する。
【0034】
逆に基板11のノッチまたはオリフラ15が0°および180°の位置にある時に基板回転数が最も速くなり、90°および270°の位置にある時に最も遅くなるようにするためには、位相差αを−45°または135°に設定すれば良い。
【0035】
ここで、回転速度を回転位相によって変化させることによる具体的な作用及び効果を、図10を用いて説明する。
【0036】
図10において40はフォトレジスト、41はイオンビームエッチング対象物を表している。40はフォトレジストである必要は無く、イオンビームエッチングによって加工する際にマスクとして機能するものを用いることができる。
ここで図10の状態から台形のトレンチ構造をイオンビームエッチングによって形成する場合を考える。まず図9の比較例で示す条件で加工した場合の、イオンビームエッチング対象物の加工後の形状を図11に示す。本発明に係る課題でも述べたように、グリッド9と基板11の位置関係からエッチング量のイオンビーム入射角度依存、加工後のテーパ角度の分布が生じる。同様に課題において述べたとおり、これはグリッド9に近い点と遠い点でイオンビームの入射量やエネルギーが異なるからである。
【0037】
ここで図12に示すように、グリッド9と近い点において、グリッドと対向する面を41a、41aと対向する面を41bとする。遠い点では、グリッド9と対向する面を41d、41dと対向する面を41cとする。なお、180度回転させれば41aは41dの位置となり、41bは41cの位置となるので、41aと41dは等価であり、41bは41cと等価である。本実施形態は、この41a〜41dの各面とグリッド9が対向する時間を減少させることによって冒頭で述べた問題の解決を図っている。すなわち、41a〜41dとグリッド9が対向しているときは、基板の回転速度を早くすることで41a〜41dとグリッド9が対向している時間を短くし、41a〜41dとグリッド9が対向していないときは、基板の回転速度を遅くすることで41a〜41dとグリッド9が対向していない時間を長くしている。41a〜41dとグリッド9が対抗していない状態では、41a及び41b、41c及び41dに入射するイオンビーム量とエネルギーは等しくなる。また41a〜41dがグリッド9と対抗していないときに、41a〜41dに入射するイオンビームは、41a〜41dの面と平行に近い関係となるため、イオンビーム入射量がイオンビームの入射角に依存することによるテーパ角度への影響が小さくなる。また、41a〜41dがグリッド9と対向していないときに、41a〜41dの各面に入射したイオンビームの入射量及びエネルギーは基板を回転させることで平均化され均一となる。
なお、本発明においては、加工後の41a〜41dの側面において、エッチング量やテーパ角度の分布が通常よりも増すことになる。即ち本発明は、全ての方向において同等の高い均一性が求められる処理に適用するのでは無く、上述した例で示したような磁気ヘッドの読み出しセンサや磁気ヘッドの主磁極などのように、方向により求められる均一性が異なる対象物の加工に最も好適に適用される。
【0038】
本実施形態の作用効果を図12及び図9を用いてさらに具体的に説明する。図12で41a及び41bの均一性を向上させたい場合、41a及び41bとグリッド9が対向する時間を短くする。すなわち、図9において41aとグリッド9が対向する回転位相は90度(もしくは270度)、41bとグリッド9が対向する回転位相は270度(もしくは90度)となる。そして41a及び41bとグリッドが対向しない回転位相0度及び180度では回転速度を低下させてイオンビームエッチングを行う。なお、ここでは説明の便宜上、加工後の面である41a及び41bとグリッド9との関係を用いて説明したが、イオンビームエッチング開始前には上述したような面は当然ながら形成されていない。従ってイオンビームエッチングによって形成される面で、均一性が望まれる面と向かい合う時間を短くするように基板の回転速度の制御を行っていく。
【0039】
図9及び図12の例では、HDD用磁気ヘッドの読み出し部の加工を例に、41a及び41bや41c及び41dといった、一つの凸部において対向する2面を被処理面として説明した。しかし、仮に被処理面が1面だけだったとしても、本実施形態は適用可能である。すなわち、図12から分かるように41a及び41dではテーパ角度が異なっている。ここで、41a及び41dとグリッド9が対向する時間を短くしてエッチングを行うことで、図12に示されるようなテーパ角度の分布を低減することが可能となる。よって本実施形態の本質は、加工後に均一性が求められる被処理面とグリッド9が対向する時間を他の面がグリッド9と対向する時間よりも短くすることにある。なお、本発明において、「被処理面」とはイオンビームエッチングによって形成され、もしくは処理される面のうち、より均一性が望まれる面のことを指す。従って、上述した、HDD用磁気ヘッドの読み出し部の例では、41a及び41bを「被処理面」と呼び、説明している。
【0040】
本実施形態では、図9に示す制御マップを制御装置20が有するROM等のメモリに予め格納しておけば良い。このように、上記制御マップを予めメモリに格納しておくことによって、目標速度算出部21aは、位置センサ14から基板11の回転位置に関する情報を受信すると、上記メモリに格納された図9に示す制御マップを参照し、現在の基板11の回転角θに対応する回転速度を抽出し、目標回転速度を取得し、該取得された目標回転速度を駆動信号生成部21bに出力する。従って、回転角θが0度、180度といった41aや41bがグリッド9と対向しないとき(以下第1の状態ともいう)には基板11の回転速度を最も遅く制御でき、かつ回転角θが90度、270度といった41aや41bがグリッド9と対向するとき(以下第2の状態ともいう)には基板11の回転速度を最も速く制御することができる。
【0041】
なお、本発明において、「被処理面」とは、イオンビームエッチングが施される全ての面もしくはイオンビームエッチによって形成される全ての面を指すのではなく、イオンビームエッチングにおいて形成される面のうち、特に均一性及び対称性が望まれる面を指すものとする。
【0042】
また、本発明において、イオンビームエッチングによって形成される被処理面に平行であり且つ基板の面内方向に平行である方向を、第1の方向とする。さらに、第1の方向と垂直であり且つ基板面内に平行である方向を、第2の方向とする。すなわち、基板ホルダ10がグリッド9と斜向かいの位置にある場合に、第1の方向側にグリッド9が位置する状態が第1の状態となり、第2の方向側にグリッド9が位置する状態が第2の状態となる。
【0043】
このように、本実施形態で重要なことは、41aと41bとにおける形状のバラツキの原因となる第2の状態でのイオンビームエッチングよりも、第1の状態でのイオンビームエッチングを支配的にすることである。従って、ホルダ回転制御部21が、第2の状態における基板11の回転速度を、第1の状態における基板11の回転速度よりも大きくなるように基板ホルダ10の回転を制御しさえすれば、第1の状態でのエッチングを第2の状態でのエッチングよりも支配的にすることができ、本発明の効果を得ることができる。言い換えると、第1の方向からのイオンビームの入射成分を、第2の方向からのイオンビームの入射成分よりも多くすることで、本発明の効果を得ることができる。
【0044】
なお、上述においては、基板11に形成された凹凸構造としてトレンチ構造について説明したが、本発明は他の凹凸構造の形成、例えば磁気ヘッドの主磁極の形成などに対しても有効である。
【0045】
(実施例1)
図13はハードディスクドライブ(HDD)用磁気ヘッドに用いられるTMR素子を形成するための磁気抵抗効果膜50を示す説明図である。ここで、TMR素子とは、磁気効果素子(TMR(Tunneling Magneto resistance:トンネル磁気抵抗効果)素子)である。
【0046】
図13に示すように、磁気抵抗効果膜50の基本層構成は、磁化固定層、トンネルバリア層及び磁化自由層を有する磁気トンネルジャンクション部分(MTJ部分)を含む。例えば、磁化固定層は強磁性材料、トンネルバリア層は金属酸化物(酸化マグネシウム、アルミナなど)絶縁材料、および磁化自由層は強磁性材料からなっている。上記磁気抵抗効果膜50は、基板11上に形成された下部電極上に形成されている。
【0047】
磁気抵抗効果膜50は、イオンビームエッチングにより加工され図14に示されるようなTMR素子51が形成される。その後、スパッタリングなどの成膜方法によって側壁面に絶縁膜52、下部金属膜53、磁性膜54、上部金属膜55が成膜される。この時、TMR素子の側壁のテーパ角度や形状は両側壁面で均一であることが望ましく、さらに基板面上の全面に規則配列したTMR素子間においてもそのテーパ角度や形状が均一及び対称であることが望ましい。そこで本実施形態のイオンビームエッチング装置およびイオンビームエッチング方法を用いることによって前述の形状の均一性及び対称性を向上させることができる。
【0048】
(第2の実施形態)
上述のように、第1の実施形態では、グリッド9から基板11に対するイオンビームの入射量を一定に保ちつつ、基板ホルダ10の回転速度を、第1の状態と第2の状態とで異なるように制御しているが、該基板ホルダ10の回転方式を、連続回転としても良いし、非連続パルス回転としても良い。本実施形態では、該非連続パルス回転の形態について説明する。
【0049】
図15(a)は、第1の実施形態に係る、連続で基板ホルダ10を回転する場合について、基板ホルダ10の回転速度を制御する場合の説明図であり、図15(b)は、本実施形態に係る、非連続で基板ホルダ10を回転する場合について、基板回転の回転停止時間を制御する場合の説明図である。
【0050】
基板ホルダ10の回転を連続的に行う場合は、ホルダ回転制御部21は、図15(a)に示すように、式(1)に従って基板11が一回転(1周期)する間に該基板11の回転速度を2周期変調させるように、基板11の回転速度(角速度ω)を連続的に変化させるように駆動信号を生成する。すなわち、ホルダ回転制御部21は、基板11が連続的に回転するように基板ホルダ10の回転を制御する。なお、図15(a)において、fは、グリッド9からのイオンビームの基準照射量であり、ωは基準角速度である。
【0051】
一方、基板11(基板ホルダ10)の回転を非連続的(クロック状)に行う場合は、ホルダ回転制御部21は、回転停止時間sを図15(b)に示すように制御する。すなわち、ホルダ回転制御部21は、例えば、基板11が所定の複数の回転角でその回転を停止し、それ以外の回転角では一定の角速度(回転速度)で基板ホルダ10の回転部が回転するように該基板ホルダ10の回転を制御する。このような制御により、基板11が非連続的に回転するように基板11の回転速度は制御される。なお、基板ホルダ10の回転部の回転速度は上述のように一定であって良いし、変化させても良い。ここで、縦軸に回転速度(角速度ω)を、横軸に時間tをとる場合の、角速度が0になっている時間を、“回転停止時間s”と呼ぶことにする。すなわち、回転停止時間sとは、基板ホルダ10を非連続に回転させる場合の、基板ホルダ10の回転を停止している時間を指す。sは、基準回転停止時間である。
【0052】
本実施形態では、第1の実施形態における、面41a及び41bがグリッド9と対向する時間を短くし、41a及び41bがグリッドと対向しない時間を長くすることが本質である。このようにすることで、41a及び41bのテーパ角度の基板面内の均一性を向上させることが可能となる。上述のように、本実施形態では、基板11(基板ホルダ10)を一回転させる間に、第1の状態と第2の状態とは2回ずつ現れる。よって、基板11(基板ホルダ10)を1回転(1周期)する間に、基板11(基板ホルダ10)の停止時間を正弦的に2周期変調させることによって、第1の状態と第2の状態の時間をそれぞれ変化させている。
【0053】
(第3の実施形態)
第1及び第2の実施形態では、基板ホルダ10の回転速度を制御する形態について説明したが、本実施形態では、放電用電源12からプラズマ形成手段への供給電力を制御することによって、基板へのイオンビームの入射量を制御し、凹凸構造における被処理面間の形状の均一性及び対称性の向上を図る。すなわち、イオンビームエッチングにおいて、イオンビームの照射量はプラズマ形成空間2において形成されるプラズマのプラズマ密度と関係するため、プラズマ形成手段への供給電力を変化させることで、プラズマ形成空間2のプラズマ密度を変化させることが可能となる。これにより基板11の角度位相に応じてイオンビームの照射量を変化させることができる。
【0054】
本実施形態においても、第1の実施形態と同様に、基板ホルダ10が回転する場合において、加工後に均一性が求められる面とグリッド9が対向する状態でのエッチング量を相対的に少なくすることが大きな特徴である。
【0055】
図16は、本実施形態に係る制御装置20のブロック図である。本実施形態では、制御装置20は、位置センサ14の検出した回転位置に応じて、プラズマ形成手段へのパワー(電力)を制御する電力制御手段としてのパワー制御部60を備える。パワー制御部60は、目標パワー算出部60aと、出力信号生成部60bと、を備え、基板11の回転位置とグリッド9との位置関係に基づいて、プラズマ形成手段へのパワー(電力)を制御する機能を有する。
【0056】
制御装置20は、位置センサ14から、基板ホルダ10の回転位置に関する情報を受信するように構成されている。制御装置20が上記回転位置に関する情報を受信すると、目標パワー算出部60aは、基板ホルダ10の回転位置を検知する位置センサ14から入力する基板ホルダ10の現在の回転位置の値に基づいて、当該位置における目標パワー(目標電力)を算出する。この目標パワーの値は、例えば、基板ホルダ10の回転位置と、目標パワーと、の対応関係を予めマップとして制御装置20が備えるメモリ等に保持しておくことで、演算可能である。出力信号生成部60bは、目標パワー算出部60aにより算出された目標パワーに基づき、当該目標パワーとするための出力信号を生成し、電源12に出力する。制御装置20は、出力信号生成部60bにて生成された上記出力信号を電源12に送信するように構成されている。
【0057】
なお、図16の例では、電源12は、プラズマ形成手段に電力を供給するパワー出力部12aと、目標値と位置センサ14から出力される実値(回転位置や回転速度)との偏差に基づきパワー出力部12aの操作値を決定するフィードバック制御部12bと、を備える。しかし、フィードバック制御は本発明の必須の構成ではない。
【0058】
本実施形態においても、第1の実施形態と同様に、基板ホルダの回転方式は、連続回転であっても良いし、非連続パルス回転であっても良い。
【0059】
図17(a)は、本実施形態に係る、プラズマ形成手段への供給電力を制御する場合の、連続で基板(基板ホルダ)を回転する場合についての説明図であり、図17(b)は、本実施形態に係る、プラズマ形成手段への供給電力を制御する場合の、非連続で基板(基板ホルダ)を回転する場合についての説明図である。
【0060】
本実施形態では、パワー制御部60は、式(1)と同様の2倍周期正弦波関数を用いて、基板11の回転角θに応じた放電用パワーを算出することができる。すなわち、パワー制御部60は、基板11(基板ホルダ10)が1回転(1周期)する間に、プラズマ形成手段への供給電力を2周期変調させるように出力信号を生成する。この時、プラズマ形成手段への供給電力は滑らかに連続的に変化させても良いし、幅を持たせて段階的に変化させても良い。パワー制御部60は、図15(a)、(b)に示すように、第1の状態である回転角θ=0°、180°のときに供給されるパワー(電力)を最大値にすることにより、基板11へのイオンビーム入射量が最大になり、第2の状態である回転角θ=90°、270°のときに上記パワーを最小値にすることにより、基板11へのイオンビーム入射量が最小になるように、放電用電源12を制御すれば良い。
【0061】
このように本実施形態では、パワー制御部60は、第1の状態におけるプラズマ形成手段への供給電力を、第2の状態におけるプラズマ形成手段への供給電力よりも大きくなるように、放電用電源12を制御する。
【0062】
(第4の実施形態)
第3の実施形態では、プラズマ形成手段への供給電力を制御することによって被処理面の均一性を向上させる方法について述べたが、本実施形態ではビーム引き出し電圧を変化させることで、被処理面間のテーパ角度の均一性向上を図る。イオンビームエッチングでは、プラズマ形成空間2においてプラズマが形成された後にグリッドに印加された電圧によって、プラズマ形成空間2のイオンが引き出されてビームが形成される。ここでプラズマ形成空間2から引き出されたイオンビームのエネルギーはビーム引き出し電圧に依存するため、該電圧を基板の回転位相に併せて変化させることで加工後の被処理面の均一性向上を図る。
【0063】
図18に、図6におけるグリッド9を拡大した様子を示す。図18を用いて本実施形態におけるビーム引き出し電圧について説明する。
【0064】
図18の上側はプラズマ形成空間2であり、下側が処理空間1となっている。
グリッド9は、プラズマ形成空間2側から、第1電極70、第2電極71、第3電極72によって構成されている。図18は、電極によって、プラズマ形成空間2に生成されたプラズマからイオンを引き出して、イオンビームを形成している様子を表している。
第1電極70は第1電極用電源73により正の電圧が印加される。
第2電極71は第2電極用電源74により負の電圧が印加される。第1電極70に正の電圧が印加されるため、第1電極70との電位差によって、イオンが加速される。
第3電極72は、アース電極とも呼ばれ接地されている。第2電極71と第3電極72との電位差を制御することにより、静電レンズ効果を用いてイオンビームのイオンビーム径を所定の数値範囲内に制御することができる。
本実施形態においては、通常基板ホルダ及び第3電極は接地電位となっている。このため、イオンビームのエネルギーは第1電極に印加された正の電圧によって決定される。従って、本実施形態においては、第1電極に印加された電圧がビーム引き出し電圧となる。以下、この第1電極に印加された電圧を変化させることによって、ビーム引き出し電圧を変化させた場合の実施の形態を説明する。
【0065】
本実施形態においても、いずれの実施形態と同様に、基板ホルダ10が回転する場合において、イオンビームエッチングにより形成される面のうち、均一性が求められる面とグリッド9が対向する状態でのエッチング量を相対的に少なくすることが大きな特徴である。
【0066】
図19は、本実施形態に係る制御装置20のブロック図である。本実施形態では、制御装置20は、位置センサ14の検出した回転位置に応じて、第1電極70に印加する電圧(ビーム引き出し電圧)を制御する電圧制御手段としての印加電圧制御部80を備える。印加電圧制御部80は、目標電圧算出部80aと、出力信号生成部80bと、を備え、基板11の回転位相とグリッド9との位置関係に基づいて、第1電極70への印加電圧を制御する機能を有する。
【0067】
制御装置20は、位置センサ14から、基板ホルダ10の回転位置に関する情報を受信するように構成されている。制御装置20が上記回転位置に関する情報を受信すると、目標電圧算出部80aは、基板ホルダ10の回転位相を検知する位置センサ14から入力する基板ホルダ10の現在の回転位相の値に基づいて、当該位置における目標電圧を算出する。この目標電圧の値は、例えば、基板ホルダ10の回転位置と、目標電圧と、の対応関係を予めマップとして制御装置20が備えるメモリ等に保持しておくことで、演算可能である。出力信号生成部80bは、目標電圧算出部80aにより算出された目標パワーに基づき、当該目標電圧とするための出力信号を生成し、第1電極用電源73に出力する。制御装置20は、出力信号生成部80bにて生成された上記出力信号を第1電極用電源73に送信するように構成されている。
【0068】
なお、図19の例では、第1電極用電源73は、第1電極70に電圧を印加する印加電圧出力部73aと、目標値と位置センサ14から出力される実値(回転位置や回転速度)との偏差に基づき印加電圧出力部73aの操作値を決定するフィードバック制御部73bと、を備える。しかし、フィードバック制御は本発明の必須の構成ではない。
【0069】
本実施形態においても、第1の実施形態と同様に、基板ホルダの回転方式は、連続回転であっても良いし、第2の実施形態と同様に、非連続パルス回転であっても良い。
【0070】
図20(a)は、本実施形態に係る、ビーム引き出し電圧(すなわち、第1電極70への印加電圧)を制御する場合の、連続で基板(基板ホルダ)を回転する場合についての説明図であり、図20(b)は、本実施形態に係る、グリッド9への印加電圧を制御する場合の、非連続で基板(基板ホルダ)を回転する場合についての説明図である。
【0071】
本実施形態では、印加電圧制御部80は、式(1)と同様の2倍周期正弦波関数を用いて、基板11の回転角θに応じた印加電圧を算出することができる。すなわち、印加電圧制御部80は、基板11(基板ホルダ10)が1回転(1周期)する間に、ビーム引き出し電圧を2周期変調させるように出力信号を生成する。この時、ビーム引き出し電圧は滑らかに連続的に変化させても良いし、幅を持たせて段階的に変化させても良い。例えば、印加電圧制御部80は、図20(b)に示すように、第1の状態である回転角θ=0°、180°のときに第1電極70へ印加される電圧を最大値にすることによりイオンビームエネルギーが最大になり、第2の状態である回転角θ=90°、270°のときに電圧を最小値にすることによりイオンビームエネルギーが最小になるように、第1電極用電源73を制御すれば良い。
【0072】
このように本実施形態では、電圧印加制御部80は、第1の状態にビーム引き出し電圧を、第2の状態におけるビーム引き出し電圧よりも大きくなるように、第1電極用電源73を制御して、ビーム引き出し電圧を制御する。
【0073】
本実施形態においては、第1電極に印加する電圧を変化させることでビーム引き出し電圧を変化させたが、他の方法でビーム引き出し電圧を変化させても良い。例えば第3電極を第1電極より低い正の電圧を印加し、第3電極に印加する電圧を変化させることでビーム引き出し電圧を変化させても良い。また基板ホルダに印加する電圧を変化させることで、基板にイオンビームが入射する際のエネルギーを変化させても良い。
また、本実施形態において、グリッド9は必ず3枚の電極から構成されている必要は無い。これは、上述したように本実施形態の本質は、イオンビームのエネルギーを、基板の回転位相に応じて変化させることにあるからである。
【0074】
以上の本発明の一実施形態では、本発明の要旨を逸脱しない範囲において種々の変更が可能である。
【0075】
本発明の一実施形態は、例示したHDD用磁気ヘッドのみならず、HDD用磁気記録媒体、磁気センサ、薄膜太陽電池、発行素子、圧電素子、半導体の配線形成など、多方面に利用可能である。
(その他の実施形態)
本発明の一実施形態では、第1の実施形態の基板の回転速度を制御する形態と、第3の実施形態のプラズマ形成手段への供給電力を制御する形態との双方を行っても良い。この場合は、制御装置20が、ホルダ回転制御部21およびパワー制御部60の双方を含むように制御装置20を構成すれば良い。
また本発明の一実施形態では、制御装置20は、イオンビームエッチング装置が備える基板ホルダの回転駆動機構や放電用電源を制御することができれば、該イオンビームエッチング装置に内蔵されても良いし、LAN等によるローカルな接続、または、インターネットといったWANによる接続を介して、イオンビームエッチング装置と別個に設けても良い。
また、前述した実施形態の機能を実現するように前述した実施形態の構成を動作させるプログラムを記憶媒体に記憶させ、該記憶媒体に記憶されたプログラムをコードとして読み出し、コンピュータにおいて実行する処理方法も上述の実施形態の範疇に含まれる。即ちコンピュータ読み取り可能な記憶媒体も実施例の範囲に含まれる。また、前述のコンピュータプログラムが記憶された記憶媒体はもちろんそのコンピュータプログラム自体も上述の実施形態に含まれる。
かかる記憶媒体としてはたとえばフロッピー(登録商標)ディスク、ハードディスク、光ディスク、光磁気ディスク、CD―ROM、磁気テープ、不揮発性メモリカード、ROMを用いることができる。
また前述の記憶媒体に記憶されたプログラム単体で処理を実行しているものに限らず、他のソフトウエア、拡張ボードの機能と共同して、OS上で動作し前述の実施形態の動作を実行するものも前述した実施形態の範疇に含まれる。
【符号の説明】
【0076】
1 処理空間
2 プラズマ形成空間
3 排気ポンプ
4 ベルジャー
5 ガス導入部
6 アンテナ
7 整合器
8 電磁コイル
9 グリッド
10 基板ホルダ
11 基板
12 放電用電源
13 ニュートラライザー
14 位置センサ
15 ノッチ、オリフラ
20 制御装置
21 ホルダ回転制御部
21a 目標速度算出部
21b 駆動信号生成部
30 回転駆動機構
31 ホルダ回転駆動部
32 フィードバック制御部
40 フォトレジスト
50 磁気抵抗効果膜
51 磁気抵抗効果素子
52 絶縁膜
53 下部金属膜
54 磁性膜
55 上部金属膜
70 第1電極
71 第2電極
72 第3電極
73 第1電極用電源
74 第2電極用電源

【特許請求の範囲】
【請求項1】
プラズマを形成するためのプラズマ形成手段と、
前記プラズマ形成手段によってプラズマが形成されるプラズマ形成空間と、
前記プラズマ形成空間で形成されたプラズマからイオンを引き出すグリッドと、
基板を保持するための基板ホルダとを備えたイオンビームエッチング装置であって、
前記基板ホルダは回転可能であり、且つ前記グリッドに対しての傾斜角度が変更可能であり、
前記基板の回転位置を検出するための位置検出手段と、
前記基板の回転速度を制御するための回転制御手段とを備え、
前記回転制御手段は、前記基板が前記グリッドの斜向かいにある場合に、イオンビームエッチングによって形成される被処理面に平行であり且つ前記基板面に平行である第1の方向側に前記グリッドが位置する状態を第1の状態とし、前記第1の方向と垂直であり且つ前記基板面に平行である第2の方向側に前記グリッドが位置する状態を第2の状態としたとき、前記第2の状態における前記基板の前記回転速度を前記第2の状態における前記基板の前記回転速度よりも速くすることを特徴とするイオンビームエッチング装置。
【請求項2】
前記回転制御手段は、前記基板の回転角の正弦波関数として前記回転速度を算出し、該正弦波関数に基づいて前記基板の前記回転速度を制御することを特徴とする請求項1に記載のイオンビームエッチング装置。
【請求項3】
前記回転制御手段は、前記基板が1回転する間に前記回転速度の正弦波が2周期進行するように前記回転速度を制御することを特徴とする請求項2に記載のイオンビームエッチング装置。
【請求項4】
プラズマを形成するためのプラズマ形成手段と、
前記プラズマ形成手段によってプラズマが形成されるプラズマ形成空間と、
前記プラズマ形成空間で形成されたプラズマからイオンを引き出すグリッドと、
基板を保持するための基板ホルダとを備えたイオンビームエッチング装置であって、
前記基板ホルダは回転可能であり、且つ前記グリッドに対しての傾斜角度が変更可能であり、
前記基板の回転位置を検出するための位置検出手段と、
前記基板の回転停止時間を制御するための回転制御手段とを備え、
前記回転制御手段は、前記基板が前記グリッドの斜向かいにある場合に、イオンビームエッチングによって形成される被処理面に平行であり且つ前記基板面に平行である第1の方向側に前記グリッドが位置する状態を第1の状態とし、前記第1の方向と垂直であり且つ前記基板面に平行である第2の方向側に前記グリッドが位置する状態を第2の状態としたとき、前記第1の状態における前記基板の前記回転停止時間を前記第2の状態における前記基板の前記回転停止時間よりも長くすることを特徴とするイオンビームエッチング装置。
【請求項5】
前記回転制御手段は、前記基板の回転角の正弦波関数として前記回転停止時間を算出し、該正弦波関数に基づいて前記基板の前記回転停止時間を制御することを特徴とする請求項4に記載のイオンビームエッチング装置。
【請求項6】
前記回転制御手段は、前記基板が1回転する間に前記回転停止時間の正弦波が2周期進行するように前記回転停止時間を制御することを特徴とする請求項5に記載のイオンビームエッチング装置。
【請求項7】
プラズマを形成するためのプラズマ形成手段と、
前記プラズマ形成手段によってプラズマが形成されるプラズマ形成空間と、
前記プラズマ形成空間で形成されたプラズマからイオンを引き出すグリッドと、
基板を保持するための基板ホルダとを備えたイオンビームエッチング装置であって、
前記基板ホルダは回転可能であり、且つ前記グリッドに対しての傾斜角度が変更可能であり、
前記基板の回転位置を検出するための位置検出手段と、
前記プラズマ形成手段への供給電力を制御するための電力制御手段とを備え、
前記電力制御手段は、前記基板が前記グリッドの斜向かいにある場合に、イオンビームエッチングによって形成される被処理面に平行であり且つ前記基板面に平行である第1の方向側に前記グリッドが位置する状態を第1の状態とし、前記第1の方向と垂直であり且つ前記基板面に平行である第2の方向側に前記グリッドが位置する状態を第2の状態としたとき、前記第1の状態における前記プラズマ形成手段への前記供給電力を前記第2の状態における前記プラズマ形成手段への前記供給電力よりも大きくすることを特徴とするイオンビームエッチング装置。
【請求項8】
前記電力制御手段は、前記基板の回転角の正弦波関数として前記供給電力を算出し、該正弦波関数に基づいて前記供給電力を制御することを特徴とする請求項7に記載のイオンビームエッチング装置。
【請求項9】
前記電力制御手段は、前記基板が1回転する間に前記供給電力の正弦波が2周期進行するように前記供給電力を制御することを特徴とする請求項8に記載のイオンビームエッチング装置。
【請求項10】
プラズマを形成するためのプラズマ形成手段と、
前記プラズマ形成手段によってプラズマが形成されるプラズマ形成空間と、
前記プラズマ形成空間で形成されたプラズマからイオンを引き出すグリッドと、
基板を保持するための基板ホルダとを備えたイオンビームエッチング装置であって、
前記基板ホルダは回転可能であり、且つ前記グリッドに対しての傾斜角度が変更可能であり、
前記基板の回転位置を検出するための位置検出手段と、
前記グリッドへの印加電圧を制御することで、ビーム引き出し電圧を制御する電圧制御手段と、
前記電圧制御手段は、前記基板が前記グリッドの斜向かいにある場合に、イオンビームエッチングによって形成される被処理面に平行であり且つ前記基板面に平行である第1の方向側に前記グリッドが位置する状態を第1の状態とし、前記第1の方向と垂直であり且つ前記基板面に平行である第2の方向側に前記グリッドが位置する状態を第2の状態としたとき、前記第1の状態における前記ビーム引き出し電圧を前記第2の状態における前記ビーム引き出し電圧よりも大きくすることを特徴とするイオンビームエッチング装置。
【請求項11】
前記電圧制御手段は、前記基板の回転角の正弦波関数として前記ビーム引き出し電圧を算出し、該正弦波関数に基づいて前記ビーム引き出し電圧を制御することを特徴とする請求項10に記載のイオンビームエッチング装置。
【請求項12】
前記電力制御手段は、前記基板が1回転する間に前記ビーム引き出し電圧の正弦波が2周期進行するように前記ビーム引き出し電圧を制御することを特徴とする請求項11に記載のイオンビームエッチング装置。
【請求項13】
イオンビームエッチング方法であって、
回転可能であり、且つグリッドに対して傾斜可能な基板ホルダ上に基板を載置する基板載置工程と、
プラズマ形成空間に放電用ガスを導入し、プラズマ形成手段によってプラズマを形成するプラズマ形成工程と、
前記プラズマ形成空間に形成されたプラズマからグリッドによってイオンを引き出し、イオンビームを形成するイオンビーム形成工程と、
前記基板と前記グリッドが斜向かいに位置するように前記基板ホルダを傾斜させる傾斜工程と、
前記基板を回転させながら前記イオンビームを照射し、前記基板を処理する基板処理工程とを有し、
前記基板処理工程は、
前記基板の回転位置を検出する回転位置検出工程と、
前記回転位置検出工程により検出された前記基板の回転位置に基づき、イオンビームエッチングによって形成される被処理面に平行であり且つ前記基板面に平行である第1の方向側に前記グリッドが位置する状態を第1の状態とし、前記第1の方向と垂直であり且つ前記基板面に平行である第2の方向側に前記グリッドが位置する状態を第2の状態としたとき、前記第1の状態における前記基板のエッチング量を前記第2の状態における前記基板のエッチング量よりも大きくなるように制御を行う制御工程とを有することを特徴とするイオンビームエッチング方法。
【請求項14】
前記制御工程は、前記基板の回転速度を制御する回転制御工程を有し、
前記回転制御工程は、前記第2の状態における前記基板の前記回転速度を前記第1の状態における前記基板の前記回転速度よりも速くすることで、前記第1の状態における前記基板のエッチング量を前記第2の状態における前記基板のエッチング量よりも大きくすることを特徴とする請求項13に記載のイオンビームエッチング方法。
【請求項15】
前記回転制御工程は、前記基板の回転角の正弦波関数として前記回転速度を算出し、該正弦波関数に基づいて前記基板の前記回転速度を制御することを特徴とする請求項14に記載のイオンビームエッチング方法。
【請求項16】
前記回転制御工程は、前記基板が1回転する間に前記回転速度の正弦波が2周期進行するように前記回転速度を制御することを特徴とする請求項15に記載のイオンビームエッチング方法。
【請求項17】
前期制御工程は、前記基板の回転停止時間を制御する回転制御工程を有し、
前記回転制御手段は、前記第1の状態における前記基板ホルダの前記回転停止時間を前記第2の状態における前記基板ホルダの前記回転停止時間よりも長くすることで、前記第1の状態における前記基板のエッチング量を前記第2の状態における前記基板のエッチング量よりも大きくすることを特徴とする請求項13に記載のイオンビームエッチング方法。
【請求項18】
前記回転制御工程は、前記基板の回転角の正弦波関数として前記回転停止時間を算出し、該正弦波関数に基づいて前記基板の前記回転停止時間を制御することを特徴とする請求項17に記載のイオンビームエッチング方法。
【請求項19】
前記回転制御工程は、前記基板が1回転する間に前記回転停止時間の正弦波が2周期進行するように前記回転停止時間を制御することを特徴とする請求項18に記載のイオンビームエッチング方法。
【請求項20】
前期制御工程は、前記プラズマ形成手段への供給電力を制御する電力制御工程を有し、
前記電力制御工程は、前記第1の状態における前記供給電力を第2の状態における前記供給電力よりも大きくすることで、前記第1の状態における前記基板のエッチング量を前記第2の状態における前記基板のエッチング量よりも大きくすることを特徴とする請求項13に記載のイオンビームエッチング方法。
【請求項21】
前記電力制御工程は、前記基板の回転角の正弦波関数として前記供給電力を算出し、該正弦波関数に基づいて前記供給電力を制御することを特徴とする請求項20に記載のイオンビームエッチング方法。
【請求項22】
前記電力制御工程は、前記基板が1回転する間に前記供給電力の正弦波が2周期進行するように前記供給電力を制御することを特徴とする請求項21に記載のイオンビームエッチング方法。
【請求項23】
前期制御工程は、前記グリッドへの印加電圧を制御することでビーム引き出し電圧を制御する電圧制御工程を有し、
前記電圧制御工程は、前記第1の状態における前記ビーム引き出し電圧を第2の状態における前記ビーム引き出し電圧よりも大きくすることで、前記第1の状態における前記基板のエッチング量を前記第2の状態における前記基板のエッチング量よりも大きくすることを特徴とする請求項13に記載のイオンビームエッチング方法。
【請求項24】
前記電圧制御工程は、前記基板の回転角の正弦波関数として前記ビーム引き出し電圧を算出し、該正弦波関数に基づいて前記ビーム引き出し電圧を制御することを特徴とする請求項23に記載のイオンビームエッチング方法。
【請求項25】
前記電圧制御工程は、前記基板が1回転する間に前記ビーム引き出し電圧の正弦波が2周期進行するように前記ビーム引き出し電圧を制御することを特徴とする請求項24に記載のイオンビームエッチング方法。
【請求項26】
プラズマを形成するためのプラズマ形成手段と、
前記プラズマ形成手段によってプラズマが形成されるプラズマ形成空間と、
前記プラズマ形成空間で形成されたプラズマからイオンを引き出すグリッドと、
回転可能であり、且つ前記グリッドに対して傾斜可能な基板ホルダと、
前記基板ホルダ上に基板が保持された際に、前記基板の回転位置を検出するための位置検出手段と、
前記基板ホルダの回転を制御する回転制御手段とを備えたイオンビームエッチング装置を制御するための制御装置であって、
前記位置検出手段から前記回転位置に関する情報を取得する手段と、
前記基板が前記グリッドの斜向かいにある場合に、イオンビームエッチングによって形成される被処理面に平行であり且つ前記基板面に平行である第1の方向側に前記グリッドが位置する状態を第1の状態とし、前記第1の方向と垂直であり且つ前記基板面に平行である第2の方向側に前記グリッドが位置する状態を第2の状態としたとき、前記第2の状態における前記基板の回転速度を前記第1の状態における前記基板の回転速度よりも速くなるように、前記回転制御手段を制御するための制御信号を生成する手段と、
前記生成された制御信号を前記回転制御手段に送信する手段とを有することを特徴とする制御装置。
【請求項27】
プラズマを形成するためのプラズマ形成手段と、
前記プラズマ形成手段によってプラズマが形成されるプラズマ形成空間と、
前記プラズマ形成空間で形成されたプラズマからイオンを引き出すグリッドと、
回転可能であり、且つ前記グリッドに対して傾斜可能な基板ホルダと、
前記基板ホルダ上に基板が保持された際に、前記基板の回転位置を検出するための位置検出手段と、
前記位置検出手段の検出した回転位置に応じて、前記基板の回転停止時間を制御する回転制御手段とを備えたイオンビームエッチング装置を制御するための制御装置であって、
前記位置検出手段から前記回転位置に関する情報を取得する手段と、
前記基板が前記グリッドの斜向かいにある場合に、イオンビームエッチングによって形成される被処理面に平行であり且つ前記基板面に平行である第1の方向側に前記グリッドが位置する状態を第1の状態とし、前記第1の方向と垂直であり且つ前記基板面に平行である第2の方向側に前記グリッドが位置する状態を第2の状態としたとき、前記第1の状態における前記基板の回転停止時間を前記第2の状態における前記基板の回転停止時間よりも長くなるように、前記回転制御手段を制御するための制御信号を生成する手段と、
前記生成された制御信号を前記回転制御手段に送信する手段とを有することを特徴とする制御装置。
【請求項28】
プラズマを形成するためのプラズマ形成手段と、
前記プラズマ形成手段によってプラズマが形成されるプラズマ形成空間と、
前記プラズマ形成空間で形成されたプラズマからイオンを引き出すグリッドと、
回転可能であり、且つ前記グリッドに対して傾斜可能な基板ホルダと、
前記基板ホルダ上に基板が保持された際に、前記基板の回転位置を検出するための位置検出手段と、
前記プラズマ形成手段への供給電力を制御する電力制御手段とを備えたイオンビームエッチング装置を制御するための制御装置であって、
前記位置検出手段から前記回転位置に関する情報を取得する手段と、
前記基板が前記グリッドの斜向かいにある場合に、イオンビームエッチングによって形成される被処理面に平行であり且つ前記基板面に平行である第1の方向側に前記グリッドが位置する状態を第1の状態とし、前記第1の方向と垂直であり且つ前記基板面に平行である第2の方向側に前記グリッドが位置する状態を第2の状態としたとき、前記第1の状態における前記供給電力を前記第2の状態における前記供給電力よりも大きくなるように、前記電力制御手段を制御するための制御信号を生成する手段と、
前記生成された制御信号を前記電力制御手段に送信する手段とを有することを特徴とする制御装置。
【請求項29】
プラズマを形成するためのプラズマ形成手段と、
前記プラズマ形成手段によってプラズマが形成されるプラズマ形成空間と、
前記プラズマ形成空間で形成されたプラズマからイオンを引き出すグリッドと、
回転可能であり、且つ前記グリッドに対して傾斜可能な基板ホルダと、
前記基板ホルダ上に基板が保持された際に、前記基板の回転位置を検出するための位置検出手段と、
前記グリッドへの印加電圧を制御することでビーム引き出し電圧を制御する電圧制御手段とを備えたイオンビームエッチング装置を制御するための制御装置であって、
前記位置検出手段から前記回転位置に関する情報を取得する手段と、
前記基板が前記グリッドの斜向かいにある場合に、イオンビームエッチングによって形成される被処理面に平行であり且つ前記基板面に平行である第1の方向側に前記グリッドが位置する状態を第1の状態とし、前記第1の方向と垂直であり且つ前記基板面に平行である第2の方向側に前記グリッドが位置する状態を第2の状態としたとき、前記第1の状態における前記ビーム引き出し電圧を前記第2の状態における前記ビーム引き出し電圧よりも大きくなるように、前記電圧制御手段を制御するための制御信号を生成する手段と、
前記生成された制御信号を前記電圧制御手段に送信する手段とを有することを特徴とする制御装置。
【請求項30】
コンピュータを請求項26乃至29のいずれか1項に記載の制御装置として機能させることを特徴とするコンピュータプログラム。
【請求項31】
コンピュータにより読み出し可能なプログラムを格納した記憶媒体であって、請求項30に記載のコンピュータプログラムを格納したことを特徴とする記憶媒体。



【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【公開番号】特開2012−142398(P2012−142398A)
【公開日】平成24年7月26日(2012.7.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−293526(P2010−293526)
【出願日】平成22年12月28日(2010.12.28)
【出願人】(000227294)キヤノンアネルバ株式会社 (564)
【Fターム(参考)】