説明

イメージファイバ及びその製造方法

【課題】ねじり部とスリーブとの間へ接着剤を充填する際、気泡を残留させずに接着剤を良好な状態で充満させることが可能なイメージファイバ及びその製造方法を提供する。
【解決手段】石英製ジャケットの内部に複数の画素ファイバを配したガラスファイバ3の外周に被覆4を設けたイメージファイバ1の被覆4の一部を除去し、露出させた部分のガラスファイバ3を加熱してねじることによりねじり部2を形成し、ねじり部2の外周に透光性を有する保護スリーブ5を被せる。ねじり部2と保護スリーブ5との間に接着剤6を注入して充填し、保護スリーブ5を通して接着剤6の注入状態を視認する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、医療用、工業用として狭隘部あるいは悪環境下にて用いられるイメージファイバ及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、血管、泌尿器管等の体腔内の狭隘部での観察用あるいは高温炉内等の悪環境下での監視用として、医療用、工業用を問わずイメージファイバが用いられている。
このイメージファイバは、複数の画素ファイバを束ねて溶融させ一体化したもので、イメージファイバ端面に結像された像を各画素ファイバに分解して他端まで伝送するものである。
【0003】
イメージファイバとしては、伝送画像の反転あるいは伝送画像のコントラストの改善のため、その途中にねじり加工を施すことが知られている(例えば、特許文献1参照)。
具体的には、イメージファイバの一部を加熱して軟化させ、ねじりを加えたねじり部を形成し、このねじり部にステンレス製のスリーブを被せ、イメージファイバのねじり部とスリーブとの間に接着剤を充填し、特に、医療用の場合は、その後にオートクレーブ処理(高圧蒸気滅菌処理)を施している。
【0004】
【特許文献1】特開2004−86028号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、ねじり部とスリーブとの間に注入した接着剤が満遍なく充填されず、例えばスリーブ内に気泡が存在していると、オートクレーブ処理時に、ガラスファイバの周囲に残留した気泡が膨張し、ガラスファイバを損傷してイメージファイバの画像伝送に影響を与えるなどの不具合を生じる虞がある。また、接着剤の充填が不十分であるとねじり部とスリーブとの接着強度が低下し、ねじり部の引っ張り強度が低下してしまう。従来は、スリーブの端部から極細の針などをねじり部との間に差し込み、ねじり部とスリーブとの間に充満する量の接着剤を注入しており、気泡の有無に関わらずその後の処理工程を行っていた。
【0006】
そこで本発明は、ねじり部とスリーブとの間へ接着剤を充填する際、気泡を残留させずに接着剤を良好な状態で充満させることが可能なイメージファイバ及びその製造方法を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決することのできる本発明に係るイメージファイバは、石英製ジャケットの内部に複数の画素ファイバが配置されたガラスファイバの外周に、被覆が設けられたイメージファイバであって、前記イメージファイバの一部に前記ガラスファイバをねじったねじり部と、透光性を有する保護スリーブとを備え、前記保護スリーブは接着剤で前記ねじり部に接着されていることを特徴とする。
【0008】
また、本発明に係るイメージファイバにおいて、前記保護スリーブが、ポリイミド樹脂から形成されていることが好ましい。
【0009】
また、本発明に係るイメージファイバにおいて、前記保護スリーブの外周に金属パイプが設けられていることが好ましい。
【0010】
上記課題を解決することのできる本発明に係るイメージファイバの製造方法は、上記本発明に係るイメージファイバを製造する方法であって、イメージファイバの前記被覆の一部を除去する工程と、前記被覆を除去した部分のガラスファイバにねじり部を形成する工程と、前記ねじり部の外周に前記保護スリーブを被せる工程と、前記ねじり部と前記保護スリーブとの隙間に接着剤を注入する工程と、前記保護スリーブを通して前記接着剤の注入状態を視認する工程とを有することを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、ねじり部と保護スリーブとの間への接着剤の充填状態を、保護スリーブを通して周囲から良好に視認することができる。そのため、接着剤を一旦注入した後、ねじり部と保護スリーブとの間に気泡が存在している場合には、さらに接着剤を注入して気泡をなくすことができる。したがって、イメージファイバをオートクレーブ処理しても気泡によるガラスファイバの損傷を防ぐことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
以下、本発明に係るイメージファイバ及びその製造方法の実施形態の例について図面を参照して説明する。
図1は本実施形態のイメージファイバのねじり部を示す部分断面図である。
図1に示すイメージファイバ1は、マルチコアファイバ型と呼ばれるイメージファイバ(イメージガイド)であって、円筒形の石英製ジャケットの内部に複数(数千本から数万本)の画素ファイバが配置され、その石英製ジャケットの外周に被覆4が設けられた構造を有する。画素ファイバは、それぞれがコアとクラッドを有するガラスファイバであり、それぞれ独立した光線路を形成している。一端側の各画素ファイバ端面に入射した光が他端側の各画素ファイバ端面から出射されることで、一端側に結像された画像を各画素ファイバに分解して他端まで伝送し、他端側にて観察することができるようになっている。被覆4は、ポリイミド樹脂やシリコン樹脂などの熱硬化性樹脂あるいは紫外線硬化性樹脂により形成されている。
【0013】
イメージファイバ1は、その途中に、ガラスファイバ3をねじったねじり部2を備えている。ねじり部2は、伝送画像の反転あるいは伝送画像のコントラストの改善のため、ガラスファイバ3にねじり加工を施した部位である。
このねじり部2では、被覆4が除去されており、さらに、その周囲が保護スリーブ5によって覆われている。この保護スリーブ5は、ポリイミド樹脂から形成されたもので、透明あるいは半透明とされて外側から内側が透視可能な透光性を有している。ポリイミド樹脂は耐熱性に優れているため、イメージファイバ1に対してオートクレーブ処理を行っても劣化しにくい。また、保護スリーブ5はシリコン樹脂により形成されていても良い。
【0014】
この保護スリーブ5は、ねじり部2よりも長くされており、これにより、保護スリーブ5の両端が、ねじり部2の両端における被覆4の端部に重ねられている。
この保護スリーブ5の内部には、ポリイミド系、エポキシ系あるいはシリコン系の接着剤6が満遍なく充填されている。
【0015】
さらに、この保護スリーブ5には、ステンレス等から形成された金属パイプ7が被せられており、この保護スリーブ5の外周が金属パイプ7によって覆われている。
また、この金属パイプ7の内部にも、ポリイミド系、エポキシ系あるいはシリコン系の接着剤8が充填されている。
【0016】
次に、ねじり部2を備えた上記のイメージファイバ1を製造する方法について説明する。
まず、コアとクラッドを有するガラスの画素ファイバを決められた長さに複数本揃えて束ね、それを円筒形の石英製ジャケットの内側に収容する。そして、石英製ジャケットごと画素ファイバを加熱して、溶融させて複数の画素ファイバ及び石英製ジャケットを一体化する。これがイメージファイバの母材であり、この母材を線引きして所定の径になるよう細径化し、樹脂被覆用のダイスを通して外周側にポリイミド樹脂やシリコン樹脂などの熱硬化性樹脂あるいは紫外線硬化性樹脂からなる被覆4を施す。
【0017】
このようにして得られたイメージファイバ1の途中の部分で、被覆4を所定の長さだけ除去し、ガラスファイバ3を露出させる。
次に、露出させたガラスファイバ3の中央部分を酸水素バーナなどの加熱源で加熱して軟化させ、周方向にねじった後、冷却することによりねじり部2を形成する。
【0018】
ねじり部2を形成したら、図2に示すように、このねじり部2に、透光性を有する円筒形の保護スリーブ5を被せてねじり部2の外周を保護スリーブ5によって覆う。
この状態で、ねじり部2と保護スリーブ5との隙間に接着剤6を充填する。接着剤6の充填は、例えば、極細の針を備えた注射器を用いて行い、保護スリーブ5の端部内側に差し込んだ針から毛細管現象を利用して保護スリーブ5内に接着剤6を送り込む。
【0019】
このとき、保護スリーブ5は、透光性を有することより、保護スリーブ5を通して接着剤6の注入状態を視認することができる。すなわち、保護スリーブ5内への接着剤6の充填状態を視認しながら充填作業を行い、気泡がなく十分に接着剤6が充満されたことが確認できるまで注入することができる。もしくは、接着剤6を一旦充填した後に気泡があるか否かを視認し、気泡がある場合にはさらに接着剤6を注入して気泡をなくすように充満させても良い。なお、保護スリーブ5内の視認観察は、例えば、顕微鏡などを用いて行う。
【0020】
このように、保護スリーブ5が透光性を有することより、保護スリーブ5内への接着剤6の充填状態を視認して確認することができ、したがって、ガラスファイバ3の周辺に気泡を残留させることなく満遍なく接着剤6を充填することができる。したがって、ねじり部とスリーブとの間を強く接着して、ねじり部の引っ張り強度を十分なものとすることができる。
保護スリーブ5内への接着剤6の充填が完了し、接着剤6が硬化したら、この保護スリーブ5の周囲に金属パイプ7を被せ、この金属パイプ7内に接着剤8を充填する。これにより、イメージファイバ1が図1に示した状態となり、ねじり部2をさらに強固に保護することができ、外力によるねじり部2の損傷を防止することができる。
【0021】
以上説明したように、上記実施形態によれば、ねじり部2を覆う保護スリーブ5が透光性を有するため、ねじり部2と保護スリーブ5との間の接着剤6の充填状態を極めて容易にかつ良好に確認することができる。
【0022】
これにより、保護スリーブ5内の接着剤6に気泡が残留した状態をなくすことができ、イメージファイバ1に対してオートクレーブ処理を行っても、気泡によるガラスファイバ3の損傷を確実に防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】本発明に係るイメージファイバの一実施形態を示す部分断面図である。
【図2】図1のねじり部に保護スリーブのみを被せた状態の部分断面図である。
【符号の説明】
【0024】
1 イメージファイバ
2 ねじり部
3 ガラスファイバ
4 被覆
5 保護スリーブ
6 接着剤
7 金属パイプ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
石英製ジャケットの内部に複数の画素ファイバが配置されたガラスファイバの外周に、被覆が設けられたイメージファイバであって、
前記イメージファイバの一部に前記ガラスファイバをねじったねじり部と、透光性を有する保護スリーブとを備え、前記保護スリーブは接着剤で前記ねじり部に接着されていることを特徴とするイメージファイバ。
【請求項2】
請求項1に記載のイメージファイバであって、
前記保護スリーブが、ポリイミド樹脂から形成されていることを特徴とするイメージファイバ。
【請求項3】
請求項1または2に記載のイメージファイバであって、
前記保護スリーブの外周に金属パイプが設けられていることを特徴とするイメージファイバ。
【請求項4】
請求項1から3の何れか一項に記載のイメージファイバを製造する方法であって、
イメージファイバの前記被覆の一部を除去する工程と、前記被覆を除去した部分のガラスファイバにねじり部を形成する工程と、前記ねじり部の外周に前記保護スリーブを被せる工程と、前記ねじり部と前記保護スリーブとの隙間に接着剤を注入する工程と、前記保護スリーブを通して前記接着剤の注入状態を視認する工程とを有することを特徴とするイメージファイバの製造方法。

【図1】
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【図2】
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