説明

インキ誘導部材及びその製造方法

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、インキの濡れ性や保持性が要求される筆記具の合成樹脂製インキ誘導部材及びその製造方法に関するものであり、より詳細には経時的なインキとの接触のムラにより生じる空気の抱き込みなどの問題を極力抑制したインキ誘導部材及びその製造方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】筆記具におけるインキ誘導部材の具体例としては、ジャバラ状ペン芯や、インキカートリッジ挿入部材や、繊維束や樹脂押出成形によるインキ中継芯や、樹脂製ペン先などが挙げられるが、これらのインキ誘導部材にはインキの濡れ性や保持性が要求される。インキ誘導部材に対するインキのぬれ性や保持性が低下すると、インキとの接触ムラが生じ、その結果、空気を抱き込むこととなり、ペン先部よりインキのボタ落ちが生じたり、インキ吐出不足が生じ筆跡にカスレを生じるなどの問題が生じる。
【0003】そこで、インキ誘導部材のインキの濡れ性や保持性を向上するため数多くの提案がなされている。その代表的な例としては、クロム酸含有液で表面をエッチング処理したもの、表層部がシラノール基であるポリシロキサンの層を特定の層厚で表面に形成した特公平1ー27870号、ABS樹脂を使用し、エッチング部の全表面に対するエッチング凹部の総面積を特定し、その表面に界面活性剤を分布させた特公平1ー60439号、インキ接触面に、アルミナ及び/又はシリカの微粒子を特定の平均間隔で全体に均一に分散付着させた特公平3ー20357号などが挙げられる。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】従来のものは、表面にインキが付着しやすいように凹凸を形成したり(エッチング処理)、表面に親水性の物質を単に付着させたり(特公平1ー60439号、特公平3ー20357号)、前処理することなく親水性の層を表面に形成したり(特公平1ー27870号)するものである為、初期のインキの濡れ性や保持性は良好であるものの、経時的な使用により表面の凹凸が徐々に塞がれたり、親水性物質が徐々に剥離し、インキの濡れ性や保持性が徐々に低下するという点で未だ改善の余地が残されていた。又、これに加えて特公平1ー60439号においては、使用できる樹脂が限定され、使用樹脂の拡大という点で未だ改善の余地が残されていた。
【0005】
【課題を解決するための手段】本発明は、上記問題に鑑みなされたものであって、活性化処理した合成樹脂製のインキ誘導部材表面に、SiO2、TiO2、Al23、ZrO2、MgAl24、BaTiO3、GeO2、Fe23、Cr23、CoO、In2O、SnO、V25、WO3より選択された1種もしくは2種以上のコーティング膜を形成せしめたインキ誘導部材を第1の要旨とし、活性化処理した合成樹脂製のインキ誘導部材表面に、無機コロイド及び/又は親水性を有する有機化合物を含むSiO2、TiO2、Al23、ZrO2、MgAl24、BaTiO3、GeO2、Fe23、Cr23、CoO、In2O、SnO、V25、WO3より選択された1種もしくは2種以上のコーティング膜を形成せしめたインキ誘導部材を第2の要旨とし、合成樹脂製のインキ誘導部材の表面を活性化処理した後、ゾルーゲル法により表面に、SiO2、TiO2、Al23、ZrO2、MgAl24、BaTiO3、GeO2、Fe23、Cr23、CoO、In2O、SnO、V25、WO3より選択された1種もしくは2種以上のコーティング膜を形成したインキ誘導部材の製造方法を第3の要旨とし、合成樹脂製のインキ誘導部材の表面を活性化処理した後、ゾルーゲル法により表面に、無機コロイド及び/又は親水性を有する有機化合物を含むSiO2、TiO2、Al23、ZrO2、MgAl24、BaTiO3、GeO2、Fe23、Cr23、CoO、In2O、SnO、V25、WO3より選択された1種もしくは2種以上のコーティング膜を形成したインキ誘導部材の製造方法を第4の要旨とするものである。
【0006】次に本発明を詳細に説明する。使用し得る合成樹脂としては、種々のものが選択できる。一例としては、ポリアセタール系樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリアミド系樹脂、ポリウレタン系樹脂、ポリオレフィン系樹脂、ポリビニル系樹脂、ポリカーボネート系樹脂、ポリエーテル系樹脂、ポリフェニレン系樹脂、ホルムアルデヒド系樹脂、エポキシ系樹脂、シリコーン樹脂などの1種もしくは2種以上を組み合わせたものが挙げられ、これらを用い押出成形や射出成形によって板状体、杆体、繊維収束体、焼結体、発泡体、多孔質体などといったように所望の形状のインキ誘導部材を得る。
【0007】これらのインキ誘導部材は、最初に少なくもインキと接触する表面を活性化処理する。この処理は、表面物性を変化させることにより表面を活性化するためのものであって、その処理方法をいくつか例示すると次のとおりである。第1の方法としては、無水クロム酸、重クロム酸カリウム、重クロム酸ナトリウム等のクロム酸を含有する液に、必要に応じて硫酸、リン酸などを加えた液を用い、インキ誘導部材をエッチング処理し、表面に微細な凹凸を形成すると共に表面にカルボニル基、カルボキシル基、アミノ基などの親水基を形成し、表面を活性化する方法である。第2の方法としては、インキ誘導部材をプラズマ処理、コロナ放電処理、放射線照射処理することにより、表面にカルボニル基、カルボキシル基、アミノ基などの親水基を形成し、表面を活性化する方法である。本方法の場合には、インキ誘導部材として多孔質体、発泡体などその表面をポーラス化したものに特に好適である。
【0008】次に表面を活性化処理したインキ誘導部材の表面にSiO2、TiO2、Al23、ZrO2、MgAl24、BaTiO3、GeO2、Fe23、Cr23、CoO、In2O、SnO、V25、WO3のコーティング膜を形成するが、このSiO2、TiO2、Al23、ZrO2、MgAl24、BaTiO3、GeO2、Fe23、Cr23、CoO、In2O、SnO、V25、WO3のコーティング膜の形成方法としては、ゾルーゲル法にて行なう。ゾルーゲル法の原理は、金属の有機、無機化合物の溶液から出発し、溶液中での化合物の加水分解、重縮合によって溶液を金属酸化物または水酸化物の微粒子が溶解したゲルとし、更に反応を進行させゲル体とし、このゲル体を乾燥し加熱するとゲル体が成長し多結晶物が最終的に生成されるようにしたものであり、本原理は石英ガラスの製造に用いられている。
【0009】本発明においては、前記ゾルーゲル法の原理を利用したものであり、具体的には、以下の手順によってインキ誘導部材の表面にコーティング膜を形成するが、以下SiO2を例に説明する。最初に金属としてSiを用いた金属アルコキシドとしてテトラエトキシシラン(Si(OC254)に溶媒(エタノール、イソプロピルアルコール等)を添加して混合液を作製し、これに加水分解に必要な水、触媒を加えゾル液を作る。次に、ゾル液にインキ誘導部材を入れアルコキシドの加水分解と重縮合を行なう(反応温度は室温〜80℃程度)とSiO2粒子(ゲル)がインキ誘導部材の表面に生成し、更に反応を進行させるとゲルが成長しゲル体となる。その後ゲル体をインキ誘導部材が軟化或いは溶融しない程度の温度(60℃〜70℃)で加熱するとインキ誘導部材の表面にSiO2のコーティング膜(nSiO2で、且つ、非晶質で結晶水を含む皮膜、TiO2その他の皮膜も同様)が形成される。
【0010】金属としてSiを用いた金属アルコキシドの具体例としては、テトラエトキシシラン(Si(OC254)、Si(OCH34、Si(i−OC374、Si(i−OC494が挙げられ、金属としてTiを用いた金属アルコキシドの具体例としては、テトラエトキシチタン(Ti(OC254)、Ti(OCH34、Ti(i−OC374、Ti(OC494が挙げられ、又、金属としてAlを用いた金属アルコキシドの具体例としては、アルミニウムエトキシド(Al(OC253)、Al(OCH33、Al(i−OC373、Al(OC493が挙げられ、更に、金属としてZrを用いた金属アルコキシドの具体例としては、ジルコニウムエトキシド(Zr(OC254)、Zr(OCH34、Zr(i−OC374、Zr(OC494が挙げられ、更に、金属としてMg−Alを用いた金属アルコキシドの具体例としては、アルミニウムマグネシウムイソプロポキシド(Mg(Al(i−OC3742、(Mg(Al(s−OC4942が挙げられる。又、金属としてBa−Tiを用いた金属アルコキシドの具体例としては、バリウムエトキシド(Ba(OC252)とテトラエトキシチタン(Ti(OC254)、バリウムイソプロポキシド(Ba(OC372)とテトライソプロポキシチタン(Ti(OC374)が挙げられ、金属としてGeを用いた金属アルコキシドの具体例としては、Ge(OC254が挙げられ、金属としてFeを用いた金属アルコキシドの具体例としては、Fe(OC253が挙げられ、金属としてCrを用いた金属アルコキシドの具体例としては、Cr(CH3COO)3・H2Oが挙げられ、金属としてCoを用いた金属アルコキシドの具体例としては、Co(CH3COO)2・4H2Oが挙げられ、金属としてInを用いた金属アルコキシドの具体例としては、インジウムニトリルアセチルアセトナートが挙げられ、金属としてVを用いた金属アルコキシドの具体例としては、VO(OC253が挙げられ、金属としてWを用いた金属アルコキシドの具体例としては、W(OC256が挙げられる。溶媒としては、メタノール、エタノール、プロパノール、ブタノール等のアルコール類が主に使用され、その他エチレングリコール、エチレンオキシド、トリエタノールアミン、キシレン、ホルムアミド、ジメチルホルムアミド、ジオキサン、シュウ酸なども使用される。更に、触媒としては、塩酸、硫酸、硝酸、酢酸、フッ酸などの酸や、アンモニアなどが使用される。
【0011】即ち、本発明におけるゾルーゲル法とは、金属としてSi、Ti、Al、Zr、Mg−Al、Ba−Ti、Ge、Fe、Cr、Co、In、Sn、V、Wを用いた金属アルコキシド溶液よりなるゾル液を使用し、これを加水分解と重縮合を行ないSiO2、TiO2、Al23、ZrO2、MgAl24、BaTiO3、GeO2、Fe23、Cr23、CoO、In2O、SnO、V25、WO3粒子のゲルを生成し、その後反応を進行させSiO2、TiO2、Al23、ZrO2、MgAl24、BaTiO3、GeO2、Fe23、Cr23、CoO、In2O、SnO、V25、WO3粒子をゲル体となし、更に加熱しインキ誘導部材の表面にSiO2、TiO2、Al23、ZrO2、MgAl24、BaTiO3、GeO2、Fe23、Cr23、CoO、In2O、SnO、V25、WO3の膜を形成することをいう。
【0012】SiO2、TiO2、Al23、ZrO2、MgAl24、BaTiO3、GeO2、Fe23、Cr23、CoO、In2O、SnO、V25、WO3のコーティング膜はインキ誘導部材の表面全面に形成してもよいし、部分的に形成してもよい。この部分的に膜を形成するためには、最終工程である加熱処理によりコントロールするか、膜を形成したくないインキ誘導部材の表面部分に事前にマスキングを施しておけばよい。更に、その膜厚はインキ誘導部材の使用目的により異なるが一般的には0.1μm〜10μmが好ましい。
【0013】本発明では、上記ゾルーゲル法によるSiO2、TiO2、Al23、ZrO2、MgAl24、BaTiO3、GeO2、Fe23、Cr23、CoO、In2O、SnO、V25、WO3のコーティング膜形成時において、金属アルコキシド溶液に添加剤の1種もしくは2種以上を添加し、反応をなすとより良好な結果が得られる。このような添加剤としては、日本シリカ工業(株)製のラポナイト(商標)として知られている天然クレー鉱物や、シリカコロイドやチタンコロイドやアルミナコロイド等の無機コロイド、メタアクリル酸、アクリル酸や住友化学工業(株)製のスミカゲル(商標)として知られている高吸水性樹脂や変性ポリアミド等の親水性を有するポリエステル、ポリブタジエン、エポキシエステル、ポイアクリル酸エステル等を骨格としたポリカルボン酸樹脂、エポキシ樹脂、アクリル樹脂などを骨格としたポリアミド樹脂などの有機化合物、可溶性デンプン、デキストリン、デキストラン、ブドウ糖などの多糖類が挙げられる。この添加剤の添加によって、得られるコーティング膜中に、添加剤が分散されることとなる。
【0014】本発明の処理工程は、以上のとおりであるが、ゾル液中に染料を加え、インキ誘導部材を着色するようなしたり、形成したインキ誘導部材を、活性化処理する前に、超音波による洗浄その他適宜前処理を施してもよいし、その他本発明の範囲内において適宜処理を施してもよい。
【0015】
【作用】本発明は、活性化処理した表面にSiO2、TiO2、Al23、ZrO2、MgAl24、BaTiO3、GeO2、Fe23、Cr23、CoO、In2O、SnO、V25、WO3のコーティング膜を形成したので、活性化処理表面とSiO2、TiO2、Al23、ZrO2、MgAl24、BaTiO3、GeO2、Fe23、Cr23、CoO、In2O、SnO、V25、WO3のコーティング膜が強固に密着し、上記金属酸化物のコーティング膜の表面には無数の−OH基を有し、親インキ性の表面になること、ゾルーゲル法によってSiO2、Al23、ZrO2、MgAl24、BaTiO3、GeO2、Fe23、Cr23、CoO、In2O、SnO、V25、WO3のコーティング膜を形成したので、ゾル液がインキ誘導部材に均一に拡散する結果、均一な皮膜が得られると共に、インキ誘導部材表面で加水分解反応並びに重縮合反応が行なわれるため、皮膜のインキ誘導部材表面に対する密着がより強固になること、又、コーティング膜中に無機コロイド及び/又は親水性を有する有機化合物が強固分散されていること等により経時的なインキの濡れ性や保持性を保証することができる。
【0016】
【実施例】実施例1ダイセル化学工業(株)製のABS樹脂(V320)を用いジャバラ状ペン芯(長手方向に多数の櫛歯状羽根を並列して有し、幅0.15mm、高さ20mmの長手方向のインキ導出溝を形成)であるインキ誘導部材を射出成形によって得た後、このインキ誘導部材を市販の中性洗剤(ライオン(株)製、ママレモン(登録商標名))5%を含む水溶液に浸漬し、5分間超音波洗浄した(前処理)。その後インキ誘導部材を酸素雰囲気中でガスプラズマ(インターナショナルプラズマコーポレーション製)にて処理しインキ誘導部材の表面を活性化する(活性化処理)。次にこのインキ誘導部材を、テトラエトキシシラン(関東化学(株)製)140g、エタノール207g、水36g、塩酸0.3mlの混合液に24時間浸漬した後取り出し、70℃で6時間処理し、表面にSiO2のコーティング膜が形成されたインキ誘導部材を得た。
【0017】実施例2上記実施例1にて、活性化処理を以下のようになした以外は実施例1と同様となし表面にSiO2のコーティング膜が形成されたインキ誘導部材を得た。「活性化処理−CrO3400g/l、H2SO4200g/lの水溶液中にインキ誘導部材を浸漬し、70℃で1時間撹拌処理した後、5%塩酸の50℃水溶液中で10分間浸漬した。」
【0018】実施例3ポリアセタール樹脂のペン先(ぺんてる(株)製、フォーフイルムOPM403、長手方向に50〜80μmの毛細管が無数にあり、全長30mm、外径0.6mmのペン先)であるインキ誘導部材を市販の中性洗剤(ライオン(株)製、ママレモン(登録商標名))5%を含む水溶液に浸漬し、5分間超音波洗浄した(前処理)。その後インキ誘導部材をクロム酸含有液(無水クロム酸400g/l、H2SO4200g/lの水溶液)中に60℃で1分間浸漬した後、5%塩酸水溶液中に10分間浸漬し水道水で洗浄した(活性化処理)。次にこのインキ誘導部材を、チタンイソプロポキシド(添川理化学(株)製)5g、エタノール100ml、2N塩酸0.5mlを含む溶液に10分間浸漬した後取り出し、70℃で3時間乾燥し、表面にTiO2のコーティング膜が形成されたインキ誘導部材を得た。
【0019】実施例4活性化処理までは上記実施例3と同様となし、その後の処理を以下のようになし表面にAl23のコーティング膜が形成されたインキ誘導部材を得た。「次にこのインキ誘導部材を、アルミニウムイソプロポキシド(添川理化学(株)製)1g、イソプロピルアルコール100ml、2N塩酸0.3mlを含む溶液に5分間浸漬した後取り出し、70℃で3時間乾燥し、表面にAl23のコーティング膜が形成されたインキ誘導部材を得た。」
【0020】実施例5実施例3によって表面にTiO2のコーティング膜を形成した後、このインキ誘導部材を、テトラエトキシシラン(関東化学(株)製)140g、エタノール207g、水36g、塩酸0.3mlの混合液に24時間浸漬した後取り出し、70℃で6時間処理し、TiO2のコーティング膜の表面にSiO2のコーティング膜が形成されたインキ誘導部材を得た。
【0021】実施例6ダイセル化学工業(株)製のABS樹脂(V660)を用いジャバラ状ペン芯(長手方向に多数の櫛歯状羽根を並列して有し、幅0.15mm、高さ44mmの長手方向のインキ導出溝を形成)であるインキ誘導部材を射出成形によって得た。このインキ誘導部材を酸素雰囲気中でガスプラズマ(インターナショナルプラズマコーポレーション製)にて処理しインキ誘導部材の表面を活性化する(活性化処理)。次にこのインキ誘導部材を、イソプロピルアルコール40.5g、テトラエトキシシラン(関東化学(株)製)20.8g、水31.5gの混合液に、塩酸数滴を加え撹拌し溶液Aを作成した。この溶液AにAQ−ナイロンK−80(東レ(株)製)を2.0g加え、溶解した混合液に15分間浸漬した。これを遠心分離機((株)広瀬脱水機械製作所製)にかけ、50〜60℃で4時間以上乾燥し、表面にAQ−ナイロンK−80を含むSiO2のコーティング膜が形成されたインキ誘導部材を得た。
【0022】実施例7溶液Aの作成迄を実施例6と同様となし、その後の処理を以下のようになし、表面にアクリル酸を含むSiO2のコーティング膜が形成されたインキ誘導部材を得た。「この溶液Aに水100g中にアクリル酸1gを加え、更にブチルセロソルブを数滴加えた溶液を等量入れた混合液に15分間浸漬した。これを遠心分離機((株)広瀬脱水機械製作所製製)にかけ、50〜60℃で4時間以上乾燥した。」
【0023】実施例8実施例7において、アクリル酸とブチルセロソルブの代わりに、ラポナイトRD(日本シリカ工業(株)製、天然クレー鉱物)を水の中に0.1g入れた他は、実施例7と同様となし、ラポナイトDを含むSiO2のコーティング膜が形成されたインキ誘導部材を得た。
【0024】実施例9実施例8のラポナイトRDの代わりにラポナイトRDS(日本シリカ工業(株)製、天然クレー鉱物)を使用した他は実施例8と同様となし、ラポナイトRDSを含むSiO2のコーティング膜が形成されたインキ誘導部材を得た。
【0025】実施例10実施例7のアクリル酸とブチルセロソルブの代わりに、スミカゲルNP−1010(住友化学工業(株)製)を水の中に0.1g入れた他は、実施例7と同様となし、スミカゲルNP−1010を含むSiO2のコーティング膜が形成されたインキ誘導部材を得た。
【0026】実施例11実施例6のAQ−ナイロンK−80の代わりに、OSCAL−1436(触媒化成工業(株)製、シリカコロイド)を5.0g加えた他は、実施例6と同様となし、OSCAL−1436を含むSiO2のコーティング膜が形成されたインキ誘導部材を得た。
【0027】実施例12活性化処理まで実施例3と同様となし、その後の処理を以下のようになし、シリカコロイドを含むTiO2のコーティング膜が形成されたインキ誘導部材を得た。「次にこのインキ誘導部材を、チタンイソプロポキシド(添川理化学(株)製)5g、エタノール100ml、2N塩酸0.5ml、OSCAL−1436(触媒化成工業(株)製、シリカコロイド)5.0gを含む溶液に10分間浸漬した後取り出し、70℃で3時間乾燥した。」
【0028】実施例13活性化処理までは上記実施例3と同様となし、その後の処理を以下のようになし、アルミナゾルを含むAl23のコーティング膜が形成されたインキ誘導部材を得た。「次にこのインキ誘導部材を、アルミニウムイソプロポキシド(添川理化学(株)製)1g、イソプロピルアルコール100ml、2N塩酸0.3ml、アルミナゾル(日産化学工業(株)製)5.0gを含む溶液に5分間浸漬した後取り出し、70℃で3時間乾燥し、表面にAl23のコーティング膜が形成されたインキ誘導部材を得た。」
【0029】実施例14活性化処理までは上記実施例3と同様となし、その後の処理を以下のようになし、AQ−ナイロンK−80を含むTiO2のコーティング膜が形成されたインキ誘導部材を得た。「次にこのインキ誘導部材を、チタンイソプロポキシド(添川理化学(株)製)5g、エタノール100ml、2N塩酸0.5ml、AQ−ナイロンK−80(東レ(株)製)2.0gを含む溶液に10分間浸漬した後取り出し、70℃で3時間乾燥した。」
【0030】実施例15活性化処理までは上記実施例3と同様となし、その後の処理を以下のようになし、アクリル酸を含むAl23のコーティング膜が形成されたインキ誘導部材を得た。「次にこのインキ誘導部材を、アルミニウムイソプロポキシド(添川理化学(株)製)1g、イソプロピルアルコール100ml、2N塩酸0.3mlの溶液に、水100g中にアクリル酸1gを加え、更にブチルセロソルブを数滴加えた溶液を等量入れた混合液に5分間浸漬した後取り出し、70℃で3時間乾燥した。」
【0031】比較例1活性化処理まで実施例1と同様となし、その後の処理を以下のようになしインキ誘導部材を得た。「次にこのインキ誘導部材を、シリカコロイド分散液(日産化学工業(株)製、スノーテックO)の5%水溶液に24時間浸漬した後取り出し、50℃で4時間乾燥した。」
【0032】比較例2比較例1において、スノーテックOの濃度を10%水溶液とした他は比較例1と同様となしインキ誘導部材を得た。
【0033】比較例3活性化処理まで実施例2と同様となし、その後の処理を以下のようになしインキ誘導部材を得た。「次にこのインキ誘導部材を、界面活性剤(第一工業製薬(株)製、ノイゲンP)0.05%水溶液に10分間浸漬した後取り出して、50℃で4時間乾燥した。」
【0034】実施例1〜15、比較例1〜3で得たインキ誘導部材について、インキの濡れ性や保持性の状態を確認するため、以下の「洗浄回数とインキ吸い上げ高さの関係」について試験を行なった。
【0035】(試験方法)ジャバラ状ペン芯の後端をインキ(ぺんてる(株)製、万年筆用インキFK15の青色、粘度1.16センチポイズ(25℃)、表面張力55.0dyne/cm、比重1.01(25℃)、pH5.04)中に2mm浸漬し、インキがジャバラ状ペン芯の縦方向の溝を1分間に上る高さを測定した。尚、1回ごとに水洗い及び超音波洗浄を行ない乾燥し、それを5回繰り返した。
【0036】
【発明の効果】試験結果は図1に示すとおりであり、本発明のインキ誘導部材は、洗浄回数が増加してもインキ吸い上げ高さの変化が少なく、経時的なインキの濡れ性や保持性が良好であることが確認できた。
【図面の簡単な説明】
【図1】実施例1〜15、比較例1〜3により得られたインキ誘導部材のインキに対する洗浄回数とインキ吸い上げ高さとの関係を示す図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】 活性化処理した合成樹脂製のインキ誘導部材表面に、SiO2、TiO2、Al23、ZrO2、MgAl24、BaTiO3、GeO2、Fe23、Cr23、CoO、In2O、SnO、V25、WO3より選択された1種もしくは2種以上のコーティング膜を形成せしめたインキ誘導部材。
【請求項2】 活性化処理した合成樹脂製のインキ誘導部材表面に、無機コロイド及び/又は親水性を有する有機化合物を含むSiO2、TiO2、Al23、ZrO2、MgAl24、BaTiO3、GeO2、Fe23、Cr23、CoO、In2O、SnO、V25、WO3より選択された1種もしくは2種以上のコーティング膜を形成せしめたインキ誘導部材。
【請求項3】 合成樹脂製のインキ誘導部材の表面を活性化処理した後、ゾルーゲル法により表面に、SiO2、TiO2、Al23、ZrO2、MgAl24、BaTiO3、GeO2、Fe23、Cr23、CoO、In2O、SnO、V25、WO3より選択された1種もしくは2種以上のコーティング膜を形成したインキ誘導部材の製造方法。
【請求項4】 合成樹脂製のインキ誘導部材の表面を活性化処理した後、ゾルーゲル法により表面に、無機コロイド及び/又は親水性を有する有機化合物を含むSiO2、TiO2、Al23、ZrO2、MgAl24、BaTiO3、GeO2、Fe23、Cr23、CoO、In2O、SnO、V25、WO3より選択された1種もしくは2種以上のコーティング膜を形成したインキ誘導部材の製造方法。

【図1】
image rotate


【特許番号】第2906871号
【登録日】平成11年(1999)4月2日
【発行日】平成11年(1999)6月21日
【国際特許分類】
【出願番号】特願平4−280666
【出願日】平成4年(1992)9月25日
【公開番号】特開平6−92081
【公開日】平成6年(1994)4月5日
【審査請求日】平成10年(1998)5月29日
【出願人】(000005511)ぺんてる株式会社 (899)
【参考文献】
【文献】特開 平2−202499(JP,A)
【文献】特公 平3−20357(JP,B2)