説明

インスタント食品

【課題】 熱湯を加えて約4分で戻りかつほぐれがよく、蒟蒻特有の食感を有する乾燥蒟蒻麺を用いたインスタント食品を提供する。
【解決手段】 重量比で2.2〜2.8の蒟蒻粉と8〜14のデンプンから通常の手段により厚さ0.5mm〜2mmの平麺状の蒟蒻を成形した後、蒟蒻の組織を脆弱化し、次いで低糖化水飴を5 〜15%含浸させ乾燥変性防止処理して脱水した後可食性乳化剤で付着防止処理して乾燥させて得た乾燥蒟蒻麺とスープ調味料ならびに具材を袋またはカップ状容器に包装したことを特徴とするインスタント食品。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は湯戻りの良好な乾燥蒟蒻麺を用いたインスタント食品に関するものである。
【背景技術】
【0002】
蒟蒻は、低カロリーで脂質を有しないため各種のダイエット食品の素材として用いられている。乾燥蒟蒻麺を用いてインスタント食品を製造すれば、手軽に低カロリーの蒟蒻を摂食することができ、ダイエット効果にすぐれた食品であるが、これまで乾燥蒟蒻麺を使用したインスタント食品は、知られていなかった。
【0003】
その原因は、乾燥蒟蒻麺(乾燥しらたき)は湯戻りに時間を要することが挙げられ、インスタント食品に好適な乾燥蒟蒻麺(乾燥しらたき)は、知られていなかった。
【0004】
例えば乾燥蒟蒻麺(乾燥しらたき)を製造する方法として、特許文献1に開示された方法が公知である。しかしながら、特許文献1に記載された方法で調製した乾燥蒟蒻麺(乾燥しらたき)に熱湯を加えて戻すには7〜8分を要し、ほぐれも十分満足のいくものではなかった。
【特許文献1】特開平10−248515号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明が解決しようとする課題は、熱湯を加えて約4分で戻りかつほぐれがよく、蒟蒻特有の食感を有する乾燥蒟蒻麺を用いたインスタント食品を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者らが鋭意研究を重ねた結果、原料の蒟蒻粉にデンプンを配合し、特定の太さの蒟蒻麺とし、乳化剤で粘着防止処理することにより、上記課題が解決できることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0007】
すなわち、本発明の要旨は下記の通りである。
(1) 重量比で2.2〜2.8の蒟蒻粉と8〜14のデンプンから通常の手段により厚さ1.0mm〜2.0mmの平麺状の蒟蒻を成形した後、蒟蒻の組織を脆弱化し、次いで低糖化水飴を5〜15%含浸させ乾燥変性防止処理して脱水した後可食性乳化剤で付着防止処理して乾燥させて得た乾燥蒟蒻麺とスープ調味料ならびに具材を袋またはカップ状容器に包装したことを特徴とするインスタント食品。
(2) デンプンがタピオカ、ばれいしょ及びコーンスターチからなる群より選ばれる少なくとも1種であることを特徴とする(1)項に記載のインスタント食品。
(3) 乳化剤がグリセリン脂肪酸エステルであることを特徴とする(1)項または(2)項に記載のインスタント食品。
(4) スープ調味料が液状、粉末状または凍結乾燥ブロック状であることを特徴とする(1)項ないし(3)項のいずれか1項に記載のインスタント食品。
(5) 具材が調理後レトルトパウチ化されたもの、野菜や畜肉、魚介などの凍結乾燥片またはその熱風乾燥片のいずれか1種もしくは複数の組み合わせからなるものであることを特徴とする(1)項ないし(4)項のいずれか1項に記載のインスタント食品。
(6) スープ調味料および具材が、スープ調味料と具材が一体となった凍結乾燥ブロック、スープ調味料と具材を充填したレトルトパウチまたは粉末スープと乾燥具材を混合一体化して充填した袋であることを特徴とする(1)項ないし(5)項のいずれか1項に記載のインスタント食品。
【発明の効果】
【0008】
本発明のインスタント食品に用いられる乾燥蒟蒻麺は、約4分で湯戻りし、ほぐれも良好で、蒟蒻特有の食感を有しており、気軽に摂食できるダイエット食品として好適である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
本発明の乾燥蒟蒻麺の原料となる蒟蒻粉とは、サトイモ科コンニャク属に属するこんにゃく芋に含まれるグルコマンナンをこんにゃく芋を切干して分離したもの、あるいは含水アルコール下で分離、乾燥したものである。
【0010】
蒟蒻と配合するデンプンは、タピオカ、ばれいしょ及びコーンスターチから選ばれる少なくとも1種である。
【0011】
本発明のインスタント食品に用いる乾燥蒟蒻麺は、重量比で2.2〜2.8の蒟蒻粉と8〜14のデンプンを混合して調製する。配合比を外れると、湯戻し後に蒟蒻としての食感を復元できなくなる、湯戻り倍率が低くなる、などの点で好ましくない。
【0012】
本発明のインスタント食品に用いる乾燥蒟蒻麺は、湯戻りを短くするため、厚さ0.5mm〜2mmの平麺状とする。蒟蒻を平麺状に成形するには、所定量の蒟蒻粉とデンプンに水を加えて溶解した物に石灰乳を加えて混合し、断面が長方形のノズルから押し出せばよい。
【0013】
平麺状に成形した蒟蒻の組織を脆弱化する方法は、次亜塩素酸を用いる方法、食物繊維分解酵素を用いる方法のいずれを用いてもよい。
【0014】
脆弱化した蒟蒻は、低糖化水飴を用いて乾燥変性防止処理する。このとき蒟蒻の5〜15%の水飴を含浸させる。
【0015】
平麺状に形成した蒟蒻の乾燥付着を防止するために用いる可食性の乳化剤としては、例えばモノグリセリン脂肪酸エステル、ポリグリセリン脂肪酸エステル、グリセリン有機酸脂肪酸エステル、ショ糖脂肪酸エステル、ソルビタン脂肪酸エステル、プロピレングリコール脂肪酸エステル、各種レシチン等を挙げることができる。
【0016】
(麺状蒟蒻の製造工程)
蒟蒻粉とデンプンの混合物から通常の手段により、麺状の蒟蒻を調製する。すなわち、蒟蒻粉とデンプンの混合物に所定量の水を加えて溶解する。室温で静置後、石灰乳を加えながら攪拌混練し、縦1.0〜2.0mm、横2.0〜4.0mmの長方形のノズル孔から蒟蒻粉溶解物を平麺状に押し出し成形する。押し出し成形された麺状物を所定時間加熱して養生した後、一定寸法毎に切断して、平麺状の蒟蒻を製造する。
【0017】
(脆弱化処理工程)
前工程で製造した平麺状の蒟蒻の組織を脆弱化する。脆弱化する方法は特に限定されないが、次亜塩素酸を用いる方法、食物繊維分解酵素を用いる方法のいずれでもよい。
【0018】
次亜塩素酸を用いる方法は、麺状蒟蒻を有効塩素濃度 30〜150ppmの次亜塩素酸水溶液に10〜35℃、pH4.0〜6.5で、20〜60分間浸漬し、クエン酸溶液で中和すればよい。
【0019】
食物繊維分解酵素を用いる方法は、クエン酸を加えて中和した後、ヘミセルラーゼ等の食物繊維分解酵素液を加えて攪拌して、蒟蒻に含浸させて蒟蒻組織を脆弱化した後75〜85℃でボイルし酵素を失活させる。
【0020】
(乾燥変性防止処理工程)
脆弱化処理した蒟蒻麺に、DE=20〜40の低糖化度水飴を5〜15%加え攪拌し、水あめを蒟蒻麺に含浸させ、蒟蒻の乾燥変性を防止する。
【0021】
(乾燥付着防止処理工程)
乾燥変性防止処理を施した蒟蒻麺に乳化剤で乾燥付着防止処理を行う。用いられる乳化剤は、可食性の乳化剤であれば特に限定されないが、例えばグリセリンステアリン酸モノエステル等のグリセリン脂肪酸エステルを挙げることができる。グリセリン脂肪酸エステルで調製したエマルジョンを乾燥変性防止処理済みの蒟蒻麺に0.5%程度噴霧して乾燥付着防止処理すればよい。
【0022】
(乾燥工程)
乾燥付着防止処理後の蒟蒻麺を遠心脱水機等で余分な水分を脱水し、一食分の蒟蒻麺を型にいれ、熱風乾燥することにより乾燥蒟蒻麺が得られる。
【0023】
(包装工程)
得られた乾燥蒟蒻麺をスープ調味料、具材とともに容器に包装して乾燥蒟蒻麺を用いたインスタント食品を製造する。
【0024】
乾燥蒟蒻麺といっしょに容器に包装するスープ調味料の製法は、(1)塩、胡椒、醤油、砂糖、味噌、椎茸風味だし、かつお風味だし、グルタミンソーダ、イノシン酸などを加熱処理した液状スープ、(2)畜肉エキス、魚貝エキス、野菜エキス、塩、胡椒、醤油、砂糖、味噌、グルタミンソーダ、イノシン酸などを粉末状に混合したスープ、(3)(1)の液状スープを凍結乾燥しブロック状にした固形スープ、(4)(1)から(3)のスープを複数組み合わせたスープのいずれでも良い。
【0025】
更に、乾燥蒟蒻麺といっしょに容器に包装する具材の製法は、(1)野菜、畜肉、魚肉、塩、胡椒、醤油、砂糖、味噌、椎茸風味だし、かつお風味だし、グルタミンソーダ、イノシン酸などを加熱調理後、包装しレトルト殺菌した具材、(2)野菜や畜肉、魚貝などの凍結乾燥片、熱風乾燥片のいずれかもしくは複数の組み合わせからなる具材、(3)(1)から(2)の具材を複数組み合わせた具材のいずれでも良い。
【0026】
また、スープ調味料と具材が一体となった凍結乾燥ブロックもしくはレトルトパウチまたは粉末スープと乾燥具材を混合して充填した袋とを製造した乾燥蒟蒻麺といっしょに包装しても良い。
【実施例1】
【0027】
蒟蒻粉2kg及びタピオカ澱粉9kgに水79kgを加え、良く攪拌して2時間放置した後、石灰乳(水酸化カルシウム100g、水10kg)を加えて良く混練し、1.5mm×3.0mm角の形状のノズルから80℃の熱湯中に押し出して15分間養生した。養生後の蒟蒻は糸状に凝固した1次成形品を製造した。
【0028】
表2中、「従来の乾燥しらたき」は、蒟蒻粉2kg及びタピオカ澱粉4kgに水84kgを加え、よく攪拌して2時間放置した後、石灰乳(水酸化カルシウム100g、水10kg)を加えてよく混練し、3mm径のノズルから80℃の熱湯中に押出して15分間養生した。その後冷水にて40℃以下まで冷却し、有効塩素濃度100ppmの次亜塩素酸溶液に30分間(30℃PH9〜10)浸漬し、蒟蒻組織の脆弱化を行った。次にクエン酸溶液で30分間処理して中和し脆弱化処理を終了し、50℃の温水でよく洗い冷水にて室温まで冷却した。脆弱化した一次形成品10kgに対し低糖化水飴(DE=40)を5kg加えてよく混合させ、蒟蒻組織に水飴を含浸させ乾燥変性防止処理を行った。その後熱風乾燥して完成した。
【0029】
脆弱化処理及び乾燥変性防止処理は以下のように行った。
【0030】
上記一次成形品を有効塩素濃度100ppmの次亜塩素酸溶液に30分間(30℃pH9〜10)浸漬し、蒟蒻組織の脆弱化を行った。次に10%クエン酸溶液で30分間処理して中和し脆弱化処理を終了し、50℃の温水でよく洗い冷水にて室温まで冷却した。脆弱化した一次成形品10kgに対し低糖化水飴(DE=40)を5kg加えてよく混合させ、蒟蒻組織に水あめを含浸させ乾燥変性防止処理を行った。
【0031】
水あめを含浸させた一次成形品を脱水し、これに対し乳化剤(グリセリン脂肪酸エステル1%)エマルジョン溶液を表面に0.5%量まぶして乾燥付着防止処理を行った。
【0032】
その後熱風乾燥し、乾燥蒟蒻麺を調製した。それぞれの湯戻り時間を測定し、ほぐれやすさを観察した。その結果を表2に示す。湯戻り時間とほぐれは下記のように測定した。
【0033】
乾燥蒟蒻麺25gに熱湯300gを加え、経時的に麺の状態を官能評価した。
(湯戻り時間)
食感、特に硬さを指標に官能評価した。
(ほぐれ)
箸で持ち上げて麺同士の付着度を官能評価した。
【0034】
【表1】

【0035】
【表2】

【実施例2】
【0036】
上記実施例1に準じて、表1の1の配合で、乾燥蒟蒻麺を調製した。・・・(1)
(スープ調味料)
粉末味噌、ポークエキス、食塩、チキンエキス、粉末醤油、グラニュー糖、香辛料、ごま油、調味料の粉末原料を混合し小袋に充填・包装した。・・・(2)
(具材)
キャベツ、小松菜の野菜原料をトリミング、洗浄、カット、ボイル、冷却後ブドウ糖、乳糖をまぶし、トレイに充填、凍結乾燥して小袋に包装した。・・・(3)
(1),(2),(3)をポリプロピレン容器に入れて蓋をし、シュリンクフィルムで被ってインスタント食品を製造した。
【産業上の利用可能性】
【0037】
本発明に用いられる乾燥蒟蒻麺は約4分で湯戻りし、ほぐれもよく、蒟蒻の食感を維持しているので、ダイエット食品として好適である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
重量比で2.2〜2.8の蒟蒻粉と8〜14のデンプンから通常の手段により厚さ1.0mm〜2.0mmの平麺状の蒟蒻を成形した後、蒟蒻の組織を脆弱化し、次いで低糖化水飴を5〜15%含浸させ乾燥変性防止処理して脱水した後可食性乳化剤で付着防止処理して乾燥させて得た乾燥蒟蒻麺とスープ調味料ならびに具材を袋またはカップ状容器に包装したことを特徴とするインスタント食品。
【請求項2】
デンプンがタピオカ、ばれいしょ及びコーンスターチからなる群より選ばれる少なくとも1種であることを特徴とする請求項1に記載のインスタント食品。
【請求項3】
乳化剤がグリセリン脂肪酸エステルであることを特徴とする請求項1または2に記載のインスタント食品。
【請求項4】
スープ調味料が液状、粉末状または凍結乾燥ブロック状であることを特徴とする請求項1ないし請求項3のいずれか1項に記載のインスタント食品。
【請求項5】
具材が調理後レトルトパウチ化されたもの、野菜や畜肉、魚介などの凍結乾燥片またはその熱風乾燥片のいずれか1種もしくは複数の組み合わせからなるものであることを特徴とする請求項1ないし請求項4のいずれか1項に記載のインスタント食品。
【請求項6】
スープ調味料および具材が、スープ調味料と具材が一体となった凍結乾燥ブロック、スープ調味料と具材を充填したレトルトパウチまたは粉末スープと乾燥具材を混合一体化して充填した袋であることを特徴とする請求項1ないし請求項5のいずれか1項に記載のインスタント食品。