説明

インターホンデータ送出回路

【課題】データ信号を音声信号に重畳して送出するインターホン装置において、データ信号の発振開始時及び終了時にデータ音が可聴信号として聞こえてしまう。
【解決手段】インターホンのデータ信号を発振するCPUが、発振信号をフィルタリングするバンドパスフィルタの通過帯域である周波数に対して上または下へ逸脱した周波数にスイープして発振を開始及び終了し、バンドパスフィルタの通過帯域を利用してデータ信号のレベルを可変させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はデータ信号を音声信号に重畳して送出する技術に関するものであり、特にデータ信号の送出開始時および送出終了時にデータが音声増幅回路に混入した場合のデータ音を聞こえ難くすることに関する。
【背景技術】
【0002】
データ信号は親機CPUにより生成され、バンドパスフィルタにより高調波成分を取り除き、ベースバンドの音声信号とともに、多重回路により幹線に出力される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平3−179967号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従来のデータ送出回路では、データ信号の送出開始時および送出終了時音声信号に混入したデータ信号が可聴信号として通話に混入するとの欠点があった。
これを改善するためには、データ信号の立ち上がり及び立ち下がりの信号レベルを緩やかに可変することが提案されているが、増幅回路で制御することはコストや部品点数の問題から困難であった。
【0005】
これらの課題を解決するため、CPUから出力するデータの初めと終わりに周波数をバンドパスフィルタによって低減される周波数帯にスイープすることで、幹線のデータの立ち上がりと立下りレベルを滑らかにし、音声信号に混入したデータ信号が可聴信号として聞こえ難くすることができる。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するため、本発明によるインターホンデータ送出回路は、居室内の親機と玄関に設置された玄関子機とからなるインターホン装置において、親機にはデータ信号を発振する発振部と、通話音声を集音するマイクと、データ信号及び通話音声を多重化して玄関子機に送出する多重回路と、データ信号から不要な周波数成分を除去して多重回路にフィルタ後データ信号を送出するバンドパスフィルタを備え、発振部は、データ信号を発振開始時にバンドパスフィルタの通過帯域である周波数から上または下へ逸脱した周波数で発振を開始し、バンドパスフィルタの通過帯域である周波数へ順次スイープすることを特徴とする。
【0007】
また、本発明によるインターホンデータ送出回路は、居室内の親機と玄関に設置された玄関子機とからなるインターホン装置において、親機にはデータ信号を発振する発振部と、通話音声を集音するマイクと、データ信号及び通話音声を多重化して玄関子機に送出する多重回路と、データ信号から不要な周波数成分を除去して多重回路にフィルタ後データ信号を送出するバンドパスフィルタを備え、発振部は、バンドパスフィルタの通過帯域である周波数で発振を継続している状態からデータ信号を発振を終了する時、バンドパスフィルタの通過帯域である周波数から上または下へ逸脱した周波数へ順次スイープしてからデータ信号を発振を終了することを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
請求項1の発明によれば、データ信号の送信開始時に、データ信号の周波数をバンドパスフィルタによるフィルタ周波数の範囲外から規定周波数に向けて周波数を可変しながらスイープすることにより、音声信号と重畳されたデータ信号はレベルが緩やかに上昇するため、可聴信号として聞こえづらくなる。
【0009】
請求項2の発明によれば、データ信号の送信終了時に、データ信号の周波数を規定周波数からバンドパスフィルタによるフィルタ周波数の範囲外に向けて周波数を可変しながらスイープすることにより、音声信号と重畳されたデータ信号はレベルが緩やかに下降するため、可聴信号として聞こえづらくなる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】図1は本回路のブロック図を示したものである。
【図2】図2は本回路のデータ信号の波形及びレベルを示したものであり、図2(a)はCPUからバンドパスフィルタへのデータ信号の波形、図2(b)はバンドパスフィルタから多重回路へのデータ信号の波形を示した説明図である。なお、横軸が時間軸、縦軸が信号レベルである。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明によるインターホンデータ送出回路を適用した好ましい形態の実施例について、図面を参照して説明する。
【0012】
図1は本インターホンデータ送出回路を含むインターホン装置のブロック図であり、1は室内に設置され、後述する玄関子機から呼出を受けて通話や来訪者の画像表示を行なう親機、2は建物外部の玄関近傍に設置され、親機1に呼出信号を送り、親機1からの指示により親機1との通話路を確立し、来訪者を撮像する玄関子機である。
親機1には玄関子機2との通話を行なうためのスピーカ12、マイク13と、親機1の動作全体を制御するとともに、玄関子機2に対する制御信号を発振する親機CPU19と、玄関子機2で撮像された映像を表示するLCD15と、玄関子機2が駆動するための電力を供給する子機電源回路17と、親機CPU19で発振したデータ信号S1から不要な周波数成分を除去して後述する多重回路にフィルタ後データ信号S1’を送出するバンドパスフィルタ16と、フィルタ後データ信号S1’、マイク13で集音した音声S2、子機電源回路17からの電源を多重化して玄関子機2に送出する多重回路14とを備えている。また、玄関子機2には親機1で出画する映像を撮像するカメラ21と、親機1との通話を行なうために音声を集音するマイク23と、親機1との通話を行なうために音声S2を放音するスピーカ22と、フィルタ後データ信号S1’を受信して玄関子機2の動作全体を制御するとともに、親機1に対する応答信号を送出する子機CPU29と、カメラ21、マイク23、子機CPU29の信号を多重化して親機1に送出する多重回路24とを備えている。
【0013】
以下、動作について説明する。訪問客が玄関子機2の図示しない呼出ボタンにより呼出操作を行なう点については、従来の技術と同等であるため省略する。
【0014】
室内から親機1の図示しない操作部により通話開始操作を行なうと、親機CPU19はマイク13、子機電源回路17を能動とするとともに、子機CPU29に対してLCD15に出画する画像を撮像するためにカメラ21を能動とするにデータ信号S1を発振する。このとき、親機CPU19より発振したデータ信号S1の発振開始時の立ち上がりは図2(a)の左側に記載した立ち上がりのように高い周波数から順次規定の周波数に変化する。このデータ信号S1がバンドパスフィルタ16に入ると、立ち上がり部分の信号がバンドパスフィルタ16の通過帯域の外にあるために大きく減衰し、規定の周波数に変化するとともにバンドパスフィルタ16の減衰量が減少し、最終的に減衰量が最小値で安定するため、バンドパスフィルタ16の出力信号はフィルタ後データ信号S1’の左側に記載した立ち上がりのようにレベルがゆるやかに上昇する。これにより、フィルタ後データ信号S1’は可聴信号として聞こえ難いものとなる。
【0015】
また、親機CPU19より発振したデータ信号S1の発振終了時の立ち下がりは図2(a)の右側に記載した立ち下がりのように規定の周波数から順次高い周波数に変化する。このデータ信号S1がバンドパスフィルタ16に入ると、規定の周波数では減衰が最小値で安定しており、周波数が上昇するとともに立ち下がり部分の信号がバンドパスフィルタ16の通過帯域の外に向かうことからバンドパスフィルタ16の減衰量が増加するため、バンドパスフィルタ16の出力信号はフィルタ後データ信号S1’の右側に記載した立ち下がりのようにレベルがゆるやかに下降する。これにより、フィルタ後データ信号S1’は可聴信号として聞こえ難いものとなる。
【産業上の利用可能性】
【0016】
本実施例ではデータの周波数を立ち上がり時に高い周波数から変化させ、立下り時に高い周波数へ変化させる例で説明したが、同様にデータの周波数を立ち上がり・立下り時に低い周波数側に変化させても良い。
また、本実施例では戸建用TVドアホンに適用した例で説明したが、集合用インターホンシステムでもデータ信号を音声信号に重畳して送出するため、同様の効果を得ることができる。
また、本実施例ではトーンバーストを用いた例で説明したが、FSKその他のデータでも同様の効果を得ることができる。
【符号の説明】
【0017】
1 親機
2 玄関子機
13 マイク
14 多重回路
16 バンドパスフィルタ
19 発振部(CPU)
S1 データ信号
S2 音声

【特許請求の範囲】
【請求項1】
居室内の親機と玄関に設置された玄関子機とからなるインターホン装置において、前記親機にはデータ信号を発振する発振部と、通話音声を集音するマイクと、前記データ信号及び前記通話音声を多重化して前記玄関子機に送出する多重回路と、前記データ信号から不要な周波数成分を除去して多重回路にフィルタ後データ信号を送出するバンドパスフィルタを備え、前記発振部は、前記データ信号を発振開始時に前記バンドパスフィルタの通過帯域である周波数から上または下へ逸脱した周波数で発振を開始し、前記バンドパスフィルタの通過帯域である周波数へ順次スイープすることを特徴とするインターホンデータ送出回路。
【請求項2】
居室内の親機と玄関に設置された玄関子機とからなるインターホン装置において、前記親機にはデータ信号を発振する発振部と、通話音声を集音するマイクと、前記データ信号及び前記通話音声を多重化して前記玄関子機に送出する多重回路と、前記データ信号から不要な周波数成分を除去して多重回路にフィルタ後データ信号を送出するバンドパスフィルタを備え、前記発振部は、前記バンドパスフィルタの通過帯域である周波数で発振を継続している状態から前記データ信号を発振を終了する時、前記バンドパスフィルタの通過帯域である周波数から上または下へ逸脱した周波数へ順次スイープしてから前記データ信号を発振を終了することを特徴とするインターホンデータ送出回路。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2012−160804(P2012−160804A)
【公開日】平成24年8月23日(2012.8.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−17503(P2011−17503)
【出願日】平成23年1月31日(2011.1.31)
【出願人】(000100908)アイホン株式会社 (777)
【Fターム(参考)】