説明

インターホン装置

【課題】 ネットワーク上で伝送される映像信号の数が増加した場合でも、引き続き映像信号を停滞なく伝送でき、且つ伝送中の映像信号のフレームレートは途中で変化することがない。
【解決手段】 子機1にカメラ12の撮像映像信号から所定のフレームレートの映像信号を生成するデジタル映像信号生成部15と、伝送リンク確立時における映像信号伝送のフレームレートを決定するフレームレート設定部19と、伝送リンク数とフレームレートとを反比例するよう関連付けたフレームレート設定情報を記憶するフレームレート設定記憶部16とを設け、フレームレート設定部19はLAN上の映像信号の伝送リンク数をカウントし、カウントした伝送リンク数に応じたフレームレートをフレームレート設定記憶部16から読み取り、これから生成する映像信号のフレームレートを決定する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、呼び出し/通話機能及びカメラを備えた複数の子機と、通話機能及びカメラの撮像映像を表示するディスプレイを備えた複数の親機とを備え、機器間をLAN接続したインターホン装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、呼び出し/通話機能及びカメラを備えた複数の子機と、通話機能及びカメラ撮像映像を表示するディスプレイを備えた複数の親機とを備え、個々の機器がLAN接続されたインターホン装置がある。
このようなインターホン装置では、同時に複数の通話路が形成される状況が発生して複数の映像信号が同時に伝送される場合があり、このような場合でもLAN内のトラフィックの混雑により映像信号が停滞しないように、伝送数が増加した場合は伝送数に応じて個々の映像信号のフレームレートを減少させて対応させていた(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2003−134268号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記従来のインターホン装置においては、全ての映像信号のフレームレートが変化するため、伝送中の映像信号のフレームレート即ち現在ディスプレイに表示されている映像の状態も変化した。そのため、表示されている映像がLANの状態に応じて映像が粗くなったりぎこちない動きになる場合が発生し、利用者は不安に感じたり故障したと判断してしまう場合があった。
【0005】
そこで、本発明はこのような問題点に鑑み、LAN上で映像の伝送数が増加した場合でも、引き続き映像信号を停滞なく伝送でき、且つ伝送中の映像信号は途中でフレームレートが変化することがないインターホン装置を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決する為に、請求項1の発明は、呼出ボタン及び操作者を撮像するためのカメラを備えた複数の子機と、応答するための通話ボタン及びカメラの撮像映像を表示するディスプレイを備えた複数の親機とを有し、子機及び親機はLAN接続され、子機から親機を呼び出して通話する機能を備えたインターホン装置であって、全ての子機は、カメラの撮像映像信号から所定のフレームレートの映像信号を生成するデジタル映像信号生成部と、伝送リンク確立時における映像信号伝送のフレームレートを決定するフレームレート設定部と、伝送リンク数とフレームレートとを反比例するよう関連付けたフレームレート設定情報を記憶するフレームレート設定記憶部とを備え、フレームレート設定部は、LAN上の信号を受信してLAN上で伝送されている映像信号の伝送リンク数をカウントし、カウントした伝送リンク数に応じて、対応するフレームレートをフレームレート設定記憶部から読み取って新規の映像信号のフレームレートに設定し、デジタル映像信号生成部は、設定されたフレームレートでの映像信号を生成し、伝送が終了するまでフレームレートを変更しないことを特徴とする。
この構成によれば、子機に設けたフレームレート設定部がLAN上の映像信号を監視し、伝送される映像信号の数に応じて新規の映像信号のフレームレートを順次小さくするため、LAN上で映像の伝送リンク数が多い場合であっても、LANの伝送路容量の範囲内で全ての映像信号の伝送リンクを確保できる。そのため、同時に伝送される映像信号数が多数となっても映像が乱れたり映像が伝送できない事態を防ぐことができる。
そして、伝送中の映像信号のフレームレートは途中で変動しないため、親機は安定した状態で映像を表示でき、表示映像の状態が途中から変化して見辛くなったりすることで応答者に不快感を与えるようなことがない。
【0007】
請求項2の発明は、請求項1に記載の構成において、フレームレート設定部は、予め設定された所定時間の間にLAN上の映像信号の伝送リンク数をカウントし、所定時間が、フレームレート設定記憶部が記憶するフレームレートの下限値となる映像信号1フレームの送信時間最大間隔の1倍或いは2倍の何れかに設定された時間であることを特徴とする。
この構成によれば、設定されたフレームレートの下限値における1フレームの伝送時間最大間隔の1倍或いは2倍の時間で映像信号を検出するので、短時間でありながら確実に映像信号の使用中伝送リンク数をカウントすることができる。
【0008】
請求項3の発明は、請求項2に記載の構成において、フレームレート設定部は、呼出ボタンの操作を開始トリガとして伝送リンク数のカウントを開始することを特徴とする。
この構成によれば、フレームレート設定部は呼出ボタン押下を受けてカウントを開始するため、子機待受け時の消費電力を低減することができる。また、呼出ボタンが押されてから映像信号の伝送が開始されるまでの時間は僅かな待ち時間で済むため、親機において映像を表示するまでの時間が利用者にもたつき感を与えることがない。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、個々の子機に設けられたフレームレート設定部がLAN上の映像信号を監視し、伝送される映像信号の数に応じて新規の映像信号のフレームレートを順次小さくするため、LAN上で映像の伝送リンク数が多い場合であっても、LANの伝送路容量の範囲内で全ての映像信号の伝送リンクを確保できる。よって、同時に伝送される映像信号数が多数となっても映像が乱れたり映像が伝送できない事態を防ぐことができる。
そして、伝送中の映像信号のフレームレートは途中で変動しないため、親機は安定した状態で映像を表示でき、表示映像の状態が途中から変化して見辛くなったりすることで応答者に不快感を与えるようなことがない。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】本発明に係るインターホン装置の一例を示す構成図である。
【図2】図1の子機と親機の要部を回路ブロックで示した構成図である。
【図3】フレームレート設定記憶部が記憶するフレームレート設定情報の表図である。
【図4】フレームレート設定の流れを示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明を具体化した実施の形態を、図面を参照して詳細に説明する。図1は本発明に係るインターホン装置の一例を示す構成図であり、1は呼出ボタン11及び操作者を撮像するためのカメラ12を備えた子機、2は呼び出しに応答するための通話ボタン21及びカメラ12の撮像映像を表示するディスプレイ22を備えた親機、3は機器間を接続する信号ケーブルを集約するためのHUBである。
子機1及び親機2は複数設置され、各機器はそれぞれ固有のIPアドレスを有してLAN接続され、機器間の通信はIPプロトコルにより、データ信号、デジタル音声信号、デジタル映像信号の送受を時分割多重通信で行なうよう構成されている。
【0012】
図2は子機1及び親機2の要部をブロックで示している。図2に示すように、子機1は、呼出ボタン11、カメラ12に加えて、親機2との間で通話を実施するためのマイク13及びスピーカ14、カメラ12の撮像映像から所定のフレームレートの映像信号を生成するデジタル映像信号生成部15、映像信号の伝送リンク数とフレームレートの関係を記憶したフレームレート設定記憶部16、子機1全体を制御する子機CPU17、親機2と通信するためのインターフェース18等を備えている。
但し、子機CPU17は、自身が映像信号を送出する際のフレームレートを設定するフレームレート設定機能を備えている。即ちフレームレート設定部19を備えている。
【0013】
フレームレート設定記憶部16には、図3に示すような伝送リンク数とフレームレートを関連付けたフレームレート設定情報が記憶され、ネットワーク(LAN)上で映像信号の伝送がない伝送リンク数が0の状態で伝送される映像信号のフレームレート、即ち最初に形成される映像信号の伝送リンクは30フレーム毎秒のフレームレートで実施し、既に1本の伝送リンクが形成されている状態で次に形成される伝送リンクは15フレーム毎秒で実施するよう伝送リンク数とフレームレートの反比例する関係が設定され記憶されている。
この設定において、下限値は1フレーム毎秒、つまり1秒に1フレームの映像信号の送信を行なう設定となっている。そして、全ての子機1のフレームレート設定記憶部16には同一のデータが記憶されている。
【0014】
尚、ここでは、例えばVGA画像で100フレーム毎秒程度の通信容量が確保されているLANを想定しており、伝送リンク数とフレームレートの関係を図3に示すよう設定することで、例えば7本の映像信号が同時に伝送された場合でも、良好に映像回線を確保できる。
【0015】
親機2は、通話ボタン21、ディスプレイ22に加えて、子機1或いは他の親機2との間で通話を実施するためのマイク23及びスピーカ24、各種設定操作を行う操作部25、子機1から伝送された映像信号を受信してディスプレイ22で表示するための映像を生成する映像受信部26、親機2全体を制御する親機CPU27、子機1や他の親機2と通信するためのインターフェース28等を備えている。
【0016】
以下、上記インターホン装置の動作を説明する。図4は子機1から親機2に伝送される映像信号のフレームレートの設定の流れを示すフローチャートであり、このフローを基に説明する。
まず、呼び出し/通話動作にない待受状態にある子機1は、子機CPU17がスリープモード状態にあり、HUB3を介した親機2からのデータ信号等の受信、或いは呼出ボタン11操作による呼出信号を検出する機能以外の動作を停止している。
この状態で、呼出者により子機1の呼出ボタン11が操作されると(S1でYES)、フレームレート設定部19である子機CPU17は、スリープモードを解除して所定の時間、例えば2秒間、他の子機1からLAN上に伝送されている全ての信号(データ)を受信して伝送リンク数をカウントする(S2)。
【0017】
また子機CPU17は、子機CPU17が記憶している親機IPアドレスを読み出し、このIPアドレスに対して起動信号を送信する。更に、スピーカ14から呼出確認音を鳴動させ、マイク13を能動として集音した音声を親機2へ送信可能とすると共に、カメラ12を起動して撮像を開始させる。
【0018】
所定の時間(2秒)に亘りLAN上の映像信号の伝送リンク数をカウントする(S3でYES)と、子機CPU17は、フレームレート設定記憶部16から対応するフレームレートを読み取り、デジタル映像信号生成部15へ通知する。
具体的に、他の子機1から送信されている映像信号の伝送リンク数が2件であると把握したら、自子機から送信する映像信号は、フレームレート設定記憶部16の情報から8フレーム毎秒とすることを決定(S4)する。そして、このデータでデジタル映像信号を生成するようデジタル映像信号生成部15に指示を出す(S5)。デジタル映像信号生成部15は、カメラ12から伝送された映像信号から8フレーム毎秒のフレームレートのデジタル映像信号を生成して出力する。
こうして子機CPU17は、生成した映像信号とマイク13の音声信号とを映像開始信号とともに呼出先の親機2のIPアドレスに対してインターフェース18を介して送信する。
【0019】
一方、HUB3を介して起動信号を受信した親機2は、親機CPU27が呼出音及びマイク13が集音した音声信号をスピーカ24から鳴動させると共に、子機1から送信された映像信号を映像受信部26でディスプレイ22で表示するための映像を生成してディスプレイ22に表示させる。
その後、呼び出しに気づいた応答者により通話ボタン21が押下されると、子機1と親機2との間で通話路が形成され、応答者はカメラ12の撮像映像を見ながら呼出者と通話が可能となる。
【0020】
このように、フレームレート設定部19がネットワーク上の映像信号を監視し、伝送される映像信号の数の増加に応じて新規の映像信号のフレームレートを順次小さくするため、ネットワーク上で映像の伝送リンク数が多い場合であっても、ネットワークの伝送路容量の範囲内で全ての映像信号の伝送リンクを確保できる。よって、同時に伝送される映像信号数が多数となっても映像が乱れたり映像が伝送できない事態を防ぐことができる。
そして、伝送中の映像信号のフレームレートは途中で変動しないため、親機2は安定した状態で映像を表示でき、表示映像の状態が途中から変化して見辛くなったりすることで応答者に不快感を与えるようなことがない。
特に、使用頻度が低いインターホン装置においては、殆どの場合は30フレーム毎秒の高画質の映像を伝送できる。そして、低頻度ではあるが複数の映像信号が同時に伝送されるような状況が発生しても、確実に映像信号を伝送することができる。
また、設定されたフレームレートの下限値における1フレームの伝送時間間隔1秒に対して2倍の時間で映像信号を検出するので、短時間でありながら確実に伝送リンクの数を検出することができる。
更に、呼出ボタン11の押下を受けて伝送リンク数の検出を開始するため、待受け時の消費電力を低減することができるし、伝送リンク数を把握する時間は短時間であるため、呼出ボタン11が押されてから映像信号の伝送が開始されるまでの時間は僅かな待ち時間で済み、親機2において映像を表示するまでの時間が利用者にもたつき感を与えることがない。
【0021】
尚、上記実施形態では伝送リンク数のカウント時間をフレームレートの下限値1秒の2倍としているが、フレームレートの下限値と同じ時間(実施例では1秒)としても伝送リンク数のカウントを実施でき、フレームレートの下限値或いはそれより僅かに長い時間をかけてカウントすれば良い。
また、フレームレート設定記憶部16が記憶する伝送リンク数とフレームレートの関連付けは、図3では伝送リンク数7までとなっている、即ち子機1を7台以上、且つ親機2を7台設置した場合を想定しているが、設置する子機1が例えば5台の場合は記憶する伝送リンク数の最大値は5で良い。
更に、最初に形成される伝送リンクのフレームレートを30フレーム毎秒としているが、一例であって適宜変更できる。
【符号の説明】
【0022】
1・・子機、2・・親機、3・・HUB、11・・呼出ボタン、12・・カメラ、15・・デジタル映像信号生成部、16・・フレームレート設定記憶部、17・・子機CPU、19・・フレームレート設定部、21・・通話ボタン、22・・ディスプレイ、26・・映像受信部、27・・親機CPU。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
呼出ボタン及び操作者を撮像するためのカメラを備えた複数の子機と、応答するための通話ボタン及び前記カメラの撮像映像を表示するディスプレイを備えた複数の親機とを有し、前記子機及び前記親機はLAN接続され、前記子機から前記親機を呼び出して通話する機能を備えたインターホン装置であって、
前記子機は、前記カメラの撮像映像信号から所定のフレームレートの映像信号を生成するデジタル映像信号生成部と、伝送リンク確立時における映像信号伝送のフレームレートを決定するフレームレート設定部と、伝送リンク数とフレームレートとを反比例するよう関連付けたフレームレート設定情報を記憶するフレームレート設定記憶部とを備え、
前記フレームレート設定部は、前記LAN上の信号を受信して前記LAN上で伝送されている映像信号の伝送リンク数をカウントし、カウントした伝送リンク数に応じて、対応するフレームレートを前記フレームレート設定記憶部から読み取って新規の映像信号のフレームレートに設定し、
前記デジタル映像信号生成部は、設定されたフレームレートでの映像信号を生成し、伝送が終了するまでフレームレートを変更しないことを特徴とするインターホン装置。
【請求項2】
前記フレームレート設定部は、予め設定された所定時間の間にLAN上の映像信号の伝送リンク数をカウントし、
前記所定時間が、前記フレームレート設定記憶部が記憶するフレームレートの下限値となる映像信号1フレームの送信時間最大間隔の1倍或いは2倍の何れかに設定された時間であることを特徴とする請求項1記載のインターホン装置。
【請求項3】
前記フレームレート設定部は、前記呼出ボタンの操作を開始トリガとして伝送リンク数のカウントを開始することを特徴とする請求項2記載のインターホン装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2013−46233(P2013−46233A)
【公開日】平成25年3月4日(2013.3.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−182755(P2011−182755)
【出願日】平成23年8月24日(2011.8.24)
【出願人】(000100908)アイホン株式会社 (777)
【Fターム(参考)】