説明

インナーウェア

【課題】 メタボリックシンドローム対策として、エネルギー代謝促進と筋力アップに有効であり、痩身性や審美性に優れ、身体補整効果のあるインナーウェアを提供する。
【解決手段】 スパッツ100は、ジャコビー線部15に沿い、パンティ部10の左右の大転子部16をそれぞれ通り、左右の太もも21の後面をそれぞれ経由して、左右の太もも21の内側上顆部21aにそれぞれ延在する第1の強伸縮部1と、パンティ部10の左右の腸骨稜部17から、パンティ部10の臍点部18の下方で交差し、左右の太もも21の前面をそれぞれ経由して、左右の太もも21の外側上顆部21bまでそれぞれ延在する第2の強伸縮部2と、臀溝部19に沿い、左右の太もも21の外側面及び前面をそれぞれ経由して、左右の太もも21の内側上顆部21aにそれぞれ延在する第3の強伸縮部3と、を有し、第1の強伸縮部1、第2の強伸縮部2及び第3の強伸縮部3の伸縮抵抗が、ベース生地40の伸縮抵抗と比較して大きい。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、着用者のエネルギー消費量を向上させることができるインナーウェアに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、様々な分野でメタボリックシンドロームの対策が提案されている。このメタボリックシンドローム対策としては、日常生活に運動を取り入れることが最も有効な手段であるが、多忙な生活の中で十分な運動時間がとれない場合が多いことも実状である。このため、日常生活の中に軽運動を取り入れ、これを効果的に行うことが重要であり、エネルギー消費量を増加させるための効果的なテーピング方法を提案する必要がある。
【0003】
また、スポーツにおいては、肉離れや靭帯又は腱の損傷を予防するために、しばしば、運動者に対してテーピングが施される。しかし、テーピングを施すことは、テーピング用テープの粘着による皮膚障害が生じることや、テーピングを自分自身で行うことが困難であるという問題点があった。
【0004】
これに対し、近年では、伸長抵抗の小さい弱伸縮性素材をベース生地とし、強伸縮性の生地をテープ状に配したタイツ又はスパッツや、編組織による伸縮性の違いを利用したタイツ等が開発されている。
【0005】
例えば、従来の運動用スパッツは、踝の上方から、ウエストラインまでの長さを有し、丸編地からなる運動用のスパッツであって、運動に必要な筋肉のサポートの要求に応じて、所定部分に比較的緊締力の強い部分とそれ以外の比較的緊締力の弱い部分がパターン状に設けられており、比較的緊締力の強い部分が、カットボス編手法によって形成された部分である(例えば、特許文献1参照)。
【0006】
また、従来のインナーウェアは、ウエスト・バンドから、パンティ部の外側面を通り、大腿部の前面、膝部の内側面及び下腿部にかけて延在させる第1の強締付領域と、ウエスト・バンドから、パンティ部の外側面を通り、大腿部の外側面、膝部の外側面及び下腿部にかけて延在させる第2の強締付領域と、第1の強締付領域及び第2の強締付領域を、膝部に対して下腿部側で係止させる口ゴムと、を有し、第2の強締付領域が、ベース生地部より伸縮抵抗が大きく、且つ第1の強締付領域より伸縮抵抗が小さい(例えば、特許文献2参照)。
【0007】
また、従来のスポーツウェアは、伸縮性を有する素材で形成したスポーツ用の衣服に、長さ方向に伸縮しにくいか若しくは殆ど伸縮しない伸縮阻止ライン部を形成し、人体にテープを巻き筋肉,関節等の動きを規制して挫傷,打撲,肉離れ,捻挫,骨折等を防止するテーピング効果と同様な効果を生じ得る方向に前記伸縮阻止ライン部を形成せしめた(例えば、特許文献3参照)。
【0008】
さらに、従来のスポーツウェアは、伸縮性を有する素材で形成したスポーツ用の衣服に、長さ方向に周囲の前記伸縮素材に比して伸縮しにくいか若しくは殆ど伸縮しない線状の伸縮抑制ライン部と帯状の伸縮抑制ライン部との双方を並設形成し、人体にテープを巻き筋肉,関節等の動きを規制して挫傷,打撲,肉離れ,捻挫,骨折等を防止するテーピング効果と同様な効果を生じ得る方向に前記伸縮抑制ライン部を形成せしめた(例えば、特許文献4参照)。
【0009】
また、従来のテーピング機能タイツは、人体のウエストラインから踝までの下半身の体表に密着して着用する伸縮素材によって構成したタイツ型を呈する。体側該当部と膝部内側該当部に、高伸縮強度を持った素材からなる脇側部材と内側部材を切り替え配置する。脇側部材と内側部材を膝位置の下方で山形に対向して頂部を突き合わせ縫合連結して膝部テーピング構造を構成する。下腿部の脹ら脛位置下方位置両側に、高伸縮強度を持った素材からなる脹ら脛部材を切り替え配置し、両脹ら脛部材を脹ら脛位置の下方で近接対向して脹ら脛部テーピング構造を構成し、スポーツテーピング機能を持たせたことを特徴とするものである(例えば、特許文献5参照)。
【0010】
また、従来のタイツは、着用時に伸縮性を有するタイツであって、高い伸縮性を有する伸縮部と、伸縮部よりも伸縮性が低い低伸縮部とから構成し、低伸縮部は、ウエスト部に環状に形成された環状部と、大腿部の外側から膝蓋部より上を経由して下腿部内側に至る位置に設けられた第一帯状部と、大腿部の内側から膝蓋部より上で第一帯状部と交差し、下腿部の外側に至る位置に設けられた第二帯状部とからなり、第一帯状部は、第二帯状部よりも伸縮性が低くなるように形成し、環状部に第一帯状部及び第二帯状部が接続された構成とする(例えば、特許文献6参照)。
【0011】
さらに、従来のタイツは、腰部から前足首部までを覆う前部分と、後腰部下端から後足首部までを覆う後部分と、側腰部の大転子点から外踝部までを覆う外側部分と、外側部分の上端部から後腰部側に一体に突出し後腰部を覆う後腰部持出し部分と、股底部から内踝部までを覆う内側部分と、外膝部をサポートする外膝サポート部分と、内膝部をサポートする内膝サポート部分と、後腰部から縫工筋および内転筋群を覆い内膝サポート部分の上方位置まで延びる縫工筋および内転筋群サポート部分を有し、外側部分、後腰部持出し部分、各サポート部分は、他の部分よりも伸びが強い強伸縮素材により形成されている(例えば、特許文献7参照)。
【0012】
また、従来の運動支援タイツは、着用者の下半身の動作を支援するタイツにおいて、全体として伸縮性を有する素材によって成形され、締め付け力の強い強領域と締め付け力の弱い弱領域とを有する。そして、強領域は、少なくとも、着用者の下腹部に相当する第1領域と、背腰部に相当する第2領域とを含む。好ましくは、前記第2領域は、着用者の背腰部から骨盤まで延びる構造とする(例えば、特許文献8参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0013】
【特許文献1】特開2001−214303号公報
【特許文献2】特開2008−163523号公報
【特許文献3】特開平08−081807号公報
【特許文献4】特開平09−241906号公報
【特許文献5】特開平11−012814号公報
【特許文献6】特開2004−232157号公報
【特許文献7】特開2006−207056号公報
【特許文献8】特開2004−238789号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
しかしながら、従来の運動用スパッツ、インナーウェア及びスポーツウェアは、着用者の膝や腰の損傷を予防することを目的とし、従来のテーピング機能タイツ、タイツ及び運動支援タイツは、着用者の下半身をサポートし、運動機能性を向上させることと目的としており、着用者に対して積極的に負荷を掛けるものではなく、メタボリックシンドローム対策として有効ではないという課題がある。特に、インナーウェアには、痩身性や審美性が訴求され、身体補整効果をも求められている。
【0015】
この発明は、上述のような課題を解決するためになされたもので、メタボリックシンドローム対策として、エネルギー代謝促進と筋力アップに有効であり、痩身性や審美性に優れ、身体補整効果のあるインナーウェアを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0016】
この発明に係るインナーウェアにおいては、パンティ部の後面にある着用者のジャコビー線に対応する部分に沿い、パンティ部の左右の外側面にある着用者の大転子に対応する部分をそれぞれ通り、左右の太ももの後面をそれぞれ経由して、左右の太ももの内側面にある着用者の内側上顆に対応する部分にそれぞれ延在する第1の強伸縮部と、パンティ部の左右の外側面にある着用者の腸骨稜に対応する部分から、パンティ部の前面にある着用者の臍点に対応する部分の下方で交差し、左右の太ももの前面をそれぞれ経由して、左右の太ももの外側面にある着用者の外側上顆に対応する部分までそれぞれ延在する第2の強伸縮部と、パンティ部の後面及び太ももの後面間の境界近傍にある着用者の臀溝に対応する部分に沿い、左右の太ももの外側面及び前面をそれぞれ経由して、左右の太ももの内側面にある着用者の内側上顆に対応する部分にそれぞれ延在する第3の強伸縮部と、を有し、第1の強伸縮部、第2の強伸縮部及び第3の強伸縮部の伸縮抵抗が、ベース生地の伸縮抵抗と比較して大きいものである。
【発明の効果】
【0017】
この発明に係るインナーウェアにおいては、パンティ部の後面にある着用者のジャコビー線に対応する部分に沿い、パンティ部の左右の外側面にある着用者の大転子に対応する部分をそれぞれ通り、左右の太ももの後面をそれぞれ経由して、左右の太ももの内側面にある着用者の内側上顆に対応する部分にそれぞれ延在する第1の強伸縮部と、パンティ部の左右の外側面にある着用者の腸骨稜に対応する部分から、パンティ部の前面にある着用者の臍点に対応する部分の下方で交差し、左右の太ももの前面をそれぞれ経由して、左右の太ももの外側面にある着用者の外側上顆に対応する部分までそれぞれ延在する第2の強伸縮部と、パンティ部の後面及び太ももの後面間の境界近傍にある着用者の臀溝に対応する部分に沿い、左右の太ももの外側面及び前面をそれぞれ経由して、左右の太ももの内側面にある着用者の内側上顆に対応する部分にそれぞれ延在する第3の強伸縮部と、を有し、第1の強伸縮部、第2の強伸縮部及び第3の強伸縮部の伸縮抵抗が、ベース生地の伸縮抵抗と比較して大きいことにより、太ももの後面にある第1の強伸縮部が、着用者による踏み出しやもも上げの際に運動方向に対して抵抗になると共に、太ももの前面で交差して配設される第2の強伸縮部及び第3の強伸縮部が、着用者による蹴り出しや太ももを高く上げる際に運動方向に対して抵抗になる。すなわち、この発明に係るインナーウェアを着用することにより、着用者は、日常生活の中に軽運動を取り入れることで、エネルギー消費量を増加させて、メタボリックシンドローム対策を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】(a)は第1の実施形態に係るスパッツを示す正面図であり、(b)は図1(a)に示すスパッツの背面図である。
【図2】(a)は図1(a)に示すスパッツの右側面図であり、図1(a)に示すスパッツの矢視A−A線の断面図である。
【図3】(a)は下半身の骨格の名称を説明するための前面側の骨格図であり、(b)は下半身の骨格の名称を説明するための後面側の骨格図である。
【図4】図1に示す第1の強伸縮部、第2の強伸縮部及び第3の強伸縮部の編組織の概略構成図である。
【図5】(a)は長さ方向におけるテーピング用テープ及びスパッツ素材の伸長特性を示したグラフであり、(b)は幅方向におけるテーピング用テープ及びスパッツ素材の伸長特性を示したグラフである。
【図6】(a)は筋電実験の手順を説明するための説明図であり、(b)は図6(a)に示す運動形態を説明するための説明図であり、(c)は呼吸代謝及び心拍測定の手順を説明するための説明図である。
【図7】図7は筋電位の測定点を説明するための説明図である。
【図8】(a)は図6(b)に示す運動1、運動2及び運動3のうち合計36秒間の筋電位を積分した値IEMGを示すグラフであり、(b)は図6(b)に示す運動1、運動2及び運動3のうち合計36秒間におけるIEMGの各筋のNからの差ΔIEMGを示すグラフであり、(c)は歩行時における各筋のΔIEMGを示すグラフである。
【図9】(a)は図6(b)に示す運動1−1(6秒)と運動1−3(6秒)との計12秒間における各筋のΔIEMGを示すグラフであり、(b)は図6(b)に示す運動2−1(6秒)と運動2−3(6秒)との計12秒間における各筋のΔIEMGを示すグラフであり、(c)は図6(b)に示す運動3−1(6秒)と運動3−3(6秒)との計12秒間における各筋のΔIEMGを示すグラフである。
【図10】(a)は各運動における安静時からの心拍数の差ΔHRを示すグラフであり、(b)は各運動における酸素摂取量VO2を示すグラフであり、(c)は各運動におけるエネルギー消費量を示すグラフである。
【図11】(a)は第1の実施形態に係るロングガードルを示す正面図であり、(b)は図11(a)に示すロングガードルの背面図である。
【図12】(a)は第2の実施形態に係るタイツを示す正面図であり、(b)は図12(a)に示すタイツの背面図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
(本発明の第1の実施形態)
インナーウェアは、少なくともパンティ部及びレッグ部における太ももを有し、弱伸縮性素材をベース生地としてインナーウェアの着用者の体表に密着される。例えば、着用者の膝上まで丈があるロングガードル、着用者の腰から足先まで密着して包むタイツ、又は伸縮性のある素材で作った着用者の脚に密着する長いパンツ状のスパッツ若しくはスポーツタイツなどが挙げられる。なお、この第1の実施形態においては、図1乃至図4において、インナーウェアとしてスパッツ100を用いて説明する。
【0020】
スパッツ100は、パンティ部10及びレッグ部20の二部に大別される。
パンティ部10は、上端である腰天11のゴムテープの部分であるウエスト・バンド12と、着用者の腰を覆う部分であるパンティ13と、着用者の股の添え生地であるガセット14とを備え、腰天11から身部切替えまでの部分の総称である。
【0021】
また、レッグ部20は、着用者の大腿部に対応する部分である太もも21と、着用者の下腿に対応する部分である下腿部22と、レッグ部20の下端である裾23のゴムテープの部分である口ゴム24と、を備え、太もも21から裾23までの部分の総称である。
【0022】
なお、スパッツ100は、既存の靴下編機により筒状に編んだ一対の編地を用いて、パンティ13に相当する部分に切れ目を入れて裁断縁同士を付き合わせて縫着して一体化したものであり、後述する第1の強伸縮部1、第2の強伸縮部2及び第3の強伸縮部3以外は周知の手段により編み上げたものである。また、インナーウェアにおける、第1の強伸縮部1、第2の強伸縮部2、第3の強伸縮部3、ウエスト・バンド12、ガセット14及び口ゴム24を除いた部分であるベース生地40は、伸縮性のある編地であり、平編、タック編、浮き編又はパイル編などで編成されてなる構成である。
【0023】
第1の強伸縮部1は、パンティ部10の後面にある着用者のジャコビー線415(左右の腸骨稜417の最高点を結ぶ線)に対応する部分(以下、ジャコビー線部15と称す)に沿い、パンティ部10の左右の外側面にある着用者の大転子416に対応する部分(以下、大転子部16と称す)をそれぞれ通り、左右の太もも21の後面をそれぞれ経由して、左右の太もも21の内側面にある着用者の内側上顆421aに対応する部分(以下、内側上顆部21aと称す)にそれぞれ延在する。
【0024】
また、第1の強伸縮部1は、左右の太もも21の内側面にある着用者の内側上顆421aに対応する部分(内側上顆部21a)から、左右の下腿部22の内側面にある着用者の内側顆422aに対応する部分(以下、内側顆部22aと称す)をそれぞれ通り、左右の下腿部22の内側面にある着用者の内果422bに対応する部分(以下、内果部22bと称す)までそれぞれ延在する。
【0025】
特に、第1の強伸縮部1は、ジャコビー線部15における上縁をジャコビー線415の高さに合わせるように、パンティ部10の後面で周方向Hに略直線状に配設され(図1(b)参照)、大転子部16において大転子416を覆うように、パンティ部10及び太もも21の左右の外側面で略弓形に配設される(図2(a)参照)。また、第1の強伸縮部1は、内側上顆部21aを内側上顆421aに合わせるように、左右の太もも21の後面で斜め方向に略直線状に配設され(図1(b)参照)、内側顆部22aにおいて内側顆422aを覆い、内果部22bにおいて内果422bを覆うように、左右の下腿部22の内側面で長さ方向Lのやや前方に略直線状に配設される(図2(b)参照)。また、第1の強伸縮部1は、図2(b)に示すように、口ゴム24まで延在して口ゴム24で係止されている。
【0026】
このように、第1の強伸縮部1は、太もも21の後面において、太もも21の外側面から内側面にかけて張架されることにより、着用者による踏み出しやもも上げの際に運動方向に対して抵抗になる。
【0027】
第2の強伸縮部2は、パンティ部10の左右の外側面にある着用者の腸骨稜417に対応する部分(以下、腸骨稜部17と称す)から、パンティ部10の前面にある着用者の臍点に対応する部分(以下、臍点部18と称す)の下方で交差し、左右の太もも21の前面をそれぞれ経由して、左右の太もも21の外側面にある着用者の外側上顆421bに対応する部分(以下、外側上顆部21bと称す)までそれぞれ延在する。
【0028】
また、第2の強伸縮部2は、左右の太もも21の外側面にある着用者の外側上顆421bに対応する部分(外側上顆部21b)から、左右の下腿部22の外側面にある着用者の外側顆422cに対応する部分(以下、外側顆部22cと称す)をそれぞれ通り、左右の下腿部22の外側面にある着用者の外果422dに対応する部分(以下、外果部22dと称す)までそれぞれ延在する。
【0029】
特に、第2の強伸縮部2は、左右の腸骨稜部17を始点とし、着用者の腹部を圧迫しないように、パンティ部10の前面における臍点部18(臍点、臍位)の下方で交差して外側上顆部21bまでそれぞれ延在する(図1(a)参照)。また、第2の強伸縮部2は、外側上顆部21bにおいて外側上顆421bを覆い、外側顆部22cにおいて外側顆422cを覆い、外果部22dにおいて外果422dを覆うように、左右の下腿部22の外側面で長さ方向Lに略直線状に配設される(図2(a)参照)。また、第2の強伸縮部2は、図2(a)に示すように、口ゴム24まで延在して口ゴム24で係止されている。
【0030】
このように、第1の強伸縮部1が着用者の腰部におけるジャコビー線415に沿って配設され、第2の強伸縮部2が第1の強伸縮部1に連結し着用者の下腹部における臍点の下方で交差して配設されることにより、着用者の腰部を安定させることができる。また、下腹部の出っ張りを支持あるいは抑制する整容効果をもつ。さらに、第1の強伸縮部1及び第2の強伸縮部2は、スパッツ100の周方向Hに対してそれぞれ周回していないことにより、フープテンション(周方向応力)が発生せず、着用者の腹部を圧迫しないために、着用者の健康を害しないものである。
【0031】
第3の強伸縮部3は、パンティ部10の後面及び太もも21の後面間の境界近傍にある着用者の臀溝に対応する部分(以下、臀溝部19と称す)に沿い、左右の太もも21の外側面及び前面をそれぞれ経由して、左右の太もも21の内側面にある着用者の内側上顆421aに対応する部分(内側上顆部21a)にそれぞれ延在する。
【0032】
また、第3の強伸縮部3は、左右の太もも21の内側面にある着用者の内側上顆421aに対応する部分(内側上顆部21a)から、左右の下腿部22の内側面にある着用者の内側顆422aに対応する部分(内側顆部22a)をそれぞれ通り、左右の下腿部22の内側面にある着用者の内果422bに対応する部分(内果部22b)までそれぞれ延在する。なお、第3の強伸縮部3は、左右の太もも21の内側面にある内側上顆部21aから、左右の下腿部22の内側面にある内側顆部22aの下方までそれぞれ延在し、内側顆部22aの下方から左右の下腿部22の内側面にある内果部22bまでは、第1の強伸縮部1と重畳させないように、第3の強伸縮部3を配設させなくてもよい。
【0033】
特に、第3の強伸縮部3は、大腿最大位における太もも21の内側面側から着用者の臀部を引き上げるように、左右の臀溝部19における上縁を臀溝に合わせており(図1(b)参照)、左右の太もも21の前面で第2の強伸縮部2と交差するように、左右の太もも21の前面で斜め方向に略直線状に配設される(図1(a)参照)。また、第3の強伸縮部3は、内側上顆部21aにおいて内側上顆421aを覆い、内側顆部22aにおいて内側顆422aを覆い、内果部22bにおいて内果422bを覆うように、左右の下腿部22の内側面で長さ方向Lのやや後方に略直線状に配設される(図2(b)参照)。また、第3の強伸縮部3は、図2(b)に示すように、口ゴム24まで延在して口ゴム24で係止されている。
【0034】
このように、第3の強伸縮部3は、着用者の臀溝に沿って配設されることにより、ヒップアップの補整効果を具備する。また、第2の強伸縮部2及び第3の強伸縮部3は、太もも21の前面において、交差して張架されることにより、着用者による蹴り出しの際に運動方向に対して抵抗になる。
【0035】
また、第1の強伸縮部1、第2の強伸縮部2及び第3の強伸縮部3は、着用者の膝蓋骨421cに対応する部分(以下、膝蓋骨部21cと称す)を挟持するように、膝蓋骨部21cがある太もも21の外側面及び内側面に配設されることにより、着用者の膝関節の動作を安定させることができる。また、第1の強伸縮部1、第2の強伸縮部2及び第3の強伸縮部3は、下腿部22の外側面及び内側面に配設されることにより、着用者の下腿の動きを安定させることができる。
【0036】
特に、第1の強伸縮部1、第2の強伸縮部2及び第3の強伸縮部3の延在方向(流れ)については、着用者の脚の動きに対して大きな寸法変化が生じるように配設しており、第1の強伸縮部1、第2の強伸縮部2及び第3の強伸縮部3の伸長抵抗が、着用者のエネルギー消費量を増加させることを意図している。
【0037】
なお、第1の強伸縮部1、第2の強伸縮部2及び第3の強伸縮部3は、素材に伸長を与えない状態から一定の伸長を与えた場合の張力をFとし、インナーウェアの長さ方向Lにおける第1の強伸縮部1の張力FL1、インナーウェアの長さ方向Lにおける第2の強伸縮部2の張力FL2、インナーウェアの長さ方向Lにおける第3の強伸縮部3の張力FL3、インナーウェアの長さ方向Lにおけるベース生地40の張力FL(B)とすると、第1の強伸縮部1、第2の強伸縮部2及び第3の強伸縮部3がベース生地40と比較して強い締め付け力を持つような、FL1>FL(B),FL2>FL(B),FL3>FL(B)という大小関係を持たせる。
【0038】
また、本実施形態に係るスパッツ100においては、第1の強伸縮部1、第2の強伸縮部2及び第3の強伸縮部3として、強伸縮素材である編布をスパッツ100のベース生地40に縫合して貼付しているが、前述した大小関係を持たせることができるのであれば、縫製に限られるものではなく、例えば、ベース生地40と第1の強伸縮部1、第2の強伸縮部2及び第3の強伸縮部3とを一体として丸編によって編成してよい。
【0039】
具体的には、第1の強伸縮部1、第2の強伸縮部2及び第3の強伸縮部3に添え糸編とゴム編(リブ編、あぜ編)とを併用して編地とすることが考えられる。なお、添え糸編は、図4に示すように、ゴム編の地編糸9aの他に他の編糸9bを添えて給糸することで、第1の強伸縮部1、第2の強伸縮部2及び第3の強伸縮部3の長さ方向の伸縮を適度に抑えており、第1の強伸縮部1、第2の強伸縮部2及び第3の強伸縮部3とベース生地40との境界において他の編糸9bをカットしている(以下、カットボスと称す)。
ここで、ループのよこの列をコースC、たての行をウェールWとする。
【0040】
図4に示すように、たて方向に表目のウェールと裏目のウェールとが交互に並ぶ編み目で、1ウェールごとに表目と裏目とを配列したものを1×1ゴム編としているが、2×1ゴム編、3×2ゴム編など多数の変化ゴム編としてもよい。また、図示しないパール編がたて方向に対して著しい伸縮性があるのに対して、この編地はよこ方向に対して伸縮性がある。図4において、糸の繋がりが理解しやすいように、地編糸9a(他の編糸9b)を1コースおきに実線と破線とで図示している。なお、第1の強伸縮部1、第2の強伸縮部2及び第3の強伸縮部3は長さ方向の伸縮抵抗が幅方向の伸縮抵抗と比較して大きいのであれば、この編組織や添え糸に限られるものでもなく、例えば、1ウェールWおきに編地の間に編み目を作らずにゴム糸を編み込んだ挿入編を施してもよい。
【0041】
これに対し、ポリエステル系、ポリアミド系、ポリウレタン系、ポリエチレン系(高密度、低密度)又はエチレン酢酸ビニール系などの種類の樹脂を含浸させた糸によって、第1の強伸縮部1、第2の強伸縮部2及び第3の強伸縮部3の編地を編成し構成することで、ゴム編、添え糸編又は挿入編による編組織を用いることなく、スパッツ100の長さ方向Lの伸び率を縮小させることができ、同様の作用効果を奏することができる。
【0042】
また、第1の強伸縮部1、第2の強伸縮部2及び第3の強伸縮部3の編地に、伸びを防ぐための細幅の布地などでできたテープを縫付けることや、セロファン又はビニールなどのテープに接着剤を塗った粘着テープを貼り付けることでも、ゴム編、添え糸編又は挿入編による編組織を用いることなく、スパッツ100の長さ方向Lの伸び率を縮小させることができる。
【0043】
また、第1の強伸縮部1、第2の強伸縮部2及び第3の強伸縮部3の編地に、液体の樹脂を塗り、樹脂が空気に触れ酸化して固着させることや、薄膜状の樹脂を取り付けることや、液体の樹脂を噴霧器などで吹着け、樹脂が空気に触れ酸化して固着させることでも、ゴム編、添え糸編又は挿入編による編組織を用いることなく、スパッツ100の長さ方向Lの伸び率を縮小させることができる。
【0044】
また、第1の強伸縮部1、第2の強伸縮部2及び第3の強伸縮部3の編地を、接着剤を使用して樹脂加工を施す接着芯地としてもよい。この場合には、ポリエステル系、ポリアミド系、ポリウレタン系、ポリエチレン系(高密度、低密度)又はエチレン酢酸ビニル系などの種類の樹脂からなる接着樹脂を、ドット加工、パウダー加工、くもの巣加工又はフィルム加工などの加工方法によって、編地に塗布し、フラット型プレス機、ローラー型プレス機などによって加熱及び加圧処理を施すことで、編地に樹脂を固着させることができる。
【0045】
なお、第1の強伸縮部1、第2の強伸縮部2及び第3の強伸縮部3をそれぞれ延在させているだけのスパッツ100では、着用者の体表とスパッツ100とのずれにより、第1の強伸縮部1、第2の強伸縮部2及び第3の強伸縮部3による効果が低減する。このため、本実施形態に係るスパッツ100は、着用者のウエスト及び臀部間における腰部の湾曲した部分に第1の強伸縮部1を係止させ、第1の強伸縮部1、第2の強伸縮部2及び第3の強伸縮部3を口ゴム24で係止させることで、着用者の体表とスパッツ100とのずれを抑制して、第1の強伸縮部1、第2の強伸縮部2及び第3の強伸縮部3による効果を向上させることができる。
【0046】
つぎに、本実施形態における第1の強伸縮部1、第2の強伸縮部2及び第3の強伸縮部3による効果について、本願発明を創作するにあたり原理となった、伸縮性をもつテーピング用テープを通常のスパッツ(ノーマルスパッツ)の上に貼付したテーピングによる効果を検証することで説明する。
【0047】
まず、検証試験の条件について説明する。
検証試験に用いたテーピング用テープ(T)は、テープ幅が7.5cmであり、図5(a)に示すように、長さ方向でみると、伸び率が約60%までは非線形性が大きく、非常によく伸びるが、それ以上では非常に急激に伸びにくくなる素材である。また、テーピング用テープ(T)は、図5(b)に示すように、幅方向においては、テーピング用テープがワンウエイ・ストレッチ素材であるためほとんど伸びていない。これに対し、スパッツ(N)は、ツーウエイ・ストレッチ素材であり、長さ方向及び周方向ともに非常によく伸びる。
【0048】
なお、テーピング用テープ及びスパッツ素材の伸長特性の測定には、引張り・せん断測定装置(カトーテック製,KESFB1)を用い、測定条件を引張速度0.2mm/sec、つかみ長さ2.5cm、最大荷重400N/mあるいは最大伸び率100%とし、つかみ幅を5cmとした。
【0049】
また、検証試験に用いたテーピング方法は、図1及び図2に示す、第1の強伸縮部1に対応するテーピング方法(以下、Aタイプと称す)と、第2の強伸縮部2に対応するテーピング方法(以下、Bタイプと称す)と、第3の強伸縮部3に対応するテーピング方法(以下、Cタイプと称す)との3種類である。
【0050】
検証試験は、被験者に対して、ノーマルスパッツを着用させた場合(以下、Nと称す)と、ノーマルスパッツ着用後にAタイプのテーピングを施した場合(以下、Taと称す)と、ノーマルスパッツ着用後にAタイプ及びBタイプのテーピングを施した場合(以下、Tabと称す)と、ノーマルスパッツ着用後にAタイプ、Bタイプ及びCタイプのテーピングを施した場合(以下、Tabcと称す)とのそれぞれについて行なった。なお、後述する図8(a)及び図10の凡例に示す「N」は、ノーマルスパッツを着用させた場合を示しており、後述する図8及び図9の凡例に示す「Ta」は、ノーマルスパッツ着用後にAタイプのテーピングを施した場合を示しており、後述する図8及び図9の凡例に示す「Tab」は、ノーマルスパッツ着用後にAタイプ及びBタイプのテーピングを施した場合を示しており、後述する図8、図9及び図10の凡例に示す「Tabc」は、ノーマルスパッツ着用後にAタイプ、Bタイプ及びCタイプのテーピングを施した場合を示している。
【0051】
被験者は、筋電位への影響を検証する試験(筋電位の測定)では年齢が20代である女性3名とし、心拍数及び酸素摂取量への影響を検証する試験(心拍数及び酸素摂取量の測定)では年齢が20代である女性9名とした。
【0052】
つぎに、筋電位への影響を検証する試験(筋電位の測定)について説明する。
被験者には、図6(a)に示すように、椅座位における安静(3分)、時速4.0km/hの歩行(100秒)、椅座位におけるもも上げの運動(100秒)、休憩(10秒)、立位における体幹ひねりの運動(100秒)、休憩(10秒)、立位における脚巻上げの運動(100秒)、休憩(10秒)を順次行なわせる。
【0053】
なお、椅座位におけるもも上げの運動(100秒)としては、図6(b)に示す運動1のように、8秒間右脚の太ももを上げて静止し(運動1−1)、2秒間下ろして静止し(運動1−2)、8秒間左脚の太ももを上げて静止し(運動1−3)、2秒間下ろして静止(運動1−4)する運動形態を1セットとして、5回行なった。
【0054】
また、立位における体幹ひねりの運動(100秒)としては、図6(b)に示す運動2のように、8秒間右脚を上げて体幹を捻って静止し(運動2−1)、2秒間元に戻して静止し(運動2−2)、8秒間左脚を上げて体幹を捻って静止し(運動2−3)、2秒間元に戻して静止(運動2−4)する運動形態を1セットとして、5回行なった。
【0055】
また、立位における脚巻上げの運動(100秒)としては、図6(b)に示す運動3のように、8秒間右脚を巻き上げて静止し(運動3−1)、2秒間元に戻して静止し(運動3−2)、8秒間左脚を巻き上げて静止し(運動3−3)、2秒間元に戻して静止(運動3−4)する運動形態を1セットとして、5回行なった。
【0056】
筋電位の測定点は、図7に示すように、大腿部前面にある縫工筋401(1CH)、大腿直筋402(2CH)及び薄筋403(3CH)、臀部にある大臀筋404(4CH)、大腿部後面にあるハムストリングス筋405(5CH)、並びに下腿後面にある腓腹筋外側頭406(6CH)及び腓腹筋内側頭407(7CH)の計7箇所であり、利き足などにより筋電位に差が出ないように、測定は全て右脚で行なった。
【0057】
そして、双極電極法により、各筋腹上の活動電位を多チャンネル増幅器(日本光電株式会社製)により増幅させ、筋電図(electromyogram:EMG)を記録した。
【0058】
筋電図(EMG)の解析は、BIMTUSII(キッセイコムテック株式会社製)を用い
、筋電図の生波形に対して基線レベルを0に合わせた後、全波整流を行い、一定時間における筋電図の積分値(以下、積分筋電図(IEMG)と称す)を算出して検討した。算出式は次式(1)に示す通りである。
【0059】
【数1】

【0060】
IEMGは、筋活動の大きい、図6(b)に示す運動1−1及び運動1−3、運動2−1及び運動2−3、並びに運動3−1及び運動3−3における左脚及び右脚の各運動につき、安定期の筋電位として、各々6秒間ずつ計36秒間を積分して求めた。なお、一般に、筋負荷が大きいほど積分筋電図は大きいことが知られている。
【0061】
図8(a)に示すように、運動1、運動2及び運動3を通して行うことにより、一般的に負荷がかかりにくい縫工筋401で最も大きなIEMGが検出され、その他の筋においてもほぼ均等なIEMGが検出された。このことから、7箇所(縫工筋401、大腿直筋402、薄筋403、大臀筋404、ハムストリングス筋405、腓腹筋外側頭406、腓腹筋内側頭407)のすべての筋において適度な負荷が与えられたことがわかる。
【0062】
なお、積分筋電図は、被験者の筋の大きさ、動作時における筋の使い方、脂肪の付き方などの違いによる個人差が大きいといわれていることから、各被験者のノーマルタイプのスパッツ(N)のIEMGを基準(0)として、Ta、Tab又はTabcのIEMGとNのIEMGとの差(以下、ΔIEMGと称す)を算出して検証を行なった。
図8(b)に示すように、TabcのΔIEMGは、薄筋403ではNのIEMGに対
して増加が見られず、ハムストリングス筋405ではTaのΔIEMGに比べてやや小さ
いが、縫工筋401、大腿直筋402、大臀筋404、腓腹筋外側頭406及び腓腹筋内側頭407では概してTa及びTabのΔIEMGに比べて最も大きく増加することがわ
かる。このことは、第1の強伸縮部1に対応するAタイプによるテーピング用テープと、第2の強伸縮部2に対応するBタイプによるテーピング用テープと、第3の強伸縮部3に対応するCタイプによるテーピング用テープとが総じて運動時の筋負荷を高めたことを示しており、TabcはNに比べて平均約16%の筋負荷が増加することがわかった。
【0063】
ここで、参考までに、運動1−1及び運動1−3の左脚及び右脚の運動につき、安定期の筋電位として、各々6秒間ずつ計12秒間を積分して求めた、Ta、Tab又はTabcのIEMGとNのIEMGとの差であるΔIEMGを図9(a)に示す。また、運動2
−1及び運動2−3の左脚及び右脚の運動につき、安定期の筋電位として、各々6秒間ずつ計12秒間を積分して求めた、Ta、Tab又はTabcのIEMGとNのIEMGとの差であるΔIEMGを図9(b)に示す。また、運動3−1及び運動3−3の左脚及び
右脚の運動につき、安定期の筋電位として、各々6秒間ずつ計12秒間を積分して求めた、Ta、Tab又はTabcのIEMGとNのIEMGとの差であるΔIEMGを図9(
c)に示す。
【0064】
図9に示すように、各運動形態においては、TabcのΔIEMGが、Ta及びTab
のΔIEMGと比較して、すべての筋に対して大きいわけではなく、運動形態によっては
、TaやTabの方が運動時の筋負荷を高めるうえで有効な場合がある。しかしながら、日常生活は、各運動形態のみが行われるわけではなく、様々な運動形態を伴うものであり、様々な運動形態を通して総体的に運動時の筋負荷を高めることが、日常生活に運動を取り入れるうえで有効である。このため、Tabcは、図8(a)及び図8(b)を用いて前述した通り、Ta及びTabと比較して、様々な運動形態を通して総体的に運動時の筋負荷を高めることができるために好ましい。
【0065】
また、図8(c)に示すように、歩行時のΔIEMGは、大臀筋404、ハムストリン
グス筋405、腓腹筋外側頭406において、Taが最もΔIEMGが大きい。このよう
に、TaのΔIEMGが大きくなった理由としては、歩行時に脚を前に大きく踏み出す際
に、Taのテーピング用テープが大きく作用した結果であると考えられる。これに対し、Tabcでは、運動1、運動2及び運動3で効果が見られなかった薄筋403において筋負荷の増加が見られ、腓腹筋内側頭407を除く各筋においてほぼ均等にΔIEMGが増
加しており、Nに比べて約25%の筋負荷の増加が確認された。このことから、第1の強伸縮部1に対応するAタイプによるテーピング用テープと、第2の強伸縮部2に対応するBタイプによるテーピング用テープと、第3の強伸縮部3に対応するCタイプによるテーピング用テープとが補完し合って、着用者の脚の各筋の負荷を適宜増加させる効果があることが明らかである。このことは、当然のことながら、着用者の筋力アップに繋がるものと予測される。
【0066】
つぎに、心拍数及び酸素摂取量への影響を検証する試験(心拍数及び酸素摂取量の測定)について説明する。
被験者には、図6(c)に示すように、椅座位における安静(60秒)、時速4.0km/hの歩行(1200秒)、座位における安静(180秒)、椅座位におけるもも上げの運動(100秒)、休憩(10秒)、立位における体幹ひねりの運動(100秒)、休憩(10秒)、立位における脚巻上げの運動(100秒)、休憩(10秒)を順次行なわせる。
【0067】
心拍数HRの検証試験では、各被験者の安静時の心拍数HRを基準(0)として、各被験者における各運動時の心拍数HRと安静時の心拍数HRとの差(以下、ΔHRと称す)
を算出して検証を行なった。
【0068】
図10(a)に示すように、TabcのΔHRは、NのΔHRに比べて、歩行、運動1
、運動2、運動3及び一連の運動(図6(c))のすべてにおいて増加しており、着用者の身体に対する負荷が大きくなったことがわかる。
【0069】
酸素摂取量VO2の検証試験では、各被験者における各運動時の酸素摂取量VO2を測定し、測定した酸素摂取量VO2に基づき、酸素1リットル当たりの消費エネルギーを5.0kcalと仮定して、20分間におけるエネルギー消費量を算出して検証を行なった。
【0070】
図10(b)に示すように、Tabcの酸素摂取量VO2は、Nの酸素摂取量VO2に比べて、安静、歩行、運動1、運動2、運動3及び一連の運動(図6(c))のすべてにおいて増加しており、着用者の身体に対する負荷が大きくなったことがわかる。
【0071】
また、図10(c)に示すように、Tabcのエネルギー消費量は、Nのエネルギー消費量に比べて、安静、歩行、運動1、運動2、運動3及び一連の運動(図6(c))のすべてにおいて増加しており、平均増加量が約20%であり、Nよりも有意に増加することがわかった。すなわち、本実施形態に係るスパッツ100を着用することは、ノーマルスパッツに比べて、約20%多いカロリーを消費できることが検証された。
【0072】
なお、本実施形態においては、インナーウェアとしてスパッツ100を用いて説明したが、例えば、図11に示すロングガードル200、タイツ又はスポーツタイツなどの少なくともパンティ部10及びレッグ部20における太もも21を有し、体表に密着させるインナーウェアであれば、第1の強伸縮部1、第2の強伸縮部2及び第3の強伸縮部3を対応する位置に設けることで、同様の作用効果を奏することができる。
【0073】
(本発明の第2の実施形態)
図12(a)は第2の実施形態に係るタイツを示す正面図であり、図12(b)は図12(a)に示すタイツの背面図である。図12において、図1及び図2と同じ符号は、同一又は相当部分を示し、その説明を省略する。
タイツ300は、パンティ部10、レッグ部20及びフート部30の三部に大別される。
【0074】
フート部30は、着用者のかかとに対応する部分を補強する部分である図示しないヒールと、着用者の足裏に対応する部分である図示しないソールと、着用者の爪先に対応する部分を補強する部分であるトウ31とを備え、ヒールからトウ31までの総称である。
【0075】
なお、タイツ300は、既存の靴下編機により筒状に編んだ一対の編地を用いて、パンティ13に相当する部分に切れ目を入れて裁断縁同士を付き合わせて縫着して一体化し、トウ31を袋状に縫着したものである。
【0076】
第1の強伸縮部1、第2の強伸縮部2及び第3の強伸縮部3は、下腿部22から足裏すなわちソールまでそれぞれ延在され、着用者の足において外果422d、内果422b及び足裏の土踏まずを結ぶ帯状として構成されている。
【0077】
なお、この第2の実施形態においては、第1の強伸縮部1、第2の強伸縮部2及び第3の強伸縮部3が、下腿部22からソールまで延在しているところのみが第1の実施形態と異なるところであり、後述するソールまで延在している第1の強伸縮部1、第2の強伸縮部2及び第3の強伸縮部3による作用効果以外は、第1の実施形態と同様の作用効果を奏する。
【0078】
この第2の実施形態のインナーウェアによれば、第1の強伸縮部1、第2の強伸縮部2及び第3の強伸縮部3が下腿部22からソールまで延在しているために、第1の強伸縮部1、第2の強伸縮部2及び第3の強伸縮部3を着用者の足裏と地面又は床面とで挟持することで、下腿部22側の係止部として作用させることができ、第1の実施形態における係止部である口ゴム24と比較して、第1の強伸縮部1、第2の強伸縮部2及び第3の強伸縮部3を強固に係止することができ、着用者の体表とインナーウェアとのずれをさらに抑制することができる。
【符号の説明】
【0079】
1 第1の強伸縮部
2 第2の強伸縮部
3 第3の強伸縮部
9a 地編糸
9b 編糸
10 パンティ部
11 腰天
12 ウエスト・バンド
13 パンティ
14 ガセット
15 ジャコビー線部
16 大転子部
17 腸骨稜部
18 臍点部
19 臀溝部
20 レッグ部
21 太もも
21a 内側上顆部
21b 外側上顆部
21c 膝蓋骨部
22 下腿部
22a 内側顆部
22b 内果部
22c 外側顆部
22d 外果部
23 裾
24 口ゴム
30 フート部
31 トウ
40 ベース生地
100 スパッツ
200 ロングガードル
300 タイツ
401 縫工筋
402 大腿直筋
403 薄筋
404 大臀筋
405 ハムストリングス筋
406 腓腹筋外側頭
407 腓腹筋内側頭
415 ジャコビー線
416 大転子
417 腸骨稜
421a 内側上顆
421b 外側上顆
421c 膝蓋骨
422a 内側顆
422b 内果
422c 外側顆
422d 外果

【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくともパンティ部及びレッグ部における太ももを有し、伸縮性素材をベース生地として体表に密着させるインナーウェアにおいて、
前記パンティ部の後面にある着用者のジャコビー線に対応する部分に沿い、前記パンティ部の左右の外側面にある前記着用者の大転子に対応する部分をそれぞれ通り、左右の前記太ももの後面をそれぞれ経由して、前記左右の太ももの内側面にある前記着用者の内側上顆に対応する部分にそれぞれ延在する第1の強伸縮部と、
前記パンティ部の左右の外側面にある前記着用者の腸骨稜に対応する部分から、前記パンティ部の前面にある前記着用者の臍点に対応する部分の下方で交差し、前記左右の太ももの前面をそれぞれ経由して、前記左右の太ももの外側面にある前記着用者の外側上顆に対応する部分までそれぞれ延在する第2の強伸縮部と、
前記パンティ部の後面及び太ももの後面間の境界近傍にある前記着用者の臀溝に対応する部分に沿い、前記左右の太ももの外側面及び前面をそれぞれ経由して、前記左右の太ももの内側面にある前記着用者の内側上顆に対応する部分にそれぞれ延在する第3の強伸縮部と、
を有し、
前記第1の強伸縮部、第2の強伸縮部及び第3の強伸縮部の伸縮抵抗が、前記ベース生地の伸縮抵抗と比較して大きいことを特徴とするインナーウェア。
【請求項2】
前記請求項1に記載のインナーウェアにおいて、
前記レッグ部における前記着用者の下腿に相当する下腿部を有し、
前記第1の強伸縮部が、前記左右の太ももの内側面にある前記着用者の内側上顆に対応する部分から、左右の前記下腿部の内側面にある前記着用者の内側顆に対応する部分をそれぞれ通り、前記左右の下腿部の内側面にある前記着用者の内果に対応する部分までそれぞれ延在し、
前記第2の強伸縮部が、前記左右の太ももの外側面にある前記着用者の外側上顆に対応する部分から、前記左右の下腿部の外側面にある前記着用者の外側顆に対応する部分をそれぞれ通り、前記左右の下腿部の外側面にある前記着用者の外果に対応する部分までそれぞれ延在し、
前記第3の強伸縮部が、前記左右の太ももの内側面にある前記着用者の内側上顆に対応する部分から、前記左右の下腿部の内側面にある前記着用者の内側顆に対応する部分をそれぞれ通り、前記左右の下腿部の内側面にある前記着用者の内果に対応する部分までそれぞれ延在することを特徴とするインナーウェア。
【請求項3】
前記請求項1に記載のインナーウェアにおいて、
裾となる口ゴムを有し、前記着用者の膝上まで丈があるロングガードルであって、
前記第1の強伸縮部、第2の強伸縮部及び第3の強伸縮部が、前記口ゴムまで延在することを特徴とするインナーウェア。
【請求項4】
前記請求項2に記載のインナーウェアにおいて、
裾となる口ゴムを有するスパッツであって、
前記第1の強伸縮部、第2の強伸縮部及び第3の強伸縮部が、前記口ゴムまで延在することを特徴とするインナーウェア。
【請求項5】
前記請求項2に記載のインナーウェアにおいて、
フート部を有するタイツであって、
前記第1の強伸縮部、第2の強伸縮部及び第3の強伸縮部が、前記フート部のソールまで延在することを特徴とするインナーウェア。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図6】
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【図7】
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