説明

インナーブーツ

本発明は、スキー、スノーボード、インラインスケート用の靴や登山用の長靴等のインナーブーツに関する。前記インナーブーツは、少なくともサブ領域において所定温度(変形温度T)で可塑的に変形する素材からなる。少なくともインナーブーツ(1)の可塑変形性を有するサブ領域において、織込又は編込の扁平状電熱体(3)が配置され、この電熱体を用いて、少なくとも上記サブ領域を変形温度(T)に加熱することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、スキー、スノーボード、インラインスケート用の靴や登山用の長靴等のインナーブーツに関し、特に、少なくともサブ領域において、所定温度(変形温度)で可塑的に変形する素材からなるインナーブーツに関する。
【背景技術】
【0002】
上述のようなインナーブーツは従来技術としても知られている。十年程前にはライケル社によって、熱可塑材からなることを特徴とする、いわゆる「サーモフレックス」インナーブーツが製造されている。このような素材で製造されたインナーブーツでは、約120℃のオーブンで10分間程加熱した後、着用者はそのインナーブーツに足を入れ、外側のスキー靴を締めなければならなかった。約5分すると、インナーブーツは着用者の足の形にぴったりと合う。その後、再び足に合わせるには、再度インナーブーツを約120℃のオーブンで約10分間加熱しなくてはならない。インナーブーツは上述の方法によって、再び足の形に適合できる。
【0003】
同様に変形可能な、熱可塑性材料からなるインナーブーツは、米国特許5,673,448号明細書及びドイツ国特許69807045T2号明細書に開示されている。又、国際公開公報WO98/54997A1号明細書にも、温度の影響で可塑的に変形可能なインナーブーツが開示されている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上述のインナーブーツは全て使用前にオーブンで温めないと機能しないという基本的な不都合がある。これらのブーツは、オーブンで予熱後、熱い状態で装着される必要があり、使うスキー靴や登山靴等のアウターブーツに挿入して、インナーブーツの用途に合わせなくてはならない。そして、加熱状態のインナーブーツを挿入するので、特に着用者には非常に不快であるという欠点もある。加熱状態では素材の硬性が低下しており、インナーブーツをアウターブーツに挿入する時にインナーブーツを滑り入れるので、時々所望の適合形態にならないことがあった。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、上述の従来技術に鑑み、より簡易且つ効果的で、便利に熱可塑変形する事を可能とし、特に着用者の足にフィットする冒頭で述べた種類のインナーブーツを提供するという課題に基づく。
【0006】
この課題は請求項1に記載の特徴によって解決される。
【0007】
本課題は特に、スキー、スノーボード、インラインスケート用の靴のインナーブーツや登山用の長靴等のインナーブーツが、少なくともサブ領域において所定温度で可塑的に変形可能な素材からなり、少なくとも一つの織込又は編込みの扁平状の電熱体がインナーブーツの可塑性の変形可能なサブ領域に配設され、それにより、少なくとも上記のサブ領域の発熱体は変形温度まで加熱可能であるという事実により特に解決される。
【発明の効果】
【0008】
本願請求項1に定義された発明の中心は、取付けられた扁平状の電熱体を用いて、インナーブーツの少なくとも熱可塑性を有する部分領域が可塑的に変形するように、加熱できることにある。従って、従来技術において必要とされた、インナーブーツをオーブンで加熱することは不要である。本発明は28℃以上のいわゆる「快適温度」に温めることにも適している。
【0009】
更に、発熱体はインナーブーツの表面又は内部に配置でき、全体的に、或いはサブ領域のみに配置することもできる。つまり、従来技術と対照的に、ある特定の領域だけを可塑的に変形できるように、加熱することができる。よって、ニーズに応じて、インナーブーツの足裏領域、踵領域、母指球領域や脛部等に発熱体を配置することができる。
【0010】
発熱体は織込又は編込みの扁平状の電熱体として形成されており、発熱体をインナーブーツに一体化したり、インナーブーツに対して位置決めすることが更に容易である。加熱領域において可塑的に変形する際に、このように「柔軟で弾力性がある」素材は非常に好都合である。真性応力によって不要な変形を生じることがないからである。このように、本発明に基づく発熱体によって、インナーブーツを足に最適に適応することも確実となる。
【0011】
好適には、発熱体は導電線材からなり、導電線材は発熱体保持布に組み込まれている。この方法であれば、発熱体保持布は、従来技術で知られた織物又は編織物といったいずれの布地も可能であり、扁平状の発熱体の柔軟な製品とすることができる。上述の定義は言い換えれば、相応する扁平状の発熱体をつくるために、導電線材が非導電線材と共に織込まれ、又は編込まれるといった、発熱体の構成も含んでいる。基本的に、非導電線材と導電性繊維材とを組み合わせることを原則としている。すなわち、発熱体保持布は、それぞれ非導電線材を織り込み、又は編込みなどし、発熱体の特定の領域は導電線材で形成され他の領域は非導電線材で形成される。これに関しては特に、本出願人による欧州特許出願1705956A1号明細書を参照されたい。
【0012】
好適には、発熱体は少なくとも1つの発熱領域と、少なくとも1つの通電領域を備え、通電領域は発熱体を電源に接続するか、複数の発熱体を連結する、又はその両方の機能を有する。通電領域において、導電線材は発熱領域より高密度に組み込まれる。発熱領域には同一か少なくとも類似の導電率の繊維材が使用されるが、通電領域における導電線材の編入密度の方が発熱領域より著しく高いため、全体の電気抵抗により、通電領域は発熱領域に比べて発熱しない。その結果、発熱領域への電流の供給は、自己発熱や電気の損失があまり生じることなく可能である。発熱領域の繊維材の密度を小とすることによって、生じる全体の電気抵抗は非常に高くなるので、この領域に発熱が生じる。接続電源、繊維材の断面、繊維材の導電力に応じて、分布密度を適切に選択することによって、発熱領域と通電領域の温度を設定することが可能である。この方法であれば、通電領域を介して複数の発熱領域を互いに連結することも可能である。例えば、本発明に基づくインナーブーツにおいて、爪先領域又は踵領域、又はその両方のみを加熱して熱可塑変形させる場合は、これらの領域に発熱領域を配置して通電領域を介して連結するが、全体の抵抗が非常に小さくなっているので通電領域は発熱を生じない。
【0013】
好適には、発熱体は、インナーブーツの少なくとも上述のサブ領域が変形温度に達するように構築されるのに加え、35℃から60℃の加熱温度THZに大体に達するように構築される。これにより、インナーブーツの熱可塑性材を変形させることを主要な目的として設けられた発熱体は、インナーブーツを加熱し、特に使用中に加熱するために用いることもできる。この場合、上述の加熱温度の範囲とは、着用者が経験的に快適と感じる温度範囲である。無論、ここでも又、必要に応じて別の範囲の温度を設定することも可能である。
【0014】
好適には、発熱体は、インナーブーツ全体において所定の位置に配置される発熱領域を有し、該発熱領域内の少なくとも一部に導電線材が異なる密度にて組み込まれている。この方法であれば、発熱領域毎に異なる発熱力を持つことができる。組み入れられた導電線材の密度に応じて、インナーブーツの各領域、例えば爪先領域、踵領域、足裏領域又は胴部領域等を異なる熱量で加熱することが可能となる。これは、特に厚さの異なるインナーブーツ素材を使用して熱可塑変形可能なインナーブーツを成形するのに効果的であり、更には、発熱体を加熱操作に用いる際、例えば、スキー靴用インナーブーツをスキーに使用中や乾燥中に加熱するにも有効である。
【0015】
好適には、発熱体は導電線材から形成された独立の発熱回路を多数含み、発熱回路は特に単独で、又は組み合わせによって互いに電源に接続可能か電気供給可能である。この方法であれば、分離して配線された発熱回路を相互接続することによって、発熱量を変更することができる。従って、例えば、熱可塑変形用に特化した発熱回路と、インナーブーツの使用前後や使用中の加熱用に特化した発熱回路とを提供することもできる。この場合は、適合するスイッチ素子の使用が考えられ、スイッチ素子は、特にインナーブーツに一体化し、個々の発熱回路間のスイッチを切り替える。これに関連して、所望であれば、スイッチ装置を介してインナーブーツの特定の部位のみが加熱されるように発熱回路を設定してもよい。これは、また熱可塑的変形過程用のみならず、前述した身体適合温度に加熱用にも有効である。
【0016】
好適には、導電線材は、天然及び/又は合成の糸又は繊維状の素材を基に、金属繊維又は金属糸は使用せず、金属添加(銀処理等)や類似の加工方法を実施することにより導電性を持つ。金属繊維及び/又は金属糸は布地の剛性に不都合な影響を与えるので、上述のように成形すれば特に好適な発熱体の構成が得られる。上述の糸は、公知の従来技術であり、ここでは特に静電防止カーペットに用いられる糸等を使用する。加工を単純化するためにカーペットは布地の質感を持つことが好ましい。繊維材は、導電性を有するために、例えば炭素を埋め込んだポリエステルから成ることができる。
【0017】
好適には、発熱体、特に少なくとも1つの通電領域は、少なくとも1つの接続部材を備え、接続部材は少なくともインナーブーツの外部まで通されており、電源、特にバッテリ又はケーブル接続変圧器と接続される。ここでいう接続部材とは、例えば、プラグ、カップリング、押カップリング等従来技術で知られているあらゆる接続部材であり、ケーブルを介して通電領域と接続される。例えば、発熱体と連結するバッテリを用いる際に好適には、バッテリが適切な位置に取り付けられるように、特にコイル巻きになっているか、長さが調節できる接続ケーブルを用いて、バッテリと通電領域が接続されることが効果的である。そのためにインナーブーツに装着装置を装着することがとりわけ有効である。勿論、これに相応する装着装置をスキー靴又は登山靴等のアウターブーツ、又は着用者自体に配置することも考えられる。
【0018】
ここで関係する発熱体の有効な構成は、発熱体は、好適には、バッテリによる作動では、前述の身体に適温、特に25℃から35℃までの温度だけに加熱可能であるのに対して、ケーブル接続変圧器による作動では、例えば、230ボルト電源プラグに接続した場合、冒頭で述べた変形温度、特に100℃から120℃まで上昇可能なことである。これなら、バッテリは、加熱作動に必要な熱量のみを生じさせればよいので、軽量化することができる一方、特に作動中において、インナーブーツが意図せず変形温度まで発熱すること防止する。
【0019】
発熱体、その温度変化、及び電源から発熱体へ流れる電流や発熱体の内部を流れる電流を制御するために、特にインナーブーツに一体化した開ループ制御及び/又は閉ループ制御装置を備えることが好ましい。この方法であれば、発熱作動を中断又は停止することが可能になり、更に開ループ制御・閉ループ制御装置の構成によっては発熱温度を上下させることも可能である。ここでは、従来のあらゆる開ループ制御及び/又は閉ループ制御装置を用いることができる。この場合、特にコードレスの開ループ制御及び/又は閉ループ制御装置を使用して発熱体を制御してもよい。また、特にインナーブーツ内部の温度を検知するセンサの用途に適用することも勿論可能である。これは、直接、温度センサを用いるか、または、開ループ制御・閉ループ制御装置内の電流センサを用いることにより、電源又は類似の構成部品において可能である。
【0020】
更に、例えば、所望の熱可塑温度に達したときに信号を出す表示装置、又は本発明に基づくインナーブーツが以前に1回、2回、又はそれ以上の回数変形温度に加熱されたことを示す表示装置を設けることも可能である。またとりわけ熱可塑変形が阻害されるのは、既に多数回使用したために、ブーツの熱可塑変形能力が低下してしまう場合である。ここでもまた、従来技術で既知となっているあらゆる表示装置と信号装置は、動的でも静的でも適用可能である。
【0021】
特に多層構造の基材からなるインナーブーツでは、発熱体を基材の間に挟むことによって一体的に組み込むことが望ましい。これは、一層からなる基材でも可能であり、例えば発泡材からなるインナーブーツでは、発熱体は発泡材形成中に組み込まれるか、又はその上に設けられる。又は多層構造のインナーブーツの場合、発熱体は各層に接触する領域に組み込むか、個々の層の中に組み込むことができる。
【0022】
発熱体は少なくとも部分的に、インナーブーツの特に織布製内側裏地に一体的に組み込む、及び/又は接続されていることが好ましい。ここでは、発熱体を内側裏地上に、例えば、内側の裏地部分がインナーブーツの内側に面している所に設けることが第一に可能であり、又は、内側の裏地自体が少なくとも部分的に発熱体の導電性繊維材から成ることも可能である。これについても欧州特許出願1705956A1号明細書を参照されたい。
【0023】
未利用の熱量が周囲へ放熱される事を防ぐために、発熱体及び/又はインナーブーツの外面の間には断熱性、特に熱反射性を有する層を設けることが好ましい。この方法により、発熱体を変形温度及び/又は加熱温度に加熱するために必要な熱エネルギーが何倍も減少する。これに関して、また追加の絶縁又は遮蔽層を使用することも勿論可能である。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】インナーブーツの第1実施例であり、外側に発熱体を配置したインナーブーツの斜面図である。
【図2】インナーブーツの第1実施例であり、外側に発熱体を配置したインナーブーツの斜面図である。
【図3】インナーブーツの第2実施例であり、外側に発熱体を配置したインナーブーツの斜面図である。
【図4】インナーブーツの第2実施例であり、外側に発熱体を配置したインナーブーツの斜面図である。
【図5】インナーブーツの第3実施例であり、中間に発熱体を配置したインナーブーツの部分断面図である。
【図6】インナーブーツの第4実施例であり、内部に発熱体を配置したインナーブーツである。
【発明を実施するための形態】
【0025】
本発明の更なる実施形態は従属項に記載される。
【0026】
以下、図を参照して、本発明の実施例を詳細に説明する。
【0027】
以下、同一又は同一機能の構成要素については同じ符号を使用するが、上付きの符号は、同類の部品などを区別するために使用している。
【0028】
図1及び図2は本発明に基づくインナーブーツ1の第1実施例を示す。インナーブーツは、ここでは発泡材の基材4からなり、その上に内側裏地7がインナーブーツ1の内側領域21に設けられている。インナーブーツ1は、ここでは胴部20やベロ22等で構成され、爪先領域26と踵領域28を経由して足裏領域24へ結合する。
【0029】
着用者の足に最適に適合させるために、インナーブーツ1は少なくとも部分的に熱可塑性を有する基材4からなり、基材4を所定の変形温度Tに温めることによって、この場合は約100℃から約120℃で可塑的に変形可能になる。着用者がインナーブーツ1に足を入れると直ぐに足の輪郭に適合し始める。ここでは、インナーブーツ1の一定の部分領域だけに可塑的に変形可能な素材を設けるのでもよいし、インナーブーツ1全体を熱可塑材で形成してもよい。
【0030】
本発明に基づくインナーブーツ1は、変形温度Tvに温めるために、ここではインナーブーツの外面5に、織込又は編込みの扁平状の素材からなる発熱体3を備える。本実施例における発熱体3は導電性を有する繊維材8が織り込まれた発熱体保持布9からなる。導電線材8の組み込み密度によって、発熱体3には異なる領域、特に通電領域11と発熱領域10が生じる。
【0031】
通電領域11では、全体の電気抵抗が小さく、導電線材8が発熱しない程度の密度で導電線材8が配置されている。それに対し、発熱領域10では、導電線材8の密度を発熱体の領域に比較して小さくすることによって、発熱領域全体の電気抵抗が大きくなり、その結果、個々の導電線材8が発熱する。
【0032】
本実施例では、発熱体3はインナーブーツ1の外面5に設けられているが、例えば、発熱体3をインナーブーツ1の基材4の外面5を全面的に覆うように接着することも可能である。又、発熱体3を点で固定するだけでもよいし、或いは発熱体3の特定側のみ固定して、それ以外の部分は柔軟に保持してもよい。場合によっては発熱体3をインナーブーツ1の靴紐用固定具として使用することも考えられ、そうすればインナーブーツ1の靴紐を結ぶことによって、発熱体3は非常に効果的に、インナーブーツ1の外側輪郭又は外面5に密着することができる。また例えば、インナーブーツ1の上から履くような、発熱体を含む靴下の態様に形成する等、発熱体3を着脱可能な発熱体として形成してもよい。この場合は、一つの発熱体で、様々な種類のインナーブーツ1に熱可塑的な変形を加えるために使用できるようになるので、ブーツの寸法を頻繁に合わせる必要のあるスポーツショップ等の分野においては好都合である。これに関連して、様々な種類のインナーブーツ1に確実に適合するように、電熱体3は少なくとも部分的に弾性的に形成されることが望ましい。
【0033】
第1実施例において、発熱体3は、胴部領域20から踵領域28を通って前方に延び、爪先領域26つまり足指領域まで延出している。本実施例では足底24は発熱しない。この場合、特定の領域に限って発熱可能、つまり変形可能である。
【0034】
既述の通り、発熱体3は接続部材15を含み、接続部材15から通電領域11を通って、特に胴部20に第1発熱領域10が設けられている。そこから第2通電領域11’が、インナーブーツ1の踵28を実質的に被覆する第2発熱領域10’まで延びている。更に、第3通電領域11”を通って第3発熱領域10”がインナーブーツ1の爪先領域26に設けられている。従って、既述の通り、発熱領域10、10’及び10”において、導電線材8の組み込み密度は低いので、これらの領域では接続部材15に電流が供給されると導電線材8が発熱する。これに対して、通電領域11、11’及び11”の導電線材8の組み込み密度は高いので発熱せず、大きな電気損失もなく接続部材15からの電流が発熱領域10、10’及び10”それぞれに供給される。無論、インナーブーツ1の他の領域にも追加の発熱領域を設けることも可能である。
【0035】
インナーブーツ1つまりその基材4を熱可塑的に変形する用途以外に、発熱領域10又は発熱体3の別の用途として、使用前後及び/又は使用中において、人間が快適と感じる、又は我慢できる温度THZにインナーブーツ1を温める発熱体として使用することができる。これによって、発熱体3を用いて、例えば、スキー又はスノーボード用のブーツを装着した状態でインナーブーツ1を使用する際に積極的に足を温めることもできるインナーブーツの加熱装置が可能である。これに関連して、ここでは個別に設けられた発熱領域10に導電線材8を異なる密度に設け、例えば、踵部28又は爪先部26といったインナーブーツの領域により、同一の電流の強さを使用して、異なる発熱領域10では異なる発熱量を達成することができる。
【0036】
これに関連して更に言及すると、発熱体3内部に別個の電源回路、例えば、適切な開ループ又は閉ループ制御装置により、手動又は自動でスイッチのオンオフができる電源回路を構築することも無論可能である。発熱体3に相応の温度センサ、信号発生器、スイッチング・制御装置等を設けることが一般的に可能であり、それにより、熱可塑的変形時や通常の加熱時の両方の時における作動及び使用を簡易化したり、開ループ制御や閉ループ制御が実行されることも可能である。特にマイクロチップを用いて、乾燥プログラムや自動変形プログラム等を制御可能である。冒頭で述べたように、これに関連して、インナーブーツ1が変形温度に達するまで加熱された事があるか、及び/又は何回変形温度まで加熱されたかを表示する適切な表示部を設けることも可能である。ここでは、静的表示と動的表示のいずれの方法も可能である。
【0037】
図3及び図4は本発明に基づくインナーブーツ1の第2実施例の斜面図を示す。これまで説明した第1実施例と異なり、発熱体3はインナーブーツ1の外面5の、実質的に全面に設けられているために、全体的に加熱がなされる。導電線材8の組み込み密度を適切に全体的に変更することによって、インナーブーツ1の特定の領域が、特定の発熱量になるようにする事は本実施例でも可能である。胴部22、踵部28及び爪先部26に加えて、本実施例では、足裏部24にも発熱体10’を設け、通電領域11’を介して発熱領域10と接続している。
【0038】
図3及び図4に関して、発熱体3への電流供給について更に説明する。ここでは、バッテリ13等の電源12が設けられ、対応する電気接続手段18を介して、接続部材15に接続可能であり、本実施例においては、接続部材15内に特に発熱線を閉ループ制御するための開ループ制御・閉ループ制御装置17が組み込まれている。ここでは、電源、方法、接続手段等に関してあらゆる従来技術の使用が可能である。
【0039】
それに加えて、インナーブーツ1はバッテリ13を収容するための装着装置16を備え、ここではインナーブーツ1の胴部20の背部に配置されている。図示されている別の電源12’は、この場合はケーブル接続変圧器14であり、特に230ボルトの電源に接続可能である。それ以外のケーブル接続電源も勿論使用できる。
【0040】
本実施例において、2つの電源12及び12’はインナーブーツ1を温めるために用いられる。しかし、異なる出力があることから、特に、意図しない変形温度Tに達する加熱を防止するために、バッテリ13はインナーブーツ1の使用中及び使用前後に発熱作動するために使用され、それに対して、ケーブル接続変圧器12’は変形温度Tに加熱するために使用される。必要に応じ、変形温度Tに達する事が可能な出力レベルを持つバッテリ13を使用することももちろん可能である。
【0041】
図5は本発明に基づくインナーブーツ1の第3実施例の部分断面図であり、ここに示された基本的構造はこれまで示した実施例にもあてはまる。インナーブーツ1は多層の基材4からなり、特に、外層33と内層34からなり、この場合、共に熱可塑性素材であるが、異なる素材からなる。例えば、外層33は比較的硬い層として形成され、主要支持層としての機能を有し、内層34は比較的柔軟な裏地として形成してもよい。ここで例示されているのは、インナーブーツ1が既にスキー靴や登山靴等のアウターブーツ30に挿入された状態である。
【0042】
インナーブーツ1を熱可塑的に変形し、着用者の足32に最適に適合させるために、基材4の外層33と内層34の間に発熱体3が組み込まれている。この実施例では、発熱体3はインナーブーツ1の両側において、胴部20から爪先領域26まで延出している。この場合は、足裏領域24は加熱できない。
【0043】
発熱体3によって発生した熱、又は発熱体3の発熱領域内に発生した熱を効率的に利用するために、発熱体3とインナーブーツ1の外面5の間には、断熱性のある、特に熱反射性のある層6が設けられている。本実施形態では、熱反射層6はインナーブーツ1の外面5上に直接配置されている。そのため、発熱体3の発熱に際し、非常にわずかな熱量しか外に放出されないので、特に熱可塑的変形温度Tに達するまでの加熱時間が短縮される。また、通常の発熱作動中、つまり加熱状態のインナーブーツ1の使用中は、未利用の熱エネルギーの放出が減少するために、これらの熱反射層6はエネルギー消費を減少させ、従って、電源12(図3及び図4参照)として使用中のバッテリ13の寿命が延びる。
【0044】
図6は第4実施例の部分断面図を示し、ここでもインナーブーツ1が既にアウターブーツ30に挿入されている。インナーブーツ1はここでは基材4からなり、その内側19には内側裏地7が設けられている。主要な領域において、この内側裏地7は着用者の足32と接している。
【0045】
本実施例では、内側裏地7内に発熱体3が一体的に組み込まれており、ここでは導電線材8が非導電繊維とともに織り込まれている。内側裏地7のサブ領域は導電線材8によって電気で加熱可能であるが、別のサブ領域は単に導電性があるのみである。これに関連して追加の被覆層を使用することが考えられる。被覆層は、足32と内側裏地7の間に配置され、発熱体の絶縁性を保証する事に加え、着用時の快適性を向上させることを目的とする。この詳細については、本出願人の欧州公開公報1705956A1号明細書を参照されたい。
【0046】
更に図示されている接続部材15について説明する。接続部材は好ましくはインナーブーツ1の外面5から、特にアウターブーツ30の外側から接続可能で、この接続部材を介して電源を発熱体3に接続する事が可能である。
【符号の説明】
【0047】
1 インナーブーツ
3 発熱体
4 基材
5 外面
6 熱反射層
7 内側裏地
8 導電線材
9 発熱体保持布、又は非導電線材
10 発熱領域
11 通電領域
12 電源
13 バッテリ
14 変圧器
15 接続部材
16 装着装置
17 開ループ/閉ループ制御装置
18 電気接続手段
19 内側
20 胴部
21 内側領域
22 ベロ
24 足裏
26 爪先
26 踵
30 アウターブーツ
32 足
33 外層
34 内層
変形温度
HZ 発熱温度

【特許請求の範囲】
【請求項1】
スキー、スノーボード、インラインスケート用の靴や登山用の長靴等のインナーブーツであって、該インナーブーツは少なくともサブ領域において所定温度(変形温度T)で可塑的に変形する素材からなり、
インナーブーツ(1)の可塑変形性を有するサブ領域において、織込又は編込の扁平状電熱体(3)が配置され、該電熱体を用いて、少なくとも前記サブ領域は、変形温度(T)に加熱されることが可能であり、及び、任意に約25℃から約35℃のより低い快適温度に加熱されることが可能であることを特徴とするインナーブーツ。
【請求項2】
前記発熱体(3)は、導電線材(8)からなり、前記導電線材は、特に糸又はより糸の形態であり、特に発熱体保持布(9)に組み込まれていることを特徴とする請求項1に記載のインナーブーツ。
【請求項3】
前記発熱体(3)は、少なくとも1つの発熱領域(10)と、少なくとも1つの通電領域(11)とを含み、該通電領域(11)は、前記発熱体(3)を電源(12)に接続し、及び/又は複数の発熱領域(10,10’)を連結しており、前記導電線材(8)は、発熱体保持布(9)に組み込まれ、通電領域(11)への組み込み密度は、発熱領域(10)への組み込み密度より高いことを特徴とする請求項1又は請求項2に記載のインナーブーツ。
【請求項4】
インナーブーツ(1)の少なくとも前記サブ領域(3)が、変形温度Tvに加熱可能であるのに加え、人体に適した加熱温度(THZ)、特に25℃から35℃に実質的に加熱可能であるように、発熱体(3)が形成されていることを特徴とする請求項1乃至3の何れか1項に記載のインナーブーツ。
【請求項5】
前記発熱体(3)は、インナーブーツ(1)の全体に分布するように所定の位置において、発熱領域(10)を有し、該発熱領域(10)に導電線材(8)が組み込まれており、少なくとも一部では、異なる密度で組み込まれていることを特徴とする請求項3又は請求項4に記載のインナーブーツ。
【請求項6】
発熱体(3)は、導電線材から形成された複数の独立した発熱回路からなり、これらの発熱回路は、単独で及び/又は組み合わせで前記電源に接続可能であり、及び/又は前記電源から電源供給を受けることが可能であることを特徴とする請求項3乃至5の何れか1項に記載のインナーブーツ。
【請求項7】
前記導電線材(8)は、天然繊維及び/又は合成繊維又は糸状素材を基に、金属糸又は金属繊維を使用せずに金属添加(銀処理等)や類似の処理方法により導電性を持つことを特徴とする請求項3乃至6の何れか1項に記載のインナーブーツ。
【請求項8】
前記発熱体(3)、特に前記通電領域(11)は、少なくとも1つの接続部材(15)を有し、該接続部材(15)は、特に、少なくともインナーブーツの外部まで通され、電源(12)、特にバッテリ(13)又はケーブル接続の変圧器(14)に接続することを特徴とする請求項3乃至7の何れか1項に記載のインナーブーツ。
【請求項9】
前記電源(12)、特に前記バッテリ(13)を装着する装着装置(16)がインナーブーツに設けられていることを特徴とする請求項8に記載のインナーブーツ。
【請求項10】
開ループ及び/又は閉ループ制御装置を有し、この制御装置は、特にインナーブーツ(1)と一体化しており、加熱温度(THZ)及び/又は変形温度(T)を制御し、特に、電源(12)から発熱体へ流れる電流、及び/又は発熱体(3)の内部を流れる電流を制御することを特徴とする請求項8又は請求項9に記載のインナーブーツ。
【請求項11】
多層構造の基材(4)からなるインナーブーツであって、前記電熱体(3)が基材(4)内に一体的に組み込まれていることを特徴とする請求項1乃至10の何れか1項に記載のインナーブーツ。
【請求項12】
前記発熱体(3)は少なくとも部分的に、インナーブーツ(1)の布製裏地(7)に一体的に組み込まれており、及び/又は接続されていることを特徴とする請求項1乃至11の何れか1項に記載のインナーブーツ。
【請求項13】
前記発熱体(3)とインナーブーツ(1)の外面(5)との間に、断熱性、特に熱反射性を有する層(6)が設けられていることを特徴とする請求項1乃至12の何れか1項に記載のインナーブーツ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公表番号】特表2010−516309(P2010−516309A)
【公表日】平成22年5月20日(2010.5.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−545833(P2009−545833)
【出願日】平成19年12月27日(2007.12.27)
【国際出願番号】PCT/EP2007/011434
【国際公開番号】WO2008/086882
【国際公開日】平成20年7月24日(2008.7.24)
【出願人】(503211312)ディーラックス シュポルトアルティーケル ハンデルス ゲーエムベーハー (4)
【出願人】(509200118)シュトリックチック ゲーエムベーハー (1)
【Fターム(参考)】