説明

エアークッション艇のスカート用材

【課題】スカート用材に必要な柔軟性を保持したまま、強度が大きく、引き裂けが発生しにくく、寿命が長いエアークッション艇のスカート用材を提供する。
【解決手段】脂肪族ポリアミド若しくはポリエステル織物を基布としてゴム又は熱可塑性エラストマーをコーティングしてなるエアークッション艇のスカート用材において、織物が、たて糸1本ごとによこ糸が交錯する平織部分と、たて糸複数本ごとによこ糸が交錯するマット織部分が交互に存在する組織からなることを特徴とするエアークッション艇のスカート用材。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、エアークッション艇のスカート用材に関する。さらに詳しくは、本発明は、スカート用材に必要な柔軟性を保持したまま、強度が強く、引き裂けが発生しにくく、寿命が長いエアークッション艇のスカート用材に関する。
【背景技術】
【0002】
エアークッション艇は、船底周辺をスカートと呼ばれる材料で囲い、この内部に空気を送り込んで船体を浮上させて航走する船舶である。図1は、エアークッション艇の一例を船底側から眺めた斜視図である。この図のエアークッション艇は、船体1の船底下面に水中フィン2を有する左右のサイドハル3、船尾部分をシールする船尾スカート4及び船首部分をシールする船首スカート5で囲まれた空気室6を有し、空気室において、船体の空気噴射装置7から噴射される空気を船体と水面との間に溜めて高圧を保持し、船体を水面に浮上させて航走する。エアークッション艇は、エアークッションに支えられて水面を航走するために、水の抵抗を少なくすることができるので、高速が得られる。また、航走中はエアークッションにより波の衝撃を受けることが少なくなり、エンジンの振動や騒音は、防振設計、遮音設計の進歩により格段に改良され、快適性も向上している。このために、開発当初は主として沿岸パトロール艇などの軍事用に用いられていたエアークッション艇は、民間用にも多数用いられるようになるとともに、大型化が進められている。
図2は、エアークッション艇の他の例の船首部分を示す部分斜視図である。船首スカートは、空気室の圧力を保持し、空気を洩らすことがないように、多数の可撓性フィンガースカート8が、個々に独立して垂直方向に並設された構造を有する。フィンガースカートの上縁部は、図1に示されるように直接船体に取り付けられる場合と、図2に示されるように、両側壁間に装架されたエアーバッグ9に摺動可能に取り付けられるとともに、反転防止用ストラップ10で船体1に拘束される場合とがある。このような船首スカートの構造により、空気室における圧力の作用で、各フィンガースカートが展張し、隣接するフィンガースカートや両側壁との密着が生じて、空気の漏洩が防止される。
図3は、フィンガースカートの一例の斜視図である。フィンガースカートは、前方へ凸湾曲するように形成される。フィンガースカートには、絶えず変化する液面に追従できる柔軟性が必要であり、また、スカート内面に作用する空気室の圧力に耐える強度や、耐振動疲労特性が要求される。振動によるスカート取付部の破断防止や、織布とコーティング材の剥離防止により長寿命化させるために、繊維の材質、織布組織、ゴム配合などの種々の面から改良が行われ、現在は強度と柔軟性のバランス及びコーティング層との接着性から、マルチフィラメントナイロン平織物が基布として一般的に使われ、コーティング材としては、クロロプレンゴム、クロロスルホン化ポリエチレン、熱可塑性ポリウレタン樹脂などをベースとした配合が採用されている。
図4は、フィンガースカートの一例の展開図である。フィンガースカートは、基布にゴム又は熱可塑性エラストマーをコーティングしたスカート用材11を、所定の長さと両端形状に裁断したのち、はぎ代12で熱融着などによりはぎ合わせて作製する。フィンガースカートは、図3に示されるように湾曲して船体に取り付けられるので、基布の長さ方向が装着時の水平方向になる。総トン数50トン程度のエアークッション艇のスカート用材の基布としては、1,400デシテックス程度のマルチフィラメントナイロン平織物が用いられていたが、総トン数が1千トンを超えるエアークッション艇のスカート用材の基布としては、例えば、5,600デシテックスのマルチフィラメントを、たて糸密度、よこ糸密度をともに13本/25.4mm(1インチ)とした基布が検討されている。しかし、このような基布を用いても、図4に鎖線で示すフィンガースカートの中央部で垂直方向に引き裂けが発生する場合がある。さらに強度を向上するためには、より太い糸を使用する、糸密度を大きくするなどの対策が必要であるが、太い糸の使用、糸密度の上昇ともに、フィンガースカートの柔軟性と損耗性を低下させるばかりでなく、フィンガースカートの重量上昇、航走時の燃費悪化、コスト増につながる。このために、フィンガースカートの柔軟性を保持したまま、強度を大きくしたエアークッション艇のスカート用材の開発が進められている。
例えば、耐用時間を長くするとともに、修復再生を容易に行えるようにして長期の使用を可能にし、さらに生産コストを低減したエアークッション艇のスカートとして、スカートが織布の両面に熱可塑性ポリウレタン層を形成させた熱可塑性ポリウレタン積層布よりなり、前記複数枚の熱可塑性ポリウレタン積層布を融着によりはぎ合わして所望の広幅に形成したエアークッション艇のスカートが提案されている(特許文献1)。
また、エアークッション艇の船首部分をシールするスカート、特に水面と接触するスカートの下端部材として用いられる耐久性に優れたエアークッション艇のスカート用材として、基布の両面に熱可塑性ポリウレタン層を形成したポリウレタン積層布からなるエアークッション艇のスカート用材であって、熱可塑性ポリウレタン層に、JIS A 硬度が50〜70の低硬度熱可塑性ポリウレタン系材料を用いたエアークッション艇のスカート用材が提案されている(特許文献2)。
スカート用材に必要な柔軟性を保持したまま、強度が大きく、引き裂けが発生しにくく、寿命が長いエアークッション艇のスカート用材として、脂肪族ポリアミド若しくはポリエステル平織物を基布としてゴム又は熱可塑性エラストマーをコーティングしてなるエアークッション艇のスカート用材において、長さ方向の強度が幅方向の強度より大なる基布を用いるエアークッション艇用のスカート用材が提案されている(特許文献3)。たて糸の打込本数を増やして密とし、よこ糸の打込本数を減らして粗とすると、長さ方向の強度が幅方向の強度より大なる基布を得ることができるが、強度を高めるために基布の密度を大きくすると、基布と熱可塑性ポリウレタンの接着性が低下する。
さらに、スカート用材に必要な柔軟性と接着性を保持したまま、強度が大きく、引き裂けが発生しにくく、寿命が長いエアークッション艇のスカート用材として、平織物を基布としてゴム又は熱可塑性エラストマーをコーティングしてなるエアークッション艇のスカート用材において、たて糸本数の5〜15%が引張強度15g/d以上の超強力繊維であり、たて糸本数の85〜95%が脂肪族ポリアミド繊維である平織物を基布とするエアークッション艇のスカート用材が提案されている(特許文献4)。部分的に超強力繊維を織り込むことにより、効率的に強度が向上するが、スカート用材の耐屈曲疲労性が低下するという問題が生ずる。また、基布に接着前処理を行う際に溶剤系接着剤を使用すると、乾燥時の熱収縮差により超強力糸繊維が収縮しにくいために、厚さの差が生じて凹凸となり、シート仕上がり厚さ厚くなり、重量増につながる。
上記のスカート用材は、いずれも引裂強度がなお不十分で、エアークッション艇のスカートの下端部に引き裂けが発生する場合があり、引き裂けのきっかけが発生すると上部まで進展してしまい、製品寿命が不安定である。
【特許文献1】特開平11−105705号公報
【特許文献2】特開2002−166828号公報
【特許文献3】特開2005−280431号公報
【特許文献4】特開2005−313881号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
本発明は、スカート用材に必要な柔軟性を保持したまま、強度が大きく、引き裂けが発生しにくく、寿命が長いエアークッション艇のスカート用材を提供することを目的としてなされたものである。
【課題を解決するための手段】
【0004】
本発明者らは、上記の課題を解決すべく鋭意研究を重ねた結果、スカート用材の基布とする脂肪族ポリアミド織物を、たて糸1本ごとによこ糸が交錯する平織部分と、たて糸複数本ごとによこ糸が交錯するマット織部分が交互に存在する組織とすることにより、スカート用材の幅方向の引裂強度を低下させることなく、長さ方向の引裂強度を飛躍的に高め、エアークッション艇のフィンガースカートの垂直方向の引き裂けの発生を効果的に防止し得ることを見いだし、この知見に基づいて本発明を完成するに至った。
すなわち、本発明は、
(1)脂肪族ポリアミド若しくはポリエステル織物を基布としてゴム又は熱可塑性エラストマーをコーティングしてなるエアークッション艇のスカート用材において、織物が、たて糸1本ごとによこ糸が交錯する平織部分と、たて糸複数本ごとによこ糸が交錯するマット織部分が交互に存在する組織からなることを特徴とするエアークッション艇のスカート用材、及び、
(2)マット織部分において、たて糸3本ごとによこ糸が交錯する(1)記載のエアークッション艇のスカート用材、
を提供するものである。
【発明の効果】
【0005】
本発明のエアークッション艇のスカート用材は、材質として、強度が大きい脂肪族ポリアミド又は若しくはポリエステル繊維を使用しており、該繊維の織物の構造によって、長さ方向の引裂強度が大きく、スカート用材をはぎ合わせて作製されたフィンガースカートにおいては、スカート用材の長さ方向が装着時の水平方向になるので、フィンガーカスートに垂直方向の引き裂けが発生しにくい。本発明のスカート用材に用いる基布は、平織部分とマット織部分が交互に存在する組織であり、従来の平織物よりなる基布と目付はほぼ同じであり、従来より用いている基布用の原糸と織機をそのまま使用し、新しい材料や設備などを必要としないので、経済的に製造することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0006】
本発明のエアークッション艇のスカート用材は、脂肪族ポリアミド若しくはポリエステル織物を基布としてゴム又は熱可塑性エラストマーをコーティングしてなるエアークッション艇のスカート用材において、織物が、たて糸1本ごとによこ糸が交錯する平織部分と、たて糸複数本ごとによこ糸が交錯するマット織部分が交互に存在する組織からなるエアークッション艇のスカート用材である。
図5は、本発明のエアークッション艇のスカート用材の基布の一態様の模式的部分断面図である。本態様の基布においては、たて糸13の1本ごとによこ糸14が交錯する平織部分15と、たて糸13の3本ごとによこ糸14が交錯するマット織部分16とが交互に存在する。よこ糸が交錯するたて糸の3本の組を1セットの3本マットと呼ぶと、本態様の基布は、6セットの3本マットにより一つのマット織部分が形成されている。
本発明のエアークッション艇のスカート用材においては、マット織部分において、よこ糸が交錯するたて糸の本数は、2〜6本であることが好ましく、3〜4本であることがより好ましく、3本であることがさらに好ましい。よこ糸が交錯するたて糸の本数が6本を超えると、マット織部分における基布の密度が高くなりすぎて、スカート用材の柔軟性が低下するとともに、基布とゴム又は熱可塑性エラストマーとの接着性が低下するおそれがある。よこ糸が交錯するたて糸の本数が3本であると、マット織部分における基布の密度を適度に保ち、スカート用材の柔軟性と、基布とゴム又は熱可塑性エラストマーとの接着性を維持することができる。本発明に用いる基布において、マット織部分においてよこ糸が交錯するたて糸の本数は、一定とすることができ、あるいは、2本マット、3本マット、4本マットなどの組み合わせからなる異なる本数とすることもできる。
【0007】
本発明のスカート用材において、一つのマット織部分を形成するたて糸の本数は、6〜72本であることが好ましく、12〜54本であることがより好ましい。一つのマット織部分を形成するたて糸の本数が6本未満であると、スカート用材の引裂強度が十分に向上しないおそれがある。一つのマット織部分を形成するたて糸の本数が72本を超えると、基布の密度が高いマット織部分が広くなりすぎて、スカート用材の柔軟性が低下するとともに、基布とゴム又は熱可塑性エラストマーとの接着性が低下するおそれがある。一つのマット織部分において、よこ糸が交錯するたて糸の本数とたて糸のセット数は任意に選択することができ、例えば、一つのマット織部分におけるたて糸の本数が36本であるとき、3本マットの12セットとすることができ、あるいは、4本マットの9セットとすることもできる。マット織部分を2本マットとすることにより、長さ方向の引裂強度は2倍に向上し、3本マットとすることにより、長さ方向の引裂強度は3倍に向上する。
本発明のスカート用材においては、よこ糸の密度と平織部分のたて糸密度とを若干低下させることにより、基布全体の密度の上昇を防ぎ、基布とゴム又は熱可塑性エラストマーとの密着性の低下と、スカート用材の柔軟性の低下を防止することができる。
本発明に用いる脂肪族ポリアミド若しくはポリエステルに特に制限はなく、例えば、脂肪族ポリアミドとしては、ナイロン66、ナイロン6、ナイロン46、ナイロン12などを挙げることができる。これらの中で、ナイロン66は、強度と弾性率が大きいので特に好適に用いることができる。さらに、ポリエステルとしては、芳香族ジカルボン酸成分と脂肪族ジオールのポリエステルであり、芳香族ジカルボン酸成分として、テレフタール酸を有するポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート並びにジカルボン酸成分として、80%以上のテレフタール酸と20%以下のメタフタール酸などの他の芳香族ジカルボン酸を含有するポリエステルを用いることができる。また、これらポリエステルの縮合成分として、20モル%以下のモノカルボキシルベンジルアルコール等の単量体成分を用いたものも使用することができる。
【0008】
本発明に用いる脂肪族ポリアミド若しくはポリエステル平織物を構成するフィラメントに特に制限はなく、例えば、1,400デシテックス、2,800デシテックス、5,600デシテックスなどのマルチフィラメントから、スカート用材に要求される柔軟性と強度に応じて適宜選択することができる。本発明に用いる脂肪族ポリアミド若しくはポリエステル平織物の目付に特に制限はないが、500〜1,500g/m2であることが好ましく、600〜800g/m2であることがより好ましい。
本発明に用いるゴム又は熱可塑性エラストマーの硬度は、JIS K 7311 7.にしたがってタイプAデュロメータを用いて測定した硬度が50〜70であることが好ましい。硬度が50未満であっても、70を超えても、フィンガースカートの耐久性が不十分となるおそれがある。
本発明に用いるゴムの種類に特に制限はなく、例えば、天然ゴムや、ニトリルゴム、クロロプレンゴムなどの合成ゴムを挙げることができる。本発明に用いる熱可塑性エラストマーの種類に特に制限はなく、ポリエチレンアジペート、ポリブチレンアジペート、ポリヘキサメチレンアジペート、ポリカプロラクトンなどのポリエステルポリオールとジフェニルメタンジイソシアネート、水添ジフェニルメタンジイソシアネートなどのジイソシアネートとの反応により得られるポリエステル系熱可塑性ポリウレタン樹脂、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコールなどのポリエーテルポリオールとジフェニルメタンジイソシアネート、水添ジフェニルメタンジイソシアネートなどのジイソシアネートとの反応により得られるポリエーテル系熱可塑性ポリウレタン樹脂などを挙げることができる。
【0009】
本発明において脂肪族ポリアミド若しくはポリエステル平織物にゴム又は熱可塑性エラストマーをコーティングする方法に特に制限はなく、例えば、脂肪族ポリアミド若しくはポリエステル平織物に接着処理を施し、ゴムはカレンダー加工、熱可塑性エラストマーは押出ラミネートすることにより、コーティングすることができる。
本発明のスカート用材は、図4に示すように、所定の長さと両端形状に裁断したのち、はぎ代12で熱融着などによりはぎ合わせてフィンガースカートとする。したがって、スカート用材の基布の長さ方向がフィンガースカートの水平方向となり、スカート用材の基布の幅方向がフィンガースカートの垂直方向となる。フィンガースカートに引き裂けが生ずるときは、図4に破線で示す垂直方向に引き裂ける場合が多い。すなわち、フィンガースカートは、フィンガースカートの水平方向にはたらく力により引き裂けが生ずる場合が多い。基布の長さ方向の引裂強度を幅方向の引裂強度より大きくして、水平方向にはたらく力に対する抵抗を大にすることにより、垂直方向の引き裂けの発生を防止することができる。
本発明のエアークッション艇のスカート用材に用いる基布は、従来の平織物よりなる基布と構成はほとんど変わらず、損耗性(耐摩耗性)を損なうことなく引裂強度を向上し、フィンガースカートの寿命を安定化することができる。スカート用材の基布に太い糸を使用すると、強度は向上するが、柔軟性が損なわれ、損耗性が低下し、スカート用材が厚く、重くなり、フィンガースカートの重量が重くなり、運行時の燃費悪化とコスト増につながる。
【実施例】
【0010】
以下に、実施例を挙げて本発明をさらに詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例によりなんら限定されるものではない。
なお、実施例及び比較例において、評価は下記の方法により行った。
(1)スカート用材の幅方向の引張試験
JIS K 6404−3試験方法Bに準じて、スカート用材の基布のよこ糸に平行な線を長さの一辺とする長さ25cm、幅3cmの長方形の試験片を採り、中央部に10cm間隔の標線をつけ、その標線の外側各2.5cmの位置につかみ線を入れる。引張試験機を用い、つかみ間隔15cm、引張速度20cm/minで引張試験を行い、切断に至るまでの最大荷重及びそのときの標線間の距離を読み取り、引張切断荷重(kN/m)及び伸度(%)を求める。
(2)スカート用材の引裂試験
JIS K 6404−4試験方法Bに準じて、スカート用材の基布のたて糸又はよこ糸に平行な線を長さの一辺とする長さ20cm、幅7.6cmの長方形の試験片を採り、幅7.6cmの辺の中央に辺と直角に鋭利な刃物で7.5cmの切込みを入れる。切込みが試験片のたて糸方向に直角になるものを長さ方向の試験片とし、切込みが試験片のたて糸の長手方向に平行になるものを幅方向の試験片とする。引張試験機を用い、切込みの両端をつかみ間隔7.5cmでつかみ、引張速度20cm/minで引き裂き、最大荷重(N)を測定する。
【0011】
実施例1
5,040デニールのナイロン66のマルチフィラメントを用いて、図5に示す態様の組織を有する基布を作製した。幅101.6mm(4インチ)にたて糸48本が配置された平織部分と、幅25.4mm(1インチ)に6セットの3本マットからなるたて糸18本が配置されたマット織部分とを繰り返し、よこ糸は、25.4mm(1インチ)に11本を打ち込んだ。得られた基布の目付はマット部込みで620g/m2であり、マット部を除くと590g/m2であった。
この基布に接着前処理を行い、ポリエステル系熱可塑性ポリウレタンを押出ラミネーションにより両面に積層して、厚さ2.1mmのスカート用材を得た。
このスカート用材の幅方向の引張切断荷重は130kN/m、伸度は35%であり、引裂試験における最大荷重は、長さ方向3,000N、幅方向1,500Nであった。
実施例2
基布の組織を、幅203.2mm(8インチ)にたて糸96本が配置された平織部分と、幅50.8mm(2インチ)に12セットの3本マットからなるたて糸36本が配置されたマット織部分との繰り返しとした以外は、実施例1と同様にして、基布とスカート用材を作製した。
得られた基布の目付はマット部込みで660g/m2であり、マット部を除くと590g/m2であった。った。スカート用材の幅方向の引張切断荷重は130kN/m、伸度は35%であり、引裂試験における最大荷重は、長さ方向3,000N、幅方向1,500Nであった。
比較例1
5,040デニールのナイロン66のマルチフィラメントを用いて、図6に示す平織物からなる基布を作製した。たて糸は、25.4mm(1インチ)に13本打ち込み、よこ糸は25.4mm(1インチ)に12.5本打ち込んだ。
得られた基布の目付は660g/m2であった。スカート用材の幅方向の引張切断荷重は150kN/m、伸度は35%であり、引裂試験における最大荷重は、長さ方向1,500N、幅方向1,500Nであった。
実施例1〜2及び比較例1の結果を、第1表に示す。
【0012】
【表1】

【0013】
第1表に見られるように、たて糸が平織部分とマット織部分を構成する基布から得られる実施例1〜2のスカート用材は、平織物の基布から得られる比較例1のスカート用材と比べて、基布の目付は同程度であるが、長さ方向の引裂強度が2倍あり、実施例1〜2のスカート用材の長さ方向を水平方向としてはぎ合わせてエアークッション艇のフィンガースカートを作製したとき、垂直方向の引き裂けが発生しにくい。
【産業上の利用可能性】
【0014】
本発明のエアークッション艇のスカート用材は、長さ方向の引裂強度が大きく、スカート用材をはぎ合わせて作製されたフィンガースカートにおいては、スカート用材の長さ方向が装着時の水平方向になるので、フィンガーカスートに垂直方向の引き裂けが発生しにくい。本発明のスカート用材に用いる基布は、平織部分とマット織部分が交互に存在する組織であり、従来の平織物よりなる基布と目付はほぼ同じであり、従来より用いている基布用の原糸と織機をそのまま使用し、新しい材料や設備などを必要としないので、経済的に製造することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】エアークッション艇の一例を船底側から眺めた斜視図である。
【図2】エアークッション艇の他の例の船首部分を示す部分斜視図である。
【図3】フィンガースカートの一例の斜視図である。
【図4】フィンガースカートの一例の展開図である。
【図5】本発明のスカート用材の基布の一態様の模式的部分断面図である。
【図6】平織物からなる基布の一例の模式的部分断面図である。
【符号の説明】
【0016】
1 船体
2 水中フィン
3 サイドハル
4 船尾スカート
5 船首スカート
6 空気室
7 空気噴射装置
8 フィンガースカート
9 エアーバッグ
10 反転防止用ストラップ
11 スカート用材
12 はぎ代
13 たて糸
14 よこ糸
15 平織部分
16 マット織部分

【特許請求の範囲】
【請求項1】
脂肪族ポリアミド若しくはポリエステル織物を基布としてゴム又は熱可塑性エラストマーをコーティングしてなるエアークッション艇のスカート用材において、織物が、たて糸1本ごとによこ糸が交錯する平織部分と、たて糸複数本ごとによこ糸が交錯するマット織部分が交互に存在する組織からなることを特徴とするエアークッション艇のスカート用材。
【請求項2】
マット織部分において、たて糸3本ごとによこ糸が交錯する請求項1記載のエアークッション艇のスカート用材。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2009−126502(P2009−126502A)
【公開日】平成21年6月11日(2009.6.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−307420(P2007−307420)
【出願日】平成19年11月28日(2007.11.28)
【出願人】(000005902)三井造船株式会社 (1,723)
【出願人】(000003159)東レ株式会社 (7,677)
【出願人】(000003148)東洋ゴム工業株式会社 (2,711)
【Fターム(参考)】