説明

エレベータのロープテンション測定装置の取り付け構造

【課題】常設したロープテンション測定装置に接続されるセンサーケーブルの主ロープへの巻き付きを防ぐことができる。
【解決手段】ロープテンション測定装置6を主ロープ5に常設可能であるとともに、ロープテンション測定装置6から延設される第1センサーケーブル7aと、この第1センサーケーブル7aが取り付けられるとともに、第1センサーケーブル7aと接続される第1信号接触子10aが設けられ、主ロープ5の回転及び上下動に追従する内側円筒ブラケット8aと、この内側円筒ブラケット8aが収納され、この内側円筒ブラケット8aの第1信号接触子10aと接触する第2信号接触子10bが設けられる外側円筒ブラケット8bと、第2信号接触子10bから延設されるとともに、外側円筒ブラケット8bに取り付けられる第2センサーケーブル7bを備えた構成にしてある。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、エレベータの乗かごとカウンタウエイトを吊り下げる複数の主ロープのロープテンションを測定するエレベータのロープテンション測定装置の取り付け構造に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、エレベータの乗かごとカウンタウエイトを吊り下げる主ロープには、鋼製のワイヤロープが用いられている。乗かごの重量が重く、かつ昇降行程が長い高速・高揚程のエレベータでは例えば8から10本の主ロープが用いられることが多い。近年、建築物のより一層の高層化によりエレベータも高速・高揚程化している。このようなエレベータの主ロープのロープテンションは、乗り心地の品質上重要な保全項目であり、点検調整の精度向上と効率化が望まれている。
【0003】
主モータで巻き上げられる主ロープのロープテンションにアンバランスがある場合、ロープ素線の摩耗・切断、ストランド切れ等、ロープ寿命に悪影響を及ぼすだけではなく、巻上機のシーブ溝の早期摩耗にもつながる等の問題がある。また、ひとたびシーブに偏摩耗が生じると、昇降行程が長い場合に送り出される主ロープ長に差が出て、さらにロープテンションのアンバランスが拡大する。これらは昇降路行程に比例して顕著となるため、経時変化によるロープテンションのバランス崩れを直すため定期的なロープテンションの点検と調整が高揚程のエレベータで特に重要である。
【0004】
そこで従来、容易に定期的なロープテンションの点検または調整を行なうための装置として、ロープテンション測定装置が提案されている(特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平09−257610号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、前述した従来のロープテンション測定装置では、ロープテンションを測定するために作業者が現地エレベータへ行き、エレベータ昇降路内に入らなければならないので、ロープテンション計測作業に時間を要するという問題がある。
【0007】
なお、常設可能なロープテンション測定装置を設けることが考えられるが、その場合には、センサーケーブルがロープへ巻き付くなどのロープテンション測定装置に係わる異常を防止する何らかの仕組みが必要となる。
【0008】
本発明は、前述した従来技術における実状からなされたもので、その目的は、常設したロープテンション測定装置に接続されるセンサーケーブルの主ロープへの巻き付きを防ぐことができるエレベータのロープテンション測定装置の取り付け構造を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
前述の目的を達成するために、本発明に係るエレベータのロープテンション測定装置の取り付け構造は、乗かごとカウンタウエイトとを連結する主ロープにロープテンション測定装置を取り付けるエレベータのロープテンション測定装置の取り付け構造において、前記ロープテンション測定装置から延設される第1センサーケーブルと、この第1センサーケーブルが取り付けられるとともに、前記第1センサーケーブルと接続される第1信号接触子が設けられ、前記主ロープの回転及び上下動に追従する内側円筒ブラケットと、この内側円筒ブラケットが収納され、この内側円筒ブラケットの前記第1信号接触子と接触する第2信号接触子が設けられる外側円筒ブラケットと、前記第2信号接触子から延設されるとともに、前記外側円筒ブラケットに取り付けられる第2センサーケーブルを備えたことを特徴としている。
【0010】
このように構成した本発明は、ロープテンション測定装置を主ロープに常設可能であるので、ロープテンションを計測する度に昇降路内に入る必要がない。また、主ロープの回転や上下移動を生じた際には、この主ロープの回転や上下動に追従して、ロープテンション測定装置から延設される第1センサーケーブルが取り付けられる内側円筒ブラケットが回転や上下動を行うが、この間、第1信号接触子と第2信号接触子との接触は維持される。したがって、第1センサーケーブル、第1信号接触子、第2信号接触子、及び第2センサーケーブルを介して、ロープテンション測定装置の計測結果を出力することができる。すなわち、主ロープの回転や上下動に追従して第1センサーケーブルが取り付けられる内側円筒ブラケットが回転や上下動しながら、この内側円筒ブラケットが収納される外側円筒ブラケットに取り付けられる第2センサーケーブルからロープテンション測定装置の計測結果を出力することができる。これにより、主ロープの回転や上下動を生じた際の第1,第2センサーケーブルの主ロープへの巻き付けを防ぐことができる。
【0011】
また、本発明に係るエレベータのロープテンション測定装置は、前記発明において、前記第2センサーケーブルを介して出力される信号が一定期間無いときには、異常であると判定するようにしたことを特徴としている。
【0012】
また、本発明に係るエレベータのロープテンション測定装置は、前記発明において、前記内側円筒ブラケットを、前記主ロープのロープ端を機械室に固定するロープ端固定装置に含まれるロープソケットに保持させ、前記外側円筒ブラケットを、この外側円筒ブラケットに接続される支持部を介して前記機械室に固定したことを特徴としている。
【発明の効果】
【0013】
本発明は、ロープテンション測定装置を主ロープに常設可能であるので、ロープテンションを計測する度に昇降路内に入る必要がなく、ロープテンション計測作業時間を低減できる。また、主ロープの回転や上下動に追従して第1センサーケーブルが取り付けられる内側円筒ブラケットが回転や上下動しながら、この内側円筒ブラケットが収納される外側円筒ブラケットに取り付けられる第2センサーケーブルからロープテンション測定装置の計測結果を出力することができる。これにより、主ロープの回転や上下動を生じた際の第1,第2センサーケーブルの主ロープへの巻き付けを防ぐことができ、長期間にわたって安定してロープテンションを計測することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明に係るエレベータのロープテンション測定装置の取り付け構造の一実施形態を示す斜視図である。
【図2】本実施形態に係る取り付け構造に備えられる2重構造円筒ブラケットを拡大して示す斜視図である。
【図3】図2に示す2重構造円筒ブラケットを構成する内側円筒ブラケットの斜視図である。
【図4】図2に示す2重構造円筒ブラケットを構成する外側円筒ブラケットの斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明に係るエレベータのロープテンション測定装置の取り付け構造の実施の形態を図に基づいて説明する。
【0016】
図1は本発明に係るエレベータのロープテンション測定装置の取り付け構造の一実施形態を示す斜視図、図2は本実施形態に係る取り付け構造に備えられる2重構造円筒ブラケットを拡大して示す斜視図、図3は図2に示す2重構造円筒ブラケットを構成する内側円筒ブラケットの斜視図、図4は図2に示す2重構造円筒ブラケットを構成する外側円筒ブラケットの斜視図である。
【0017】
一般に、2:1ローピングエレベータは、機械室に巻上機及びそらせシーブが設置され、これらの巻上機及びそらせシーブに複数本の主ロープが巻き掛けられており、乗かごとカウンタウエイトを吊り下げる主ロープのロープ端は、それぞれ機械室に固定されている。
【0018】
すなわち、図1に示すように、主ロープ5のロープ端にシンブルロッド4aを有するロープソケット4が取り付けられ、このロープソケット4のシンブルロッド4aが機械室に形成された通し穴3に挿入され、シンブルロッド4aに装着したばね2と、このばね2を圧縮するようにシンブルロッド4aに形成したねじ部に螺合させたナット1を介して主ロープ5のロープ端は機械室に固定される。
【0019】
前述したシンブルロッド4aを有するロープソケット4、通し穴3、ばね2及びナット1は、主ロープ5のロープ端を固定するロープ端固定装置を構成している。
【0020】
ロープテンション測定装置6は、常設するように取り付けてあり、主ロープ5の移動の少ないロープソケット4近傍の位置に配置してある。
【0021】
本実施形態に係る取り付け構造は、同図1,2に示すように、内側円筒ブラケット8aと、この内側円筒ブラケット8aが収納される外側円筒ブラケット8bとから構成された2重構造円筒ブラケットを備えており、この2重構造円筒ブラケットをロープテンション測定装置6の近傍に設けてある。外側円筒ブラケット8bの上端部に支持部9を取り付けてあり、この支持部9を機械室の通し穴3に挿通させて機械室に固定してある。すなわち、外側円筒ブラケット8bを、この外側円筒ブラケット8bに接続される支持部9を介して機械室に固定してある。一方、内側円筒ブラケット8aは、ロープソケット4に保持させてあり、主ロープ5の回転及び上下動に追従するようにしてある。
【0022】
内側円筒ブラケット8aの外側には、図3に示すように、ロープテンション測定装置6から延設される第1センサーケーブル7aが取り付けられており、この第1センサーケーブル7aのケーブル端には例えば長方形に形成した第1信号接触子10aを設けてある。また、外側円筒ブラケット8bの外側には、図4に示すように、第2センサーケーブル7bが取り付けられており、この外側円筒ブラケット8bの内側には、周方向の全域に沿って前述の第1信号接触子10aと接触するとともに、第2センサーケーブル7bと接続される第2信号接触子10bを取り付けてある。前述した内側円筒ブラケット8aに設けられる第1信号接触子10aの上下方向の寸法は、主ロープ5の伸び量の限界値を考慮した寸法に設定してある。なお、第1,第2信号接触子10a,10bは、複数の信号の混合を避けるために、信号の種類毎に設けてもよい。
【0023】
このように構成した本実施形態にあって、ロープソケット4を含むロープ端固定装置とロープテンション測定装置6とが正常に設置されているときには、ロープテンション測定装置6から出力される信号が第1センサーケーブル7a、第1信号接触子10a、第2信号接触子10b、第2センサーケーブル7bを介して導かれ、所望のロープテンションの計測を実施することができる。
【0024】
また、主ロープ5が経時変化によって限界値を超える程度まで伸びたり、ロープ端固定装置の取り付け位置に異常なずれを生じたり、あるいはロープテンション測定装置6が落下する等の異常を生じた場合には、第1信号接触子10aと第2信号接触子10bとが接触しなくなり、測定結果に相応する信号を出力できなくなる。したがって、第2信号接触子7bを介して出力される信号が一定期間無いときには、上述した何らかの異常が発生したと判定することができる。
【0025】
本実施形態に係るロープテンション測定装置の取り付け構造によれば、ロープテンション測定装置6を主ロープ5に常設可能であるので、ロープテンションを計測する度に昇降路内に入る必要がない。これにより、ロープテンション計測作業時間を低減できる。また、前述したようなロープテンション計測作業の間、主ロープ5の回転や上下移動を生じた際には、この主ロープ5の回転や上下動に追従して、ロープテンション測定装置6から延設される第1センサーケーブル7aが取り付けられる内側円筒ブラケット8aが回転や上下動を行うが、この間、第1信号接触子10aと第2信号接触子10bとの接触は維持される。したがって、第1センサーケーブル7a、第1信号接触子10a、第2信号接触子10b、及び第2センサーケーブル7bを介して、ロープテンション測定装置6の計測結果を出力することができる。すなわち、主ロープ5の回転や上下動に伴って第1センサーケーブル7aが取り付けられる内側円筒ブラケット8aが回転や上下動しながら、この内側円筒ブラケット8aが収納される外側円筒ブラケット8bに取り付けられる第2センサーケーブル7bからロープテンション測定装置6の計測結果を出力することができる。これにより、主ロープ5の回転や上下動を生じた際の第1,第2センサーケーブル7a,7bの主ロープ5への巻き付けを防ぐことができ、長期間にわたって安定してロープテンションを計測することができる。
【符号の説明】
【0026】
1 ナット
2 ばね
3 通し穴
4 ロープソケット
4a シンブルロッド
5 主ロープ
6 ロープテンション測定装置
7a 第1センサーケーブル
7b 第2センサーケーブル
8a 内側円筒ブラケット
8b 外側円筒ブラケット
9 支持部
10a 第1信号接触子
10b 第2信号接触子

【特許請求の範囲】
【請求項1】
乗かごとカウンタウエイトとを連結する主ロープにロープテンション測定装置を取り付けるエレベータのロープテンション測定装置の取り付け構造において、
前記ロープテンション測定装置から延設される第1センサーケーブルと、この第1センサーケーブルが取り付けられるとともに、前記第1センサーケーブルと接続される第1信号接触子が設けられ、前記主ロープの回転及び上下動に追従する内側円筒ブラケットと、この内側円筒ブラケットが収納され、この内側円筒ブラケットの前記第1信号接触子と接触する第2信号接触子が設けられる外側円筒ブラケットと、前記第2信号接触子から延設されるとともに、前記外側円筒ブラケットに取り付けられる第2センサーケーブルを備えたことを特徴とするエレベータのロープテンション測定装置の取り付け構造。
【請求項2】
請求項1に記載のエレベータのロープテンション測定装置の取り付け構造において、
前記第2センサーケーブルを介して出力される信号が一定期間無いときには、異常であると判定するようにしたことを特徴とするエレベータのロープテンション測定装置の取り付け構造。
【請求項3】
請求項1または2に記載のエレベータのロープテンション測定装置の取り付け構造において、
前記内側円筒ブラケットを、前記主ロープのロープ端を機械室に固定するロープ端固定装置に含まれるロープソケットに保持させ、
前記外側円筒ブラケットを、この外側円筒ブラケットに接続される支持部を介して前記機械室に固定したことを特徴とするエレベータのロープテンション測定装置の取り付け構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2011−152968(P2011−152968A)
【公開日】平成23年8月11日(2011.8.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−14295(P2010−14295)
【出願日】平成22年1月26日(2010.1.26)
【出願人】(000232955)株式会社日立ビルシステム (895)
【Fターム(参考)】