エンジン
【課題】熱交換器内に発生するエア溜まりを除去出来るエンジンの提供。
【解決手段】エンジン10は、冷却水ポンプ114とウォータージャケット113との間で冷却水を循環させる第1回路C1と、冷却水ポンプ114、サーモスタットバルブ115、冷却水タンク116、及びキールクーラー8の間で、冷却水を循環させる第2回路C2と、を備えており、ウォータージャケット内の冷却水温度に応じてサーモスタットバルブが開閉する、エンジンであって、第2回路においてサーモスタットバルブを迂回するバイパス配管126と、バイパス配管を開閉する切替弁127と、を備えている。
【解決手段】エンジン10は、冷却水ポンプ114とウォータージャケット113との間で冷却水を循環させる第1回路C1と、冷却水ポンプ114、サーモスタットバルブ115、冷却水タンク116、及びキールクーラー8の間で、冷却水を循環させる第2回路C2と、を備えており、ウォータージャケット内の冷却水温度に応じてサーモスタットバルブが開閉する、エンジンであって、第2回路においてサーモスタットバルブを迂回するバイパス配管126と、バイパス配管を開閉する切替弁127と、を備えている。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、水冷式のエンジンに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、サーモスタットバルブを用いて、熱交換器を流れる水量を変更するエンジンが知られている。
【0003】
図16は、冷却に関係する従来のエンジン10の構成を示すブロック図である。このエンジン10は、冷却水ポンプ114とウォータージャケット113との間で冷却水を循環させる第1回路C1と、冷却水ポンプ114、サーモスタットバルブ115、冷却水タンク116、及び熱交換器であるキールクーラー8の間で、冷却水を循環させる第2回路C2とを備えている。サーモスタットバルブ115は、ウォータージャケット113内の冷却水温度に応じて開閉し、第2回路C2を流れる水量が変更される。
【0004】
作業者が上記エンジン10の冷却水回路(第1回路C1及び第2回路C2)に冷却水を充填する際、冷却水は冷却水タンク116の給水口116aから補給される。給水口116aの位置は冷却水回路において最も高い位置にあることから、冷却水タンク116が冷却水によって満たされると、冷却水回路は冷却水によって満たされるはずである。しかし、冷却水タンク116が冷却水によって満たされていても、冷却水回路内にエア溜まりが残留することがある。
【0005】
特許文献1は、エンジンの冷態時にウォータージャケット又は冷却水ポンプのエア溜まりを除去する技術を開示している。特許文献1は、冷却水の給水口とウォータージャケットとを接続する連通管、又は冷却水の給水口と冷却水ポンプとを接続する連通管を設けることを提示している。これらの連通管を介して冷却水を供給することによって、ウォータージャケット又は冷却水ポンプのエア溜まりが除去される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2003−254060号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
エア溜まりが、熱交換器に発生する場合がある。熱交換器における冷却水経路の内径は比較的小さいため、エア溜まりの発生によって冷却水経路が容易に塞がれてしまう。この場合、冷却水タンクに冷却水を補給しても、冷却水がエア溜まりを押し出すことができない。この結果、冷却水回路内における水位の上昇が制限を受けてしまう。
【0008】
図17は、冷却水タンク116、冷却水ポンプ114、及び接続経路200を示す模式図である。接続経路200は、冷却水タンク116を冷却水ポンプ114に接続する経路であり、図16におけるクーラー行き配管124、ポンプ行き配管125、及びキールクーラー8を合わせた経路に相当している。図17において、冷却水タンク116は冷却水ポンプ114よりも高い位置にある。このため、冷却水タンク116に冷却水が満たされているとき、冷却水ポンプ114も冷却水で満たされるはずである。ところが、接続経路200(キールクーラー8)の一定範囲内に、エア溜まりAが発生している。エア溜まりAが、エア溜まりAを越えた領域における水位の上昇を妨げるため、冷却水ポンプ114の水位L1は、冷却水タンク116の水位L0よりも低い。ここで、水位L0と水位L1との水位差H2は、次のようにして決定される。エア溜まりAにおいて、末端水位L2は、エア溜まりAの冷却水タンク116側の水位であり、先端水位L3は、エア溜まりAの冷却水ポンプ114側の水位である。水位L0と末端水位L2との水位差H0は、水位L1と先端水位L3との水位差H1に等しく、両水位差H0、H1はエア溜まりAの両側でバランスしている。このため、水位差H2は、末端水位L2と先端水位L3との水位差(つまり、エア溜まりAの量)に等しくなる。
【0009】
この結果、冷却水タンク116が冷却水によって満たされているにも拘わらず、水位L1が、冷却水ポンプ114のインペラ室まで上がらない。冷却水ポンプが冷却水で満たされていない状態で作動されると、冷却水ポンプの作動不良が発生し、熱交換器の熱交換効率が低下する。この結果、エンジンの冷却不良が発生する。
【0010】
上記エンジンでは、冷態時にサーモスタットバルブが閉じている。このため、給水時に冷却水は、冷却水タンク、熱交換器、冷却水ポンプ、ウォータージャケットの順に充填される。給水中に熱交換器でエア溜まりが発生すると、その後の冷却水の移動が妨げられ、冷却水ポンプやウォータージャケットを冷却水によって満たすことができない。
【0011】
特許文献1に記載される技術は、ウォータージャケット又は冷却水ポンプに存在するエア溜まりを除去するが、熱交換器に存在するエア溜まりは除去しない。熱交換器のエア溜まりが存在する限り、熱交換器の熱交換効率が低下し、エンジンの冷却が不十分となる。
【0012】
そこで、本発明は、熱交換器内に発生するエア溜まりを除去できるエンジンを提供する。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明に係るエンジンは、冷却水ポンプとウォータージャケットとの間で冷却水を循環させる第1回路と、冷却水ポンプ、サーモスタットバルブ、冷却水タンク、及び熱交換器の間で、冷却水を循環させる第2回路と、を備えており、ウォータージャケット内の冷却水温度に応じてサーモスタットバルブが開閉する、エンジンであって、サーモスタットバルブを迂回しながら冷却水ポンプを冷却水タンクに接続するバイパス経路と、バイパス経路を開閉する切替弁と、を備えている。
【0014】
バイパス経路は、例えば、配管、又は鋳造物に形成される貫通孔である。バイパス経路は、冷却水ポンプを冷却水タンクに直接又は間接に接続する経路であればよい。
【0015】
切替弁を開位置に切り換えることにより、冷却水ポンプ、冷却水タンク、熱交換器との間に循環経路が形成される。このため、まず、バイパス経路を介して冷却水タンクから冷却水ポンプに冷却水を直接充填できる。冷却水ポンプが満たされるので、エンジンの起動によって冷却水ポンプを駆動できる。また、冷却水で満たされた冷却水ポンプを駆動することによって、サーモスタットバルブの開度に関係なく、熱交換器にバイパス経路を介して勢いよく冷却水を流すことができる。この結果、熱交換器内のエア溜まりが水流と一緒に送り出されて、熱交換器からエア溜まりを除去できる。
【0016】
好ましくは、熱交換器は、冷却水と船外の水との間で熱交換を行うキールクーラーである。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】図1は、ライフボートの側面図である。
【図2】図2は、左側から見たエンジンの縦断面図である。
【図3】図3は、後側から見たエンジンの横断面図である。
【図4】図4は、オイルパン間座の斜視図である。
【図5】図5は、オイルパン間座の上面図である。
【図6】図6は、右側から見たオイルパン間座の縦断面図である。
【図7】図7は、オイルパン間座の下面図である。
【図8】図8は、オイルパン間座の前面図である。
【図9】図9は、エンジンの右面図である。
【図10】図10は、エンジンの上面図である。
【図11】図11は、シリンダヘッドカバーの上面図である。
【図12】図12は、図11のA−A断面図である。
【図13】図13は、冷却に関係するエンジンの構成を示すブロック図である。
【図14】図14は、エンジンの正面図である。
【図15】図15は、エンジンの上面図である。
【図16】図16は、冷却に関係する従来のエンジンの構成を示すブロック図である。
【図17】図17は、冷却水タンク、冷却水ポンプ、及び接続経路を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
(第1実施形態)
図1は、ライフボート1の側面図である。ライフボート1は、船殻2、プロペラ3、及びプロペラガード4を備えている。船殻2の内部は仕切りによって分割されており、船殻2の内部に船底部5、客室6、及び操縦室7が形成されている。下側の船底部5は、船殻2の外部に熱交換器としてのキールクーラー8を備えており、船殻2の内部にエンジン10を備えている。エンジン10は、プロペラ3を駆動する。中間の客室6は、多数の座席9を備えている。上側の操縦室7は、ライフボート1を操縦するための機器を備えている。
【0019】
図2、図3を参照して、第1実施形態に係るエンジン10を説明する。図2は、左側から見たエンジン10の縦断面図である。図3は、後側から見たエンジン10の横断面図である。縦断面及び横断面は、クランク軸16を基準に設定されている。
【0020】
図2において、エンジン10は、シリンダヘッド11、シリンダブロック12、オイルパン間座20、オイルパン13、オイルポンプ14、3つのピストン15、クランク軸16、及びフライホイール17を備えている。エンジン10は、3気筒を有している。
【0021】
図3において、エンジン10は、オイルレベルゲージガイド18及びオイルレベルゲージ19を備えている。オイルレベルゲージガイド18は、下ゲージガイド18a及び上ゲージガイド18bを連結することによって構成されている。オイルレベルゲージ19は、オイルレベルゲージガイド18の内部に挿入されている。
【0022】
ライフボート1は、その姿勢が変動する環境で用いられる。ライフボート1の姿勢が水平姿勢に保たれているときにエンジン10の据付面Sが水平面に一致するように、エンジン10はライフボート1に据え付けられている。
【0023】
図3に示されるように、据付面Sは、エンジン10のシリンダブロック12に固定される機関脚60の下面を指している。ライフボート1は機関脚60を固定するための機関台61を備えており、機関台61の上面と据付面Sとが接するようにエンジン10がライフボート1に据え付けられる。
【0024】
図4−8を参照して、オイルパン間座20を説明する。図4は、オイルパン間座20の斜視図である。図5は、オイルパン間座20の上面図である。図6は、右側から見たオイルパン間座20の縦断面図である。図7は、オイルパン間座20の下面図である。図8は、オイルパン間座20の前面図である。以下、特に明記する場合を除いて、図5−8における上面、右面、下面、及び後面は、据付面Sが水平面に一致する場合におけるオイルパン間座20の上面、右面、下面、及び後面を指している。
【0025】
図4において、オイルパン間座20は、接続壁21、ゲージ孔22、仕切り壁23、吸入通路24、2つの戻り通路25、2つの逆止弁26、及びジョイント27を備えている。接続壁21は、上下方向に延びる筒状の壁であり、オイルパン13をシリンダブロック12に接続する。ゲージ孔22は、オイルパン13の内部に下ゲージガイド18aを挿入するための孔であり、接続壁21を貫通している。仕切り壁23は、シリンダブロック12の内部とオイルパン13の内部とを仕切る。吸入経路24は、オイルポンプ14にオイルパン13の内部からオイルを吸入させるための経路であり、仕切り壁23を貫通している。各戻り経路25は、シリンダブロック12の内部からオイルパン13の内部にオイルを戻すための経路であり、仕切り壁23を貫通している。各逆止弁26は、各戻り経路25におけるオイルの逆流を防止する。ジョイント27は、シリンダブロック12の下側からシリンダブロック12内部の圧力を逃すブリーザを構成している。
【0026】
図5において、吸入通路24は、オイルパン間座20の左後部から前後及び左右の中央部に向けて形成されている。吸入通路24の出口24aは、オイルパン間座20の左後部において、上方に開口している。2つの戻り通路25は、オイルパン間座20の中心位置を挟んで、前後方向で対称に配置されている。各戻り通路25の入口25aは、上方に開口している。
【0027】
図5において、オイルパン間座20は下ブリーザ孔28を備えている。下ブリーザ孔28は、オイルパン13の内部にジョイント27を挿入するための孔であり、仕切り壁22の上側において接続壁21を貫通している。ジョイント27の先端は、接続壁21の内側に突出している。
【0028】
図6において、ジョイント27の内部に、シリンダブロック12内部の圧力を逃すための下逃し通路27aが形成されている。
【0029】
図6において、吸入通路24の入口24bは、オイルパン間座20の前後及び左右の中央部において、下方に開口している。各戻り通路25の出口25bは、下方に開口している。各逆止弁26は、各出口25bを塞ぐ弁体26a、及び弁体26aを重力方向に付勢する重り26bを有している。このため、エンジン10の姿勢が逆転することによってオイルが戻り通路25を逆流しうる場合に、重り26bが弁体26aを出口25bの閉鎖方向に付勢する。この結果、戻り経路25におけるオイルの逆流が防止される。
【0030】
図6において、オイルパン間座20はオイルストレーナ29を備えている。オイルストレーナ29は、吸入通路24の入口24bに配置されている。
【0031】
図7において、オイルストレーナ29は、仕切り壁22の下面に取り付けられており、オイルパン間座20の前後及び左右の中央部に位置している。オイルストレーナ29は、多数の貫通孔が形成された板状部材である。吸入通路24の入口24bも、オイルパン間座20の前後及び左右の中央部に配置されており、下方に開口している。吸入通路24の入口24bは、オイルストレーナ29によって塞がれている。
【0032】
図8において、ジョイント27は、オイルパン間座20の後部に配置されている。
【0033】
図3に示されるように、オイルレベルゲージガイド18は、オイルパン間座20の右上方から中央下方に向けて挿入されている。下ゲージガイド18aがゲージ孔22において接続壁21に固定されている。図2、図3に示されるように、オイルレベルゲージガイド18の先端(下端)は、平面視において、オイルパン間座20の前後及び左右の中央部に位置している。
【0034】
上述のオイルパン間座20を有するエンジン10の効果を説明する。
【0035】
オイルパン間座20は逆止弁26を備えている。このため、エンジン10の姿勢が逆転したときにオイルがオイルパン13からシリンダブロック12に逆流しない。したがって、エンジン10は、据付面Sをクランク軸16周りで360°回転させる環境に対応している。
【0036】
また、エンジン10は、クランク軸16周りの回転だけでなく横軸周りの揺動にも対応しており、つまり据付面Sを水平面に対して傾かせる環境に対応している。ここで、横軸は、水平面内でクランク軸16に直交する軸を指しており、横軸周りの揺動は、前後に対する揺動を指している。
【0037】
図2は、8°傾斜時のオイルレベルL1、及び35°傾斜時のオイルレベルL2を示している。8°及び35°は、前記横軸周りの揺動による、水平面に対する据付面Sの傾斜角度を示している。一般の水平据付仕様では、ライフボート1は水平面に対して8°傾斜した状態で、ライフボート1を搭載する船舶に取り付けられる。また、自由降下仕様では、ライフボート1は水平面に対して35°傾斜した状態で、船舶に取り付けられる。図2に示されるように、オイルパン13の底面からオイルレベルまでのオイル高さは、オイルレベルの傾斜角度によって大きく影響を受ける。35°のオイルレベルL2において、オイルパン13の後端部におけるオイル高さは、低くなっている。
【0038】
オイルパン13の関連部品としての仕切り壁23、逆止弁26、吸入経路24、オイルストレーナ29は、オイルパン間座20に取り付けられており、オイルパン13の関連部品としてのオイルレベルゲージガイド18は、オイルパン間座20のゲージ孔28に取り付け可能である。このため、エンジン10は、オイルパン13の関連部品をオイルパン間座20に集約でき、エンジン10の組立工数を削減できる。また、オイルの吸入経路が片持ち支持の配管ではなく、仕切り壁23に形成された孔(吸入通路24)であるので、エンジン10は、オイルの吸入経路の耐衝撃性、耐振動性を確保できる。また、オイルレベルゲージガイド18を利用して、オイルパン13内のオイルを外部に排出できる。
【0039】
吸入経路24の入口24bは、平面視におけるオイルパン間座20の中央部に形成されている。図2に示されるように、オイルパン間座20の中央部では、据付面Sの傾斜角度によるオイル高さの変動が抑制されている。このため、ライフボート1の姿勢の変動により、据付面Sが水平面に対して傾斜しても、オイルポンプ14によるオイルの吸引が阻害されにくい。
【0040】
オイルレベルゲージガイド18の先端は、平面視におけるオイルパン間座20の中央部に位置している。図2に示されるように、オイルパン間座20の中央部では、据付面Sの傾斜角度によるオイル高さの変動が抑制されている。このため、据付面Sが水平面に対して傾斜しても、オイルレベルゲージ19により検出されるオイルレベルの変動が抑制される。
【0041】
次に、図9、図10を参照して、エンジン10におけるブリーザ機構を説明する。図9は、エンジン10の右面図である。図10は、エンジン10の上面図である。
【0042】
図9において、エンジン10は、上ブリーザ40、及び下ブリーザとしての上述のジョイント27を備えている。上ブリーザ40は、シリンダブロック12の上側からシリンダブロック12内部の圧力を逃すブリーザを構成している。ジョイント27は、上述したように、シリンダブロック12の下側からシリンダブロック12内部の圧力を逃すブリーザを構成している。
【0043】
図9において、エンジン10は、ミストセパレータ30、上配管31、及び下配管32を備えている。ミストセパレータ30は、ガスの中に含まれるオイルミストを除去する。上配管31は、上ブリーザ40をミストセパレータ30の入口に接続している。下配管32は、ジョイント27をミストセパレータ30の入口に接続している。
【0044】
図10において、エンジン10は、吸気マニホールド33、合流配管34、及び吸気サイレンサー35を備えている。合流配管34はミストセパレータ30の出口を吸気マニホールド33に接続している。吸気サイレンサー35は外気を吸気マニホールド33に供給する。吸気マニホールド33は、外気及びシリンダブロック12内部から逃されたブローバイガスを各気筒に分配する。
【0045】
図9、図10に示されるように、シリンダブロック12内の圧力は、次の2つの経路を介して逃される。第1の経路では、この圧力は、上ブリーザ40から、上配管31、ミストセパレータ30、及び合流配管34を経由して、吸気マニホールド33に排出される。第2の経路では、この圧力は、ジョイント27から、下配管32、ミストセパレータ30、及び合流配管34を経由して、吸気マニホールド33に排出される。
【0046】
図2、図11、及び図12を参照して、上ブリーザ40を説明する。図11は、シリンダヘッドカバー50の上面図である。図12は、図11のA−A断面図である。
【0047】
図2において、エンジン10は、シリンダヘッド11の上方にシリンダヘッドカバー50を備えている。図11において、シリンダヘッドカバー50は、上ブリーザ40及び吸気マニホールド33を構成している。
【0048】
図12において、シリンダヘッドカバー50は、ハウジング51、ブリーザ蓋52、マニホールド蓋53、遮蔽板54、バッフル板55、バッフル56、底板57、及びボール58を備えている。ハウジング51は、下側に開口する第1凹部51a、上側に開口する開口部51b、及び上側に開口する第2凹部51cを備えている。ブリーザ蓋52は、開口部51bを閉鎖している。マニホールド蓋53は、第2凹部51cを閉鎖している。マニホールド蓋53及び第2凹部51cの間に吸気室A2が形成されている。遮蔽板54は、第1凹部51aの内部に配置されている。第1凹部51a及び遮蔽板54の間に、ブリーザ室A1が形成されている。バッフル板55及びバッフル56はブリーザ室A1の入口周辺に配置されている。バッフル板55及びバッフル56は、オイルミストがブリーザ室A1へ入るのを阻害する。底板57は、ブリーザ蓋52の下方に配置されている。ブリーザ蓋52及び底板57の間に、バルブ室A3が形成されている。ボール58は、バルブ室A3の内部に配置されている。
【0049】
上ブリーザ40は、ハウジング51、ブリーザ蓋52、遮蔽板54、バッフル板55、バッフル56、底板57、及びボール58により構成されている。なお、底板57は、バルブ室A3から吸気室A2への通路57aを常に閉鎖している。
【0050】
上ブリーザ40は、シリンダブロック12内の圧力を逃すための上逃し通路を備えている。上逃し通路は、ブリーザ室A1及びバルブ室A3を含んでいる。また、上ブリーザ40は、上逃し通路を開閉するバルブ41を備えている。バルブ41は、バルブ室A3、弁体としてのボール58、及び弁座41aを備えている。弁座41aは、ブリーザ蓋52の内面に形成されている。弁座41aにボール58が着座しているとき、バルブ41は閉じられている。ボール58の寸法はバルブ室A3の寸法よりも小さく、ボール58はバルブ室A3内において上下に移動可能である。また、ボール58は、自重により常に鉛直下方に付勢されている。
【0051】
上ブリーザ40の作動を説明する。図12に示されるように、エンジン10の姿勢が逆転していないとき、すなわち据付面Sの水平面に対する傾斜角度が90°未満であるとき、ボール58の上方に弁座41aが位置している。このとき、ボール58が弁座41aから離れているので、バルブ41は開かれている。このため、シリンダブロック12内部の圧力は上ブリーザ40を介して逃される。一方、エンジン10の姿勢が逆転しているとき、すなわち据付面Sの水平面に対する傾斜角度が90°以上であるとき、ボール58の下方に弁座41aが位置している。このとき、ボール58が弁座41aに接触するので、バルブ41が閉じられる。このため、シリンダブロック12内部の圧力は上ブリーザ40からは逃れない。ただし、このとき、オイルパン間座20がシリンダブロック12の上方に位置しており、シリンダブロック12内部の圧力はジョイント27から逃される。
【0052】
上述の上ブリーザ40及び下ブリーザ(ジョイント27)を有するエンジン10の効果を説明する。
【0053】
エンジン10は、エンジン10の姿勢が逆転したときに、オイルパン13内のオイルが吸気系に吸い込まれることを防止できる。また、ボール58が常に鉛直下方に付勢されているので、据付面Sの傾斜角度が90度を超えるまで上逃し通路が閉鎖されない。更に、上ブリーザのバルブが閉鎖されたときには下ブリーザから前記圧力が逃されるので、据付面Sの傾斜角度に関係なくシリンダブロック12内の圧力上昇が防止される。
【0054】
(第2実施形態)
次に、第2実施形態に係るエンジン10を説明する。
【0055】
図13は、冷却に関係するエンジン10の構成を示すブロック図である。図13において、エンジン10は、キールクーラー8、シリンダヘッド11、シリンダブロック12、ウォータージャケット113、冷却水ポンプ114、サーモスタットバルブ115、冷却水タンク116、及び温度センサ117を備えている。キールクーラー8は、熱交換器であって、船底に設けられている。このため、キールクーラー8は、海水面Wよりも下側にあり、海水と冷却水との間で熱交換を行う。ウォータージャケット113は、シリンダヘッド11及びシリンダブロック12の内部に形成された冷却水通路である。冷却水ポンプ114は、冷却水を送出する。サーモスタットバルブ115は、ウォータージャケット113内の冷却水温度に応じて開閉する。冷却水タンク116は、冷却水を蓄えると共に、冷却水を補給するための給水口116aを有している。温度センサ117は、検出位置Pにおいて冷却水の温度を検出する。検出位置Pは、ウォータージャケット113から冷却水ポンプ114に冷却水を流す後述の入口経路121内にある。検出位置Pにおける冷却水温度は、ウォータージャケット113内の冷却水温度に等しい。温度センサ117によって検出された冷却水温度は、サーモスタットバルブ115で用いられる。なお、サーモスタットバルブ115が温度センサを有し、冷却水温度の検出位置がサーモスタットバルブ115の内部に設定されていても良い。
【0056】
エンジン10は、入口経路121、出口経路122、タンク行き配管123、クーラー行き配管124、及びポンプ行き配管125を備えている。入口経路121は、ウォータージャケット113を冷却水ポンプ114に接続している。出口経路122は、冷却水ポンプ114をウォータージャケット113に接続している。入口経路121及び出口経路122は、シリンダヘッド11及びシリンダブロック12の内部に形成されている。タンク行き配管123は、サーモスタットバルブ115を冷却水タンク116に接続している。クーラー行き配管124は、冷却水タンク116をキールクーラー8に接続している。ポンプ行き配管125は、キールクーラー8を冷却水ポンプ114に接続している。
【0057】
また、エンジン10は、バイパス配管126と、切替弁127とを備えている。バイパス配管126は、冷却水ポンプ114を配管123の中途部に接続している。この結果、バイパス配管126は、サーモスタットバルブ115を迂回しながら冷却水ポンプ114を冷却水タンク116に接続している。切替弁127は、バイパス配管126と配管123との間に配置されている。切替弁127は、手動により操作され、バイパス配管126を開閉する。
【0058】
エンジン10は、冷却水回路として、第1回路C1及び第2回路C2を備えている。第1回路C1は、ウォータージャケット113、入口経路121、冷却水ポンプ114、及び出口経路122から構成されている。第1回路C1は、冷却水ポンプ114とウォータージャケット113との間で冷却水を循環させる。第2回路C2は、冷却水ポンプ114、サーモスタットバルブ115、タンク行き配管123、冷却水タンク116、クーラー行き配管124、キールクーラー8、及びポンプ行き配管125から構成されている。第2回路C2は、冷却水ポンプ114、サーモスタットバルブ115、及び冷却水タンク116の間で冷却水を循環させる。
【0059】
冷却水ポンプ114が作動しているとき、冷却水は常時第1回路C1を循環する。一方、冷却水が第2回路C2を流れるか否かは、サーモスタットバルブ115及び切替弁127の開閉に影響される。サーモスタットバルブ115が開いているとき、切替弁127の開閉に関係なく、冷却水は第2回路C2を流れる。サーモスタットバルブ115が閉じ且つ切替弁127が開いているとき、冷却水は、サーモスタットバルブ115を迂回しながら第2回路C2を流れる。サーモスタットバルブ115及び切替弁127が閉じているとき、冷却水は、第2回路C2を流れない。
【0060】
図14、図15を参照して、エンジンの構成を更に説明する。
【0061】
図14は、エンジン10の正面図である。図14は、シリンダヘッド11、シリンダブロック12、クランク軸131、カム軸132、タイミングベルト133、セルモーター134、冷却水ポンプ114、サーモスタットバルブ115、配管123、及びバイパス配管126を示している。エンジン10は、クランク軸131、カム軸132、タイミングベルト133、及びセルモーター134を備えている。セルモーター134が発生させる回転力は、クラッチを介して、クランク軸131に伝達される。クランク軸131の回転力は、タイミングベルト133を介してカム軸132に伝達され、更にカム軸132を介して冷却水ポンプ114に伝達される。
【0062】
図15は、エンジン10の上面図である。図15は、冷却水ポンプ114、冷却水タンク116、配管123、バイパス配管126、及び切替弁127を示している。
【0063】
図14において、サーモスタットバルブ115は冷却水ポンプ114の上側にあり、配管123はサーモスタットバルブ115の上側にある。バイパス配管126は、サーモスタットバルブ115を経由することなく冷却水ポンプ114を配管123に接続している。図15において、バイパス配管126は、冷却水ポンプ114及び配管123よりも側方に突出している。バイパス配管126は、U字管である。
【0064】
図13を参照して、エンジン10の通常の作動を説明する。エンジン10を始動させるためにセルモーター134が駆動されると、上述したように冷却水ポンプ114も駆動される。エンジン10の始動時に冷却水温度は比較的低いため、サーモスタットバルブ115は閉じている。また、給水作業時を除いて切替弁127は閉じられている。このため、エンジン10の始動時に、冷却水は第1回路C1のみを循環する。エンジン10の始動が完了し、エンジン10の運転が開始されると、冷却水温度が上昇する。この結果、サーモスタットバルブ115が開く。このため、エンジン10の運転時には、冷却水は第1回路C1及び第2回路C2を循環し、冷却水ポンプ114において合流及び分流する。この結果、冷却水が第2回路C2のキールクーラー8において冷却される。
【0065】
次に、図13を参照して、エンジン10の給水作業を説明する。給水作業は第1段階及び第2段階を備えており、第1段階はエンジン10が停止しているときに実行され、第2段階はエンジン10の始動時に実行される。
【0066】
作業者は、給水作業の第1段階において、切替弁127を開き、更に給水口116aから冷却水タンク116に冷却水を補給する。第1段階において、サーモスタットバルブ115は閉じているが切替弁127は開かれている。このため、冷却水が、冷却水タンク116からキールクーラー8を経由して冷却水ポンプ114に供給されるだけでなく、冷却水タンク116からバイパス配管126を経由して冷却水ポンプ114に供給される。冷却水ポンプ114に2つの経路から冷却水が供給されるので、比較的短時間で、冷却水が冷却水ポンプ114及びウォータージャケット113に満たされる。冷却水タンク116が冷却水によって一旦満たされると、第1段階は終了する。
【0067】
作業者は、給水作業の第2段階において、まず、セルモーター134を駆動させる。このとき、サーモスタットバルブ115は閉じているが、切替弁127は開かれている。このため、冷却水は第1回路C1を循環し且つサーモスタットバルブ115を迂回しながら第2回路C2を循環する。冷却水は、冷却水ポンプ114において合流及び分流する。冷却水がサーモスタットバルブ115を除いて第1回路C1及び第2回路C2を流れるので、水流によって第1回路C1及び第2回路C2内に存在するエア溜まりが冷却水タンク116に流される。この結果、第1回路C1及び第2回路C2のエア溜まりが除去される。特に、キールクーラー8は比較的長い経路を有しているため、エア溜まりを除去することが困難であるが、給水作業によりキールクーラー8内に存在するエア溜まりも除去される。作業者は、第2段階において、次にセルモーター134を停止させ、更に冷却水タンク116に冷却水を補給する。エア溜まりが除去されることによって冷却水タンク116の水量が減少していても、減少分の水量が補給される。冷却水タンク116が冷却水によって満たされると、第2段階は終了する。このようにして、第1回路C1及び第2回路C2内のエア溜まりが除去される。
【符号の説明】
【0068】
8 キールクーラー(熱交換器)
10 エンジン
113 ウォータージャケット
114 冷却水ポンプ
115 サーモスタットバルブ
116 冷却水タンク
126 バイパス配管(バイパス経路)
127 切替弁
【技術分野】
【0001】
本発明は、水冷式のエンジンに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、サーモスタットバルブを用いて、熱交換器を流れる水量を変更するエンジンが知られている。
【0003】
図16は、冷却に関係する従来のエンジン10の構成を示すブロック図である。このエンジン10は、冷却水ポンプ114とウォータージャケット113との間で冷却水を循環させる第1回路C1と、冷却水ポンプ114、サーモスタットバルブ115、冷却水タンク116、及び熱交換器であるキールクーラー8の間で、冷却水を循環させる第2回路C2とを備えている。サーモスタットバルブ115は、ウォータージャケット113内の冷却水温度に応じて開閉し、第2回路C2を流れる水量が変更される。
【0004】
作業者が上記エンジン10の冷却水回路(第1回路C1及び第2回路C2)に冷却水を充填する際、冷却水は冷却水タンク116の給水口116aから補給される。給水口116aの位置は冷却水回路において最も高い位置にあることから、冷却水タンク116が冷却水によって満たされると、冷却水回路は冷却水によって満たされるはずである。しかし、冷却水タンク116が冷却水によって満たされていても、冷却水回路内にエア溜まりが残留することがある。
【0005】
特許文献1は、エンジンの冷態時にウォータージャケット又は冷却水ポンプのエア溜まりを除去する技術を開示している。特許文献1は、冷却水の給水口とウォータージャケットとを接続する連通管、又は冷却水の給水口と冷却水ポンプとを接続する連通管を設けることを提示している。これらの連通管を介して冷却水を供給することによって、ウォータージャケット又は冷却水ポンプのエア溜まりが除去される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2003−254060号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
エア溜まりが、熱交換器に発生する場合がある。熱交換器における冷却水経路の内径は比較的小さいため、エア溜まりの発生によって冷却水経路が容易に塞がれてしまう。この場合、冷却水タンクに冷却水を補給しても、冷却水がエア溜まりを押し出すことができない。この結果、冷却水回路内における水位の上昇が制限を受けてしまう。
【0008】
図17は、冷却水タンク116、冷却水ポンプ114、及び接続経路200を示す模式図である。接続経路200は、冷却水タンク116を冷却水ポンプ114に接続する経路であり、図16におけるクーラー行き配管124、ポンプ行き配管125、及びキールクーラー8を合わせた経路に相当している。図17において、冷却水タンク116は冷却水ポンプ114よりも高い位置にある。このため、冷却水タンク116に冷却水が満たされているとき、冷却水ポンプ114も冷却水で満たされるはずである。ところが、接続経路200(キールクーラー8)の一定範囲内に、エア溜まりAが発生している。エア溜まりAが、エア溜まりAを越えた領域における水位の上昇を妨げるため、冷却水ポンプ114の水位L1は、冷却水タンク116の水位L0よりも低い。ここで、水位L0と水位L1との水位差H2は、次のようにして決定される。エア溜まりAにおいて、末端水位L2は、エア溜まりAの冷却水タンク116側の水位であり、先端水位L3は、エア溜まりAの冷却水ポンプ114側の水位である。水位L0と末端水位L2との水位差H0は、水位L1と先端水位L3との水位差H1に等しく、両水位差H0、H1はエア溜まりAの両側でバランスしている。このため、水位差H2は、末端水位L2と先端水位L3との水位差(つまり、エア溜まりAの量)に等しくなる。
【0009】
この結果、冷却水タンク116が冷却水によって満たされているにも拘わらず、水位L1が、冷却水ポンプ114のインペラ室まで上がらない。冷却水ポンプが冷却水で満たされていない状態で作動されると、冷却水ポンプの作動不良が発生し、熱交換器の熱交換効率が低下する。この結果、エンジンの冷却不良が発生する。
【0010】
上記エンジンでは、冷態時にサーモスタットバルブが閉じている。このため、給水時に冷却水は、冷却水タンク、熱交換器、冷却水ポンプ、ウォータージャケットの順に充填される。給水中に熱交換器でエア溜まりが発生すると、その後の冷却水の移動が妨げられ、冷却水ポンプやウォータージャケットを冷却水によって満たすことができない。
【0011】
特許文献1に記載される技術は、ウォータージャケット又は冷却水ポンプに存在するエア溜まりを除去するが、熱交換器に存在するエア溜まりは除去しない。熱交換器のエア溜まりが存在する限り、熱交換器の熱交換効率が低下し、エンジンの冷却が不十分となる。
【0012】
そこで、本発明は、熱交換器内に発生するエア溜まりを除去できるエンジンを提供する。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明に係るエンジンは、冷却水ポンプとウォータージャケットとの間で冷却水を循環させる第1回路と、冷却水ポンプ、サーモスタットバルブ、冷却水タンク、及び熱交換器の間で、冷却水を循環させる第2回路と、を備えており、ウォータージャケット内の冷却水温度に応じてサーモスタットバルブが開閉する、エンジンであって、サーモスタットバルブを迂回しながら冷却水ポンプを冷却水タンクに接続するバイパス経路と、バイパス経路を開閉する切替弁と、を備えている。
【0014】
バイパス経路は、例えば、配管、又は鋳造物に形成される貫通孔である。バイパス経路は、冷却水ポンプを冷却水タンクに直接又は間接に接続する経路であればよい。
【0015】
切替弁を開位置に切り換えることにより、冷却水ポンプ、冷却水タンク、熱交換器との間に循環経路が形成される。このため、まず、バイパス経路を介して冷却水タンクから冷却水ポンプに冷却水を直接充填できる。冷却水ポンプが満たされるので、エンジンの起動によって冷却水ポンプを駆動できる。また、冷却水で満たされた冷却水ポンプを駆動することによって、サーモスタットバルブの開度に関係なく、熱交換器にバイパス経路を介して勢いよく冷却水を流すことができる。この結果、熱交換器内のエア溜まりが水流と一緒に送り出されて、熱交換器からエア溜まりを除去できる。
【0016】
好ましくは、熱交換器は、冷却水と船外の水との間で熱交換を行うキールクーラーである。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】図1は、ライフボートの側面図である。
【図2】図2は、左側から見たエンジンの縦断面図である。
【図3】図3は、後側から見たエンジンの横断面図である。
【図4】図4は、オイルパン間座の斜視図である。
【図5】図5は、オイルパン間座の上面図である。
【図6】図6は、右側から見たオイルパン間座の縦断面図である。
【図7】図7は、オイルパン間座の下面図である。
【図8】図8は、オイルパン間座の前面図である。
【図9】図9は、エンジンの右面図である。
【図10】図10は、エンジンの上面図である。
【図11】図11は、シリンダヘッドカバーの上面図である。
【図12】図12は、図11のA−A断面図である。
【図13】図13は、冷却に関係するエンジンの構成を示すブロック図である。
【図14】図14は、エンジンの正面図である。
【図15】図15は、エンジンの上面図である。
【図16】図16は、冷却に関係する従来のエンジンの構成を示すブロック図である。
【図17】図17は、冷却水タンク、冷却水ポンプ、及び接続経路を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
(第1実施形態)
図1は、ライフボート1の側面図である。ライフボート1は、船殻2、プロペラ3、及びプロペラガード4を備えている。船殻2の内部は仕切りによって分割されており、船殻2の内部に船底部5、客室6、及び操縦室7が形成されている。下側の船底部5は、船殻2の外部に熱交換器としてのキールクーラー8を備えており、船殻2の内部にエンジン10を備えている。エンジン10は、プロペラ3を駆動する。中間の客室6は、多数の座席9を備えている。上側の操縦室7は、ライフボート1を操縦するための機器を備えている。
【0019】
図2、図3を参照して、第1実施形態に係るエンジン10を説明する。図2は、左側から見たエンジン10の縦断面図である。図3は、後側から見たエンジン10の横断面図である。縦断面及び横断面は、クランク軸16を基準に設定されている。
【0020】
図2において、エンジン10は、シリンダヘッド11、シリンダブロック12、オイルパン間座20、オイルパン13、オイルポンプ14、3つのピストン15、クランク軸16、及びフライホイール17を備えている。エンジン10は、3気筒を有している。
【0021】
図3において、エンジン10は、オイルレベルゲージガイド18及びオイルレベルゲージ19を備えている。オイルレベルゲージガイド18は、下ゲージガイド18a及び上ゲージガイド18bを連結することによって構成されている。オイルレベルゲージ19は、オイルレベルゲージガイド18の内部に挿入されている。
【0022】
ライフボート1は、その姿勢が変動する環境で用いられる。ライフボート1の姿勢が水平姿勢に保たれているときにエンジン10の据付面Sが水平面に一致するように、エンジン10はライフボート1に据え付けられている。
【0023】
図3に示されるように、据付面Sは、エンジン10のシリンダブロック12に固定される機関脚60の下面を指している。ライフボート1は機関脚60を固定するための機関台61を備えており、機関台61の上面と据付面Sとが接するようにエンジン10がライフボート1に据え付けられる。
【0024】
図4−8を参照して、オイルパン間座20を説明する。図4は、オイルパン間座20の斜視図である。図5は、オイルパン間座20の上面図である。図6は、右側から見たオイルパン間座20の縦断面図である。図7は、オイルパン間座20の下面図である。図8は、オイルパン間座20の前面図である。以下、特に明記する場合を除いて、図5−8における上面、右面、下面、及び後面は、据付面Sが水平面に一致する場合におけるオイルパン間座20の上面、右面、下面、及び後面を指している。
【0025】
図4において、オイルパン間座20は、接続壁21、ゲージ孔22、仕切り壁23、吸入通路24、2つの戻り通路25、2つの逆止弁26、及びジョイント27を備えている。接続壁21は、上下方向に延びる筒状の壁であり、オイルパン13をシリンダブロック12に接続する。ゲージ孔22は、オイルパン13の内部に下ゲージガイド18aを挿入するための孔であり、接続壁21を貫通している。仕切り壁23は、シリンダブロック12の内部とオイルパン13の内部とを仕切る。吸入経路24は、オイルポンプ14にオイルパン13の内部からオイルを吸入させるための経路であり、仕切り壁23を貫通している。各戻り経路25は、シリンダブロック12の内部からオイルパン13の内部にオイルを戻すための経路であり、仕切り壁23を貫通している。各逆止弁26は、各戻り経路25におけるオイルの逆流を防止する。ジョイント27は、シリンダブロック12の下側からシリンダブロック12内部の圧力を逃すブリーザを構成している。
【0026】
図5において、吸入通路24は、オイルパン間座20の左後部から前後及び左右の中央部に向けて形成されている。吸入通路24の出口24aは、オイルパン間座20の左後部において、上方に開口している。2つの戻り通路25は、オイルパン間座20の中心位置を挟んで、前後方向で対称に配置されている。各戻り通路25の入口25aは、上方に開口している。
【0027】
図5において、オイルパン間座20は下ブリーザ孔28を備えている。下ブリーザ孔28は、オイルパン13の内部にジョイント27を挿入するための孔であり、仕切り壁22の上側において接続壁21を貫通している。ジョイント27の先端は、接続壁21の内側に突出している。
【0028】
図6において、ジョイント27の内部に、シリンダブロック12内部の圧力を逃すための下逃し通路27aが形成されている。
【0029】
図6において、吸入通路24の入口24bは、オイルパン間座20の前後及び左右の中央部において、下方に開口している。各戻り通路25の出口25bは、下方に開口している。各逆止弁26は、各出口25bを塞ぐ弁体26a、及び弁体26aを重力方向に付勢する重り26bを有している。このため、エンジン10の姿勢が逆転することによってオイルが戻り通路25を逆流しうる場合に、重り26bが弁体26aを出口25bの閉鎖方向に付勢する。この結果、戻り経路25におけるオイルの逆流が防止される。
【0030】
図6において、オイルパン間座20はオイルストレーナ29を備えている。オイルストレーナ29は、吸入通路24の入口24bに配置されている。
【0031】
図7において、オイルストレーナ29は、仕切り壁22の下面に取り付けられており、オイルパン間座20の前後及び左右の中央部に位置している。オイルストレーナ29は、多数の貫通孔が形成された板状部材である。吸入通路24の入口24bも、オイルパン間座20の前後及び左右の中央部に配置されており、下方に開口している。吸入通路24の入口24bは、オイルストレーナ29によって塞がれている。
【0032】
図8において、ジョイント27は、オイルパン間座20の後部に配置されている。
【0033】
図3に示されるように、オイルレベルゲージガイド18は、オイルパン間座20の右上方から中央下方に向けて挿入されている。下ゲージガイド18aがゲージ孔22において接続壁21に固定されている。図2、図3に示されるように、オイルレベルゲージガイド18の先端(下端)は、平面視において、オイルパン間座20の前後及び左右の中央部に位置している。
【0034】
上述のオイルパン間座20を有するエンジン10の効果を説明する。
【0035】
オイルパン間座20は逆止弁26を備えている。このため、エンジン10の姿勢が逆転したときにオイルがオイルパン13からシリンダブロック12に逆流しない。したがって、エンジン10は、据付面Sをクランク軸16周りで360°回転させる環境に対応している。
【0036】
また、エンジン10は、クランク軸16周りの回転だけでなく横軸周りの揺動にも対応しており、つまり据付面Sを水平面に対して傾かせる環境に対応している。ここで、横軸は、水平面内でクランク軸16に直交する軸を指しており、横軸周りの揺動は、前後に対する揺動を指している。
【0037】
図2は、8°傾斜時のオイルレベルL1、及び35°傾斜時のオイルレベルL2を示している。8°及び35°は、前記横軸周りの揺動による、水平面に対する据付面Sの傾斜角度を示している。一般の水平据付仕様では、ライフボート1は水平面に対して8°傾斜した状態で、ライフボート1を搭載する船舶に取り付けられる。また、自由降下仕様では、ライフボート1は水平面に対して35°傾斜した状態で、船舶に取り付けられる。図2に示されるように、オイルパン13の底面からオイルレベルまでのオイル高さは、オイルレベルの傾斜角度によって大きく影響を受ける。35°のオイルレベルL2において、オイルパン13の後端部におけるオイル高さは、低くなっている。
【0038】
オイルパン13の関連部品としての仕切り壁23、逆止弁26、吸入経路24、オイルストレーナ29は、オイルパン間座20に取り付けられており、オイルパン13の関連部品としてのオイルレベルゲージガイド18は、オイルパン間座20のゲージ孔28に取り付け可能である。このため、エンジン10は、オイルパン13の関連部品をオイルパン間座20に集約でき、エンジン10の組立工数を削減できる。また、オイルの吸入経路が片持ち支持の配管ではなく、仕切り壁23に形成された孔(吸入通路24)であるので、エンジン10は、オイルの吸入経路の耐衝撃性、耐振動性を確保できる。また、オイルレベルゲージガイド18を利用して、オイルパン13内のオイルを外部に排出できる。
【0039】
吸入経路24の入口24bは、平面視におけるオイルパン間座20の中央部に形成されている。図2に示されるように、オイルパン間座20の中央部では、据付面Sの傾斜角度によるオイル高さの変動が抑制されている。このため、ライフボート1の姿勢の変動により、据付面Sが水平面に対して傾斜しても、オイルポンプ14によるオイルの吸引が阻害されにくい。
【0040】
オイルレベルゲージガイド18の先端は、平面視におけるオイルパン間座20の中央部に位置している。図2に示されるように、オイルパン間座20の中央部では、据付面Sの傾斜角度によるオイル高さの変動が抑制されている。このため、据付面Sが水平面に対して傾斜しても、オイルレベルゲージ19により検出されるオイルレベルの変動が抑制される。
【0041】
次に、図9、図10を参照して、エンジン10におけるブリーザ機構を説明する。図9は、エンジン10の右面図である。図10は、エンジン10の上面図である。
【0042】
図9において、エンジン10は、上ブリーザ40、及び下ブリーザとしての上述のジョイント27を備えている。上ブリーザ40は、シリンダブロック12の上側からシリンダブロック12内部の圧力を逃すブリーザを構成している。ジョイント27は、上述したように、シリンダブロック12の下側からシリンダブロック12内部の圧力を逃すブリーザを構成している。
【0043】
図9において、エンジン10は、ミストセパレータ30、上配管31、及び下配管32を備えている。ミストセパレータ30は、ガスの中に含まれるオイルミストを除去する。上配管31は、上ブリーザ40をミストセパレータ30の入口に接続している。下配管32は、ジョイント27をミストセパレータ30の入口に接続している。
【0044】
図10において、エンジン10は、吸気マニホールド33、合流配管34、及び吸気サイレンサー35を備えている。合流配管34はミストセパレータ30の出口を吸気マニホールド33に接続している。吸気サイレンサー35は外気を吸気マニホールド33に供給する。吸気マニホールド33は、外気及びシリンダブロック12内部から逃されたブローバイガスを各気筒に分配する。
【0045】
図9、図10に示されるように、シリンダブロック12内の圧力は、次の2つの経路を介して逃される。第1の経路では、この圧力は、上ブリーザ40から、上配管31、ミストセパレータ30、及び合流配管34を経由して、吸気マニホールド33に排出される。第2の経路では、この圧力は、ジョイント27から、下配管32、ミストセパレータ30、及び合流配管34を経由して、吸気マニホールド33に排出される。
【0046】
図2、図11、及び図12を参照して、上ブリーザ40を説明する。図11は、シリンダヘッドカバー50の上面図である。図12は、図11のA−A断面図である。
【0047】
図2において、エンジン10は、シリンダヘッド11の上方にシリンダヘッドカバー50を備えている。図11において、シリンダヘッドカバー50は、上ブリーザ40及び吸気マニホールド33を構成している。
【0048】
図12において、シリンダヘッドカバー50は、ハウジング51、ブリーザ蓋52、マニホールド蓋53、遮蔽板54、バッフル板55、バッフル56、底板57、及びボール58を備えている。ハウジング51は、下側に開口する第1凹部51a、上側に開口する開口部51b、及び上側に開口する第2凹部51cを備えている。ブリーザ蓋52は、開口部51bを閉鎖している。マニホールド蓋53は、第2凹部51cを閉鎖している。マニホールド蓋53及び第2凹部51cの間に吸気室A2が形成されている。遮蔽板54は、第1凹部51aの内部に配置されている。第1凹部51a及び遮蔽板54の間に、ブリーザ室A1が形成されている。バッフル板55及びバッフル56はブリーザ室A1の入口周辺に配置されている。バッフル板55及びバッフル56は、オイルミストがブリーザ室A1へ入るのを阻害する。底板57は、ブリーザ蓋52の下方に配置されている。ブリーザ蓋52及び底板57の間に、バルブ室A3が形成されている。ボール58は、バルブ室A3の内部に配置されている。
【0049】
上ブリーザ40は、ハウジング51、ブリーザ蓋52、遮蔽板54、バッフル板55、バッフル56、底板57、及びボール58により構成されている。なお、底板57は、バルブ室A3から吸気室A2への通路57aを常に閉鎖している。
【0050】
上ブリーザ40は、シリンダブロック12内の圧力を逃すための上逃し通路を備えている。上逃し通路は、ブリーザ室A1及びバルブ室A3を含んでいる。また、上ブリーザ40は、上逃し通路を開閉するバルブ41を備えている。バルブ41は、バルブ室A3、弁体としてのボール58、及び弁座41aを備えている。弁座41aは、ブリーザ蓋52の内面に形成されている。弁座41aにボール58が着座しているとき、バルブ41は閉じられている。ボール58の寸法はバルブ室A3の寸法よりも小さく、ボール58はバルブ室A3内において上下に移動可能である。また、ボール58は、自重により常に鉛直下方に付勢されている。
【0051】
上ブリーザ40の作動を説明する。図12に示されるように、エンジン10の姿勢が逆転していないとき、すなわち据付面Sの水平面に対する傾斜角度が90°未満であるとき、ボール58の上方に弁座41aが位置している。このとき、ボール58が弁座41aから離れているので、バルブ41は開かれている。このため、シリンダブロック12内部の圧力は上ブリーザ40を介して逃される。一方、エンジン10の姿勢が逆転しているとき、すなわち据付面Sの水平面に対する傾斜角度が90°以上であるとき、ボール58の下方に弁座41aが位置している。このとき、ボール58が弁座41aに接触するので、バルブ41が閉じられる。このため、シリンダブロック12内部の圧力は上ブリーザ40からは逃れない。ただし、このとき、オイルパン間座20がシリンダブロック12の上方に位置しており、シリンダブロック12内部の圧力はジョイント27から逃される。
【0052】
上述の上ブリーザ40及び下ブリーザ(ジョイント27)を有するエンジン10の効果を説明する。
【0053】
エンジン10は、エンジン10の姿勢が逆転したときに、オイルパン13内のオイルが吸気系に吸い込まれることを防止できる。また、ボール58が常に鉛直下方に付勢されているので、据付面Sの傾斜角度が90度を超えるまで上逃し通路が閉鎖されない。更に、上ブリーザのバルブが閉鎖されたときには下ブリーザから前記圧力が逃されるので、据付面Sの傾斜角度に関係なくシリンダブロック12内の圧力上昇が防止される。
【0054】
(第2実施形態)
次に、第2実施形態に係るエンジン10を説明する。
【0055】
図13は、冷却に関係するエンジン10の構成を示すブロック図である。図13において、エンジン10は、キールクーラー8、シリンダヘッド11、シリンダブロック12、ウォータージャケット113、冷却水ポンプ114、サーモスタットバルブ115、冷却水タンク116、及び温度センサ117を備えている。キールクーラー8は、熱交換器であって、船底に設けられている。このため、キールクーラー8は、海水面Wよりも下側にあり、海水と冷却水との間で熱交換を行う。ウォータージャケット113は、シリンダヘッド11及びシリンダブロック12の内部に形成された冷却水通路である。冷却水ポンプ114は、冷却水を送出する。サーモスタットバルブ115は、ウォータージャケット113内の冷却水温度に応じて開閉する。冷却水タンク116は、冷却水を蓄えると共に、冷却水を補給するための給水口116aを有している。温度センサ117は、検出位置Pにおいて冷却水の温度を検出する。検出位置Pは、ウォータージャケット113から冷却水ポンプ114に冷却水を流す後述の入口経路121内にある。検出位置Pにおける冷却水温度は、ウォータージャケット113内の冷却水温度に等しい。温度センサ117によって検出された冷却水温度は、サーモスタットバルブ115で用いられる。なお、サーモスタットバルブ115が温度センサを有し、冷却水温度の検出位置がサーモスタットバルブ115の内部に設定されていても良い。
【0056】
エンジン10は、入口経路121、出口経路122、タンク行き配管123、クーラー行き配管124、及びポンプ行き配管125を備えている。入口経路121は、ウォータージャケット113を冷却水ポンプ114に接続している。出口経路122は、冷却水ポンプ114をウォータージャケット113に接続している。入口経路121及び出口経路122は、シリンダヘッド11及びシリンダブロック12の内部に形成されている。タンク行き配管123は、サーモスタットバルブ115を冷却水タンク116に接続している。クーラー行き配管124は、冷却水タンク116をキールクーラー8に接続している。ポンプ行き配管125は、キールクーラー8を冷却水ポンプ114に接続している。
【0057】
また、エンジン10は、バイパス配管126と、切替弁127とを備えている。バイパス配管126は、冷却水ポンプ114を配管123の中途部に接続している。この結果、バイパス配管126は、サーモスタットバルブ115を迂回しながら冷却水ポンプ114を冷却水タンク116に接続している。切替弁127は、バイパス配管126と配管123との間に配置されている。切替弁127は、手動により操作され、バイパス配管126を開閉する。
【0058】
エンジン10は、冷却水回路として、第1回路C1及び第2回路C2を備えている。第1回路C1は、ウォータージャケット113、入口経路121、冷却水ポンプ114、及び出口経路122から構成されている。第1回路C1は、冷却水ポンプ114とウォータージャケット113との間で冷却水を循環させる。第2回路C2は、冷却水ポンプ114、サーモスタットバルブ115、タンク行き配管123、冷却水タンク116、クーラー行き配管124、キールクーラー8、及びポンプ行き配管125から構成されている。第2回路C2は、冷却水ポンプ114、サーモスタットバルブ115、及び冷却水タンク116の間で冷却水を循環させる。
【0059】
冷却水ポンプ114が作動しているとき、冷却水は常時第1回路C1を循環する。一方、冷却水が第2回路C2を流れるか否かは、サーモスタットバルブ115及び切替弁127の開閉に影響される。サーモスタットバルブ115が開いているとき、切替弁127の開閉に関係なく、冷却水は第2回路C2を流れる。サーモスタットバルブ115が閉じ且つ切替弁127が開いているとき、冷却水は、サーモスタットバルブ115を迂回しながら第2回路C2を流れる。サーモスタットバルブ115及び切替弁127が閉じているとき、冷却水は、第2回路C2を流れない。
【0060】
図14、図15を参照して、エンジンの構成を更に説明する。
【0061】
図14は、エンジン10の正面図である。図14は、シリンダヘッド11、シリンダブロック12、クランク軸131、カム軸132、タイミングベルト133、セルモーター134、冷却水ポンプ114、サーモスタットバルブ115、配管123、及びバイパス配管126を示している。エンジン10は、クランク軸131、カム軸132、タイミングベルト133、及びセルモーター134を備えている。セルモーター134が発生させる回転力は、クラッチを介して、クランク軸131に伝達される。クランク軸131の回転力は、タイミングベルト133を介してカム軸132に伝達され、更にカム軸132を介して冷却水ポンプ114に伝達される。
【0062】
図15は、エンジン10の上面図である。図15は、冷却水ポンプ114、冷却水タンク116、配管123、バイパス配管126、及び切替弁127を示している。
【0063】
図14において、サーモスタットバルブ115は冷却水ポンプ114の上側にあり、配管123はサーモスタットバルブ115の上側にある。バイパス配管126は、サーモスタットバルブ115を経由することなく冷却水ポンプ114を配管123に接続している。図15において、バイパス配管126は、冷却水ポンプ114及び配管123よりも側方に突出している。バイパス配管126は、U字管である。
【0064】
図13を参照して、エンジン10の通常の作動を説明する。エンジン10を始動させるためにセルモーター134が駆動されると、上述したように冷却水ポンプ114も駆動される。エンジン10の始動時に冷却水温度は比較的低いため、サーモスタットバルブ115は閉じている。また、給水作業時を除いて切替弁127は閉じられている。このため、エンジン10の始動時に、冷却水は第1回路C1のみを循環する。エンジン10の始動が完了し、エンジン10の運転が開始されると、冷却水温度が上昇する。この結果、サーモスタットバルブ115が開く。このため、エンジン10の運転時には、冷却水は第1回路C1及び第2回路C2を循環し、冷却水ポンプ114において合流及び分流する。この結果、冷却水が第2回路C2のキールクーラー8において冷却される。
【0065】
次に、図13を参照して、エンジン10の給水作業を説明する。給水作業は第1段階及び第2段階を備えており、第1段階はエンジン10が停止しているときに実行され、第2段階はエンジン10の始動時に実行される。
【0066】
作業者は、給水作業の第1段階において、切替弁127を開き、更に給水口116aから冷却水タンク116に冷却水を補給する。第1段階において、サーモスタットバルブ115は閉じているが切替弁127は開かれている。このため、冷却水が、冷却水タンク116からキールクーラー8を経由して冷却水ポンプ114に供給されるだけでなく、冷却水タンク116からバイパス配管126を経由して冷却水ポンプ114に供給される。冷却水ポンプ114に2つの経路から冷却水が供給されるので、比較的短時間で、冷却水が冷却水ポンプ114及びウォータージャケット113に満たされる。冷却水タンク116が冷却水によって一旦満たされると、第1段階は終了する。
【0067】
作業者は、給水作業の第2段階において、まず、セルモーター134を駆動させる。このとき、サーモスタットバルブ115は閉じているが、切替弁127は開かれている。このため、冷却水は第1回路C1を循環し且つサーモスタットバルブ115を迂回しながら第2回路C2を循環する。冷却水は、冷却水ポンプ114において合流及び分流する。冷却水がサーモスタットバルブ115を除いて第1回路C1及び第2回路C2を流れるので、水流によって第1回路C1及び第2回路C2内に存在するエア溜まりが冷却水タンク116に流される。この結果、第1回路C1及び第2回路C2のエア溜まりが除去される。特に、キールクーラー8は比較的長い経路を有しているため、エア溜まりを除去することが困難であるが、給水作業によりキールクーラー8内に存在するエア溜まりも除去される。作業者は、第2段階において、次にセルモーター134を停止させ、更に冷却水タンク116に冷却水を補給する。エア溜まりが除去されることによって冷却水タンク116の水量が減少していても、減少分の水量が補給される。冷却水タンク116が冷却水によって満たされると、第2段階は終了する。このようにして、第1回路C1及び第2回路C2内のエア溜まりが除去される。
【符号の説明】
【0068】
8 キールクーラー(熱交換器)
10 エンジン
113 ウォータージャケット
114 冷却水ポンプ
115 サーモスタットバルブ
116 冷却水タンク
126 バイパス配管(バイパス経路)
127 切替弁
【特許請求の範囲】
【請求項1】
冷却水ポンプとウォータージャケットとの間で冷却水を循環させる第1回路と、
冷却水ポンプ、サーモスタットバルブ、冷却水タンク、及び熱交換器の間で、冷却水を循環させる第2回路と、を備えており、
ウォータージャケット内の冷却水温度に応じてサーモスタットバルブが開閉する、エンジンであって、
サーモスタットバルブを迂回しながら冷却水ポンプを冷却水タンクに接続するバイパス経路と、
バイパス経路を開閉する切替弁と、を備えていることを特徴とするエンジン。
【請求項2】
熱交換器は、冷却水と船外の水との間で熱交換を行うキールクーラーである、請求項1に記載のエンジン。
【請求項1】
冷却水ポンプとウォータージャケットとの間で冷却水を循環させる第1回路と、
冷却水ポンプ、サーモスタットバルブ、冷却水タンク、及び熱交換器の間で、冷却水を循環させる第2回路と、を備えており、
ウォータージャケット内の冷却水温度に応じてサーモスタットバルブが開閉する、エンジンであって、
サーモスタットバルブを迂回しながら冷却水ポンプを冷却水タンクに接続するバイパス経路と、
バイパス経路を開閉する切替弁と、を備えていることを特徴とするエンジン。
【請求項2】
熱交換器は、冷却水と船外の水との間で熱交換を行うキールクーラーである、請求項1に記載のエンジン。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【公開番号】特開2013−79622(P2013−79622A)
【公開日】平成25年5月2日(2013.5.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−220760(P2011−220760)
【出願日】平成23年10月5日(2011.10.5)
【出願人】(000006781)ヤンマー株式会社 (3,810)
【公開日】平成25年5月2日(2013.5.2)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年10月5日(2011.10.5)
【出願人】(000006781)ヤンマー株式会社 (3,810)
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