説明

エンブレム用粘着体、その製造方法、エンブレム貼付治具および貼付用エンブレム

【課題】 従来の如く、1図形・1文字などの個々の両面粘着片ごとに取り扱う手間がなく、移送やエンブレムとの貼付作業などが格段に容易となるエンブレム用粘着体を提供する。
【解決手段】 本発明にかかるエンブレム用粘着体は、エンブレム片に対応する形状を有する両面粘着片の一面に、前記両面粘着片の互いの位置関係が保たれるように、離型フィルムが接合されているとともに、前記両面粘着片の他面にも別の離型フィルムが接合されてなる、ことを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、エンブレム用粘着体、その製造方法、エンブレム貼付治具および貼付用エンブレムに関する。詳しくは、自動車外装用などに使用されるエンブレム用の粘着体とその製造方法、前記エンブレム用粘着体とエンブレムを貼り合わせるためのエンブレム貼付治具、並びに、前記エンブレム用粘着体が用いられてなる貼付用エンブレムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、自動車外装用などに使用されるエンブレムを自動車などに貼り付ける場合に、両面粘着剤が用いられてきた。
このような従来技術として、例えば、一連の文字列あるいは所定の形態からなる模様が周りの生地の部分に対して浮出た状態に形成される軟質プラスチック製基盤を成形する工程、軟質プラスチック製基盤の表面側または裏面側のいずれか一方側に所定の金属層を形成させる工程、金属層の設けられた軟質プラスチック製基盤の裏面側に所定の接着剤層を設けるとともに、接着剤層の表側に所定の離型紙を設ける工程、基盤の模様部周りを、離型紙上に模様部を取り残した状態で打ち抜き切断する工程からなる、オーナメントおよびエンブレムの製造方法が知られている(特許文献1参照)。
【特許文献1】特開2002−331800号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
上記従来の貼付用エンブレムは、エンブレム用の材料、両面接着剤、離型紙を積層した後に、エンブレム用の材料と両面接着剤を同時に所望の形状に打ち抜くようにしている。したがって、打ち抜き後には、所望の形状を有するエンブレムと両面接着剤の積層体が、両面接着剤のエンブレムとは反対側の面で離型紙と貼り合わされて、所望の位置関係を保持している。しかしながら、この技術では、比較的固いエンブレム用の材料と比較的柔らかい両面粘着剤を同時に打ち抜くことの困難性があった。加えて、エンブレム用の材料と両面粘着剤を同時に打ち抜く場合には、打ち抜き後のエンブレム片と両面粘着片の寸法に違いを設けることができずに必ず同一寸法となってしまうため、例えば、エンブレム用粘着体を被着面に接着した状態において外部から両面粘着片が見え易く美観を損なうとともに、ごみが付着し易いという問題もある。さらに、エンブレムには通常メッキ処理などの表面処理がなされるのであるが、所望の形状に打ち抜く前に表面処理を施したエンブレム用の材料と、両面接着剤、離型紙を積層した後に、エンブレム用の材料と両面接着剤を同時に所望の形状に打ち抜くようにする場合、打ち抜き後に、エンブレムの切断面が表面処理を施していない部分として露出してしまうので、当該露出部分に再び表面処理を施す必要が生じる。しかも、打ち抜き後にエンブレム片に表面処理を行う場合、前記従来技術においては、エンブレム片と両面粘着片は所望の形状で積層一体化されているので、両面粘着片に表面処理剤が付着するなどして接着力が低下してしまうなどの問題が生じ得る。
【0004】
そこで、本発明者は、所望の形状を有する個々のエンブレム片がランナーにより連結され、ランナーにより位置関係の保持されたこのエンブレム片に対して、所望の形状を有するエンブレム用粘着体(両面粘着剤の両面に離型紙を接合したもの)を貼付する技術に着目した。この技術によれば、得られる貼付用エンブレムは、エンブレムを構成する個別片が所定の位置関係や姿勢を保つよう片を互いに連結するランナーを有していて、常にエンブレム片がランナーにより所望の位置関係に保たれるという利点があり、また、エンブレム片とエンブレム用粘着体を個別に所望の形状で得たのちに貼り合わせているので、比較的固いエンブレム用の材料と比較的柔らかい両面粘着剤を同時に打ち抜く必要がなく、エンブレム片とエンブレム用粘着体の寸法にわずかに違いを設けて両面粘着片を外部から見え難くしたり両面接着片へのごみの付着を防止することもでき、さらに、所望の形状で得たエンブレム片を予め表面処理した後にエンブレム用粘着体と貼り合わせることができるので、上記従来技術において述べたような表面処理の困難性といった問題も解消される。
【0005】
しかしながら、前記技術においては、別々に作成したエンブレム片とエンブレム用粘着体を貼り合わせる際に、打ち抜き加工などを施した後の1文字ずつ、1図形ずつに分離したエンブレム用粘着体を、それぞれ、離型紙を剥離した上で、ランナーで位置関係の保たれたエンブレム片に貼り合わせていくことが一般的で、その作業に非常に手間が掛かるという別の問題が存在していた。
そこで、本発明が解決しようとする課題は、1文字ずつ、1図形ずつに分離したエンブレム用粘着体とエンブレム片を貼り合わせる従来の手法を改良して、その作業を極めて容易にすることのできるエンブレム用粘着体と、その製造方法、エンブレム貼付治具および貼付用エンブレムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者は、上記課題を解決するべく鋭意検討を行った。その結果、上記後者の従来技術を改め、両面粘着片の一面に、前記両面粘着片の互いの位置関係が保たれるように、離型フィルムが接合されているとともに、前記両面粘着片の他面にも別の離型フィルムが接合されてなるようにすれば、エンブレム用粘着体として1文字ずつ、1図形ずつの両面粘着片の位置関係が保持されたままで一体的に取り扱うことができ、移送やエンブレムとの貼り合わせなどの操作が格段に容易となることを見出し、それを確認して、本発明を完成した。
すなわち、本発明にかかるエンブレム用粘着体は、エンブレム片に対応する形状を有する両面粘着片の一面に、前記両面粘着片の互いの位置関係が保たれるように、離型フィルムが接合されているとともに、前記両面粘着片の他面にも別の離型フィルムが接合されてなる、ことを特徴とする。
【0007】
本発明にかかるエンブレム用粘着体の製造方法は、前記エンブレム用粘着体を製造する方法であって、両面粘着テープの両粘着面に離型フィルムが貼り合わされている状態で、両面粘着テープおよびその粘着面に貼り合わされた一方の離型フィルムに対して、エンブレム片に対応する形状の打ち抜き加工を施し、前記加工面の離型フィルムを剥離したのち、全両面粘着片に対し共通の1枚の離型フィルムを貼り合わせる、ことを特徴とする。
本発明にかかるエンブレム貼付治具は、前記エンブレム用粘着体をエンブレムと貼り合わせるためのエンブレム貼付治具であって、前記エンブレム用粘着体の両面粘着片を配置固定するための第1面と、ランナーにより所望の位置関係が保たれているエンブレムを配置固定するための第2面とを有し、これら第1面と第2面が蝶番式での開閉可能となっているとともに、前記第1面には離型フィルムを位置決めするための凸部と、エンブレムのランナーを受け入れるための透溝が設けられ、前記エンブレム用粘着体の離型フィルムには前記第1面の凸部に対応する位置に孔が設けられており、第2面にはエンブレム片に対応する形状を有する凹部が設けられている、ことを特徴とする。
【0008】
本発明にかかる貼付用エンブレムは、前記エンブレム用粘着体が用いられてなる貼付用エンブレムであって、ランナーつきのエンブレムと両面粘着片が貼り合わされていて、前記両面粘着片のエンブレムとは反対側の面に離型フィルムが貼り合わされてなる、ことを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
本発明にかかるエンブレム用粘着体によれば、両面粘着片の互いの位置関係が、離型フィルムとの接合により保持されているので、従来の如く、1図形・1文字などの個々の両面粘着片ごとに取り扱う手間が省け、移送やエンブレムとの貼付作業などが格段に容易となる。
本発明にかかるエンブレム用粘着体の製造方法によれば、前記エンブレム用粘着体が容易に得られる。
本発明にかかるエンブレム貼付治具によれば、前記エンブレム用粘着体が第1面に正確に位置決めされ、かつ、エンブレムも同様に第2面に正確に位置決めされるので、第1面と第2面が蝶番によって密着されることにより、エンブレム用粘着体とエンブレムの貼付けを極めて正確かつ容易に行うことができる。
【0010】
本発明にかかる貼付用エンブレムによれば、両面粘着片の互いの位置関係が、離型フィルムとの接合により保持されているので、また、この離型フィルムを剥離した後も、ランナーによる位置決めがなされているので、移送や自動車などへの貼付けの際に、1図形・1文字ごとに個々に取り扱う手間が省ける。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
以下、本発明について詳しく説明するが、本発明の範囲はこれらの説明に拘束されることはなく、以下の例示以外についても、本発明の趣旨を損なわない範囲で適宜変更実施し得る。
〔エンブレム用粘着体〕
<両面粘着片>
両面粘着片は、片面がエンブレムと接着し、反対面が自動車などと接着することで、エンブレムを自動車などに接着するために使用されるもので、個々の両面粘着片が1つの図形や文字を表している。そして、このような両面粘着片は、例えば、後述するように、帯状の両面粘着テープをエンブレム片に対応する形状に打ち抜くことにより製造することができる。
【0012】
前記両面粘着片としては、特に限定されないが、例えば、不織布、紙、プラスチックフィルム、金属箔などの芯基材の両面に粘着剤層を形成した基材入り両面粘着片を用いても良いし、芯基材を使用せずに粘着剤層のみからなる両面粘着片(基材レス両面粘着片)を用いても良いが、芯基材を有しない基材レス両面粘着片の方が、自動車などの被着体に対して強い粘着力を示す点で好ましい。
前記基材レス両面粘着片における粘着剤層としては、気泡含有感圧性接着剤組成物により形成された粘着剤層が好ましい。気泡含有率としては、特に限定されないが、例えば、気泡含有感圧性接着剤組成物全量に対して10〜50体積%であることが好ましく、より好ましくは11〜45体積%、さらに好ましくは12〜40体積%である。
【0013】
このような気泡含有感圧性接着剤組成物としては、例えば、特開2005−179561号公報や特開2006−22189号公報に記載の気泡含有粘弾性組成物を用いることができる。特に中空微小球状体を含有するものを用いることが好ましい。さらに好ましくは、中空微小球状体として中空ガラスバルーンを用いることが好ましい。このように中空微小球状体、特に中空ガラスバルーンを含有する気泡含有粘弾性組成物を用いれば、両面粘着片の接着性をより高めることができるとともに、打ち抜き加工を施す際における切断特性を向上させることができる。
両面粘着片の厚みとしては、特に限定されないが、例えば、0.2〜4.0mmとすることが好ましく、0.4〜2.0mmとすることがより好ましい。
【0014】
<離型フィルム>
離型フィルムは、両面粘着片の両面を保護する目的で使用される。
両面粘着片の両面に接合される2つの離型フィルムは、同一の種類を用いても異なる種類を用いても良いが、異なった種類を用いることが好ましい。具体的には、エンブレムと接着する面には容易に剥離する離型フィルム(便宜上、以下、これを「第1の離型フィルム」と称する。)を用い、自動車等の被着面と接着する面には容易に剥離し難い離型フィルム(便宜上、以下、これを「第2の離型フィルム」と称する。)を用いることが好ましい。このように2種類の離型フィルムを使い分けるのが好ましい理由は、2つの離型フィルムは、1つはエンブレムと接着させる工程、もう1つは自動車等の被着面と接着させる工程で、それぞれ両面粘着片から剥離されるものであるところ、エンブレムとの接着工程の次に自動車などの被着面との接着工程が行われるという工程順序を考慮すれば、両面粘着片のエンブレムと接着する面に接合される離型フィルムには強い剥離強度は必要ではなく、他方、自動車等の被着面と接着する面に接合される離型フィルムには強い剥離強度が求められるからである。
【0015】
第2の離型フィルムについては、容易に剥離し難いものであるため、両面粘着片からの剥離がスムーズに行い得るように、離型フィルムに打ち抜き加工痕が存在しないようにすることが好ましい。離型フィルムに打ち抜き加工痕が存在すると、当該打ち抜き加工痕部分に両面粘着片の一部が浸入し、剥離の際に過度のストレスが生じて、離型フィルムが破れてしまったり、両面粘着片の一部が破壊されてしまったりするおそれがある。このように打ち抜き加工痕が存在しない離型フィルムを得るためには、例えば、エンブレム用粘着体の製造の説明において詳述するが、両面粘着テープの両粘着面に離型フィルムが貼り合わされた状態で、両面粘着テープおよびその粘着面に貼り合わされた一方の離型フィルムに対して、エンブレム片に対応する形状の打ち抜き加工を施し、前記加工面の離型フィルムを剥離したのち、全両面粘着片に対し共通の1枚の離型フィルムとして前記第2の離型フィルムを貼り合わせるようにすることが好ましい。
【0016】
前記第1、第2の離型フィルムとしては、特に限定されず、例えば、上質紙、クラフト紙、グラシン紙などの紙;高密度ポリエチレン、低密度ポリエチレン、線状低密度ポリエチレンなどのポリエチレン、ナイロン、ポリエステル、ポリプロピレン、ポリ−4−メチル−1−ペンテン、ポリスチレン、ポリ塩化ビニルなどのプラスチックフィルム;アルミ箔、ステンレス箔などの金属箔などからなる基材の上に、シリコーン系離型処理剤、フッ素系離型処理剤、長鎖アルキル系離型処理剤などを塗付した離型フィルムを使用することができる。また、上記基材は、前記したような材料を複数組み合わせて、混合物としたり積層体としても良く、中でも、ポリエステル、ポリプロピレン、ポリエチレンなどをその構造中に含むものが好ましい。ポリエステルフィルムを基材として用いる場合、ポリエチレンテレフタレートフィルムが好ましい。高密度ポリエチレン、低密度ポリエチレン、線状低密度ポリエチレンなどのポリエチレン、ポリプロピレン、ポリ−4−メチル−1−ペンテン、フッ素系フィルムなど、それ自体が離型性を有するものは、前記したような離型処理剤を塗布せずに離型フィルムとして用いることが可能である。
【0017】
前記第1の離型フィルムの厚みとしては、例えば、0.025〜0.20mmのものが好ましく、0.03〜0.15mmのものがより好ましく、0.05〜0.13mmのものがさらに好ましい。第1の離型フィルムの厚みが0.025mm未満であると、両面粘着テープをエンブレムに対応する形状に加工する際においては、両面粘着テープと同時に第1の離型フィルムも打ち抜かれてしまわないように切断刃の進入深さを調整することが困難となり、両面粘着片をエンブレムに貼付する際においては、前記第1の離型フィルムを剥離する作業が困難となるおそれがある。第1の離型フィルムの厚みが0.20mmを超えると、厚みが増すほど離型フィルムの材料が多く必要となるので、コスト高となるだけでなく、廃棄処理などにおいて環境負荷が増大してしまうおそれがある。
【0018】
前記第2の離型フィルムの厚みとしては、例えば、0.05〜0.20mmのものが好ましく、0.07〜0.18mmのものがより好ましい。第2の離型フィルムの厚みが0.05mm未満であると、貼付用エンブレムを自動車などに貼付する際に、前記第2の離型フィルムを剥離する作業が困難となるおそれがある。第2の離型フィルムの厚みが0.20mmを超えると、厚みが増すほど離型フィルムの材料が多く必要となるので、コスト高となるだけでなく、廃棄処理などにおいて環境負荷が増大してしまうおそれがある。
<エンブレム用粘着体の構造>
エンブレム用粘着体の構造の一例を図1、図2に示す。図1に示すように各両面粘着片11はエンブレム片に対応する形状を有している。具体的には、「NISSHO」というエンブレムを形成するための「N」、「I」、「S」、「S」、「H」、「O」のエンブレム片に対応する形状を有している。そして、図2は図1に表した断面の一部、具体的には「S」の文字を形成するエンブレム片の断面のみを抜き出したものであるが、この図2にあるように、各両面粘着片11の両面には離型フィルム12、13が形成されている。そして、両面粘着片11に離型フィルム12、13が接合されていることによって、各両面粘着片11の互いの位置関係が保たれている。
【0019】
また、図1に示すエンブレム用粘着体1では、離型フィルム12、13に、穿孔121、131が形成されているが、この穿孔121、131は、後述するエンブレム貼付治具の一面に配置固定するなど、エンブレム用粘着体1を位置決めする目的で設けられたものである。そして、両面粘着片に設けられた透溝111、離型フィルム12、13に設けられた透溝123、133は、エンブレム片を連結するためにエンブレムに備えられたランナーを通すためのものである。
さらに、図1に示す例では、「NISSHO」の文字からなるエンブレムに対応する両面粘着片が2組あることがわかる。このように、離型フィルム12、13で位置関係が維持されている両面粘着片として、必ずしも1つのエンブレムに対応する1組の両面粘着片に限る必要はなく、2組以上作成しておいても良い。2組以上作成しておけば、まとめて取り扱うことのできる両面粘着片が必然的に増え、移送やエンブレムとの貼り付けなどの作業性がより一層向上する。この場合において、両面粘着片とエンブレム片を貼り付けたのちに、1組の貼付用エンブレムごとに分離できるように、図1に示すようなミシン目などの分離手段122を設けておくことが好ましい。
【0020】
〔エンブレム用粘着体の製造〕
本発明にかかるエンブレム用粘着体は、例えば、以下のようにして製造することができる。
両面粘着テープの両粘着面に離型フィルムが貼り合わされた状態で、両面粘着テープおよびその粘着面に貼り合わされた一方の離型フィルムに対して、エンブレム片に対応する形状の打ち抜き加工を施す。
すなわち、両面粘着テープに貼り合わされた離型フィルムのうち、打ち抜き加工が施される側の離型フィルムは、両面粘着テープとともにエンブレム片に対応する形状に打ち抜かれるが、打ち抜き加工が施される側とは反対側にある離型フィルムは、両面粘着テープとともに打ち抜かれないようにする。そのためには、例えば、切断刃の進入深さを調整しておく。この打ち抜き加工が施されない側の離型フィルムが、エンブレム用粘着体におけるエンブレムと接着する面に貼り合わされた離型フィルムとなる。したがって、上述したように、剥離が容易な第1の離型フィルムを用いることが好ましい。
【0021】
前記打ち抜き加工に際しては、切断刃の先端を研磨しておくことが好ましい。例えば、10〜20μm研磨しておく。これにより、両面粘着テープの打ち抜き後において、両面粘着片とカス部とが十分な距離をあけて分離されるため、両面粘着片とカス部とがブロッキングを起こすことを抑止でき、また、打ち抜き加工が施されない側の離型フィルムに切断刃が切り込まれてしまうことも抑止できる。
次に、前記打ち抜き加工が施される側の離型フィルムを剥離したのち、全両面粘着片に対し共通の1枚の離型フィルムを貼り合わせる。両面粘着片の打ち抜き加工が施される側に最後に貼り合わされる前記離型フィルムは、エンブレム用粘着体における自動車等の被着面と接着する面に接合される離型フィルムとなる。したがって、上述したように、容易に剥離し難い第2の離型フィルムを用いることが好ましい。
【0022】
上記のようにして得られるエンブレム用粘着体は、エンブレム片に対応する形状を有する両面粘着片の一面に、前記両面粘着片の互いの位置関係が保たれるように、離型フィルムが接合されているとともに、前記両面粘着片の他面にも別の離型フィルムが接合されてなるものとなる。上記工程を終えた段階では両面粘着片の両面に帯状の離型フィルムが接合されている状態であるので、これを、一連の文字や図形(例えば、前記図1においては、「NISSHO」という1連の文字)を単位として、所望の寸法に切断するようにしても良い。後述のエンブレム貼付治具を使用する場合には、さらに必要な打ち抜き加工などを行っても良い。すなわち、エンブレム用粘着体の両面粘着片を配置固定するための第1面に設けられた離型フィルムを位置決めするための凸部に対して、離型フィルムにおける対応する位置に孔を設けておくことができる。
【0023】
上記した方法によれば、両面粘着片の打ち抜き加工が施される側に最後に貼り合わせる離型フィルム(好ましくは第2の離型フィルム)には、打ち抜き加工に用いる切断刃が接触することがないため、打ち抜き加工痕が一切存在しないものとなり、打ち抜き加工痕部分に両面粘着片の一部が浸入し、剥離の際に過度のストレスが生じて、離型フィルムが破れてしまったり、両面粘着片の一部が破壊されてしまったりといった問題の発生を回避できる。
一方、両面粘着片の打ち抜き加工が施されない側の面に最初から貼り合わされていた離型フィルム(好ましくは第1の離型フィルム)には、打ち抜き加工に際して切断刃が接触する可能性があるため、打ち抜き加工痕が存在する場合が有り得るが、上述のように、打ち抜き加工に用いる切断刃の先端を研磨しておくことで、深い打ち抜き加工痕が生じることはない。また、上述したように、この離型フィルムを、エンブレムと接着する面に接合する離型フィルムとして容易に剥離し易いものを用いれば、打ち抜き加工痕に両面粘着片の一部が浸入したとしても、剥離の際に強いストレスが生じることはない。
【0024】
〔エンブレム貼付治具〕
本発明にかかるエンブレム貼付治具は、前述のエンブレム用粘着体をエンブレムと貼り合わせるための治具である。以下、図面を参照しながら、その構造や機能を詳しく説明する。
図3はエンブレム貼付治具の斜視図である。
エンブレム貼付治具2の上面21にはエンブレム用粘着体1が配置固定され、エンブレム貼付治具2の下面22にはエンブレム3が配置されている。この上面21と下面22が密着することによって、エンブレム用粘着体1とエンブレム3とが貼り合わされることになる。エンブレム用粘着体1は、エンブレム3と貼り合わせるために、予めエンブレム3と密着する側の離型フィルムが剥離されている。
【0025】
エンブレム貼付治具2の上面21へのエンブレム用粘着体1の配置固定は、エンブレム貼付治具2の上面21に設けられた凸部23が、エンブレム用粘着体1の離型フィルム12に穿たれた孔121に挿通されることによって可能となっている。
一方、エンブレム3は、所望の文字や図形を有するエンブレム片31(図3では、N、I、S、S、H、Oの6文字)がランナー32により所望の位置関係に保たれている(図3では6文字が横一列に並んでいる)。
エンブレム貼付治具2の上面21、両面粘着片11、離型フィルム12には、それぞれ、エンブレムのランナーを受け入れるための透溝24、透溝111、透溝123が設けられている。これにより、エンブレム用粘着体1とエンブレム3の貼り合わせがランナー32によって妨害されることを防ぐことができるとともに、エンブレム3のランナー32がエンブレム貼付治具2の上面21に設けられた透溝24を通ることによって、エンブレム3の位置を固定することができるという利点がある。
【0026】
さらに、図3に示す実施態様では、エンブレム3を正確に位置決めするための位置決め板4を設けている。位置決め板4には、位置決め板4自体を正確に位置決めするためにエンブレム貼付治具2の下面22に設けられた凸部25が挿通するための穿孔41が設けられているとともに、エンブレム3に対応する形状の凹部42が設けられており、この凹部42にエンブレム3が嵌め込まれる形でエンブレム3を位置決めする機能を果たしている。位置決め板4は、例えばアクリル板など、穿孔41や凹部42を設けるための成型が容易なものを用いると良い。
本発明にかかるエンブレム貼付治具においては、さらに、図4、5に詳しく示すような構造を備えていることが好ましい。具体的には、図4に示すように、上面21を下面22へと倒していき、上面21と下面22が平行になったときに、上下方向(上面、下面に対して垂直方向)に移動可能な状態、すなわち、上面21と下面22を倒したときにすぐに両面が密着するのではなく、一度浮き上がった状態(図4に示す状態)となって、そののち、上から下へと押圧することによって初めて両面が密着するように、蝶番5が設けられ、蝶番の軸51が上下に移動可能となっており、その上下動は、図3で示したスプリング52によって制御されている。
【0027】
図5は、図4のAで示した部分を拡大した断面図であるが、エンブレム片31の形状に対応する形状からなる凹部42によって、エンブレム片31が正確に位置決めされていることがわかる。
上記したように、このエンブレム貼付治具を用いれば、エンブレム用粘着体とエンブレムを正確に位置決めでき、上面を下面へと垂直に重ね合わせることによるエンブレム用粘着体とエンブレムの安定した密着が実現できることから、手作業での貼り合わせに比べると極めて精度の高い貼り合わせが可能となる。すなわち、従来は、本発明の如く離型フィルムによって正確に位置決めされたエンブレム用粘着体は存在しなかったため、個々の文字や図形ごとに分離した状態でエンブレム片に貼り付けていたのであり、エンブレム用粘着体とエンブレム片を貼り合わせることは極めて困難で、例えば、比較的柔らかな材質を備える両面粘着片が複雑な文字や図形(例えば、図3における「S」の文字からなる両面粘着片など)を有する場合には、両面粘着片が様々な方向に歪んでしまうため、正確に形状を維持したままエンブレムに貼り付けることは、さらに困難であった。加えて、外観や両面粘着片へのごみの付着を避けるためにエンブレムよりも両面粘着片の寸法をやや小さくする場合、例えば、個々の文字や図形について、両面粘着片の外周とエンブレムの外周の間に0.5mm程度の空間を設けようとした場合には、手作業による精度の高い貼りつけは、ほぼ不可能であった。ところが、本発明によれば、これらの問題が一挙に解消されるのである。
【0028】
なお、上記では、上面にエンブレム用粘着体、下面にエンブレムを配置固定した例を説明したが、上面にエンブレム、下面にエンブレム用粘着体を配置固定するようにしても良い。
〔貼付用エンブレム〕
本発明にかかる貼付用エンブレムは、前記エンブレム用粘着体が用いられているものであり、ランナーつきのエンブレムと両面粘着片が貼り合わされ、両面粘着片のエンブレムとは反対側の面に離型フィルムが貼り合わされている。
上記貼付用エンブレムの具体的な構造の例を図6に示す。所望の形状を有する両面粘着片11とエンブレム片31とが貼り合わされ、両面粘着片11の反対側の面に離型フィルム12が貼り合わされている。
【0029】
エンブレム片31はランナー32により連結されており、全体として一連の文字群(図6では「NISSHO」の文字群)からなるエンブレム3となっている。両面粘着片11と離型フィルム12にはランナー32が通過できるように透溝111と透溝123が設けられている。このランナー32により、前記離型フィルム12を剥離したのちも、エンブレム片31の位置関係は保持される。また、図6に示す貼付用エンブレムでは、1枚の離型フィルム上に、「NISSHO」の文字群が2組形成されているが、離型フィルム12に形成されている分離手段122により、容易に1組ごとに分離することができる。
ここで、前記離型フィルム12は、前述したように容易には剥離し難いものを用いることが好ましいが、一方で、剥離に過度のストレスが生じて、離型フィルム12が破れてしまったり、両面粘着片11の一部が破壊されてしまったりすることは好ましくない。そのため、両面粘着片11側の離型フィルムには打ち抜き加工痕12が存在しないことが好ましい。これにより、当該打ち抜き加工痕に両面粘着片11の一部が進入してしまうということがなくなるので、前記した問題が防止できる。
【産業上の利用可能性】
【0030】
本発明にかかるエンブレム用粘着体は、例えば、エンブレムを自動車などに接着するための貼付用エンブレムに貼り付ける粘着体として好適に使用でき、本発明にかかるエンブレム用粘着体の製造方法は、前記粘着体の製造に好適に使用でき、本発明にかかるエンブレム貼付治具は、前記エンブレム用粘着体をエンブレムに貼付するのに好適に使用でき、本発明にかかる貼付用エンブレムは、自動車などへのエンブレムの貼付に好適に使用できる。
【図面の簡単な説明】
【0031】
【図1】本発明にかかるエンブレム用粘着体の一実施例を示す斜視図である。
【図2】本発明にかかるエンブレム用粘着体の一実施例を示す断面図である。
【図3】本発明にかかるエンブレム貼付治具の一実施例を示す斜視図である。
【図4】本発明にかかるエンブレム貼付治具の一実施例を示す側面図である。
【図5】本発明にかかるエンブレム貼付治具の一実施例の一部を拡大した側面断面図である。
【図6】本発明にかかる貼付用エンブレムの一実施例を示す斜視図である。
【符号の説明】
【0032】
1 エンブレム用粘着体
11 両面粘着片
12、13 離型フィルム
2 エンブレム貼付治具
21 上面
22 下面
24 透溝
3 エンブレム
31 エンブレム片
32 ランナー
4 位置決め板
5 蝶番
51 蝶番の軸
52 スプリング

【特許請求の範囲】
【請求項1】
エンブレム片に対応する形状を有する両面粘着片の一面に、前記両面粘着片の互いの位置関係が保たれるように、離型フィルムが接合されているとともに、前記両面粘着片の他面にも別の離型フィルムが接合されてなる、エンブレム用粘着体。
【請求項2】
前記両面粘着片が打ち抜き加工により形成されているが、前記離型フィルムのうち、両面粘着片のエンブレムと接着する面とは反対側の面に接合された離型フィルムには打ち抜き加工痕が存在しない、請求項1に記載のエンブレム用粘着体。
【請求項3】
前記両面粘着片は芯基材を有しないものである、請求項1または2に記載のエンブレム用粘着体。
【請求項4】
前記両面粘着片が気泡含有感圧性接着剤組成物からなる、請求項1から3までのいずれかに記載のエンブレム用粘着体。
【請求項5】
前記気泡含有感圧性接着剤組成物が中空微小球状体を含有する、請求項4に記載のエンブレム用粘着体。
【請求項6】
請求項1から5までのいずれかに記載のエンブレム用粘着体を製造する方法であって、両面粘着テープの両粘着面に離型フィルムが貼り合わされている状態で、両面粘着テープおよびその粘着面に貼り合わされた一方の離型フィルムに対して、エンブレム片に対応する形状の打ち抜き加工を施し、打ち抜き加工が施される側の離型フィルムを剥離したのち、全両面粘着片に対し共通の1枚の離型フィルムを貼り合わせる、エンブレム用粘着体の製造方法。
【請求項7】
請求項1から5までのいずれかに記載のエンブレム用粘着体をエンブレムと貼り合わせるためのエンブレム貼付治具であって、前記エンブレム用粘着体の両面粘着片を配置固定するための第1面と、ランナーにより所望の位置関係が保たれているエンブレムを配置固定するための第2面とを有し、これら第1面と第2面が蝶番式での開閉可能となっているとともに、前記第1面には離型フィルムを位置決めするための凸部と、エンブレムのランナーを受け入れるための透溝が設けられ、前記エンブレム用粘着体の離型フィルムには前記第1面の凸部に対応する位置に孔が設けられており、第2面にはエンブレム片に対応する形状を有する凹部が設けられている、ことを特徴とする、エンブレム貼付治具。
【請求項8】
請求項1から5までのいずれかに記載のエンブレム用粘着体が用いられてなる貼付用エンブレムであって、ランナーつきのエンブレムと両面粘着片が貼り合わされていて、前記両面粘着片のエンブレムとは反対側の面に離型フィルムが貼り合わされてなる、ことを特徴とする、貼付用エンブレム。
【請求項9】
前記両面粘着片が打ち抜き加工により形成されているが、前記離型フィルムには打ち抜き加工痕が存在しない、請求項8に記載の貼付用エンブレム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2009−101734(P2009−101734A)
【公開日】平成21年5月14日(2009.5.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−272878(P2007−272878)
【出願日】平成19年10月19日(2007.10.19)
【出願人】(591243860)日昌株式会社 (9)
【出願人】(000003964)日東電工株式会社 (5,557)
【Fターム(参考)】