説明

オイルタンク

【課題】この発明の目的は、タンク本体T内のオイルの流出を阻止しながら、タンク本体T内のエアだけは確実に出入りさせられるオイルタンクを提供することである。
【解決手段】 タンク本体Tの上方にはその外側に突出する外側筒部6aとタンク本体T内に突出する内側筒部6bとからなる注油口6を設けるとともに、この注油口6の外側筒部6aには、エア流通用の小孔7bを形成した中栓7をはめ、この中栓7の上からキャップ8をかぶせてなるオイルタンクにおいて、上記内側筒部6bの開口近傍に、断面形状が下方に向かって広がる油止め部材10を設けた。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、例えばパワーステアリング装置に用いられるオイルタンクに関する。
【背景技術】
【0002】
この種のオイルタンクは、満タンにすることは許されず、液面から注油口までの間に間隔を保たなければならないという規制があるが、このように液面から注油口までの間に間隔を保つということは、その間にエアが入ることになる。そして、このエアが入る部分の体積は例えばオイルが減れば変化するし、当該タンクが揺れればその液面は上昇する。そのために、この種のオイルタンクでは、注油口にエア流通用の小孔を形成するようにしているが、この種のオイルタンクとして特許文献1に記載されたものが従来から知られている。
【0003】
上記従来のオイルタンクは、注油口を構成する筒部に中栓をはめるとともに、この中栓の上からキャップをかぶせている。そして、上記中栓にエアの流通用の小孔を形成するとともに、この小孔の下方には複数のフランジを設け、このフランジ外周を注油口の壁面に接触させて、オイルの漏れを防止している。また、そのフランジ外周部分にはエアを流通させるための切り欠きを設けてそこにエアを流通させるようにようにするとともに、上記フランジによってオイルが上記小孔に到達しないようにしている。このようにすることによって、エアだけを小孔から排出したりあるいは取り込んだりしつつ、オイルは小孔から漏れないようにしている。
【特許文献1】特開平10−324255号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記のようにエアを排出したり取り込んだりするためにフランジに切り欠きを形成しているが、オイルがこの切り欠きを通過することまで阻止することはできない。そのために、微量とはいえオイルが切り欠きを通過してしまい、そのオイルが複数のフランジ間あるいは中栓とキャップとの間に形成されている空間に溜まってしまう。この溜まったオイルがタンク内にスムーズに戻されればよいが、今度は、オイル漏れを防止するために設けたフランジが障害になってタンクにオイルが戻らなくなるという問題があった。
【0005】
また、上記のように中栓に溜まったオイルがタンクにスムーズに戻らないと、タンクが揺れを繰り返しているうちに、そこに溜まる油量も多くなり、それが小孔を通って外部に漏れてしまうという問題も発生する。
この発明の目的は、タンク内のオイルの漏れを阻止しつつ、タンク内のエアを確実に排出したり取り込んだりできるオイルタンクを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
第1の発明は、タンク本体の上方にはその外側に突出する外側筒部とタンク本体内に突出する内側筒部とからなる注油口を設けるとともに、この注油口の外側筒部には、エア流通用の小孔を形成した中栓をはめ、この中栓の上からキャップをかぶせてなるオイルタンクにおいて、上記内側筒部の開口近傍に、断面形状が下方に向かって広がる斜面を有する油止め部材を設けた点に特徴を有する。なお、上記斜面は、油止め部材の全面にある必要はない。例えば、油止め部材に1ないし複数の凹溝を形成し、この凹溝の底面を斜面にしたものでもよい。
【発明の効果】
【0007】
第1の発明によれば、油止め部材によってタンク本体内のオイルの流出を防止しつつ、確実にタンク本体内のエアを排出したり、外気をタンク内に取り込んだりすることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
図1,2に示した第1実施形態は、下側タンク部1と上側タンク部2とを別部材で構成するとともに、それらを接合してタンク本体Tを構成している。そして、下側タンク部1には図示していないアクチュエータにオイルを供給するための流出ポート3を形成するとともに、上側タンク部2には上記アクチュエータからの戻り油が流入する流入ポート4を形成している。
【0009】
また、上記流出ポート3と流入ポート4とを上下において区画する位置にフィルター5を設けているが、このフィルター5は、図2に示すように、タンク本体Tの内壁にぴったりと接触するフレーム部材5aと、このフレーム部材5aの中心を横断する補強部材5bと、上記フレーム部材5aに張ったフィルター部材5cとからなる。そして、上記したようにフィルター5は、流出ポート3と流入ポート4とを上下において区画しているので、流入ポート4から流入したオイルは、フィルター5でろ過されて流出ポート4からアクチュエータに供給されることになる。
【0010】
さらに、上記タンク本体Tの上側タンク部2には、注油口6を設けているが、この注油口6は、タンク本体Tの外方に突出する外側筒部6aと、タンク本体Tの中に突出する内側筒部6bとからなる。なお、上記した下側タンク部1は流出ポート3を含めて一体成型するとともに、上側タンク部2も流入ポート4および注油口6を含めて一体成型している。
【0011】
上記のようにした外側筒部6aには中栓7をはめるようにしているが、この中栓7は外側筒部6aにぴったりとはまる筒状部7aと、この筒状部7aの底に形成したエア流通用の小孔7bと、筒状部7aの上端外周に形成したフランジ部7cとからなるとともに、このフランジ部7cには外方に向かって延びるエア流通溝7dを形成している。そして、上記中栓7の上をキャップ8でフタをするが、このようにキャップ8でフタをしたとき、キャップ8とエア流通溝7dとが相まってエア流通用通路が構成されるようにしている。なお、これら中栓7とキャップ8とは、それらをあらかじめ一体化しておき、その一体化したキャップ8を外側筒部6aに装着するようにしてもよい。
【0012】
一方、上記フィルター5の補強部材5bには柱部材9を起立させるとともに、この柱部材9の上端に油止め部材10を設けている。この油止め部材10は、下方に向かって広がる円錐形にするとともに、その最大外径を内側筒部6bの開口径よりも大きくし、上記内側筒部6bの開口に近接させている。
なお、図中符号11は柱部材9に設けたバッフル板、12は上側タンク部2の周囲に形成した液面の上限を示す上限目盛り用凸部、13は同じく液面の下限を示す下限目盛り用凸部である。
【0013】
上記のようにした第1実施形態において、例えば、タンク本体Tが揺れてその中のオイルの液面が上昇したとしても、そのオイルのほとんどは、油止め部材10に遮られて内側筒部6bに入ることはない。なぜなら、上記油止め部材10の最大外径を内側筒部6bの開口径よりも大きくしているからである。また、たとえごく少量のオイルが内側筒部6bに入ったとしても、それは内側筒部6bから油止め部材10に落下するとともに、油止め部材10の斜面に沿って流れてタンク本体T内に戻される。
【0014】
さらに、タンク本体T内のエアは、油止め部材10と内側筒部6bの開口との間隔を通って内側筒部6b内に至り、そこから小孔7bおよび前記エア流通用通路を介してタンク本体Tの外に排出される。つまり、第1実施形態によれば、小孔7bからオイルが流出するのを阻止しながら、エアを簡単かつ確実に抜くことができるし、タンク本体内Tに外気を取り込むこともできる。
【0015】
図3に示した第2実施形態は、第1実施形態と全く同じ油止め部材を第1油止め部材14とするとともに、中栓7における筒状部7aの下面に第2油止め部材15を設けた点が第1実施形態と異なり、それ以外の構成は、第1実施形態と全く同じである。したがって、第1実施形態と同じ構成要素については、同一符号を付し、その詳細な説明は省略する。
【0016】
上記第2油止め部材15は、中栓7と一体にするとともに、下方に向かって広がる円錐形にしている。そして、この第2油止め部材15の基端に隣接して小孔7bを形成するとともに、第2油止め部材15の最大径部が小孔7bよりも直径方向外方に位置するようにしている。ただし、この発明における小孔7bはその中心を通る鉛直線が第2油止め部材15に交わる構成にしていればよく、小孔7bを第2油止め部材15の基端に隣接させていなくてもよい。ただし、小孔7bを第2油止め部材15の基端に隣接させておけば、下方から突き上げてくる流体に対して小孔7bがほぼ完全にふさがれたと同じ効果を期待できる。さらに、第2油止め部材15はその最大外径を内側筒部6bの内径よりも小さくし、第2油止め部材15と内側筒部6bの内壁との間にエアが通過するのに十分な間隔を保っている。
【0017】
上記のようにした第2実施形態は、第1油止め部材14と第2油止め部材15との2段構えでオイルの流出を阻止できるので、さらにオイルが流出するのを防ぐことができる。
【0018】
図4に示した第3実施形態は、第1,2実施形態の油止め部材10,14を省略するとともに、中栓7に第1油止め部材16と第1油止め部材17を一体的に形成したものである。ただし、そのタンク本体Tの構成は第1実施例と全く同じである。そして、この第3実施形態は、中栓7の筒状部7aの下面に棒状の連結部18を設けるとともに、この連結部18の下端に第1油止め部材16を設けている。このようにした第1油止め部材16は、下方に向かって広がる円錐形にし、その最大外径を内側筒部6bの開口径よりもほんのわずかだけ小さくしている。第1油止め部材16の最大外径を内側筒部6bの開口よりもほんのわずかだけ小さくしたのは、この第1油止め部材16を、内側筒部6bの開口を通してその下方に突出させるためである。
【0019】
上記のようにした第1油止め部材16は、その下端の最大径部を内側筒部6bの開口から下方に突出させるとともに、その基端最小径部を内側筒部6bの中に位置させている。また、上記した棒状の連結部18の基端には、第2油止め部材17を一体的に設けているが、この第2油止め部材17は、下方に向かって広がる円錐形にしている。そして、この第2油止め部材17の基端に隣接して小孔7bを形成するとともに、第2油止め部材17の最大径部が小孔7bよりも直径方向外方に位置するようにしている。しかも、第2油止め部材17の最大外径を内側筒部6bの内径よりも小さくし、第2油止め部材17と内側筒部6bの内壁との間にエアが通過するのに十分な間隔を保っている。
【0020】
したがって、この第3実施形態においても、例えば、タンク本体Tが揺れてその中のオイルの液面が上昇したとしても、そのオイルのほとんどは、第1油止め部材16に遮られて内側筒部6bに入ることはない。なぜなら、上記第1油止め部材16の外径を内側筒部6bの開口径よりもほんのわずかだけ小さくして、内側筒部6bの開口と第2油止め部材16との間隔を最小限に保っているからである。また、たとえごく少量のオイルが内側筒部6bに入ったとしても、それは第1油止め部材16の斜面に沿ってタンク本体T内に落下する。さらに、第1油止め部材16と第2油止め部材17との2段構えでオイルの流出を阻止できるので、オイルが小孔7bから流出するのを確実に防ぐことができる。
【0021】
しかも、タンク本体T内のエアは、第1油止め部材16と内側筒部6bの開口との間隔を通って内側筒部6b内に至り、そこから小孔7bおよび前記エア抜き通路を介してタンク本体Tの外に排出される。つまり、小孔7bからオイルが流出するのを阻止しながら、エアを簡単かつ確実に抜くことができる。また、タンク本体T内に外気を取り込むことができること当然である。
【0022】
また、この第3実施形態においても、小孔7bはその中心を通る鉛直線が第2油止め部材15に交わる構成にしていればよく、小孔7bを第2油止め部材15の基端に隣接させていなくてもよい。ただし、小孔7bを第2油止め部材15の基端に隣接させておけば、下方から突き上げてくる流体に対して小孔7bがほぼ完全にふさがれたと同じ効果を期待できることも第2実施例と同様である。
【0023】
なお、上記した第2,3実施形態では、第1あるいは第2油止め部材14,15あるいは16,17を備えたものにしているが、例えば、上記第2油止め部材15,17だけにして、上記第1油止め部材14,16を省略してもよいこと当然である。
また、上記各実施形態における油止め部材の全体形状を円錐形にしたが、必ずしも全体形状を円錐形にする必要はない。この発明においては、油止め部材のいずれかに、下方に向かって低くなる斜面が形成されていればよい。例えば、油止め部材を平板で構成するとともに、その平板に凹溝を形成し、この凹溝の底面を斜面としてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】第1実施形態の断面図である。
【図2】第1実施形態のフィルターの平面図である。
【図3】第2実施形態の断面図である。
【図4】第3実施形態の要部の断面図である。
【符号の説明】
【0025】
T タンク本体
6 注油口
6a 外側筒部
6b 内側筒部
7 中栓
7b 小孔
8 キャップ
10 油止め部材
14 第1油止め部材
15 第2油止め部材
16 第1油止め部材
17 第2油止め部材
18 連結部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
タンク本体の上方にはその外側に突出する外側筒部とタンク本体内に突出する内側筒部とからなる注油口を設けるとともに、この注油口の外側筒部には、エア流通用の小孔を形成した中栓をはめ、この中栓の上からキャップをかぶせてなるオイルタンクにおいて、上記内側筒部の開口近傍に、断面形状が下方に向かって低くなる斜面を有する油止め部材を設けたオイルタンク。
【請求項2】
上記油止め部材は内側筒部の開口よりも下方において間隔を保って設けるとともに、その外径を上記内側筒部の開口径よりも大きくした請求項1記載のオイルタンク。
【請求項3】
上記中栓から連結部を垂下させ、この連結部の下端に上記油止め部材を設け、この油止め部材は内側筒部の内方から外方にわたって設けるとともに、内側筒部の内壁との間に間隔を保った請求項1記載のオイルタンク。
【請求項4】
上記油止め部材を第1油止め部材とする一方、上記中栓には断面形状が下方に向かって低くなる斜面を有する第2油止め部材を設け、上記小孔はその中心を通る鉛直線が油止め部材に交わる構成にした請求項1〜3のいずれかに記載のオイルタンク。
【請求項5】
上記小孔を第2油止め部材の基端に隣接させた請求項4記載のオイルタンク。
【請求項6】
タンク本体の上方にはその外側に突出する外側筒部とタンク本体内に突出する内側筒部とからなる注油口を設けるとともに、この注油口の外側筒部には、エア流通用の小孔を形成した中栓をはめ、この中栓の上からキャップをかぶせてなるオイルタンクにおいて、上記中栓には断面形状が下方に向かって低くなる斜面を有する油止め部材を設けるとともに、上記小孔はその中心を通る鉛直線が油止め部材の斜面に交わる構成にしたオイルタンク。
【請求項7】
上記小孔を油止め部材の基端に隣接させた請求項6記載のオイルタンク。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2006−64092(P2006−64092A)
【公開日】平成18年3月9日(2006.3.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−248168(P2004−248168)
【出願日】平成16年8月27日(2004.8.27)
【出願人】(000000929)カヤバ工業株式会社 (2,151)
【Fターム(参考)】