説明

オイルフィルタ

【課題】フィルタボデーを取り外すことなく中身のエレメントだけを極めて簡便に交換すし得るオイルフィルタを提供する。
【解決手段】オイルフィルタブラケット4の雌ねじ部8に対し螺着可能な雄ねじ部10を基端に備え且つその長手方向中途部に鍔部11を備えたインサート12と、該インサート12の基端を挿通可能な孔を底部に有し且つ頂部をエレメント14の交換口15として開口したフィルタボデー16と、該フィルタボデー16の内部に対し交換可能に収容されたエレメント14と、フィルタボデー16の交換口15を密封し得るようフィルタボデー16の頂部に着脱自在に螺着されたキャップ17とを備え、インサート12の基端をフィルタボデー16の内側から前記孔を通し外側へ突出させて前記雌ねじ部8に螺着し、鍔部11でフィルタボデー16の底部をオイルフィルタブラケット4側に挾圧固定する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、オイルフィルタに関するものである。
【背景技術】
【0002】
一般的に、自動車等のエンジンに用いられる潤滑用のオイルは、そのエンジン内を循環させて繰り返し何度も使用されることになるが、エンジン内を通る際に、金属同士の摺動部分で生じた金属粉や、シリンダ内での燃焼により生じた煤等のスラッジが混じってしまうので、このようなスラッジをオイルフィルタを通して捕捉することにより潤滑系統から除去する必要があり、この種のオイルフィルタとしては、スピンオン式やセンターボルト式等といった各種の方式のものが知られている。
【0003】
図5は従来におけるスピンオン式のオイルフィルタの一例を示すもので、ここに図示している如きスピンオン式のオイルフィルタは、底部に雌ねじ部1が形成された中空円柱状のフィルタボデー2内にエレメント3(濾紙)を内蔵した構造となっており、オイルフィルタブラケット4から張り出すインサート5の雄ねじ部6に対し前記フィルタボデー2底部の雌ねじ部1を螺着させることで取り付けられるようになっている。
【0004】
また、前記インサート5は、基端側にも別の雄ねじ部7が形成されていてオイルフィルタブラケット4の雌ねじ部8に対し螺着されて取り付けられており、また、前記オイルフィルタブラケット4は、図示しないエンジン側のオイル経路上に設けられるようになっている。
【0005】
このようなスピンオン式のオイルフィルタによれば、オイルフィルタブラケット4から張り出すインサート5に対しフィルタボデー2の底部を宛って回転操作するだけで簡便にフィルタボデー2をエレメント3ごと脱着して交換することができ、その交換作業を極めて簡便に行うことができるというメリットがある。ここで、フィルタボデー2を取り外す際に、フィルタボデー2の頂部にあるドレンボルト9を取り外して内部のオイルを抜き出してから行う必要があることは勿論である。
【0006】
尚、この種のオイルフィルタに関連する先行技術文献情報としては下記の特許文献1等がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】実開昭59−131914号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、斯かるスピンオン式のオイルフィルタにおいては、フィルタボデー2ごとエレメント3を交換する方式となっているため、取り外したフィルタボデー2全体が廃棄物となってしまうというデメリットがあり、近年における環境保護への意識の高まりから、廃棄物が少なくなるよう中身のエレメント3だけを交換できる方式への変更を望むユーザーの声も増えてきている。
【0009】
一方、既存のセンターボルト式のオイルフィルタ(例えば上記の特許文献1等を参照)は、中身のエレメントだけを交換できる方式となっているが、エレメントを内蔵したフィルタボデーの頂部からセンターボルトを貫き通してオイルフィルタブラケットに取り付ける方式となっており、エレメントを交換するのにフィルタボデーを一旦取り外さなければならないため、エレメントの交換作業に手間がかかるというデメリットがある。
【0010】
本発明は上述の実情に鑑みてなしたもので、フィルタボデーを取り外すことなく中身のエレメントだけを極めて簡便に交換し得るオイルフィルタを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明は、オイルフィルタブラケットに形成されている雌ねじ部に対し螺着可能な雄ねじ部を基端に備え且つその長手方向中途部に鍔部を備えたインサートと、該インサートの基端を挿通可能な孔を底部に有し且つ頂部をエレメントの交換口として開口したフィルタボデーと、該フィルタボデーの内部に対し交換可能に収容されたエレメントと、前記フィルタボデーの交換口を密封し得るよう前記フィルタボデーの頂部に着脱自在に螺着されたキャップとを備え、前記インサートの基端を前記フィルタボデーの内側から前記孔を通し外側へ突出させて前記オイルフィルタブラケットの雌ねじ部に螺着することにより前記鍔部で前記フィルタボデーの底部を前記オイルフィルタブラケット側に挾圧固定したことを特徴とするオイルフィルタ、に係るものである。
【0012】
而して、フィルタボデー内にエレメントを入れる前にインサートを先に入れ、該インサートの基端をフィルタボデーの内側から前記孔を通し外側へ突出させ、その突出させたインサートの基端をオイルフィルタブラケットの雌ねじ部に螺着させると、前記インサートの鍔部により前記フィルタボデーの底部が前記オイルフィルタブラケット側に挾圧固定され、前記フィルタボデーのオイルフィルタブラケットへの取り付けが完了するので、斯かる状態で前記フィルタボデー内に交換口からエレメントを入れて収容させ、前記フィルタボデーの頂部にキャップを螺着して前記交換口を密封すると、オイルフィルタが組み上がることになる。
【0013】
然る後、経時的な劣化によりエレメントの交換が必要となった時には、オイルフィルタブラケットにフィルタボデーを取り付けた状態のままキャップを回転操作して取り外し、これにより開口するフィルタボデーの交換口からエレメントだけを取り出して新しいエレメントと交換することが可能であり、該エレメントの交換後においては、再びキャップを前記フィルタボデーの頂部に螺着して前記交換口を密封することが可能である。
【0014】
また、本発明においては、オイルフィルタブラケットの雌ねじ部が、既存のスピンオン式のオイルフィルタのインサートを取り付けるための雌ねじ部としても共用し得るように構成されていることが好ましく、このようにすれば、既にスピンオン式のオイルフィルタを採用している仕様から変更するにあたり、現状のオイルフィルタブラケットに変更を加えることなくインサートを付け替えるだけで容易に変更することが可能となり、また、ユーザーがスピンオン式のオイルフィルタと本発明のオイルフィルタとを自分の好みに合わせて任意に選択することが可能となる。
【発明の効果】
【0015】
上記した本発明のオイルフィルタによれば、下記の如き種々の優れた効果を奏し得る。
【0016】
(I)本発明の請求項1に記載の発明によれば、フィルタボデーを取り外すことなく中身のエレメントだけを極めて簡便に交換することができるので、従来のスピンオン式と変わらない交換作業の簡便さを保ちながら廃棄物を大幅に減らすことができ、交換作業が簡便で且つ環境に優しいオイルフィルタを実現することができる。
【0017】
(II)本発明の請求項2に記載の発明によれば、既にスピンオン式のオイルフィルタを採用している仕様からでもインサートを付け替えるだけで容易に変更することができ、しかも、ユーザーがスピンオン式のオイルフィルタと本発明のオイルフィルタとを自分の好みに合わせて任意に選択することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】本発明を実施する形態の一例を分解状態で示す斜視図である。
【図2】図1のオイルフィルタの内部構造の詳細を示す断面図である。
【図3】図1のオイルフィルタを下向きに直立させた状態で示す斜視図である。
【図4】フィルタボデーの回り止めについて説明する正面図である。
【図5】従来のスピンオン式のオイルフィルタの一例を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下本発明の実施の形態を図面を参照しつつ説明する。
【0020】
図1〜図4は本発明を実施する形態の一例を示すもので、図5と同一の符号を付した部分は同一物を表わしている。
【0021】
図1及び図2に示す如く、本形態例においては、前述した既存のスピンオン式のオイルフィルタのインサート5(図5参照)を取り付けるための雌ねじ部8を備えたオイルフィルタブラケット4に対して適用した場合を例示しており、該オイルフィルタブラケット4の雌ねじ部8に対し螺着可能な雄ねじ部10を基端に備え且つその長手方向中途部に鍔部11を備えたインサート12と、該インサート12の基端を挿通可能な孔13を底部に有し且つ頂部をエレメント14の交換口15として開口したフィルタボデー16と、該フィルタボデー16の内部に対し交換可能に収容されたエレメント14と、前記フィルタボデー16の交換口15を密封し得るよう前記フィルタボデー16の頂部に着脱自在に螺着されたキャップ17とにより新規なオイルフィルタ18が構成されるようになっている。
【0022】
図2に示す如く、フィルタボデー16のオイルフィルタブラケット4への取り付けは、インサート12の基端を前記フィルタボデー16の内側から底部の孔13を通し外側へ突出させて前記オイルフィルタブラケット4の雌ねじ部8に螺着することにより、前記インサート12の中途部にある鍔部11で前記フィルタボデー16の底部を前記オイルフィルタブラケット4側に挾圧固定して行われるようになっている。
【0023】
尚、インサート12の基端の雄ねじ部10をオイルフィルタブラケット4の雌ねじ部8に螺着するにあたっては、例えば、前記鍔部11の外周形状を六角形状を成すように形成しておき、レンチ工具により前記鍔部11を介し前記インサート12を回転操作して捩じ込むようにすれば良い。
【0024】
ここで、フィルタボデー16の底部付近における外周部の二箇所には、回転防止リブ19が夫々凸設されており(図3参照)、図1及び図4に示す如く、オイルフィルタブラケット4の雌ねじ部8の外周囲に部分的に形成されている円弧状の回転防止ストッパ20に対し前記各回転防止リブ19が係止されてフィルタボデー16の回転が阻止されるようになっている。
【0025】
また、フィルタボデー16内には、キャップ17を取り外した状態で交換口15からエレメント14を入れて適切な位置にセットし、然る後に、前記フィルタボデー16の交換口15近傍の内周面に形成した雌ねじ部21に対し、前記キャップ17の外周面に形成した雄ねじ部22を螺着して前記交換口15(図1参照)を密封するようにしてある。
【0026】
一方、図2に示す如く、オイルはオイルフィルタブラケット4側の入側油通路23からフィルタボデー16底部の連絡孔24を介し前記フィルタボデー16内の外周部分に導かれ、エレメント14を通過してスラッジを除去された後に前記エレメント14の内部空間からインサート12の軸心部分を通しオイルフィルタブラケット4側の出側油通路25へと排出されるようになっている。
【0027】
尚、図中における符号の26はフィルタボデー16の底部外周に形成されたリング溝、27は該リング溝26に嵌入されたOリング、28はエレメント14の交換時にフィルタボデー16内部のオイルをキャップ17の頂部から抜き出すためのドレンボルトを示している。
【0028】
而して、フィルタボデー16内にエレメント14を入れる前にインサート12を先に入れ、該インサート12の基端をフィルタボデー16の内側から底部の孔13を通し外側へ突出させ、その突出させたインサート12の基端をオイルフィルタブラケット4の雌ねじ部8に螺着させると、前記インサート12の鍔部11により前記フィルタボデー16の底部が前記オイルフィルタブラケット4側に挾圧固定され、前記フィルタボデー16のオイルフィルタブラケット4への取り付けが完了するので、斯かる状態で前記フィルタボデー16内に交換口15からエレメント14を入れて収容させ、前記フィルタボデー16の頂部にキャップ17を螺着して前記交換口15を密封すると、オイルフィルタ18が組み上がることになる。
【0029】
然る後、経時的な劣化によりエレメント14の交換が必要となった時には、オイルフィルタブラケット4にフィルタボデー16を取り付けた状態のままキャップ17を回転操作して取り外し、これにより開口するフィルタボデー16の交換口15からエレメント14だけを取り出して新しいエレメント14と交換することが可能であり、該エレメント14の交換後においては、再びキャップ17を前記フィルタボデー16の頂部に螺着して前記交換口15を密封することが可能である。
【0030】
従って、上記形態例によれば、フィルタボデー16を取り外すことなく中身のエレメント14だけを極めて簡便に交換することができるので、従来のスピンオン式と変わらない交換作業の簡便さを保ちながら廃棄物を大幅に減らすことができ、交換作業が簡便で且つ環境に優しいオイルフィルタを実現することができる。
【0031】
また、特に本形態例においては、既存のスピンオン式のオイルフィルタのインサート12を取り付けるための雌ねじ部8を備えたオイルフィルタブラケット4に対して適用しており、オイルフィルタブラケット4の雌ねじ部8が、既存のスピンオン式のオイルフィルタのインサート5(図5参照)を取り付けるための雌ねじ部8としても共用し得るようになっているので、既にスピンオン式のオイルフィルタを採用している仕様から変更するにあたり、現状のオイルフィルタブラケット4に変更を加えることなくインサート12を付け替えるだけで容易に変更することができ、また、ユーザーがスピンオン式のオイルフィルタと本形態例のオイルフィルタ18とを自分の好みに合わせて任意に選択することができる。
【0032】
尚、本発明のオイルフィルタは、上述の形態例にのみ限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において種々変更を加え得ることは勿論である。
【符号の説明】
【0033】
4 オイルフィルタブラケット
10 雄ねじ部
11 鍔部
12 インサート
13 孔
14 エレメント
15 交換口
16 フィルタボデー
17 キャップ
18 オイルフィルタ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
オイルフィルタブラケットに形成されている雌ねじ部に対し螺着可能な雄ねじ部を基端に備え且つその長手方向中途部に鍔部を備えたインサートと、該インサートの基端を挿通可能な孔を底部に有し且つ頂部をエレメントの交換口として開口したフィルタボデーと、該フィルタボデーの内部に対し交換可能に収容されたエレメントと、前記フィルタボデーの交換口を密封し得るよう前記フィルタボデーの頂部に着脱自在に螺着されたキャップとを備え、前記インサートの基端を前記フィルタボデーの内側から前記孔を通し外側へ突出させて前記オイルフィルタブラケットの雌ねじ部に螺着することにより前記鍔部で前記フィルタボデーの底部を前記オイルフィルタブラケット側に挾圧固定したことを特徴とするオイルフィルタ。
【請求項2】
オイルフィルタブラケットの雌ねじ部が、既存のスピンオン式のオイルフィルタのインサートを取り付けるための雌ねじ部としても共用し得るように構成されていることを特徴とする請求項1に記載のオイルフィルタ。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate