説明

オフセットブーム式フロント装置

【課題】 リンクロッドを太くすることなく圧油を流通することにより、障害物との干渉を防止すると共に、オフセット量を増大して作業性を向上する。
【解決手段】 リンクロッド24の通路部材25内に長さ方向に延びて4本の油路26を形成し、各油路26の基端に制御弁装置から延びる第1の油圧配管29を接続し、先端にアームシリンダ20、バケットシリンダ21に延びる第2の油圧配管30を接続する構成とした。従って、各シリンダ20,21に圧油を給排する油圧ライン31は、その一部をリンクロッド24を利用して設けることができる。これにより、リンクロッド24を細く形成することができ、障害物との干渉を防止できる。また、通路部材25と第2ブーム13との間に大きな隙間を確保できるから、フロント装置11のオフセット量を増大することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば側溝掘り作業等を行うためにバケットが左,右方向に平行移動可能となったオフセットブーム式フロント装置に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、油圧ショベルは、自走可能な下部走行体と、該下部走行体上に旋回可能に搭載された上部旋回体と、該上部旋回体の前部に俯仰動可能に設けられたフロント装置とにより大略構成されている。また、油圧ショベルのフロント装置としては、オフセットブーム式フロント装置が知られており、このフロント装置は、オフセットシリンダ等を用いてバケット等の作業具を左,右方向に平行移動させることにより、下部走行体の左側または右側で側溝等の掘削作業を行うことができる。
【0003】
ここで、オフセットブーム式フロント装置は、基端側が上部旋回体に俯仰動可能に取付けられた第1ブームと、該第1ブームの先端側に左,右方向に揺動可能にピン結合された第2ブームと、該第2ブームの先端側に左,右方向に揺動可能にピン結合された第3ブームと、該第3ブームの先端側に回動可能に取付けられたアームと、該アームの先端側に取付けられたバケットと、前記第1ブームと第3ブームとの間に取付けられ、前記第1ブームに対して第2ブームを揺動したときに前記第3ブームを第2ブームと反対側に揺動することにより第3ブームを左,右方向に平行移動するリンクロッドとにより大略構成されている。
【0004】
また、オフセットブーム式フロント装置には、第1ブームを俯仰動するブームシリンダ、アームを回動するアームシリンダ、バケットを回動するバケットシリンダ、第2ブームを第1ブームに対して揺動するオフセットシリンダ等が設けられている。そして、これらの油圧シリンダは、油圧パイプ、油圧ホース等からなる複数本の油圧配管を介して上部旋回体に設けられた油圧源に接続されている。さらに、各油圧シリンダに接続される複数本の油圧配管のうち、アームシリンダとバケットシリンダに圧油を給排する油圧配管は、第1ブーム、第2ブームの側面等に沿うように第3ブーム側まで延びている。
【0005】
一方、オフセットブーム式フロント装置には、リンクロッドを筒状に形成し、この筒状のリンクロッド内に複数本の油圧配管を通すことにより、油圧配管のうち第2ブームに沿って延びている部分の損傷を防止し、また外観の見栄えを良好にしたものがある(例えば、特許文献1参照)。
【0006】
【特許文献1】特開平11−50486号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ところで、上述した特許文献1による従来技術では、リンクロッドを角筒状に形成し、その内部に複数本の油圧配管を通す構成としているから、各油圧配管を通すスペースを確保するためにリンクロッドが大きく(太く)なってしまう。このために、リンクロッドが障害物に干渉して損傷するという問題がある。
【0008】
しかも、リンクロッドを太くした場合には、第2ブームとリンクロッドとの隙間が小さくなるから、第2ブームを大きく揺動しようとすると、リンクロッドが第2ブームの側面に接触してしまう。このために、フロント装置のオフセット量が小さくなり、作業性が低下するという問題がある。
【0009】
本発明は、上述した従来技術の問題に鑑みなされたもので、本発明の目的は、リンクロッドを太くすることなく圧油を流通することにより、リンクロッドが障害物と干渉するのを防止すると共に、オフセット量を増大して作業性を向上できるようにしたオフセットブーム式フロント装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明によるオフセットブーム式フロント装置は、基端側が車体に取付けられブームシリンダによって俯仰動する第1ブームと、該第1ブームの先端側に取付けられオフセットシリンダによって左,右方向に揺動する第2ブームと、該第2ブームの先端側に左,右方向に揺動可能に取付けられた第3ブームと、該第3ブームの先端側に取付けられアームシリンダによって回動するアームと、該アームの先端側に取付けられ作業具シリンダによって回動する作業具と、前記第1ブームと第3ブームとの間に取付けられ前記第1ブームに対して第2ブームを揺動したときに前記第3ブームを第2ブームと反対側に揺動するリンクロッドとを備えている。
【0011】
そして、上述した課題を解決するために、請求項1の発明が採用する構成の特徴は、前記リンクロッドは、スラスト方向に対して剛性をもった剛性材料によって形成され、内部に前記アームシリンダおよび/または作業具シリンダに圧油を給排する油路が設けられた通路部材を用いる構成としたことにある。
【0012】
請求項2の発明によると、前記リンクロッドは、長さ方向の一端側に位置して前記第1ブームにピン結合される第1ブーム側取付部と、長さ方向の他端側に位置して前記第3ブームにピン結合される第3ブーム側取付部と、前記各取付部間に設けられた前記通路部材とにより構成したことにある。
【0013】
請求項3の発明によると、前記リンクロッドは前記第2ブームに沿って延びる1本の通路部材を用いて形成され、該1本の通路部材内には複数本の油路を設ける構成としたことにある。
【0014】
請求項4の発明によると、前記リンクロッドは前記第2ブームに沿って延びる複数本の通路部材を用いて形成され、該各通路部材にはそれぞれ前記油路を設ける構成としたことにある。
【発明の効果】
【0015】
請求項1の発明によれば、リンクロッドには、スラスト方向に対して剛性をもった剛性材料からなる通路部材を用い、この通路部材の内部には、アームシリンダおよび/または作業具シリンダに圧油を給排する油路を設ける構成としている。これにより、リンクロッドを構成する通路部材の油路を使用してアームシリンダおよび/または作業具シリンダに圧油を給排することができる。
【0016】
このように、リンクロッドに油路が設けられた通路部材を用いた場合、筒状のリンクロッドの内部に油圧配管を通した場合に比較し、配管を通すスペースを必要としない分だけリンクロッド(通路部材)細く形成することができる。
【0017】
この結果、リンクロッドの張出しを小さく抑えることができ、該リンクロッドが障害物と干渉するのを防止することができる。しかも、リンクロッドと第2ブームとの間に大きな隙間を確保できるから、第2ブームを大きな角度で揺動することができ、フロント装置のオフセット量を増大して作業性を向上することができる。また、通路部材に直接的に油路を設けることにより、部品点数を削減することができ、組立作業性を向上することができる。
【0018】
請求項2の発明によれば、リンクロッドの長さ方向の一端側に位置する第1ブーム側取付部を第1ブームにピン結合し、長さ方向の他端側に位置する第3ブーム側取付部を第3ブームにピン結合することにより、リンクロッドは、各取付部間の通路部材により第1ブームと第3ブームとを連結することができる。
【0019】
請求項3の発明によれば、リンクロッドに第2ブームに沿って延びる1本の通路部材を用い、該通路部材には、その内部に複数本の油路を設ける構成としている。これにより、少ない部品点数でリンクロッドを形成することができる。また、通路部材を細く形成した場合でも、この通路部材には、油路以外の部分で大きな断面積を得ることができ、十分に高い剛性をもって形成することができる。
【0020】
請求項4の発明によれば、リンクロッドに第2ブームに沿って延びる複数本の通路部材を用い、これらの通路部材には、その内部にそれぞれ油路を設ける構成としている。これにより、例えば既存の金属配管を束ねて通路部材として用いることにより、簡単な構造でリンクロッドを形成することができ、製造コストを低減することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0021】
以下、本発明の実施の形態によるオフセットブーム式フロント装置を備えた建設機械として、油圧ショベルを例に挙げ、添付図面に従って詳細に説明する。
【0022】
まず、図1ないし図7は本発明の第1の実施の形態を示している。この第1の実施の形態では、リンクロッドは第2ブームに沿って延びる1本の通路部材を用いて形成され、1本の通路部材内には複数本の油路を設けた場合について説明する。
【0023】
図1において、1は建設機械の代表例としての油圧ショベルを示している。この油圧ショベル1は、自走可能なクローラ式の下部走行体2と、該下部走行体2上に旋回可能に搭載された上部旋回体3と、該上部旋回体3の前部側に俯仰動可能に設けられた後述のオフセットブーム式フロント装置11とにより大略構成されている。そして、下部走行体2と上部旋回体3とにより本発明の車体を構成している。
【0024】
ここで、上部旋回体3は、下部走行体2上に旋回可能に設けられたベースとなる旋回フレーム4と、該旋回フレーム4の左前側に設けられ、内部に運転席、各種レバー(いずれも図示せず)等が配置されたキャブ5と、該キャブ5の後方に位置して旋回フレーム4上に搭載されたエンジン、油圧ポンプ、制御弁装置(いずれも図示せず)等の各種の搭載機器を覆う外装カバー6と、旋回フレーム4の後端部に設けられ、後述のフロント装置11との重量バランスをとるカウンタウエイト7とを含んで構成されている。
【0025】
次に、油圧ショベル1の前部側に設けられ、アーム17とバケット18を左,右方向に平行移動するオフセットブーム式フロント装置11について説明する。
【0026】
11はキャブ5の右側方に位置して上部旋回体3の前部側に俯仰動可能に設けられたオフセットブーム式フロント装置を示している。このフロント装置11は、側溝等の掘削作業に好適に用いられるものである。ここで、フロント装置11は、図2等に示すように、後述の第1ブーム12、第2ブーム13、第3ブーム15、アーム17、バケット18、各シリンダ19,20,21,23、リンクロッド24等により構成されている。
【0027】
12は旋回フレーム4の前部側に俯仰動可能に取付けられた第1ブームである。この第1ブーム12は、先端側が略へ字状に屈曲した細長い中空構造体として形成されている。ここで、第1ブーム12の基端側は、旋回フレーム4のブーム取付ブラケット(図示せず)に回動可能にピン結合されている。また、第1ブーム12の先端側には、上,下方向に離間する二股状の取付ブラケット12Aが前向きに突出して設けられ、該取付ブラケット12Aには、後述する第2ブーム13の基端側がピン結合される構成となっている。
【0028】
また、第1ブーム12の先端側の左側面には、図3に示す如く、3枚の取付板12B,12C,12Dが上,下方向に所定の間隔をもって外向きに突設されている。そして、上側と中間の取付板12B,12C間には、後述するリンクロッド24の一端側がピン結合され、中間と下側の取付板12C,12D間には、後述するオフセットシリンダ23のボトム側がピン結合されている。
【0029】
13は第1ブーム12の先端側に左,右方向に揺動可能に連結された第2ブームである。この第2ブーム13は、角筒状をなす強固な中空構造体として形成されている。また、第2ブーム13の基端側(第1ブーム12側)には、ほぼ円筒状をなす基端側ボス13Aが設けられ、該基端側ボス13Aは、第1ブーム12の取付ブラケット12Aに、第1の縦ピン14を介して左,右方向(水平方向)に揺動可能にピン結合されている。
【0030】
一方、第2ブーム13の先端側にも、ほぼ円筒状をなす先端側ボス13Bが設けられ、該先端側ボス13Bには、後述する第3ブーム15の取付ブラケット15Aがピン結合される構成となっている。さらに、第2ブーム13の左側面には、先端側に位置してシリンダ取付板13Cが設けられ、該シリンダ取付板13Cには、後述するオフセットシリンダ23のロッド側が取付けられる。
【0031】
15は第2ブーム13の先端側に左,右方向に揺動可能に連結された第3ブームである。この第3ブーム15は、角筒状をなす強固な中空構造体として形成されている。また、第3ブーム15の基端側には、コ字状に凹陥して取付ブラケット15Aが形成され、該取付ブラケット15Aは、第2の縦ピン16を用いて、第2ブーム13の先端側ボス13Bに左,右方向(水平方向)に揺動可能にピン結合されている。
【0032】
一方、第3ブーム15の基端側には、取付ブラケット15Aと反対側(前側)に突出するようにシリンダ取付部15Bが設けられ、該シリンダ取付部15Bには、後述するアームシリンダ20のボトム側が回動可能に取付けられる。さらに、第3ブーム15の基端側の左側面には、上,下一対のリンク取付板15Cが突出して設けられ、該リンク取付板15Cには後述するリンクロッド24の第3ブーム側取付アイ28が取付けられている。
【0033】
ここで、第1ブーム12、第2ブーム13、第3ブーム15は、後述のリンクロッド24と協働して平行リンク機構(平行四辺形状の連結状態)を構成している。これにより、第1ブーム12に対して第2ブーム13を左,右方向に揺動したときには、第1ブーム12に対して第2ブーム13が揺動した方向と反対側に、同じ角度をもって第2ブーム13に対し第3ブーム15を揺動させることにより、第1ブーム12と第3ブーム15とを常に平行状態としている。
【0034】
17は第3ブーム15の先端側に回動可能に取付けられたアーム(図2参照)で、該アーム17は、第1ブーム12等と同様に、角筒状をなす強固な中空構造体として形成されている。そして、アーム17の基端側は、第3ブーム15の先端部に上,下方向に回動可能にピン結合されている。また、アーム17の基端側には、シリンダ取付板17Aが突設され、該シリンダ取付板17Aには、後述するアームシリンダ20のロッド側と、バケットシリンダ21のボトム側がピン結合されている。
【0035】
また、18はアーム17の先端部に回動可能に取付けられた作業具としてのバケットを示している。このバケット18は、フロント装置11が行う作業に応じ、選択的に取付けられる複数種類のアタッチメントのうちの1つの形態をなしている。
【0036】
19は上部旋回体3と第1ブーム12との間に設けられたブームシリンダである。このブームシリンダ19は、旋回フレーム4に対し第1ブーム12を上,下方向に俯仰動させるものである。そして、ブームシリンダ19は、基端側となるボトム側が旋回フレーム4に回動可能に取付けられ、ロッドの先端側が取付ブラケット12Aの下部に回動可能に取付けられている。
【0037】
20は第3ブーム15とアーム17との間に設けられたアームシリンダである。このアームシリンダ20は、基端側となるボトム側が第3ブーム15のシリンダ取付部15Bに取付けられ、ロッドの先端側がアーム17のシリンダ取付板17Aに取付けられている。
【0038】
21は作業具シリンダとしてのバケットシリンダを示し、該バケットシリンダ21は、基端側となるボトム側がアーム17のシリンダ取付板17Aに取付けられ、ロッドの先端側がバケットリンク22を介してバケット18に連結されている。
【0039】
さらに、23は第1ブーム12と第2ブーム13との間に設けられたオフセットシリンダを示している。このオフセットシリンダ23は、基端側となるボトム側が第1ブーム12の取付板12C,12Dに取付けられ、ロッドの先端側が第2ブーム13のシリンダ取付板13Cに取付けられている。これにより、オフセットシリンダ23は、そのロッドを縮小,伸長することにより、第1ブーム12に対して第2ブーム13を左,右方向に揺動する。このときに、第3ブーム15は、後述するリンクロッド24による平行リンク構造によって左,右方向に平行移動(オフセット)することができる。
【0040】
次に、第1ブーム12と第3ブーム15との間に設けられた第1の実施の形態の特徴部分となるリンクロッド24について説明する。
【0041】
24はフロント装置11に設けられたリンクロッドを示している。このリンクロッド24は、第1ブーム12に対して第3ブーム15を平行移動させるもので、第1ブーム12、第2ブーム13、第3ブーム15と協働して平行リンク機構を構成している。これと共に、リンクロッド24は、上部旋回体3に設けられた油圧源となる制御弁装置からの圧油を、第3ブーム15側のアームシリンダ20、バケットシリンダ21に給排するための油圧ライン31の一部も構成している。そして、リンクロッド24は、後述の通路部材25、各油路26、各取付アイ27,28により大略構成されている。
【0042】
25はリンクロッド24の本体部分を構成する1本の通路部材である。この通路部材25は、軸方向となるスラスト方向に剛性をもった剛性材料、例えば鉄、アルミニウム合金等の金属材料、FRP等の強化樹脂材料を用いて長尺な円柱状に形成され、第2ブーム13と平行に延びて配置されている。また、通路部材25は、軸方向(長さ方向)の両端に後述する各取付アイ27,28が設けられている。
【0043】
また、通路部材25には、図5、図6に示すように、長さ方向の両側に直径方向に広幅なホース接続座25Aが2列ずつ設けられている。また、1つのホース接続座25Aには、2個のねじ穴25B(1個のみ図示)が設けられ、これにより、通路部材25の一端側には、後述する第1の油圧配管29を4本接続することができ、通路部材25の他端側には、後述する第2の油圧配管30を4本接続することができ、アームシリンダ20とバケットシリンダ21に圧油を給排することができる。
【0044】
26は通路部材25の内部に設けられた複数本、例えば4本の油路を示し、該各油路26は、通路部材25の長さ方向に平行に延びるように形成されている。また、各油路26は、例えばアームシリンダ20とバケットシリンダ21に圧油を給排(行きと戻り)できるように、通路部材25の周方向に90度の間隔をもって4本(図7参照)配設されている。
【0045】
ここで、各油路26は、金属パイプ材料等を挿嵌するのではなく、図5に示す如く、円柱状の通路部材25に対して直接的に穿設されている。また、各油路26の端部は、通路部材25の各ホース接続座25Aに形成されたねじ穴25Bの底部に開口している。
【0046】
このように、各油路26は、通路部材25に直接的に穿設することにより、内部に油圧配管を通した場合に比較し、油圧配管を通すスペースを必要としない分だけ通路部材25を細く形成することができる。また、1本の通路部材25に4本の油路26を形成しているから、この通路部材25を細く形成した場合でも、各油路26以外の部分で大きな断面積を得ることができ、十分な剛性を得ることができる。さらに、通路部材25を細く形成したことにより、障害物との干渉を防止できる上に、通路部材25と第2ブーム13の左側面との間に大きな隙間を確保できるから、第2ブーム13を大きな角度で揺動することができ、フロント装置11のオフセット量を増大することができる。
【0047】
27は通路部材25の長さ方向の一端側に設けられた第1ブーム側取付部としての第1ブーム側取付アイである。この第1ブーム側取付アイ27は、図3、図4に示すように、第1ブーム12の取付板12B,12C間に連結ピン27Aを介してピン結合されている。
【0048】
一方、28は通路部材25の長さ方向の他端側に設けられた第3ブーム側取付部としての第3ブーム側取付アイである。この第3ブーム側取付アイ28は、第3ブーム15のリンク取付板15Cに連結ピン28Aを介してピン結合されている。
【0049】
これにより、リンクロッド24は、各取付アイ27,28を用いて第1ブーム12と第3ブーム15とを所定の間隔で連結することができ、第1ブーム12に対し第3ブーム15を常に平行な状態に保つための平行リンク機構を、第1ブーム12、第2ブーム13、第3ブーム15と協働して形成している。
【0050】
29は第1ブーム12に沿って設けられた複数本、例えば4本の第1の油圧配管で、該各油圧配管29は、アームシリンダ20とバケットシリンダ21に圧油を給排するためのものである。そして、各第1の油圧配管29は、一端が上部旋回体3の制御弁装置に接続され、他端がリンクロッド24を構成する通路部材25の基端側に設けられたねじ穴25Bに接続されている。
【0051】
また、30は第3ブーム15に沿うように設けられた複数本、例えば4本の第2の油圧配管で、該各油圧配管30のうちの2本は、一端がリンクロッド24を構成する通路部材25の先端側に設けられたねじ穴25Bに接続され、他端がアームシリンダ20に接続されている。また、別の2本は、一端が通路部材25の先端側に設けられたねじ穴25Bに接続され、他端がバケットシリンダ21に接続されている。
【0052】
ここで、第1の油圧配管29とリンクロッド24の油路26と第2の油圧配管30とは、第3ブーム15側となるアームシリンダ20とバケットシリンダ21に圧油を給排するための油圧ライン31を構成している。なお、油圧配管29,30には、例えば固定部と可動部に合わせて金属配管と可撓ホースとが使用されている。
【0053】
32は第1ブーム12に沿って設けられた2本のオフセットシリンダ用油圧配管で、該各油圧配管32は、オフセットシリンダ23に圧油を給排するものである。また、ブームシリンダ19には、図示しないブームシリンダ用油圧配管が接続されている。
【0054】
第1の実施の形態による油圧ショベル1は上述の如き構成を有するもので、この油圧ショベル1に搭載されたオフセットブーム式フロント装置11を用いて側溝の掘削作業等を行う場合について説明する。
【0055】
まず、オフセットシリンダ23を作動させ、第2ブーム13を第1ブーム12に対して左,右方向に揺動する。このときには、第1ブーム12、第2ブーム13、第3ブーム15およびリンクロッド24によって平行リンク機構をなしているから、第3ブーム15、アーム17、バケット18を上部旋回体3の左側または右側に平行移動(オフセット)することができる。
【0056】
そして、掘削位置が決ったら、上部旋回体3の制御弁装置から第1の油圧配管29、リンクロッド24の油路26、第2の油圧配管30(油圧ライン31)等を介して圧油を給排し、ブームシリンダ19、アームシリンダ20、バケットシリンダ21等を伸縮させることにより、第1ブーム12、アーム17、バケット18等を作動させて、側溝等を掘削することができる。
【0057】
ここで、第1の実施の形態によれば、リンクロッド24は、長さ方向となるスラスト方向に対して剛性をもった剛性材料、例えば金属材料等によって形成し、その内部にアームシリンダ20、バケットシリンダ21に圧油を給排する4本の油路26が設けられた通路部材25を用いる構成としている。従って、通路部材25の各油路26の基端に上部旋回体3の制御弁装置から延びる第1の油圧配管29を接続し、各油路26の先端にアームシリンダ20、バケットシリンダ21に延びる第2の油圧配管30を接続することができる。
【0058】
これにより、フロント装置11のアームシリンダ20、バケットシリンダ21に圧油を給排する油圧ライン31は、その一部をリンクロッド24を利用して設けることができる。このように、リンクロッド24に各油路26を形成した場合、特許文献1のように、内部に油圧配管を通したリンクロッドに比較し、配管を通すスペースを必要としない分だけ、リンクロッド24の通路部材25を細く形成することができる。
【0059】
この結果、リンクロッド24の突出寸法を小さく抑えることができるから、該リンクロッド24が障害物と干渉するのを防止でき、作業性、寿命等を向上することができる。しかも、リンクロッド24を細く形成した場合には、該リンクロッド24と第2ブーム13との間に大きな隙間を確保できるから、第2ブーム13を大きな角度で揺動することができ、フロント装置11のオフセット量を増大して作業性を向上することができる。また、リンクロッド24と油圧ライン31とを一体化することにより、部品点数を削減することができ、組立作業性を向上することができる。
【0060】
また、リンクロッド24の長さ方向の一端側に位置する第1ブーム側取付アイ27を第1ブーム12にピン結合し、長さ方向の他端側に位置する第3ブーム側取付アイ28を第3ブーム15にピン結合することにより、リンクロッド24の通路部材25の両端側を、各取付アイ27,28を介して第1ブーム12と第3ブーム15とに回動可能に連結することができる。
【0061】
また、各油路26は、リンクロッド24を形成する通路部材25に直接的に穿設しているから、通路部材25を細く形成した場合でも、各油路26以外の部分によって大きな断面積を得ることができ、平行リンク機構を構成するのに十分な強度を得ることができる。
【0062】
さらに、第1の実施の形態では、1本の通路部材25に、その長さ方向に平行に延びるように4本の油路26を形成することにより、4本の油路26を備えたリンクロッド24を形成することができる。従って、少ない部品点数で高強度のリンクロッド24を形成することができる。
【0063】
次に、図8ないし図12は本発明の第2の実施の形態を示している。本実施の形態の特徴は、リンクロッドは第2ブームに沿って延びる複数本の通路部材を用いて形成され、各通路部材にはそれぞれ油路を設ける構成としたことにある。なお、第2の実施の形態では、前述した第1の実施の形態と同一の構成要素に同一の符号を付し、その説明を省略するものとする。
【0064】
図8、図9において、41はフロント装置11に設けられた第2の実施の形態によるリンクロッドを示している。このリンクロッド41は、第1ブーム12に対して第3ブーム15を平行移動させるもので、第1ブーム12、第2ブーム13、第3ブーム15と協働して平行リンク機構を構成している。これと共に、リンクロッド41は、上部旋回体3の制御弁装置からの圧油を、第3ブーム15側のアームシリンダ20、バケットシリンダ21に給排するための後述の油圧ライン44の一部も構成している。そして、リンクロッド41は、後述の通路部材42、各油路43、各取付アイ45,46、結束具47により大略構成されている。
【0065】
42はリンクロッド41の本体部分を構成する複数本、例えば4本の通路部材で、該各通路部材42は、第2ブーム13の左側に沿うように互いにほぼ平行に延びている。また、各通路部材42は、例えば鉄、アルミニウム合金等の金属材料、FRP等の強化樹脂材料からなる4本の長尺なパイプ材料を、後述の結束具47で束ねることにより十分な剛性をもって形成されている。また、金属パイプ材料等からなる各通路部材42内は、それぞれが後述の油路43となっている。さらに、各通路部材42は、結束具47が周囲に突出しないように、結束される長さ方向の中間部分を絞るように僅かに折り曲げられた状態で平行に延びている。
【0066】
43は各通路部材42にそれぞれ形成された複数本、例えば4本の油路を示し、該各油路43は、通路部材42の内部を長さ方向に延び、一端が後述する第1ブーム側取付アイ45のねじ穴45Bの底部に開口し、他端が第3ブーム側取付アイ46のねじ穴46Bの底部に開口している。そして、各油路43は、通路部材42をパイプ材料から形成することにより、その内部に簡単に設けることができる。また、各油路43は、第1の油圧配管29と第2の油圧配管30とにより油圧ライン44を構成している。
【0067】
45は各通路部材42の長さ方向の一端側に設けられた第1ブーム側取付部としての第1ブーム側取付アイである。この取付アイ45は、図8、図9に示すように、円形状の先端側が第1ブーム12の取付板12B,12C間に連結ピン45Aを介してピン結合されている。一方、第1ブーム側取付アイ45の基端側は、直方体状に形成され、図10に示すように、その端面に4本の通路部材42が挿嵌され、例えば溶接手段を用いて一体的に固着されている。また、取付アイ45の基端側上面には、4個のねじ穴45B(2個のみ図示)が所定の間隔をもって設けられ、これらのねじ穴45Bには、図11に示すように第1の油圧配管29を4本接続することができる。
【0068】
一方、46は第1ブーム側取付アイ45と反対側に位置して各通路部材42の他端側に設けられた第3ブーム側取付部としての第3ブーム側取付アイである。この取付アイ46は、円形状の先端側が第3ブーム15のリンク取付板15Cに連結ピン46Aを介してピン結合されている。一方、直方体状に形成された第3ブーム側取付アイ46の基端側は、第1ブーム側取付アイ45と同様に、端面に4本の通路部材42が挿嵌して溶接されている。また、取付アイ46の基端側上面には、4個のねじ穴46B(2個のみ図示)が設けられ、これらのねじ穴46Bには第2の油圧配管30を4本接続することができる。
【0069】
これにより、4本の通路部材42と各取付アイ45,46は、第1ブーム12の取付板12B,12Cと第3ブーム15のリンク取付板15Cとを所定の間隔で連結することができ、第1ブーム12に対し第3ブーム15を常に平行な状態に保つための平行リンク機構を、第1ブーム12、第2ブーム13、第3ブーム15と協働して形成している。
【0070】
47は各通路部材42の長さ方向の中間部に設けられた結束具である。この結束具47は、図12に示す如く、円板状の板体に各通路部材42を挿嵌して位置決め固定するものである。また、結束具47は、各通路部材42の長さ方向に離間して例えば2個設けられている。この結束具47は、各通路部材42の長さ寸法に応じて1個または3個以上設ける構成としてもよい。
【0071】
かくして、このように構成された第2の実施の形態においても、前述した第1の実施の形態とほぼ同様の作用効果を得ることができる。特に、第2の実施の形態によるリンクロッド41では、金属材料、強化樹脂材料等からなる通路部材42を平行に延びるように4本設け、これらの通路部材42内にそれぞれ油路43を形成する構成としているから、例えば既存の金属配管等を利用してリンクロッド41を形成することができ、製造コストを低減することができる。また、各通路部材42の長さ方向の中間部は、各結束具47によって固定的に束ねているから、リンクロッド41の強度を高めることができる。
【0072】
なお、第1の実施の形態では、リンクロッド24を構成する通路部材25に4本の油路26を設けた場合を例示し、第2の実施の形態では、リンクロッド41を構成する4本の通路部材42にそれぞれ油路43を設けた場合を例示した。しかし、本発明はこれらに限らず、リンクロッドに2本の油路を設けたり、6本の油路を設ける構成としてもよく、油路の数には制約されるものではない。
【0073】
また、第1の実施の形態では、アームシリンダ20とバケットシリンダ21に給排する圧油をリンクロッド24の油路26で流通させる構成とした場合を例に挙げて説明した。しかし、本発明はこれに限るものではなく、アームシリンダ20またはバケットシリンダ21のいずれか一方に給排する圧油をリンクロッド24の油路26で流通させる構成としてもよい。また、アームシリンダ20、バケットシリンダ21以外のアクチュエータ、例えば、加振機、杭打機、アースドリル等に給排する圧油を油路26で流通させる構成としてもよい。これらの構成は、第2の実施の形態にも同様に適用することができるものである。
【0074】
さらに、各実施の形態では、オフセットブーム式フロント装置11をクローラ式の下部走行体2を備えた油圧ショベル1に設けた場合を例に挙げて説明した。しかし、本発明はこれに限らず、オフセットブーム式フロント装置を備えた機械であれば、例えばホイール式の油圧ショベルに適用することもできる。
【図面の簡単な説明】
【0075】
【図1】本発明の第1の実施の形態によるオフセットブーム式フロント装置を備えた油圧ショベルを示す正面図である。
【図2】オフセットブーム式フロント装置を拡大して示す正面図である。
【図3】第1ブーム、第2ブーム、第3ブーム、リンクロッド等を拡大して示す要部拡大正面図である。
【図4】図3に示す第1ブーム、第2ブーム、第3ブーム、リンクロッド等の平面図である。
【図5】リンクロッドに油圧配管を接続した状態を拡大して示す一部破断の拡大正面図である。
【図6】図5中のリンクロッドに各油圧配管を接続した状態を示す平面図である。
【図7】通路部材と油路を図5中の矢示VII−VII方向からみた拡大横断面図である。
【図8】本発明の第2の実施の形態によるオフセットブーム式フロント装置の要部を示す正面図である。
【図9】図8に示す第1ブーム、第2ブーム、第3ブーム、リンクロッド等の平面図である。
【図10】リンクロッドに油圧配管を接続した状態を拡大して示す一部破断の拡大正面図である。
【図11】図10中のリンクロッドに各油圧配管を接続した状態を示す平面図である。
【図12】通路部材と油路と結束具を図10中の矢示XII−XII方向からみた拡大横断面図である。
【符号の説明】
【0076】
2 下部走行体(車体)
3 上部旋回体(車体)
11 オフセットブーム式フロント装置
12 第1ブーム
13 第2ブーム
15 第3ブーム
17 アーム
18 バケット(作業具)
19 ブームシリンダ
20 アームシリンダ
21 バケットシリンダ(作業具シリンダ)
23 オフセットシリンダ
24,41 リンクロッド
25,42 通路部材
26,43 油路
27,45 第1ブーム側取付アイ(第1ブーム側取付部)
28,46 第3ブーム側取付アイ(第3ブーム側取付部)
29 第1の油圧配管
30 第2の油圧配管
31,44 油圧ライン
47 結束具

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基端側が車体に取付けられブームシリンダによって俯仰動する第1ブームと、該第1ブームの先端側に取付けられオフセットシリンダによって左,右方向に揺動する第2ブームと、該第2ブームの先端側に左,右方向に揺動可能に取付けられた第3ブームと、該第3ブームの先端側に取付けられアームシリンダによって回動するアームと、該アームの先端側に取付けられ作業具シリンダによって回動する作業具と、前記第1ブームと第3ブームとの間に取付けられ前記第1ブームに対して第2ブームを揺動したときに前記第3ブームを第2ブームと反対側に揺動するリンクロッドとを備えてなるオフセットブーム式フロント装置において、
前記リンクロッドは、スラスト方向に対して剛性をもった剛性材料によって形成され、内部に前記アームシリンダおよび/または作業具シリンダに圧油を給排する油路が設けられた通路部材を用いる構成としたことを特徴とするオフセットブーム式フロント装置。
【請求項2】
前記リンクロッドは、長さ方向の一端側に位置して前記第1ブームにピン結合される第1ブーム側取付部と、長さ方向の他端側に位置して前記第3ブームにピン結合される第3ブーム側取付部と、前記各取付部間に設けられた前記通路部材とにより構成してなる請求項1に記載のオフセットブーム式フロント装置。
【請求項3】
前記リンクロッドは前記第2ブームに沿って延びる1本の通路部材を用いて形成され、該1本の通路部材内には複数本の油路を設ける構成としてなる請求項1または2に記載のオフセットブーム式フロント装置。
【請求項4】
前記リンクロッドは前記第2ブームに沿って延びる複数本の通路部材を用いて形成され、該各通路部材にはそれぞれ前記油路を設ける構成としてなる請求項1または2に記載のオフセットブーム式フロント装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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