説明

オフセット作業機

【課題】複雑な操作を必要とせず、簡易的な手動操作により、作業部の前進作業位置と反転作業位置との間における移動を可能とするとともに非作業位置への移動についても可能とし、作業部を移動させる動作に効率良く活かすことができる畦塗り機を提供する。
【解決手段】作業部60を非作業位置から作業位置(前進作業位置及び反転作業位置)に移動させる場合、操作者は片手によりロック状態を解除し、そのままもう片一方の手でグリップ部89を掴み、両手の力を利用して、作業部60を作業位置(前進作業位置及び反転作業位置)に向けて移動させることができる。また、作業部60を作業位置(前進作業位置及び反転作業位置)に移動させた後に、ロック解除操作部52及び把持部90を掴んでいる片手を放すことで、ロックピンが外筒及び内棒に施された孔部に挿入され、手動式伸縮調整機構17が伸びた状態でロックされる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、走行機体に装着される畦塗り機について、その走行機体に対して畦塗り機を旋回させるため、畦塗り機における旋回のための機構に設けられる手動式伸縮調整機構及びグリップ部に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、走行機体に装着された畦塗り機の作業部について、走行機体の走行方向に対して右側に旋回させるとともに走行機体の前進に伴って行う前進作業と、走行機体の走行方向に対して左側に旋回させるとともに走行機体の後進に伴って行う後進作業と、を一つの畦塗り機で行う方法が知られている。
【0003】
そして、その作業部について、前進作業を行うため走行方向に対して右側に旋回させた位置(以下、「前進作業位置」という)と、後進作業を行うため走行方向に対して左側に旋回させた位置(以下、「反転作業位置」という)との間で旋回させるため、その旋回に係る操作のためのハンドル部を設けた構成が知られている(特許文献1)。
【0004】
また、走行機体に固定されたヒッチフレームに対して揺動が可能にオフセットフレームを連結するとともに、該オフセットフレームに対して回動(首振り)が可能に作業部を連結した畦塗り機について、電動シリンダの伸縮動作により、作業部を前進作業位置と反転作業位置との間で移動させる構成が知られている(特許文献2)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2009−296923号公報
【特許文献2】特開2010−239923号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、文献1に記載された旋回操作のためのハンドル部については、前進作業位置と反転作業位置との間の旋回は可能であるものの、作業を行わない位置(以下、「非作業位置」という)に移動させる際には、そのハンドル部とは別の操作部を操作する必要があり、操作が複雑であるという問題があった。
【0007】
また、文献2に記載された電動シリンダを用いた構成については、その電動シリンダの伸縮動作により、作業部を前進作業位置と反転作業位置との間で移動させるとともに、非作業位置にも移動ができるものの、電動シリンダを設けることで、電気配線等の構成の複雑化やコストアップの問題が以前から問われており、また、作業機自身の重量が重くなってしまうという問題があった。
【0008】
そこで本発明は、複雑な操作を必要とせず、簡易的な手動操作により、作業部の前進作業位置と反転作業位置との間における移動を可能とするとともに非作業位置への移動についても可能とし、操作者の手動に係る力について、作業部を移動させる動作に効率良く活かすことができる畦塗り機を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
請求項1に記載の発明は、走行機体に装着されるオフセット作業機であって、前記走行機体の走行方向後方側に装着されるヒッチフレーム及び該ヒッチフレームに基端部を回動自在に連結されて後方側へ配設されるオフセットフレームを有するとともに、該オフセットフレームが前記基端部を中心として揺動することで、前記走行機体に対して揺動することとなる揺動機構と、該揺動機構の先端側に回動自在に連結されるとともに、前記走行機体の走行により作業を行う作業位置及び作業を行わない非作業位置の間で移動が可能な作業部と、前記揺動機構に装着されるとともに、前記オフセットフレームを前記ヒッチフレームに対して揺動させるために伸縮して伸縮状態をロック自在とする手動式伸縮調整機構と、前記揺動機構の揺動に伴い前記作業部を前記揺動機構に対して回動させて作業位置及び非作業位置に移動させる反転機構部と、を備え、前記手動式伸縮調整機構は、前記手動式伸縮調整機構の伸縮状態のロック状態を解除する可動式のロック解除操作部と、該ロック解除操作部に近接した位置に設けられた固定式の把持部と、を備えていることを特徴とする。
【0010】
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載のオフセット作業機であって、前記作業部は、グリップ部を備えていることを特徴とする。
【0011】
請求項3に記載の発明は、請求項1乃至請求項2のいずれかに記載のオフセット作業機であって、前記ロック解除操作部及び前記把持部は、片手で同時に掴むことが可能な位置関係を有していることを特徴とする。
【0012】
請求項4に記載の発明は、請求項1乃至請求項3のいずれかに記載のオフセット作業機であって、前記ロック解除操作部は、弾性部材により、前記手動式伸縮調整機構の伸縮状態のロック状態を維持するように付勢されていることを特徴とする。
【0013】
請求項5に記載の発明は、請求項1乃至請求項4のいずれかに記載のオフセット作業機であって、前記手動式伸縮調整機構は、前記把持部が設けられた長尺状の外筒と、該外筒の内側にて一端が摺動する内棒と、一端に前記ロック解除操作部を有するロックバーと、を備え、前記ロックバーの他端には係合片が設けられ、前記内棒には前記係合片と係合することで前記手動式伸縮調整機構の伸縮状態をロック状態にする係合部が設けられていることを特徴とする。
【0014】
請求項6に記載の発明は、請求項1乃至請求項5のいずれかに記載のオフセット作業機であって、前記グリップ部は、前記作業部に固定された固定部と、該固定部から延びて形成されるとともに前記操作者が把持する延設部と、を備え、前記延設部は、前記作業部が前記作業位置にある際に、前記オフセットフレームを前記ヒッチフレームに対して揺動させる方向ベクトルと、前記作業部を前記オフセットフレームに対して回動させる方向ベクトルとの合成ベクトルの方向に対して略垂直な方向に延びて形成されていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、複雑な操作を要することなく、操作者の手動に係る力を効率良く作業部の移動に活かすことが可能となる、操作性を格段に向上させることができ、さらに、電動シリンダを設ける必要もないことから、コスト面や重量面における問題も解消することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本発明の実施形態に係る畦塗り機の部分平面図を示す。
【図2】本発明の実施形態に係る畦塗り機の側面図を示す。
【図3】本発明の実施形態に係る畦塗り機の斜視図を示し、同図(a)は畦塗り機の左斜め後方から見た畦塗り機の斜視図であり、同図(b)は畦塗り機の左斜め後方から見た畦塗り機の斜視図である。
【図4】本発明の実施形態に係る畦塗り機に設けられたオフセットフレームの先端側の部分拡大模式側面図を示す。
【図5】本発明の実施形態に係る畦塗り機に設けられたオフセット機構部の動作説明図を示す。
【図6】本発明の実施形態に係る畦塗り機に設けられたオフセット機構部の動作説明図を示す。
【図7】本発明の実施形態に係る畦塗り機に設けられた反転機構部及び作業部回動ロック装置の動作説明図を示す。
【図8】本発明の実施形態に係る畦塗り機に設けられた反転機構部及び作業部回動ロック装置の動作説明図を示す。
【図9】本発明の実施形態に係る畦塗り機に設けられたオフセット機構部及び作業部回動ロック装置の動作説明図を示す。
【図10】本発明の実施形態に係る畦塗り機に設けられたオフセット機構部及び作業部回動ロック装置の動作説明図を示す。
【図11】本発明の実施形態に係る畦塗り機に搭載された手動式伸縮調整機構の構成図を示す。
【図12】本発明の実施形態に係る畦塗り機に搭載された手動式伸縮調整機構の動作を示す。
【図13】本発明の実施形態に係る畦塗り機に搭載された揺動機構の動作を示す。
【図14】本発明の実施形態に係る畦塗り機に搭載された手動式伸縮調整機構及びグリップ部の動作を示す。
【図15】本発明の実施形態に係る畦塗り機に搭載された手動式伸縮調整機構及びグリップ部の動作を示す。
【図16】本発明の実施形態に係る畦塗り機に搭載されたグリップ部の構成を示す。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明に係る畦塗り機の好ましい実施の形態について、先ず、図1(部分平面図)及び図2(側面図)を参照しながら、走行機体に牽引される畦塗り機の全体的な概要を説明する。なお、説明の参考として、本発明に係る畦塗り機の斜視図(図3)及び部分拡大模式側面図(図4)も参照する。
【0018】
ここにおいて、本明細書における「オフセット」とは、土作業を行う作業部について、前進作業及び後進作業を行うため、走行機体の走行方向に対して右側及び左側に移動させることを意味するものであり、「オフセット作業機」とは、「オフセット」を可能とする作業部を搭載している作業機を意味するものである。
さらに、走行機体の走行方向に対する右側若しくは左側の位置において、作業部の位置調整することも含むものとする。
なお、本実施形態は、オフセット作業機の一例である畦塗り機についてのものであるが、オフセット作業機は、この他、溝掘機等を含むものである。
【0019】
畦塗り機1は、図1(部分平面図)、図2(側面図)に示すように、走行機体98の後部に設けられた三点リンク連結機構99に連結されて、走行機体98の前進及び後進に応じて畦塗り作業を行うものである。この畦塗り機1は、走行機体98に装着されて走行機体98からの動力が入力される入力軸8aを備えた装着部5と、装着部5に設けられ走行方向に対して左右方向に回動可能に支持されたオフセット機構部10と、オフセット機構部10の先端側に回動(首振り)自在に配設されて入力軸8aから伝達される動力によってオフセット作業を行なう作業部60を有して構成される。
【0020】
装着部5は、機体幅方向に延びるヒッチフレーム6と、ヒッチフレーム6の前方に設けられて走行機体98の後部に設けられた三点リンク連結機構99に連結される連結フレーム7を有して構成される。ヒッチフレーム6の幅方向の中央下部にはギアボックス8が設けられ、このギアボックス8には前述した入力軸8aが設けられている。
【0021】
オフセット機構部10は、その基端側をヒッチフレーム6に回動自在に連結されて後方側へ延びるオフセットフレーム11と、オフセットフレーム11の幅方向一方側に沿って並設されて基端側がヒッチフレーム6の一方側端に回動自在に連結されたリンク部材13と、オフセットフレーム11の先端側とリンク部材13の先端側との間に回動自在に連結された回動支持アーム15とを有して構成される。
【0022】
オフセットフレーム11は、内部が中空状に形成された箱状部材であり、オフセットフレーム11の先端側とヒッチフレーム6の一方側端部との間に接続された手動式伸縮調整機構17の伸縮により、オフセットフレーム11は走行方向に対して左右方向に揺動可能である。オフセットフレーム11内には図示しない動力伝達機構が設けられ、この動力伝達機構によって、走行機体98から入力軸8aに伝達された動力がオフセットフレーム11の先端側に回転自在に配設された従動軸12に伝達可能に構成されている。
【0023】
リンク部材13の先端部は、オフセットフレーム11の先端部に回動自在に設けられた回動支持アーム15の一方側端に回動自在に取り付けられている。回動支持アーム15は、走行方向に対して左右方向に延びるリンクフレーム部15aと、リンクフレーム部15aの基端側端部分から装着部5側へ延びるリンクアーム部15b(図3(a)参照)とを有してなり、リンクアーム部15bの基端側がオフセットフレーム11の先端側下部に回動自在に取り付けられている。このように構成されたオフセット機構部10は、オフセットフレーム11、リンク部材13、ヒッチフレーム6及び回動支持アーム15によって四節リンク機構を形成している。
【0024】
また、図4(部分拡大模式側面図)に示すように、オフセットフレーム11の先端部に設けられた従動軸12の下部には、動力伝達軸14が従動軸12と同軸上に配置されて下方へ連結されて、動力伝達軸14は従動軸12の回転に伴って回転する。またオフセットフレーム11の先端下部には、動力伝達軸14と同軸上に配置された円筒状の連結部18がオフセットフレーム11に対して回動自在に取り付けられている。この連結部18は動力伝達軸14と非結合状態にあり、動力伝達軸14を回動中心として回動自在である。この連結部18の下部に作業部60の一部である伝動支持ケース61の基端部が接続され、連結部18の上部に作業部60の一部である伝動支持フレーム65が接続されている。このため、作業部60はオフセット機構部10に設けられた動力伝達軸14の中心軸線を回動支点Oとして回動可能である。
【0025】
伝動支持ケース61には、図1、図3(a)、図3(b)に示すように、その先端側には、圃場の周辺に沿って形成された旧畦の上部を切り崩す天場処理部62と、切り崩した土の土盛りを行なう前処理部64が配設され、伝動支持ケース61の基端側には盛られた土を切り崩された旧畦上に塗り付ける整畦部66が配設されている。伝動支持ケース61内には図示しない動力伝達機構が内蔵され、この動力伝達機構は、従動軸12からの動力を受けて天場処理部62、前処理部64、整畦部66に動力伝達可能に構成されている。
【0026】
なお、本実施形態においては、畦塗り機の構成のうち、回動支点Oを回動の中心軸として回動することが可能な部位であって、伝動支持ケース61及び伝動支持フレーム65を含み、その先端部側に配設される天場処理部62、前処理部64、整畦部66の構成を、作業部60として定義し、説明する。
【0027】
天場処理部62は、回転自在な天場処理ロータ62aを備える。天場処理ロータ62aは天場動力伝達ケース63を介して上下方向に回動可能に伝動支持ケース61に連結された前処理部64の先端部に連結されるとともに、伝動支持フレーム65を介して支持されている。天場動力伝達ケース63内には図示しない動力伝達機構が内蔵され、この動力伝達機構を介して伝動支持ケース61の動力伝達機構に伝達された動力が天場処理ロータ62aに伝達されるようになっている。
【0028】
前処理部64は、回転自在な耕耘ロータ64a(図2参照)を備える。耕耘ロータ64aは伝動支持ケース61内の動力伝達機構を介して動力が伝達され、前処理部64は伝動支持ケース61に連結され伝動支持フレーム65を介して支持されている。
【0029】
整畦部66は、伝動支持ケース61に回転自在に支持された多面体ドラム66aと、多面体ドラム66aの右側端部に取り付けられて横方向に延びる円筒部66bとを有してなる。整畦部66は伝動支持ケース61内の動力伝達機構を介して動力が伝達されるように構成され、伝動支持ケース61に支持されている。このため、作業部60は連結部18を介してオフセット機構部10の先端側に設けられた動力伝達軸14(図4参照)の中心軸線を回動支点Oとして回動(首振り)可能である。
また、整畦部66には、手動式伸縮調整機構17における伸縮動作の際に、作業部60を回動(首振り)させるため、操作者が掴むグリップ部89が備えられている。
【0030】
次に、図5及び図6を参照しながら、オフセット機構部10の揺動に伴って、作業部60を前進作業位置と反転作業位置との間で移動させる機構について、詳細に説明する。
本実施形態においては、天場処理部62、前処理部64を支持する伝動支持ケース61に連結された連結部18と回動支持アーム15との間には、リンク機構部20とガイド部材30とを有してなる反転機構部19が設けられている。
そして、反転機構部19は、図5(a)に示すように、リンク機構部20とガイド部材30とが協働して、オフセット機構部10の左右方向の揺動に拘わらずに作業部60の向きを一定に維持するとともに、作業部60の向きを反転させる機能を有している。
【0031】
ガイド部材30は、オフセットフレーム11の一方の側面に沿って延びる第1案内板30aと、オフセットフレーム11の他方の側面に沿って延びる第2案内板30bと、第1案内板30aの基端側からオフセットフレーム11の他方の側面側へ延びる第3案内板30cと、第1案内板30aと第2案内板30bの先端側端部間に繋がる第4案内板30dとを有して形成される。第1案内板30aと第2案内板30bとの間には、所定間隔を有してオフセットフレーム11の長手方向に沿って直線状に延びる反転溝31が形成され、第2案内板30bと第3案内板30cの内側端面との間には、反転溝31に連通してオフセットフレーム11の前進作業位置側に延びてオフセットフレーム11の前進作業位置側に開口する前進オフセット溝33が形成され、第1案内板30a及び第4案内板30dの内側端面との間には、反転溝31に連通してオフセットフレーム11の反転作業位置側に反転ロック溝35が形成されている。これらの溝31,33,35は、リンク機構部20の後述するジョイント21が移動可能な幅を有している。なお、ガイド部材30は、連通するこれらの溝31,33,35を単一部材で形成したものや前記のように複数の部材で形成したものでもよい。また、ガイド部材30は、リンク機構部20の取り付け位置に応じてオフセットフレーム11の下面の他に、オフセットフレーム11の上面に設けてもよい。
【0032】
反転溝31は、ジョイント21の移動を案内し始める案内開始位置Paとジョイント21の移動の案内を終える案内終了位置Peとを繋ぐ直線状に形成されている。なお、反転溝31は、案内開始位置Paと案内終了位置Peとを繋ぐ仮想線に対して左右方向に湾曲したものや屈曲したものでもよい。
【0033】
前進オフセット溝33は、オフセット機構部10に対する作業部60の回動支点Oから案内開始位置Paまでの距離を半径とする円弧の一部を含む曲線あるいは直線として形成される。
【0034】
反転ロック溝35は、作業部60のオフセット機構部10に対する回動支点Oから案内終了位置Pe(即ち、反転溝31の終端に移動したジョイント21の中心位置)までの距離を半径とする円弧の一部を含む曲線あるいは直線として形成される。反転ロック溝35は、案内終了位置Peから有限長を有してオフセットフレーム11の反転作業位置側へ延び、作業部回動ロック装置40によって反転作業方向に向いた作業部60をオフセット機構部10に対して回動(首振り)をロック可能にする長さに設定される。
【0035】
リンク機構部20は、4つの節からなる四節リンク機構であり、作業部60の回動支点Oから伝動支持フレーム65の先端側へ後述する所定距離を有した位置までの部分を第1節20aとし、第1節20aの先端部を回動支点Qとして機体幅方向に回動自在に枢結された第1リンク部材22を第2節20bとし、第1リンク部材22の先端部に一端側が枢結されて左右方向に回動自在であって他端側が回動支持アーム15のリンクアーム部15bの先端部に枢結された第2リンク部材23を第3節20cとし、回動支持アーム15のリンクアーム部15bを第4節20dとして構成されている。なお、第1節20aの長さは、作業部60の回動支点Oと第1節20a及び第2節20bの回動支点Qとの距離と、回動支点Qと第2節20b及び第3節20cの回動支点Sまでの距離を合算した値が、回動支点Oと回動支点Sとの間の距離よりも大きくなるように設定されている。
【0036】
リンク機構部20の第1節20aは従動節として機能し、第2節20b及び第3節20cは媒介節として機能し、第4節20dは原動節として機能する。第2節20bは平面視において右側に突出するように屈曲して前後方向に延びる。第2節20bと第3節20cとの回動支点Sとなるジョイント21は、図5(b)を更に追加して説明すると、後述する作業部回動ロック装置40によって伝動支持フレーム65が回動支持アーム15にロックされた状態でオフセット機構部10が揺動するに伴って移動するジョイント21の回動半径と前進オフセット溝33の曲率半径とが同一になるように配設されている。このため、伝動支持フレーム65が回動支持アーム15にロックされた状態でオフセット機構部10が左側に揺動すると、ジョイント21は前進オフセット溝33内に入り込んでこの溝に沿って移動することができる。
【0037】
また第1節20aと第2節20bとの回動支点Qとなるジョイント24は、前述したジョイント21が前進オフセット溝33の左側端部、即ち、案内開始位置Paに移動すると(図5(b)参照)、ジョイント21の中心と作業部60の回動支点Oとを結ぶ仮想線に対して右側に位置するように配設されている。このため、図6(c)において、ジョイント21が前述した反転溝31に沿って作業部60の回動支点O側に移動して第1リンク部材22が回動支点O側に移動するに伴って、ジョイント24には回動支点O側を向く力が作用し、第1節20aを時計方向に回動させるモーメントを生じさせる。従って、作業部60をオフセット機構部10に対して回動(首振り)させることができる。
【0038】
さらに、第2節20bの両端部に設けられたジョイント21,24の中心間距離は、第1リンク部材22に設けられたジョイント24が作業部60の回動支点O側に移動して作業部60を反転させるのに必要な長さを有している。従って、ジョイント21が反転溝31に沿って回動支点O側へ更に移動するに伴い、第2節20bが回動支点O側へ移動し、第1節20aと第2節20bとを繋ぐジョイント24を介して第1節20aが時計方向に回動して、作業部60を図6(d)に示す反転作業位置Prに移動させることができる。なお、作業部60がオフセット機構部10に対して回動(首振り)するときは、後述する作業部回動ロック装置40によるオフセット機構部10に対する作業部60のロック状態が解除されている。
【0039】
作業部回動ロック装置40は、図5(a)及び図5(b)に示すように、伝動支持フレーム65の一方側の側方に配設されて上下方向に延びる前進側ロックピン42と、伝動支持フレーム65の他方側の側方に配設されて上下方向に延びる反転側ロックピン43と、回動支持アーム15のリンクアーム部15bの先端部に回動自在に取り付けられて前進側ロックピン42又は反転側ロックピン43に係止可能に横方向に延びる板状のフック45と、フック45に設けられてフック上方に回転自在に支持されたローラ47と、オフセットフレーム11の先端下部に取り付けられたガイド部材30の一方側端部に取り付けられ、ローラ47と接触してフック45の回動を案内するフックガイド49とを有してなる。
【0040】
フック45は、平面視三角状に形成され、フック45の頂部から一方側に延びる前進側係合部材45aと、フック45の頂部から他方側に延びる反転側係合部材45bを有し、フック45の頂部がリンクアーム部15bに回動自在に取り付けられている。前進側係合部材45aの先端部には前進側ロックピン42に係止される前進側係合部45a1が設けられ、反転側係合部材45bの先端部には反転側ロックピン43に係止される反転側係合部45b1が設けられている。フック45の底部側の中央部には上方へ突出する支持ピンが設けられ、この支持ピンの上端部にローラ47が回転自在に支持されている。またフック45には、引っ張りばね48が取り付けられ(図9(a)参照)、この引っ張りばね48により前進側係合部材45aが前進側ロックピン42に係止される方向及び反転側係合部材45bが反転側ロックピン43に係止される方向に常に附勢されている。
【0041】
フックガイド49は、平面視において湾曲した弓状に形成され、前側に湾曲した案内面49aが形成されている。案内面49aの一方側には突出した段部49bが設けられている。この案内面49a上をローラ47が転動する。詳細については後述するが、ローラ47が段部49b上を転動すると、前進側係合部材45aが前進側ロックピン42に係止された状態が解除され、ローラ47が段部49bよりも一方側の案内面49a上を転動するときは、前進側係合部材45aが前進側ロックピン42に係止解除された状態が維持され、ローラ47が案内面49aの一方側から外れた状態になると、前進側係合部材45aが前進側ロックピン42に係止された状態になり、ローラ47が案内面49aの他方側から外れた状態になると、反転側係合部材45bが反転側ロックピン43に係止された状態になる。
【0042】
作業部回動ロック装置40は、作業部60の回動支点Oが図5(b)の状態から機体幅方向右側へ移動するようにオフセット機構部10が揺動すると、ローラ47がフックガイド49の案内面49aの一端側から外れた状態になり、引っ張りばね48によってフック45が時計回りに回動されて、前進側係合部材45aが前進側ロックピン42に係止された状態になり、作業部60は前進作業方向を向いた状態でオフセット機構部10に対して回動(首振り)がロックされた状態になる。この状態でオフセット機構部10を機体幅方向右側へさらに揺動させると、作業部60を前進作業方向に向いた状態でオフセット移動させることができる(図5(a)参照)。
【0043】
また、図5(b)に示した状態からオフセット機構部10を機体幅方向左側へ揺動させると、ローラ47がフックガイド49の案内面49a上をその他端側へ移動し、引っ張りばね48に抗してフック45が反時計回りに回動した状態に維持され、フック45は前進側ロックピン42から外れた状態に維持される。このため、図6(c)に示すように、作業部60はオフセット機構部10の反転作業位置側方向(矢印A方向)への揺動に伴って回動(首振り)する。
【0044】
そして、リンク機構部20のジョイント21が反転溝31の案内終了位置Peに移動し、さらにジョイント21が反転ロック溝35に移動すると、図6(d)に示すように、ローラ47はフックガイド49の案内面49aの他端部から外れた状態になり、フック45はフリーな状態になり、引っ張りばね48(図9(a)参照)によって時計回りに回動して反転側係合部材45bが反転側ロックピン43に係止される。このため、作業部60はオフセット機構部10に対して反転作業方向に向いた状態でロックされる。
【0045】
次に、このように構成された畦塗り機1の作業部60を前進作業位置から反転作業位置に移動させる場合の畦塗り機1の作動について、図5〜図10を参照しながら説明する。
作業部60が前進作業位置Pfに移動した状態では、図5(a)、図7(a)、図9(a)に示すように、前進側ロックピン42にフック45が係止されて、作業部60のオフセット機構部10に対する回動(首振り)はロックされている。この状態で手動式伸縮調整機構17が縮小してオフセット機構部10が機体幅方向左側に揺動すると、作業部60はその向きが前進作業方向に維持されたままで機体幅方向中央部側へ移動(オフセット移動)するとともに、リンク機構部20の第2節20bと第3節20cの回動支点であるジョイント21が前進オフセット溝33の開口端部側へ移動する。
【0046】
さらに、手動式伸縮調整機構17が縮小してオフセット機構部10が機体幅方向左側に揺動すると、図5(b)、図7(b)に示すように、ジョイント21が前進オフセット溝33内に入り込んで案内開始位置Paに移動する。ジョイント21が案内開始位置Paに移動すると、図9(b)を更に追加して説明すると、フック45に設けられたローラ47がフックガイド49の案内面49a上の段部49bに移動してフック45が反時計方向に回動し、フック45が前進側ロックピン42から外れて、作業部60のオフセット機構部10に対する回動(首振り)のロック状態が解除される。
【0047】
この状態で手動式伸縮調整機構17がさらに縮小してオフセット機構部10が機体幅方向左側に揺動すると、図6(c)、図8(c)、図10(c)に示すように、ジョイント21が反転溝31に沿って回動支点O側に移動し、ジョイント21に繋がる第2節20bが回動支点O側へ移動しながら、第2節20bに繋がる第1節20aを作業部60の回動支点Oを中心として時計方向に回動させ、伝動支持フレーム65が回動支点Oを中心として時計回りに回動する。このため、作業部60は回動支点Oを中心に時計回りに回動(首振り)する。
【0048】
ジョイント21が反転溝31の案内終了位置Peに移動すると、作業部60は反転作業位置Prに移動するとともに前後方向の向きが反転した反転状態になる。このとき、フック45は、反転側ロックピン43と非係止状態のままであり、作業部60の回動(首振り)は非ロック状態にある。
【0049】
この状態で手動式伸縮調整機構17がさらに縮小すると、図6(d)、図8(d)、図10(d)に示すように、ジョイント21が反転ロック溝35内に移動する。ジョイント21の反転ロック溝35内への移動に伴い、ローラ47はフックガイド49から外れた状態になり、引っ張りばね48の附勢力によってフック45は時計方向に回動してフック45は反転側ロックピン43に係止され、作業部60はその回動(首振り)がロック状態になる。従って、作業部60はオフセット機構部10に対してロックされた状態になる。
【0050】
このように、反転機構部19のガイド部材30に反転ロック溝35を設けることで、反転作業状態においても作業部60の向きが反転作業方向に向いた状態でオフセット機構部10に対して作業部60の回動(首振り)をロックすることができるので、オフセット機構部回動用の手動式伸縮調整機構17だけで前進作業位置Pfでの作業から反転作業位置Prでの作業まで変換させることができ、各作業位置において作業部60の回動(首振り)をロックすることで、手動式伸縮調整機構17への負荷も軽減され、安定した作業を行うことができる。
【0051】
ここで、手動式伸縮調整機構17の詳細な構成について、図11を参照しながら説明する。
図11に示す通り、手動式伸縮調整機構17は、長尺状の外筒70と、一端が外筒70の内側にて摺動する内棒80と、外筒70に固着されるとともに操作者がオフセットフレーム11を揺動させるための揺動力を発生させるための把持部90とを備えており、さらに、内棒80の一端が外筒70の内側にて摺動した際に外筒70に対する内棒80の位置をロックするロック機構部50を備えている。
【0052】
そして、ロック機構部50は、外筒70に設けられたロックピンガイド筒75と、内棒80に施された複数の内孔部85に挿入されるロックピン51を一端に有するとともに他端にロック解除操作部52を有するロックバー53と、ロック解除操作部52の操作によりロックバー53が外筒20に対してシーソー状に動作するために設けられた支持軸部54と、を有している。
さらに、ロックピン51には弾性部材55が備わっており、弾性部材55の弾性力により、常に、内孔部85に挿入される方向、つまり、ロックされる方向に付勢されている。
【0053】
ここで、図12(a)〜(c)を参照しながら、手動式伸縮調整機構17の動作について詳細に説明する。
図12(a)に示す状態は、弾性部材55の弾性力により、ロックピン51が内孔部85に挿入される方向に付勢されている状態を示しており、手動式伸縮調整機構17の伸縮状態がロックされている状態を示すものである。
つまり、操作者によるロック解除操作部52の操作が一切行われていない状態を示すものでもある。
【0054】
ここで、操作者によるロック解除操作部52の操作が行われると、弾性部材55の弾性力に反発して、ロック解除操作部52が支持軸部54を回動中心として回動されることとなる。
そうすると、図12(b)に示す通り、ロックピン51が内孔部85から抜かれるとともに、操作された際のロック解除操作部52の位置と、把持部90との位置とが近接する、又は、当接する位置関係となっている。
このため、操作者はロック解除操作部52と一緒に把持部90についても同時に片手持ちするように掴むことで、容易にロック解除操作部52を操作させることができ、手動式伸縮調整機構17の伸縮に係るロック状態が解除されることとなる。
【0055】
また、ロック解除操作部52の回動操作により、ロックピン51についても支持軸部54を回動中心として回動されることとなるが、ロックピンガイド筒75を設けていることから、ロックピン51の動作はスムーズに行われることとなる。
【0056】
さらに、ロックピン51を内孔部85から抜くことに際し、操作者はロックピン51を引っ張る操作をするわけではなく、片手で掴むことでロック状態を解除することができるため、操作性に優れるとともに、操作者がより大きな力を効率良く発揮できる構成となっている。
【0057】
次に、手動式伸縮調整機構17が伸びた状態について、図12(c)を参照しながら説明する。
図12(b)にて示した通り、操作者の片手操作(把持操作)により、手動式伸縮調整機構17の伸縮に係るロック状態が解除され、その結果、外筒70と内棒80とが互いに摺動可能となる。そして、図12(c)に示す通り、内棒80が外筒70に対して、摺動することが可能となり、手動式伸縮調整機構17が全体的に伸びることが可能となる。
【0058】
ここにおいて、図12においては図示を省略するものの、外筒70の一端はオフセットフレーム11に連結されて(図13参照)いるため、操作者は、ロック解除操作部52及び把持部90を同時に片手持ちして掴んだ後、その掴んだ片手を動かすことにより、オフセットフレーム11がヒッチフレーム6に対して揺動することとなる。その結果、内棒80が外筒70に対して摺動して手動式伸縮調整機構17が全体的に伸びることとなり、この点については、後述する。
【0059】
次に、図13(a)〜(c)を参照しながら、手動式伸縮調整機構17の操作により、ヒッチフレーム6に対してオフセットフレーム11が揺動する動作について詳細に説明する。
ここにおいて、図13に示す構成は、オフセットフレーム11、リンク部材13、ヒッチフレーム6及び回動支持アーム15によって構成される四節リンク機構に、手動式伸縮調整機構17を設けたものである。
【0060】
また、本実施形態における四節リンク機構は、図に示す通り、オフセットフレーム11とリンク部材13とが互いに平行である平行四節リンク機構を採用しているものの、本発明の適用に関しては、この構成に限られることなく、オフセットフレーム11とリンク部材13とが平行でない変則四節リンク機構(図示省略)であっても、適用が可能なものである。
【0061】
なお、四節リンク機構を採用することにより、揺動機構に対する作業部60の支持が安定するため、四節リンク機構に本発明に係る手動式伸縮調整機構17を適用することで、一層の安定性を確保しつつオフセットフレーム11の揺動を行うことができ、軽い力でスムーズな揺動が可能となる。
【0062】
図13(a)は、オフセットフレーム11が、走行機体98の走行方向右側に揺動した状態を示しており、図13(c)は、走行方向左側に揺動した状態を示すものである。
また、図13(b)は、オフセットフレーム11が、走行機体98の走行方向に対して揺動していない状態を示すものである。
【0063】
ここにおいて、操作者がオフセットフレーム11を走行機体98の走行方向右側に揺動させる場合、つまり、図13(b)に示す状態から図13(a)に示す状態に操作する際には、先述した通り、ロック解除操作部52を支持軸部54を回動中心として回動させ、ロックピン51を内孔部85から抜いてロック状態を解除することとなる。
【0064】
ここで、図13(b)に示す状態において、ロックピン51が挿入されている孔部は、内棒80に施されている内孔部86dであり、ロック解除操作部52の操作により、ロックピン51が内孔部86dから抜かれることとなる。
【0065】
その後、ロック解除操作部52を把持したときに同時に把持された把持部90とともに、オフセットフレーム11を走行機体98の走行方向右側に揺動させる方向(図中M)に回動操作することで、図13(b)に示す状態から図13(a)に示す状態にすることができる。
【0066】
なお、図13(a)に示す状態までオフセットフレーム11を揺動させた後、操作者がロック解除操作部52を放すことで、弾性部材55の弾性力が働き、ロックピン51が内棒80に施された孔部に挿入され、手動式伸縮調整機構17が伸びた状態でロックされる。
【0067】
具体的には、図13(a)に示す状態において、ロックピン51が挿入される孔部は、内棒80に施されている内孔部86aであり、操作者がロック解除操作部52を放すことにより、ロックピン51が内孔部86aに挿入され、ロックされることとなる。
【0068】
この場合、ロックピン51が挿入される孔部は内孔部86aであるものの、操作者が、オフセットフレーム11を揺動させる角度を調整する場合には、ロックピン51の位置について、内棒80の内孔部86b又は内孔部86cの位置に合わせるようにオフセットフレーム11を揺動させて、その時点でロック解除操作部52を放すことにより、ロックピン51がそれら孔部に挿入されてロックされることとなる。
【0069】
次に、操作者がオフセットフレーム11を走行機体98の走行方向左側に揺動させる場合、つまり、図13(b)に示す状態から図13(c)に示す状態に操作する際には、オフセットフレーム11を走行機体98の走行方向右側に揺動させる場合と同じく、先ず、図13(b)にて示した通り、ロック解除操作部52を支持軸部54を回動中心として回動させ、ロックピン51を内孔部86dから抜いて、ロック状態を解除することとなる。
【0070】
そして、ロック解除操作部52を把持したときに同時に把持された把持部90とともに、オフセットフレーム11を走行機体98の走行方向左側に揺動させる方向(図中N)に回動操作することで、図13(b)に示す状態から図13(c)に示す状態にすることができる。
【0071】
この場合についても、操作者がロック解除操作部52を放すことで、弾性部材55の弾性力が働き、ロックピン51が内棒80に施された孔部に挿入され、手動式伸縮調整機構17が伸びた状態でロックされることとなる。
【0072】
具体的には、図13(c)に示す状態において、ロックピン51が挿入される孔部は内棒80に施されている内孔部86eであり、操作者がロック解除操作部52を放すことにより、ロックピン51が内孔部86eに挿入され、ロックされることとなる。
【0073】
よって、操作者は、図13(b)に示す状態から図13(a)に示す状態、若しくは、図13(c)に示す状態にする場合に、ロック解除操作部52及び把持部90を片手によって掴み、そのまま掴んでいる片手を図13(b)に示す状態から各状態まで押して移動させ、移動した後に、掴んでいる片手を放すだけでロックされるため、本実施形態における手動式伸縮調整機構17は、操作性に優れるものである。
【0074】
つまり、片手によってロック解除操作部52及び把持部90を掴み、掴み続けることでロック解除の状態が維持され続けるため、オフセットフレーム11を所望の位置まで揺動させたときに放すだけで、容易にロックすることができるものである。
【0075】
また、本実施形態においては、図13(a)〜(c)に示す通り、ロックピン51が挿入される孔部が、五か所(内孔部86a、内孔部86b、内孔部86c、内孔部86d及び内孔部86e)であり、ロックピン51がこの五カ所の孔部に挿入されないかぎり、手動式伸縮調整機構17の伸縮に係る長さがロックされない構成となっている。
【0076】
つまり、仮に、図13(b)に示す状態から図13(c)に示す状態にする場合には、操作者は先ず、ロック解除操作部52を支持軸部54を回動中心として回動させて、ロックピン51を内孔部86dから抜いてロック状態を解除することとなる。
そして、ロック解除操作部52及び把持部90を同時に掴みながら、オフセットフレーム11を走行機体98の走行方向左側に向けて僅かに回動操作させた後、ロック解除操作部52のみを放すと、ロックピン51が弾性部材55によって内棒80に付勢され続けるものの、挿入すべき孔部(内孔部86e)に到達するまでロックされることがない。
【0077】
このため、操作者は、ロック解除操作部52及び把持部90を同時に掴みながら、オフセットフレーム11を走行機体98の走行方向左側に向けて僅かに回動操作させた段階で、ロック解除操作部52を放すことができ、その後、把持部90のみを掴んで操作するだけでよい。
【0078】
なお、先述してきた実施形態は、ヒッチフレーム6及びオフセットフレーム11との間に手動式伸縮調整機構17を架け渡した配置構成を示しているものの、本件発明は、この配置構成に限られるものではない。
つまり、図示は省略するものの、手動式伸縮調整機構17を回動支持アーム15とオフセットフレーム11との間に架け渡す配置構成、又は、回動支持アーム15とリンク部材13との間に架け渡す配置構成、若しくは、ヒッチフレーム6とリンク部材13との間に架け渡す配置構成としても良く、手動式伸縮調整機構17の配置構成を限定するものではない。
【0079】
さらに、伸縮動作することにより、オフセットフレーム11及びリンク部材13をヒッチフレーム6及び回動支持アーム15に対して揺動させることが可能であるかぎり、手動式伸縮調整機構17をオフセットフレーム11とリンク部材13との間に架け渡す配置構成(図示省略)としても良いものである。
この場合、手動式伸縮調整機構17をヒッチフレーム6及び回動支持アーム15に連結する必要がなくなるため、走行機体98に固定されるヒッチフレーム6における省スペース化を図るとともに、作業部60が連結される回動支持アーム15においても省スペース化を図ることができ、畦塗り機における他の構成部品等との干渉を極力回避することができる。
【0080】
これらを踏まえ、本発明においては、手動式伸縮調整機構17を用いることで、オフセットフレーム11を前進作業位置と反転作業位置との間で揺動させることができ、さらに、非作業位置にも揺動させることが可能となっている。
言い換えると、手動式伸縮調整機構17について、先述した四節リンク機構と、反転機構部19(リンク機構部20及びガイド部材30)とによって構成される機構に用いることで、手動式伸縮調整機構17の操作により、作業部60の前進作業位置と反転作業位置との間における移動を容易に行うことができ、非作業位置への移動も容易に行うことができることとなる。
【0081】
次に、手動式伸縮調整機構17と、整畦部66に設けたグリップ部89との協働操作により、作業部60を前進作業位置と反転作業位置との間で移動させる動作について、図13及び図14を参照しながら、説明する。
【0082】
ここで、図14は、ヒッチフレーム6に対してオフセットフレーム11を揺動させて、作業部60を前進作業位置(図14(a))と、非作業位置(図14(b))と、反転作業位置(図14(c))とに移動させた状態を示すものである。
そして、その揺動させた状態について、図14(a)は図13(a)に対応し、図14(b)は図13(b)に対応し、図14(c)は図13(c)に対応するものである。
【0083】
ここで、本発明においては、図14に示す通り整畦部66にグリップ部89を設けており、操作者が作業部60を前進作業位置から反転作業位置に移動させる際に、手動式伸縮調整機構17の操作部52及び把持部90を片手で掴むと同時に、もう一方の片手でグリップ部89を掴み、作業部60の移動方向に向けて回動させることで、容易に操作が可能となるものである。
【0084】
具体的には、作業部60を非作業位置(図14(b)参照)から前進作業位置(図14(a)参照)に移動させる場合には、図13(b)を参照しながら先述した通り、操作者は片手によりロック解除操作部52及び把持部90を掴んで手動式伸縮調整機構17の伸縮に係るロック状態を解除し、そのままもう片一方の手でグリップ部89を掴み、両手の力を利用して、作業部60を前進作業位置に向けて移動させることとなる。
【0085】
一方、作業部60を非作業位置(図14(b)参照)から反転作業位置(図14(c)参照)に移動させる場合においても、操作者は片手によりロック解除操作部52及び把持部90を掴んで手動式伸縮調整機構17の伸縮に係るロック状態を解除し、そのままもう片一方の手でグリップ部89を掴み、両手の力を利用して、作業部60を反転作業位置に向けて移動させることとなる。
【0086】
また、先述した通り、作業部60を前進作業位置若しくは反転作業位置に移動させた後に、ロック解除操作部52及び把持部90を掴んでいる片手を放すことで、弾性部材55の弾性力が働き、ロックピン51が外筒70及び内棒80に施された孔部に挿入され、手動式伸縮調整機構17が伸びた状態でロックされる。
【0087】
さらに、図示は省略するものの、図13(a)〜(c)を参照して先述した通り、オフセットフレーム11が走行方向右側に揺動した状態について、互いに揺動角度の大きさが異なる三段階の右側揺動状態の保持を可能とするべく、ロックピン51が挿抜される孔部を複数個所設けても良いものである。
具体的には、それぞれの右側揺動状態について、ロックピン51が挿抜される孔部を外筒70及び内棒80に施し、実際の操作に際に、各々の右側揺動段階において、ロック解除操作部52及び把持部90を掴んでいる片手を放して、各々の揺動状態にてロックしても良いものである。
【0088】
これらを踏まえ、本発明により、手動式伸縮調整機構17及びグリップ部89を掴んで操作することで、作業部60を前進作業位置と反転作業位置との間で移動することができ、さらに、非作業位置にも移動が可能としているため、操作性に優れることとなる。
つまり、手動式伸縮調整機構17及びグリップ部89について、先述した四節リンク機構と、反転機構部19(リンク機構部20及びガイド部材30)とによって構成される機構に用いることで、手動式伸縮調整機構17及びグリップ部89を用いた簡易的な操作により、作業部60の前進作業位置と反転作業位置との間における移動を可能とするとともに、非作業位置への移動も可能とするものである。
【0089】
次に、手動式伸縮調整機構17及びグリップ部89の操作により、作業部60を非作業位置と反転作業位置との間で移動させる動作について、図15を参照しながら、説明する。
ここで、図15(a)は、作業部60が非作業位置にある状態を示しており、図15(e)は、作業部60が反転作業位置に移動した状態を示すものである。
そして、その揺動させた状態について、図15(a)は図13(b)及び図14(b)に対応し、図15(e)は図13(c)及び図14(c)に対応するものである。
また、図15(b)〜(d)は、作業部60が非作業位置から反転作業位置へ向けて回動(首振り)した状態を示すものである。
【0090】
先ず、操作者が作業部60を非作業位置から反転作業位置に移動させる際には、手動式伸縮調整機構17の操作部52及び把持部90を片手で掴むと同時に、もう一方の片手でグリップ部89を掴み、作業部60を移動させることとなる。
そして、操作者は両手の操作により、順に図15(b)から図15(c)の状態へ、更に、図15(c)から図15(d)の状態へと作業部60を移動させ、最後に図15(e)に示す状態へと作業部60を移動させる。
【0091】
その後、反転作業位置に移動させたときに、手動式伸縮調整機構17の操作部52及び把持部90を掴んでいた片手を放すことで、弾性部材55の弾性力が働き、ロックピン51が外筒70及び内棒80に施された孔部に挿入され、手動式伸縮調整機構17が伸びた状態でロックされ、反転作業位置にて作業部60の位置がロックされることとなる。
【0092】
よって、操作者は、ロック解除操作部52及び把持部90を片手で掴むとともに、もう一方の片手でグリップ部89を掴み、そのまま両手を使って作業部60を非作業位置から反転作業位置まで移動させ、移動した後に両手を放すだけで、作業部60の位置がロックされるため、本実施形態における手動式伸縮調整機構17及びグリップ部89は、操作性に優れるものである。
【0093】
特に、ロック解除操作部52及び把持部90を片手のみで掴み続けることで、手動式伸縮調整機構17の伸縮に係るロック解除の状態が維持し続けるため、オフセットフレーム11を所望の位置まで揺動させた時点で掴んでいる片手を放すだけで、伸縮状態を容易にロックすることができるものである。
【0094】
また、本実施形態においては、作業部60が非作業位置から反転作業位置まで移動するまでの間に、ロックピン51が挿入される孔部が、非作業位置における孔部及び反転作業位置における孔部のみであるため、作業部60が図15(b)〜(d)に示す通りの回動(首振り)している状態においては、作業部60の位置が固定されない構成となっている。
【0095】
つまり、本実施形態においては、ロック解除操作部52及び把持部90を同時に掴みながら、作業部60を反転作業位置に向けて僅かに回動操作させた後に、ロック解除操作部52のみを放すと、ロックピン51が弾性部材55によって内棒80に付勢され続けるものの、挿入すべき孔部(反転作業位置における孔部)に到達するまでロックされることがない。
【0096】
このため、操作者は、作業部60の移動の際には、最初だけ片手で同時にロック解除操作部52及び把持部90を掴む必要があるものの、作業部60を反転作業位置に向けて僅かに移動させた段階において、その後は、ロック解除操作部52を放すことができる。
【0097】
具体的には、作業部60を反転作業位置に向けて僅かに移動させた段階で、ロック解除操作部52を放し、その後の回動(首振り)操作のため、一方の片手で把持部90を掴みつつ、他方の片手でグリップ部89を掴んで作業部60を反転作業位置に向けて移動させることができる。
このため、操作者の両手の力を、効率良く、作業部60の移動の動力として活かすことができるものである。
【0098】
さらに、操作者によっては、作業部60の回動(首振り)操作の負担が大きい場合もあり、この場合、ロック解除操作部52を放すと同時に把持部90も放し、そのロック解除操作部52及び把持部90を掴んでいた一方の片手を、他方の片手と一緒にグリップ部89を掴んで、作業部60を反転作業位置に向けて移動させてもよい。
このため、腕力の乏しい操作者であっても、作業部60を効率良く反転作業位置に向けて移動させることが可能となる。
【0099】
そして、作業部60が反転作業位置に到達した際に、自動的に、ロックピン51が弾性部材55によって内棒80に施されている孔部に挿入されるため、操作性に優れるものである。
【0100】
なお、上記してきた操作方法は、作業部60を非作業位置から反転作業位置まで移動させる場合の操作方法として説明したものであるものの、作業部60を反転作業位置から非作業位置まで移動させる場合であっても適用可能な操作方法である。
【0101】
具体的には、操作者は反転作業位置において、ロック解除操作部52及び把持部90を同時に片手で掴みつつ、もう一方の片手でグリップ部89を掴み、その後、作業部60を反転作業位置から作業位置に向けて僅かに移動させた段階で、ロック解除操作部52を放すことができる。
そして、一方の片手で把持部90を掴みつつ他方の片手でグリップ部89を掴んで作業部60を非作業位置に向けて移動させ、若しくは、両手でグリップ部89を掴んで作業部60を反転作業位置に向けて移動させることができるものである。
このため、操作者の両手の力を効率良く回動(首振り)操作に活かすことができ、作業部60が非作業位置置に到達した際に、自動的に、ロックピン51が弾性部材55によって内棒80に施されている孔部に挿入されるため、操作性に優れるものである。
【0102】
次に、図16を参照しながら、整畦部66に設けられたグリップ部89の構成について説明する。なお、図16は、作業部60が図15(e)にて示した反転作業位置にある状態に対応するものであり、図15(e)にて示した図を上下逆に見た図である。
また、図に示す通り、グリップ部89は、整畦部66に固定された固定部89aと、操作者が把持する部分であるとともに固定部89aから延設された延設部89bとから構成されている。
【0103】
ここにおいて、作業部60が反転作業位置にある状態から非作業位置に向けて移動する際には、図に示す揺動支点Tを中心としたオフセットフレーム11の揺動と、回動支点Oを中心とした作業部60の回動(首振り)が同時に行われることとなり、これらの動作をグリップ部89の操作により行うこととなる。
【0104】
つまり、オフセットフレーム11の揺動の円弧上(図中の円弧F)の接線方向であって、オフセットフレーム11の揺動に係る動力としてのベクトルJ(図中J)と、作業部60の回動(首振り)動作の円弧上(図中の円弧G)の接線方向であって、作業部60の回動(首振り)動作に係る動力としてのベクトルK(図中K)とについて、これらの合成ベクトルに係る動力をグリップ部89において同時に発生させる必要がある。
【0105】
このため、図に示す通り、グリップ部89における延設部89bは、ベクトルJとベクトルKとの合成ベクトルである合成ベクトルRの方向と垂直な方向(図中C)に延設されており、操作者が把持して操作することで、合成ベクトルRと同方向の動力を発生させることとなっている。
【0106】
よって、先述した通り、操作者のグリップ部89の把持による片手又は両手による力を、効率良く、作業部60の移動の動力として活かすことができる。
なお、延設部89bの延設される方向の特徴について、作業部60が反転作業位置にある状態を示している図16をベースとして述べてきたものの、この延設部89bの延設される方向について、作業部60が前進作業位置にある状態をベースとして設計すること(図示省略)も可能である。
【0107】
以上から、本発明においては、作業部60を非作業位置と反転作業位置との間で移動させる際に、ロック解除操作部52及び把持部90を片手で掴むとともに、もう一方の片手でグリップ部89を掴み、そのまま両手を使って作業部60を移動させ、移動した後に両手を放すだけで、作業部60の位置がロックされるため、操作性に優れるものである。
【0108】
また、作業部60の移動の最中にロック解除操作部52を放すことができ、ロック解除操作部52を放した後、一方の片手で把持部90を掴みつつ他方の片手でグリップ部89を掴んで作業部60を移動させ、若しくは、両手でグリップ部89を掴んで作業部60を移動させることができ、所望の位置まで移動した際には、自動的に作業部60の位置がロックされることとなる。
【0109】
さらに、グリップ部89の形状について、操作者の力を効果的に活かすことが可能である形状となっており、実際の作業部60の移動において回動(首振り)動作を途中で停止することなく行う必要性を考慮すると、より一層の効果を発揮するものといえる。
【0110】
なお、本発明に係る「作業位置」は、本実施形態における前進作業位置及び反転作業位置を意味するものである。
【符号の説明】
【0111】
1 畦塗り機1
6 ヒッチフレーム
10 オフセット機構部
11 オフセットフレーム
13 リンク部材
15 回動支持アーム
17 手動式伸縮調整機構
50 ロック機構部
51 ロックピン
52 ロック解除操作部
53 ロックバー
54 支持軸部
55 弾性部材
70 外筒
75 ロックピンガイド筒
80 内棒
85 内孔部
89 グリップ部
90 把持部
98 走行機体


【特許請求の範囲】
【請求項1】
走行機体に装着されるオフセット作業機であって、
前記走行機体の走行方向後方側に装着されるヒッチフレーム及び該ヒッチフレームに基端部を回動自在に連結されて後方側へ配設されるオフセットフレームを有するとともに、該オフセットフレームが前記基端部を中心として揺動することで、前記走行機体に対して揺動することとなる揺動機構と、
該揺動機構の先端側に回動自在に連結されるとともに、前記走行機体の走行により作業を行う作業位置及び作業を行わない非作業位置の間で移動が可能な作業部と、
前記揺動機構に装着されるとともに、前記オフセットフレームを前記ヒッチフレームに対して揺動させるために伸縮して伸縮状態をロック自在とする手動式伸縮調整機構と、
前記揺動機構の揺動に伴い前記作業部を前記揺動機構に対して回動させて作業位置及び非作業位置に移動させる反転機構部と、を備え、
前記手動式伸縮調整機構は、前記手動式伸縮調整機構の伸縮状態のロック状態を解除する可動式のロック解除操作部と、該ロック解除操作部に近接した位置に設けられた固定式の把持部と、を備えていることを特徴とするオフセット作業機。
【請求項2】
前記作業部は、グリップ部を備えていることを特徴とする請求項1に記載のオフセット作業機。
【請求項3】
前記ロック解除操作部及び前記把持部は、片手で同時に掴むことが可能な位置関係を有していることを特徴とする請求項1乃至請求項2のいずれかに記載のオフセット作業機。
【請求項4】
前記ロック解除操作部は、弾性部材により、前記手動式伸縮調整機構の伸縮状態のロック状態を維持するように付勢されていることを特徴とする請求項1乃至請求項3のいずれかに記載のオフセット作業機。
【請求項5】
前記手動式伸縮調整機構は、前記把持部が設けられた長尺状の外筒と、該外筒の内側にて一端が摺動する内棒と、一端に前記ロック解除操作部を有するロックバーと、を備え、
前記ロックバーの他端には係合片が設けられ、前記内棒には前記係合片と係合することで前記手動式伸縮調整機構の伸縮状態をロック状態にする係合部が設けられていることを特徴とする請求項1乃至請求項4のいずれかに記載のオフセット作業機。
【請求項6】
前記グリップ部は、前記作業部に固定された固定部と、該固定部から延びて形成されるとともに前記操作者が把持する延設部と、を備え、
前記延設部は、前記作業部が前記作業位置にある際に、前記オフセットフレームを前記ヒッチフレームに対して揺動させる方向ベクトルと、前記作業部を前記オフセットフレームに対して回動させる方向ベクトルとの合成ベクトルの方向に対して略垂直な方向に延びて形成されていることを特徴とする請求項1乃至請求項5のいずれかに記載のオフセット作業機。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【公開番号】特開2012−191868(P2012−191868A)
【公開日】平成24年10月11日(2012.10.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−56590(P2011−56590)
【出願日】平成23年3月15日(2011.3.15)
【出願人】(390010836)小橋工業株式会社 (198)
【Fターム(参考)】