説明

オープンショーケースの商品陳列棚

【課題】商品陳列棚の庫内取付け位置を上下に移動した場合に、この移動に合わせて棚前部に設けた導風ガイド機構を冷気エアカーテンに対し適正な導風位置に調整して高い保冷性能を維持できるように改良した商品陳列棚の構造を提供する。
【解決手段】前面開放形になるケース本体1の庫内に商品陳列棚7を配置し、冷気吹出口3aから庫内前面域に冷気エアカーテン9を吹出し形成して庫内を保冷する冷気循環式のオープンショーケースで、前記商品陳列棚7はその棚前部に導風ガイド板7B−3を設けてその内側にスリット状のエアカーテン導風路7B−4を形成した構造になり、かつ庫内の取付け位置を上下に移動可能に架設したものにおいて、商品陳列棚7を本体棚板7Aと、本体棚板の前部に組み合わせて前後へ移動調整可能に連結したスライド棚板7Bとに分割した上で、該スライド棚板7Bの前部に導風ガイド板7B−3を設けてその内側にエアカーテン導風路7B−4を形成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、店舗の売場に据付けて使用する冷気循環式のオープンショーケースに関し、詳しくは庫内に配置した商品陳列棚の構造に係わる。
【背景技術】
【0002】
頭記の冷気循環式オープンショーケースとして、前面開放形ケース本体の庫内に上下段に並ぶ商品陳列棚を配置し、ケース本体の天井部に配した冷気吹出口から庫内底部の吸込口に向け庫内前面域に冷気エアカーテンを吹出し形成して庫内を保冷するオープンショーケースが知られている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
上記のオープンショーケースにおいては、庫内前面域に吹出する冷気エアカーテンに商品陳列棚が不要に干渉してエアカーテンの層流が乱されるのを回避するために、商品陳列棚を冷気エアカーテンの気流から離してその奥に設置しているが、このような構成では商品陳列棚の奥行き寸法が制約を受けて陳列商品の収納効率が低くなる問題がある。
【0004】
そこで、冷気エアカーテンの層流を乱さずに商品陳列棚の奥行き寸法を前方に拡張して商品収容数の増大化を図るようにするために、発明者等は商品陳列棚の前部に冷気エアカーテンの導風ガイド機構を設けて、商品陳列棚の棚板をケース本体の庫内前面近くまで拡張できるようにした構成の商品陳列棚を先に提案しており、次にその商品陳列棚を装備したオープンショーケース,および商品陳列棚の構造を図5,図6に示す。
【0005】
図5において、1は特許文献1と同様な断熱筐体になる前面開放形のケース本体、2は庫内仕切壁、3はケース本体1と庫内仕切壁2との間に画成した冷気循環ダクト、3aは冷気循環ダクト3に連ねてケース本体1の天井前部に配したハニカム整流式の冷気吹出口、3bは冷気吹出口3aに対向してケース本体1の底部側前部に開口した吸込口、4はケース本体1の底部(船底部)に配置した冷却器(冷凍機のエバポレータ)、5は冷気循環ファン、6は庫内底部のデッキパン、7は上下段に並べてケース本体1の庫内に配置した商品陳列棚であり、該商品陳列棚7は棚ブラケット8を介して庫内仕切壁2の背面パネル前面に立設した棚支柱(不図示)に架設されている。
【0006】
上記の構成で、ショーケースの保冷運転時には冷却器4を貫流した冷気が図示矢印のように冷気循環ダクト3を通流し、冷気吹出口3aから吸込口3bに向けてケース本体1の庫内前面域に冷気エアカーテン9を斜め下方に向けて吹き出するとともに、庫内仕切壁2の背面パネル面に穿孔したパンチング孔から庫内に冷気流10が吹き出して庫内を保冷することは周知の通りである。なお、11は商品陳列棚7に載置した商品、12は商品陳列棚7の下面に配した照明灯(直管形の蛍光灯)である。
【0007】
次に、前記商品陳列棚7の構造を図6に示す。すなわち、トレー状の棚板7aの前部には間隔片を介して棚板7aの幅方向に導風ガイド板7bを設け、この導風ガイド板7bと棚板7aの前端との間に冷気エアカーテン9を通すスリット状の導風路7cを形成しており、この商品陳列棚7は左右一対の棚ブラケット8の間に架設し、棚ブラケット8はその後端に形成した係合爪8aを介してケース本体の庫内背面に架設される。
【0008】
ここで、商品陳列棚7の棚板7aは、冷気吹出口3aからケース本体1の前面開口域に吹き出す図示矢印の冷気エアカーテン9の気流に沿って前記導風ガイド板7bが位置するような奥行き寸法に定めている。また、上下段に並ぶ商品陳列棚7については、下段側に並ぶ棚の奥行き寸法を上段側に並ぶ棚の奥行き寸法よりも長大に設定している。
【0009】
これにより、ケース本体1の天井部から冷気吹出口3aを通じて斜め下方に吹き出した冷気エアカーテン9、および庫内の背面からパンチング孔を通じて前方に吹き出した冷気流10は上下各段の商品陳列棚7の前部に設けた導風ガイド板7bの内面に沿って導風され、この導風ガイド板7bの背後に形成したスリット状の導風路7cを次々に流下して吸込口3bに回収される。
【0010】
これにより、本体ケース1の庫内前面域に吹き出す冷気エアカーテン9を商品陳列棚7の導風機能により層流状態に維持して高い保冷性能を維持しつつ、商品陳列棚7の奥行き寸法を在来のオープンショーケース(例えば、特許文献1)に配備した商品陳列棚よりも前方に拡張して商品収納数を増やすことが可能となる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【特許文献1】特開平10−300315号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
ところで、前記のオープンショーケースに配備した商品陳列棚は、一般にその庫内の取付け高さ位置が上下に移動調節できるようにしており、ユーザーは商品の種類,サイズ,陳列量に応じて上下各段の商品陳列棚を所望の高さ位置にセットして使用している。
【0013】
これに対して、図5,図6に示した棚構造になる商品陳列棚7の庫内取付け位置を上下に移し替えると、次記のように商品陳列棚7が冷気エアカーテン9に干渉してエアカーテンの層流が乱れ、そのために庫内の保冷性能が低下する問題がある。
【0014】
すなわち、ケース本体1の庫内に配した上段側の商品陳列棚7を図5に示した高さ位置から上方に若干移動して図7に示す位置に移し替えると、商品陳列棚7とケース本体1の天井部に開口する冷気吹出口3aとの相対位置が変わり、前部に導風ガイド板7b,スリット状導風路7cを設けた商品陳列棚7の棚板7aが冷気吹出口3aから庫内前面域に向けて斜め下方に吹き出す冷気エアカーテン7の気流経路を横切ってその前方に突き出すようになる。
【0015】
このような状態では、冷気吹出口3aから吹き出した冷気エアカーテン9の気流は上段に並ぶ商品陳列棚7の棚板7a,ないしこの棚板7aの前部に載置した商品11に衝突して本来の通風経路から逸れ、図示矢印のように商品陳列棚7の前方を迂回して下方に流下するようになる。そのために商品陳列棚7の前部に設けた導風ガイド板7bは有効に機能せず、冷気エアカーテン9の層流に乱れが生じて庫外側の外気を巻き込んだり、庫内の冷気が庫外に漏れたりするようになる。その結果、庫内の保冷性能が低下して冷凍機の消費電力が増加する。また、商品陳列棚7を図5の取付け位置から下方に移し替えた場合は、前記と逆に商品陳列棚7の前部が冷気エアカーテン9の気流から背後に離間する。このために、商品陳列棚7の前部に設けた導風板7bは有効に機能しなくなる。
【0016】
この発明は上記の点に鑑みなされたものであり、その目的は前記課題を解決し、庫内に配置した商品陳列棚の取付け高さ位置を上下に移し替えた場合に、この移動に合わせて棚の前部に設けた導風ガイド板7bを、ケース本体の庫内前面域に吹き出し形成した冷気エアカーテンに対して適正な導風位置に調整設定してエアカーテンの層流乱れ,およびエアカーテンの乱れに起因する外気熱の庫内侵入,冷気の漏れを防止して高い保冷性能を維持できるように商品陳列棚の構造を改良したオープンショーケースを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0017】
上記目的を達成するために、この発明によれば、前面開放形になるケース本体の庫内に上下段に並ぶ商品陳列棚を配置し、ケース本体の天井部に配した冷気吹出口から底部の吸込口に向け庫内前面域に冷気エアカーテンを吹出し形成して庫内を保冷する冷気循環式のオープンショーケースであって、その商品陳列棚はその棚前部に導風ガイド板を設けてその内側にスリット状のエアカーテン導風路を形成した構造になり、かつ庫内の取付け高さ位置を上下に移動可能に架設したものにおいて、
前記商品陳列棚を、本体棚板と、該本体棚板の前部に組み合わせて前後へ移動調整可能に連結したスライド棚板とに分割した上で、該スライド棚板の前部に前記の導風ガイド板を設けてその内側にエアカーテン導風路を形成した構成とし(請求項1)、このスライド棚板は、商品陳列棚の庫内取付け高さに対応して前記導風ガイド板,エアカーテン導風路が冷気吹出口から庫内前面域に向けて吹出す冷気エアカーテンを適正に導風ガイドする位置に設定する(請求項2)。
【発明の効果】
【0018】
上記のように、商品陳列棚を本体棚板と、該本体棚板の前部に組み合わせて前後へ移動調整可能に連結したスライド棚板とに分割した上で、該スライド棚板の前部に導風ガイド板を設けてその内側にエアカーテン導風路を形成した構成よれば、商品陳列棚の庫内取付け位置を上下に移動場合でも、この移動に合わせてスライド棚板を適正なエアカーテン導風位置に合わせて位置決め設定することで、冷気吹出口から庫内の前面域に吹き出す冷気エアカーテンとの不要な干渉による層流乱れの発生、この層流乱れに起因する外気熱の庫内侵入,冷気漏れを効果的に防ぐことができる。
【0019】
これにより、商品陳列棚の庫内取付け高さを変更した場合でも、常に冷気エアカーテンの性能を安定維持して高い庫内保冷性能を確保できる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】この発明の実施例に係るオープンショーケースの構成図であって、(a)はショーケースケース全体の側視断面図、(b)は(a)における商品陳列棚の拡大側面図である。
【図2】図1(b)に示した商品陳列棚の分解斜視図である。
【図3】図2における本体棚板の構造図であって、(a),(b),(c)はそれぞれ正面図,底面図,および側面図である。
【図4】図2におけるスライド板の構造図であって、(a),(b)はそれぞれ平面図,および側面図である。
【図5】図1に対応する従来のオープンショーケースの側視断面図である。
【図6】図5における商品陳列棚の構造を示す側面図である。
【図7】図5における上段側の商品陳列棚の取付け位置を上方に移動した場合に対応する冷気エアカーテンの通流経路を表す図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、この発明の実施の形態を図1〜図4に示す実施例に基づいて説明する。なお、実施例の図中で図5,図6に対応する部材には同じ符号を付してその説明は省略する。
図示実施例において、ケース本体1の構造は図5に示した従来構造と同一であるが、その庫内に配置した商品陳列棚7は、トレー状になる本体棚板7Aと、該本体棚板7Aの前部に組み合わせて前後へ移動調整可能に連結したスライド棚板7Bとに分割されている。
【0022】
ここで、スライド棚板7Bは、その棚板7B−1の前部に左右一対の間隔片7B−2を介して図6の商品陳列棚と同様な導風ガイド板7B−3を設け、該導風ガイド板7B−3の背面と棚板7B−1の前端との間に棚幅に相応したスリット状のエアカーテン導風路7B−4を形成している。
【0023】
また、スライド棚板7Bは本体棚板7Aに対し、次記構成の調整機構を介して前後方向へ移動調整可能に連結されている。すなわち、本体棚板7Aの裏面側にはトレー状棚板7A−1の左右側縁に沿って前後方向に延在するチャンネル状のガイド枠7A−2がスポット溶接などで固着されており、このガイド枠7A−2の内側壁面には所定間隔を隔てて2本のビス(段付きねじ)7A−3が螺設されている。
【0024】
一方、スライド棚板7Bは、棚板7B−1の裏面側にその前端から後方に延在する左右一対のアーム7B−5を設け、このアーム7B−5の板面に前記本体棚板7Aに設けたビス7A−3を通すスライド溝7B−6を開口した上で、該スライド溝に沿って前後4箇所にビス7A−3に対応する係合溝部が分岐形成されている。
【0025】
そして、図1(b)に示す商品陳列棚7の組立状態では、スライド棚板7Bのアーム7B−5が本体棚板7Aのチャンネル枠7A−2の内側に沿って嵌め込まれ、この状態で前記スライド溝7B−6に通したビス7A−3を選択した係合溝部に締結する。この連結構造により、本体棚板7Aに対してスライド棚板7Bを前後(図1(b)の矢印X方向)に移動調整することかでき、その移動に合わせて商品陳列棚7の奥行き方向の実効寸法を可変設定できる。なお、図示例ではスライド溝7B−6の4箇所に係合溝部を形成してスライド棚板7Bを前後3段階に調整できるようにしているが、スライド溝7B−6の長さ,係合溝部数を変えることで移動調節の範囲,段数を変更できる。
【0026】
次に、オープンショーケースの庫内に配置した前記構成になる商品陳列棚7について、その取付け位置を上下に変更する場合におけるスライド棚板7Bの調節操作を説明する。まず、上下段に並ぶ商品陳列棚7を図1(a)の実線で表す標準の高さ位置では、図5で述べたと同様に、スライド棚板7Bの前部に設けた導風ガイド板7B−3が冷気エアカーテン9の気流に沿った位置に設定されており、この位置で各段の棚前部に形成したスリット状のエアカーテン導風路7B−4を通して冷気エアカーテン9の気流を下方に向けて導風ガイドしている。ここで、上段側に並ぶ商品陳列棚7について、その庫内取付け高さを鎖線で表す位置に変更する場合には、前記連結機構の調節操作により、スライド棚板7Bを本体棚板7Aに対して次記のように前後方向に移動調整する。
【0027】
すなわち、商品陳列棚7の取付け位置を上方に移動する場合には、スライド棚板7Bを前記の実線位置から後方に押し込み、その棚前部に設けた導風ガイド板7B−3がケース本体1の冷気吹出口3aから斜め下方に吹き出す冷気エアカーテン9の気流を適正に導風ガイドするような位置に設定する。一方、商品陳列棚7の取付け位置を下方に移動する場合には、前記とは逆にスライド棚板7Bを実線位置から前方に引出し、この位置で棚前部に設けた導風ガイド板7B−3が冷気エアカーテン9の気流を適正に導風するように設定する。これにより、商品陳列棚7の庫内取付け高さを変更した場合でも、冷気エアカーテン9の性能を安定維持して高い庫内保冷性能を確保できる。
【0028】
なお、前記した商品陳列棚7の庫内取付け高さ位置と、その高さ位置に対応して適正な導風位置に移動調整するスライド棚板7Bとの位置関係については、例えば一覧表にしてオープンショーケースの製品に表示しておくようにする。これにより、オープンショーケースのロケーション先で商品陳列棚7を標準位置から上下に移し替る場合に、ユーザーは前記の一覧表からスライド棚板7Bの調整位置を確認して適正なエアカーテン導風位置に調整セットすることができる。
【0029】
なお、商品陳列棚7の本体棚板7Aにスライド棚板7Bを前後へ移動可能に組み付ける連結機構については、図示実施例の構造に限定されるものではなく、その構造を適宜に変更して実施することもできる。
【符号の説明】
【0030】
1:ケース本体
2:庫内仕切壁
3:冷気循環ダクト
3a:冷気吹出口
3b:吸込口
4:冷却器
5:冷気循環ファン
7:商品陳列棚
7A:本体棚板
7B:スライド棚板
7B−1:棚板
7B−3:導風ガイド板
7B−4:エアカーテン導風路

【特許請求の範囲】
【請求項1】
前面開放形になるケース本体の庫内に上下段に並ぶ商品陳列棚を配置し、ケース本体の天井部に配した冷気吹出口から底部の吸込口に向け庫内前面域に冷気エアカーテンを吹出し形成して庫内を保冷する冷気循環式のオープンショーケースであり、商品陳列棚はその棚前部に導風ガイド板を設けてその内側にスリット状のエアカーテン導風路を形成した構造になり、かつ庫内の取付け高さ位置を上下に移動可能に架設したものにおいて、
前記商品陳列棚を、本体棚板と、該本体棚板の前部に組み合わせて前後へ移動調整可能に連結したスライド棚板とに分割した上で、該スライド棚板の前部に前記の導風ガイド板を設けてその内側にエアカーテン導風路を形成したことを特徴とするオープンショーケース。
【請求項2】
請求項1に記載のオープンショーケースにおいて、スライド棚板は、商品陳列棚の庫内取付け高さに対応して前記導風ガイド板,エアカーテン導風路が冷気吹出口から庫内前面域に向けて吹出す冷気エアカーテンの気流を適正に導風ガイドする位置に設定したことを特徴とするオープンショーケース。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2011−167384(P2011−167384A)
【公開日】平成23年9月1日(2011.9.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−34601(P2010−34601)
【出願日】平成22年2月19日(2010.2.19)
【出願人】(000005234)富士電機株式会社 (3,146)
【Fターム(参考)】