説明

カスケードポンプ装置

【課題】実装スペースを小さくできるカスケードポンプ装置を提供すること。
【解決手段】カスケードポンプ装置1は、ポンプ室25、羽根車21、駆動コイル27を備える磁気駆動機構と、これらを搭載するポンプケース2を有する。ポンプケース2は、全体として四角柱形状であり、上面2aと下面2bの間の中間部2zに、一方向に平行に延びる吸入管3および吐出管4と、駆動コイル27に接続されたリード線5をポンプケース2の外に取出すための配線取出し部6を備える。配線取出し部6は外部に引き出されるリード線5の引出し方向D1を規定する配線引き出しガイド部6aを備えており、この引出し方向D1は吸入管3および吐出管4の突出方向と軸線L回りで90°未満の方向とされる。従って、カスケードポンプ装置1を外部の機器に実装する際には、ポンプケース2の前方のみで、吸入管3および吐出管4に接続するホースとリード線5を引き回せる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ポンプ室に連通する吸入管および吐出管が、ポンプケースの側面から互いに平行に突出する構成のカスケードポンプ装置に関する。
【背景技術】
【0002】
渦流ポンプ或いはカスケードポンプと呼ばれる液体圧送用のカスケードポンプ装置は特許文献1に記載されている。同文献のカスケードポンプ装置は、ポンプ室、羽根車、および、駆動コイルを励磁することによって羽根車を回転駆動する磁気駆動機構と、これらを搭載するポンプケースを備えている。ポンプケースは偏平な円柱形状をしており、ポンプケースの側面からは、ポンプ室に連通する吸入管および吐出管が互いに平行に突出している。同文献において磁気駆動機構はモータであり、ポンプケースのモータが配置されている下端面からは、モータの駆動コイルに励磁電流を供給するためのケーブルが半径方向外側に引き出されている。同文献においてケーブルの引き出し位置は、吸入管および吐出管の形成位置とは反対側となっており、吸入管および吐出管の突出方向とケーブルの引出し方向とは逆方向となっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2004−176659号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ここで、特許文献1のカスケードポンプ装置を外部の機器に実装する際には、ポンプケースを挟んだ一方の側に、吸入管および吐出管に接続するホースなどの配管を引き回すスペースを設け、一方の側の反対側である他方の側に、ポンプケースから引き出した配線を引き回すスペースを設けなければならない。このため、カスケードポンプ装置の実装スペースが大きくなってしまうという問題がある。
【0005】
以上の問題点に鑑みて、本発明の課題は、実装スペースをコンパクトにすることができるカスケードポンプ装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するために、本発明のカスケードポンプ装置は、円環状のポンプ室と、前記ポンプ室内に同軸に配置された円環状の羽根車と、駆動コイルを励磁することによって前記羽根車を回転させる磁気駆動機構と、前記ポンプ室、前記羽根車および前記磁気駆動機構を収納するポンプケースとを有し、前記ポンプケースは、軸線方向の両端に位置する2つの端面と、前記2つの端面の間の中間部とを備えており、前記中間部には、前記ポンプ室に連通する吸入管および吐出管、並びに前記駆動コイルに励磁電流を供給するための配線を外部に取出すための配線取出し部が設けられており、前記吸入管および前記吐出管は、前記軸線と直交する平面に沿って互いに平行な同一方向に突出しており、前記配線取出し部は、前記配線を外部に引き出す配線引出し方向を規定する配線引出しガイド部を備えており、前記配線引出し方向と前記吸入管および前記吐出管の突出方向との成す角が前記軸線回りで90°未満であることを特徴とする。
【0007】
本発明によれば、互いに平行な同一の方向に延びている吸入管および吐出管と配線取出し部とはポンプケースの軸線方向の両端に位置する2つの端面の間に設けられているとともに、配線取出し部から外部に取り出される配線の配線引出し方向が、吸入管および吐出管の突出方向から軸線回りで90°未満の角度方向に規定されている。従って、カスケードポンプ装置を外部の機器に実装する際には、吸入管および吐出管が突出しているポンプケースの一方側にこれら吸入管および吐出管に接続するホースなどの配管を引き回すスペースとポンプケースから引き出した配線を引き回すスペースを設ければよい。すなわち、ポンプケースの他方側に配線を引き回すスペースを設ける必要がないので、この分、実装スペースを抑制できる。また、本発明によれば、配線取出し部がポンプケースの軸線方向の両端に位置する2つの端面の間の中間部に設けられているので、配線をポンプケースの軸線方向の高さの範囲内で取出すことができる。従って、配線を引き回すスペースを軸線方向でポンプケースに隣接する位置に設ける必要もないので、この分、実装スペースを抑制できる。
【0008】
本発明において、前記吸入管、前記吐出管および前記配線取出し部は、前記軸線回りに前記吸入管、前記吐出管、前記配線取出し部の順番で設けられているか、または、前記軸線回りに前記吐出管、前記吸入管、前記配線取出し部の順番で設けられていることが望ましい。このようにすれば、円環状の羽根車とポンプ室を備えたカスケードポンプ装置において、吸入管から吐出管までの軸線回りの角度が大きく取れるので、液体を圧送する圧力が向上する。従って、吸入管および吐出管の突出方向に向けて配線を引き回す配線取出し部を設けても、ポンプケースの大型化を抑制できる。
【0009】
本発明において、前記中間部は、前記軸線方向から見たときの前記ポンプケースの輪郭を構成している外周面を備えており、前記配線取出し部は、前記輪郭を構成している外周面よりも内側に設けられていることが望ましい。すなわち、配線取出し部は軸線方向から見たときのポンプケースの輪郭より内側に配置されている。このようにすれば、配線引出し部から取り出された配線を引き回す際に、ポンプケースの輪郭の近くでの引き回しのスペースを小さく出来るので、カスケードポンプ装置を実装するときに外部の機器と配線の干渉を抑制できる。
【0010】
本発明において、前記中間部は、前記軸線回りで隣に配置されて前記軸線方向から見たときの前記ポンプケースの輪郭の一部分を構成している第1側面および第2側面と、前記第1側面および前記第2側面の間に形成された第1出角とを備えており、前記磁気駆動機構は、前記ポンプ室よりも径方向の内側に構成されており、前記吸入管および前記吐出管は、前記第1側面から突出しており、前記配線取出し部は、前記第1出角の内側に設けられていることが望ましい。ポンプケースが出角を備えている場合には、円環状のポンプ室と出角の間にデッドスペースが形成される。従って、このようなデッドスペースを利用して配線取出し部を設ければ、ポンプケースが大型化することがない。
【0011】
本発明において、前記第1出角には、当該第1出角の先端を切り欠くことによって前記第1側面および前記第2側面と交差して軸線方向に延びる傾斜面が形成されていることが望ましい。このようにすれば、配線取出し部から取出された配線を傾斜面に沿って軸線方向に引き出すことができる。また、傾斜面に沿って引き出した配線を、ポンプケースを軸線方向から見たときに第1側面と第2側面によって構成される出角の輪郭の内側に位置させることができる。
【0012】
この場合において、前記中間部は、前記配線取出し部から前記ポンプケースの外に取出された後に前記傾斜面に沿って引き出される前記配線の方向を規制する配線方向規制部を備えており、前記配線方向規制部は、前記第1側面と前記第2側面を互いに延長させて交差させることにより構成される出角の輪郭の内側に位置していることが望ましい。このようにすれば、カスケードポンプ装置を実装する際に、傾斜面および配線方向規制部を介して引き回される配線が外部の機器と干渉することを防止できる。
【0013】
また、この場合において、前記配線方向規制部は、前記傾斜面の軸線方向の途中位置において、傾斜面に沿って前記軸線と直交する方向に延びていることが望ましい。このようにすれば、傾斜面に沿って引き出されて配線方向規制部を介して引き回された配線を、配線方向規制部を利用して、配線方向規制部と接している部分からポンプケースから離れる方向に屈曲させる際に、配線をポンプケースの軸線方向の高さの範囲からはみ出さない位置、すなわち、ポンプケースの軸線方向の両端に位置する2つの端面の間の位置で屈曲させて、引き回すことができる。
【0014】
本発明において、前記ポンプケースは、4角柱形状であることが好ましい。4角柱形状のポンプケースにおいて、角部分は円環状のポンプ室との間でデッドスペースとなる。従って、このようなデッドスペースを利用して配線取出し部を設ければ、ポンプケースが大型化することがない。
【0015】
この場合において、前記第1出角には、当該出角の先端を切り欠くことによって前記第1側面および前記第2側面と交差して軸線方向に延びる傾斜面が形成されており、前記中間部は、前記配線取出し部から前記ポンプケースの外に取出された後に前記傾斜面に沿って引き出される前記配線の方向を規制する配線方向規制部を備えており、前記配線方向規制部は、前記傾斜面との間に前記配線を係止する隙間を備えたフックであり、前記第1側面と前記第2側面を互いに延長して交差させることにより構成される出角の輪郭の内側に位置していることが望ましい。このようにすれば、フックを利用して、配線をポンプケースの軸線方向の高さの範囲からはみ出さない位置、すなわち、ポンプケースの軸線方向の両端に位置する2つの端面の間の位置で屈曲させて、ポンプケースから離れる方向に引き回すことができる。
【0016】
本発明において、前記ポンプケースにおいて、前記軸線回りで前記第1側面に前記第2側面とは反対側で隣接する第3側面との間の第2出角の内側、および、前記第2出角とは対角に位置する第3出角の内側には、それぞれ当該ポンプケースを外部の機器に取り付けるための取り付け孔が形成されていることが望ましい。このようにすれば、各取り付け孔は、4角柱形状のポンプケースにおいて円環状のポンプ室との間でデッドスペースとなる出角を利用して設けられるので、取り付け孔を設けた場合でも、ポンプケースが大型化することがない。
【0017】
また、本発明において、前記ポンプケースは、第1ケース、および、第2ケースを備えており、前記ポンプ室は、前記第1ケースと前記第2ケースが前記軸線と直交する方向で部分的に重なり合う状態で積層することによって区画されており、前記ポンプケースには、前記第1ケースと前記第2ケースとをネジを用いて固定するための第1固定部が設けられており、前記第1固定部は、前記吸入管および前記吐出管の間において前記第1側面から突出していることが望ましい。平行に延びる吸入管および吐出管の間は、カスケードポンプ装置を外部の機器に取り付けたときにデッドスペースとなる空間なので、このような位置に第1固定部を突出させておけば、カスケードポンプ装置を実装する際に、第1固定部が外部の機器と干渉することがない。
【0018】
この場合において、前記ポンプケースには、前記第1ケースと前記第2ケースとをネジを用いて固定するための第2固定部および第3固定部が設けられており、前記第2固定部は、前記第3出角の内側に形成されており、前記第3固定部は、前記第1出角と対角に位置する第4出角の内側に形成されていることが望ましい。このようにすれば、第2固定部および第3固定部は、4角柱形状のポンプケースにおいて円環状のポンプ室との間でデッドスペースとなる出角を利用して設けられるので、第2固定部および第3固定部を設けた場合でも、ポンプケースが大型化することがない。
【0019】
この場合において、前記ポンプケースは、第1ケース、および、第2ケースを備えており、前記ポンプ室は、前記第1ケースと前記第2ケースが前記軸線と直交する方向で部分的に重なり合う状態で積層することによって区画されており、前記第1ケースと前記第2ケースの間には、前記ポンプ室からの流体の漏れを防止するためのOリングが前記ポンプ室と同軸に配置されており、前記ポンプケースにおいて前記第1出角と対角に位置する第4出角の内側には、前記第1ケースと前記第2ケースを積層して前記ポンプ室を区画形成する際に、前記第1ケースと前記第2ケースが前記軸線回りに相対回転することを防止する回り止め機構が構成されていることが望ましい。Oリングは加圧された状態で周方向に捻られると損傷が発生する可能性が高くなるが、本発明によれば、回り止め機構によって、第1ケースと第2ケースが軸線回りに相対回転することが防止される。従って、ポンプ室の区画形成時におけるOリングの損傷を防止或いは低減できる。ここで、回り止め機構は、4角柱形状のポンプケースにおいて円環状のポンプ室との間でデッドスペースとなる角部分を利用して設けられるので、回り止め機構を設けた場合でも、ポンプケースが大型化することがない。
【発明の効果】
【0020】
本発明によれば、カスケードポンプ装置を外部の機器に実装する際には、ポンプケースの一方側に吸入管および吐出管に接続するホースなどの配管を引き回すスペースとポンプケースから引き出した配線を引き回すスペースを設ければよいので、ポンプケースの他方側に配線を引き回すスペースを設ける必要がない分、実装スペースを抑制できる。また、本発明によれば、配線取出し部がポンプケースの軸線方向の両端に位置する2つの端面の間の中間部に設けられているので、配線をポンプケースの軸線方向の高さの範囲内で取出すことができる。従って、配線を引き回すスペースを軸線方向でポンプケースに隣接する位置に設ける必要もないので、この分、実装スペースを抑制できる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】本発明を適用したカスケードポンプ装置の斜視図および正面図である。
【図2】本発明を適用したカスケードポンプ装置の断面図である。
【図3】本発明を適用したカスケードポンプ装置の分解斜視図である。
【図4】ロータおよびステータの斜視図である。
【図5】下ケースの斜視図である。
【図6】上ケースの斜視図である。
【図7】上ケースと下ケースの積層開始時点を示すカスケードポンプ装置の部分断面図である。
【図8】リード線(配線)の引き回し例の説明図である。
【図9】固定部材を用いてカスケードポンプ装置を外部の機器に取り付ける例の説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、図面を参照して本発明の実施の形態のカスケードポンプ装置を説明する。なお、以下の説明において、説明の便宜上、図の上下に従ってカスケードポンプ装置の上下を説明する。また、吸入管および吐出管が突出している側をカスケードポンプ装置の前側(前方)、その反対側を後側(後方)とし、吸入管および吐出管の配列方向を装置幅方向として説明する。
【0023】
(全体構成)
図1(a)は本発明を適用したカスケードポンプ装置を前方の斜め上から見た斜視図であり、図1(b)はカスケードポンプ装置を後方の斜め上から見た斜視図であり、図1(c)はカスケードポンプ装置の正面図である。本形態のカスケード(渦流)ポンプ装置1は冷媒等の液体を圧送する。カスケードポンプ装置1は全体として偏平な4角柱形状のポンプケース2を備えている。ポンプケース2は樹脂製であり、PPS(ポリフェニレンサルファイド)等からなる。
【0024】
ポンプケース2は軸線L方向の上端に位置する上面(端面)2aと、軸線L方向の下端に位置する下面(端面)2bと、上面2aと下面2bの間の中間部2zを備えている。中間部2zは、軸線L方向から見たときのポンプケース2の輪郭を構成している外周面として、カスケードポンプ装置1の前側の側面である前面(第1側面)2c、装置幅方向の左側の側面(第2側面)2d、装置幅方向の右側の側面(第3側面)2eおよび後側の側面(第4側面)2fを備えている。前面2cと左側の側面2dの間、前面2cと右側の側面2eの間、左側の側面2dと後側の側面2fの間、右側の側面2eと後側の側面2fの間の角部分2g、2h、2i、2jは、それぞれが外側に出っ張った角である出角となっている。軸線L方向から見たポンプケース2の輪郭は、ポンプケース2の軸線Lに直行する装置幅方向と長さ方向を規定している。
【0025】
ポンプケース2の前面2cからは吸入管3および吐出管4が前方に向かって平行に突出している。ポンプケース2の前面2cと、前面2cに軸線Lを中心として上面2aの側から見て時計回りの方向で隣接する側面2dの間の前側左の角部分(第1出角の内側)2gには、ポンプケース2の内側からリード線(配線)5を取出すための配線取出し部6が設けられている。
【0026】
リード線5は配線取出し部6を介してカスケードポンプ装置1の軸線L方向(高さ方向)の途中位置から斜め前方に向かって引き出されている。リード線5は吸入管3および吐出管4よりも長く延びており、その先端にはコネクタ7が取り付けられている。ここで、図1(c)に示すように、吸入管3、吐出管4、および配線取出し部6はポンプケース2の軸線L方向の両端に位置する上面2aと下面2bの間の中間部2zに設けられている。換言すれば、吸入管3、吐出管4、および配線取出し部6はポンプケース2の高さ内の位置に設けられている。また、吸入管3および吐出管4の突出方向からポンプケース2を見たときに、吸入管3、吐出管4、および配線取出し部6は、目視できる位置に設けられている。
【0027】
配線取出し部6が設けられているポンプケース2の前側左の角部分2gには、当該角部分2gの先端を斜めに切り欠くことにより、前面2cおよび側面2dと交差して軸線L方向に延びる傾斜面2kが設けられている。また、この前側左の角部分2gには、リード線5を傾斜面2kに沿って引き回したときに、このリード線5の方向を規制するためのフック8が設けられている。フック8は、傾斜面2kの軸線L方向の中央位置において、傾斜面2kに沿って軸線Lと直交する方向に延びている。また、フック8は、前面2cの側から側面2dの側に向かって一定幅で延びていて、傾斜面2kとフック8の傾斜面2k側の間にはリード線5を係止する隙間が形成されている。ここで、傾斜面2kに沿って引き出したリード線5をフック8に係止させると、リード線5は傾斜面2kからの浮き上がりが防止され、リード線の位置が規定される。また、傾斜面2kに沿って引き出したリード線5をフック8に係止させると、リード線5の引き回し方向は傾斜面2kに沿った下方に規定される。すなわち、フック8は、リード線5の引き回し方向を規制する配線方向規制部として機能している。
【0028】
前面2cと、前面2cに反時計回りの方向で隣接する側面2eの間の前側右の角部分(第2出角の内側)2h、及び、この角部分2hの対角に位置する後側左の角部分(第3出角の内側)2iには、カスケードポンプ装置1を外部の機器にとりつけるための取り付け孔9が形成されている。
【0029】
また、ポンプケース2は、上下に積層された下ケース(第1ケースおよび第2ケースのうちの一方)11および上ケース(第1ケースおよび第2ケースのうちの他方)12から構成されている。吸入管3および吐出管4は下ケース11の前面から突出している。配線取出し部6は、上ケース12の前側左の角部分に設けられている。フック8は下ケース11に設けられている。下ケース11、吸入管3、吐出管4およびフック8は、樹脂製であり、成形により一体に形成されている。
【0030】
ここで、ポンプケース2において配線取出し部6と対角に位置する後側右の角部分(第4出角の内側)2jには、下ケース11と上ケース12を積層する際にこれらが相対回転することを防止するための回り止め機構13(図1(b)参照)が設けられている。また、ポンプケース2の吸入管3および吐出管4の間には前面2cから突出するようにケース固定部(第1固定部)14が設けられている。ケース固定部14はネジ15を用いて下ケース11と上ケース12を固定するための部位である。
【0031】
図2(a)は図1(a)のX−X線におけるカスケードポンプ装置1の縦断面図であり、図2(b)は図1(a)のY−Y線におけるカスケードポンプ装置1の縦断面図である。図3はカスケードポンプ装置1の分解斜視図である。図4(a)はロータの斜視図であり、図4(b)はステータの斜視図である。
【0032】
図2、図3に示すように、下ケース11と上ケース12は軸線Lと直交する方向で部分的に重なる状態で積層されている。下ケース11と上ケース12の間には、区画室20が構成されている。区画室20には、円環状の羽根車21と駆動マグネット22を備えるロータ23と、このロータ23を回転可能に支持する支軸24が配置されている。また、区画室20の外周側部分は円環状のポンプ室25となっており、羽根車21はポンプ室25に挿入されている。下ケース11と上ケース12の間には、区画室20からの流体の漏れを防止するためのOリング26が配置されている。上ケース12の上側、すなわち、上ケース12の区画室20側とは逆側(下ケース11とは反対側)には、駆動コイル27と、この駆動コイル27を搭載するステータコア28を備えるステータ29、駆動コイル27への励磁電流を制御する電子素子を搭載した基板30が配置されている。駆動マグネット22と駆動コイル27は羽根車21を回転駆動するための磁気駆動機構を構成している。磁気駆動機構はポンプ室25より軸線Lに対して内周側に構成されている。
【0033】
ポンプ室25の底面および天井面には、軸線L回りの所定の角度範囲に渡って液体流路31が形成されている。より詳細には、下ケース11によって規定されているポンプ室25の底面には半円形の断面形状を備える円弧溝からなる下側流体流路31aが形成されており、上ケース12によって規定されているポンプ室25の天井面には半円形の断面形状を備える円弧溝からなる上側流体流路31bが形成されている。これら下側流体流路31aおよび上側流体流路31bは軸線L方向から見たときに重なっている。本例では、液体流路31は軸線L回りの270°を超える角度範囲に渡って形成されている。
【0034】
ポンプ室25において液体流路31の一方の端が位置する下ケース11の部位には吸入管3が連通する吸入口3a(図5参照)が設けられており、液体流路31の他方の端が位置する下ケース11の部位は吐出管4が連通する吐出口4a(図5参照)が設けられている。ポンプ室25の底面において、吸入口3aと吐出口4aの間に位置する部分は、図2(a)に示すように、下側流体流路31aが設けられていない下側封鎖部32aとなっている。同様に、ポンプ室25の天井面において、吸入口3aと吐出口4aの間に位置する部分は、上側流体流路31bが設けられていない上側封鎖部32bとなっている。
【0035】
支軸24は、ステンレス製であり、下端部分が下ケース11に設けられた支軸固定用凹部60に固定されている。支軸24の上端部分は、上ケース12の中央部分に設けられた有底筒状の中央突出部80の底部81の中央の支軸固定用凹部82に固定されている。ここで、ポンプケース2の軸線L方向の高さ寸法は下ケース11の底面である下面2bから、上ケース12の上面2aまでの寸法であるが、この高さ寸法は、概ね、支軸24の高さ寸法、下ケース11の下面2bから支軸固定用凹部60の底面までの厚さ寸法、および、中央突出部80の底部81の上面から支軸固定用凹部82の底面までの厚さ寸法の合計となっており、カスケードポンプ装置1は軸線方向に小さく構成されている。なお、上ケース12の上面2aは、上ケース12に設けられた枠状の外周壁86の上端面であり、ポンプケース2の前側右の角部分2h及び後側左の角部分2iに形成された取り付け孔9の上端開口の周囲の平坦面は上面2aの一部分である。
【0036】
ロータ23は、PPS等からなる樹脂製で成形により形成され、図4(a)に示すように、円盤部40と、円盤部40の上面の中心から上方に突出する円筒状の軸受部41と、円盤部40の上面から上方に突出しており、軸受部41と所定間隔を開けてこの軸受部41を同軸上で包囲している円筒部42を備えている。軸受部41と円筒部42の間の所定間隔は、上ケース12を介して、これらの間にステータ29を受け入れることが可能な間隔である。ロータ23は、軸受部41の中心孔41aに支軸24が挿入され、軸受部41が上ケース12の中央突出部80の内側に配置された状態で、支軸24の軸線L回りに回転可能となっている。ここで、軸受部41と中央突出部80の底部81の間には1枚または複数枚のワッシャー43が挿入されており、このワッシャー43の挿入によって軸線L方向におけるロータ23の位置が調整されている(図2参照)。本例では2枚のワッシャーが挿入されているが、例えば、厚みが0.2mmのワッシャー43と厚みが0.3mmのワッシャー43のうち、1枚または2枚を選択することで、ワッシャー43の合計厚みを0.2mm〜0.6mmまで0.1mm間隔で調整することができる。
【0037】
円筒部42の内周面には、円筒状のヨーク44が保持されており、ヨーク44の内周面には円筒状の駆動マグネット22が保持されている。ヨーク44はインサート成形によってロータ23と一体に形成され、駆動マグネット22はヨーク44に接着固定されている。下ケース11の側に配置された円盤部40において、円筒部42よりも外周側の外周部分には羽根車21が形成されている。
【0038】
羽根車21の外周部分には上下2段に形成された凹部45が周方向に等角度間隔で形成されている。凹部45は円盤部40の上面の周縁を円弧形状に切り欠いて形成された上側凹部46と、円盤部40の下面の周縁を円弧形状に切り欠いて形成された下側凹部47を備えており、周方向で隣接する凹部45の間はそれぞれ半径方向に延びる羽根48となっている。上下方向で隣接する上側凹部46と下側凹部47の間は、周方向に延びて各羽根48の間を上下に区画するリブ49となっている。羽根車21は、図2に示すように、ポンプ室25内に挿入されている。
【0039】
ステータ29は、上ケース12の上面の側において、中央突出部80の外周側に設けられた円環状の凹部であるステータ収納室83内に配置されている。ステータコア28は、図4(b)に示すように、環状部50および環状部50から径方向外側に突出する複数の突極51を備えており、駆動コイル27は複数の突極51のそれぞれに巻き回されている。図2に示すように、各突極51は、軸線Lと直交する方向で、上ケース12を介して、区画室20内のロータ23の駆動マグネット22と対峙している。上ケース12は、ロータ23とステータ29の間に配置されて、ポンプ室25とステータ29を隔てる隔壁として機能している。
【0040】
ステータコア28は、薄板状の磁性鋼板を型抜きして形成した同一形状の板状コア片52を複数枚上下方向に積層して構成されており、板状コア片52の積層方向が軸線L方向となっている。ステータコア28の環状部50の内周面には、軸線Lと直交する断面形状が半円形の3つの内側凹部53が軸線L回りに等角度間隔で形成されている。3つの内側凹部53は同一形状であり、いずれも、軸線L方向に延びている。各内側凹部53は半径方向の深さが一定であり、断面形状は軸線L方向のいずれの位置においても同一である。
【0041】
ここで、図3に示すように、上ケース12の中央突出部80の筒状部84の外周面には、周方向の一部分から径方向外側に突出する3つのステータ固定用突部85が設けられており、ステータコア28は、これらのステータ固定用突部85が環状部50の内側凹部53内に圧入されることにより、中央突出部80に固定されている。また、中央突出部80の筒状部84の外周面には、ステータ固定用突部85と周方向で異なる位置に、軸線L方向の下方からステータコア28の環状部50に当接してステータコア28を軸線L方向で位置決めする位置決め部88が設けられており(図2、図6参照)、ステータコア28は、ステータ固定用突部85が環状部50の内側凹部53内に圧入された後に、位置決め部88に当接して軸線L方向に位置決めされる。
【0042】
より詳細には、中央突出部80の外周面に設けられた3つのステータ固定用突部85は、軸線Lと直交する断面形状が半円形状であり、支軸24の軸線L回りに等角度間隔で形成されている。また、3つのステータ固定用突部85は、同一形状であり、それぞれ、中央突出部80の外周面に沿って軸線L方向に延びているとともに、底部81の側から開口端の側に向かって径方向外側および周方向への突出量が増加するテーパー面を備えている。ステータコア28は、中央突出部80のステータ固定用突部85が環状部50の内側凹部53に挿入される状態としてステータ収納室83内に落とし込まれ、しかる後に、各ステータ固定用突部85の下端部分が環状部50の内側凹部53に圧入されることによって、上ケース12に固定される。本例では、ステータコア28を構成している板状コア片52の1枚の環状部50の内側凹部53にステータ固定用突部85の下端部分が圧入された状態で、環状部50が位置決め部88に当接して、固定される。
【0043】
基板30は、駆動コイル27への励磁電流等を制御する電子素子を搭載したプリント基板である。基板30は、上ケース12の上面において、その周縁に沿って上方に向かって突出する枠状の外周壁86の内側に設けられた上部空間87に配置されている。基板30は中央に開口部30aを備えており、この開口部30aから上ケース12の中央突出部80の底部81の上面側を突出させている。従って、基板30は軸線L方向で底部81の上端よりも下側に設置されている。また、基板30は、ステータ収納室83内に配置されたステータ29を上方から被っている。基板30におけるステータコア28の側の面にはリード線5が半田付け接続されており、図示されていない駆動コイル27への配線は基板30の上面側(外周壁86の開口側)で半田付け接続されている。このリード線5は、配線取出し部6を介して、ポンプケース2の外側に引き出されている。
【0044】
配線取出し部6は、図3に示すように、外周壁86を切り欠いて設けられた配線取出し口33と、配線取出し口33を介してポンプケース2の内側から外側に取出したリード線5を一列に配列して載置する配線載置部34と、基板30の上方から配線取出し口33を塞ぐように上ケース12に固定され、配線載置部34上に配列されたリード線5を配線載置部34との間に挟みこんでその被覆を押圧した状態で固定する固定部材35を備えている。配線取出し口33は角部分2gに向かって開口している。
【0045】
ここで、上ケース12のステータ収納室83および上部空間87には、図1に示すように、外周壁86の上端面である上面2aに達するまで上方から封止材であるポッティング剤16が流し込まれており、ステータ29および基板30はポッティング剤16により被われて固定されている。なお、ポッティング剤16の上端面を、上面2aと同じ高さ、もしくは低い位置としておくと、カスケードポンプ装置1を他のカスケードポンプ装置1と並べて取り付ける際に、或は、図9のように外部の固定部材101に取り付ける際に、ポンプケース2を他のカスケードポンプ装置1や外部の固定部材101に当接または近接させて固定することが出来るので、カスケードポンプ装置1の設置スペースを小さくすることができる。ポッティング剤16は、エポキシ系やアクリル系、シリコン系等の絶縁性の樹脂である。
【0046】
コネクタ7からリード線5および基板30を介して駆動コイル27に励磁電流が供給されると、ロータ23は軸線L回りに回転する。これにより、液体は吸入管3からポンプ室25内に吸い込まれ、ポンプ室25内で加圧されて、吐出管4から吐出される。なお、本例のカスケードポンプ装置1を駆動するモータ(ロータ23、ステータ29、基板30)は3相ブラシレスモータであり、基板30にはロータ23の駆動マグネット22の位置を検出する図示しないホール素子が3つ配置される。駆動コイル27に供給される励磁電流の順序を逆にすると、ロータ23が逆方向に回転し、液体を吐出管4から吸入して、ポンプ室25内で加圧して、吸入管3から吐出する。
【0047】
(下ケース)
図5(a)は下ケース11を上方から見た斜視図であり、図5(b)は下ケース11を下方から見た斜視図である。下ケース11は、底板部61と、底板部61の外周側部分から起立して上方に延びる側壁部62と、これら底板部61および側壁部62によって形成された円形凹部63を備えている。底板部61の下面はポンプケース2の下面2bである。側壁部62を軸線L方向から見た輪郭形状は略矩形であり、下ケース11は軸線L方向から見た平面形状が略矩形となっている。側壁部62は平坦な上端面62aを備えており、この上端面62aは下ケース11の上端面となっている。ポンプ室25は、円形凹部63の周縁に沿って環状に構成される。円形凹部63の円形底面の中央には支軸固定用凹部60が設けられている。
【0048】
支軸固定用凹部60の外周側には環状凹部64が支軸固定用凹部60と同軸に形成されている。支軸固定用凹部60と環状凹部64の間は内側環状突出面65となっており、環状凹部64の外周側は外側環状突出面66となっている。外側環状突出面66には、その周縁に沿ってポンプ室25の底面を構成する下側流体流路31aと下側封鎖部32aが設けられている。外側環状突出面66においてポンプ室25の内側に隣接している環状の端面部分67は、区画室20内に配置されたロータ23の円盤部40と微小なギャップG1を開けて対向する(図2参照)。環状の端面部分67には、環状凹部64と下側流体流路31aとを連通させる一定幅の溝67aが、180°離れた位置に、2つ形成されている。
【0049】
円形凹部63の上側部分、すなわち、側壁部62の上側部分の内周面には、環状段部68が設けられている。環状段部68は、側壁部62の内周面の軸線L方向の途中位置から半径方向に延びる環状端面68aと、環状端面68aの外周縁から上方に延びる円形内周面68bを備えている。環状段部68は、上ケース12の上端部分に円形凹部63よりも径の大きな円形の凹部を形成している。
【0050】
側壁部62の前面62cからは吸入管3と吐出管4が平行に突出している。側壁部62の吐出管4に隣接する下ケース11の前側左の角部分62gには、傾斜面2kおよびフック8が設けられている。フック8は、傾斜面2kに沿って形成されており、点線で示す側壁部62の矩形輪郭Rの内側に形成されている。換言すれば、フック8は、ポンプケース2の前面2cと側面2dを互いに延長して交差させることにより構成される出角の輪郭の内側に位置している。また、フック8は、リード線5が通過可能な隙間を有して傾斜面2kと対向している。側壁部62の後側右の角部分62jには、回り止め機構13を構成する回り止め用凹部69が設けられている。回り止め用凹部69は上端面62aから下方に窪む凹部である。また、回り止め用凹部69は外周側から切り欠かれており、その内周面が下ケース11の外側に露出している。
【0051】
側壁部62の前面62cの吸入管3と吐出管4の間からはケース固定部14を構成する下側ケース固定部14aが前方に突出している。下側ケース固定部14aには、軸線L方向に貫通する第1貫通孔70(1)が設けられている。また、側壁部62の後側左の角部分(第2固定部)62iおよび後側右の角部分(第3固定部)62jには、それぞれ軸線L方向に貫通する第2貫通孔70(2)と、軸線L方向に貫通する第3貫通孔70(3)が設けられている。第2貫通孔70(2)は、後側左の角部分62iにおいて、取り付け孔9の前方に形成されており、第3貫通孔70(3)は、後側右の角部分62jにおいて、回り止め用凹部69の前方に形成されている。側壁部62の後側左の角部分62iおよび後側右の角部分62jにおいて、第2貫通孔70(2)および第3貫通孔70(3)が形成されている下面部分(底板部61の下面部分)には、下ケース11と上ケース12を有頭ネジによって固定する際に、有頭ネジの頭部が挿入される凹部74が形成されている。側壁部62の前側右の角部分62hおよび後側左の角部分62iにおいて、取り付け孔9が形成されている下面部分(底板部61の下面部分)には、カスケードポンプ装置を有頭ネジによって外部の機器に固定する際に、有頭ネジの頭部が挿入される凹部75が形成されている。
【0052】
(上ケース)
図6(a)は上ケース12を上方から見た斜視図であり、図6(b)は上ケース12を下方から見た斜視図である。上ケース12は、図6(a)に示すように、中央突出部80と、この中央突出部80と同軸に構成された円筒部89と、中央突出部80の開口端と円筒部89の下端部とを連続させている内側環状部90を備えている。また、上ケース12は、図6(b)に示すように、円筒部89の外周側で中央突出部80および円筒部89と同軸に構成され、下方に向かって突出している環状突出部91と、円筒部89の上端部と環状突出部91の上端部の間を連続させている外側環状部92と、環状突出部91の上端部から外周側に張り出す張り出し部93を備えている。張り出し部93は、平坦な下端面93aを備えている。
【0053】
ステータ29が配置されるステータ収納室83は、中央突出部80、円筒部89、および内側環状部90の下ケース11とは反対側の面によって構成されている。中央突出部80は底部81の側にステータ収納室83の開口から上方に突出する突出部分80aを備えている。円筒部89の半径方向における厚さは中央突出部80の半径方向における厚さと比較して薄く形成されている。基板30が配置される上部空間87を区画している外周壁86は、張り出し部93の上面に形成されている。
【0054】
環状突出部91の環状下端面94(環状先端面)には、径方向の途中位置にポンプ室25の天井面を構成する上側流体流路31bと上側封鎖部32bが形成されている。環状下端面94においてポンプ室25の内側に隣接している環状の端面部分94aは、区画室20内に配置されたロータ23の円盤部40と微小なギャップG2を開けて対向する(図2参照)。
【0055】
環状突出部91の円形外周面95の上端部分には、半径方向外側に所定寸法だけ突出する径方向突出部96が設けられている。径方向突出部96は、環状突出部91の軸線L方向の途中位置から半径方向外側に延びて下ケース11の側を向いている環状端面96aと、環状端面96aの外周縁から上方に延びて半径方向外側を向いている円形外周面96bを備えている。
【0056】
張り出し部93の輪郭形状は略矩形であり、前側左の角部分93gが斜めに切り欠かれて傾斜面2kを構成している。外周壁86は、図6(a)に示すように、この切り欠きがある角部分93gを除き、張り出し部93の外周縁から上方に向かって突出している。切り欠きがある前側左の角部分93gでは、外周壁86は張り出し部93の外周縁からセットバックした(内側に入った)位置で前側に向かって装置幅方向の内側に傾斜して設けられている。また、前側左の角部分93gでは、外周壁86は一定幅で矩形に切り欠かれており、この切り欠き部が配線取出し口33となっている。配線取出し口33から張り出し部93の外周縁に至る間は配線載置部34となっている。配線載置部34の上面には半径方向外側に向かって延びる円弧状断面の配線保持溝36aがリード線5の数に対応する数だけ並列に設けられている。配線取出し口33の内側には、配線保持溝36aの延長上に延びる円弧溝37が設けられている。
【0057】
ここで、配線載置部34とともに配線取出し部6を構成している固定部材35は、図3に示すように、配線取出し口33の開口幅よりも幅広な平面形状をしており、装置幅方向の一方の縁および他方の縁には一対の嵌合溝38を備えている。嵌合溝38は同一直線状に配置され、反対側を向いて開口している。また、固定部材35の下面には、配線載置部34の円弧溝と対向する位置に円弧状断面の配線保持溝36bが設けられており、固定部材35を上ケース12に固定した状態では、配線載置部34の上面の配線保持溝36aと固定部材35の下面の配線保持溝36bが形成する円形の隙間が吸入管3および吐出管4の突出方向からポンプケース2を見たときに目視できる(図1(c)参照)。
【0058】
リード線5をポンプケース2内から取出した状態とする際には、リード線5を配線載置部34に配列して、外周壁86の配線取出し口33の袖壁部(一定幅で切り欠かれた外周壁86の開口の端部)が一対の嵌合溝38に挿入されるようにして、固定部材35を上ケース12の上方から上ケース12に固定する。これにより、一対の嵌合溝38の間のくびれ部分39が配線取出し口33に圧入され、リード線5は、配線載置部34の配線保持溝36aと固定部材35の配線保持溝36bとの間に挿入されて挟まれ、被覆が押圧された状態で固定される。
【0059】
また、固定部材35は、その内周側の縁部分で基板30の外周縁部分を上から重なり、基板30の抜け落ちを押えた(防止する)状態となる。この場合、固定部材35の内周側の縁部分と基板30は、近接して配置されるか、当接して配置されている。
【0060】
ここで、リード線5が配線載置部34の配線保持溝36aと固定部材35の配線保持溝36bの間に挿入されて挟まれることにより、リード線5の引出し方向(配線引出し方向)D1が規定される。すなわち、配線載置部34の配線保持溝36aと固定部材35の配線保持溝36bによってリード線5の引出し方向D1を規定する配線取出しガイド部6aが構成されている(図1(c)参照)。配線取出しガイド部6aによるリード線5の引出し方向D1は、吸入管3および吐出管4の突出方向に対して軸線L回りで90°未満の角度とされており、本例では、約45°となっている。リード線5が配線載置部34の配線保持溝36aと固定部材35の配線保持溝36bの間に挿入されて挟まれると、配線取出し部6からポンプケース2の外側に取出されるリード線5は、図1に示すように、吸入管3および吐出管4の突出方向に対して90°未満の角度方向に延びるので、リード線5をカスケードポンプ装置1の前方に引き回すことが容易となる。また、リード線5の引出し方向D1を吸入管3および吐出管4の突出方向に対して90°未満の角度とすれば、リード線5の引出し方向D1を吸入管3および吐出管4の突出方向に対して90°とした場合と比較して、リード線5をカスケードポンプ装置1の前方に引き回すためのスペースをカスケードポンプ装置1の装置幅方向で小さく抑えることができる。
【0061】
次に、張り出し部93の後側右の角部分93jからは、図6(b)に示すように、回り止め用凹部69とともに回り止め機構13を構成する円柱形状の回り止め用突起97が下方に突出している。回り止め用突起97の先端面97a(下端面)の外周縁にはアールが施されている。ここで、回り止め用突起97の先端面97aの位置は、軸線L方向において環状突出部91の環状下端面94と同じ位置となっている。また、回り止め用突起97の突出寸法は、回り止め用凹部69の深さ寸法よりも短く設定されている。さらに、回り止め用突起97は、この回り止め用突起97が回り止め用凹部69内に挿入されたときに、軸線L回りの周方向では回り止め用凹部69の内周面との間に隙間が形成されず、軸線Lを中心とする半径方向においては、回り止め用凹部69の内周面との間に隙間が形成されるように形成されている。
【0062】
張り出し部93の前面(前側)の装置幅方向の中央にはケース固定部14を構成する上側ケース固定部14bが前方に突出している。上側ケース固定部14bには、軸線L方向に窪むネジ孔98(1)が設けられている。また、後側左の角部分93i(第2固定部)および後側右の角部分93j(第3固定部)には、それぞれ軸線L方向に窪む第2ネジ孔98(2)と、軸線L方向に窪む第3ネジ孔98(3)が設けられている。第2ネジ孔98(2)は、後側左の角部分93iにおいて、取り付け孔9の前方に形成されており、第3ネジ孔98(3)は、後側右の角部分93jにおいて、回り止め用突起97の前方に形成されている。
【0063】
(ポンプ室の区画形成)
図7は、図1(a)のZ−Z線におけるカスケードポンプ装置1の部分断面図であり、上ケース12の環状突出部91を下ケース11の環状段部68の内側に挿入する時点の状態を示している。ポンプ室25(区画室20)を区画形成する際には、Oリング26を上ケース12の環状突出部91の円形外周面95に装着した状態とする。この際に、Oリング26には、潤滑剤を塗布しておく。また、支軸24は予め上ケース12の支軸固定用凹部82に固定しておく。ロータ23は下ケース11の円形凹部63内に配置して、軸受部41に支軸24を挿入可能な状態としておく。
【0064】
次に、上ケース12の環状突出部91を下ケース11の環状段部68の内側に挿入する。ここで、回り止め機構13の回り止め用突起97の先端面97aは軸線L方向において環状突出部91の環状下端面94と同じ位置にあるので、環状突出部91が環状段部68の内側に挿入されるのと同時に、回り止め用突起97は下ケース11に設けられた回り止め用凹部69に挿入される。
【0065】
その後、上ケース12と下ケース11とを相対的に接近させて、環状突出部91の環状下端面94(上側流体流路31bおよび上側封鎖部32bの外周側に位置する環状の端面部分)と、下ケース11の環状段部68の環状端面68aとを当接させる。この際に、上ケース12の径方向突出部96の円形外周面96bが、下ケース11の環状段部68の円形内周面68bに当接した状態となり、上ケース12は下ケース11に対して径方向で位置決めされる。また、Oリング26は、径方向突出部96の環状端面96aと環状段部68の環状端面68aの間において、上ケース12の環状突出部91の円形外周面95と下ケース11の円形内周面68bの間で径方向に潰された状態となり、区画室20からの流体の漏れが防止された状態が形成される。
【0066】
下ケース11に上ケース12が積層されてポンプ室25(区画室20)が区画された状態になると、ロータ23の軸受部41を貫通した支軸24は、その下端が下ケース11の支軸固定用凹部60に挿入されて固定され、支軸24と中央突出部80が同軸状態となる。従って、ステータ29とロータ23が同軸上に配置され、ステータコア28において駆動コイル27が巻き回されている突極51と、区画室20に配置されたロータ23の駆動マグネット22が上ケース12の円筒部89を介して対峙する。なお、本例では、図2に示すように、ロータ23の軸受部41の上端面と突出部の底部81の間に2枚のワッシャー43を挿入することにより、ステータコア28の軸線L方向の磁気中心位置に対してロータ23に搭載された駆動マグネット22の軸線L方向の磁気中心位置を下方にずらしており、ステータコア28と駆動マグネット22の間に働く磁気吸引力によってロータ23を上方に付勢した状態としている。
【0067】
しかる後に、下ケース11に設けられた第1〜第3貫通孔70(1)〜(3)を貫通して上ケース12に設けられた第1〜第3ネジ孔98(1)〜(3)に螺合する3本の有頭ネジによって、上ケース12と下ケース11が固定される。
【0068】
なお、ポンプ室25が区画された状態では、図1(b)に示すように、回り止め用凹部69に挿入された回り止め用突起97の先端面97aと回り止め用凹部69の底面69aとの間に隙間G3が形成される。従って、回り止め用凹部69に挿入された回り止め用突起97の先端部と回り止め用凹部69の底面との間の隙間G3にポンプケース2の外側からマイナスドライバーなどを挿入し、しかる後に、回り止め用突起97の先端部と回り止め用凹部69の底面を引き離す方向に力を加えることにより、ポンプケース2を上ケース12と下ケース11に分解することができる。
【0069】
(リード線の引き回し)
次に、図8を参照して、配線取出し部6からポンプケース2の外側に取出されたリード線5を引き回す引き回し方法を説明する。図8は配線取出し部6から取出したリード線5の引き回し例を示す説明図である。図8(a)はリード線5をポンプケース2の前方に引き出した例であり、図8(b)はリード線5を傾斜面2kに沿って引き回した例であり、図8(c)はフック8を利用してリード線5をポンプケース2から離れる方向に屈曲させた例である。
【0070】
図8(a)に示す例では、配線取出し部6から取出されたリード線5を前方(吸入管3および吐出管4の突出方向)に引き出している。本例では、配線取出し部6がポンプケース2の前側左の角部分2gに設けられており、配線取出し部6が斜め前方に向かって径方向外側を向き、配線取出しガイド部6aによるリード線5の引出し方向D1が吸入管3および吐出管4の突出方向に対して軸線L回りで約45°とされている。従って、配線取出し部6から取出されたリード線5を前方に引き回す際に、ポンプケース2の幅の範囲内(吸入管3および吐出管4と平行で軸線方向から見たときにポンプケース2に外接する一対の仮想線L1の間)で、引き回すことができる。また、吸入管3および吐出管4のそれぞれに接続されるホース100についても、ポンプケース2の前方において、ポンプケース2の幅の範囲内に配置することができる。
【0071】
換言すれば、配線取出し部6は、軸線L方向から見たときのポンプケース2の輪郭の一部分を構成している前面2cおよび側面2dを互いに延長させて交差させることにより構成される出角(図5(a)の矩形輪郭R参照)の輪郭の内側に位置しているとともに、配線保持溝36aと配線保持溝36bにより構成された配線取出しガイド部6aによって配線取出し部6から外に引き出されるリード線5の引出し方向D1が前方に規定されている。よって、リード線5をポンプケース2の装置幅方向の範囲内で前方に引き回すことができる。
【0072】
ここで、ポンプケース2の前面2c、前側左の側面2d、前側右の側面2eおよび後側の側面2fのうち、吸入管3と吐出管4が設けられた前面2cを除く3つの側面2d、2e、2fは、平坦面で構成されている。従って、複数のカスケードポンプ装置1を軸線Lと直交する平面内において、カスケードポンプ装置1の装置幅方向、或は、カスケードポンプ装置1の後方向に隣接配置する際に、カスケードポンプ装置1と他のカスケードポンプ装置1との間に隙間が形成されることがなく、複数のカスケードポンプ装置1を小さな面積で配列できる。
【0073】
図8(b)に示す例では、配線取出し部6から取出されたリード線5は、配線載置部34から傾斜面2kに沿って下方に屈曲させられている。そして、フック8と傾斜面2kの間に挿通させられてフック8に係止され、傾斜面2kから浮き上がらない状態となっている。ここで、傾斜面2kはポンプケース2の前側左の角部分2gを斜めに切り欠いて設けられたものであり、フック8は、ポンプケース2を軸線L方向から見たときに4枚の側面2c〜2fによって構成される矩形輪郭の内側に位置しているので、傾斜面2kに沿って下方に引き回されるリード線5を、この矩形輪郭の内側で引き回すことができる。
【0074】
図8(c)に示す例では、図8(b)において下方に引き回されているリード線5を、フック8を利用して、フック8と接している部分からポンプケース2から離れる方向に屈曲させたものである。ここで、フック8は、傾斜面2kの軸線L方向の中央位置において、一定幅で、傾斜面2kに沿って軸線Lと直交する方向に延びている。従って、リード線5をポンプケース2から離れる方向に屈曲させる際に、ポンプケース2の高さの範囲、すなわち、軸線L方向で対向するポンプケース2の一対の上面2a、2bの間からはみ出さない位置で屈曲させて、引き回すことができる。
【0075】
(作用効果)
本例によれば、互いに平行に延びている吸入管3および吐出管4と配線取出し部6とは4角柱形状をしているポンプケース2の上面2aと下面2bの間の中間部2zに設けられており、配線取出し部6から外部に引き出されるリード線5の引出し方向D1は吸入管3および吐出管4の突出方向との成す角が90°未満に規定されている。これにより、吸入管3および吐出管4の突出方向からポンプケース2を見たときに、吸入管3、吐出管4および配線取出し部6の全てが目視できる位置に配置されている。従って、カスケードポンプ装置1を外部の機器に実装する際には、ポンプケース2の前方(一方側)に吸入管3および吐出管4に接続するホースなどの配管を引き回すスペースとポンプケース2から引き出したリード線5を引き回すスペースを設ければよい。すなわち、ポンプケース2の後方(他方側)にリード線5を引き回すスペースを設ける必要がないので、この分、実装スペースを抑制できる。また、配線取出し部6がポンプケース2の軸線L方向の両端に位置する上面2aおよび下面2bの間の中間部2zに設けられているので、リード線5をポンプケース2の軸線L方向の高さの範囲内で取出すことができる。従って、リード線5を引き回すスペースを軸線L方向でポンプケース2に隣接する位置に設ける必要もないので、この分、実装スペースを抑制できる。
【0076】
さらに、ポンプケース2は4角柱形状をしているので、カスケードポンプ装置1を実装する際に、外部の機器との間に無駄なスペースの発生が少ない。従って、例えば、複数のカスケードポンプ装置1を装置幅方向に並列に配置する場合においては、隣接する一方のカスケードポンプ装置1の側面(第2側面)2dと他方のカスケードポンプ装置1の側面(第3側面)2eを当接、或いは、接近させた状態で配置することができる。また、複数のカスケードポンプ装置1を上下方向に配置する場合においては、隣接する一方のカスケードポンプ装置1の上面2aと他方のカスケードポンプ装置の下面2bを当接、或いは、接近させた状態で配置することができる。
【0077】
また、本例では、吸入管3、吐出管4および配線取出し部6は、ポンプ室25が内部に構成された中間部2zの軸線L回りに吸入管3、吐出管4、配線取出し部6の順番で設けられている。これにより、吸入管3から吐出管4までの軸線L回りの角度(下側流体流路31aおよび上側流体流路31bの角度範囲)が大きく取れるので、液体を圧送する圧力が向上する。従って、吸入管3および吐出管4の突出方向に向けてリード線5を引き回す配線取出し部6を設けても、ポンプケース2の大型化を抑制できる。なお、本例のカスケードポンプ装置1では、ロータ23の回転方向の変更により、吸入管3、吐出管4とを入れ替えることができる。すなわち、吐出管4の側から流体を吸入して、吸入管3の側から流体を吐出させることができる。この場合には、吸入管3、吐出管4および配線取出し部6は、軸線L回りに吐出管4、吸入管3、配線取出し部6の順番となる。
【0078】
ここで、本例のカスケードポンプ装置1は、断面形状がL字の固定部材を用いて外部の機器200に固定することが可能となっている。図9は固定部材を用いてカスケードポンプ装置1を外部の機器に取り付ける説明図である。固定部材101は、図9に示すように、カスケードポンプ装置1の取り付け孔9を利用してポンプケース2の下面2bに固定される矩形の取り付け板部101aと、この取り付け板部101aの縁から直交する方向に折れ曲っており、外部の機器200に固定される矩形の固定板部101bを備えている。
【0079】
このような固定部材101を用いてカスケードポンプ装置1を外部の機器200に取り付ける際には、例えば、図9(a)に示すように、側面2eを下側にして、この側面2eが外部の機器200に接するようにカスケードポンプ装置1を取り付けることができる。この場合に、本例のカスケードポンプ装置1によれば、リード線5を第2側面2dから上方(外側)にはみ出さないように引き回すことができる。すなわち、カスケードポンプ装置1を縦置きにして、上面から見たポンプケース2の投影面積を小さくした場合において、リード線5を含むカスケードポンプ装置1の高さを低く抑えることができる。なお、ポンプケース2の側面2dを下側にして、この側面2dが外部の機器200に接するようにカスケードポンプ装置1を取り付けることもできる。この場合にも、本例のカスケードポンプ装置1によれば、リード線5を外部の機器200と干渉させることなく、引き出すことができる。
【0080】
また、固定部材101を用いてカスケードポンプ装置1を外部の機器200に取り付ける際には、図9(b)に示すように、ポンプケース2の側面2fを下側にして、側面2fが外部の機器200に接するように取り付けることもできる。すなわち、本例のカスケードポンプ装置1によれば、配線取出し部6が吸入管3および吐出管4が突出している側に設けられているので、吸入管3および吐出管4が突出する前面2cと対向する側面2fの側にリード線5が突出しておらず、側面2fを外部の機器200に密着させることができる。このように、本例のカスケードポンプ装置1では、ポンプケース2の上面2a、下面2b、側面2d〜2fのいずれを外部の機器200との当接面(対向面)とした場合でも、ポンプケース2を外部の機器200に密着させることができるので、カスケードポンプ装置1の配置の自由度が高い。
【0081】
さらに、本例によれば、リード線5を係止するフック8が、ポンプケース2を軸線L方向から見たときに4枚の側面2c〜2fによって構成される矩形輪郭の内側に位置しているので、ポンプケース2を実装する際に、フック8が外部の機器200と干渉することを防止できる。また、傾斜面2kに沿ってリード線5を引き出せば、リード線5を、ポンプケース2を軸線L方向から見たときに4枚の側面2c〜2fによって構成される矩形輪郭の内側に位置させることができる。さらに、リード線5をポンプケース2から離れる方向に屈曲させる際に、フック8を利用すれば、ポンプケース2の高さの範囲からはみ出さない位置でリード線5を屈曲させて引き回すことができる。
【0082】
また、本例では、4角柱形状のポンプケース2の前側右の角部分2hおよび後側左の角部分2iに、当該ポンプケース2を外部の機器200に取り付けるための取り付け孔9が形成されている。各取り付け孔9は、4角柱形状のポンプケース2において円環状のポンプ室25との間でデッドスペースとなる角部分を利用して設けられているので、取り付け孔9を設けた場合でも、ポンプケース2が大型化することがない。さらに、本例では、前面2cの装置幅方向の一方側に隣接する角部分2gに配線取出し部6を設け、前面2cの他方側に隣接する角部分2hに取り付け孔9を設け、角部分2hに対して対角に位置する角部分2iに取り付け孔9を設けているので、2つの取り付け孔9を利用して外部の機器や固定部材101にポンプケース2を取り付ける際に、ポンプケース2にかかる力を均一にすることが容易であり、カスケードポンプ装置1が外部の機器から浮き上がる取り付け不良を防止できる。
【0083】
さらに、下ケース11と上ケース12とをネジを用いて固定するためのケース固定部14は、吸入管3および吐出管4の間において前面2cから突出している。吸入管3および吐出管4の間は、カスケードポンプ装置1を外部の機器200に取り付けたときにデッドスペースとなる空間なので、このような位置にケース固定部14を突出させておけば、カスケードポンプ装置1を実装する際に、ケース固定部14が外部の機器200と干渉することがない。また、下ケース11と上ケース12とをネジを用いて固定するための第2の固定部を構成している第2貫通孔70(2)および第2ネジ孔98(2)、並びに、第3の固定部を構成している第3貫通孔70(3)および第3ネジ孔98(3)は、後側左の角部分2iと後側右の角部分2jに形成されている。すなわち、第2貫通孔70(2)および第2ネジ孔98(2)、並びに、第3貫通孔70(3)および第3ネジ孔98(3)は、それぞれ4角柱形状のポンプケース2において円環状のポンプ室25との間でデッドスペースとなる角部分を利用して設けられるので、このような第2、第3の固定部を設けた場合でも、ポンプケース2が大型化することがない。
【0084】
また、本例では、下ケース11と上ケース12を積層してポンプ室25を区画形成する際に、下ケース11と上ケース12が軸線L回りに相対回転することを防止する回り止め機構13を備えているが、この回り止め機構13は、4角柱形状のポンプケース2において円環状のポンプ室25との間でデッドスペースとなる角部分2jを利用して設けられている。従って、止め機構13を設けた場合でも、ポンプケース2が大型化することがない。
【0085】
なお、本例によれば、吸入管3および吐出管4が互いに平行に延びているので、下ケース11を成形する際に、同一のスライド金型を用いて成形できる。
【0086】
(その他の実施の形態)
上記の例では、ポンプケース2は4角柱形状をしているが、ポンプケースは、円柱形状、或いは、三角柱形状、五角柱形状、六角柱形状などの多角柱形状のものとすることができる。このような形状を採用した場合でも、互いに平行な同一の方向に延びている吸入管および吐出管と配線取出し部とが、ポンプケースの軸線方向の両端に位置する2つの端面の間に設けられており、配線取出しガイド部の引出し方向D1と吸入管および吐出管の突出方向との成す角が90°未満であれば、カスケードポンプ装置を外部の機器に実装する際に、吸入管および吐出管が突出しているポンプケースの一方側に吸入管および吐出管に接続するホースなどの配管を引き回すスペースとポンプケースから引き出したリード線を引き回すスペースを設けることができる。また、リード線をポンプケースの軸線方向の高さの範囲内で取出すことができる。従って、カスケードポンプ装置の実装スペースを抑制できる。
【0087】
また、ポンプケースとしては、中間部が軸線L回りで隣に配置されて軸線L方向から見たときのポンプケース2の輪郭の一部分を構成している第1側面および第2側面と、第1側面および第2側面の間に形成された出角を備えていれば、多角柱形状でなくてもよい。このような形状の場合にも、上記の例のように、互いに平行な同一の方向に延びている吸入管および吐出管と配線取出し部とが、ポンプケースの軸線方向の両端に位置する2つの端面の間に設けられており、配線取出しガイド部の引出し方向D1と吸入管および吐出管の突出方向との成す角が90°未満であれば、カスケードポンプ装置を外部の機器に実装する際に、吸入管および吐出管が突出しているポンプケースの一方側に吸入管および吐出管に接続するホースなどの配管を引き回すスペースとポンプケースから引き出したリード線を引き回すスペースを設けることができる。また、リード線をポンプケースの軸線方向の高さの範囲内で取出すことができる。従って、カスケードポンプ装置の実装スペースを抑制できる。また、第1側面に平行に突出する吸入管と吐出管を設け、第1側面および第2側面の間に形成された出角に配線取出し部を設ければ、カスケードポンプ装置1を外部の機器に実装する際に、ポンプケースの一方側に吸入管および吐出管に接続するホースなどの配管を引き回すスペースとポンプケースから引き出したリード線を引き回すスペースを設けることができる。また、リード線をポンプケースの軸線方向の高さの範囲内で取出すことができる。従って、カスケードポンプ装置の実装スペースを抑制できる。また、円環状のポンプ室と出角の間のデッドスペースに配線取出し部を配置できるので、ポンプケースが大型化することを防止できる。
【0088】
また、上記の例では、配線方向規制部としてフック8を用いているが、例えば、リード線5を通すことが可能な貫通孔を備える凸部を傾斜面2kに設けることによって配線方向規制部とすることもできる。
【0089】
さらに、上記の例では、配線取出しガイド部6aは、配線載置部34の配線保持溝36aと固定部材35の配線保持溝36bにより構成されているが、配線取出しガイド部6aを配線載置部34の配線保持溝36aのみから構成することもできる。この場合には、配線保持溝36aにリード線5を載置し、配線保持溝36bを備えてない固定部材によってリード線5を上方から押えて固定する構成を採用できる。また、配線保持溝36aにリード線5を載置した後に、固定冶具を用いてリード線5を仮固定し、接着剤やポッティング剤16でリード線5を配線保持溝36aに固定してもよい。
【0090】
また、上記の例では、配線取出しガイド部6aを対向配置される一対の溝(配線保持溝36aおよび配線保持溝36b)から構成しているが、上ケース12または固定部材35にリード線5を個別に通す孔、もしくは、リード線5の全部を通す孔を備えることにより、リード線5の引出し方向D1を規定する構成を採用してもよい。また、配線載置部34に複数本のリブを形成して、各リブの間にリード線5を配置することによってリード線5の引出し方向D1を規定する構成を採用してもよい。
【0091】
さらに、上記の例では、配線取出し部6は、ポンプケース2の前面2cと側面2dとの間の出角である角部分2gに設けられているが、前面2cと側面2eとの間の出角である角部分2hに配線取出し部6を設けてもよい。また、配線取出し部6を角部分2gと角部分2hに設け、これらの2ヶ所からリード線5を取り出してもよい。
【0092】
なお、前面2c、側面2d、2e、2fは、これらの全ての側面、もしくは、一部の側面の装置幅方向もしくは高さ方向の中央部が外側に膨らんだ湾曲形状をしていてもよい。また、下ケース11の側壁部62の外側面と上ケース12の外周壁86の外側面は、軸線L方向で段差を持たせることもできる。このように構成した場合でも、軸線L方向から見たときのポンプケース2の輪郭よりも内側に配線取出し部6を配置しておけば、配線引出し部6から取り出されたリード線5を引き回す際に、ポンプケース2の輪郭の近くでの引き回しのスペースを小さく出来る。よって、カスケードポンプ装置1を実装するときに外部の機器とリード線5の干渉を抑制できる。
【符号の説明】
【0093】
1 カスケードポンプ装置
2 ポンプケース
2a 上面(ポンプケース2の軸線方向の上側の端面)
2b 下面(ポンプケース2の軸線方向の下側の端面)
2c 前面(第1側面)
2d 側面(第2側面)
2e 側面(第3側面)
2f 側面(第4側面)
2g 角部分(第1出角の内側)
2h 角部分(第2出角の内側)
2i 角部分(第3出角の内側)
2j 角部分(第4出角の内側)
2k 傾斜面
2z 中間部(ポンプケース2の上面2aと下面2bの間の部位)
3 吸入管
3a 吸入口
4 吐出管
4a 吐出口
6 配線取出し部
6a 配線引き出しガイド部
7 コネクタ
8 フック(配線方向規制部)
9 取り付け孔
11 下ケース
12 上ケース
13 回り止め機構
16 ポッティング剤
20 区画室
21 羽根車
22 マグネット
23 ロータ
24 支軸
25 ポンプ室
26 Oリング
27 コイル
28 ステータコア
29 ステータ
30 基板
31 液体流路
31a 下側流体流路
31b 上側流体流路
33 配線取出し口
34 配線載置部
35 固定部材
38 嵌合溝
39 一対の嵌合溝38の間のくびれ部分
43 ワッシャー
44 ヨーク
45 凹部
46 凹部
47 凹部
48 羽根
51 突極
53 凹部
60 支軸固定用凹部
61 底板部
62 側壁部
62a 側壁部62の平坦な上端面
62c 側壁部62の前面
62g 下ケース11の前側左の角部分
62h 前側右の角部分
62i 後側左の角部分
62j 後側右の角部分
63 円形凹部
64 環状凹部
65 内側環状突出面
66 外側環状突出面
67 環状の端面部分
68 環状段部
68a 環状端面
68b 円形内周面
69 回り止め用凹部
69a 回り止め用凹部69の底面
70 第1貫通孔
74 凹部
75 凹部
80 有底筒状の中央突出部
80a 突出部分
81 中央突出部80の底部
82 底部81の中央の支軸固定用凹部
83 ステータ収納室
84 上ケース12の中央突出部80の筒状部
85 ステータ固定用突部
86 枠状の外周壁
87 上部空間
89 中央突出部80と同軸に構成された円筒部
91 環状突出部
93a 張り出し部93の平坦な下端面
93b 前側左の角部分
93g 切り欠きがある角部分
93i 後側左の角部分
93j 後側右の角部分
94 環状突出部91の環状下端面
94a ポンプ室25の内側に隣接している環状の端面部分
95 環状突出部91の円形外周面
96 径方向突出部
96a 下ケース11の側を向いている環状端面
96b 環状端面96aの外周縁から上方に延びて半径方向外側を向いている円形外周面
97 回り止め用突起
97a 回り止め用突起97の先端面
98(2) 第2ネジ孔
98(3) 第3ネジ孔
100 ホース
101 固定部材
101a 矩形の取り付け板部
101b 矩形の固定板部
200 外部の機器
L 軸線(ポンプ室の中心軸線)
D1 引出し方向(配線引出し方向)
G1 円盤部40と微小なギャップ
G2 円盤部40と微小なギャップ
G3 先端面97aと回り止め用凹部69の底面69aとの間の隙間












【特許請求の範囲】
【請求項1】
円環状のポンプ室と、
前記ポンプ室内に同軸に配置された円環状の羽根車と、
駆動コイルを励磁することによって前記羽根車を回転させる磁気駆動機構と、
前記ポンプ室、前記羽根車および前記磁気駆動機構を収納するポンプケースとを有し、
前記ポンプケースは、軸線方向の両端に位置する2つの端面と、前記2つの端面の間の中間部とを備えており、
前記中間部には、前記ポンプ室に連通する吸入管および吐出管、並びに前記駆動コイルに励磁電流を供給するための配線を外部に取出すための配線取出し部が設けられており、
前記吸入管および前記吐出管は、前記軸線と直交する平面に沿って互いに平行な同一方向に突出しており、
前記配線取出し部は、前記配線を外部に引き出す引出し方向を規定する配線引出しガイド部を備えており、
前記引出し方向と前記吸入管および前記吐出管の突出方向との成す角が前記軸線回りで90°未満であることを特徴とするカスケードポンプ装置。
【請求項2】
請求項1において、
前記吸入管、前記吐出管および前記配線取出し部は、前記軸線回りに前記吸入管、前記吐出管、前記配線取出し部の順番で設けられているか、または、前記軸線回りに前記吐出管、前記吸入管、前記配線取出し部の順番で設けられていることを特徴とするカスケードポンプ装置。
【請求項3】
請求項1または2において、
前記中間部は、前記軸線方向から見たときの前記ポンプケースの輪郭を構成している外周面を備えており、
前記配線取出し部は、前記輪郭を構成している外周面よりも内側に設けられていることを特徴とするカスケードポンプ装置。
【請求項4】
請求項1または2において、
前記中間部は、前記軸線回りで隣に配置されて前記軸線方向から見たときの前記ポンプケースの輪郭の一部分を構成している第1側面および第2側面と、前記第1側面および前記第2側面の間に形成された第1出角とを備えており、
前記磁気駆動機構は、前記ポンプ室よりも径方向の内側に構成されており、
前記吸入管および前記吐出管は、前記第1側面から突出しており、
前記配線取出し部は、前記第1出角の内側に設けられていることを特徴とするカスケードポンプ装置。
【請求項5】
請求項4において、
前記第1出角には、当該第1出角の先端を切り欠くことによって前記第1側面および前記第2側面と交差して軸線方向に延びる傾斜面が形成されていることを特徴とするカスケードポンプ装置。
【請求項6】
請求項5において、
前記中間部は、前記配線取出し部から前記ポンプケースの外に取出された後に前記傾斜面に沿って引き出される前記配線の方向を規制する配線方向規制部を備えており、
前記配線方向規制部は、前記第1側面と前記第2側面を互いに延長させて交差させることにより構成される出角の輪郭の内側に位置していることを特徴とするカスケードポンプ装置。
【請求項7】
請求項6において、
前記配線方向規制部は、前記傾斜面の軸線方向の途中位置において、傾斜面に沿って前記軸線と直交する方向に延びていることを特徴とするカスケードポンプ装置。
【請求項8】
請求項4において、
前記ポンプケースは、四角柱形状であることを特徴とするカスケードポンプ装置。
【請求項9】
請求項8において、
前記第1出角には、当該出角の先端を切り欠くことによって前記第1側面および前記第2側面と交差して軸線方向に延びる傾斜面が形成されており、
前記中間部は、前記配線取出し部から前記ポンプケースの外に取出された後に前記傾斜面に沿って引き出される前記配線の方向を規制する配線方向規制部を備えており、
前記配線方向規制部は、前記傾斜面との間に前記配線を係止する隙間を備えたフックであり、前記第1側面と前記第2側面を互いに延長して交差させることにより構成される出角の輪郭の内側に位置していることを特徴とするカスケードポンプ装置。
【請求項10】
請求項8において、
前記ポンプケースにおいて、前記軸線回りで前記第1側面に前記第2側面とは反対側で隣接する第3側面との間の第2出角の内側、および、前記第2出角とは対角に位置する第3出角の内側には、それぞれ当該ポンプケースを外部の機器に取り付けるための取り付け孔が形成されていることを特徴とするカスケードポンプ装置。
【請求項11】
請求項10において、
前記ポンプケースは、第1ケース、および、第2ケースを備えており、
前記ポンプ室は、前記第1ケースと前記第2ケースが前記軸線と直交する方向で部分的に重なり合う状態で積層することによって区画されており、
前記ポンプケースには、前記第1ケースと前記第2ケースとをネジを用いて固定するための第1固定部が設けられており、
前記第1固定部は、前記吸入管および前記吐出管の間において前記第1側面から突出していることを特徴とするカスケードポンプ装置。
【請求項12】
請求項10または11において、
前記ポンプケースには、前記第1ケースと前記第2ケースとをネジを用いて固定するための第2固定部および第3固定部が設けられており、
前記第2固定部は、前記第3出角の内側に形成されており、
前記第3固定部は、前記第1出角と対角に位置する第4出角の内側に形成されていることを特徴とするカスケードポンプ装置。
【請求項13】
請求項10において、
前記ポンプケースは、第1ケース、および、第2ケースを備えており、
前記ポンプ室は、前記第1ケースと前記第2ケースが前記軸線と直交する方向で部分的に重なり合う状態で積層することによって区画されており、
前記第1ケースと前記第2ケースの間には、前記ポンプ室からの流体の漏れを防止するためのOリングが前記ポンプ室と同軸に配置されており、
前記ポンプケースにおいて前記第1出角と対角に位置する第4出角の内側には、前記第1ケースと前記第2ケースを積層して前記ポンプ室を区画形成する際に、前記第1ケースと前記第2ケースが前記軸線回りに相対回転することを防止する回り止め機構が構成されていることを特徴とするカスケードポンプ装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2013−47510(P2013−47510A)
【公開日】平成25年3月7日(2013.3.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−140150(P2012−140150)
【出願日】平成24年6月21日(2012.6.21)
【出願人】(000002233)日本電産サンキョー株式会社 (1,337)
【Fターム(参考)】