説明

カッティング装置およびカッティング装置の被切断媒体支持シート

【目的】被切断媒体の大きさによらず、装置に対してサイズの大きい被切断媒体であってもこれを所望の形状に切断することができ、装置本体を可能な限り小型化することが可能となるカッティング装置を提供する。
【構成】被切断媒体上に直接載置されるフレームと、第1の方向に摺動可能となるようこのフレームに支持されるYバーと、切断手段を被切断媒体に対向するよう保持するとともに、この切断手段を被切断媒体に対して選択的に圧接離反させるホルダを有し、第1の方向と直交する第2の方向に摺動可能となるようYバーに支持されるキャリッジを有してなり、Yバーおよびキャリッジを移動制御して切断手段を被切断媒体に対して2次元方向に移動させるとともに、ホルダを制御して切断手段を被切断媒体に選択的に圧接離反させ、被切断媒体を所望の形状に切断するよう構成した。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、紙或いはカッティングフィルム等のシート状媒体を所望の形状に切断するカッティング装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
シート状媒体を所定の形状で切断する従来のこの種のカッティング装置としては、例えばシート状媒体の両端部分を駆動ローラと従動ローラ(ピンチローラ)とで挟持して、駆動ローラを正逆回転させることによりシート状媒体を第1の方向(X軸方向)に移動させるとともに、この第1の方向と直交する第2の方向(Y軸方向)に移動可能に設けられるキャリッジと、このキャリッジに設けられたシート状媒体に対して圧接離反するカッティングペンを移動させることにより、カッティングペンをシート状媒体に対して2次元方向に移動させるとともに選択的に圧接離反させて、所望の形状に切断する被切断媒体駆動型のカッティング装置がある。また、平板状のテーブル上にシート状媒体を載置し、この載置テーブルに対して第1の方向に移動可能に設けられるYバーと、このYバーに摺動することにより第1の方向と直交する第2の方向に移動可能に設けられるキャリッジと、このキャリッジに載置テーブル上のシート状媒体に圧接離反するよう設けられたカッティングペンとを設け、Yバーおよびキャリッジを移動制御するとともにカッティングペンをシート状媒体に対して選択的に圧接離反させることにより、これを所望の形状に切断する所謂フラットベッド型のカッティング装置が知られている。
【0003】
このカッティング装置は、予め図形,図柄等の印刷(記録)を施したシート状媒体用いて、これを箱体,容器等の展開図形状に切断することにより箱体,容器等の立体物を作成する、或いは衣服等の型紙、装飾用のステンシル或いはマスクパターン、年賀状等のグリーティングカード、ペーパークラフトなどといった紙製品を作成するといった用途にも用いられる。
【特許文献1】特開2002−346982号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上述の従来のカッティング装置においては、切断すべきシート状媒体は装置のサイズよりも小さなものを選択する必要があり、各種のサイズに対応することを考慮すると、装置自体を大型化せざるを得ず、小型化が困難となるとともにその製造コストが高価となるといった不具合を生じていた。また、装置に対して著しくサイズの小さいシート状媒体を切断するといった場合においては、カッティング装置の切断領域座標とシート状媒体上の切断すべき領域の位置合わせが難しくなり、これにより装置の操作ならびに取り扱いが非常に煩雑なものとなっていた。
本発明は、これらの不具合を解消するためになされたものである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明のカッティング装置においては、被切断媒体上に直接載置されるフレームと、第1の方向に摺動可能となるようこのフレームに支持されるYバーと、切断手段を被切断媒体に対向するよう保持するとともに、この切断手段を被切断媒体に対して選択的に圧接離反させるホルダを有し、第1の方向と直交する第2の方向に摺動可能となるようYバーに支持されるキャリッジを有してなり、Yバーおよびキャリッジを移動制御して切断手段を被切断媒体に対して2次元方向に移動させるとともに、ホルダを制御して切断手段を被切断媒体に選択的に圧接離反させ、被切断媒体を所望の形状に切断するよう構成した。
【発明の効果】
【0006】
本発明のカッティング装置によれば、被切断媒体の大きさによらず、装置に対してサイズの大きい被切断媒体であってもこれを所望の形状に切断することができ、また、形成すべき切断画像をフレームの開口部の大きさ以下の複数の画像データに分割し、カッティング装置の設置場所をそれぞれ変更しながら切断画像の形成を行うことにより、大判のシート状媒体に対しても切断画像の形成が行えるといった効果を奏する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0007】
以下、図面に基づいて、本発明のカッティング装置を説明する。
図1乃至図4は本発明のカッティング装置の構成を示す図であり、図において1は装置本体であるフレーム、2はYバー、3はキャリッジ、4はホルダ、5は切断手段であるカッティングペン、6は脚部、7は制御部、8は被切断媒体であるシート状媒体である。
【実施例1】
【0008】
フレーム1は、Yバー2の両端部分を摺動可能に支持する一対のレール材11を有し、このレール材に挟まれ、Yバー2が移動可能な領域が開口部となるよう設けられている。即ち、図のY軸方向と一致するよう形成されたYバー2の両端部分にそれぞれ摺動子21が設けられており、この摺動子21がフレーム1に図のX軸方向と一致するよう形成された一対のレール材11に摺動可能に取り付けられている。これによりYバー2はX軸方向に移動可能となるよう構成されている。また、装置本体(フレーム1)には、駆動モータ12と、この駆動モータ12の駆動力を伝達する歯車機構13、この歯車機構13に対して図のX軸方向他端側に設けられるプーリ14、このプーリ14と歯車機構13との間に架渡される伝達ベルト15がレール材11に沿うよう設けられており、駆動モータ12を回転駆動することにより、伝達ベルト15に固定したYバー2の摺動子21が図のX軸方向に移動し、これによりYバー2のX軸方向の移動制御を行うよう構成されている。
キャリッジ3の摺動子31は、Yバー2に沿って図のY軸方向に摺動するよう設けられており、また、Yバー2には、そのY軸方向一端側に固定された駆動モータ34と、これに係合する歯車機構33、およびYバー2のY軸方向他端側に設けられたプーリ32間に架渡された伝達ベルト35が設けられている。この伝達ベルト35にキャリッジ3の摺動子31が取り付けられており、駆動モータ34を回転駆動させてキャリッジ3をY軸方向に移動制御するよう構成されている。これにより、Yバー2およびキャリッジ3を制御部8により駆動制御することにより、キャリッジ3のホルダ4に保持されたカッティングペン5を、レール材11に挟まれる領域である開口部内を移動可能とするとともに、フレーム1を設置した被切断媒体であるシート状媒体8の切断すべき面に対して所望の軌跡で2次元方向に移動させることができるよう設けられている。
フレーム1の下端、即ちシート状媒体8と対向する面には脚部7が設けられている。この脚部7は、磁性体により構成されるとともに、フレーム1に対してネジ部材により螺合して、脚部7全体を回転させることによりフレーム1~繰出し可能に取り付けられている。これにより、この脚部7全体を回転させることにより、カッティングペン5の切り込み深さを調整するよう構成されている。
【0009】
ホルダ4およびこれに保持されるカッティングペン5は、キャリッジ3に対して昇降可能となるよう構成されている。図4右側の構成図に示されるとおり、キャリッジ3の摺動子31に固定される基台30に取り付けられたソレノイド41、スライド軸42、このスライド軸42に摺動するとともにソレノイド41により上下動されるホルダアーム43、このホルダアーム43に取り付けられるホルダ40とを有している。切断手段であるカッティングペン5は、このホルダ40に保持されている。
【0010】
図4において、7は各種制御を行う制御部であり、コンピュータ等の上位装置から送信される切断画像に基づいて、カッティングペン5の移動軌跡データならびに切断位置データを作成する制御装置70、制御装置70から送信されるデータに基づいて、Yレール2,キャリッジ3,ホルダ4を各々駆動制御する駆動制御部71により構成されている。X軸駆動制御手段72は、Yバー2のX軸方向の位置を検出するとともに、これを所望の位置に移動制御する駆動モータ12を駆動制御し、またY軸駆動制御手段73は、キャリッジ3のY軸方向の位置を検出するとともに、これを所望の位置に移動制御する駆動モータ34を駆動制御し、さらにZ軸駆動制御手段74は、カッティングペン5をシート状媒体8に圧接離反させるソレノイド41を駆動制御する。
【0011】
本発明のカッティング装置によりシート状媒体8を所望の形状に切断する場合、先ず操作者により、被切断媒体である紙或いはカッティングフィルムなどのシート状媒体8を、鉄材等より成る机等の平板状の台上に載置する。切断の際には、カッティングペン5の刃部がシート状媒体8を貫通するので、必要に応じてゴム材よりなるカッティングマットなどをシート状媒体8と台の間に介在させる。次に、シート状媒体8の切断すべき領域上にフレーム1の開口部が一致するようにカッティング装置を位置づける。この時、シート状媒体8を載置した台が鉄材より成る場合には、磁性体より成るカッティング装置の脚部6が吸着することにより、シート状媒体8を台上に固定する。
次に、コンピュータ等の上位装置より送信される切断データに基づいて、制御装置70は駆動モータ12を回転駆動させてYバー2を図のX軸方向に移動させるとともに、駆動モータ32を回転駆動させてキャリッジ3をY軸方向に移動させることにより、キャリッジ3に設けたホルダ4(これが保持するカッティングペン5)を移動させ、同時にソレノイド41を選択的に上昇,下降させることによりカッティングペン5をシート状媒体8の表面に圧接,離反して、シート状媒体8を切断する。このように、制御装置70は切断画像データに基づいてYバー2,キャリッジ3,カッティングペン5(を保持したホルダ4)を駆動制御し、この切断動作をシート状媒体8の表面上の任意の位置で行うことにより、シート状媒体8を切断するよう設けられる。
【実施例2】
【0012】
このカッティング装置において、被切断媒体として紙シートを用いる場合、紙シートの切断した部分が周辺のシート材から切り離されると、その部分が浮き上がり、これがカッティングペンと接触して成果物を破損するなどといった不具合が生じることがある。
この不具合を解消するため、本発明の第2実施例においては、切断手段に対向する面に被切断媒体である紙シート材を剥離可能となるようこれを支持するよう構成した被切断媒体支持シートを用い、この紙シート材を支持した被切断媒体支持シート上にカッティング装置を載置して、紙シート材を所望の形状に切断するよう構成した。
【0013】
図5は、本発明の被切断媒体支持シート9を示す図であり、この被切断媒体支持シート9はシート状の基材90と、この基材90のカッティングペン5に対向する面に設けられた被切断媒体8を剥離可能に粘着支持する粘着層91とにより構成されている。基材90としては、例えば薄いプラスチックシートなどが用いられ、この基材90上に粘着力の弱い接着剤が塗布されて粘着層91が形成されている。粘着層91には、粘着力の弱い接着剤が用いられることにより、被切断媒体である紙シート材8を剥離可能に支持することができ、また、繰り返し使用可能となるよう構成されている。具体的には、基材90として紙器用板紙,白板紙,特殊板紙,白ボール紙(例えば北越製紙社製「NEW−DV」,三菱製紙社製「ハイパール」等)、或いは厚さ0.1〜0.3mm程度のポリエチレンテレフタレートフィルム(例えばデュポン社製「マイラー」)、ポリカーボネートフィルム等を採用することができ、また、粘着層91としては、両面粘着テープ,ファスナー(例えばリンテック社製「リピール」,3M社製「4591HL」,大日本インキ工業社製「ダイタック」等)、或いはエアゾール接着剤(例えば3M社製「スプレーのり55カラー」等)を採用することができる。
【0014】
第2実施例のカッティング装置により、紙シート材を所望の形状で切断する場合、操作者は先ず素材としての紙シート材8を被切断媒体支持シート9に支持させる。上述したとおり、粘着層91は弱い粘着力を有した接着剤により形成されるので、紙シート材8は全面に亘って被切断媒体支持シート9に粘着支持され、これに固定される。
次に、紙シート材8が支持された被切断媒体支持シート9の切断すべき領域上に、カッティング装置1を位置づける。この状態で、カッティング装置は待機状態となる。
カッティング動作としては、上述の第1実施例と同様に、コンピュータ等の上位装置より送信される切断データに基づいて、制御装置70が駆動モータ12を回転駆動させてYバー2を図のX軸方向に移動させるとともに、駆動モータ32を回転駆動させてキャリッジ3をY軸方向に移動させ、キャリッジ3に設けたホルダ4(これが保持するカッティングペン5)を移動させるとともに、ソレノイド41を選択的に上昇,下降させてカッティングペン5をシート状媒体8の表面に圧接,離反し、シート状媒体8を切断する。
この切断動作においては、カッティングペン5の刃先が紙シート材8を切断(貫通)して粘着層91(または基材90)に達し、且つ基材90を完全に突き抜けることがないような高さとなるまでカッティングペン5を下降させ、この状態でキャリッジ3を駆動して、紙シート材8の切断を行うよう構成されている。
従って、切断動作により作成される成果物は、紙シート材8からは完全に切り離されることとなるが、切り離されても粘着層91に粘着保持されているので、被切断媒体支持シート9からは浮き上がることがない。
切断動作が完了すると、操作者は成果物部分を被切断媒体支持シート9から取り外す。このとき、成果物部分は紙シート材8から完全に切り離されており、尚且つ粘着層91の粘着力が弱いため、簡単且つ容易に取り外すことが可能となる。
更に、紙シート材8を切断することにより発生する紙粉は、粘着層91に吸着されることとなり、従ってカッティングペン5の刃先に堆積することがない。
成果物部分を取り外した被切断媒体支持シート9から、紙シート材8の不要部分を取り外せば、この被切断媒体支持シート9に新たな紙シート材8を支持させて、次回の切断動作に使用することが可能となる。この被切断媒体支持シート9は、粘着層91の粘着力が劣化するまで、繰り返し使用することが可能である。
また、被切断媒体支持シートは、薄いプラスチックシート等より構成されているので、切断する紙シート材8が例えばトレーシングペーパー等の薄くコシのない材質のものであっても、良好に切断することが可能となる。
【0015】
本発明のカッティング装置においては、シート状媒体上に装置本体を直接載置し、その開口部から切断手段をシート状媒体に圧接,離反させて切断するよう設けたので、装置のサイズより大きな媒体であっても、これを切断することが可能となる。
また、切断可能領域、すなわち切断手段の移動可能領域(開口部)よりも大きな切断画像を形成するといった場合には、この切断画像データを予めフレームの開口部の大きさ以下の複数の画像データに分割し、カッティング装置の設置場所をそれぞれ変更しながら切断画像を形成することが可能となる。
本発明のカッティング装置においては、以上の通り構成することにより、切断すべきシートのサイズを考慮することなく装置全体を可能な限り小型化するよう設計することができ、例えばハンディタイプのカッティング装置を実現することが可能となる。
上述の実施例においては、脚部をフレームに対して繰出し可能に構成したので、ソレノイドによりカッティングペンが降下した際の、シート状媒体に対するカッティングペンの刃先切り込み深さを調整することが可能となり、切断すべきシート状媒体の硬さおよび厚みなどに応じて適宜調整することができる。
また、上述の実施例においては、切断すべき画像データはコンピュータ等の上位装置より送信するよう設けたが、これに限定されるものではなく、例えば、これらのデータを格納したカードタイプのメモリといった記憶媒体の読取装置を具備させることにより、カッティング装置を単独で使用することも可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本発明のカッティング装置の構成を示す図である。
【図2】本発明のカッティング装置の構成を示す平面図である。
【図3】本発明のカッティング装置の構成を示す側面図である。
【図4】本発明のカッティング装置の構成を示す図である。
【図5】本発明の被切断媒体支持シートを示す図である。
【符号の説明】
【0017】
1 フレーム
2 Yバー
3 キャリッジ
4 ホルダ
5 カッティングペン
6 脚部
7 制御部
8 シート状媒体
9 被切断媒体支持シート

【特許請求の範囲】
【請求項1】
被切断媒体上に直接載置されるフレーム、
第1の方向に摺動可能となるよう上記フレームに支持されるYバー、
切断手段を上記被切断媒体に対向するよう保持するとともに、この切断手段を被切断媒体に対して選択的に圧接離反させるホルダを有し、上記第1の方向と直交する第2の方向に摺動可能となるよう上記Yバーに支持されるキャリッジを有し、
Yバーおよびキャリッジを移動制御して上記切断手段を被切断媒体に対して2次元方向に移動させるとともに、ホルダを制御して切断手段を被切断媒体に選択的に圧接離反させて所望の形状に切断するよう構成されることを特徴とするカッティング装置。
【請求項2】
上記被切断媒体に当接し、上記フレームに対して繰出し可能に取り付けられる脚部を有することを特徴とする請求項1記載のカッティング装置。
【請求項3】
上記脚部は磁性体よりなることを特徴とする請求項2記載のカッティング装置。
【請求項4】
被切断媒体上に直接載置されるフレーム、第1の方向に摺動可能となるよう上記フレームに支持されるYバー、切断手段を上記被切断媒体に対向するよう保持するとともに、この切断手段を被切断媒体に対して選択的に圧接離反させるホルダを有し、上記第1の方向と直交する第2の方向に摺動可能となるよう上記Yバーに支持されるキャリッジを有し、Yバーおよびキャリッジを移動制御して上記切断手段を被切断媒体に対して2次元方向に移動させるとともに、ホルダを制御して切断手段を被切断媒体に選択的に圧接離反させて所望の形状に切断するよう構成されるカッティング装置の被切断媒体支持シートであって、
この被切断媒体支持シートは、その表面上に被切断媒体を粘着させて剥離可能に支持する粘着層が形成されることを特徴とするカッティング装置の被切断媒体支持シート。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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