カップホルダ
【課題】既存の広範な観覧席用の椅子に対し所望の位置に取り付けることができ、好適に使用し得るカップホルダを提供する。
【解決手段】カップホルダ1は、ビーム4に複数の椅子本体を隣接させて取り付けた椅子に用いられるものであって、カップを保持するホルダ本体10と、このホルダ本体10を一定の姿勢に保持する支持要素11とを具備してなり、支持要素11が、ビーム4の頂点41t、42tより低い部位の外面41a、42aに添設される抜け止め用の前当接部19a並びに後当接部19bと、ビーム4の外側に位置してなり前当接部19a並びに後当接部19bをビーム4に圧接させることによりホルダ本体10をビーム4に取り付ける圧接力惹起手段たる緊締機構Xとを備えた。
【解決手段】カップホルダ1は、ビーム4に複数の椅子本体を隣接させて取り付けた椅子に用いられるものであって、カップを保持するホルダ本体10と、このホルダ本体10を一定の姿勢に保持する支持要素11とを具備してなり、支持要素11が、ビーム4の頂点41t、42tより低い部位の外面41a、42aに添設される抜け止め用の前当接部19a並びに後当接部19bと、ビーム4の外側に位置してなり前当接部19a並びに後当接部19bをビーム4に圧接させることによりホルダ本体10をビーム4に取り付ける圧接力惹起手段たる緊締機構Xとを備えた。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、スタジアム等に設置される椅子に好適に使用することができるカップホルダに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、スタジアム等に設置される椅子として、所要の間隔を空けて配置された複数の脚と、これら脚間に設けられた座、又は座及び背凭れとを具備してなるものが知られている(例えば、特許文献1を参照)。
【0003】
またこの種の観覧席について広範に適用されている態様としては、例えば支持体にビームを架け渡し、そのビームに座、又は座及び背凭れを載せ置き、これを固定するという態様も多く用いられている(例えば、特許文献2参照)。
【0004】
ところで、上記特許文献2に記載されているような態様の椅子においては、上記特許文献1のように、各着座者がそれぞれ利用することができるカップホルダを増設したいという要望がある。ところが、既に設置されている椅子にカップホルダを後発的に取り付けるのには制約が多い。例えば、背凭れの背面に後列の着座者が利用するためのカップホルダを取り付けると、前後の椅子間に形成されている通路の幅が狭くなるという不具合が生じる。また、脚等にボルト孔を穿設してカップホルダを取り付けると、取付作業に多大な工数を要するという問題が発生する。また、椅子自体の構成要素になんら干渉させずにカップホルダを取り付けようとしても、当該構成要素に干渉しないような位置にしか設ける事ができないというのが現状である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平8−266352号公報
【特許文献2】特開2001−008771号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、このような不具合に着目したものであり、既存の広範な観覧席用の椅子に対し所望の位置に取り付けることができ、好適に使用し得るカップホルダを提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、このような目的を達成するために、次のような手段を講じたものである。すなわち本発明に係るカップホルダは、ビームに複数の椅子本体を隣接させて取り付けた椅子に用いられるカップホルダであって、カップを保持するホルダ本体と、このホルダ本体を一定の姿勢に保持する支持要素とを具備してなり、前記支持要素が、前記ビームの頂点より低い部位の外面に添設される抜け止め用の当接部と、前記当接部を前記ビームの外側から前記ビームの外面に圧接させることにより前記ホルダ本体を前記ビームに取り付ける圧接力惹起手段とを備えたものであることを特徴とする。
【0008】
このようなものであれば、ビームより上に支持要素が突出しないので、取付箇所の自由度を高めることができるとともに、圧接力惹起手段がビーム自体の内側では無くビームの外側からビームの外面に向けて当接部が圧接するようにしているのでビームの内側を利用すべくビームに孔あけ加工等を施すことなく容易に取り付けることができる。その結果、ビームよりも上にある椅子の他の構成要素に干渉することなく所望の位置に取り付けることができるカップホルダを提供できる。
【0009】
ここで、当接部は勿論ビームより上に突出しないものであればビームに形成された起立面を挟持するように当接する態様をも含むものである。そしてさらに、ビームから外れ難い状態を有効に維持し得るためには、ビームとして前面の上半部分と、後面の上半部分にそれぞれ上向面を有したものを適用し、前記支持要素の当接部を前記両上向面にそれぞれ圧接させるようにしている態様とすることが望ましい。
【0010】
そして、ビームに対する姿勢を安定して維持し得るためには、ビームが前後に対をなすものであり、支持要素が、前端に前側の前記ビームの後面に形成された上向面に添設される前の当接部を有するとともに後端に後側の前記ビームの前面に形成された上向面に添設される後の当接部を有してなる押さえ具を具備したものであることが望ましい。
【0011】
また、ビームに対して強固に固定するためには、支持要素を、先端部で前記ホルダ本体を支持し基端部を前記ビームの下面に添接させたアームと、このアームの基端部の上方に配した押さえ具とを備えたものであり、圧接力惹起手段を押さえ具をアームに緊締する緊締機構としたものが好ましい。
【0012】
そして、使用者に干渉し難い位置にホルダ本体を位置付けるためには、支持要素が、隣接する椅子本体の境界部分に取り付けられる基端部と、この基端部の前端側から下方に垂下する先端部とを備えたものであり、その先端部の両側又は一側にホルダ本体を設けたものとすることが望ましい。
【発明の効果】
【0013】
本発明は、以上のような構成であるから、取付箇所の自由度を高めることができるとともに、脚に孔あけ加工等を施すことなく容易に取り付けることのできるカップホルダを提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明の一実施形態に係る椅子及びカップホルダの正面図。
【図2】同実施形態の椅子及びカップホルダの平面図。
【図3】図1に係る一部を省略して示すA−A線断面図。
【図4】図1に係る一部を省略して示すB−B線断面図。
【図5】図1に係る一部を省略して示すC−C線断面図。
【図6】同実施形態に係る要部を示す外観図。
【図7】同実施形態のカップホルダの取り付け前の状態を示す分解斜視図。
【図8】同実施形態の変形例に係る図5に対応した説明図。
【図9】同上。
【図10】同上。
【図11】同上。
【図12】同上。
【図13】同上。
【図14】同上。
【図15】同上。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明の一実施の形態について図面を参照して説明する。
【0016】
この実施形態における椅子2は、スタジアム等に設置されるもので、複数の脚5と、これら脚5間に架設されたビーム4と、ビーム4上に隣接させて設けた複数の椅子本体3とを具備してなる。
【0017】
脚5は、図1乃至図3に示すように、起立面から方持ち的に突出させた所謂蹴り上げ型のものである。この脚5は、特に図3に示すように、アルミダイキャスト製の脚本体50を主体としてなり、起立面である壁面Wに壁面ボルト58を介して取り付けられる脚本体50の基端側に形成された壁面取付部51と、脚本体50の先端側に形成されたビーム受け部52と、このビーム受け部52にビーム4を挟んだ状態で取り付けられるビーム押さえ具53とを有している。脚本体50は、例えばその縁にそれぞれ、その板厚よりも幅の広いフランジを有した形状としている。ビーム受け部52は、ビーム4の外面41a、42aの形状に応じて凹ませて前後に形成したビーム支持面54と、これらビーム支持面54の間においてビーム用ボルト59と螺合することによりビーム押さえ具53を固定するための雌ねじ部55とを有している。ビーム押さえ具53は、ビーム4の上向面41b、42bの形状に合致させるように形成した前後に対をなすビーム押さえ面56と、これらビーム押さえ面56間においてビーム用ボルト59を挿通させるためのボルト穴57とを有している。
【0018】
ビーム4は、図1乃至図7に示すように、前後に対を成す丸パイプを主体としたものであり、前後に所定寸法離間させて互いに平行に設けられた前ビーム41と、後ビーム42とを有している。本実施形態において、これら前ビーム41、後ビーム42の外面41a、42aのうち上半分の表面を上向面41b、42bとするとともに、互いに向かい合う前ビーム41の後側の上向面41bを後上向面41c、後ビーム42の前側の上向面42bを前上向面42cとしている。そして本実施形態では、これら前ビーム41、後ビーム42にともに上側から接する仮想の接線Lが当接する位置を頂点41t、42tとしている。
【0019】
椅子本体3は、図1乃至図6に示すように、座31と、背凭れ32と、これら座31及び背凭れ32をビーム4に固定するブラケット33とを具備してなるもので、これら座31と背凭れ32とはブロー成形等により一体に形成されたものを主体としている。また椅子本体3は、これらブラケット33を緊締することにより前記ビーム4を挟圧し前記座31をビーム4に固定する緊締具としての座取付ボルト38を有している。そして特に図4に示すように、座31は、上面側において着座面を形成する座本体34と、下面側において上ブラケット36を取り付けるためのブラケット取付部35とを有している。ブラケット33は、座31の下面に取り付けられビーム4の上面に載置される左右対をなす上ブラケット36と、前記ビーム4の下方に位置させてこれら上ブラケット36の下に配された下ブラケット37とを備えている。上ブラケット36は、ビーム4の上向面41b、42bに沿った形状をなすことにより前後に位置決めし且つ側方にスライドし得るように形成された位置決め面36aと、下側から挿入される座取付ボルト38に螺合し得る座取付ナット36bとを有している。下ブラケット37は、ビーム4の外面41a、42aに下側から密着或いは略密着し得るように形成された固定面37aと、座取付ボルト38を挿通させるためのボルト孔37bとを有している。
【0020】
そしてこの椅子本体3は、このように構成されることで、座取付ボルト38を緩めることにより椅子本体3をビーム4の長手方向に沿って容易にスライド移動させることができるようになっている。
【0021】
以上のようにしてなる椅子2に、本実施形態に係るカップホルダ1を取り付けている。
【0022】
ここで、本実施形態に係るカップホルダ1は、ビーム4に複数の椅子本体3を隣接させて取り付けた椅子2に用いられるものであって、カップを保持するホルダ本体10と、このホルダ本体10を一定の姿勢に保持する支持要素11とを具備してなり、支持要素11が、ビーム4の頂点41t、42tより低い部位の外面41a、42aに添設される抜け止め用の当接部である前当接部19a並びに後当接部19bと、前当接部19a並びに後当接部19bをビーム4の外側からビーム4の外面41a、42aへ向けて圧接させることによりホルダ本体10をビーム4に取り付ける圧接力惹起手段たる緊締機構Xとを備えたことを特徴とするものである。
【0023】
また当該カップホルダ1は、図1乃至図3に示すように、本実施形態では椅子2に対して、図5及び図7に示されるホルダ本体10を2つ有してなるダブルタイプ1wのカップホルダ1と、図6に示される単一のホルダ本体10を有してなるシングルタイプ1sのカップホルダ1とが図示されているが、ホルダ本体10の配置以外はどちらも同じ構成を有するため、同じ符号を付してまとめてカップホルダ1の構成として説明する。
【0024】
カップホルダ1は、図5乃至図7に示すように、ホルダ本体10と、上述の通りこのホルダ本体10を一定の姿勢に保持する支持要素11とを有している。
【0025】
ホルダ本体10は、同図に示すように、保持すべきカップよりも概ね浅くなるように形成された椀状のカップ収容部10aと、このカップ収容部10aを支持要素11へ取り付けるための被取付部10bとを有した、例えば合成樹脂による一体成型品である。カップ収容部10aは、カップの出し入れが行い易いよう、上方へ向けて漸次径が大きくなるように形成されるとともに、下端底部に開口を有している。被取付部10bは、同じく使用者がカップの出し入れが行い易いよう、カップ収容部10aが若干前傾姿勢となるように支持要素11に止着させるためのものである。本実施形態では一例として、この被取付部10bを支持要素11に対しねじ止めする態様を開示しているが、勿論ホルダ本体10が支持要素11に対して姿勢を維持した状態で取り付け得る態様であれば、既存の種々の態様を適用し得る。なお、このホルダ本体10には、カップ以外のもの、例えば缶またはペットボトル入りの飲食物等を保持させてもよいのは勿論である。
【0026】
支持要素11は、側面視L字状をなすアーム12と、このアーム12に上方から取り付ける押さえ具13と、押さえ具13とアーム12とを結合させるためのボルト14とを有している。
【0027】
アーム12は、先端部17で前記ホルダ本体10を支持し基端部16を前記ビーム4の下面に添接させる、例えば側面視L字状に形成された断面概略コ字状をなす金属製のチャネル材を主体としたものであり、本実施形態では上側において、ビーム4に取り付けるための突出部15を有している。基端部16は、ビーム4間の前後の距離よりも長い寸法に設定されており、その前後方向の中央部に突出部15を例えば溶接により取り付けるとともに、前端部からは下方、詳細にはやや後方へ向けて下方に先端部17を垂下させるように連続させてなる。先端部17は、上端において基端部16の前端から屈曲するように接続するとともに、下端においては前記ホルダ本体10をネジ止めするためのホルダ取付部17aを一側又は両側に有してなる。ホルダ取付部17aを一側に有したものがシングルタイプ1sに適用される先端部17であり、両側に有したものがダブルタイプ1wに適用される先端部17であることはいうまでもない。そして突出部15は、コの字状に折り曲げられた金属材を主体としてなり、その前後・左右方向中央にはボルト14を挿通させるための挿通孔15aが形成されるとともに、その挿通孔15aの下側には挿通孔15aに連通するように溶接されたナット15nとを有している。
【0028】
押さえ具13は、アーム12の基端部16の上方に配したものであり、ビーム4の上方から取り付ける例えば中実のアルミ等の金属からなるものであり、前ビーム41及び後ビーム42の間に挿入されるに足る長手寸法を有するとともに、例えば15mmの幅寸法を有している。この押さえ具13は、ボルト14を挿通させるためのボルト挿通孔18と、本発明の当接部に該当する前当接部19a並びに後当接部19bとを有している。前の当接部たる前当接部19aは、押さえ具13の前端に配されて前ビーム41の後面に形成された後上向面41cに添設され且つ密着し得るように若干湾曲するように凹ませたものである。また後の当接部たる後当接部19bは、押さえ具13の後端に配されて後ビーム42の前面に形成された前上向面42cに添設され且つ密着し得るように若干湾曲するように凹ませたものである。
【0029】
しかして本実施形態では、特に図6及び図7に示すように、本発明に係る圧接力惹起手段として、前記押さえ具13を前記アーム12の基端部16に緊締する緊締機構Xを備えることにより、支持要素11の当接部を前記両上向面41b、42b、具体的には前ビーム41の後上向面41c、後ビーム42の前上向面42cにそれぞれ圧接させるようにしている。
【0030】
図5及び図7に示すように、この緊締機構Xは、押さえ具13から挿入するボルト14と、突出部15側に設けられたナット15nとによって構成されるものである。まずアーム12をビーム4下方に位置付けておき、押さえ具13の前当接部19aと後当接部19bが、後上向面41cと前上向面42cとに当接且つ密着するようにしている。そして緊締機構X、すなわちボルト14とナット15nとを螺合させていくことにより、ビーム4は基端部16と押さえ具13との間で挟持されるとともに、上下から圧接される。これにより、カップホルダ1はビーム4に対し強固に固定される。
【0031】
そしてこの押さえ具13は、図5に示すように、取り付けた状態においてその最上面13aが、ボルト14の最上面14aとともに、ビーム4の頂点41t、42tすなわち仮想の接線Lよりも下方に位置付けられるように設定されている。これにより、支持要素11は、同図に示すようにビーム4に取り付けた状態において、その全ての構成要素がビーム4に対する仮想の接線L及び頂点41t、42tよりも上方へは突出しないようになっている。このようにしておくことで、図1のように椅子本体3間に所定寸法の隙間のあるものではなく、隙間無く椅子本体3がビーム4に固定されている椅子2に対して当該カップホルダ1を取り付けるときには、上記のように座取付ボルト38を一時的に緩め、椅子本体3をビーム4上でスライドさせながら押さえ具13及びボルト14が上方から挿入され得るに足る隙間を一時的に設けることにより、椅子本体3の最終的な配置に関係無く、所望の位置にカップホルダ1を取り付けることが可能である。
【0032】
以上のような構成とすることにより、本実施形態に係るカップホルダ1は、ビーム4の外面41a、42aに向けて当接部たる前当接部19a、後当接部19bをビーム4の外側から圧接させる圧接力惹起手段たる緊締機構Xを設けることにより、ビーム4や脚5に孔あけ加工等を施すことなく容易に取り付けることができるのみならず、ビーム4より上に支持要素11が突出しないので、椅子本体3に何ら干渉することなく所望の位置に取り付け得るものとなっている。特に本実施形態では、支持要素11がビーム4より上に突出しないことから、カップホルダ1をビーム4に取り付けた状態であっても、椅子本体3をビーム4に沿って所要の位置にスライドさせることも可能である。
【0033】
また、ビーム4から外れ難い状態を維持させるために本実施形態では、ビーム4が前面の上半部分と、後面の上半部分にそれぞれ上向面41b、42bを有したものとして、支持要素11の当接部を前記両上向面41b、42bにそれぞれ圧接させるようにしている。
【0034】
そして、ビーム4に対する姿勢を安定して維持し得るために本実施形態では、前端に前ビーム41の後上向面41cに添設される前当接部19aと後ビーム42の前上向面42cに添設される後当接部19bを押さえ具13に設けている。これにより、ビーム4間のスペースを有効に利用することで、ビーム4に対する取付部分の省スペース化も実現している。
【0035】
また、ビーム4に対して強固に固定するために本実施形態では、圧接力惹起手段として、押さえ具13をアーム12の基端部16方向に緊締する緊締機構Xとしたものとしている。また本実施形態ではボルト14とナット15nとにより緊締機構Xを実現することにより、より強固な取り付けを実現している。
【0036】
そして、使用者に干渉し難い位置にホルダ本体10を位置付けるために本実施形態では、アーム12の基端部16の前端から下方に垂下している先端部17の両側又は一側にホルダ本体10を設けたものとしている。さらに本実施形態では、ホルダ本体10が使用者に干渉し難いように、先端部17の下端に設けたホルダ取付部17aが若干後方に位置付けられるように、先端部17をやや後よりの下方に直線的に延出させている。
<変形例>
以上、本発明の実施形態について説明したが、各部の具体的な構成は、上述した実施形態のみに限定されるものではない。以下に、本実施形態の変形例について複数説明する。これら変形例について、上記実施形態の構成要素に相当する構成要素に対しては同じ符号を付すとともに、その詳細な説明を省略するものとする。
【0037】
図8に示す変形例は、上記実施形態における突出部15を設ける代わりにビーム4を前後から挟むようにして位置決めし得るL字鋼161、162を基端部16に対して例えば溶接等により取り付けたものである。そして突出部15が無い点に応じて、押さえ具13の上下の厚み並びにボルト14の長さ寸法を大きく設定するとともに、基端部16に、ボルト14を挿通させる挿通孔16a並びにナット16nを設けたものである。これにより、L字鋼161、162の内向面163、164がビーム4を前後移動不能に挟み込むため、ビーム4に対するより確実な位置決めを実現している。
【0038】
図9に示す変形例は、上記実施形態における突出部15を取り付ける代わりに、ビーム4の形状に応じて屈曲させた屈曲板150を取り付けたものである。この屈曲板150の内向面151及び外向面152により、前ビーム41及び後ビーム42を前後移動不能に挟み込んでいる。これにより、部品点数の増加を回避しつつ、ビーム4に対する位置決めをより確実なものとしている。
【0039】
図10に示す変形例は、突出部15を設ける代わりに基端部16にビーム4の外面41a、42aの形状に対応させた形状をなす切欠16cを形成したものである。そして上記実施形態に比べて突出部15が無い点に応じて、基端部16に、ボルト14を挿通させる挿通孔16a並びにナット16nを設けている。これにより、ビーム4付近のスペースをより少なく利用することにより、椅子2に対して取り付ける自由度を有効に向上せしめている。加えて、部品点数の削減とビーム4に対する確実な位置決めをも同時に実現している。
【0040】
図11に示す変形例は、ビーム4の下側から後側に亘って位置付けられる突出部153を設けるとともに、前方から突出部153に取り付けられる押さえ具130を採用したものである。そして押さえ具130を前側から取り付けるために、押さえ具130の前方にボルト挿通孔18を設けるともに、突出部153の前面にボルト挿通孔18に連通し得るナット部153nを設けている。そして本変形例においても押さえ具130の最上面13aと突出部153の最上面153aは頂点41t、42tよりも下方に位置付けられるようにしている。また押さえ具130に設けられた前当接部19aは前ビーム41の前上向面41dを圧接するとともに、突出部15に設けられた後当接部19b後ビーム42の後上向面42dを圧接するものとしている。これにより、ビーム4における所望の位置の上に椅子本体3が固定されている場合であっても、押さえ具13を前側からボルト止めすることにより、椅子本体3をスライドさせることも椅子本体3に干渉することもなくカップホルダ1を所望の位置に取り付けることができる。また、本発明に係るカップホルダ1は、緊締機構Xがビーム4を緊締する方向を問わない。
【0041】
図12に示す変形例は、突出部15の代わりにビーム4に前後から外嵌する外嵌部154を設けるとともに、カップホルダ1を取り付ける際、この外嵌部154の前後端を、ビーム4をくわえ込むように経過的に弾性変形をしつつ、取付状態では常に前ビーム41の前上向面41d及び後ビーム42の後上向面42dを弾性により押圧している弾性押圧部Yとしたものである。これにより、カップホルダ1の取り付けにはボルト、ねじ等の格別な部材を必要とせず、部品点数の削減に資する。またすなわち本発明に係る圧接力惹起手段とは、ねじ止め等による上記緊締機構Xに限られるものではない。
【0042】
図13に示す変形例は、断面視円形状を成す丸パイプからなるものではなく、断面視概略菱形を成した角ビーム40を適用した椅子2に対して適用すべく構成されたものである。すなわち押さえ具13の前後端に設けた前当接部19a及び後当接部19bの形状を角ビーム40の後上向面41c及び前上向面42cの形状に適用させるべく、略平面状としたものである。すなわち本発明に係るカップホルダ1は、断面視円形状のビーム4でなくとも、頂点41t、42tよりも下の位置の外面41a、42aに上向面41b、42bを有する形状を有するものであれば好適に適用し得る。
【0043】
図14に示す変形例は、図示のように単一のビーム43に椅子本体3を支持させる態様の椅子2に適用し得る、或いは、複数有るビーム4のうち何れか一のビーム4に対して取り付け得る態様のものである。すなわち、基端部16に、一本のビーム43の外面43a、43aの形状に対応させた外嵌部155を取り付けるとともに、この外嵌部155の内面側には外嵌部155がビーム43に対して回転するのを防ぐ、例えばウレタン等からなる回り止めシート156を貼付してある。そしてこの回り止めシート156の前後における上端部分が前当接部19a及び後当接部19bとなる。そしてこの外嵌部155の前後端は、ビーム4をくわえ込むように経過的に弾性変形をしつつ、取付状態では常に前当接部19a及び後当接部19bがビーム43の前上向面43e及び後上向面43fを弾性により押圧するようにしている弾性押圧部Yとしたものである。すなわち本発明に係るカップホルダ1を取り付け得る椅子2は、複数のビーム4を有する態様に限られない。
【0044】
そして図15に示す変形例は、突出部15の代わりにビーム4に下方から密着する湾曲面157cを例えば金属板を切り欠くことにより設けた湾曲突出部157を設けたものとしている。このように、湾曲面157cがビーム4の外面41a、42aに下方から密着することにより、ビーム4に対する位置決めをより正確になし得るものとなっている。
【0045】
以上、本発明の実施形態について説明したが、各部の具体的な構成は、上述した実施形態のみに限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で種々変形が可能である。
【0046】
例えば、上記実施形態では弾性押圧部は、1又は複数のビームを挟持する態様のみを開示したが、勿論、複数のビーム間に挟まれることでビームを圧接し得るものとしてもよい。そして上記実施形態では壁面に取り付けられる所謂蹴り上げ型の椅子に適用したが勿論、床面から立ち上がる態様をなす脚を有する椅子であっても、ビームが架け渡されている態様の椅子であれば好適に適用し得る。また、上記実施形態ではホルダ本体を先端部の側方に取り付けた態様のみを開示したが勿論、先端部の前方や下方にホルダ本体を配したものであってもよい。また上記実施形態では押さえ具が一つのみのものを開示したが、勿論押さえ具を複数備えたものであってもよい。その他、ホルダ本体やアーム等の具体的な態様は上記実施形態のものに限定されることはなく、既存のものを含め、種々の態様のものを適用することができる。
【0047】
その他、各部の具体的構成についても上記実施形態に限られるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で種々変形が可能である。
【産業上の利用可能性】
【0048】
本発明は椅子に取り付けて用いるカップホルダとして利用することができる。
【符号の説明】
【0049】
1…カップホルダ
10…ホルダ本体
11…支持要素
12…アーム
13、130…押さえ具
16…基端部
17…先端部
19a…当接部(前当接部)
19b…当接部(後当接部)
2…椅子
3…椅子本体
4…ビーム
40…ビーム(角ビーム)
41a、42a…外面
41b、42b…上向面
41t、42t…頂点
X…圧接力惹起手段(緊締機構)
Y…圧接力惹起手段(弾性押圧部)
【技術分野】
【0001】
本発明は、スタジアム等に設置される椅子に好適に使用することができるカップホルダに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、スタジアム等に設置される椅子として、所要の間隔を空けて配置された複数の脚と、これら脚間に設けられた座、又は座及び背凭れとを具備してなるものが知られている(例えば、特許文献1を参照)。
【0003】
またこの種の観覧席について広範に適用されている態様としては、例えば支持体にビームを架け渡し、そのビームに座、又は座及び背凭れを載せ置き、これを固定するという態様も多く用いられている(例えば、特許文献2参照)。
【0004】
ところで、上記特許文献2に記載されているような態様の椅子においては、上記特許文献1のように、各着座者がそれぞれ利用することができるカップホルダを増設したいという要望がある。ところが、既に設置されている椅子にカップホルダを後発的に取り付けるのには制約が多い。例えば、背凭れの背面に後列の着座者が利用するためのカップホルダを取り付けると、前後の椅子間に形成されている通路の幅が狭くなるという不具合が生じる。また、脚等にボルト孔を穿設してカップホルダを取り付けると、取付作業に多大な工数を要するという問題が発生する。また、椅子自体の構成要素になんら干渉させずにカップホルダを取り付けようとしても、当該構成要素に干渉しないような位置にしか設ける事ができないというのが現状である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平8−266352号公報
【特許文献2】特開2001−008771号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、このような不具合に着目したものであり、既存の広範な観覧席用の椅子に対し所望の位置に取り付けることができ、好適に使用し得るカップホルダを提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、このような目的を達成するために、次のような手段を講じたものである。すなわち本発明に係るカップホルダは、ビームに複数の椅子本体を隣接させて取り付けた椅子に用いられるカップホルダであって、カップを保持するホルダ本体と、このホルダ本体を一定の姿勢に保持する支持要素とを具備してなり、前記支持要素が、前記ビームの頂点より低い部位の外面に添設される抜け止め用の当接部と、前記当接部を前記ビームの外側から前記ビームの外面に圧接させることにより前記ホルダ本体を前記ビームに取り付ける圧接力惹起手段とを備えたものであることを特徴とする。
【0008】
このようなものであれば、ビームより上に支持要素が突出しないので、取付箇所の自由度を高めることができるとともに、圧接力惹起手段がビーム自体の内側では無くビームの外側からビームの外面に向けて当接部が圧接するようにしているのでビームの内側を利用すべくビームに孔あけ加工等を施すことなく容易に取り付けることができる。その結果、ビームよりも上にある椅子の他の構成要素に干渉することなく所望の位置に取り付けることができるカップホルダを提供できる。
【0009】
ここで、当接部は勿論ビームより上に突出しないものであればビームに形成された起立面を挟持するように当接する態様をも含むものである。そしてさらに、ビームから外れ難い状態を有効に維持し得るためには、ビームとして前面の上半部分と、後面の上半部分にそれぞれ上向面を有したものを適用し、前記支持要素の当接部を前記両上向面にそれぞれ圧接させるようにしている態様とすることが望ましい。
【0010】
そして、ビームに対する姿勢を安定して維持し得るためには、ビームが前後に対をなすものであり、支持要素が、前端に前側の前記ビームの後面に形成された上向面に添設される前の当接部を有するとともに後端に後側の前記ビームの前面に形成された上向面に添設される後の当接部を有してなる押さえ具を具備したものであることが望ましい。
【0011】
また、ビームに対して強固に固定するためには、支持要素を、先端部で前記ホルダ本体を支持し基端部を前記ビームの下面に添接させたアームと、このアームの基端部の上方に配した押さえ具とを備えたものであり、圧接力惹起手段を押さえ具をアームに緊締する緊締機構としたものが好ましい。
【0012】
そして、使用者に干渉し難い位置にホルダ本体を位置付けるためには、支持要素が、隣接する椅子本体の境界部分に取り付けられる基端部と、この基端部の前端側から下方に垂下する先端部とを備えたものであり、その先端部の両側又は一側にホルダ本体を設けたものとすることが望ましい。
【発明の効果】
【0013】
本発明は、以上のような構成であるから、取付箇所の自由度を高めることができるとともに、脚に孔あけ加工等を施すことなく容易に取り付けることのできるカップホルダを提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明の一実施形態に係る椅子及びカップホルダの正面図。
【図2】同実施形態の椅子及びカップホルダの平面図。
【図3】図1に係る一部を省略して示すA−A線断面図。
【図4】図1に係る一部を省略して示すB−B線断面図。
【図5】図1に係る一部を省略して示すC−C線断面図。
【図6】同実施形態に係る要部を示す外観図。
【図7】同実施形態のカップホルダの取り付け前の状態を示す分解斜視図。
【図8】同実施形態の変形例に係る図5に対応した説明図。
【図9】同上。
【図10】同上。
【図11】同上。
【図12】同上。
【図13】同上。
【図14】同上。
【図15】同上。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明の一実施の形態について図面を参照して説明する。
【0016】
この実施形態における椅子2は、スタジアム等に設置されるもので、複数の脚5と、これら脚5間に架設されたビーム4と、ビーム4上に隣接させて設けた複数の椅子本体3とを具備してなる。
【0017】
脚5は、図1乃至図3に示すように、起立面から方持ち的に突出させた所謂蹴り上げ型のものである。この脚5は、特に図3に示すように、アルミダイキャスト製の脚本体50を主体としてなり、起立面である壁面Wに壁面ボルト58を介して取り付けられる脚本体50の基端側に形成された壁面取付部51と、脚本体50の先端側に形成されたビーム受け部52と、このビーム受け部52にビーム4を挟んだ状態で取り付けられるビーム押さえ具53とを有している。脚本体50は、例えばその縁にそれぞれ、その板厚よりも幅の広いフランジを有した形状としている。ビーム受け部52は、ビーム4の外面41a、42aの形状に応じて凹ませて前後に形成したビーム支持面54と、これらビーム支持面54の間においてビーム用ボルト59と螺合することによりビーム押さえ具53を固定するための雌ねじ部55とを有している。ビーム押さえ具53は、ビーム4の上向面41b、42bの形状に合致させるように形成した前後に対をなすビーム押さえ面56と、これらビーム押さえ面56間においてビーム用ボルト59を挿通させるためのボルト穴57とを有している。
【0018】
ビーム4は、図1乃至図7に示すように、前後に対を成す丸パイプを主体としたものであり、前後に所定寸法離間させて互いに平行に設けられた前ビーム41と、後ビーム42とを有している。本実施形態において、これら前ビーム41、後ビーム42の外面41a、42aのうち上半分の表面を上向面41b、42bとするとともに、互いに向かい合う前ビーム41の後側の上向面41bを後上向面41c、後ビーム42の前側の上向面42bを前上向面42cとしている。そして本実施形態では、これら前ビーム41、後ビーム42にともに上側から接する仮想の接線Lが当接する位置を頂点41t、42tとしている。
【0019】
椅子本体3は、図1乃至図6に示すように、座31と、背凭れ32と、これら座31及び背凭れ32をビーム4に固定するブラケット33とを具備してなるもので、これら座31と背凭れ32とはブロー成形等により一体に形成されたものを主体としている。また椅子本体3は、これらブラケット33を緊締することにより前記ビーム4を挟圧し前記座31をビーム4に固定する緊締具としての座取付ボルト38を有している。そして特に図4に示すように、座31は、上面側において着座面を形成する座本体34と、下面側において上ブラケット36を取り付けるためのブラケット取付部35とを有している。ブラケット33は、座31の下面に取り付けられビーム4の上面に載置される左右対をなす上ブラケット36と、前記ビーム4の下方に位置させてこれら上ブラケット36の下に配された下ブラケット37とを備えている。上ブラケット36は、ビーム4の上向面41b、42bに沿った形状をなすことにより前後に位置決めし且つ側方にスライドし得るように形成された位置決め面36aと、下側から挿入される座取付ボルト38に螺合し得る座取付ナット36bとを有している。下ブラケット37は、ビーム4の外面41a、42aに下側から密着或いは略密着し得るように形成された固定面37aと、座取付ボルト38を挿通させるためのボルト孔37bとを有している。
【0020】
そしてこの椅子本体3は、このように構成されることで、座取付ボルト38を緩めることにより椅子本体3をビーム4の長手方向に沿って容易にスライド移動させることができるようになっている。
【0021】
以上のようにしてなる椅子2に、本実施形態に係るカップホルダ1を取り付けている。
【0022】
ここで、本実施形態に係るカップホルダ1は、ビーム4に複数の椅子本体3を隣接させて取り付けた椅子2に用いられるものであって、カップを保持するホルダ本体10と、このホルダ本体10を一定の姿勢に保持する支持要素11とを具備してなり、支持要素11が、ビーム4の頂点41t、42tより低い部位の外面41a、42aに添設される抜け止め用の当接部である前当接部19a並びに後当接部19bと、前当接部19a並びに後当接部19bをビーム4の外側からビーム4の外面41a、42aへ向けて圧接させることによりホルダ本体10をビーム4に取り付ける圧接力惹起手段たる緊締機構Xとを備えたことを特徴とするものである。
【0023】
また当該カップホルダ1は、図1乃至図3に示すように、本実施形態では椅子2に対して、図5及び図7に示されるホルダ本体10を2つ有してなるダブルタイプ1wのカップホルダ1と、図6に示される単一のホルダ本体10を有してなるシングルタイプ1sのカップホルダ1とが図示されているが、ホルダ本体10の配置以外はどちらも同じ構成を有するため、同じ符号を付してまとめてカップホルダ1の構成として説明する。
【0024】
カップホルダ1は、図5乃至図7に示すように、ホルダ本体10と、上述の通りこのホルダ本体10を一定の姿勢に保持する支持要素11とを有している。
【0025】
ホルダ本体10は、同図に示すように、保持すべきカップよりも概ね浅くなるように形成された椀状のカップ収容部10aと、このカップ収容部10aを支持要素11へ取り付けるための被取付部10bとを有した、例えば合成樹脂による一体成型品である。カップ収容部10aは、カップの出し入れが行い易いよう、上方へ向けて漸次径が大きくなるように形成されるとともに、下端底部に開口を有している。被取付部10bは、同じく使用者がカップの出し入れが行い易いよう、カップ収容部10aが若干前傾姿勢となるように支持要素11に止着させるためのものである。本実施形態では一例として、この被取付部10bを支持要素11に対しねじ止めする態様を開示しているが、勿論ホルダ本体10が支持要素11に対して姿勢を維持した状態で取り付け得る態様であれば、既存の種々の態様を適用し得る。なお、このホルダ本体10には、カップ以外のもの、例えば缶またはペットボトル入りの飲食物等を保持させてもよいのは勿論である。
【0026】
支持要素11は、側面視L字状をなすアーム12と、このアーム12に上方から取り付ける押さえ具13と、押さえ具13とアーム12とを結合させるためのボルト14とを有している。
【0027】
アーム12は、先端部17で前記ホルダ本体10を支持し基端部16を前記ビーム4の下面に添接させる、例えば側面視L字状に形成された断面概略コ字状をなす金属製のチャネル材を主体としたものであり、本実施形態では上側において、ビーム4に取り付けるための突出部15を有している。基端部16は、ビーム4間の前後の距離よりも長い寸法に設定されており、その前後方向の中央部に突出部15を例えば溶接により取り付けるとともに、前端部からは下方、詳細にはやや後方へ向けて下方に先端部17を垂下させるように連続させてなる。先端部17は、上端において基端部16の前端から屈曲するように接続するとともに、下端においては前記ホルダ本体10をネジ止めするためのホルダ取付部17aを一側又は両側に有してなる。ホルダ取付部17aを一側に有したものがシングルタイプ1sに適用される先端部17であり、両側に有したものがダブルタイプ1wに適用される先端部17であることはいうまでもない。そして突出部15は、コの字状に折り曲げられた金属材を主体としてなり、その前後・左右方向中央にはボルト14を挿通させるための挿通孔15aが形成されるとともに、その挿通孔15aの下側には挿通孔15aに連通するように溶接されたナット15nとを有している。
【0028】
押さえ具13は、アーム12の基端部16の上方に配したものであり、ビーム4の上方から取り付ける例えば中実のアルミ等の金属からなるものであり、前ビーム41及び後ビーム42の間に挿入されるに足る長手寸法を有するとともに、例えば15mmの幅寸法を有している。この押さえ具13は、ボルト14を挿通させるためのボルト挿通孔18と、本発明の当接部に該当する前当接部19a並びに後当接部19bとを有している。前の当接部たる前当接部19aは、押さえ具13の前端に配されて前ビーム41の後面に形成された後上向面41cに添設され且つ密着し得るように若干湾曲するように凹ませたものである。また後の当接部たる後当接部19bは、押さえ具13の後端に配されて後ビーム42の前面に形成された前上向面42cに添設され且つ密着し得るように若干湾曲するように凹ませたものである。
【0029】
しかして本実施形態では、特に図6及び図7に示すように、本発明に係る圧接力惹起手段として、前記押さえ具13を前記アーム12の基端部16に緊締する緊締機構Xを備えることにより、支持要素11の当接部を前記両上向面41b、42b、具体的には前ビーム41の後上向面41c、後ビーム42の前上向面42cにそれぞれ圧接させるようにしている。
【0030】
図5及び図7に示すように、この緊締機構Xは、押さえ具13から挿入するボルト14と、突出部15側に設けられたナット15nとによって構成されるものである。まずアーム12をビーム4下方に位置付けておき、押さえ具13の前当接部19aと後当接部19bが、後上向面41cと前上向面42cとに当接且つ密着するようにしている。そして緊締機構X、すなわちボルト14とナット15nとを螺合させていくことにより、ビーム4は基端部16と押さえ具13との間で挟持されるとともに、上下から圧接される。これにより、カップホルダ1はビーム4に対し強固に固定される。
【0031】
そしてこの押さえ具13は、図5に示すように、取り付けた状態においてその最上面13aが、ボルト14の最上面14aとともに、ビーム4の頂点41t、42tすなわち仮想の接線Lよりも下方に位置付けられるように設定されている。これにより、支持要素11は、同図に示すようにビーム4に取り付けた状態において、その全ての構成要素がビーム4に対する仮想の接線L及び頂点41t、42tよりも上方へは突出しないようになっている。このようにしておくことで、図1のように椅子本体3間に所定寸法の隙間のあるものではなく、隙間無く椅子本体3がビーム4に固定されている椅子2に対して当該カップホルダ1を取り付けるときには、上記のように座取付ボルト38を一時的に緩め、椅子本体3をビーム4上でスライドさせながら押さえ具13及びボルト14が上方から挿入され得るに足る隙間を一時的に設けることにより、椅子本体3の最終的な配置に関係無く、所望の位置にカップホルダ1を取り付けることが可能である。
【0032】
以上のような構成とすることにより、本実施形態に係るカップホルダ1は、ビーム4の外面41a、42aに向けて当接部たる前当接部19a、後当接部19bをビーム4の外側から圧接させる圧接力惹起手段たる緊締機構Xを設けることにより、ビーム4や脚5に孔あけ加工等を施すことなく容易に取り付けることができるのみならず、ビーム4より上に支持要素11が突出しないので、椅子本体3に何ら干渉することなく所望の位置に取り付け得るものとなっている。特に本実施形態では、支持要素11がビーム4より上に突出しないことから、カップホルダ1をビーム4に取り付けた状態であっても、椅子本体3をビーム4に沿って所要の位置にスライドさせることも可能である。
【0033】
また、ビーム4から外れ難い状態を維持させるために本実施形態では、ビーム4が前面の上半部分と、後面の上半部分にそれぞれ上向面41b、42bを有したものとして、支持要素11の当接部を前記両上向面41b、42bにそれぞれ圧接させるようにしている。
【0034】
そして、ビーム4に対する姿勢を安定して維持し得るために本実施形態では、前端に前ビーム41の後上向面41cに添設される前当接部19aと後ビーム42の前上向面42cに添設される後当接部19bを押さえ具13に設けている。これにより、ビーム4間のスペースを有効に利用することで、ビーム4に対する取付部分の省スペース化も実現している。
【0035】
また、ビーム4に対して強固に固定するために本実施形態では、圧接力惹起手段として、押さえ具13をアーム12の基端部16方向に緊締する緊締機構Xとしたものとしている。また本実施形態ではボルト14とナット15nとにより緊締機構Xを実現することにより、より強固な取り付けを実現している。
【0036】
そして、使用者に干渉し難い位置にホルダ本体10を位置付けるために本実施形態では、アーム12の基端部16の前端から下方に垂下している先端部17の両側又は一側にホルダ本体10を設けたものとしている。さらに本実施形態では、ホルダ本体10が使用者に干渉し難いように、先端部17の下端に設けたホルダ取付部17aが若干後方に位置付けられるように、先端部17をやや後よりの下方に直線的に延出させている。
<変形例>
以上、本発明の実施形態について説明したが、各部の具体的な構成は、上述した実施形態のみに限定されるものではない。以下に、本実施形態の変形例について複数説明する。これら変形例について、上記実施形態の構成要素に相当する構成要素に対しては同じ符号を付すとともに、その詳細な説明を省略するものとする。
【0037】
図8に示す変形例は、上記実施形態における突出部15を設ける代わりにビーム4を前後から挟むようにして位置決めし得るL字鋼161、162を基端部16に対して例えば溶接等により取り付けたものである。そして突出部15が無い点に応じて、押さえ具13の上下の厚み並びにボルト14の長さ寸法を大きく設定するとともに、基端部16に、ボルト14を挿通させる挿通孔16a並びにナット16nを設けたものである。これにより、L字鋼161、162の内向面163、164がビーム4を前後移動不能に挟み込むため、ビーム4に対するより確実な位置決めを実現している。
【0038】
図9に示す変形例は、上記実施形態における突出部15を取り付ける代わりに、ビーム4の形状に応じて屈曲させた屈曲板150を取り付けたものである。この屈曲板150の内向面151及び外向面152により、前ビーム41及び後ビーム42を前後移動不能に挟み込んでいる。これにより、部品点数の増加を回避しつつ、ビーム4に対する位置決めをより確実なものとしている。
【0039】
図10に示す変形例は、突出部15を設ける代わりに基端部16にビーム4の外面41a、42aの形状に対応させた形状をなす切欠16cを形成したものである。そして上記実施形態に比べて突出部15が無い点に応じて、基端部16に、ボルト14を挿通させる挿通孔16a並びにナット16nを設けている。これにより、ビーム4付近のスペースをより少なく利用することにより、椅子2に対して取り付ける自由度を有効に向上せしめている。加えて、部品点数の削減とビーム4に対する確実な位置決めをも同時に実現している。
【0040】
図11に示す変形例は、ビーム4の下側から後側に亘って位置付けられる突出部153を設けるとともに、前方から突出部153に取り付けられる押さえ具130を採用したものである。そして押さえ具130を前側から取り付けるために、押さえ具130の前方にボルト挿通孔18を設けるともに、突出部153の前面にボルト挿通孔18に連通し得るナット部153nを設けている。そして本変形例においても押さえ具130の最上面13aと突出部153の最上面153aは頂点41t、42tよりも下方に位置付けられるようにしている。また押さえ具130に設けられた前当接部19aは前ビーム41の前上向面41dを圧接するとともに、突出部15に設けられた後当接部19b後ビーム42の後上向面42dを圧接するものとしている。これにより、ビーム4における所望の位置の上に椅子本体3が固定されている場合であっても、押さえ具13を前側からボルト止めすることにより、椅子本体3をスライドさせることも椅子本体3に干渉することもなくカップホルダ1を所望の位置に取り付けることができる。また、本発明に係るカップホルダ1は、緊締機構Xがビーム4を緊締する方向を問わない。
【0041】
図12に示す変形例は、突出部15の代わりにビーム4に前後から外嵌する外嵌部154を設けるとともに、カップホルダ1を取り付ける際、この外嵌部154の前後端を、ビーム4をくわえ込むように経過的に弾性変形をしつつ、取付状態では常に前ビーム41の前上向面41d及び後ビーム42の後上向面42dを弾性により押圧している弾性押圧部Yとしたものである。これにより、カップホルダ1の取り付けにはボルト、ねじ等の格別な部材を必要とせず、部品点数の削減に資する。またすなわち本発明に係る圧接力惹起手段とは、ねじ止め等による上記緊締機構Xに限られるものではない。
【0042】
図13に示す変形例は、断面視円形状を成す丸パイプからなるものではなく、断面視概略菱形を成した角ビーム40を適用した椅子2に対して適用すべく構成されたものである。すなわち押さえ具13の前後端に設けた前当接部19a及び後当接部19bの形状を角ビーム40の後上向面41c及び前上向面42cの形状に適用させるべく、略平面状としたものである。すなわち本発明に係るカップホルダ1は、断面視円形状のビーム4でなくとも、頂点41t、42tよりも下の位置の外面41a、42aに上向面41b、42bを有する形状を有するものであれば好適に適用し得る。
【0043】
図14に示す変形例は、図示のように単一のビーム43に椅子本体3を支持させる態様の椅子2に適用し得る、或いは、複数有るビーム4のうち何れか一のビーム4に対して取り付け得る態様のものである。すなわち、基端部16に、一本のビーム43の外面43a、43aの形状に対応させた外嵌部155を取り付けるとともに、この外嵌部155の内面側には外嵌部155がビーム43に対して回転するのを防ぐ、例えばウレタン等からなる回り止めシート156を貼付してある。そしてこの回り止めシート156の前後における上端部分が前当接部19a及び後当接部19bとなる。そしてこの外嵌部155の前後端は、ビーム4をくわえ込むように経過的に弾性変形をしつつ、取付状態では常に前当接部19a及び後当接部19bがビーム43の前上向面43e及び後上向面43fを弾性により押圧するようにしている弾性押圧部Yとしたものである。すなわち本発明に係るカップホルダ1を取り付け得る椅子2は、複数のビーム4を有する態様に限られない。
【0044】
そして図15に示す変形例は、突出部15の代わりにビーム4に下方から密着する湾曲面157cを例えば金属板を切り欠くことにより設けた湾曲突出部157を設けたものとしている。このように、湾曲面157cがビーム4の外面41a、42aに下方から密着することにより、ビーム4に対する位置決めをより正確になし得るものとなっている。
【0045】
以上、本発明の実施形態について説明したが、各部の具体的な構成は、上述した実施形態のみに限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で種々変形が可能である。
【0046】
例えば、上記実施形態では弾性押圧部は、1又は複数のビームを挟持する態様のみを開示したが、勿論、複数のビーム間に挟まれることでビームを圧接し得るものとしてもよい。そして上記実施形態では壁面に取り付けられる所謂蹴り上げ型の椅子に適用したが勿論、床面から立ち上がる態様をなす脚を有する椅子であっても、ビームが架け渡されている態様の椅子であれば好適に適用し得る。また、上記実施形態ではホルダ本体を先端部の側方に取り付けた態様のみを開示したが勿論、先端部の前方や下方にホルダ本体を配したものであってもよい。また上記実施形態では押さえ具が一つのみのものを開示したが、勿論押さえ具を複数備えたものであってもよい。その他、ホルダ本体やアーム等の具体的な態様は上記実施形態のものに限定されることはなく、既存のものを含め、種々の態様のものを適用することができる。
【0047】
その他、各部の具体的構成についても上記実施形態に限られるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で種々変形が可能である。
【産業上の利用可能性】
【0048】
本発明は椅子に取り付けて用いるカップホルダとして利用することができる。
【符号の説明】
【0049】
1…カップホルダ
10…ホルダ本体
11…支持要素
12…アーム
13、130…押さえ具
16…基端部
17…先端部
19a…当接部(前当接部)
19b…当接部(後当接部)
2…椅子
3…椅子本体
4…ビーム
40…ビーム(角ビーム)
41a、42a…外面
41b、42b…上向面
41t、42t…頂点
X…圧接力惹起手段(緊締機構)
Y…圧接力惹起手段(弾性押圧部)
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ビームに複数の椅子本体を隣接させて取り付けた椅子に用いられるカップホルダであって、
カップを保持するホルダ本体と、
このホルダ本体を一定の姿勢に保持する支持要素とを具備してなり、
前記支持要素が、前記ビームの頂点より低い部位の外面に添設される抜け止め用の当接部と、前記当接部を前記ビームの外側から前記ビームの外面に圧接させることにより前記ホルダ本体を前記ビームに取り付ける圧接力惹起手段とを備えたものであることを特徴とするカップホルダ。
【請求項2】
ビームが前面の上半部分と、後面の上半部分にそれぞれ上向面を有したしたものであり、
前記支持要素の当接部を前記両上向面にそれぞれ圧接させるようにしている請求項1記載のカップホルダ。
【請求項3】
前記ビームが前後に対をなすものであり、前記支持要素が、前端に前側の前記ビームの後面に形成された上向面に添設される前の当接部を有するとともに後端に後側の前記ビームの前面に形成された上向面に添設される後の当接部を有してなる押さえ具を具備したものである請求項2記載のカップホルダ。
【請求項4】
前記支持要素が、先端部で前記ホルダ本体を支持し基端部を前記ビームの下面に添接させたアームと、このアームの基端部の上方に配した前記押さえ具とを備えたものであり、前記圧接力惹起手段が、前記押さえ具を前記アームに緊締する緊締機構である請求項3記載のカップホルダ。
【請求項5】
前記支持要素が、隣接する椅子本体の境界部分に取り付けられる基端部と、この基端部の前端側から下方に垂下する先端部とを備えたものであり、その先端部の両側又は一側に前記ホルダ本体を設けている請求項1、2、3又は4記載のカップホルダ。
【請求項1】
ビームに複数の椅子本体を隣接させて取り付けた椅子に用いられるカップホルダであって、
カップを保持するホルダ本体と、
このホルダ本体を一定の姿勢に保持する支持要素とを具備してなり、
前記支持要素が、前記ビームの頂点より低い部位の外面に添設される抜け止め用の当接部と、前記当接部を前記ビームの外側から前記ビームの外面に圧接させることにより前記ホルダ本体を前記ビームに取り付ける圧接力惹起手段とを備えたものであることを特徴とするカップホルダ。
【請求項2】
ビームが前面の上半部分と、後面の上半部分にそれぞれ上向面を有したしたものであり、
前記支持要素の当接部を前記両上向面にそれぞれ圧接させるようにしている請求項1記載のカップホルダ。
【請求項3】
前記ビームが前後に対をなすものであり、前記支持要素が、前端に前側の前記ビームの後面に形成された上向面に添設される前の当接部を有するとともに後端に後側の前記ビームの前面に形成された上向面に添設される後の当接部を有してなる押さえ具を具備したものである請求項2記載のカップホルダ。
【請求項4】
前記支持要素が、先端部で前記ホルダ本体を支持し基端部を前記ビームの下面に添接させたアームと、このアームの基端部の上方に配した前記押さえ具とを備えたものであり、前記圧接力惹起手段が、前記押さえ具を前記アームに緊締する緊締機構である請求項3記載のカップホルダ。
【請求項5】
前記支持要素が、隣接する椅子本体の境界部分に取り付けられる基端部と、この基端部の前端側から下方に垂下する先端部とを備えたものであり、その先端部の両側又は一側に前記ホルダ本体を設けている請求項1、2、3又は4記載のカップホルダ。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図2】
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【図10】
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【図14】
【図15】
【公開番号】特開2012−239604(P2012−239604A)
【公開日】平成24年12月10日(2012.12.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−111843(P2011−111843)
【出願日】平成23年5月18日(2011.5.18)
【出願人】(000001351)コクヨ株式会社 (961)
【公開日】平成24年12月10日(2012.12.10)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年5月18日(2011.5.18)
【出願人】(000001351)コクヨ株式会社 (961)
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