説明

カバー式内視鏡

【目的】 内視鏡カバーとカバー用内視鏡の気密をすると共に、内視鏡カバーの手元支持体が検査中に支障をきたすような移動を防止する。
【構成】 口体部11のシール部12の傍らには、固定部15が延出しており、固定用溝16が設けられている。操作部6には、固定用溝16にはまるような位置にピン17が設けられている。ピン17は偏平な形をしており、実線から破線へと回転操作できる。固定用溝16には、複数の孔部18が形成され、孔部18においてピン17は回転できる。カバー挿着時、口体部11を操作部6の一部にのり上げたところでピン17が固定用溝16にはまるようにする。固定用溝16のいずれかの孔部18においてピン17を回転させる。固定部15の孔部18がピン17に対して前後にも回転方向にも動けないように固定される。

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、カバー用内視鏡に内視鏡カバーを装着して内視鏡検査を行うカバー式内視鏡に関する。
【0002】
【従来の技術】従来、人体内の観察等に用いられる内視鏡は、体腔内への挿入部に体液等が付着するのを防止するために、挿入部に保護チューブを被せて用いられるものが知られている。内視鏡の使用後は保護チューブが取り外され、新たな保護チューブと交換される。したがって挿入部が汚染されるのを防止することができ、それらを洗滌する必要がなく洗滌の手間が省ける。
【0003】具体的にはたとえばUSP4,809,678の図2にあるように観察光学系の前面に透明部を設けたカバーで挿入部全体を覆うようにしたものがある。これの挿入部カバーと内視鏡挿入部との固定は、カバー手元側に設けた弾性端の摩擦力がより行なわれていた。
【0004】USP4,809,678の図3のように内視鏡先端に交換可能な先端部カバーを設け、先端部カバーの手元側周囲を先端が開口した挿入部カバーの弾性端の摩擦力により固定したものもある。これの先端部カバーと内視鏡先端との固定方法に関する詳細は記載されていない。
【0005】これとは別に、例えば特開平4−357920号公報においては、カバー手元支持体のパッキンによってカバーと内視鏡の気密を保つ方法が示されている。
【0006】また、特開平6−38920号公報においては、カバー手元支持体とシースとの間に折れ止めを設けたものが示されている。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】しかしながら、従来例である特開平6−38920号公報では、カバー手元支持体とカバー用内視鏡との移動規制手段がなく、検査中にカバー手元支持体がカバー用内視鏡に対して移動してしまい、所望の内視鏡操作ができなくなる可能性がある。
【0008】本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであり、内視鏡カバーとカバー用内視鏡の気密をすると共に、内視鏡カバーの手元支持体が検査中に支障をきたすような移動をすることのないカバー式内視鏡を提供することを目的としている。
【0009】
【課題を解決するための手段】本発明のカバー式内視鏡は、挿入部と操作部からなるカバー用内視鏡と、前記挿入部を覆う挿入部カバーと、前記挿入部カバーの手元側に前記挿入部カバーを前記操作部に固定する口体部とからなる内視鏡カバーとを具備したカバー式内視鏡において、前記口体部の一部に前記操作部との間で前記挿入部カバー内の気密を確保する気密保持手段と、前記口体部の一部で前記気密保持手段の手元側に前記操作部に対する前記口体部の移動を規制する移動規制手段とを設けて構成される
【0010】
【作 用】本発明のカバー式内視鏡では、前記気密保持手段により前記操作部との間で前記挿入部カバー内の気密を確保すると共に、前記移動規制手段により前記口体部の一部で前記気密保持手段の手元側に前記操作部に対する前記口体部の移動を規制することで、内視鏡カバーとカバー用内視鏡の気密をすると共に、内視鏡カバーの手元支持体が検査中に支障をきたすような移動を防止することを可能とする。
【0011】
【実施例】以下、図面を参照しながら本発明の実施例について述べる。
【0012】図1ないし図3は本発明の第1実施例に係わり、図1はカバー式内視鏡の構成を示す構成図、図2は図1のA−A線断面を示す断面図、図3は図1の矢視Bから見た矢視図である。
【0013】図1に示す第1実施例のカバー式内視鏡1は、電子内視鏡で構成された内視鏡カバー用内視鏡(以下、カバー用内視鏡と略す)2と、このカバー用内視鏡2が装着されるチャンネル付き内視鏡カバー(以下、内視鏡カバーと略す)3とで構成される。
【0014】カバー用内視鏡2は、可撓性の挿入部4と、この挿入部4の後端に折れ止め5を介して設けた操作部6と、この操作部6から延出し図示しない信号処理装置や光源装置及び送気送水装置に接続されるユニバーサルケーブル7とから構成される。カバー用内視鏡2の先端部には図示しない先端構成部が設けられている。
【0015】カバー用内視鏡2に装着された汚染防止用の内視鏡カバー3は、カバー用内視鏡2の挿入部4を覆うシース8と、折れ止め5を覆うゴムなどの柔軟な樹脂がある折れ止めカバー9と、操作部6及びユニバーサルケーブル7を覆う操作部カバー10と、折れ止めカバー9と操作部カバー10の間に操作部6の一部に固定する口体部(支持部)11とからなっている。これら内視鏡カバー3の各部は全て、内視鏡検査に使用される前に予め滅菌されているものが使用され、内視鏡検査に使用した後は廃棄される。
【0016】シース8は、図示していないが、挿入部5の先端部まで気密的に覆っている。シース8と折れ止めカバー9、折れ止めカバー9と口体部11は気密的に結合されている。口体部11の一部にはシール部12(気密保持手段)が設けてあり、口体部11と操作部7の気密が保てるようになっている。一方、操作部7でシール部12よりも前方には送気管路13が設けられていて、この送気管路13によりユニバーサルケーブル7を介し送気送水装置(図示せず)から送気して、シース8及び折れ止めカバー9内を加圧でき、シース8の気密チェックが行える。
【0017】図1のA−A線断面である図2に示すように、送気管路13の開口部上の口体部11の内壁の一部には、送気用溝14が設けられ、送気が速やかにできるようにしている。
【0018】図1の上方すなわち矢印Bから見た矢視図である図3に示すように、口体部11のシール部12の傍らには、固定部15(移動規制手段)が延出している。固定部15には、固定用溝16が設けられている。操作部6には、固定用溝16にはまるような位置にピン17が設けられている。そして、ピン17は偏平な形をしており、実線から破線へと回転操作できる。固定用溝16には、複数の孔部18が形成され、その孔部18においてピン17は図3のごとく回転できる。
【0019】次に、このように構成されたカバー式内視鏡1の作用について説明する。
【0020】図3において、カバー挿着時、口体部11を折れ止め5を越えて操作部6の一部にのり上げたところでピン17が固定用溝16にはまるようにする(図3の実線)。固定用溝16のいずれかの孔部18においてピン17を回転させる(図3の破線)。すると、固定部15の孔部18がピン17に対して前後にも回転方向にもほとんど動けないように固定される。このことによって口体部11は操作部6に対して軸方向にも軸周りの回転方向にも移動規制がなされ、検査中に口体部11がずれて検査に支障をきたすことがない。
【0021】なお、このような固定部15をシール部12の前に設けるのは気密確保が難しくなるので、シール部12の後方が望ましい。
【0022】また、一般にカバー用内視鏡1の挿入部4の長さや、特に内視鏡カバー3の軸方向の長さは個体差があるため、図3のように、孔部18が複数あることで、カバー用内視鏡2に対して常に内視鏡カバー3の挿入部4を適切な張り具合で装着することが可能である。この張り具合が適切でないと、例えばシース8がたるみすぎたり、逆に張力がかかりすぎたりして、所望の挿入部機能が出せないことがある。
【0023】さらに、口体部11のシール部12が操作部6に対して、十分な摩擦保持力があれば、つまり軸方向に簡単には移動しないものであれば、固定部15の孔部18はなくして、ピン17が通る固定用溝16(または長穴)だけで回転方向の移動規制だけをしてもよい。
【0024】このように本実施例のカバー式内視鏡1によれば、カバー用内視鏡2に対して口体部11の移動規制がなされ、検査中に口体部11が移動することなく検査に支障がない。
【0025】また、従来技術で述べたように、特開平4−357920号公報においては、カバー手元支持体とシースとの間に折れ止めを設けたことが示されているが、この従来例では、カバー用内視鏡にカバーを装着した状態では、カバーに設けた折れ止めがカバー用内視鏡挿入部の折れ止めとして機能するであろうが、カバー用内視鏡単体においての折れ止めはないので、カバーを装着していない時(例えば保管時、洗浄作業時、運搬時など)のカバー用内視鏡の挿入部が特に操作部との接続部において折れる可能性がある。
【0026】本実施例では、折れ止め5は、カバー用内視鏡単体の挿入部4の折れ止め機能を持つが、図1のように、折れ止め5の上に柔軟な折れ止めカバー9があることで、カバー装着時の硬質の口体部11と操作部4による挿入部4の折れ止め機能もはたしている。
【0027】従って、挿入部4の操作部6との連結部は、カバー装着時も、非装着時も折れが防止されている。
【0028】なお、折れ止めカバー9は図1ではシース8と別体であるが、シース8端部を広げるような成形をして、シース8と一体であってもよい(部品数が減り、コストダウンが可能となる)。
【0029】次に第2実施例について説明する。図4ないし図6は本発明の第2実施例に係わり、図4はカバー式内視鏡の構成を示す構成図、図5は図4のC−C線断面を示す断面図、図6は図4のD−D線断面を示す断面図である。第2実施例は第1実施例とほとんど同じであるので、異なる構成のみ説明し、同一の構成には同じ符号をつけ説明は省略する。
【0030】第2実施例では、図4に示すように、口体部11に処置具が挿入可能な処置具挿入口21が設けられており、処置具チャンネル22は口体部11に接続され、処置具挿入口21と連通している。また、処置具チャンネル22は、口体部11より延出する吸引管路23とも連通している。
【0031】図4においては処置具チャンネル22しか示していないが、図4のC−C線断面である図5に示すように、実際は送気送水管路24も同様に口体部11を介して後方に延出している。折れ止めカバー9前端には隔離壁9aがあって、シース8内の管路の配列を保っている。
【0032】図4に戻り、口体部11の後方には、固定用溝25が複数設けられている。一方、操作部カバー10とは別体で硬質または半硬質の材料からなるグリップカバー26がある。グリップカバー26には、送気送水ボタン27(2段スイッチ)、吸引ボタン28と、それらを操作した時の信号を送る信号線29が取り付けられている。グリップカバー26の前端には、口体部11の固定用溝25にはまる固定用凸部30が設けられている。固定用凸部30及び固定用溝25は断面が楕円などの非円形になっていて、それぞれがはまると非回転の結合となる。
【0033】また、グリップカバー26の後端は、送気送水ボタン27、吸引ボタン28を有する箱型部31となっており、これは操作部7の取り付け台32にはめて位置決め(軸方向、回転方向)できるようになっている。
【0034】図4のD−D線断面である図6に示すように、挿入部4を覆うシース8には、前記の処置具チャンネル22、送気送水管路24が設けられている。これら挿入部4の横を通っていた管路は折れ止めカバー9内で上方に位置が移動している。その他の構成は第1実施例と同じである。
【0035】次に、このように構成された本実施例の作用について説明する。
【0036】内視鏡カバー3をカバー用内視鏡2に装着してから、グリップカバー26を操作部カバー10の上から操作部6及び口体部11に取り付ける。グリップカバー26の箱型部31を操作部6の取り付け台32に取り付けることで、グリップカバー26は操作部6に対して前後、回転方向に位置決めされる。また、グリップカバー26の固定用凸部30を口体部11の固定用溝25にはめることで、口体部11はグリップカバー26に対して、前後、回転方向に位置決めがなされる。したがって、口体部11はグリップカバー26を介して操作部6に対して前後、回転方向に位置決めされる。
【0037】操作部6の把持部は、吸引管路23(及び図4においては図示しない送気送水管路)が通っており、グリップカバー26を装着することで、それら管路の座屈やつぶれを防止できる。また、操作部カバー10の上からグリップカバー26を装着することで、把持感が現行のカバーなし内視鏡に近づき操作性が向上する。また、グリップカバー26上に送気送水ボタン27、吸引ボタン28があることで、操作部カバー10の外でボタン操作ができ、操作感が良好になる。
【0038】また、図5において、折れ止めカバー9内の前端と後端とでは処置具チャンネル22及び送気送水管路24の位置を変えているが、これら3本の管路を合わせたもののたわみ剛性は、折れ止めカバー9の剛性より小さくすることで、折れ止めカバー9がねじれてしまうことはほとんどない。折れ止めカバー9前端の隔離壁9aがあることで、折れ止めカバー9内で各管路を回していてもシース8内の各管路は回らないようにできる。
【0039】つまり、第1実施例の効果に加え、グリップカバー26で口体部11と操作部6の位置決めをすることで、把持感が良好で、把持部上の各管路の座屈やつぶれを防止でき、送気送水ボタン27、吸引ボタン28の操作も良好に行える。
【0040】次に第3実施例について説明する。図7ないし図9は本発明の第3実施例に係わり、図7は折れ止めの前端部近傍の構成を示す構成図、図8は図7の折れ止めの前端部近傍における処置具チャンネルの変形例の構成を示す構成図、図9は図7の折れ止めの前端部近傍の変形例の構成を示す構成図である。第3実施例は第2実施例とほとんど同じであるので、異なる構成のみ説明し、同一の構成には同じ符号をつけ説明は省略する。
【0041】図7に示すように、折れ止め5の前端部近傍ではシース8と折れ止めカバー9は、溶着や接着などで接合されている。特に、シース8と折れ止めカバー9が例えば共にウレタンなど、同種の材質からなれば溶着しやすい。
【0042】折れ止め5の前端部近傍の処置具チャンネル22(図示してない送気送水管路24であってもよい)には、蛇腹部40が設けられている。この蛇腹部40はその他の部分よりも曲げに対して柔軟で、急な曲げに対しても座屈しない。
【0043】また、図8に示すように、蛇腹部40のかわりに、柔軟な筒体41が処置具チャンネル22にかぶっていてもよい、筒体41は例えば、ゴム系樹脂であったり、塩化ビニルであったり、金属コイルであってもよい。
【0044】その他の構成は第2実施例と同じである。
【0045】処置具チャンネル22は、処置具挿通性、細径化などを考慮して、一般に薄肉のフッソ系樹脂が用いられることが多い。しかしこのような処置具チャンネル22は、急な曲げに対して座屈する可能性がある。特に折れ止め5の前端部近傍は急な曲げがかかる時があるので、本実施例では、蛇腹部40を設けることで、座屈を防げる。
【0046】なお、同じ効果を図8の筒体41で実現してもよい。筒体41だと、蛇腹部40のような特殊加工をせずとも、筒体41を処置具チャンネル22上の所望の位置にかぶさるだけなので容易にできる可能性がある(コストダウンが可能となる)。
【0047】つまり、第2実施例の効果に加え、折れ止め5前端近傍の急な曲げに対して、シース8内管路が座屈しないようにできる。
【0048】次に、図9を用いて第3実施例の変形例について説明する。
【0049】図9に示すように、変形例では、シース8と折れ止めカバー9の接合部に樹脂または金属の硬質リング42を設けた。なお、この硬質リング42には、図5R>5に示した隔離壁9aが設けられていてもよい。
【0050】シース8と折れ止めカバー9は共に軟質樹脂なので、図7のような接合は容易ではない。そこで、上記変形例のように、硬質リング42に対して、シース8と折れ止めカバー9をそれぞれ接合(接着や溶着、外周を糸でしばるなど)すれば、より確実に接合できる。なお、硬質リング42がシース8や折れ止めカバー9と同種の材質(例えばウレタン)であれば、溶着はより容易である。
【0051】つまり、より確実なシース8と折れ止めカバー9の接合ができる。
【0052】次に第4実施例について説明する。図10は本発明の第4実施例に係る挿入部と操作部のつなぎ部の構成を示す構成図である。第4実施例は第1実施例とほとんど同じであるので、異なる構成のみ説明し、同一の構成には同じ符号をつけ説明は省略する。
【0053】図10に示すように、本実施例では、挿入部4と操作部6のつなぎ部には、これまで示してきたような厚肉でテーパ状の折れ止め5ではなく、シース8の内側に挿通可能で柔軟な樹脂や金属コイルなどからなる筒部材43が設けられている。一方、シース8と口体部1の間には、これまで示してきたような吸引部材の折れ止めカバー9はなく、シース8が口体部11に直接、接合されている。なお、筒部材43は、熱収縮チューブでもよい(組立が容易である)。
【0054】その他の構成は第1実施例と同じである。
【0055】本実施例では、厚肉の折れ止め5のかわりに筒部材43にすることで、構造がシンプルにでき、コストを下げられる。また、細径化できるので、カバー側に折れ止めカバー9がいらなくなり、カバー側のコストも下げられる。
【0056】筒部材43は折れ止め5に比べると折れ止め機能は劣るが、何もないよりはそれなりの折れ止め機能を持たせることができる。折れ止めカバー9がなくとも、シース8が筒部材43を覆っている(つまり、その部分は折れ止めカバー部と言える)ことで、筒部材43は、カバー非装着時も、カバー装着時も、挿入部4の折れを防止する働きを持つ。なお、筒部材43はテーパ状(薄肉だが)にしたり、手元側ほど複数の筒部材を重ねるなどして、折れ止め機能をより高めてもよい。
【0057】従って、これまでよりシンプルな構造(コスト安に)でカバー用内視鏡単体の時と、カバー装着時の折れ止め機能を持たせることができる。
【0058】次に第5実施例について説明する。図11ないし図13は本発明の第5実施例に係わり、図11はカバー式内視鏡の構成を示す構成図、図12は図11の操作部の作用を説明する説明図、図13は図12の操作時における起上ノブの断面を示す断面図である。
【0059】図11に示すように、本実施例のカバー式内視鏡51では、内視鏡カバー52の先端の先端カバー53には、処置具起上台54が設けられている。処置具起上台54には起上ワイヤ55が取り付けられ、起上ワイヤ55の手元側には第1のラック56が取り付けられている。
【0060】先端カバー53には挿入部シース(以下シース)57が取り付けられ、シース57には手元口体部48(以下口体部)が取り付けられている。口体部58の内部にはシール部材59が設けられ、シール部材59は、口体部58と操作部60または挿入部の手元側の一部を気密的に摩擦保持可能である。ここで気密できることで、シース57内を加圧して、シース57にピンホールなどがないかの気密チェックができる。口体部58には操作部カバー61が取り付けられている。また、口体部58の処置具挿入口62より処置具を起上台54に誘導できる。
【0061】口体部58からは、操作部60に向かって延出部63が延出している。また、延出部63の端部には、第2のラック64が設けられている。口体部58、延出部63、第2のラック64は別体で連結されていてもよいが、図のように一体であればカバーのコストを安くできる。第1のラック56と第2のラック64の凹凸部のピッチは同じでも、異なっていてもよい。起上ワイヤ55は、シース57内、口体部58内、延出部63内を通って、延出部63内にて第2のラック56と接続されている(接続部が外部に出ていない方が、外部の何らかの作用で接続部が外されてしまうことを防げる)。第1のラック56及び起上ワイヤ55は、口体部58及びその延出部63、第2のラック64に対して移動可能で、それらが移動することで起上台54を、起上、倒置できる。
【0062】操作部60には軸65が設けられ、軸65には、軸65周りに回転操作できる起上ノブ66が設けられている。起上ノブ66の一部にはピニオン67が設けられ、ピニオン67は第1のラック56の凹凸と噛み合うことのできる凸凹部を有する。起上ノブ66の近傍で第2のラック64に対向する位置には、爪部68が設けられている。爪部68は、第2のラック64と噛み合うことのできる形状の爪を有する。
【0063】次に、このように構成された本実施例の作用について説明する。
【0064】内視鏡カバー52をカバー用内視鏡51に装着すると、口体部58はシール部材59によって、操作部60の一部に摩擦固定される。カバー用内視鏡51や内視鏡カバー52の挿入部長には、ばらつきがあるので、口体部58は、操作部60のある長さの固定範囲内の任意の位置に摩擦固定できる。ユーザーは、シース57やシース57内のチューブ類の張り具合が適切と思われる位置に口体部58を摩擦固定する。この摩擦固定の力量は、ユーザーがスライド操作しやすいように、あまり重くない(強固な固定ではない)。
【0065】しかし、この摩擦固定だけだと、起上台54で処置具を起上させた時、つまり内視鏡カバー52内の起上ワイヤ55が強く引っ張られた時に、口体部58にもある程度の引っ張り力がかかり、口体部58が、最初にセットした位置よりずれてしまい、シース57やシース57内のチューブ類の張り具合が変わって、挿入部機能や、処置具起上機能に支障をきたすことがある。
【0066】本実施例の場合、口体部58より延出した延出部63の端部の第1のラック56及び第2のラック64が、カバー装着時に起上ノブ66と爪部68の間のスペースに入るようになっている。ここで起上ノブ66を回転操作(起上操作)すると、起上ノブ66のピニオン67の凸凹が第1のラック56の凹凸に噛み合うと共に、第1のラック56及び第2のラック64を少し下方に押すことによって、図12に示すように、第2のラック54の凹凸が爪部68の爪(または凸凹)に噛み合う。このことによって、起上ノブ66を回転操作している間は、口体部58(第2のラック64)が操作部60(爪部68)に強固に固定された状態でピニオン67の回転で第1のラック56を前後に移動させ、起上ワイヤ55を前後移動させることで、起上台54を起上・倒置させることができる。
【0067】図13は図12の時の起上ノブ66の断面であるが、第1のラック56は、軸周りに回転しても常にピニオン67と噛み合うように、略円柱状になっていて、その全周に凹凸が切られている。第2のラック64の上部は凹状になっていて第1のラック56が横すべりしないように受けている。
【0068】本実施例では、爪部68に2つの爪を設けているが、爪は数が多くなる程、さらに確実に強固に口体部58を操作部60に固定できる。また、爪の数が少ない程、例えば1つにすれば、操作部60の洗浄性が向上する。また、爪が複数の場合でも、本実施例のように、爪と爪の間隔があいていれば(第2のラック64の凹凸のピッチの2倍,3倍,…)、洗浄性はよくなる。
【0069】操作部60の外観部は樹脂でできているが、爪部68はコストを安くするために操作部60と一体で成形してあってもよい。ただし、その場合、第2のラック64(樹脂であることが多い)よりも硬い材質にしておく必要がある。それは、第2のラック64がディスポ側であるのに対し、爪部68はリュース側なので、数多くのカバーと組合わせて使用する時に摩耗してしまわないためである。そこで、爪部68を操作部60と別体にして、金属にしてしまえば、第2のラック64(樹脂とする)より、相対的にかなり硬くできるので都合がよい。
【0070】第1のラック56及び第2のラック64は、口体部58の操作部60に対する固定範囲の分を考慮して長めに設けてある。従って、口体部58が操作部60の固定範囲のどの位置に固定しても、爪部68と第2のラック64は噛み合うことができ、ピニオン67と第1ラック56と噛み合って最大起上操作が行える。
【0071】従って、起上操作中は、口体部58が操作部60に強固に固定され、起上機能、挿入部機能(可撓性、弾発性、湾曲機能など)を良好に保てる。
【0072】[付記]
(付記項1)前記移動規制手段は、軸方向の移動を規制する請求項1のカバー式内視鏡。
【0073】(付記項2)前記移動規制手段は、軸方向の複数箇所に設けられている付記項1のカバー式内視鏡。
【0074】(付記項3)前記移動規制手段は、軸回りの回転方向の移動を規制する請求項1のカバー式内視鏡。
【0075】(付記項4)移動規制手段は、前記口体部、前記操作部と別体の把持部カバーを前記口体部、前記操作部に着脱することで行う請求項1のカバー式内視鏡。
【0076】(付記項5)前記把持部カバーは、硬質又は半硬質である。
【0077】付記項4のカバー式内視鏡。
【0078】(付記項6)前記把持部カバーは、前記操作部を覆う操作部カバーの上から着脱可能である付記項4のカバー式内視鏡。
【0079】(付記項7)前記把持部カバーは、前記口体部と前記操作部の軸方向の移動を規制する付記項4のカバー式内視鏡。
【0080】(付記項8)前記把持部カバーは、前記口体部と前記操作部の回転方向の移動を規制する付記項4のカバー式内視鏡。
【0081】(付記項9)前記把持部カバーに流体制御ボタンを設けた付記項4のカバー式内視鏡。
【0082】(付記項10)前記把持部カバー内に流体管路が挿通した付記項4のカバー式内視鏡。
【0083】(付記項11)前記挿入部カバーは、処置具起上装置を備え、前記操作部は、処置具起上操作ノブを備え、前記処置具起上操作ノブを回転操作することで、前記処置具起上操作ノブと前記処置具起上装置が接続するとともに、前記操作部が前記口体部を移動規制する請求項1のカバー式内視鏡。
【0084】(付記項12)前記操作部が前記口体部の固定は、前記操作部に設けた凸部又は凹部が前記口体部に設けた凹部又は凸部に噛み合うことにより固定される付記項11のカバー式内視鏡。
【0085】(付記項13)前記操作部に設けた前記凸部又は前記凹部は、複数ある付記項12のカバー式内視鏡。
【0086】(付記項14)前記操作部に設けた前記凸部又は前記凹部は、1つである付記項12のカバー式内視鏡。
【0087】(付記項15)前記操作部の前記凸部又は前記凹部は、前記操作部と一体で成形されている付記項12のカバー式内視鏡。
【0088】(付記項16)前記操作部の前記凸部又は前記凹部は、前記操作部と別体で設けた付記項12のカバー式内視鏡。
【0089】(付記項17)前記操作部の前記凸部又は前記凹部はは、前記口体部の前記凹部又は前記凸部よりも硬質の材質からなる付記項12のカバー式内視鏡。
【0090】(付記項18)前記口体部の前記凹部又は前記凸部は複数あり、前記凹部又は前記凸部の軸方向の長さは、前記口体部の前記カバー用内視鏡への固定範囲以上である付記項12のカバー式内視鏡。
【0091】(付記19)前記処置具起上操作ノブは複数の凸凹部を有し、前記処置具起上装置の手元側接続部は複数の凹凸部を有し、前記凸凹部と前記凹凸部とが噛み合うことで、前記処置具起上操作ノブと前記処置具起上装置が接続される付記項11のカバー式内視鏡。
【0092】(付記項20)挿入部と操作部と、前記挿入部と前記操作部の接続部に前記挿入部の折れ止めを有するカバー用内視鏡と、前記挿入部を覆う挿入部カバーと、前記挿入部カバーを前記操作部に固定する口体部とを有する内視鏡カバーとからなるカバー式内視鏡において、前記挿入部カバーと前記口体部との間に、前記カバー用内視鏡の前記折れ止めを覆う柔軟な折れ止めカバー部を設けたカバー式内視鏡。
【0093】付記項20のように構成したカバー式内視鏡では、カバー用内視鏡の挿入部と操作部の接続部に折れ止め部材を設けると共に、カバー手元口体部(支持体)とシースとの接続部に前記折れ止めを覆う柔軟な折れ止めカバー部を設けたことで、カバー装着状態においても、カバー用内視鏡単体においても、カバー用内視鏡を設けた折れ止めが挿入部の折れを防ぐことかできる。
【0094】(付記項21)前記折れ止めカバー部は、前記挿入部カバー及び前記口体部と別体である付記項20のカバー式内視鏡。
【0095】(付記項22)前記折れ止めカバーと前記挿入部カバー及び前記口体部を気密的に接合した付記項21のカバー式内視鏡。
【0096】(付記項23)前記折れ止めカバーと前記挿入部カバーは同種の材質である付記項21のカバー式内視鏡。
【0097】(付記24)前記折れ止めカバーと前記挿入部カバーの接合部に硬質パイプを設けた付記項21のカバー式内視鏡。
【0098】(付記項25)前記硬質パイプに前記カバー用内視鏡の前記挿入部と前記挿入部カバー内管路を分ける隔離壁を設けた付記項24のカバー式内視鏡。
【0099】(付記項26)前記硬質パイプと前記挿入部カバーは同種の材質からなる付記項24のカバー式内視鏡。
【0100】(付記項27)前記硬質パイプと前記折れ止めカバー部は同種の材質からなる付記項24のカバー式内視鏡。
【0101】(付記項28)前記折れ止めカバー部は前記挿入部カバーに一体で設けた付記項20のカバー式内視鏡。
【0102】(付記項29)前記折れ止めカバー部は、前記挿入部カバー端部を広げて形成した付記項28のカバー式内視鏡。
【0103】(付記項30)前記折れ止めカバー部の剛性は、前記折れ止めカバー部内の管路のたわみ剛性よりも大きい付記項20のカバー式内視鏡。
【0104】(付記項31)前記折れ止めカバー部前端に前記カバー用内視鏡の前記挿入部と前記挿入部カバー内管路を分ける隔離壁を設けた付記項20のカバー式内視鏡。
【0105】(付記項32)前記折れ止め前端部近傍のカバー内管路に対座屈手段を設けた付記項20のカバー式内視鏡。
【0106】(付記項33)前記対座屈手段は管路を蛇腹状にしたことによる付記項32のカバー式内視鏡。
【0107】(付記項34)前記対座屈手段は管路に筒体をかぶせたことによる付記項32のカバー式内視鏡。
【0108】(付記項35)筒体は柔軟チューブである付記項34のカバー式内視鏡。
【0109】(付記項36)筒体はコイルである付記項34のカバー式内視鏡。
【0110】(付記項37)前記折れ止めは前記挿入部カバー内に挿通可能な筒体である付記項20のカバー式内視鏡。
【0111】(付記項38)前記筒体は樹脂チューブである付記項37のカバー式内視鏡。
【0112】(付記項39)前記樹脂チューブは熱収縮チューブである付記項38のカバー式内視鏡。
【0113】(付記項40)前記筒体はコイルである付記項37のカバー式内視鏡。
【0114】(付記項41)前記筒体はテーパ状である付記項37のカバー式内視鏡。
【0115】(付記項42)前記筒体は複数の筒体が重なったものである付記項37のカバー式内視鏡。
【0116】
【発明の効果】以上説明したように本発明のカバー式内視鏡によれば、気密保持手段により操作部との間で挿入部カバー内の気密を確保すると共に、移動規制手段により口体部の一部で気密保持手段の手元側に操作部に対する口体部の移動を規制するので、内視鏡カバーとカバー用内視鏡の気密をすると共に、内視鏡カバーの手元支持体が検査中に支障をきたすような移動を防止することができるという効果がある。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の第1実施例に係るカバー式内視鏡の構成を示す構成図
【図2】図1のA−A線断面を示す断面図
【図3】図1の矢視Bから見た矢視図
【図4】本発明の第2実施例に係るカバー式内視鏡の構成を示す構成図
【図5】図4のC−C線断面を示す断面図
【図6】図4のD−D線断面を示す断面図
【図7】本発明の第3実施例に係る折れ止めの前端部近傍の構成を示す構成図
【図8】図7の折れ止めの前端部近傍における処置具チャンネルの変形例の構成を示す構成図
【図9】図7の折れ止めの前端部近傍の変形例の構成を示す構成図
【図10】本発明の第4実施例に係る挿入部と操作部のつなぎ部の構成を示す構成図
【図11】本発明の第5実施例に係るカバー式内視鏡の構成を示す構成図
【図12】図11の操作部の作用を説明する説明図
【図13】図12の操作時における起上ノブの断面を示す断面図
【符号の説明】
1…カバー式内視鏡
2…カバー用内視鏡
3…内視鏡カバー
4…挿入部
5…折れ止め
6…操作部
7…ユニバーサルケーブル
8…シース
9…折れ止めカバー
9a…隔離壁
10…操作部カバー
11…口体部
12…シール部
13…送気管路
14…送気用溝
15…固定部
16…固定用溝
17…ピン
18…孔部
21…処置具挿入口
22…処置具チャンネル
23…吸引管路
24…送気送水管路
25…固定用溝
26…グリップカバー
27…送気送水ボタン
28…吸引ボタン
29…信号線
30…固定用凸部
31…箱型部
32…取り付け台
40…蛇腹部
41…筒体
42…硬質リング
43…筒部材
51…カバー用内視鏡
52…内視鏡カバー
53…先端カバー
54…処置具起上台
55…起上ワイヤ
56…第1のラック
57…挿入部シース
58…口体部
59…シール部材
60…操作部
61…操作部カバー
62…処置具挿入口
63…延出部
64…第2のラック
65…軸
66…起上ノブ
67…ピニオン
68…爪部

【特許請求の範囲】
【請求項1】 挿入部と操作部からなるカバー用内視鏡と、前記挿入部を覆う挿入部カバーと、前記挿入部カバーの手元側に前記挿入部カバーを前記操作部に固定する口体部とからなる内視鏡カバーとを具備したカバー式内視鏡において、前記口体部の一部に前記操作部との間で前記挿入部カバー内の気密を確保する気密保持手段と、前記口体部の一部で前記気密保持手段の手元側に前記操作部に対する前記口体部の移動を規制する移動規制手段とを設けたことを特徴とするカバー式内視鏡。

【図1】
image rotate


【図2】
image rotate


【図3】
image rotate


【図4】
image rotate


【図5】
image rotate


【図6】
image rotate


【図7】
image rotate


【図8】
image rotate


【図9】
image rotate


【図10】
image rotate


【図11】
image rotate


【図13】
image rotate


【図12】
image rotate