カバー端部封止構造
【課題】線状体の太さが多少変化しても一つの封止部材で対応でき、確実に線状体とカバーとの間の隙間を塞ぐことができると共に、封止部材を再使用可能として、封止部材に係るコストを抑えられるカバー端部封止構造を提供する。
【解決手段】線状体とカバー11との間の隙間に配置する封止部材12として、端部から内部へ向う切欠き部15が設けられた弾性材を用い、線状体にカバーを取付ける際、先細状の切欠き部に線状体を挿入した状態で、カバー内に封止部材及び線状体を配設すると、カバー内側形状より大きい封止部材は周囲から押圧力を受ける状態となって変形し、切欠き部に面する部位同士が接近して、線状体に沿って切欠き部が塞がった状態となることにより、線状体外周面と封止部材、並びに、封止部材とカバー内周面をそれぞれ密着させて、線状体とカバーとの間の隙間を容易且つ確実に塞ぐことができる。
【解決手段】線状体とカバー11との間の隙間に配置する封止部材12として、端部から内部へ向う切欠き部15が設けられた弾性材を用い、線状体にカバーを取付ける際、先細状の切欠き部に線状体を挿入した状態で、カバー内に封止部材及び線状体を配設すると、カバー内側形状より大きい封止部材は周囲から押圧力を受ける状態となって変形し、切欠き部に面する部位同士が接近して、線状体に沿って切欠き部が塞がった状態となることにより、線状体外周面と封止部材、並びに、封止部材とカバー内周面をそれぞれ密着させて、線状体とカバーとの間の隙間を容易且つ確実に塞ぐことができる。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電線やケーブル等の線状体を保護するカバーにおける線状体の露出する端部で線状体とカバー間の隙間を封止して、異物等のカバー内への進入を防止する封止構造に関する。
【背景技術】
【0002】
電線やケーブル等における接続部や分岐部には、露出充電部が生じることから、短絡事故等防止のために絶縁用のカバーが被覆配設される。また、同じく架空配設された電線や通信ケーブルが風の強い場合等に揺れて電線同士や周囲の樹木等と接触して損傷を受けることがないように、電線や通信ケーブルに保護用のカバーを装着する場合がある。さらに、カバーの一種として、通信ケーブル同士や光ケーブル同士を接続した箇所をそれらケーブルの余長部分と共に覆って保護するケーブルクロージャーも使用されている。
【0003】
こうしたカバーは一般に絶縁性のある合成樹脂材料で形成され、一つの部材を中央で折曲げて閉じ合わせたり、複数の部材を組合わせたりして、電線等の線状体を適切に被覆する状態とされるが、カバーから電線等の線状体が露出するカバー端部におけるカバー内周面と電線等の線状体とを密着状態とするのは難しく、カバー内周面と電線等の線状体との間には隙間が生じやすかった。
【0004】
このような隙間を放置すると、隙間から異物がカバー内へ進入して、短絡や電線等の破損の原因となるため、通常は隙間を塞いで、異物のカバー内への進入を防ぐようにしている。こうした隙間を塞ぐための構造は従来から種々提案されており、その例として、特開2008−306787号公報や、特開2008−233695号公報、実開平6−29336号公報に開示されるものがある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2008−306787号公報
【特許文献2】特開2008−233695号公報
【特許文献3】実開平6−29336号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
従来の電線等とカバーとの間の封止構造は、前記各特許文献に示される構成となっており、それぞれカバー端部内側の隙間を塞いで、短絡や電線等の破損の原因となる異物のカバー内への進入を防ぐことができるものの、前記特許文献1に示したような、電線等の線状体の露出するカバー端部におけるカバー内側の隙間部分に弾性材製のスペーサを入れる構造では、スペーサにおける線状体の通る孔や切欠きに適合する線状体の太さが限られ、幅広い対応が難しいことから、線状体の太さの違いに応じて複数種類のスペーサを用意する必要があり、コスト高となってしまうという課題を有していた。
【0007】
また、前記特許文献2に示したような、線状体とカバー間の隙間に封止材を注入して隙間を埋める構造の場合、一度設置すると封止材が線状体外周面及びカバー内周面に密着した状態で定着一体化するため、カバー内の線状体の接続状態を変えたり、カバーを線状体から取外したりするなど、カバーを開放して作業を行うような場合、カバーの一部と封止材が離隔することで、カバーと線状体に密着し一体化した封止材の破壊を伴うこととなり、いったん破壊された封止材の再使用は隙間を確実に塞ぐ目的の点から困難であり、封止
材の取替え、すなわち既存の封止材の除去及び新たな封止材の再注入の必要が生じてしまうという課題を有していた。
【0008】
さらに、前記特許文献3に示したような、カバー端部を線状体の太さに対応する部位で切断して使用に供し、線状体とカバー間に隙間が生じないようにする構造の場合、カバー端部を線状体に応じた適切な位置で切断するという作業の分、取付作業者の作業工数が増え、作業ミスにつながる危険性も増大するという課題を有していた。加えて、使用に供したカバーは必ずその端部を切断されていることから、別の線状体に対し再使用を図ろうとしても、適用可能な線状体の範囲が、その時点のカバー端部を切断して調整可能な、カバー端部内寸以上の太さとなるものに限られ、カバー端部の開口より小さい線状体には適用できず、用途が限定されるという課題を有していた。
【0009】
本発明は前記課題を解消するためになされたもので、線状体の太さが多少変化しても一つの封止部材で対応でき、確実に線状体とカバーとの間の隙間を塞ぐことができると共に、封止部材を再使用可能として、封止部材に係るコストを抑えられるカバー端部封止構造を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明に係るカバー端部封止構造は、複数の線状体の接続部又は線状体の所定箇所を外側から覆うカバーにおける、線状体がカバーから露出する端部で、カバー内周面と線状体間の隙間を塞いで、異物のカバー内への進入を防止する封止構造において、可撓性を有して弾性変形する材質で形成され、端部の切欠き開口幅を前記線状体の太さより大きくされる先細状の切欠き部が設けられると共に、当該切欠き部以外の外周部分として前記カバー端部の内側形状と相似形の部分を少なくとも有し、外形が前記内側形状を超える大きさとされる封止部材を備え、前記封止部材の切欠き部に前記線状体を挿入した状態として、前記カバー内周面と線状体との間に封止部材を位置させるものである。
【0011】
このように本発明によれば、線状体とカバーとの間の隙間に配置する封止部材として、端部から内部へ向う切欠き部が設けられた弾性材を用い、線状体にカバーを取付ける際、封止部材の切欠き部の先端に向け線状体を押付けると、切欠き部先端周囲部分が線状体から押圧され変形するのに伴い、封止部材の切欠き部に面する部位同士が線状体を挟みつつ自然に接近し合う変形が生じ、またカバー内では、カバー内側形状より大きい封止部材は周囲から押圧力を受ける状態となってさらに変形し、線状体に沿って切欠き部が塞がった状態となることにより、線状体外周面と封止部材、並びに、封止部材とカバー内周面をそれぞれ密着させて、線状体とカバーとの間の隙間を容易且つ確実に塞ぐことができる。また、封止部材が線状体外側を取巻く状態に至るまでの変形量が大きい分、線状体の形状変化の影響を相対的に受けにくく、線状体のサイズについて一封止部材の許容範囲を広くすることができることに加え、封止部材はカバーや線状体に対し破壊を伴わずに取外し可能で、且つ、弾性により元の形状に復元可能であり、封止部材を問題なく再使用できるなど、封止部材の使用に係るコストの低減が図れる。さらに、隙間の封止やその解除に係る作業を封止部材の線状体やカバーに対する着脱で容易に行え、作業ミスが生じにくく、作業工数も低減できる。
【0012】
また、本発明に係るカバー端部封止構造は必要に応じて、前記カバー端部内周面が円筒内面形状とされ、前記封止部材が、前記切欠き部以外の部分を前記相似形の部分として円柱形状とされ、当該円柱形状部分における未変形状態での円周部長さが前記カバー端部の内周面の周長以上となるように円柱形状部分の径を設定されるものである。
【0013】
このように本発明によれば、封止部材における切欠き部以外の外周部分が、カバー端部の内側形状に対応した円柱形状とされ、切欠き部を除いて一様な形状となって、カバー内
周面との関係も一様なものとなることにより、封止部材の外周部分におけるカバー内周面との接触による圧縮変形状態が一様となり、カバー内面沿い各位置における封止部材の変形に偏りが生じず、封止部材とカバー内面との密着をより確実なものとすることができる。また、この封止部材における切欠き部近傍部分にも周囲の外周部分から均等に力が加わることで、切欠き部近傍部分における変形にも偏りが生じることはなく、切欠き部に面する部位同士が密着して確実に切欠き部を閉じ、且つ線状体を取囲む部分も線状体周囲に隙間無く密着する適切な変形状態が得られる。
【0014】
また、本発明に係るカバー端部封止構造は必要に応じて、前記封止部材が、前記切欠き部の近傍から外方に突出する突起部を有し、当該突起部の突出長を、当該突出長と切欠き部における外周の長さとの合計寸法が線状体外周の周長より長くなるように設定されてなり、前記封止部材の切欠き部に前記線状体を挿入し、さらに、曲げた突起部で線状体と切欠き部を覆った状態として、前記カバー内周面と線状体との間に封止部材を位置させるものである。
【0015】
このように本発明によれば、封止部材における切欠き部の近傍に突起部を形成し、切欠き部に線状体を挿入し、さらに突起部で線状体と切欠き部を覆った状態として、封止部材の切欠き部位置における隙間閉塞機能を突起部で補うことにより、仮に突起部がない場合に、封止部材が切欠き部位置で線状体やカバー内周面との密着を確保できる許容範囲を超える太さである線状体に対しても、突起部を用いて切欠き部を挟む両側の面同士の密着を促し、切欠き部を閉止して電線外周面と封止部材、並びに、封止部材とカバー内周面をそれぞれ密着させられ、一種類の封止部材で広い寸法範囲の線状体太さに対応できる。また、カバー内に封止部材及び線状体を位置させた状態で、封止部材における切欠き部の周囲部分だけでなく突起部も線状体を包込むこととなり、封止部材の線状体外周に対する密着性を高めて、線状体が動くような場合でもその動きに追随して封止部材は密着状態を維持でき、線状体が振動したとしても新たな隙間が生じにくい。
【0016】
また、本発明に係るカバー端部封止構造は必要に応じて、可撓性を有して弾性変形する材質で形成され、外周部分として前記カバー端部の内側形状と相似形の部分を少なくとも有し、前記封止部材の切欠き部のある側を覆う状態で、カバー内周面と線状体との間に位置させられる副封止体を備えるものである。
【0017】
このように本発明によれば、封止部材と同様の弾性材からなる副封止体を、線状体が挿入された封止部材の切欠き部側に配置しつつカバー内周と線状体間に位置させ、副封止体で封止部材の隙間閉塞機能を補うことにより、封止部材に対し線状体の大きさが適合範囲から外れて、線状体を挿入した切欠き部を封止部材のみでは閉止状態にできず、封止部材のこの切欠き部位置で隙間が完全に塞がれないおそれがある場合でも、副封止体が切欠き部とカバー間に位置して確実に切欠き部を閉塞し、隙間を生じさせない状態が得られることとなり、一つの封止部材で対応可能な線状体の太さの寸法範囲を広げられる。
【0018】
また、本発明に係るカバー端部封止構造は必要に応じて、前記封止部材が、少なくともカバー内周の半周分の領域と接し、前記切欠き部を設けられる主封止部と、当該主封止部端部に連結され、カバー内周の主封止部と接していない残りの領域と接する副封止部とを有してなり、前記主封止部の切欠き部に前記線状体を挿入し、またカバー内周の前記残りの領域と主封止部の切欠き部のある側との間に副封止部を位置させ、主封止部の切欠き部のある側を副封止部で覆う状態として、カバー内周面と線状体との間に封止部材を位置させるものである。
【0019】
このように本発明によれば、封止部材が主封止部と副封止部の二つの部分からなり、主封止部の切欠き部に線状体を挿入し、カバー内側への配設に合わせて主封止部と副封止部
を閉じると、主封止部の切欠き部のある側を副封止部で覆う状態となることにより、線状体の太さが大きい場合でも、副封止部が主封止部の切欠き部とカバー内周面間に位置して確実に切欠き部を閉塞し、線状体と封止部材との間に隙間を生じさせない状態が得られることとなり、一つの封止部材で対応可能な線状体の太さの寸法範囲を広げられる。
【0020】
また、本発明に係るカバー端部封止構造は、複数の線状体の接続部又は線状体の所定箇所を外側から覆うカバーにおける、線状体がカバーから露出する端部で、カバー内周面と線状体間の隙間を塞いで、異物のカバー内への進入を防止する封止構造において、可撓性を有して弾性変形する材質で形成され、端部の切欠き開口幅を前記線状体の太さより大きくされる先細状の切欠き部が設けられると共に、当該切欠き部以外の外周部分として前記カバー端部の内側形状と相似形の部分を少なくとも有する封止部材と、可撓性を有して弾性変形する材質で形成され、前記封止部材との組合せ状態で前記カバー端部の内側形状を超える外形を生じさせる所定形状とされる副封止体とを備え、前記封止部材の切欠き部に前記線状体を挿入し、且つ封止部材の切欠き部のある側を前記副封止体で覆う状態として、前記カバー内周面と線状体との間に封止部材及び副封止体を位置させるものである。
【0021】
このように本発明によれば、切欠き部が設けられた弾性材製の封止部材と、この封止部材と同様の弾性材からなる副封止体とを、線状体とカバーとの間の隙間に配置するようにし、線状体にカバーを取付ける際、封止部材の切欠き部に線状体を挿入し、且つ副封止体を封止部材の切欠き部側に配置した状態で、カバー内に封止部材、副封止体及び線状体を配設すると、組合せ状態でカバー内側形状より大きい封止部材と副封止体は周囲から押圧力を受ける状態となって変形し、切欠き部に面する部位同士が接近して、線状体に沿って切欠き部が塞がり、且つ封止部材と副封止体が密着した状態となることにより、線状体外周面と封止部材及び副封止体、並びに、封止部材及び副封止体とカバー内周面とをそれぞれ密着させて、線状体とカバーとの間の隙間を容易且つ確実に塞ぐことができる。また、封止部材及び副封止体はカバーや線状体に対し破壊を伴わずに取外し可能で、且つ、弾性により元の形状に復元可能であり、封止部材及び副封止体を問題なく再使用できるなど、封止部材及び副封止体の使用に係るコストの低減が図れる。さらに、隙間の封止やその解除に係る作業を封止部材及び副封止体の線状体やカバーに対する着脱で容易に行え、作業ミスが生じにくく、作業工数も低減できる。
【0022】
また、本発明に係るカバー端部封止構造は必要に応じて、前記封止部材が、多孔質の弾性体とされて内部に気体を含む構造とされ、カバー内周と線状体との間に位置させる際の変形で内部の気体が外に出て封止部材全体として体積減少を伴うものである。
【0023】
このように本発明によれば、封止部材を多孔質体で形成し、カバー内周面と線状体との間に封止部材を配設すると、カバー内周面や線状体との接触で相対的な押圧力を受けた封止部材では、内部の気体が外に流出して、変形部分が復元可能な収縮を伴って変形することにより、カバー内周面や線状体との接触で押圧力を受けて変形する封止部材各部のうち、これらカバー内周面や線状体に相対的に押しのけられた分が、体積変化のない場合のように行き場を失って、線状体長手方向やカバー内周の円筒軸方向に膨出したりずれたりした不安定な状態となることはなく、封止部材は力の加わった方向にスムーズに収縮変形して、カバー内周面と線状体外周面にそれぞれ押圧力の反力としての適切な押圧力をもって密着する状態が確実に得られる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】本発明の第1の実施形態に係るカバー端部封止構造の概略構成説明図及び封止部材の未変形状態斜視図である。
【図2】本発明の第1の実施形態に係るカバー端部封止構造における封止部材への電線挿入状態説明図である。
【図3】本発明の第1の実施形態に係るカバー端部封止構造における封止部材のカバー内配設に係る変形状態説明図である。
【図4】本発明の第2の実施形態に係るカバー端部封止構造における封止部材への電線挿入状態説明図である。
【図5】本発明の第2の実施形態に係るカバー端部封止構造における封止部材のカバー内配設に係る変形状態説明図である。
【図6】本発明の第3の実施形態に係るカバー端部封止構造における封止部材の電線挿入前状態側面図である。
【図7】本発明の第3の実施形態に係るカバー端部封止構造における封止部材のカバー内配設に係る変形状態説明図である。
【図8】本発明の第3の実施形態に係るカバー端部封止構造における封止部材の副封止体併用の場合でのカバー内配設に係る変形状態説明図である。
【図9】本発明の第4の実施形態に係るカバー端部封止構造におけるカバー及び封止部材の側面図である。
【図10】本発明の第4の実施形態に係るカバー端部封止構造における封止部材への小径電線挿入状態側面図である。
【図11】本発明の第4の実施形態に係るカバー端部封止構造における封止部材への大径電線挿入状態側面図である。
【図12】本発明の第4の実施形態に係るカバー端部封止構造における小径電線及び大径電線の封止部材を伴ったカバー内配設状態の各側面図である。
【図13】本発明の他の実施形態に係るカバー端部封止構造におけるカバー、封止部材、及び副封止体の側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
(本発明の第1の実施形態)
以下、本発明の第1の実施形態を前記図1ないし図3に基づいて説明する。
【0026】
前記各図において本実施形態に係るカバー端部封止構造は、前記線状体として架設状態の複数本が所定箇所で接続状態とされる電線10と、各電線の接続した接続部を外側から覆うカバー11と、可撓性を有して弾性変形する材質で形成され、先細状の切欠き部15が設けられる封止部材12とを備え、この封止部材12の切欠き部15に電線10を挿入した状態として、電線10がカバー11から露出するカバー端部で、カバー11内周面と電線10との間に封止部材12を位置させるものである。
【0027】
前記電線10は、心線に絶縁性の外被を被覆した公知の絶縁電線であり、詳細な説明を省略する。この電線10が架設された状態で、複数本、心線同士を電気的に接続された箇所、すなわち、電線10の接続部に前記カバー11が取付けられる。
【0028】
前記カバー11は、絶縁性のある合成樹脂材料からなり、所定長さの円筒を円筒軸方向に沿って半分に割った形状の二つの半円筒体を一体に連結して開閉可能とした略円筒体として形成され、前記線状体としての複数の電線10の接続部を外側から被覆可能とされる構成である。このカバー11が、各電線10の接続部における接続された心線等からなる露出充電部を覆うことで、短絡事故等の発生を防止する仕組みである。カバー11は電線10の接続部を覆う所定の大きさとされる関係上、カバー11の端部から各電線10が露出してそのまま架設される向きに延伸する状態となっている。このカバー11の長手方向両端部における円筒内面形状の内周面と電線10との間に前記封止部材12がそれぞれ配設される。
【0029】
前記封止部材12は、可撓性を有して弾性変形する多孔質材で形成され、端部から内部に向けて先細状の切欠き部15が設けられると共に、この切欠き部15以外の外周部分を前記カバー11端部の内側形状と相似形となる円柱形状部分とされ、この円柱形状部分の径をカバー11端部の内周面の内径より大きくすると共に、円柱形状部分における未変形状態での円周部長さが、前記カバー11端部の内周面の周長より長くなるように円柱形状部分の径を設定されて、外形が前記内側形状を超える大きさとされる構成である。
【0030】
ただし、封止部材12の外形がカバー11の内側形状に対しあまりに大き過ぎると、カバー11内への配設状態で封止部材12の変形が封止部材をなす材質の適切な弾性変形範囲を超えて支障が生じることから、封止部材12の外形の大きさは、カバー11内への配設状態での封止部材12の当初状態に対する圧縮変形割合、言換えると、圧縮変形前後での圧縮方向と平行な面の面積の変化割合、が封止部材をなす材質の限界の圧縮率より小さくなるように設定するのが好ましい。例えば、この封止部材12の外形の大きさは、カバー11内への電線10を伴う配設状態で封止部材12の当初状態に対する圧縮変形割合が約80%を超えない程度となる大きさとするのが好ましい。
【0031】
この他、防水性を考慮する場合、カバー内側形状に対する封止部材12の外形の大きさの設定は、封止部材12をなす素材の特性に応じて防水性を確保できる適切な圧縮率を得るようにしながらも、封止部材12のカバー11内への配設作業性を考慮して圧縮割合ができるだけ小さくなるようにするのが好ましい。
【0032】
なお、封止部材12の厚さは、切欠き部周囲や外周部分がそれぞれ電線10やカバー11内周面に密着した状態で封止部材12自体が容易にずれない程度の面圧を確保できる寸法(例えば、約20mm)とされ、通常、封止部材12は全体として略板状とされ、厚さは前記円柱形状部分の径と比べれば小さなものとされるが、これに限られるものではなく、厚さが円柱形状部分の径程度やこれを超えるような寸法となってもかまわない。
【0033】
この封止部材12は、弾性変形可能で内部に気体を気泡状として含む多孔質構造、例えばスポンジ状、とされ、外力による押圧により内部の気体が圧縮される又は外部に流出することで、封止部材全体として体積減少(収縮)を伴うものである。外力が取除かれると、弾性で膨張して元の形状に復元することとなる。こうした多孔質構造体を封止部材として用いることで、電線10やカバー11内周面との接触で相対的に押圧力を受けた封止部材12各部のうち、これら電線10やカバー11内周面に相対的に押しのけられる分が、体積変化のない場合のように行き場を失って、封止部材12の厚さ方向、すなわち電線長手方向やカバー内周面の円筒軸方向に膨出したりずれたりした不安定な状態となることはなく、封止部材12は力の加わった方向にスムーズに収縮変形して、押圧力の反力で電線10外周面やカバー11内周面を相対的に押圧して密着した状態が得られる。
【0034】
この封止部材12としては、適度な弾性を有すると共に、耐候性に優れ長期にわたり弾
性を維持できるEPDMスポンジを用いるのが好ましいが、同様の性質を有するものであれば他の材質でもかまわない。なお、封止部材12がスポンジ状とされる場合、防水性の点から、部材自体が吸水しない独立発泡タイプとするのが好ましい。
【0035】
前記切欠き部15は、端部の切欠き開口幅を前記線状体としての電線10の太さ(外径)より大きくされ、封止部材12の内部に先端を向けた先細状とされて切欠かれるものである。切欠き部15の先端位置は、封止部材12内部の、封止部材12を変形させていない状態における前記円柱形状部分の円柱中心位置やその近傍とされる。
【0036】
この切欠き部15の先細形状は、封止部材12端部の開口部分から封止部材12内部の切欠き先端に近づくほど切欠き幅を小さくすることに加え、その幅変化の割合を徐々に小さくしたものとなっている。一方、封止部材12においては、この封止部材12の切欠き部15に面する部位、すなわち切欠き部15を挟む二つの面12a、12bが、略円弧状断面が厚さ方向に連続する曲面状とされており、これらの曲面が封止部材12の前記円柱中心位置で交わる配置となることで、先細の切欠き部15を生じさせている。
【0037】
封止部材12におけるこの切欠き部15を挟む各面12a、12bの変形前状態での長さは、封止部材12のカバー内への配設状態、すなわち変形状態で前記各面12a、12bが電線10外周に密着すると共に、各面12a、12bには電線10外周に接しない残り部分が存在し、且つこの残り部分同士が互いに接触して切欠き部15を確実に閉じた状態とすることが可能な寸法とする。
【0038】
例えば、仮に、封止部材12がカバー11内への配設状態で切欠き部15を閉じる変形が可能とした場合の、切欠き部15を挟む各面12a、12bの電線10外周に接しない前記残り部分の長さ、すなわちカバー内周面の半径と電線外面の半径との差、と、各面12a、12bがそれぞれ電線10に密着する長さに対応する電線半周長、との合計値を、各面12a、12bの変形前状態での長さが少なくとも上回るように、封止部材12における切欠き部15の形状を設定する。そして、未変形状態の封止部材12における前記円柱形状部分の径や、切欠き部15の先端位置などの他の条件も成立させることを考慮すると、電線10に対し適切に使用可能な封止部材12の外形の大きさにはある程度制約が生じることとなる。
【0039】
この封止部材12の切欠き部15に電線10を挿入した状態として、カバー11内周面と電線10との間に封止部材12を位置させることで、カバー11端部で電線10位置をカバー11内側空間の中心位置付近に固定しつつ、カバー11内周面と電線10間の隙間を塞いで、異物のカバー11内への進入を防止する仕組みである。なお、封止部材12の形状や圧力に対する変形度合を調整することで、封止部材12の電線等の線状体やカバー端部内周に対する密着状態を変化させられ、カバー11内への進入阻止対象となる異物としては、昆虫や小動物、これらの巣材にとどまらず、雨水等の水も含めることができる。
【0040】
次に、前記構成に基づくカバー端部封止構造を用いたカバー内周面と電線間の隙間封止作業工程について説明する。まず、架設状態の電線10にカバー11を取付ける過程で、封止部材12の切欠き部15に、その先端に向けて電線10を押付けるようにして挿入する。封止部材12では、切欠き部15に面する部位同士が自ら電線10を挟みつつ自然に接近し合い、この封止部材12を電線10ごと開放状態のカバー11端部内側に位置させ、カバー11を完全に閉じ合わせ、封止部材12をカバー11内に配設すると、カバー端部内周面との接触で、カバー内側形状より大きい封止部材12は相対的に周囲から押圧力を受ける状態となって変形する。
【0041】
封止部材12では、切欠き部15に面する部位同士が自ら両側から接近して、切欠き部
15が塞がった状態となることで、封止部材12が電線10全周を取巻き、電線10外周面と封止部材12とが密着すると共に、封止部材12とカバー11内周面も密着することとなり、電線10とカバー11との間の隙間を塞ぐことができる。特に切欠き部15では、封止部材12の端部から切欠き先端に近づくほど切欠き幅を小さくし、且つ幅変化の割合を徐々に小さくした切欠き形状としていることで、カバー11内側で周囲から押圧力を受ける状況下では、封止部材12の切欠き部15に面する部位同士が電線10の外側でほぼ均等に接近し、隙間を生じさせることなく当接し密着して、切欠き部15を閉塞可能となっている。これにより、この切欠き部15に面する部位同士の接近状態が片寄って電線近傍又は電線から離れた端部のみで当接し、残りの部分で隙間が生じるような事態を防げる。
【0042】
この他、封止部材12における切欠き部15以外の外周部分が、カバー11端部の内側形状に対応した円柱形状とされて、カバー11内周面との関係が一様なものとなることで、封止部材12の外周部分におけるカバー11内周面との接触による圧縮変形状態が一様となり、カバー11内面沿い各位置における封止部材12の変形に偏りが生じず、封止部材12とカバー11内面との密着をより確実なものとすることができる。また、この封止部材12における切欠き部15近傍部分にも周囲の外周部分から均等に力が加わることで、切欠き部近傍部分における変形にも偏りが生じることはなく、切欠き部15に面する部位同士が密着して確実に切欠き部15を閉じ、且つ電線10を取囲む部分も電線10周囲に隙間無く密着する変形状態が得られる。
【0043】
こうして電線10と封止部材12との密着並びに封止部材12とカバー11内周面との密着を確実なものとして、カバー11端部におけるカバー11内側空間の中央に電線10を位置させつつ、カバー11内周面と電線10との間の隙間を塞ぐことができ、カバー11を設置している間、外部からカバー11内への異物の進入を防止できる。そして、カバー11による被覆対象の電線の太さが多少変わった場合でも、この電線の周囲に配置される封止部材12の変形の度合が若干変化するのみで電線への密着を実現でき、一種類の封止部材12で広い寸法範囲の電線10に対応できる。
【0044】
一方、カバー11内の電線10の接続状態を変える等、電線10に対する作業を行う際や、交換や撤去のためにカバー11を電線10から取外したりする際にカバー11を開放する場合、カバー11と封止部材12が離隔する状態となるものの、弾性力でカバー11や電線10への密着を維持していた封止部材12は壊れることなくその形態を維持でき、封止部材12はカバー11や電線10に対し破壊を伴わずに離脱可能である。加えて、封止部材12は弾性により元の形状に復元可能であることから、封止部材12を問題なく継続使用あるいは他の封止用に再使用できることとなり、封止部材12の使用に係るコストの低減が図れる。
【0045】
また、こうしたカバー11と電線10間における隙間の封止解除にあたって、封止部材12は壊れることなくその一体性を維持することで、封止解除に係る作業は封止部材12のカバー11や電線10からの取外しのみとなり、容易に作業が行え、封止の場合も封止部材12の電線10やカバー11への単なる取付で作業が済むことと合わせて、封止部材12の使用により作業ミス等の問題が生じにくく、且つ作業工数を低減できる。
【0046】
さらに、カバー11についても、封止に際して加工せずに済む上、封止解除後も残留物の除去等の後処理が不要となることから、その再使用も速やかに問題なく行え、適用する電線等の制約も最初の使用前と変りはなく、広く使用に供することができる。
【0047】
このように、本実施形態に係るカバー端部封止構造においては、電線10とカバー11との間の隙間に、端部から中央へ向う切欠き部15が設けられた弾性材製の封止部材12
を配置し、架設状態の電線10にカバー11を取付ける際、封止部材12の中央に向うほど切欠き幅の小さくなる切欠き部15に電線10を挿入し、その先端に向け電線10を押付けると、切欠き部15先端周囲部分が電線10から押圧され変形するのに伴い、封止部材12の切欠き部15に面する部位同士が電線10を挟みつつ自然に接近し合う変形が生じることとなり、その上で、カバー11内に封止部材12及び電線10を配設すると、カバー内側形状より大きい封止部材12は周囲から押圧力を受ける状態となってさらに変形し、電線10に沿って切欠き部開口が塞がることから、電線10外周面と封止部材12、並びに、封止部材12とカバー11内周面をそれぞれ密着させることができ、電線10とカバー11との間の隙間を確実に塞ぐことができる。また、封止部材12が変形して電線10全周を取巻く状態となることで、一つの封止部材12の電線10に対する適用範囲を広いものとすることができる。
【0048】
なお、前記実施形態に係るカバー端部封止構造においては、カバー11で外側を覆い、且つ封止部材12で隙間を塞ぐ対象の線状体を、電線10とする構成としているが、これに限らず、メタルケーブルや光ケーブル等のケーブル、電流や信号の流れない支持用の架設線などの線材、長手方向に同じ断面形状が連続する細長い管材や棒材など、線状のものであればよく、こうした線状体中の材質、構造や、可撓性を有するか否かを問わず適用できる。
【0049】
また、前記実施形態に係るカバー端部封止構造においては、封止部材12を多孔質の弾性材で形成し、カバー11内周面と電線10との間への配置状態でカバー11内周面や電線10外周面との接触に伴う相対的な押圧力で封止部材12を収縮変形させる構成としているが、これに限らず、封止部材が電線等の線状体やカバー内周面に密着する場合に、封止部材がその厚さ方向、すなわち電線長手方向やカバー内周の円筒軸方向等に膨出する状態が許容されるのであれば、圧力を受けて収縮変形せず、ほぼ体積を維持した状態で変形する、例えばゴム、エラストマーやゲル材等の弾性材を、絶縁性や耐候性等の他の条件を満たす範囲で、封止部材として使用する構成とすることもでき、前記実施形態同様にカバーと電線間の隙間を塞ぐことができる。
【0050】
また、前記実施形態に係るカバー端部封止構造において、カバー11内への配設状態で封止部材12における電線10の位置は、切欠き部15の形状に基づいてカバー11内側空間の中央とする構成としているが、これに限らず、カバーで覆う対象となる電線等の線状体の種類や用途に応じて、線状体をカバー内側空間の中央以外の任意の位置に支持する構成としてもかまわない。さらに、封止部材12の切欠き部15は封止部材12に一つのみ設けられる構成としているが、これに限らず、カバーで覆う対象となる電線等の線状体の数に対応して、封止部材に線状体を挿入可能な切欠き部を複数設ける構成とすることもできる。
【0051】
また、前記実施形態に係るカバー端部封止構造において、カバー11を二つの半円筒体が一体となった一部材で形成される開閉式の円筒形カバーとする構成としているが、これに限らず、対象とする電線等の線状体や用途に対応して円筒以外の形状としたり、一つの部材のみでなく複数の部品からなるものとすることもでき、例えば、封止部材を電線等の線状体ごとカバー端部にあたる部品の内側に位置させ、カバーをなす部品を組立てて、封止部材をカバー内に配設した状態とすることで、前記実施形態同様、カバー端部内周面との接触で、カバー内側形状より大きい封止部材が相対的に周囲から押圧力を受ける状態となって変形し、線状体とカバー内周面との間を封止部材で確実に閉塞して隙間を生じさせない状態が得られることとなる。
【0052】
(本発明の第2の実施形態)
本発明の第2の実施形態を前記図4及び図5に基づいて説明する。
前記各図において本実施形態に係るカバー端部封止構造2は、前記第1の実施形態同様、カバー21の端部で、カバー21内周面と電線20との間に封止部材22を位置させる一方、異なる点として、可撓性を有して弾性変形する材質で形成され、前記封止部材22の切欠き部25のある側を覆う状態で、カバー21内周と電線20との間に位置させられる副封止体23を備える構成を有するものである。なお、カバー21及び封止部材22については、前記第1の実施形態同様の構成であり、説明を省略する。
【0053】
前記電線20は、その太さ(外径)が切欠き部25の切欠き開口幅より小さい関係は保ちつつ、封止部材22の切欠き部25を挟む各面22a、22bの長さに対する電線の太さの割合を、前記第1の実施形態の場合より大きくしたものとして用いられるが、この太さ以外の構成は前記第1の実施形態同様のものであり、詳細な説明を省略する。
【0054】
ただし、電線20は、封止部材22に対し、電線の太さの変化を封止部材22の変形状態変化で吸収して、電線と封止部材22との密着並びに封止部材22とカバー21内周面との密着を確保できる許容範囲を超えた太さとなっており、封止部材22においては、電線外径が大きくなったのに伴って切欠き部25を挟む面同士が近寄りきれないのに対し、これを補って切欠き部25を閉止するための十分な変形が封止部材22単独では得られない状態となっている。
【0055】
すなわち、封止部材22における切欠き部25を挟む各面22a、22bの変形前状態での長さが、例えば、仮に封止部材22がカバー21内への配設状態で切欠き部25を閉じる変形が可能とした場合の、切欠き部25を挟む各面22a、22bがそれぞれ電線20に密着する長さに対応する電線半周長と、各面22a、22bの電線20外周に接しない残り部分の長さに対応する、カバー内周面の半径と電線外面の半径との差、との合計値を上回るようであれば、封止部材22は余裕のある変形代を有し、切欠き部25を閉じて電線20とカバー21内周面との間に隙間を生じさせないものとなり、逆にこの関係を成立させることのできる電線20の外径の範囲が、封止部材22の対応できる電線外径の許容範囲とみなせる。よって、電線20がこの許容範囲を超える外径となった場合、封止部材22では切欠き部25を挟む各面22a、22bの長さが電線20に対し十分でないために、切欠き部25を完全に閉じるような変形が行えず、そのままでは切欠き部25の開いた部分が残って、電線20とカバー21内周面との間に隙間が生じる状態となる。
【0056】
前記副封止体23は、封止部材22同様の可撓性を有して弾性変形する多孔質材で形成され、曲率大の円弧と曲率小の円弧を組合わせてなる断面形が厚さ方向に連続した立体形状をなす構成である。この副封止体23が、曲率小の円弧側を電線20及び切欠き部25に向け、曲率大の円弧側をカバー21内周面に向けて、封止部材22の切欠き部25のある側に当接させ、封止部材22と共にカバー21内周と電線20との間に配設される。
【0057】
次に、前記構成に基づくカバー端部封止構造を用いたカバー内周面と電線間の隙間封止作業工程について説明する。前記第1の実施形態同様、架設状態の電線20にカバー21を取付ける過程で、封止部材22の切欠き部25に電線20を挿入する。そして、封止部材22に電線20を押付けて電線20を封止部材22の中央付近に位置させつつ、副封止体23をその曲率小の円弧側を封止部材22の切欠き部25に向けて封止部材22に当接させる。このようにした封止部材22と副封止体23を電線20ごとカバー21端部内側に位置させ、カバー21を完全に閉じ合わせ、封止部材22と副封止体23がカバー21端部内側に配設された状態とする。
【0058】
この時、副封止体23はカバー21端部内周面とこのカバー内側形状より大きい封止部材22との間に挟まれることで押圧力を受け、収縮変形する一方で、封止部材22側に押圧力を与えることとなる。
【0059】
また、封止部材22も、カバー21端部内周面及び副封止体23との接触で周囲から押圧力を受ける状態となって変形し、切欠き部25に面する部位同士が両側から接近する。この切欠き部25に面する部位のうち、電線20に近い部分同士は密着して電線20に沿い、封止部材22が電線20全周を取巻いて電線20外周面と密着する状態が得られるものの、切欠き部25に面する部位のうち電線20から離れた側では、電線20の径が大きくなっている分、切欠き部25に面する部位同士が近寄りきれないままとなり、封止部材22単独では切欠き部25開口が塞がらない状態となる。ただし、この切欠き部位置の外側には副封止体23が存在していることから、各方向から押圧力を受ける副封止体23が変形しつつ切欠き部25の開いた部分に食込み、封止部材22に完全に密着して切欠き部25を塞ぐこととなる。
【0060】
この場合、電線20の径が大きいことで、電線20が封止部材22から受ける反力も大きくなり、封止部材22単独では電線20をカバー21の内側の中心に位置させられなくなっているが、封止部材22と共に副封止体23をカバー21内側に配設して、副封止体23が封止部材22の切欠き部25側を押すようにしていることで、電線20をカバー21端部の内側空間の中心位置付近に適切に固定できる。
【0061】
こうして封止部材22が電線20全周を取巻き、電線20外周面と封止部材22とが密着すると共に、封止部材22と副封止体23、封止部材22とカバー21内周面、及び副封止体23とカバー21内周面もそれぞれ密着することで、電線20とカバー21内周面との間の隙間を塞ぐことができ、前記第1の実施形態同様に、カバー21を設置している間、カバー21端部からの異物の進入を防止できることとなる。
【0062】
この他、電線20に対する作業を行う際や、交換や撤去のためにカバー21を電線20から取外したりする際にカバー21を開放する場合、カバー21と封止部材22及び副封止体23が離隔する状態となるものの、封止部材22同様に弾性力でカバー21や封止部材22への密着を維持していた副封止体23は壊れることなくその形態を維持でき、副封止体23は封止部材22と共にカバー21や電線20に対し破壊を伴わずに離脱させられ、また副封止体23は弾性により元の形状に復元可能であることから、副封止体23も封止部材22同様に継続使用あるいは他の封止用に再使用できる。
【0063】
このように、本実施形態に係るカバー端部封止構造においては、封止部材22と同様の弾性材からなる副封止体23を、電線20が挿入された封止部材22の切欠き部25側に配置しつつカバー21内周と電線20間に位置させることから、封止部材22に対し電線20の大きさが適合範囲から外れるために、封止部材22のみでは切欠き部25を挟む面同士が近寄りきれず、封止部材22のこの切欠き部位置で隙間が完全に塞がれないおそれがある場合でも、副封止体23が切欠き部25とカバー21間に位置して確実に切欠き部25を閉塞し、隙間を生じさせない状態が得られることとなり、一種類の封止部材22で対応可能な電線等の線状体の太さの寸法範囲を広げられる。
【0064】
また、前記実施形態に係るカバー端部封止構造においては、封止部材22と副封止体23をあらかじめ密着させた状態で電線20とカバー21内周面との間に配設する構成としているが、これに限らず、あらかじめ封止部材及び/又は副封止体をカバー内周面に取付けた状態とし、電線等の線状体を封止部材と副封止体との間に位置させてカバーを閉じ合わせるようにする構成とすることもでき、前記実施形態同様、封止体と副封止体を密着させ、最終的に電線等の線状体とカバー内周面との間に隙間のない状態に至らせることができる。
【0065】
(本発明の第3の実施形態)
本発明の第3の実施形態を前記図6及び図7に基づいて説明する。
前記各図において本実施形態に係るカバー端部封止構造は、前記第1の実施形態同様、カバー31の端部で、カバー31内周面と電線30との間に封止部材32を位置させる一方、異なる点として、封止部材32が、切欠き部35の近傍から突出する突起部36を備える構成を有するものである。なお、カバー31については、前記第1の実施形態同様の構成であり、説明を省略する。
【0066】
前記電線30は、前記第2の実施形態同様、封止部材32の切欠き部35を挟む各面32a、32bの長さに対する電線の太さ(外径)の割合を前記第1の実施形態の場合より大きくしたものとして用いられるが、この電線30の太さ以外の点は前記第1の実施形態同様のものであり、詳細な説明を省略する。
【0067】
前記封止部材32は、前記第1の実施形態と同様の弾性変形する多孔質材で形成され、端部から内部へ向けて先細状の切欠き部35を設けられ、且つこの切欠き部35の近傍から外方に突出する突起部36を有すると共に、これら切欠き部35及び突起部36以外の外周部分を円柱形状部分とされ、この円柱形状部分の径をカバー31端部の内周面の内径より大きくすると共に、円柱形状部分における未変形状態での円周部長さが、カバー31端部の内周面の周長より長くなるように円柱形状部分の径を設定されて、外形がカバー31端部の内側形状を超える大きさとされる構成である。
【0068】
前記切欠き部35は、端部の切欠き開口幅を電線30の太さ(外径)より大きくされ、且つ封止部材32端部の開口部分から封止部材32内部の先端に近づくほど切欠き幅を小さくし且つ幅変化の割合を徐々に小さくして切欠かれるものである。切欠き部35の先端位置は、前記第1の実施形態同様、封止部材32内部の、封止部材32を変形させていない状態における前記円柱形状部分の円柱中心位置やその近傍とされる。
【0069】
封止部材32においては、封止部材32の切欠き部35に面する部位、すなわち切欠き部35を挟む二つの面のうち一方の面32aが平面状、他方の面32bが略円弧状断面を厚さ方向に連続させた曲面状とされており、これらの面32a、32bが封止部材32の前記円柱中心位置で交わる配置となることで、先細状の切欠き部35を生じさせている。
【0070】
前記突起部36は、封止部材32における切欠き部35近傍のうち、切欠き部35に面する平面32aの側に、その突出長を、未変形状態におけるこの突出長と、切欠き部35における外周の長さ、すなわち封止部材32の切欠き部35を挟む二つの面32a、32bの長さ、との合計寸法が、電線30外周の周長より長くなるようにして突出形成される構成である。突起部36の側面のうち切欠き部35寄りの面は、切欠き部35側の面32aと連続する平面状とされている。
【0071】
この封止部材32に対し、カバー31端部の内側形状はより小さいものとなっていることから、封止部材32のカバー31端部内側への配設に伴い、封止部材32は周囲のカバー31内周面から相対的に押圧力を受けて圧縮変形状態となる。
【0072】
この封止部材32の切欠き部35に電線30を挿入し、さらに突起部36を曲げて電線30と切欠き部35を突起部36で覆った状態として、カバー31内周面と電線30との間に封止部材32を位置させることで、カバー31端部で電線30位置をカバー31内側空間の中心位置付近に固定しつつ、カバー31内周面と電線30間の隙間を塞いで、異物のカバー31内への進入を防止する仕組みである。
【0073】
次に、前記構成に基づくカバー端部封止構造を用いたカバー内周面と電線間の隙間封止作業工程について説明する。前記第1の実施形態同様、架設状態の電線30にカバー31
を取付ける過程で、封止部材32の切欠き部35に電線30を挿入する。そして、封止部材32に電線30を押付けて電線30を封止部材32の中央付近に位置させつつ、突起部36を切欠き部35側に曲げて切欠き部35及び電線30を突起部36で覆う。このようにした封止部材32を電線30ごとカバー31端部内側に位置させ、カバー31を完全に閉じ合わせて、封止部材32がカバー31端部内側に配設された状態とすると、カバー31端部内周面との接触で、カバー内側形状より大きい封止部材32は相対的に周囲から押圧力を受けて変形する。
【0074】
封止部材32では、切欠き部35を挟む両側の面32a、32b同士が互いに接近し、このうち電線30に近い部分では、電線30に沿って切欠き部35が塞がった状態に至り、封止部材32が電線30を取巻いて電線30外周面と密着する。また、切欠き部35を挟む両側の面32a、32bのうち電線30から離れた側では、電線30の径が大きくなっている分、面32a、32b同士が接近しにくくなっているものの、突起部36を曲げて切欠き部35側に寄せたことに加え、この突起部36がカバー31内周面側から押圧力を受けることで、切欠き部35を挟む両側の面32a、32bのうち、突起部36に連続する一方の面32aが他方の面32bに接近して密着でき、切欠き部35は塞がった状態となる。この時、突起部36は封止部材32外周部分の円柱形状部分まで達してこれに沿っており、この円柱形状部分とカバー31端部内周面との間に挟まれることで突起部36は押圧力を受け、収縮変形しつつこれらに密着することとなる。
【0075】
こうして、封止部材32が電線30全周を取巻き、電線30外周面と封止部材32とが密着すると共に、封止部材32各部とカバー31内周面も密着することとなり、電線30とカバー31との間の隙間を確実に塞ぐことができる。
【0076】
このように、本実施形態に係るカバー端部封止構造においては、封止部材32における切欠き部35の近傍に突起部36を形成し、切欠き部35に電線30を挿入し、さらに突起部36で電線30と切欠き部35を覆った状態として、封止部材32を電線30とカバー31端部内周面との間に位置させることから、仮に突起部がない場合には、封止部材が電線やカバー内周面との密着を確保できる許容範囲を超える太さである電線に対しても、突起部36を用いて切欠き部35を挟む両側の面32a、32b同士の密着を促し、切欠き部35を閉止して、電線30外周面と封止部材32、並びに、封止部材32とカバー31内周面をそれぞれ密着させることができ、一種類の封止部材32で広い寸法範囲の電線30太さに対応できる。また、カバー31内に封止部材32及び電線30を位置させた状態で、封止部材32における切欠き部35の周囲部分だけでなく突起部36も電線30を包込むこととなり、封止部材32の電線30外周に対する密着性を高めて、電線30が動くような場合でもその動きに追随して封止部材32は密着状態を維持でき、電線30が振動したとしても新たな隙間が生じにくい。
【0077】
なお、前記第3の実施形態に係るカバー端部封止構造においては、突起部36を設けた封止部材32のみを電線30とカバー31内周面との間に配設する構成としているが、これに限らず、封止部材32の本来の適用範囲を大きく超える径の電線30に対しての使用となり、封止部材のみでは隙間が発生することが予想される場合には、図8に示すように、封止部材32の突起部36外側とカバー31内周との間に副封止体37を配設する構成とすることもでき、副封止体37の押圧力で突起部36を押して確実に切欠き部35を閉塞し、また副封止体37もカバー31内周面に密着して、電線30とカバー31内周面との間に隙間を生じさせない状態が得られることとなり、一種類の封止部材32で対応可能な電線等の線状体の寸法範囲をさらに広げられる。
【0078】
(本発明の第4の実施形態)
本発明の第4の実施形態を前記図9ないし図12に基づいて説明する。
前記各図において本実施形態に係るカバー端部封止構造は、前記第1の実施形態同様、カバー41の端部で、カバー41内周面と電線40との間に封止部材42を位置させる一方、異なる点として、封止部材42が、カバー41内周の半周分の領域と接し、切欠き部45を設けられる主封止部43と、この主封止部43端部に連結されてカバー41内周の主封止部43と接していない残りの領域と主封止部43の切欠き部45のある側との間に位置させられる副封止部44とを備え、あらかじめカバー41に取付けられる構成を有するものである。なお、電線40とカバー41については、前記第1の実施形態同様の構成であり、説明を省略する。
【0079】
前記封止部材42は、前記第1の実施形態と同様の弾性変形する多孔質材で形成され、カバー41をなす連結状態の二つの半円筒体にそれぞれあらかじめ取付けられる主封止部43と副封止部44とを備える構成である。封止部材42は、カバー41を閉じ合わせて略円筒体とする際に、主封止部43と副封止部44も互いに密着して圧縮変形状態となり、あらかじめ主封止部43と副封止部44との間に位置させた電線40をカバー41内側空間の中心位置付近に固定しつつ、カバー41内周面と電線40間の隙間を塞ぐ仕組みである。
【0080】
前記主封止部43は、端部から内部へ向けて先細状の切欠き部45を設けられ、且つこの切欠き部45の近傍から外方に突出する突起部46、並びに、切欠き部45の突起部46とは反対側となる近傍位置から側方に延出する突片部47をそれぞれ有すると共に、これら切欠き部45、突起部46、及び突片部47以外の外周部分を円柱形状部分とされ、この円柱形状部分の径を未変形状態でカバー41端部の内周面の内径と同じにすると共に、円柱形状部分における未変形状態での円周部長さを、カバー41の一方の半円筒体における内周面、すなわちカバー41全体に対し半周分の内周面の周長とほぼ一致させて、円柱形状部分を前記半円筒体の内周面に貼着されて取付けられる構成であり、外形はカバー41端部の内側形状の半分を超える大きさとなる。この主封止部43における前記円柱形状部分の端部のうち突起部46に近い側の端部が、副封止部44との連結部位となる。
【0081】
前記切欠き部45は、端部の切欠き開口幅を電線40の太さ(外径)より大きくされ、また主封止部43端部の開口部分から主封止部43内部の先端に近づくほど切欠き幅を小さくし且つ幅変化の割合を徐々に小さくした先細状として切欠かれるものである。切欠き部45の先端位置は、主封止部43内部の、主封止部43を変形させていない状態における前記円柱形状部分の円柱中心位置から円柱形状部分とは離れる側にずれた近傍位置とされる。
【0082】
主封止部43においては、主封止部43の切欠き部45に面する部位、すなわち切欠き部45を挟む二つの面43a、43bが、略円弧状断面が厚さ方向に連続する曲面状とされており、これらの曲面が前記先端位置で交わる配置となることで、先細の切欠き部45を生じさせている。
【0083】
前記突起部46は、主封止部43における切欠き部45近傍に、その突出長を、未変形状態におけるこの突出長と、切欠き部45における外周の長さ、すなわち封止部材42の切欠き部45を挟む二つの面43a、43bの長さ、との合計寸法が電線40外周の周長より長くなるようにして突出形成される構成である。突起部46の側面のうち切欠き部45寄りの面は平面状とされている。また、前記突片部47は、カバー41取付作業の際には、架設状態の電線40を切欠き部45に挿入しつつ電線40にカバー41及び封止部材42を取付ける頭上での作業となることに基づき、作業性を悪化させることなく封止部材42を変形させて適切な圧縮率を得るために、突出形状としたものである。この突片部47と主封止部43の円柱形状部分との間には切欠き47aを設けており、電線40を切欠き部45に挿入した際の、突片部47の変形による切欠き部45側への曲りを生じやすく
して、切欠き部45に面する面43bの他の面43a側への近寄りを促し、特に、細径の電線を切欠き部45に挿入した場合の、切欠き部45周囲各部の圧縮変形量が小さくなることに伴う切欠き部45での隙間発生を抑えられるようにしている。
【0084】
前記副封止部44は、端部から内部に向けて切欠き部48が設けられ、且つこの切欠き部48に隣接して外方に突出する押え突起部49を有すると共に、これら切欠き部48及び押え突起部49以外の外周部分を円柱形状部分とされ、この円柱形状部分の径を、未変形状態でカバー41端部の内周面の内径と同じにすると共に、円柱形状部分における未変形状態での円周部長さを、カバー41の他方の半円筒体における内周面、すなわちカバー41全体に対し半周分の内周面の周長とほぼ一致させて、円柱形状部分を前記半円筒体の内周面に貼着されて取付けられる構成である。
【0085】
この副封止部44の外形は、前記主封止部43同様、カバー41端部の内側形状の半分を超える大きさとなり、主封止部43と副封止部44とを合わせた封止部材42全体の未変形状態での外形が、カバー41の内側形状を超える大きさとなる。カバー41の閉じ合わせに際し、副封止部44は、端部で連結されている主封止部43に対し、この副封止部44の貼着されているカバー41の他方の半円筒体の位置変化に従って、その切欠き部48及び押え突起部49のある側を、主封止部43の切欠き部45のある側に向けて、主封止部43に接近し、これと密着することとなり、これにより副封止部44は、カバー41内周の主封止部43と接していない残り領域である、カバー41の他方の半円筒体における内周面と、主封止部43の切欠き部45のある側との間に位置する状態となる。そして、封止部材42全体としては、未変形状態でカバー41の内側形状を超える大きさとなっているのに伴い、カバー41内側では、周囲のカバー41内周面から相対的に押圧力を受けて圧縮変形し、電線40やカバー41内周面に密着できることとなる。
【0086】
前記切欠き部48は、カバー41の閉じ合わせ状態で、主封止部43の突起部46が曲って切欠き部45側に寄り、この切欠き部45を塞ぐ状態となるのに対応して、曲った突起部46に無理なく当接して押圧できるように切欠かれるものである。また、前記押え突起部49は、カバー41の閉じ合わせ状態で、主封止部43の突片部47側に突出して主にこの突片部47を押圧するものであり、仮に電線40の太さが大きい場合に、電線40側に曲った突起部46が突片部47まで達しない状態となっても、大きく突出する押え突起部49が主封止部43の突起部46や突片部47だけでなく電線40外周にも強い押圧力をもって接触することができる。太い電線をカバー41内側に配置する場合、封止部材42の全体的な圧縮率が大きくなることも合わせて、この押え突起部49が確実に周囲各部と密着できることにより、電線40と主封止部43及び副封止部44との間に隙間を生じさせず、且つ主封止部43及び副封止部44とカバー41内周面の間にも隙間を生じさせない状態が得られることとなる。
【0087】
次に、前記構成に基づくカバー端部封止構造を用いたカバー内周面と電線間の隙間封止作業工程について説明する。架設状態の電線40にカバー41を取付ける過程で、カバー41と一体の封止部材42における主封止部43の切欠き部45に電線40を挿入する。そして、主封止部43に電線40を押付けながら、開いた状態のカバー41を完全に閉じ合わせて、封止部材42全体がカバー41端部内側に配設された状態とすると、主封止部43の切欠き部45、突起部46、及び突片部47のある側と、副封止部44の切欠き部48及び押え突起部49のある側とが互いに当接し、カバー41の各半円筒体の内側形状より大きい主封止部43と副封止部44は相互に押圧力を受けて変形することとなる。
【0088】
主封止部43では、副封止部44の切欠き部48周囲部分に押される突起部46が切欠き部45側に曲がって、切欠き部45及び電線40が突起部46で覆われる。そして、切欠き部45を挟む両側の面43a、43bは電線40を取巻いて電線40外周面と密着し
、また、曲った突起部46が電線40を覆いつつ突片部47に接近すると共に、副封止部44側からの押圧に伴って、突起部46は電線40に密着し、切欠き部45は完全に塞がれた状態となる。
【0089】
この時、切欠き部45を挟んで突起部46の反対側にある突片部47は、電線40が切欠き部45に挿入されて周囲を変形させるのに伴い、切欠き部45側に曲った形状に変形している。電線40の外径が小さい場合、突片部47には切欠き部45を覆う突起部46の先端部が接する(図12(A)参照)ものの、電線40の外径が大きくなると、突起部46の先端部は突片部47に達せず、離れた状態となり得る(図12(B)参照)。しかし、いずれの場合でも、突起部46や突片部47は副封止部44の押え突起部49からの押圧力を受け、これら突片部47、突起部46及び押え突起部49が相互に密着して隙間を生じさせない状態となる。
【0090】
こうして、主封止部43と副封止部44との間に隙間を生じさせない状態が得られると共に、これら主封止部43と副封止部44の接触部分における圧縮変形に伴って、カバー41の内周面と接触する各円柱形状部分もこの接触部分側から押される形で、カバー41内周面に押付けられることで、カバー41内周面から相対的に押圧力を受けて変形しつつこれに密着し、主封止部43及び副封止部44とカバー41内周面との間にも隙間を生じさせない状態が得られる。
【0091】
すなわち、封止部材42が電線40全周を取巻き、電線40外周面と封止部材42とが密着すると共に、封止部材42各部とカバー41内周面も密着することとなり、この封止部材42で電線40とカバー41との間の隙間を確実に塞ぐことができる。
【0092】
このように、本実施形態に係るカバー端部封止構造においては、封止部材42が主封止部43と副封止部44の二つの部分からなると共に、主封止部43の切欠き部45の近傍には突起部46が形成されてなり、主封止部43の切欠き部45に電線40を挿入し、カバー41の閉止に合わせて主封止部43と副封止部44を閉じると、突起部46で電線40と切欠き部45を覆った上で、さらに主封止部43の切欠き部45のある側を副封止部44で覆う状態となることから、電線40の外径が大きい場合でも、突起部46及び副封止部44が主封止部43の切欠き部45とカバー41内周面間に位置して確実に切欠き部45を閉塞し、電線40と封止部材42との間に隙間を生じさせない状態が得られることとなり、一つの封止部材42で対応可能な電線40の外径寸法範囲を広げられる。加えて、カバー41と一体に封止部材42を配設し、カバー41の閉じ合わせのみで、封止部材42の主封止部43と副封止部44とを、電線40が挟まれた状態を維持しつつ密着させて、電線40とカバー41との間に隙間のない状態を実現できることとなり、作業効率を大きく高められる。
【0093】
なお、前記第4の実施形態に係るカバー端部封止構造においては、主封止部43及び副封止部44における各外周の円柱形状部分を、カバー41の各半円筒体の内周面と同じ大きさに形成する構成としているが、これに限らず、主封止部や副封止部の各円柱形状部分の一方又は両方をカバーの各半円筒体の内周面より大きくする構成とすることもでき、主封止部や副封止部の円柱形状部分の外形が大きい分、カバー閉じ合わせ後における封止部材外周各位置の変形量を大きくすることができ、封止部材外周からのカバー内周面に対する相対的な押圧力を増大させて、封止部材外周とカバー内周面との密着度合を高められ、この部分での隙間の発生をより確実に防止できる。
【0094】
また、前記第4の実施形態に係るカバー端部封止構造においては、主封止部43と副封止部44とが一体に連結した一つの封止部材42を用いる構成としているが、この他、図13に示すように、前記第4の実施形態における主封止部43と副封止部44とが分離し
た形状に相当する、切欠き部55のある封止部材52と、この封止部材52の切欠き部55のある側に当接させる副封止体53とをそれぞれ用い、カバー51をなす連結状態の二つの半円筒体に封止部材52と副封止体53をそれぞれ取付けておく構成とすることもでき、カバー51を閉じ合わせて略円筒体とする際には、封止部材52と副封止体53とを合わせた外形が未変形状態でカバー51の内側形状を超える大きさであるのに伴い、封止部材52と副封止体53は周囲のカバー51内周面から相対的に押圧力を受けて圧縮変形状態となり互いに密着し、あらかじめ封止部材52と副封止体53との間に位置させた電線等の線状体をカバー51内側空間の中心位置付近に固定しつつ、カバー51内周面と線状体間の隙間を塞げることとなり、こうした隙間のない状態をカバー51の閉じ合わせのみで実現できることとなり、作業効率を大きく高められる。
【符号の説明】
【0095】
10、20、30、40 電線
11、21、31、41、51 カバー
12、22、32、42、52 封止部材
12a、12b 面
15、25、35、45、55 切欠き部
22a、22b 面
23、37、53 副封止体
32a、32b 面
36、46 突起部
43 主封止部
43a、43b 面
44 副封止部
47 突片部
47a 切欠き
48 切欠き部
49 押え突起部
【技術分野】
【0001】
本発明は、電線やケーブル等の線状体を保護するカバーにおける線状体の露出する端部で線状体とカバー間の隙間を封止して、異物等のカバー内への進入を防止する封止構造に関する。
【背景技術】
【0002】
電線やケーブル等における接続部や分岐部には、露出充電部が生じることから、短絡事故等防止のために絶縁用のカバーが被覆配設される。また、同じく架空配設された電線や通信ケーブルが風の強い場合等に揺れて電線同士や周囲の樹木等と接触して損傷を受けることがないように、電線や通信ケーブルに保護用のカバーを装着する場合がある。さらに、カバーの一種として、通信ケーブル同士や光ケーブル同士を接続した箇所をそれらケーブルの余長部分と共に覆って保護するケーブルクロージャーも使用されている。
【0003】
こうしたカバーは一般に絶縁性のある合成樹脂材料で形成され、一つの部材を中央で折曲げて閉じ合わせたり、複数の部材を組合わせたりして、電線等の線状体を適切に被覆する状態とされるが、カバーから電線等の線状体が露出するカバー端部におけるカバー内周面と電線等の線状体とを密着状態とするのは難しく、カバー内周面と電線等の線状体との間には隙間が生じやすかった。
【0004】
このような隙間を放置すると、隙間から異物がカバー内へ進入して、短絡や電線等の破損の原因となるため、通常は隙間を塞いで、異物のカバー内への進入を防ぐようにしている。こうした隙間を塞ぐための構造は従来から種々提案されており、その例として、特開2008−306787号公報や、特開2008−233695号公報、実開平6−29336号公報に開示されるものがある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2008−306787号公報
【特許文献2】特開2008−233695号公報
【特許文献3】実開平6−29336号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
従来の電線等とカバーとの間の封止構造は、前記各特許文献に示される構成となっており、それぞれカバー端部内側の隙間を塞いで、短絡や電線等の破損の原因となる異物のカバー内への進入を防ぐことができるものの、前記特許文献1に示したような、電線等の線状体の露出するカバー端部におけるカバー内側の隙間部分に弾性材製のスペーサを入れる構造では、スペーサにおける線状体の通る孔や切欠きに適合する線状体の太さが限られ、幅広い対応が難しいことから、線状体の太さの違いに応じて複数種類のスペーサを用意する必要があり、コスト高となってしまうという課題を有していた。
【0007】
また、前記特許文献2に示したような、線状体とカバー間の隙間に封止材を注入して隙間を埋める構造の場合、一度設置すると封止材が線状体外周面及びカバー内周面に密着した状態で定着一体化するため、カバー内の線状体の接続状態を変えたり、カバーを線状体から取外したりするなど、カバーを開放して作業を行うような場合、カバーの一部と封止材が離隔することで、カバーと線状体に密着し一体化した封止材の破壊を伴うこととなり、いったん破壊された封止材の再使用は隙間を確実に塞ぐ目的の点から困難であり、封止
材の取替え、すなわち既存の封止材の除去及び新たな封止材の再注入の必要が生じてしまうという課題を有していた。
【0008】
さらに、前記特許文献3に示したような、カバー端部を線状体の太さに対応する部位で切断して使用に供し、線状体とカバー間に隙間が生じないようにする構造の場合、カバー端部を線状体に応じた適切な位置で切断するという作業の分、取付作業者の作業工数が増え、作業ミスにつながる危険性も増大するという課題を有していた。加えて、使用に供したカバーは必ずその端部を切断されていることから、別の線状体に対し再使用を図ろうとしても、適用可能な線状体の範囲が、その時点のカバー端部を切断して調整可能な、カバー端部内寸以上の太さとなるものに限られ、カバー端部の開口より小さい線状体には適用できず、用途が限定されるという課題を有していた。
【0009】
本発明は前記課題を解消するためになされたもので、線状体の太さが多少変化しても一つの封止部材で対応でき、確実に線状体とカバーとの間の隙間を塞ぐことができると共に、封止部材を再使用可能として、封止部材に係るコストを抑えられるカバー端部封止構造を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明に係るカバー端部封止構造は、複数の線状体の接続部又は線状体の所定箇所を外側から覆うカバーにおける、線状体がカバーから露出する端部で、カバー内周面と線状体間の隙間を塞いで、異物のカバー内への進入を防止する封止構造において、可撓性を有して弾性変形する材質で形成され、端部の切欠き開口幅を前記線状体の太さより大きくされる先細状の切欠き部が設けられると共に、当該切欠き部以外の外周部分として前記カバー端部の内側形状と相似形の部分を少なくとも有し、外形が前記内側形状を超える大きさとされる封止部材を備え、前記封止部材の切欠き部に前記線状体を挿入した状態として、前記カバー内周面と線状体との間に封止部材を位置させるものである。
【0011】
このように本発明によれば、線状体とカバーとの間の隙間に配置する封止部材として、端部から内部へ向う切欠き部が設けられた弾性材を用い、線状体にカバーを取付ける際、封止部材の切欠き部の先端に向け線状体を押付けると、切欠き部先端周囲部分が線状体から押圧され変形するのに伴い、封止部材の切欠き部に面する部位同士が線状体を挟みつつ自然に接近し合う変形が生じ、またカバー内では、カバー内側形状より大きい封止部材は周囲から押圧力を受ける状態となってさらに変形し、線状体に沿って切欠き部が塞がった状態となることにより、線状体外周面と封止部材、並びに、封止部材とカバー内周面をそれぞれ密着させて、線状体とカバーとの間の隙間を容易且つ確実に塞ぐことができる。また、封止部材が線状体外側を取巻く状態に至るまでの変形量が大きい分、線状体の形状変化の影響を相対的に受けにくく、線状体のサイズについて一封止部材の許容範囲を広くすることができることに加え、封止部材はカバーや線状体に対し破壊を伴わずに取外し可能で、且つ、弾性により元の形状に復元可能であり、封止部材を問題なく再使用できるなど、封止部材の使用に係るコストの低減が図れる。さらに、隙間の封止やその解除に係る作業を封止部材の線状体やカバーに対する着脱で容易に行え、作業ミスが生じにくく、作業工数も低減できる。
【0012】
また、本発明に係るカバー端部封止構造は必要に応じて、前記カバー端部内周面が円筒内面形状とされ、前記封止部材が、前記切欠き部以外の部分を前記相似形の部分として円柱形状とされ、当該円柱形状部分における未変形状態での円周部長さが前記カバー端部の内周面の周長以上となるように円柱形状部分の径を設定されるものである。
【0013】
このように本発明によれば、封止部材における切欠き部以外の外周部分が、カバー端部の内側形状に対応した円柱形状とされ、切欠き部を除いて一様な形状となって、カバー内
周面との関係も一様なものとなることにより、封止部材の外周部分におけるカバー内周面との接触による圧縮変形状態が一様となり、カバー内面沿い各位置における封止部材の変形に偏りが生じず、封止部材とカバー内面との密着をより確実なものとすることができる。また、この封止部材における切欠き部近傍部分にも周囲の外周部分から均等に力が加わることで、切欠き部近傍部分における変形にも偏りが生じることはなく、切欠き部に面する部位同士が密着して確実に切欠き部を閉じ、且つ線状体を取囲む部分も線状体周囲に隙間無く密着する適切な変形状態が得られる。
【0014】
また、本発明に係るカバー端部封止構造は必要に応じて、前記封止部材が、前記切欠き部の近傍から外方に突出する突起部を有し、当該突起部の突出長を、当該突出長と切欠き部における外周の長さとの合計寸法が線状体外周の周長より長くなるように設定されてなり、前記封止部材の切欠き部に前記線状体を挿入し、さらに、曲げた突起部で線状体と切欠き部を覆った状態として、前記カバー内周面と線状体との間に封止部材を位置させるものである。
【0015】
このように本発明によれば、封止部材における切欠き部の近傍に突起部を形成し、切欠き部に線状体を挿入し、さらに突起部で線状体と切欠き部を覆った状態として、封止部材の切欠き部位置における隙間閉塞機能を突起部で補うことにより、仮に突起部がない場合に、封止部材が切欠き部位置で線状体やカバー内周面との密着を確保できる許容範囲を超える太さである線状体に対しても、突起部を用いて切欠き部を挟む両側の面同士の密着を促し、切欠き部を閉止して電線外周面と封止部材、並びに、封止部材とカバー内周面をそれぞれ密着させられ、一種類の封止部材で広い寸法範囲の線状体太さに対応できる。また、カバー内に封止部材及び線状体を位置させた状態で、封止部材における切欠き部の周囲部分だけでなく突起部も線状体を包込むこととなり、封止部材の線状体外周に対する密着性を高めて、線状体が動くような場合でもその動きに追随して封止部材は密着状態を維持でき、線状体が振動したとしても新たな隙間が生じにくい。
【0016】
また、本発明に係るカバー端部封止構造は必要に応じて、可撓性を有して弾性変形する材質で形成され、外周部分として前記カバー端部の内側形状と相似形の部分を少なくとも有し、前記封止部材の切欠き部のある側を覆う状態で、カバー内周面と線状体との間に位置させられる副封止体を備えるものである。
【0017】
このように本発明によれば、封止部材と同様の弾性材からなる副封止体を、線状体が挿入された封止部材の切欠き部側に配置しつつカバー内周と線状体間に位置させ、副封止体で封止部材の隙間閉塞機能を補うことにより、封止部材に対し線状体の大きさが適合範囲から外れて、線状体を挿入した切欠き部を封止部材のみでは閉止状態にできず、封止部材のこの切欠き部位置で隙間が完全に塞がれないおそれがある場合でも、副封止体が切欠き部とカバー間に位置して確実に切欠き部を閉塞し、隙間を生じさせない状態が得られることとなり、一つの封止部材で対応可能な線状体の太さの寸法範囲を広げられる。
【0018】
また、本発明に係るカバー端部封止構造は必要に応じて、前記封止部材が、少なくともカバー内周の半周分の領域と接し、前記切欠き部を設けられる主封止部と、当該主封止部端部に連結され、カバー内周の主封止部と接していない残りの領域と接する副封止部とを有してなり、前記主封止部の切欠き部に前記線状体を挿入し、またカバー内周の前記残りの領域と主封止部の切欠き部のある側との間に副封止部を位置させ、主封止部の切欠き部のある側を副封止部で覆う状態として、カバー内周面と線状体との間に封止部材を位置させるものである。
【0019】
このように本発明によれば、封止部材が主封止部と副封止部の二つの部分からなり、主封止部の切欠き部に線状体を挿入し、カバー内側への配設に合わせて主封止部と副封止部
を閉じると、主封止部の切欠き部のある側を副封止部で覆う状態となることにより、線状体の太さが大きい場合でも、副封止部が主封止部の切欠き部とカバー内周面間に位置して確実に切欠き部を閉塞し、線状体と封止部材との間に隙間を生じさせない状態が得られることとなり、一つの封止部材で対応可能な線状体の太さの寸法範囲を広げられる。
【0020】
また、本発明に係るカバー端部封止構造は、複数の線状体の接続部又は線状体の所定箇所を外側から覆うカバーにおける、線状体がカバーから露出する端部で、カバー内周面と線状体間の隙間を塞いで、異物のカバー内への進入を防止する封止構造において、可撓性を有して弾性変形する材質で形成され、端部の切欠き開口幅を前記線状体の太さより大きくされる先細状の切欠き部が設けられると共に、当該切欠き部以外の外周部分として前記カバー端部の内側形状と相似形の部分を少なくとも有する封止部材と、可撓性を有して弾性変形する材質で形成され、前記封止部材との組合せ状態で前記カバー端部の内側形状を超える外形を生じさせる所定形状とされる副封止体とを備え、前記封止部材の切欠き部に前記線状体を挿入し、且つ封止部材の切欠き部のある側を前記副封止体で覆う状態として、前記カバー内周面と線状体との間に封止部材及び副封止体を位置させるものである。
【0021】
このように本発明によれば、切欠き部が設けられた弾性材製の封止部材と、この封止部材と同様の弾性材からなる副封止体とを、線状体とカバーとの間の隙間に配置するようにし、線状体にカバーを取付ける際、封止部材の切欠き部に線状体を挿入し、且つ副封止体を封止部材の切欠き部側に配置した状態で、カバー内に封止部材、副封止体及び線状体を配設すると、組合せ状態でカバー内側形状より大きい封止部材と副封止体は周囲から押圧力を受ける状態となって変形し、切欠き部に面する部位同士が接近して、線状体に沿って切欠き部が塞がり、且つ封止部材と副封止体が密着した状態となることにより、線状体外周面と封止部材及び副封止体、並びに、封止部材及び副封止体とカバー内周面とをそれぞれ密着させて、線状体とカバーとの間の隙間を容易且つ確実に塞ぐことができる。また、封止部材及び副封止体はカバーや線状体に対し破壊を伴わずに取外し可能で、且つ、弾性により元の形状に復元可能であり、封止部材及び副封止体を問題なく再使用できるなど、封止部材及び副封止体の使用に係るコストの低減が図れる。さらに、隙間の封止やその解除に係る作業を封止部材及び副封止体の線状体やカバーに対する着脱で容易に行え、作業ミスが生じにくく、作業工数も低減できる。
【0022】
また、本発明に係るカバー端部封止構造は必要に応じて、前記封止部材が、多孔質の弾性体とされて内部に気体を含む構造とされ、カバー内周と線状体との間に位置させる際の変形で内部の気体が外に出て封止部材全体として体積減少を伴うものである。
【0023】
このように本発明によれば、封止部材を多孔質体で形成し、カバー内周面と線状体との間に封止部材を配設すると、カバー内周面や線状体との接触で相対的な押圧力を受けた封止部材では、内部の気体が外に流出して、変形部分が復元可能な収縮を伴って変形することにより、カバー内周面や線状体との接触で押圧力を受けて変形する封止部材各部のうち、これらカバー内周面や線状体に相対的に押しのけられた分が、体積変化のない場合のように行き場を失って、線状体長手方向やカバー内周の円筒軸方向に膨出したりずれたりした不安定な状態となることはなく、封止部材は力の加わった方向にスムーズに収縮変形して、カバー内周面と線状体外周面にそれぞれ押圧力の反力としての適切な押圧力をもって密着する状態が確実に得られる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】本発明の第1の実施形態に係るカバー端部封止構造の概略構成説明図及び封止部材の未変形状態斜視図である。
【図2】本発明の第1の実施形態に係るカバー端部封止構造における封止部材への電線挿入状態説明図である。
【図3】本発明の第1の実施形態に係るカバー端部封止構造における封止部材のカバー内配設に係る変形状態説明図である。
【図4】本発明の第2の実施形態に係るカバー端部封止構造における封止部材への電線挿入状態説明図である。
【図5】本発明の第2の実施形態に係るカバー端部封止構造における封止部材のカバー内配設に係る変形状態説明図である。
【図6】本発明の第3の実施形態に係るカバー端部封止構造における封止部材の電線挿入前状態側面図である。
【図7】本発明の第3の実施形態に係るカバー端部封止構造における封止部材のカバー内配設に係る変形状態説明図である。
【図8】本発明の第3の実施形態に係るカバー端部封止構造における封止部材の副封止体併用の場合でのカバー内配設に係る変形状態説明図である。
【図9】本発明の第4の実施形態に係るカバー端部封止構造におけるカバー及び封止部材の側面図である。
【図10】本発明の第4の実施形態に係るカバー端部封止構造における封止部材への小径電線挿入状態側面図である。
【図11】本発明の第4の実施形態に係るカバー端部封止構造における封止部材への大径電線挿入状態側面図である。
【図12】本発明の第4の実施形態に係るカバー端部封止構造における小径電線及び大径電線の封止部材を伴ったカバー内配設状態の各側面図である。
【図13】本発明の他の実施形態に係るカバー端部封止構造におけるカバー、封止部材、及び副封止体の側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
(本発明の第1の実施形態)
以下、本発明の第1の実施形態を前記図1ないし図3に基づいて説明する。
【0026】
前記各図において本実施形態に係るカバー端部封止構造は、前記線状体として架設状態の複数本が所定箇所で接続状態とされる電線10と、各電線の接続した接続部を外側から覆うカバー11と、可撓性を有して弾性変形する材質で形成され、先細状の切欠き部15が設けられる封止部材12とを備え、この封止部材12の切欠き部15に電線10を挿入した状態として、電線10がカバー11から露出するカバー端部で、カバー11内周面と電線10との間に封止部材12を位置させるものである。
【0027】
前記電線10は、心線に絶縁性の外被を被覆した公知の絶縁電線であり、詳細な説明を省略する。この電線10が架設された状態で、複数本、心線同士を電気的に接続された箇所、すなわち、電線10の接続部に前記カバー11が取付けられる。
【0028】
前記カバー11は、絶縁性のある合成樹脂材料からなり、所定長さの円筒を円筒軸方向に沿って半分に割った形状の二つの半円筒体を一体に連結して開閉可能とした略円筒体として形成され、前記線状体としての複数の電線10の接続部を外側から被覆可能とされる構成である。このカバー11が、各電線10の接続部における接続された心線等からなる露出充電部を覆うことで、短絡事故等の発生を防止する仕組みである。カバー11は電線10の接続部を覆う所定の大きさとされる関係上、カバー11の端部から各電線10が露出してそのまま架設される向きに延伸する状態となっている。このカバー11の長手方向両端部における円筒内面形状の内周面と電線10との間に前記封止部材12がそれぞれ配設される。
【0029】
前記封止部材12は、可撓性を有して弾性変形する多孔質材で形成され、端部から内部に向けて先細状の切欠き部15が設けられると共に、この切欠き部15以外の外周部分を前記カバー11端部の内側形状と相似形となる円柱形状部分とされ、この円柱形状部分の径をカバー11端部の内周面の内径より大きくすると共に、円柱形状部分における未変形状態での円周部長さが、前記カバー11端部の内周面の周長より長くなるように円柱形状部分の径を設定されて、外形が前記内側形状を超える大きさとされる構成である。
【0030】
ただし、封止部材12の外形がカバー11の内側形状に対しあまりに大き過ぎると、カバー11内への配設状態で封止部材12の変形が封止部材をなす材質の適切な弾性変形範囲を超えて支障が生じることから、封止部材12の外形の大きさは、カバー11内への配設状態での封止部材12の当初状態に対する圧縮変形割合、言換えると、圧縮変形前後での圧縮方向と平行な面の面積の変化割合、が封止部材をなす材質の限界の圧縮率より小さくなるように設定するのが好ましい。例えば、この封止部材12の外形の大きさは、カバー11内への電線10を伴う配設状態で封止部材12の当初状態に対する圧縮変形割合が約80%を超えない程度となる大きさとするのが好ましい。
【0031】
この他、防水性を考慮する場合、カバー内側形状に対する封止部材12の外形の大きさの設定は、封止部材12をなす素材の特性に応じて防水性を確保できる適切な圧縮率を得るようにしながらも、封止部材12のカバー11内への配設作業性を考慮して圧縮割合ができるだけ小さくなるようにするのが好ましい。
【0032】
なお、封止部材12の厚さは、切欠き部周囲や外周部分がそれぞれ電線10やカバー11内周面に密着した状態で封止部材12自体が容易にずれない程度の面圧を確保できる寸法(例えば、約20mm)とされ、通常、封止部材12は全体として略板状とされ、厚さは前記円柱形状部分の径と比べれば小さなものとされるが、これに限られるものではなく、厚さが円柱形状部分の径程度やこれを超えるような寸法となってもかまわない。
【0033】
この封止部材12は、弾性変形可能で内部に気体を気泡状として含む多孔質構造、例えばスポンジ状、とされ、外力による押圧により内部の気体が圧縮される又は外部に流出することで、封止部材全体として体積減少(収縮)を伴うものである。外力が取除かれると、弾性で膨張して元の形状に復元することとなる。こうした多孔質構造体を封止部材として用いることで、電線10やカバー11内周面との接触で相対的に押圧力を受けた封止部材12各部のうち、これら電線10やカバー11内周面に相対的に押しのけられる分が、体積変化のない場合のように行き場を失って、封止部材12の厚さ方向、すなわち電線長手方向やカバー内周面の円筒軸方向に膨出したりずれたりした不安定な状態となることはなく、封止部材12は力の加わった方向にスムーズに収縮変形して、押圧力の反力で電線10外周面やカバー11内周面を相対的に押圧して密着した状態が得られる。
【0034】
この封止部材12としては、適度な弾性を有すると共に、耐候性に優れ長期にわたり弾
性を維持できるEPDMスポンジを用いるのが好ましいが、同様の性質を有するものであれば他の材質でもかまわない。なお、封止部材12がスポンジ状とされる場合、防水性の点から、部材自体が吸水しない独立発泡タイプとするのが好ましい。
【0035】
前記切欠き部15は、端部の切欠き開口幅を前記線状体としての電線10の太さ(外径)より大きくされ、封止部材12の内部に先端を向けた先細状とされて切欠かれるものである。切欠き部15の先端位置は、封止部材12内部の、封止部材12を変形させていない状態における前記円柱形状部分の円柱中心位置やその近傍とされる。
【0036】
この切欠き部15の先細形状は、封止部材12端部の開口部分から封止部材12内部の切欠き先端に近づくほど切欠き幅を小さくすることに加え、その幅変化の割合を徐々に小さくしたものとなっている。一方、封止部材12においては、この封止部材12の切欠き部15に面する部位、すなわち切欠き部15を挟む二つの面12a、12bが、略円弧状断面が厚さ方向に連続する曲面状とされており、これらの曲面が封止部材12の前記円柱中心位置で交わる配置となることで、先細の切欠き部15を生じさせている。
【0037】
封止部材12におけるこの切欠き部15を挟む各面12a、12bの変形前状態での長さは、封止部材12のカバー内への配設状態、すなわち変形状態で前記各面12a、12bが電線10外周に密着すると共に、各面12a、12bには電線10外周に接しない残り部分が存在し、且つこの残り部分同士が互いに接触して切欠き部15を確実に閉じた状態とすることが可能な寸法とする。
【0038】
例えば、仮に、封止部材12がカバー11内への配設状態で切欠き部15を閉じる変形が可能とした場合の、切欠き部15を挟む各面12a、12bの電線10外周に接しない前記残り部分の長さ、すなわちカバー内周面の半径と電線外面の半径との差、と、各面12a、12bがそれぞれ電線10に密着する長さに対応する電線半周長、との合計値を、各面12a、12bの変形前状態での長さが少なくとも上回るように、封止部材12における切欠き部15の形状を設定する。そして、未変形状態の封止部材12における前記円柱形状部分の径や、切欠き部15の先端位置などの他の条件も成立させることを考慮すると、電線10に対し適切に使用可能な封止部材12の外形の大きさにはある程度制約が生じることとなる。
【0039】
この封止部材12の切欠き部15に電線10を挿入した状態として、カバー11内周面と電線10との間に封止部材12を位置させることで、カバー11端部で電線10位置をカバー11内側空間の中心位置付近に固定しつつ、カバー11内周面と電線10間の隙間を塞いで、異物のカバー11内への進入を防止する仕組みである。なお、封止部材12の形状や圧力に対する変形度合を調整することで、封止部材12の電線等の線状体やカバー端部内周に対する密着状態を変化させられ、カバー11内への進入阻止対象となる異物としては、昆虫や小動物、これらの巣材にとどまらず、雨水等の水も含めることができる。
【0040】
次に、前記構成に基づくカバー端部封止構造を用いたカバー内周面と電線間の隙間封止作業工程について説明する。まず、架設状態の電線10にカバー11を取付ける過程で、封止部材12の切欠き部15に、その先端に向けて電線10を押付けるようにして挿入する。封止部材12では、切欠き部15に面する部位同士が自ら電線10を挟みつつ自然に接近し合い、この封止部材12を電線10ごと開放状態のカバー11端部内側に位置させ、カバー11を完全に閉じ合わせ、封止部材12をカバー11内に配設すると、カバー端部内周面との接触で、カバー内側形状より大きい封止部材12は相対的に周囲から押圧力を受ける状態となって変形する。
【0041】
封止部材12では、切欠き部15に面する部位同士が自ら両側から接近して、切欠き部
15が塞がった状態となることで、封止部材12が電線10全周を取巻き、電線10外周面と封止部材12とが密着すると共に、封止部材12とカバー11内周面も密着することとなり、電線10とカバー11との間の隙間を塞ぐことができる。特に切欠き部15では、封止部材12の端部から切欠き先端に近づくほど切欠き幅を小さくし、且つ幅変化の割合を徐々に小さくした切欠き形状としていることで、カバー11内側で周囲から押圧力を受ける状況下では、封止部材12の切欠き部15に面する部位同士が電線10の外側でほぼ均等に接近し、隙間を生じさせることなく当接し密着して、切欠き部15を閉塞可能となっている。これにより、この切欠き部15に面する部位同士の接近状態が片寄って電線近傍又は電線から離れた端部のみで当接し、残りの部分で隙間が生じるような事態を防げる。
【0042】
この他、封止部材12における切欠き部15以外の外周部分が、カバー11端部の内側形状に対応した円柱形状とされて、カバー11内周面との関係が一様なものとなることで、封止部材12の外周部分におけるカバー11内周面との接触による圧縮変形状態が一様となり、カバー11内面沿い各位置における封止部材12の変形に偏りが生じず、封止部材12とカバー11内面との密着をより確実なものとすることができる。また、この封止部材12における切欠き部15近傍部分にも周囲の外周部分から均等に力が加わることで、切欠き部近傍部分における変形にも偏りが生じることはなく、切欠き部15に面する部位同士が密着して確実に切欠き部15を閉じ、且つ電線10を取囲む部分も電線10周囲に隙間無く密着する変形状態が得られる。
【0043】
こうして電線10と封止部材12との密着並びに封止部材12とカバー11内周面との密着を確実なものとして、カバー11端部におけるカバー11内側空間の中央に電線10を位置させつつ、カバー11内周面と電線10との間の隙間を塞ぐことができ、カバー11を設置している間、外部からカバー11内への異物の進入を防止できる。そして、カバー11による被覆対象の電線の太さが多少変わった場合でも、この電線の周囲に配置される封止部材12の変形の度合が若干変化するのみで電線への密着を実現でき、一種類の封止部材12で広い寸法範囲の電線10に対応できる。
【0044】
一方、カバー11内の電線10の接続状態を変える等、電線10に対する作業を行う際や、交換や撤去のためにカバー11を電線10から取外したりする際にカバー11を開放する場合、カバー11と封止部材12が離隔する状態となるものの、弾性力でカバー11や電線10への密着を維持していた封止部材12は壊れることなくその形態を維持でき、封止部材12はカバー11や電線10に対し破壊を伴わずに離脱可能である。加えて、封止部材12は弾性により元の形状に復元可能であることから、封止部材12を問題なく継続使用あるいは他の封止用に再使用できることとなり、封止部材12の使用に係るコストの低減が図れる。
【0045】
また、こうしたカバー11と電線10間における隙間の封止解除にあたって、封止部材12は壊れることなくその一体性を維持することで、封止解除に係る作業は封止部材12のカバー11や電線10からの取外しのみとなり、容易に作業が行え、封止の場合も封止部材12の電線10やカバー11への単なる取付で作業が済むことと合わせて、封止部材12の使用により作業ミス等の問題が生じにくく、且つ作業工数を低減できる。
【0046】
さらに、カバー11についても、封止に際して加工せずに済む上、封止解除後も残留物の除去等の後処理が不要となることから、その再使用も速やかに問題なく行え、適用する電線等の制約も最初の使用前と変りはなく、広く使用に供することができる。
【0047】
このように、本実施形態に係るカバー端部封止構造においては、電線10とカバー11との間の隙間に、端部から中央へ向う切欠き部15が設けられた弾性材製の封止部材12
を配置し、架設状態の電線10にカバー11を取付ける際、封止部材12の中央に向うほど切欠き幅の小さくなる切欠き部15に電線10を挿入し、その先端に向け電線10を押付けると、切欠き部15先端周囲部分が電線10から押圧され変形するのに伴い、封止部材12の切欠き部15に面する部位同士が電線10を挟みつつ自然に接近し合う変形が生じることとなり、その上で、カバー11内に封止部材12及び電線10を配設すると、カバー内側形状より大きい封止部材12は周囲から押圧力を受ける状態となってさらに変形し、電線10に沿って切欠き部開口が塞がることから、電線10外周面と封止部材12、並びに、封止部材12とカバー11内周面をそれぞれ密着させることができ、電線10とカバー11との間の隙間を確実に塞ぐことができる。また、封止部材12が変形して電線10全周を取巻く状態となることで、一つの封止部材12の電線10に対する適用範囲を広いものとすることができる。
【0048】
なお、前記実施形態に係るカバー端部封止構造においては、カバー11で外側を覆い、且つ封止部材12で隙間を塞ぐ対象の線状体を、電線10とする構成としているが、これに限らず、メタルケーブルや光ケーブル等のケーブル、電流や信号の流れない支持用の架設線などの線材、長手方向に同じ断面形状が連続する細長い管材や棒材など、線状のものであればよく、こうした線状体中の材質、構造や、可撓性を有するか否かを問わず適用できる。
【0049】
また、前記実施形態に係るカバー端部封止構造においては、封止部材12を多孔質の弾性材で形成し、カバー11内周面と電線10との間への配置状態でカバー11内周面や電線10外周面との接触に伴う相対的な押圧力で封止部材12を収縮変形させる構成としているが、これに限らず、封止部材が電線等の線状体やカバー内周面に密着する場合に、封止部材がその厚さ方向、すなわち電線長手方向やカバー内周の円筒軸方向等に膨出する状態が許容されるのであれば、圧力を受けて収縮変形せず、ほぼ体積を維持した状態で変形する、例えばゴム、エラストマーやゲル材等の弾性材を、絶縁性や耐候性等の他の条件を満たす範囲で、封止部材として使用する構成とすることもでき、前記実施形態同様にカバーと電線間の隙間を塞ぐことができる。
【0050】
また、前記実施形態に係るカバー端部封止構造において、カバー11内への配設状態で封止部材12における電線10の位置は、切欠き部15の形状に基づいてカバー11内側空間の中央とする構成としているが、これに限らず、カバーで覆う対象となる電線等の線状体の種類や用途に応じて、線状体をカバー内側空間の中央以外の任意の位置に支持する構成としてもかまわない。さらに、封止部材12の切欠き部15は封止部材12に一つのみ設けられる構成としているが、これに限らず、カバーで覆う対象となる電線等の線状体の数に対応して、封止部材に線状体を挿入可能な切欠き部を複数設ける構成とすることもできる。
【0051】
また、前記実施形態に係るカバー端部封止構造において、カバー11を二つの半円筒体が一体となった一部材で形成される開閉式の円筒形カバーとする構成としているが、これに限らず、対象とする電線等の線状体や用途に対応して円筒以外の形状としたり、一つの部材のみでなく複数の部品からなるものとすることもでき、例えば、封止部材を電線等の線状体ごとカバー端部にあたる部品の内側に位置させ、カバーをなす部品を組立てて、封止部材をカバー内に配設した状態とすることで、前記実施形態同様、カバー端部内周面との接触で、カバー内側形状より大きい封止部材が相対的に周囲から押圧力を受ける状態となって変形し、線状体とカバー内周面との間を封止部材で確実に閉塞して隙間を生じさせない状態が得られることとなる。
【0052】
(本発明の第2の実施形態)
本発明の第2の実施形態を前記図4及び図5に基づいて説明する。
前記各図において本実施形態に係るカバー端部封止構造2は、前記第1の実施形態同様、カバー21の端部で、カバー21内周面と電線20との間に封止部材22を位置させる一方、異なる点として、可撓性を有して弾性変形する材質で形成され、前記封止部材22の切欠き部25のある側を覆う状態で、カバー21内周と電線20との間に位置させられる副封止体23を備える構成を有するものである。なお、カバー21及び封止部材22については、前記第1の実施形態同様の構成であり、説明を省略する。
【0053】
前記電線20は、その太さ(外径)が切欠き部25の切欠き開口幅より小さい関係は保ちつつ、封止部材22の切欠き部25を挟む各面22a、22bの長さに対する電線の太さの割合を、前記第1の実施形態の場合より大きくしたものとして用いられるが、この太さ以外の構成は前記第1の実施形態同様のものであり、詳細な説明を省略する。
【0054】
ただし、電線20は、封止部材22に対し、電線の太さの変化を封止部材22の変形状態変化で吸収して、電線と封止部材22との密着並びに封止部材22とカバー21内周面との密着を確保できる許容範囲を超えた太さとなっており、封止部材22においては、電線外径が大きくなったのに伴って切欠き部25を挟む面同士が近寄りきれないのに対し、これを補って切欠き部25を閉止するための十分な変形が封止部材22単独では得られない状態となっている。
【0055】
すなわち、封止部材22における切欠き部25を挟む各面22a、22bの変形前状態での長さが、例えば、仮に封止部材22がカバー21内への配設状態で切欠き部25を閉じる変形が可能とした場合の、切欠き部25を挟む各面22a、22bがそれぞれ電線20に密着する長さに対応する電線半周長と、各面22a、22bの電線20外周に接しない残り部分の長さに対応する、カバー内周面の半径と電線外面の半径との差、との合計値を上回るようであれば、封止部材22は余裕のある変形代を有し、切欠き部25を閉じて電線20とカバー21内周面との間に隙間を生じさせないものとなり、逆にこの関係を成立させることのできる電線20の外径の範囲が、封止部材22の対応できる電線外径の許容範囲とみなせる。よって、電線20がこの許容範囲を超える外径となった場合、封止部材22では切欠き部25を挟む各面22a、22bの長さが電線20に対し十分でないために、切欠き部25を完全に閉じるような変形が行えず、そのままでは切欠き部25の開いた部分が残って、電線20とカバー21内周面との間に隙間が生じる状態となる。
【0056】
前記副封止体23は、封止部材22同様の可撓性を有して弾性変形する多孔質材で形成され、曲率大の円弧と曲率小の円弧を組合わせてなる断面形が厚さ方向に連続した立体形状をなす構成である。この副封止体23が、曲率小の円弧側を電線20及び切欠き部25に向け、曲率大の円弧側をカバー21内周面に向けて、封止部材22の切欠き部25のある側に当接させ、封止部材22と共にカバー21内周と電線20との間に配設される。
【0057】
次に、前記構成に基づくカバー端部封止構造を用いたカバー内周面と電線間の隙間封止作業工程について説明する。前記第1の実施形態同様、架設状態の電線20にカバー21を取付ける過程で、封止部材22の切欠き部25に電線20を挿入する。そして、封止部材22に電線20を押付けて電線20を封止部材22の中央付近に位置させつつ、副封止体23をその曲率小の円弧側を封止部材22の切欠き部25に向けて封止部材22に当接させる。このようにした封止部材22と副封止体23を電線20ごとカバー21端部内側に位置させ、カバー21を完全に閉じ合わせ、封止部材22と副封止体23がカバー21端部内側に配設された状態とする。
【0058】
この時、副封止体23はカバー21端部内周面とこのカバー内側形状より大きい封止部材22との間に挟まれることで押圧力を受け、収縮変形する一方で、封止部材22側に押圧力を与えることとなる。
【0059】
また、封止部材22も、カバー21端部内周面及び副封止体23との接触で周囲から押圧力を受ける状態となって変形し、切欠き部25に面する部位同士が両側から接近する。この切欠き部25に面する部位のうち、電線20に近い部分同士は密着して電線20に沿い、封止部材22が電線20全周を取巻いて電線20外周面と密着する状態が得られるものの、切欠き部25に面する部位のうち電線20から離れた側では、電線20の径が大きくなっている分、切欠き部25に面する部位同士が近寄りきれないままとなり、封止部材22単独では切欠き部25開口が塞がらない状態となる。ただし、この切欠き部位置の外側には副封止体23が存在していることから、各方向から押圧力を受ける副封止体23が変形しつつ切欠き部25の開いた部分に食込み、封止部材22に完全に密着して切欠き部25を塞ぐこととなる。
【0060】
この場合、電線20の径が大きいことで、電線20が封止部材22から受ける反力も大きくなり、封止部材22単独では電線20をカバー21の内側の中心に位置させられなくなっているが、封止部材22と共に副封止体23をカバー21内側に配設して、副封止体23が封止部材22の切欠き部25側を押すようにしていることで、電線20をカバー21端部の内側空間の中心位置付近に適切に固定できる。
【0061】
こうして封止部材22が電線20全周を取巻き、電線20外周面と封止部材22とが密着すると共に、封止部材22と副封止体23、封止部材22とカバー21内周面、及び副封止体23とカバー21内周面もそれぞれ密着することで、電線20とカバー21内周面との間の隙間を塞ぐことができ、前記第1の実施形態同様に、カバー21を設置している間、カバー21端部からの異物の進入を防止できることとなる。
【0062】
この他、電線20に対する作業を行う際や、交換や撤去のためにカバー21を電線20から取外したりする際にカバー21を開放する場合、カバー21と封止部材22及び副封止体23が離隔する状態となるものの、封止部材22同様に弾性力でカバー21や封止部材22への密着を維持していた副封止体23は壊れることなくその形態を維持でき、副封止体23は封止部材22と共にカバー21や電線20に対し破壊を伴わずに離脱させられ、また副封止体23は弾性により元の形状に復元可能であることから、副封止体23も封止部材22同様に継続使用あるいは他の封止用に再使用できる。
【0063】
このように、本実施形態に係るカバー端部封止構造においては、封止部材22と同様の弾性材からなる副封止体23を、電線20が挿入された封止部材22の切欠き部25側に配置しつつカバー21内周と電線20間に位置させることから、封止部材22に対し電線20の大きさが適合範囲から外れるために、封止部材22のみでは切欠き部25を挟む面同士が近寄りきれず、封止部材22のこの切欠き部位置で隙間が完全に塞がれないおそれがある場合でも、副封止体23が切欠き部25とカバー21間に位置して確実に切欠き部25を閉塞し、隙間を生じさせない状態が得られることとなり、一種類の封止部材22で対応可能な電線等の線状体の太さの寸法範囲を広げられる。
【0064】
また、前記実施形態に係るカバー端部封止構造においては、封止部材22と副封止体23をあらかじめ密着させた状態で電線20とカバー21内周面との間に配設する構成としているが、これに限らず、あらかじめ封止部材及び/又は副封止体をカバー内周面に取付けた状態とし、電線等の線状体を封止部材と副封止体との間に位置させてカバーを閉じ合わせるようにする構成とすることもでき、前記実施形態同様、封止体と副封止体を密着させ、最終的に電線等の線状体とカバー内周面との間に隙間のない状態に至らせることができる。
【0065】
(本発明の第3の実施形態)
本発明の第3の実施形態を前記図6及び図7に基づいて説明する。
前記各図において本実施形態に係るカバー端部封止構造は、前記第1の実施形態同様、カバー31の端部で、カバー31内周面と電線30との間に封止部材32を位置させる一方、異なる点として、封止部材32が、切欠き部35の近傍から突出する突起部36を備える構成を有するものである。なお、カバー31については、前記第1の実施形態同様の構成であり、説明を省略する。
【0066】
前記電線30は、前記第2の実施形態同様、封止部材32の切欠き部35を挟む各面32a、32bの長さに対する電線の太さ(外径)の割合を前記第1の実施形態の場合より大きくしたものとして用いられるが、この電線30の太さ以外の点は前記第1の実施形態同様のものであり、詳細な説明を省略する。
【0067】
前記封止部材32は、前記第1の実施形態と同様の弾性変形する多孔質材で形成され、端部から内部へ向けて先細状の切欠き部35を設けられ、且つこの切欠き部35の近傍から外方に突出する突起部36を有すると共に、これら切欠き部35及び突起部36以外の外周部分を円柱形状部分とされ、この円柱形状部分の径をカバー31端部の内周面の内径より大きくすると共に、円柱形状部分における未変形状態での円周部長さが、カバー31端部の内周面の周長より長くなるように円柱形状部分の径を設定されて、外形がカバー31端部の内側形状を超える大きさとされる構成である。
【0068】
前記切欠き部35は、端部の切欠き開口幅を電線30の太さ(外径)より大きくされ、且つ封止部材32端部の開口部分から封止部材32内部の先端に近づくほど切欠き幅を小さくし且つ幅変化の割合を徐々に小さくして切欠かれるものである。切欠き部35の先端位置は、前記第1の実施形態同様、封止部材32内部の、封止部材32を変形させていない状態における前記円柱形状部分の円柱中心位置やその近傍とされる。
【0069】
封止部材32においては、封止部材32の切欠き部35に面する部位、すなわち切欠き部35を挟む二つの面のうち一方の面32aが平面状、他方の面32bが略円弧状断面を厚さ方向に連続させた曲面状とされており、これらの面32a、32bが封止部材32の前記円柱中心位置で交わる配置となることで、先細状の切欠き部35を生じさせている。
【0070】
前記突起部36は、封止部材32における切欠き部35近傍のうち、切欠き部35に面する平面32aの側に、その突出長を、未変形状態におけるこの突出長と、切欠き部35における外周の長さ、すなわち封止部材32の切欠き部35を挟む二つの面32a、32bの長さ、との合計寸法が、電線30外周の周長より長くなるようにして突出形成される構成である。突起部36の側面のうち切欠き部35寄りの面は、切欠き部35側の面32aと連続する平面状とされている。
【0071】
この封止部材32に対し、カバー31端部の内側形状はより小さいものとなっていることから、封止部材32のカバー31端部内側への配設に伴い、封止部材32は周囲のカバー31内周面から相対的に押圧力を受けて圧縮変形状態となる。
【0072】
この封止部材32の切欠き部35に電線30を挿入し、さらに突起部36を曲げて電線30と切欠き部35を突起部36で覆った状態として、カバー31内周面と電線30との間に封止部材32を位置させることで、カバー31端部で電線30位置をカバー31内側空間の中心位置付近に固定しつつ、カバー31内周面と電線30間の隙間を塞いで、異物のカバー31内への進入を防止する仕組みである。
【0073】
次に、前記構成に基づくカバー端部封止構造を用いたカバー内周面と電線間の隙間封止作業工程について説明する。前記第1の実施形態同様、架設状態の電線30にカバー31
を取付ける過程で、封止部材32の切欠き部35に電線30を挿入する。そして、封止部材32に電線30を押付けて電線30を封止部材32の中央付近に位置させつつ、突起部36を切欠き部35側に曲げて切欠き部35及び電線30を突起部36で覆う。このようにした封止部材32を電線30ごとカバー31端部内側に位置させ、カバー31を完全に閉じ合わせて、封止部材32がカバー31端部内側に配設された状態とすると、カバー31端部内周面との接触で、カバー内側形状より大きい封止部材32は相対的に周囲から押圧力を受けて変形する。
【0074】
封止部材32では、切欠き部35を挟む両側の面32a、32b同士が互いに接近し、このうち電線30に近い部分では、電線30に沿って切欠き部35が塞がった状態に至り、封止部材32が電線30を取巻いて電線30外周面と密着する。また、切欠き部35を挟む両側の面32a、32bのうち電線30から離れた側では、電線30の径が大きくなっている分、面32a、32b同士が接近しにくくなっているものの、突起部36を曲げて切欠き部35側に寄せたことに加え、この突起部36がカバー31内周面側から押圧力を受けることで、切欠き部35を挟む両側の面32a、32bのうち、突起部36に連続する一方の面32aが他方の面32bに接近して密着でき、切欠き部35は塞がった状態となる。この時、突起部36は封止部材32外周部分の円柱形状部分まで達してこれに沿っており、この円柱形状部分とカバー31端部内周面との間に挟まれることで突起部36は押圧力を受け、収縮変形しつつこれらに密着することとなる。
【0075】
こうして、封止部材32が電線30全周を取巻き、電線30外周面と封止部材32とが密着すると共に、封止部材32各部とカバー31内周面も密着することとなり、電線30とカバー31との間の隙間を確実に塞ぐことができる。
【0076】
このように、本実施形態に係るカバー端部封止構造においては、封止部材32における切欠き部35の近傍に突起部36を形成し、切欠き部35に電線30を挿入し、さらに突起部36で電線30と切欠き部35を覆った状態として、封止部材32を電線30とカバー31端部内周面との間に位置させることから、仮に突起部がない場合には、封止部材が電線やカバー内周面との密着を確保できる許容範囲を超える太さである電線に対しても、突起部36を用いて切欠き部35を挟む両側の面32a、32b同士の密着を促し、切欠き部35を閉止して、電線30外周面と封止部材32、並びに、封止部材32とカバー31内周面をそれぞれ密着させることができ、一種類の封止部材32で広い寸法範囲の電線30太さに対応できる。また、カバー31内に封止部材32及び電線30を位置させた状態で、封止部材32における切欠き部35の周囲部分だけでなく突起部36も電線30を包込むこととなり、封止部材32の電線30外周に対する密着性を高めて、電線30が動くような場合でもその動きに追随して封止部材32は密着状態を維持でき、電線30が振動したとしても新たな隙間が生じにくい。
【0077】
なお、前記第3の実施形態に係るカバー端部封止構造においては、突起部36を設けた封止部材32のみを電線30とカバー31内周面との間に配設する構成としているが、これに限らず、封止部材32の本来の適用範囲を大きく超える径の電線30に対しての使用となり、封止部材のみでは隙間が発生することが予想される場合には、図8に示すように、封止部材32の突起部36外側とカバー31内周との間に副封止体37を配設する構成とすることもでき、副封止体37の押圧力で突起部36を押して確実に切欠き部35を閉塞し、また副封止体37もカバー31内周面に密着して、電線30とカバー31内周面との間に隙間を生じさせない状態が得られることとなり、一種類の封止部材32で対応可能な電線等の線状体の寸法範囲をさらに広げられる。
【0078】
(本発明の第4の実施形態)
本発明の第4の実施形態を前記図9ないし図12に基づいて説明する。
前記各図において本実施形態に係るカバー端部封止構造は、前記第1の実施形態同様、カバー41の端部で、カバー41内周面と電線40との間に封止部材42を位置させる一方、異なる点として、封止部材42が、カバー41内周の半周分の領域と接し、切欠き部45を設けられる主封止部43と、この主封止部43端部に連結されてカバー41内周の主封止部43と接していない残りの領域と主封止部43の切欠き部45のある側との間に位置させられる副封止部44とを備え、あらかじめカバー41に取付けられる構成を有するものである。なお、電線40とカバー41については、前記第1の実施形態同様の構成であり、説明を省略する。
【0079】
前記封止部材42は、前記第1の実施形態と同様の弾性変形する多孔質材で形成され、カバー41をなす連結状態の二つの半円筒体にそれぞれあらかじめ取付けられる主封止部43と副封止部44とを備える構成である。封止部材42は、カバー41を閉じ合わせて略円筒体とする際に、主封止部43と副封止部44も互いに密着して圧縮変形状態となり、あらかじめ主封止部43と副封止部44との間に位置させた電線40をカバー41内側空間の中心位置付近に固定しつつ、カバー41内周面と電線40間の隙間を塞ぐ仕組みである。
【0080】
前記主封止部43は、端部から内部へ向けて先細状の切欠き部45を設けられ、且つこの切欠き部45の近傍から外方に突出する突起部46、並びに、切欠き部45の突起部46とは反対側となる近傍位置から側方に延出する突片部47をそれぞれ有すると共に、これら切欠き部45、突起部46、及び突片部47以外の外周部分を円柱形状部分とされ、この円柱形状部分の径を未変形状態でカバー41端部の内周面の内径と同じにすると共に、円柱形状部分における未変形状態での円周部長さを、カバー41の一方の半円筒体における内周面、すなわちカバー41全体に対し半周分の内周面の周長とほぼ一致させて、円柱形状部分を前記半円筒体の内周面に貼着されて取付けられる構成であり、外形はカバー41端部の内側形状の半分を超える大きさとなる。この主封止部43における前記円柱形状部分の端部のうち突起部46に近い側の端部が、副封止部44との連結部位となる。
【0081】
前記切欠き部45は、端部の切欠き開口幅を電線40の太さ(外径)より大きくされ、また主封止部43端部の開口部分から主封止部43内部の先端に近づくほど切欠き幅を小さくし且つ幅変化の割合を徐々に小さくした先細状として切欠かれるものである。切欠き部45の先端位置は、主封止部43内部の、主封止部43を変形させていない状態における前記円柱形状部分の円柱中心位置から円柱形状部分とは離れる側にずれた近傍位置とされる。
【0082】
主封止部43においては、主封止部43の切欠き部45に面する部位、すなわち切欠き部45を挟む二つの面43a、43bが、略円弧状断面が厚さ方向に連続する曲面状とされており、これらの曲面が前記先端位置で交わる配置となることで、先細の切欠き部45を生じさせている。
【0083】
前記突起部46は、主封止部43における切欠き部45近傍に、その突出長を、未変形状態におけるこの突出長と、切欠き部45における外周の長さ、すなわち封止部材42の切欠き部45を挟む二つの面43a、43bの長さ、との合計寸法が電線40外周の周長より長くなるようにして突出形成される構成である。突起部46の側面のうち切欠き部45寄りの面は平面状とされている。また、前記突片部47は、カバー41取付作業の際には、架設状態の電線40を切欠き部45に挿入しつつ電線40にカバー41及び封止部材42を取付ける頭上での作業となることに基づき、作業性を悪化させることなく封止部材42を変形させて適切な圧縮率を得るために、突出形状としたものである。この突片部47と主封止部43の円柱形状部分との間には切欠き47aを設けており、電線40を切欠き部45に挿入した際の、突片部47の変形による切欠き部45側への曲りを生じやすく
して、切欠き部45に面する面43bの他の面43a側への近寄りを促し、特に、細径の電線を切欠き部45に挿入した場合の、切欠き部45周囲各部の圧縮変形量が小さくなることに伴う切欠き部45での隙間発生を抑えられるようにしている。
【0084】
前記副封止部44は、端部から内部に向けて切欠き部48が設けられ、且つこの切欠き部48に隣接して外方に突出する押え突起部49を有すると共に、これら切欠き部48及び押え突起部49以外の外周部分を円柱形状部分とされ、この円柱形状部分の径を、未変形状態でカバー41端部の内周面の内径と同じにすると共に、円柱形状部分における未変形状態での円周部長さを、カバー41の他方の半円筒体における内周面、すなわちカバー41全体に対し半周分の内周面の周長とほぼ一致させて、円柱形状部分を前記半円筒体の内周面に貼着されて取付けられる構成である。
【0085】
この副封止部44の外形は、前記主封止部43同様、カバー41端部の内側形状の半分を超える大きさとなり、主封止部43と副封止部44とを合わせた封止部材42全体の未変形状態での外形が、カバー41の内側形状を超える大きさとなる。カバー41の閉じ合わせに際し、副封止部44は、端部で連結されている主封止部43に対し、この副封止部44の貼着されているカバー41の他方の半円筒体の位置変化に従って、その切欠き部48及び押え突起部49のある側を、主封止部43の切欠き部45のある側に向けて、主封止部43に接近し、これと密着することとなり、これにより副封止部44は、カバー41内周の主封止部43と接していない残り領域である、カバー41の他方の半円筒体における内周面と、主封止部43の切欠き部45のある側との間に位置する状態となる。そして、封止部材42全体としては、未変形状態でカバー41の内側形状を超える大きさとなっているのに伴い、カバー41内側では、周囲のカバー41内周面から相対的に押圧力を受けて圧縮変形し、電線40やカバー41内周面に密着できることとなる。
【0086】
前記切欠き部48は、カバー41の閉じ合わせ状態で、主封止部43の突起部46が曲って切欠き部45側に寄り、この切欠き部45を塞ぐ状態となるのに対応して、曲った突起部46に無理なく当接して押圧できるように切欠かれるものである。また、前記押え突起部49は、カバー41の閉じ合わせ状態で、主封止部43の突片部47側に突出して主にこの突片部47を押圧するものであり、仮に電線40の太さが大きい場合に、電線40側に曲った突起部46が突片部47まで達しない状態となっても、大きく突出する押え突起部49が主封止部43の突起部46や突片部47だけでなく電線40外周にも強い押圧力をもって接触することができる。太い電線をカバー41内側に配置する場合、封止部材42の全体的な圧縮率が大きくなることも合わせて、この押え突起部49が確実に周囲各部と密着できることにより、電線40と主封止部43及び副封止部44との間に隙間を生じさせず、且つ主封止部43及び副封止部44とカバー41内周面の間にも隙間を生じさせない状態が得られることとなる。
【0087】
次に、前記構成に基づくカバー端部封止構造を用いたカバー内周面と電線間の隙間封止作業工程について説明する。架設状態の電線40にカバー41を取付ける過程で、カバー41と一体の封止部材42における主封止部43の切欠き部45に電線40を挿入する。そして、主封止部43に電線40を押付けながら、開いた状態のカバー41を完全に閉じ合わせて、封止部材42全体がカバー41端部内側に配設された状態とすると、主封止部43の切欠き部45、突起部46、及び突片部47のある側と、副封止部44の切欠き部48及び押え突起部49のある側とが互いに当接し、カバー41の各半円筒体の内側形状より大きい主封止部43と副封止部44は相互に押圧力を受けて変形することとなる。
【0088】
主封止部43では、副封止部44の切欠き部48周囲部分に押される突起部46が切欠き部45側に曲がって、切欠き部45及び電線40が突起部46で覆われる。そして、切欠き部45を挟む両側の面43a、43bは電線40を取巻いて電線40外周面と密着し
、また、曲った突起部46が電線40を覆いつつ突片部47に接近すると共に、副封止部44側からの押圧に伴って、突起部46は電線40に密着し、切欠き部45は完全に塞がれた状態となる。
【0089】
この時、切欠き部45を挟んで突起部46の反対側にある突片部47は、電線40が切欠き部45に挿入されて周囲を変形させるのに伴い、切欠き部45側に曲った形状に変形している。電線40の外径が小さい場合、突片部47には切欠き部45を覆う突起部46の先端部が接する(図12(A)参照)ものの、電線40の外径が大きくなると、突起部46の先端部は突片部47に達せず、離れた状態となり得る(図12(B)参照)。しかし、いずれの場合でも、突起部46や突片部47は副封止部44の押え突起部49からの押圧力を受け、これら突片部47、突起部46及び押え突起部49が相互に密着して隙間を生じさせない状態となる。
【0090】
こうして、主封止部43と副封止部44との間に隙間を生じさせない状態が得られると共に、これら主封止部43と副封止部44の接触部分における圧縮変形に伴って、カバー41の内周面と接触する各円柱形状部分もこの接触部分側から押される形で、カバー41内周面に押付けられることで、カバー41内周面から相対的に押圧力を受けて変形しつつこれに密着し、主封止部43及び副封止部44とカバー41内周面との間にも隙間を生じさせない状態が得られる。
【0091】
すなわち、封止部材42が電線40全周を取巻き、電線40外周面と封止部材42とが密着すると共に、封止部材42各部とカバー41内周面も密着することとなり、この封止部材42で電線40とカバー41との間の隙間を確実に塞ぐことができる。
【0092】
このように、本実施形態に係るカバー端部封止構造においては、封止部材42が主封止部43と副封止部44の二つの部分からなると共に、主封止部43の切欠き部45の近傍には突起部46が形成されてなり、主封止部43の切欠き部45に電線40を挿入し、カバー41の閉止に合わせて主封止部43と副封止部44を閉じると、突起部46で電線40と切欠き部45を覆った上で、さらに主封止部43の切欠き部45のある側を副封止部44で覆う状態となることから、電線40の外径が大きい場合でも、突起部46及び副封止部44が主封止部43の切欠き部45とカバー41内周面間に位置して確実に切欠き部45を閉塞し、電線40と封止部材42との間に隙間を生じさせない状態が得られることとなり、一つの封止部材42で対応可能な電線40の外径寸法範囲を広げられる。加えて、カバー41と一体に封止部材42を配設し、カバー41の閉じ合わせのみで、封止部材42の主封止部43と副封止部44とを、電線40が挟まれた状態を維持しつつ密着させて、電線40とカバー41との間に隙間のない状態を実現できることとなり、作業効率を大きく高められる。
【0093】
なお、前記第4の実施形態に係るカバー端部封止構造においては、主封止部43及び副封止部44における各外周の円柱形状部分を、カバー41の各半円筒体の内周面と同じ大きさに形成する構成としているが、これに限らず、主封止部や副封止部の各円柱形状部分の一方又は両方をカバーの各半円筒体の内周面より大きくする構成とすることもでき、主封止部や副封止部の円柱形状部分の外形が大きい分、カバー閉じ合わせ後における封止部材外周各位置の変形量を大きくすることができ、封止部材外周からのカバー内周面に対する相対的な押圧力を増大させて、封止部材外周とカバー内周面との密着度合を高められ、この部分での隙間の発生をより確実に防止できる。
【0094】
また、前記第4の実施形態に係るカバー端部封止構造においては、主封止部43と副封止部44とが一体に連結した一つの封止部材42を用いる構成としているが、この他、図13に示すように、前記第4の実施形態における主封止部43と副封止部44とが分離し
た形状に相当する、切欠き部55のある封止部材52と、この封止部材52の切欠き部55のある側に当接させる副封止体53とをそれぞれ用い、カバー51をなす連結状態の二つの半円筒体に封止部材52と副封止体53をそれぞれ取付けておく構成とすることもでき、カバー51を閉じ合わせて略円筒体とする際には、封止部材52と副封止体53とを合わせた外形が未変形状態でカバー51の内側形状を超える大きさであるのに伴い、封止部材52と副封止体53は周囲のカバー51内周面から相対的に押圧力を受けて圧縮変形状態となり互いに密着し、あらかじめ封止部材52と副封止体53との間に位置させた電線等の線状体をカバー51内側空間の中心位置付近に固定しつつ、カバー51内周面と線状体間の隙間を塞げることとなり、こうした隙間のない状態をカバー51の閉じ合わせのみで実現できることとなり、作業効率を大きく高められる。
【符号の説明】
【0095】
10、20、30、40 電線
11、21、31、41、51 カバー
12、22、32、42、52 封止部材
12a、12b 面
15、25、35、45、55 切欠き部
22a、22b 面
23、37、53 副封止体
32a、32b 面
36、46 突起部
43 主封止部
43a、43b 面
44 副封止部
47 突片部
47a 切欠き
48 切欠き部
49 押え突起部
【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の線状体の接続部又は線状体の所定箇所を外側から覆うカバーにおける、線状体がカバーから露出する端部で、カバー内周面と線状体間の隙間を塞いで、異物のカバー内への進入を防止する封止構造において、
可撓性を有して弾性変形する材質で形成され、端部の切欠き開口幅を前記線状体の太さより大きくされる先細状の切欠き部が設けられると共に、当該切欠き部以外の外周部分として前記カバー端部の内側形状と相似形の部分を少なくとも有し、外形が前記内側形状を超える大きさとされる封止部材を備え、
前記封止部材の切欠き部に前記線状体を挿入した状態として、前記カバー内周面と線状体との間に封止部材を位置させることを
特徴とするカバー端部封止構造。
【請求項2】
前記請求項1に記載のカバー端部封止構造において、
前記カバー端部内周面が円筒内面形状とされ、
前記封止部材が、前記切欠き部以外の部分を前記相似形の部分として円柱形状とされ、当該円柱形状部分における未変形状態での円周部長さが前記カバー端部の内周面の周長以上となるように円柱形状部分の径を設定されることを
特徴とするカバー端部封止構造。
【請求項3】
前記請求項1又は2に記載のカバー端部封止構造において、
前記封止部材が、前記切欠き部の近傍から外方に突出する突起部を有し、当該突起部の突出長を、当該突出長と切欠き部における外周の長さとの合計寸法が線状体外周の周長より長くなるように設定されてなり、
前記封止部材の切欠き部に前記線状体を挿入し、さらに、曲げた突起部で線状体と切欠き部を覆った状態として、前記カバー内周面と線状体との間に封止部材を位置させることを
特徴とするカバー端部封止構造。
【請求項4】
前記請求項1ないし3のいずれかに記載のカバー端部封止構造において、
可撓性を有して弾性変形する材質で形成され、外周部分として前記カバー端部の内側形状と相似形の部分を少なくとも有し、前記封止部材の切欠き部のある側を覆う状態で、カバー内周面と線状体との間に位置させられる副封止体を備えることを
特徴とするカバー端部封止構造。
【請求項5】
前記請求項1に記載のカバー端部封止構造において、
前記封止部材が、少なくともカバー内周の半周分の領域と接し、前記切欠き部を設けられる主封止部と、当該主封止部端部に連結され、カバー内周の主封止部と接していない残りの領域と接する副封止部とを有してなり、
前記主封止部の切欠き部に前記線状体を挿入し、またカバー内周の前記残りの領域と主封止部の切欠き部のある側との間に副封止部を位置させ、主封止部の切欠き部のある側を副封止部で覆う状態として、カバー内周面と線状体との間に封止部材を位置させることを
特徴とするカバー端部封止構造。
【請求項6】
複数の線状体の接続部又は線状体の所定箇所を外側から覆うカバーにおける、線状体がカバーから露出する端部で、カバー内周面と線状体間の隙間を塞いで、異物のカバー内への進入を防止する封止構造において、
可撓性を有して弾性変形する材質で形成され、端部の切欠き開口幅を前記線状体の太さより大きくされる先細状の切欠き部が設けられると共に、当該切欠き部以外の外周部分として前記カバー端部の内側形状と相似形の部分を少なくとも有する封止部材と、
可撓性を有して弾性変形する材質で形成され、前記封止部材との組合せ状態で前記カバー端部の内側形状を超える外形を生じさせる所定形状とされる副封止体とを備え、
前記封止部材の切欠き部に前記線状体を挿入し、且つ封止部材の切欠き部のある側を前記副封止体で覆う状態として、前記カバー内周面と線状体との間に封止部材及び副封止体を位置させることを
特徴とするカバー端部封止構造。
【請求項7】
前記請求項1ないし6のいずれかに記載のカバー端部封止構造において、
前記封止部材が、多孔質の弾性体とされて内部に気体を含む構造とされ、カバー内周と線状体との間に位置させる際の変形で内部の気体が外に出て封止部材全体として体積減少を伴うことを
特徴とするカバー端部封止構造。
【請求項1】
複数の線状体の接続部又は線状体の所定箇所を外側から覆うカバーにおける、線状体がカバーから露出する端部で、カバー内周面と線状体間の隙間を塞いで、異物のカバー内への進入を防止する封止構造において、
可撓性を有して弾性変形する材質で形成され、端部の切欠き開口幅を前記線状体の太さより大きくされる先細状の切欠き部が設けられると共に、当該切欠き部以外の外周部分として前記カバー端部の内側形状と相似形の部分を少なくとも有し、外形が前記内側形状を超える大きさとされる封止部材を備え、
前記封止部材の切欠き部に前記線状体を挿入した状態として、前記カバー内周面と線状体との間に封止部材を位置させることを
特徴とするカバー端部封止構造。
【請求項2】
前記請求項1に記載のカバー端部封止構造において、
前記カバー端部内周面が円筒内面形状とされ、
前記封止部材が、前記切欠き部以外の部分を前記相似形の部分として円柱形状とされ、当該円柱形状部分における未変形状態での円周部長さが前記カバー端部の内周面の周長以上となるように円柱形状部分の径を設定されることを
特徴とするカバー端部封止構造。
【請求項3】
前記請求項1又は2に記載のカバー端部封止構造において、
前記封止部材が、前記切欠き部の近傍から外方に突出する突起部を有し、当該突起部の突出長を、当該突出長と切欠き部における外周の長さとの合計寸法が線状体外周の周長より長くなるように設定されてなり、
前記封止部材の切欠き部に前記線状体を挿入し、さらに、曲げた突起部で線状体と切欠き部を覆った状態として、前記カバー内周面と線状体との間に封止部材を位置させることを
特徴とするカバー端部封止構造。
【請求項4】
前記請求項1ないし3のいずれかに記載のカバー端部封止構造において、
可撓性を有して弾性変形する材質で形成され、外周部分として前記カバー端部の内側形状と相似形の部分を少なくとも有し、前記封止部材の切欠き部のある側を覆う状態で、カバー内周面と線状体との間に位置させられる副封止体を備えることを
特徴とするカバー端部封止構造。
【請求項5】
前記請求項1に記載のカバー端部封止構造において、
前記封止部材が、少なくともカバー内周の半周分の領域と接し、前記切欠き部を設けられる主封止部と、当該主封止部端部に連結され、カバー内周の主封止部と接していない残りの領域と接する副封止部とを有してなり、
前記主封止部の切欠き部に前記線状体を挿入し、またカバー内周の前記残りの領域と主封止部の切欠き部のある側との間に副封止部を位置させ、主封止部の切欠き部のある側を副封止部で覆う状態として、カバー内周面と線状体との間に封止部材を位置させることを
特徴とするカバー端部封止構造。
【請求項6】
複数の線状体の接続部又は線状体の所定箇所を外側から覆うカバーにおける、線状体がカバーから露出する端部で、カバー内周面と線状体間の隙間を塞いで、異物のカバー内への進入を防止する封止構造において、
可撓性を有して弾性変形する材質で形成され、端部の切欠き開口幅を前記線状体の太さより大きくされる先細状の切欠き部が設けられると共に、当該切欠き部以外の外周部分として前記カバー端部の内側形状と相似形の部分を少なくとも有する封止部材と、
可撓性を有して弾性変形する材質で形成され、前記封止部材との組合せ状態で前記カバー端部の内側形状を超える外形を生じさせる所定形状とされる副封止体とを備え、
前記封止部材の切欠き部に前記線状体を挿入し、且つ封止部材の切欠き部のある側を前記副封止体で覆う状態として、前記カバー内周面と線状体との間に封止部材及び副封止体を位置させることを
特徴とするカバー端部封止構造。
【請求項7】
前記請求項1ないし6のいずれかに記載のカバー端部封止構造において、
前記封止部材が、多孔質の弾性体とされて内部に気体を含む構造とされ、カバー内周と線状体との間に位置させる際の変形で内部の気体が外に出て封止部材全体として体積減少を伴うことを
特徴とするカバー端部封止構造。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【公開番号】特開2012−138987(P2012−138987A)
【公開日】平成24年7月19日(2012.7.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−287952(P2010−287952)
【出願日】平成22年12月24日(2010.12.24)
【出願人】(000207089)大電株式会社 (67)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成24年7月19日(2012.7.19)
【国際特許分類】
【出願日】平成22年12月24日(2010.12.24)
【出願人】(000207089)大電株式会社 (67)
【Fターム(参考)】
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