説明

カメラモジュールの焦点調整構造及び焦点調整方法

【課題】 小型化に有利にして精度よく焦点位置の調整を行う。
【解決手段】
レンズホルダ22の下部に設けたベース部23には、イメージセンサ11を囲みようにガイド部材26が設けられ、その内面がイメージセンサ11の周面と接することにより、レンズユニット14が光軸PLと方向の直進移動するようにガイドする。ベース部23に設けた傾斜面27がイメージセンサ11上でスライド移動される調整楔34の傾斜面34aと摺動することにより、イメージセンサ11に対してレンズユニット14が上下動する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、イメージセンサに対する撮影レンズの焦点位置を調整するカメラモジュールの焦点調整構造及び焦点調整方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
携帯電話機や携帯端末などに撮影機能を付加するためのカメラモジュールが知られている。カメラモジュールは、撮影レンズからイメージセンサまでをユニット化したものであり、このカメラモジュールをプリント基板に実装することによって省スペース化と低コスト化が図られている。従来のレンズユニットの製造方法は、プラスチックやガラスレンズを個別に成形して、鏡筒内に1枚ずつ組み入れ、調整、接着固定を行っている。近年では、レンズを個別に成形せずに、ウェハーに多数のレンズを一括成形し、ウェハー状態のままレンズを積層、調整、接着固定した後に切り出すウェハーレンズが製造されている。このようにウェハー状態で一括に行うことで、レンズユニット個々で行うことに比べて製造コストの削減を図っている。
【0003】
上記のようなウェハーレンズを用いたカメラモジュールに対しても高精細な撮影画像が要求され、イメージセンサとして数百万画素のものが用いられ高画素化が図られているものがある。高画素化されたイメージセンサの性能を十分に引き出すためには、撮影レンズの性能を高めることはもちろんであるが、撮影レンズの焦点面がイメージセンサの受光面に正しく合致するように調整しなければならない。レンズの製造上、焦点距離には若干のバラつきを含むため、高画素カメラモジュールでは撮影レンズとイメージセンサとの間隔の調整が個々のモジュールで必要となる。
【0004】
従来では、円筒状の鏡筒に撮影レンズを保持し、この鏡筒をねじ構造でイメージセンサ側に取り付け、鏡筒を回転させることによって、撮影レンズの焦点面がイメージセンサの受光面に合致するように撮影レンズとイメージセンサとの間隔を調整していた。しかしながら、上述のようなウェハーレンズを用いるカメラモジュールなどでは、イメージセンサなどと同様にレンズを矩形に切り出して実装するため、ねじ構造に組み込むことが容易ではなく、また回転によるレンズの偏心が発生するため利用することができなかった。
【0005】
一方、調節部材のスライド操作により、イメージセンサに対してレンズユニットを上下することにより焦点調節を行う構造が特許文献1により知られている。この特許文献1では、イメージセンサが取り付けられたプリント基板上にイメージセンサを囲む鏡筒ベースとイメージセンサの受光面と平行にした基準面とを設け、これら鏡筒ベースと基準面とで楔状にされた調節部材をガイドして撮影レンズの光軸と直交する方向に移動させる。レンズユニットは、その底面が調節部材と摺動する斜面とされるとともに、鏡筒ベースで光軸方向にだけ直進移動するようにガイドされている。これにより、調節部材を移動すると、レンズユニットが光軸方向に移動する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2005−274703号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ところで、上記の特許文献1のような構成をカメラモジュールに採用した場合、イメージセンサとともに、鏡筒ベースや基準面などのガイド部材をプリント基板に配置する必要がある。このためカメラモジュールの部品点数が増加し、それら部品の配置スペースが多く必要となるため、小型化を図ることができないという問題があった。また、プリント基板とイメージセンサとは、はんだで固定されるため、プリント基板面とイメージセンサ面の平行性が悪く、レンズの倒れとなる重大な問題もあった。
【0008】
本発明は、上記課題を鑑みてなされたものであって、小型化に有利であり精度よく焦点位置の調整を行うことができるカメラモジュールの焦点調整構造及び焦点調整方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を達成するために請求項1に記載のカメラモジュールの焦点調整構造では、イメージセンサに対する前記レンズホルダの撮影レンズの光軸と直交する方向の移動を規制し撮影レンズの光軸方向への移動を許容するガイド部材と、前記イメージセンサの表面の非受光エリアに対向させて前記レンズホルダに設けられ、前記非受光エリアの表面に対して傾斜したホルダ側傾斜面とを備え、前記非受光エリア上に配されて前記ホルダ側傾斜面と摺動する調整用傾斜面を有する調整楔の撮影レンズの光軸と直交するスライド方向への移動により、前記イメージセンサに対して前記レンズホルダを撮影レンズの光軸方向に移動させるものである。
【0010】
請求項2に記載のカメラモジュールの焦点調整構造では、前記ガイド部材が、前記イメージセンサを囲み、その内面が前記イメージセンサの周囲と接し、前記レンズホルダが撮影レンズの光軸方向に移動する際に、前記イメージセンサの周囲と摺動するように前記レンズホルダに設けられているものである。
【0011】
請求項3記載のカメラモジュールの焦点調整構造では、前記ホルダ側傾斜面が、撮影に供される受光エリアを挟む一対の前記非受光エリアに対向する部分にそれぞれ形成され、受光エリアを挟むように配される一対の調整楔が一体に形成された調整部材のスライド移動により、各ホルダ側傾斜面と対応する調整用傾斜面とをそれぞれ摺動させるようにしたものである。
【0012】
請求項4記載のカメラモジュールの焦点調整構造では、前記受光エリアの長辺側を長辺方向に沿って前記調整楔がスライドされるようにしたものである。
【0013】
請求項5項に記載のカメラモジュールの焦点調整構造では、前記ガイド部材が、前記一対の調整楔の各外側面と摺動することにより、前記一対の調整楔が所定方向に直進するように案内するようにしたものである。
【0014】
請求項6項に記載のカメラモジュールの焦点調整構造では、前記調整楔の前記スライド方向の移動による調整後に、前記イメージセンサに対して前記レンズホルダが固定されるものである。
【0015】
請求項7項に記載のカメラモジュールの焦点調整構造では、前記調整楔の前記スライド方向の移動による調整後に、前記イメージセンサに前記レンズホルダ及び前記調整楔がそれぞれ固定されるものである。
【0016】
請求項8項に記載のカメラモジュールの焦点調整構造では、前記スライド方向に沿った第1の溝及び第1の突条の一方が前記調整用傾斜面に他方が前記調整用傾斜面にそれぞれ形成され、前記第1の突条が前記第1の溝に入り込むようにされているものである。
【0017】
請求項9項に記載のカメラモジュールの焦点調整構造では、前記スライド方向に沿った第1の溝及び第1の突条の一方が前記調整用傾斜面に他方が前記調整用傾斜面にそれぞれ形成され、前記第1の突条が前記第1の溝に入り込むようにされるとともに、前記第1の突条の高さが前記第1の溝の深さよりも小さくされ、前記調整楔の前記スライド方向の移動による調整後に、前記第1の突条と前記第1の溝との間隙に接着剤を入れて前記レンズホルダと前記調整楔とが接着されるものである。
【0018】
請求項10項に記載のカメラモジュールの焦点調整構造では、前記調整楔に、前記非受光エリアと摺動する面に前記スライド方向に沿った第2の溝を形成し、前記調整楔の前記スライド方向の移動による調整後に、前記第2の溝と前記非受光エリアとの間隙に接着剤を入れて前記イメージセンサと前記調整楔とを接着するようにしたものである。
【0019】
請求項11記載のカメラモジュールの焦点調整方法では、撮影レンズの光軸と直交する方向へのイメージセンサに対するレンズホルダの移動を規制した状態で、イメージセンサの表面の撮影に供されない非受光エリア上を撮影レンズの光軸と直交するスライド方向に調整楔を移動し、調整楔にイメージセンサの表面に対して傾斜させて設けた調整用傾斜面とレンズホルダに設けたホルダ側傾斜面とを摺動させることにより、撮影レンズの光軸方向に前記レンズホルダを移動させるものである。
【0020】
請求項12記載のカメラモジュールの焦点調整方法では、イメージセンサを囲み、その内面がイメージセンサの周囲と接するレンズホルダに設けられたガイド部材により、撮影レンズの光軸と直交する方向へのレンズホルダの移動を規制し、調整用傾斜面とホルダ側傾斜面との摺動により、レンズホルダを撮影レンズの光軸方向に移動させるものである。
【0021】
請求項13記載のカメラモジュールの焦点調整方法では、撮影に供される受光エリアを挟む一対の非受光エリア上を調整楔がスライドされるようにしたものである。
【0022】
請求項14記載のカメラモジュールの焦点調整方法では、調整楔が受光エリアの長辺側の非受光エリアを長辺方向に沿ってスライドされるようにしたものである。
【0023】
請求項15記載のカメラモジュールの焦点調整方法では、一対の調整楔の各外側面をガイド部材の内面に摺動させることにより、一対の調整楔が所定方向に直進するように案内するようにしたものである。
【発明の効果】
【0024】
本発明によれば、イメージセンサの非受光エリア上を撮影レンズの光軸と直交するスライド方向に調整部材を移動させて、この調整部材の調整用傾斜面と、撮影レンズの光軸と直交する方向への移動が規制されたレンズホルダのホルダ側傾斜面とを摺動させることにより、撮影レンズの光軸方向に前記レンズホルダを直進移動させるようにしたから、調整部材をスライドさせるための基準面を別部品として設ける必要がなく、少ない部品点数で焦点調整を行うことができるとともに、カメラモジュールの小型化を図ることができる。また、イメージセンサの周囲を利用して、撮影レンズの光軸と直交する方向へのレンズホルダの移動を規制し、光軸方向に直進移動させるようにガイドすることにより、さらなる部品点数の削減と小型化を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】本発明を実施したカメラモジュールと調整部材とを示す斜視図である。
【図2】カメラモジュールを分解して示す分解斜視図である。
【図3】ガイド部材の配置を示す斜視図である。
【図4】カメラもモジュールに調整部材を装着した状態を示す断面図である。
【図5】傾斜面に溝を設けた調整楔を示す斜視図である。
【図6】ベース部の傾斜面に突条を設けた傾斜面を示す斜視図である。
【図7】傾斜面に溝の深さを突条の高さよりも深くして接着材を入れる隙間を形成した例を示すものである。
【図8】イメージセンサの摺動面と調整楔の底面に設けた溝との隙間に接着材を入れた例を示すものである。
【発明を実施するための形態】
【0026】
本発明を実施したカメラモジュールの外観を図1に示す。カメラモジュール10は、携帯電話や携帯端末のカメラとして内蔵されたり、車載カメラとして利用されたりする。このカメラモジュール10は、イメージセンサ11(図2参照)と、撮影レンズ12が組み込まれたレンズユニット14とから構成され、これらをユニット化したものである。カメラモジュール10は、調整部材15の操作によって、イメージセンサ11と撮影レンズ12との間隔の調整を行うことで、焦点位置の調整すなわちイメージセンサ11の受光面に撮影レンズ12の焦点面が合致させる調整が行われる。
【0027】
図2に示すように、イメージセンサ11は、CMOSタイプのイメージセンサとなっている。このイメージセンサ11は、受光素子等の回路が形成されたチップ11aの表面を薄いガラス基板11bで覆った構成であり、その表面が平坦な板状になっている。このイメージセンサ11は、ウェハーに多数のイメージセンサを形成し、各イメージセンサをダイシングによって切り分けることにより作製されている。なお、イメージセンサ11は、CDDタイプであってもよい。
【0028】
イメージセンサ11の表面は、撮影に供される受光エリア18aと、それ以外の非受光エリア18bとに区画されている。受光エリア18aのチップ11aの部分は多数の受光素子が形成された受光面となっており、この受光面上に撮影レンズ12で結像される光学像が電気的な信号に変換される。受光エリア18aは、2組の向かい合う辺のうち一方が他方よりも長い長方形となっている。非受光エリア18bには、CDS回路やA/D変換器等の各種周辺回路が形成されている。
【0029】
非受光エリア18bは、受光エリア18aを囲むように設けられているが、その一部が調整部材15をスライドさせる摺動面19として用いられる。摺動面19は、受光エリア18aの長辺側の両側方に、その長辺に平行にそれぞれ設けてある。高精度な平坦性を有するとともに撮影に供されないガラス基板11bの表面を摺動面19とすることにより、調整部材15を受光面と高い精度で平行にスライドさせることができ、イメージセンサ11と撮影レンズ12との間隔調整を高精度に行うことができる。なお、受光エリアの各辺とイメージセンサ11の各辺は平行になっている。
【0030】
レンズユニット14は、イメージセンサ11に対して、撮影レンズ12の光軸PL方向に移動自在に組み付けられ、イメージセンサ11と撮影レンズ12との間隔が調整された後に固定される。このレンズユニット14は、撮影レンズ12とレンズホルダ21とから構成され、このレンズホルダ21は、撮影レンズ12を保持する鏡筒22と、この鏡筒22の下部(イメージセンサ側)に一体に設けられたベース部23とからなる。
【0031】
鏡筒22は、箱形状であり、その中空な内部に撮影レンズ12を保持している。撮影レンズ12は、物体側から順に第1レンズ12a、第2レンズ12b(図4参照)の2枚構成となっており、周知の手法で鏡筒22に固定されている。各レンズ12a,12bは、多数のレンズが形成されたウェハーから切り出されることにより作製されるいわゆるウェハーレンズと呼ばれるものであって、光軸方向から見た形状が矩形となっているが、その形状が円形等であってもよい。なお、鏡筒22に、レンズとともに絞りやIRフィルタなどを保持させてもよい。また、撮影レンズ12の構成は、これに限られるものではない。
【0032】
鏡筒22の先端に形成した開口22aから撮影レンズ12に被写体光が入射し、鏡筒22の下部の開口22b(図4参照)より撮影レンズ12を透過した被写体光がイメージセンサ11に向けて射出される。撮影レンズ12は、固定焦点のものであるが、広範囲の撮影距離にピントが合うようにされたパンフォーカスタイプの撮影光学系となっている。カメラモジュール10の組み立て時には、上述のように光軸PL方向にレンズユニット14を移動させることによって、イメージセンサ11の受光面に撮影レンズ12の焦点面が合致するように調整される。
【0033】
ベース部23は、上述のように鏡筒22の下部に一体に設けられている。この例では鏡筒22とベース部23とを別々に作製し、接着等により一体としているが、これらを一体に成形してもよい。ベース部23は、撮影レンズ12とイメージセンサ11の受光面との間隔を調整するスペーサとしての機能するものであり、イメージセンサ11と平行に配される板状の基板25の下面にガイド部材26と傾斜面27とが設けられている。
【0034】
基板25は、イメージセンサ11の受光面側に配され、受光エリア18aに対向する部分に、開口25aが形成されている。撮影レンズ12から射出された被写体光は、この開口25aを通して受光エリア18aに入射する。
【0035】
図3に示すように、ガイド部材26は、イメージセンサ11を囲み、その内面26aがイメージセンサ11の周面と接するように設けられている。内面26aは、光軸PLと平行な面にされており、光軸PLと平行な方向にベース部23が移動した際には、イメージセンサ11の周面と摺動し、その周面と接した状態が維持されるようにしてある。これにより、レンズユニット14が光軸PLと直交する方向に移動すること、及び撮影レンズ12の倒れ、すなわち光軸PLがイメージセンサ11の受光面の法線に対して倒れることを阻止し、光軸PL方向の直進移動だけを許容する。したがって、このガイド部材26は、光軸PLと平行な方向に鏡筒22を直進移動させるためのガイド手段となる。
【0036】
なお、上述のようにウェハーからダイシングによって切り分けることにより作製されるイメージセンサ11は、ダイシングの精度が高いため、その周面が表面と垂直な面として形成される。これにより、ガイド部材26と協働してレンズユニット14を直進移動させることができる。また、ガイド部材26は、イメージセンサ11の周囲を全て囲む必要はない。
【0037】
ガイド部材26には、一対の切欠き31と一対の切欠き32とが形成されている。切欠き31は、後述するようにイメージセンサ11と基板25との間に配された調整部材15の後端部をベース部23の外側に通すためのであり、受光エリア18aの一方の短辺側のガイド部材26の両端部分にそれぞれ形成されている。切欠き32は、挿入された調整部材15の先端とガイド部材26とが干渉しないようにするためのものであり、受光エリア18aの他方の短辺側のガイド部材26の両端部分にそれぞれ形成されている。
【0038】
図2に示すように、ホルダ側傾斜面としての傾斜面27は、基板25の下面で各摺動面19に対向する部分に形成されている。各傾斜面27は、切欠き31側から切欠き32側に向かってイメージセンサ11との距離が短くなるように、高さ(突出量)が一定割合で漸増し、基準面となるイメージセンサ11の表面に対して傾斜している。
【0039】
調整部材15は、上面に傾斜面27と摺動する傾斜面34aが形成された一対の調整楔34と、これらの後端部を連結する連結部35とからなり、調整楔34が平行にされたコ字状に形成されている。一対の調整楔34の間隔は、一対の摺動面19の間隔と同じにされ、一対の切欠き31及び切欠き32の間隔もこれに同じになっている。
【0040】
調整楔34は、調整時には、平面とされた底面34bが摺動面19に接した状態となる姿勢でイメージセンサ11と基板25との間に配され、切欠き31を通して後端がベース部23の外側に配された状態とされる。このように配された状態で、傾斜面34aは、先端側から後端側に高さが一定割合で漸増するようにして、イメージセンサ11の表面に対して傾斜し、傾斜面27と平行な面となるように形成されている。
【0041】
調整を行う際には、図4に示すように、調整楔34の底面34bとイメージセンサ11の摺動面19を、また傾斜面34aとベース部23の傾斜面27とを摺動させながら調整楔34を、矢線Aで示す光軸PLと直交する方向(受光エリア18aの長辺方向)にスライドさせる。ガイド部材26によって光軸PLと平行な方向の直進移動だけがベース部23に許容されているから、この光軸PLと直交する方向の調整楔34のスライドにより、レンズユニット14が光軸PLと平行な方向(矢線B方向)に移動される。これにより、イメージセンサ11と撮影レンズ12との間隔を調整することができる。
【0042】
また、調整部材15の幅は、イメージセンサ11の幅と同じにされており、各調整楔34の外側の側面34cが、受光エリア18aの長辺方向と平行なガイド部材26の内面26aに接する。これにより、各調整楔34が移動方向を受光エリア18aの長辺方向に規制して直進移動するようにガイドする。
【0043】
次に上記構成の作用について説明する。まず各摺動面19の上にそれぞれ調整楔34が配されるように、イメージセンサ11に調整部材15が載せられる。この後に、予め組み立てられたレンズユニット14をイメージセンサ11上に配する。このときに、ガイド部材26の内側にイメージセンサ11が嵌め込まれる。これにより、ガイド部材26の内面26aにイメージセンサ11の周面が接した状態となり、鏡筒22に保持されている撮影レンズ12の光軸PLとイメージセンサ11の受光面の法線とが平行になる。また、同時に光軸PLの直交する方向でのイメージセンサ11に対してレンズユニット14が位置決めされ、受光エリア18aの中心を光軸PLが通るようにされる。さらに、ベース部23の傾斜面27と、調整楔34の傾斜面34aとが接した状態になる。
【0044】
なお、この例では、レンズユニット14が自重によりイメージセンサ11の方向に移動するものとしているが、イメージセンサ11の方向にレンズユニット14を付勢してもよい。また、イメージセンサ11上にレンズユニット14を配した後に、切欠き31から調整楔34をそれらの間に挿入してもよい。
【0045】
上記のようにして、調整部材15を装着した状態でカメラモジュール10を組み立て、このカメラモジュール10のイメージセンサ11と撮影レンズ12との間隔調整を行う。この調整では、例えばイメージセンサ11を制御する制御回路と、イメージセンサ11で撮影した画像をモニタに表示する表示回路等を備えた検査装置にカメラモジュール10がセットされる。このときにイメージセンサ11の底面を支持し、レンズユニット14が例えば上下方向に移動できるようにカメラモジュール10をセットする。次に、予め用意された調整用のテストチャートをカメラモジュール10で撮影して、その撮影された画像をモニタに表示し、このモニタの画像を見ながら調整部材15をスライド操作し、イメージセンサ11の受光面に撮影レンズ12の焦点面が合致した状態にする。
【0046】
スライド操作により、イメージセンサ11と基板25との間で、調整楔34の傾斜面34aがレンズユニット14側の傾斜面27と摺動しながらスライドする。このときに、ガイド部材26の内面26aがイメージセンサ11の周面に接した状態となっているから、レンズユニット14は、そのスライド量及び方向に応じた移動量で撮影レンズ12の光軸PLに沿って上方向または下方向に移動する。
【0047】
例えば、調整部材15をカメラモジュール10に押し込む方向にスライド操作すると、傾斜面34aが傾斜面27を上方に押し上げながら移動する。このためレンズユニット14は、光軸PLに沿って上方向に移動する。逆に調整部材15をカメラモジュール10から引き抜く方向にスライド操作すると、傾斜面27が傾斜面34aと接する位置を下方にずらしながら移動するため、レンズユニット14は、光軸PLに沿って下方向に移動する。
【0048】
いずれの場合にも、調整部材15のスライド量が小さければレンズユニット14の移動量も小さくなり、またスライド量が大きければレンズユニット14も大きく移動する。調整部材15のスライド量とレンズユニット14の移動量の関係は、傾斜面27,34aの傾きに応じて変わり、傾きを小さくすれば調整部材15のスライド量に対するレンズユニット14の移動量を小さくできる。
【0049】
調整の完了後には、イメージセンサ11に対してレンズホルダ21を固定するために、イメージセンサ11とベース部23とを接着剤等によって固定してから、調整部材15をカメラモジュール10から引き抜く。これにより、イメージセンサ11と撮影レンズ12との間隔が調整されたカメラモジュール10が完成する。
【0050】
なお、上記のようにカメラモジュール10によるテストチャート等の撮影画像に基づいて調整を行う他に、調整用カメラを用いて、検査対象となるカメラモジュール10の撮影レンズ12を通してイメージセンサ11の受光面を撮影し、その撮影画像に基づいて調整してもよい。この場合には、調整用カメラは、正しく調整されたカメラモジュール10の撮影レンズ12を通してイメージセンサ11の受光面にピントが合致するように予め焦点が調整されたものが用いられる。また、上記実施形態では、イメージセンサ11を支持して調整しているが、撮影レンズ12の焦点面をイメージセンサ11の受光面に合致させるための移動は相対的なものであるから、レンズユニット14(レンズホルダ21)を支持して、イメージセンサ11が移動するようにして調整してもよい。
【0051】
上記実施形態では、調整の完了後には、イメージセンサ11に対してレンズホルダ21を固定するためにイメージセンサ11にベース部23を固定してから調整部材15をカメラモジュール10から引き抜いているが、調整部材15とベース部23とをイメージセンサ11に接着剤等によって固定し、調整部材15をカメラモジュール10に残してもよい。あわせて調整部材15とベース部23とを接着剤等により固定してもよい。このときにカメラモジュール10から突出した調整部材15の部分を切断してもよい。このようにして調整楔34を残した場合には、摺動面19となっているガラス基板11bの表面における光の反射を塞ぐことができ、撮影される画像のコントラストの向上に有利となる。なお、イメージセンサ11に対してレンズホルダ21を固定するために、イメージセンサ11に調整部材15を固定し、この調整部材15にレンズホルダ21を固定してもよい。
【0052】
図5,図6は、調整楔の傾斜面に溝を、またベース部の傾斜面に突条をそれぞれ形成した例を示すものである。なお、以下に説明する他は、上記実施形態と同様であり、実質的に同じ部材には、同一の符号を付してその詳細な説明を省略する。
【0053】
この例では、図5に示すように、調整楔34の傾斜面34aには、断面V字状の溝41が調整部材15のスライド方向に沿って形成されている。また、図6に示すように、ベース部23の基板25の下面に形成された傾斜面27には、突条42が調整部材15のスライド方向に沿って形成されている。突条42は、溝41の断面形状と同じ形状でV字状の山型にしたものである。なお、図6は、傾斜面27を上方に向けた姿勢で描いてある。
【0054】
これによれば、調整時には、突条42が溝41に入り込んで摺動することにより、調整楔34の移動が案内され、調整楔34の移動の直進性が担保される。また、スライド操作時の押圧力により調整楔34自体に捻れが生じると、傾斜面34aが捻れて傾斜面27と密着しない状態となるため撮影レンズ12の倒れが生じるが、突条42が溝41に入り込むことにより、調整楔34の捻れを抑制することができ、撮影レンズ12の倒れを防止することができる。
【0055】
さらに、スライド操作時の押圧力により、調整楔34が受光エリア18a側に膨らむように撓むことが想定されるが、このような撓みが生じた場合には、スライド方向の調整楔34の長さが実質的に短くなり、傾斜面34aの傾斜角度が所期のものよりも大きくなったものと同じになる。このため、両方の調整楔34が撓んだ場合には、基板25は、調整楔34の後端側が高くなるように支持されて撮影レンズ12の倒れが生じ、一方の調整楔34が撓んだ場合には、レンズホルダ21にガタツキが生じる。しかしながら、突条42が溝41に入り込むように構成とすることで、調整楔34の捻れや撓みが発生することを抑制できるため、上記のような不具合を防止することができる。
【0056】
上記の例では、溝41と突条42との形状を合致させているが、図7に示すように、溝41の深さよりも突条42の高さよりも小さくして、溝41と突条42と間に隙間を形成し、この隙間に接着剤45を注入して、レンズホルダ21と調整楔34とを固定してもよい。
【0057】
なお、上記の図5ないし図7に示す例では、溝及び突条の断面形状をV字形状としたが、溝及び突条の断面形状は、これに限るものではない。例えば、溝及び突条の断面形状を長方形などの矩形や、楕円形状などとしてもよい。この場合にも、溝の深さよりも突条の高さを小さくして、溝と突条との間の隙間に接着剤を注入して、レンズユニットと調整楔とを、あるいはイメージセンサと調整楔とを固定することができる。また、レンズホルダの傾斜面に溝を形成し、調整楔の傾斜面に突条を形成してもよい。
【0058】
なお、図5,図6に示す例と同様に、イメージセンサ11に摺動面19に溝を、調整楔34の底面34bに突条を設け、溝に突条が入り込んだ状態で調整楔34をスライドさせるようにしてもよい。また、このときにも、溝の深さよりも突条の高さを小さくして、溝と突条と間に隙間を形成し、この隙間に接着剤を注入して、イメージセンサ11と調整楔34とを固定してもよい。さらに、摺動面19に突条を、調整楔34の底面34bに溝を設ける構成としてもよい。
【0059】
図8に示すように、調整楔34の底面34bに、そのスライド方向に沿った溝47を設け、イメージセンサ11の摺動面19との間に隙間を形成し、この隙間に接着剤45を注入して、イメージセンサ11と調整楔34とを固定してもよい。
【0060】
なお、調整楔34の底面34bを平面としたまま、イメージセンサ11の摺動面19に溝を形成して、底面34bをとの間に隙間を形成し、この隙間に接着剤45を注入して、イメージセンサ11と調整楔34とを固定してもよい。また、同様にして、傾斜面27,34aのいずれか一方を平面としたまま他方に溝を設けることにより、一方の傾斜面と溝との間に間隙を形成してこの隙間に接着剤を注入して、イメージセンサ11と調整楔34とを固定してもよい。
【符号の説明】
【0061】
10 カメラモジュール
11 イメージセンサ
12 撮影レンズ
14 レンズユニット
15 調整部材
19 摺動面
21 レンズホルダ
22 鏡筒
23 ベース部
26 ガイド部材
27,34a 傾斜面
34 調整楔

【特許請求の範囲】
【請求項1】
撮影レンズを保持したレンズホルダと、撮影レンズによって結像される光学像を電気的な信号に変換するイメージセンサとを備えたカメラモジュールの焦点調整構造において、
前記イメージセンサに対する前記レンズホルダの撮影レンズの光軸と直交する方向の移動を規制し撮影レンズの光軸方向への移動を許容するガイド部材と、
前記イメージセンサの表面の非受光エリアに対向させて前記レンズホルダに設けられ、前記非受光エリアの表面に対して傾斜したホルダ側傾斜面とを備え、
前記非受光エリア上に配されて前記ホルダ側傾斜面と摺動する調整用傾斜面を有する調整楔の撮影レンズの光軸と直交するスライド方向への移動により、前記イメージセンサに対して前記レンズホルダを撮影レンズの光軸方向に移動させることを特徴とするカメラモジュールの焦点調整構造。
【請求項2】
前記ガイド部材は、前記イメージセンサを囲み、その内面が前記イメージセンサの周囲と接し、前記レンズホルダが撮影レンズの光軸方向に移動する際に、前記イメージセンサの周囲と摺動するように前記レンズホルダに設けられていることを特徴とする請求項1記載のカメラモジュールの焦点調整構造。
【請求項3】
前記ホルダ側傾斜面は、撮影に供される受光エリアを挟む一対の前記非受光エリアに対向する部分にそれぞれ形成され、受光エリアを挟むように配される一対の調整楔が一体に形成された調整部材のスライド移動により、各ホルダ側傾斜面と対応する調整用傾斜面とをそれぞれ摺動させることを特徴とする請求項2記載のカメラモジュールの焦点調整構造。
【請求項4】
前記受光エリアの長辺側を長辺方向に沿って前記調整楔がスライドされることを特徴とする請求項3項に記載のカメラモジュールの焦点調整構造。
【請求項5】
前記ガイド部材は、前記一対の調整楔の各外側面と摺動することにより、前記一対の調整楔が所定方向に直進するように案内することを特徴とする請求項3または4記載のカメラモジュールの焦点調整構造。
【請求項6】
前記調整楔の前記スライド方向の移動による調整後に、前記イメージセンサに対して前記レンズホルダが固定されることを特徴とする請求項1ないし5のいずれか1項に記載のカメラモジュールの焦点調整構造。
【請求項7】
前記調整楔の前記スライド方向の移動による調整後に、前記イメージセンサに前記レンズホルダ及び前記調整楔がそれぞれ固定されることを特徴とする請求項6記載のカメラモジュールの焦点調整構造。
【請求項8】
前記スライド方向に沿った第1の溝及び第1の突条の一方が前記調整用傾斜面に他方が前記調整用傾斜面にそれぞれ形成され、前記第1の突条が前記第1の溝に入り込むようにされていることを特徴とする請求項1ないし7のいずれか1項に記載のカメラモジュールの焦点調整構造。
【請求項9】
前記スライド方向に沿った第1の溝及び第1の突条の一方が前記調整用傾斜面に他方が前記調整用傾斜面にそれぞれ形成され、前記第1の突条が前記第1の溝に入り込むようにされるとともに、前記第1の突条の高さが前記第1の溝の深さよりも小さくされ、前記調整楔の前記スライド方向の移動による調整後に、前記第1の突条と前記第1の溝との間隙に接着剤を入れて前記レンズホルダと前記調整楔とが接着されることを特徴とする請求項6または7記載のカメラモジュールの焦点調整構造。
【請求項10】
前記調整楔は、前記非受光エリアと摺動する面に前記スライド方向に沿った第2の溝が形成され、前記調整楔の前記スライド方向の移動による調整後に、前記第2の溝と前記非受光エリアとの間隙に接着剤を入れて前記イメージセンサと前記調整楔とが接着されることを特徴とする請求項6ないし9のいずれか1項に記載のカメラモジュールの焦点調整構造。
【請求項11】
撮影レンズを保持したレンズホルダと、撮影レンズによって結像される光学像を電気的な信号に変換するイメージセンサとを備えたカメラモジュールの焦点調整方法において、
撮影レンズの光軸と直交する方向へのイメージセンサに対するレンズホルダの移動を規制した状態で、イメージセンサの表面の撮影に供されない非受光エリア上を撮影レンズの光軸と直交するスライド方向に調整楔を移動し、調整楔にイメージセンサの表面に対して傾斜させて設けた調整用傾斜面とレンズホルダに設けたホルダ側傾斜面とを摺動させることにより、撮影レンズの光軸方向に前記レンズホルダを移動させることを特徴とするカメラモジュールの焦点調整方法。
【請求項12】
イメージセンサを囲み、その内面がイメージセンサの周囲と接するレンズホルダに設けられたガイド部材により、撮影レンズの光軸と直交する方向へのレンズホルダの移動を規制し、調整用傾斜面とホルダ側傾斜面との摺動により、レンズホルダを撮影レンズの光軸方向に移動させることを特徴とする請求項11記載のカメラモジュールの焦点調整方法。
【請求項13】
撮影に供される受光エリアを挟む一対の非受光エリア上を調整楔がスライドされることを特徴とする請求項12記載のカメラモジュールの焦点調整方法。
【請求項14】
調整楔が受光エリアの長辺側の非受光エリアを長辺方向に沿ってスライドされることを特徴とする請求項13記載のカメラモジュールの焦点調整方法。
【請求項15】
一対の調整楔の各外側面をガイド部材の内面に摺動させることにより、一対の調整楔が所定方向に直進するように案内することを特徴とする請求項13または14項に記載のカメラモジュールの焦点調整方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2012−177750(P2012−177750A)
【公開日】平成24年9月13日(2012.9.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−39607(P2011−39607)
【出願日】平成23年2月25日(2011.2.25)
【出願人】(306037311)富士フイルム株式会社 (25,513)
【Fターム(参考)】