カメラ用羽根駆動装置
【課題】露光開口より小さい開口部を形成した光量制御羽根を有している光量制御装置を二つ以上備えていて、それらの光量制御羽根が露光開口を全開にした制御状態のほかに、それらの光量制御装置の数よりも多い制御状態が得られるようにしたカメラ用羽根駆動装置を提供すること。
【解決手段】開口部17aを有していて第1の電磁アクチュエータによって往復回転させられる絞り羽根17と、開口部17aより大きい開口部18aを有していて第2の電磁アクチュエータによって往復回転させられる絞り羽根18とを備えていて、開口部14aを全開にした制御状態と、絞り羽根18の開口部18aだけを開口部14aに進入させた制御状態と、絞り羽根17の開口部17aだけを進入させた制御状態と、それらの開口部17a,18aの両方を進入させた制御状態とが得られるようにしている。
【解決手段】開口部17aを有していて第1の電磁アクチュエータによって往復回転させられる絞り羽根17と、開口部17aより大きい開口部18aを有していて第2の電磁アクチュエータによって往復回転させられる絞り羽根18とを備えていて、開口部14aを全開にした制御状態と、絞り羽根18の開口部18aだけを開口部14aに進入させた制御状態と、絞り羽根17の開口部17aだけを進入させた制御状態と、それらの開口部17a,18aの両方を進入させた制御状態とが得られるようにしている。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、各々が異なる大きさの開口部を有していて、各々の駆動手段によって往復回転させられ、露光開口に対してそれらの開口部を進退させるようにした、少なくとも2枚の光量制御羽根を備えているカメラ用羽根駆動装置に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、カメラ用羽根駆動装置としては、シャッタ装置,絞り装置,フィルタ装置,レンズバリア装置が知られている。それらのうち、コンパクトカメラや、携帯電話を含む情報端末機器用カメラや、監視用カメラなどに内蔵されている絞り装置とフィルタ装置は、いずれも撮像素子へ入射する光量を減じる目的だけで内蔵されていることが多い。そのため、最近では、そのような絞り装置とフィルタ装置を総称して光量制御装置と言い、それらの装置に備えられている絞り羽根とフィルタ羽根を総称して光量制御羽根と言うことがあるようになってきた。
【0003】
そのような光量制御装置のうち、絞り装置としては、露光開口よりも小さい円形の開口部を有する1枚の絞り羽根を、モータなどの電磁駆動手段によって往復回転させ、その開口部を、露光開口に対して進退させるものが典型的な構成となっている。また、フィルタ装置としては、円形の開口部を有していてその開口部を覆うようにしてシート状のNDフィルタを取り付けている1枚のフィルタ羽根を、モータなどの電磁駆動手段によって往復回転させ、そのNDフィルタを、露光開口に対して進退させるようにしたものが典型的な構成となっている。
【0004】
また、それらの典型的な構成をした絞り装置やフィルタ装置は、各々一つだけでユニットとして構成することもあるが、複数の絞り装置を一つのユニットとして構成したり、複数のフィルタ装置を一つのユニットとして構成したりすることもあるほか、絞り装置とフィルタ装置とを一つのユニットとして構成することもある。更に、絞り装置とフィルタ装置は、各々の一つ以上を又は両方を含む二つ以上を、シャッタ装置と共に一つのユニットとして構成することもある。
【0005】
本発明は、それらの構成のうち、互いに異なる大きさの開口部を有している1枚の光量制御羽根を備えている少なくとも二つの光量制御装置を一つのユニットとして構成しているカメラ用羽根駆動装置に関するものである。そして、そのように構成された従来のカメラ用羽根駆動装置としては、二つの絞り装置をシャッタ装置と共に一つのユニットとして構成したものが、下記の特許文献1に記載されている。また、一つの絞り装置と一つのフィルタ装置とをシャッタ装置と共に一つのユニットとして構成したものが、下記の特許文献2に記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平11−133479号公報
【特許文献2】特開2001−188275号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
上記の特許文献1,2に記載されている従来のカメラ用羽根駆動装置は、いずれも、二つの光量制御装置を備えているため、露光開口を全開にしている状態を含めると、撮像素子の撮像面に入射する光を3段階に変えることが可能になっている。そのため、このような構成のカメラ用羽根駆動装置においては、撮像素子の撮像面に入射する光を、4段階に変えることを可能にしようとすると、三つの光量制御装置を備える必要があるし、5段階に変えることを可能にしようとすると、四つの光量制御装置を備える必要がある。しかし、カメラ内における配置スペースには制約があるため、撮像素子の撮像面に入射する光の制御段階を一つ増やすごとに、光量制御装置を一つ増設しなければならないというようなことは極めて問題である。
【0008】
本発明は、このような問題点を解決するためになされたものであり、その目的とするところは、露光開口より小さい開口部を形成している光量制御羽根とその光量制御羽根を往復回転させてその開口部を露光開口に対して進退させる駆動手段とを有する光量制御装置を二つ以上備えているカメラ用羽根駆動装置において、それらの光量制御羽根が露光開口を全開にしている制御状態のほかに、撮像素子の撮像面に入射する光の制御状態を、それらの光量制御装置の数よりも多く得られるようにしたカメラ用羽根駆動装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記の目的を達成するために、本発明のカメラ用羽根駆動装置は、露光開口よりも小さく且つ互いに大きさの異なる開口部を有していて各々の駆動手段によって往復回転させられることにより露光開口に対して各々の前記開口部を進退させる複数枚の光量制御羽根を備えており、前記複数枚の光量制御羽根は、各々の前記開口部を個々に露光開口に進入させることも、少なくとも2枚の光量制御羽根の前記開口部を同時に露光開口に進入させることもでき、後者のときには、それらの前記開口部の一部を協働させ、それらの前記開口部のうちの最も小さい開口部よりも小さい開口を形成するようにする。
【0010】
その場合、前記複数枚の光量制御羽根のうち、1枚の光量制御羽根の前記開口部だけが、円形に形成されているようにするのが好ましい。また、前記複数枚の光量制御羽根のうち、少なくとも2枚の光量制御羽根がそれらの前記開口部を同時に露光開口に進入させたとき、それらの前記開口部の協働によって形成される前記開口の形状が略多角形をしているようにしてもよい。更に、前記複数枚の光量制御羽根のうち、少なくとも1枚の光量制御羽根は、その前記開口部を覆うようにしてシート状のフィルタを取り付けているようにしてもよい。
【0011】
また、本発明のカメラ用羽根駆動装置は、独自の駆動手段によって往復回転させられ露光開口を開閉する少なくとも1枚のシャッタ羽根を備えていると共に、前記複数枚の光量制御羽根のうち、少なくとも2枚の光量制御羽根がそれらの前記開口部を同時に露光開口に進入させたとき、それらの開口部の協働によって形成される前記開口の形状が全体として細長い形状をしており、前記シャッタ羽根は、露光開口を閉じるとき、前記開口の略短手方向へ作動するようにすると、前記開口の閉じ時間が短くなる。
【発明の効果】
【0012】
本発明は、露光開口より小さい開口部を形成している光量制御羽根とその光量制御羽根を往復回転させてその開口部を露光開口に対して進退させる駆動手段とを有している光量制御装置を二つ以上備えたカメラ用羽根駆動装置において、少なくとも2枚の光量制御羽根の開口部を同時に露光開口に進入させたときには、それらの開口部の一部を協働させ、それらの開口部のうちの最も小さい開口部よりも小さい開口が形成されるようにしたものであるから、光量制御羽根が露光開口を全開にしている制御状態と、各々の光量制御装置によって得られる制御状態のほかにも、撮像素子の撮像面に入射する光の制御状態を、光量制御装置を増設することなく、得ることが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】露光開口を全開にした状態における実施例1のカメラ用羽根駆動装置を、被写体側から見て示した平面図である。
【図2】図1示されている状態を撮像素子側から見て示した平面図である。
【図3】図2の状態で、一番撮像素子側にあるカバー板を取り外し、シャッタ羽根の羽根室内を示した平面図である。
【図4】図3の状態で、2枚のシャッタ羽根と中間板とを取り外し、絞り羽根の羽根室内を示した平面図である。
【図5】実施例1の構成部材の重なり関係を分かり易くするようにして示した断面図である。
【図6】図4の状態から、一方の絞り羽根だけを作動させ、その開口部を露光開口に進入させている状態を示した平面図である。
【図7】図4の状態から、他方の絞り羽根だけを作動させ、その開口部を露光開口に進入させている状態を示した平面図である。
【図8】図4の状態から、両方の絞り羽根を作動させ、それらの開口部を露光開口に同時に進入させている状態を示した平面図である。
【図9】実施例2のカメラ用羽根駆動装置を図4と同様にして示した平面図である。
【図10】実施例2のカメラ用羽根駆動装置を、図8と同様にして示した平面図である。
【図11】図10の状態を、図3と同様にして示した平面図である。
【図12】実施例1,2の変形例を説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本発明の実施の形態を、図示した二つの実施例によって説明する。尚、上記したように、本発明のカメラ用羽根駆動装置は、二つ以上の光量制御装置を一つのユニットとして構成してもよいし、二つ以上の光量制御装置をシャッタ装置と共に一つのユニットとして構成してもよい。しかも、二つ以上の光量制御装置は、全て絞り装置であってもよいし、全てフィルタ装置であってもよいほか、絞り装置とフィルタ装置が混在していてもよい。しかしながら、それらの全ての態様を実施例として挙げるまでもないと考えるので、いずれも、二つの絞り装置をシャッタ装置と共に一つのユニットとして構成した態様を実施例として説明し、その他の実施態様については、各実施例の説明中及び説明後に、適宜言及することにする。
【実施例1】
【0015】
本実施例のカメラ用羽根駆動装置は、互いに形状と大きさの異なる開口部を形成している1枚の絞り羽根を備えた二つの絞り装置と、相反する方向へ同時に回転させられる2枚のシャッタ羽根を備えたシャッタ装置とを、一つのユニットとして構成したものである。そこで先ず、2枚の絞り羽根と2枚のシャッタ羽根とが露光開口を全開にしている状態を示した図1〜図5を用いて、本実施例の構成を説明する。
【0016】
尚、図1は、カメラに組み込まれた場合において被写体側から見た平面図であり、図2は、図1の背面側即ち撮像素子側から見た平面図である。また、図3は、図2の状態から一番撮像素子側にあるカバー板を取り外し、シャッタ羽根の羽根室内を示した平面図であり、図4は、さらに図3の状態から2枚のシャッタ羽根と中間板とを順に取り外し、絞り羽根の羽根室内を示した平面図である。更に、図5は、本実施例の各構成部材の重なり関係を分かり易くするために適宜に切断し展開させて示した断面図であるが、紙面の都合上、左半分を上段に、右半分を下段に分けて記載したものである。
【0017】
図1から分かるように、本実施例の地板1は、平面形状が略正方形をしていて、その中央部には光軸を中心にした大きな円形の開口部1aを形成している。この地板1は、合成樹脂製であって、各構成部材の配置と取付けが好適に行えるようにするため、被写体側の面も、撮像素子側の面も、複雑な凹凸形状に形成されている。そして、各構成部材を取り付けた状態におけるユニットの形状は、全体として平坦な表面を有する薄型の6面体として構成されるようにしている。また、このユニットは、実際には、被写体側の面にフレキシブルプリント配線板を取り付けているが、その図示は省略されている。更に、このユニットには、実際には、カメラ本体や情報端末機器などに対する取付け部も形成されているが、その図示も省略されている。
【0018】
地板1の被写体側の面には、開口部1aの周りを約270度囲むようにして、凹部が形成されており、その中に三つの電磁アクチュエータが取り付けられている。これらの電磁アクチュエータは、全体として同じ構成をしている周知の電磁アクチュエータであって、2極に着磁された永久磁石を有する回転子が、所定の角度範囲でだけ、固定子コイルに対する通電方向に対応した方向へ回転するようにしたものである。そして、これらの電磁アクチュエータは、固定子コイルに対する非通電状態においては、回転子が、直接又は間接にストッパに接触していて、その回転子の永久磁石の磁力を利用して、その状態を維持されるものである。
【0019】
先ず、図1の左上方領域に取り付けられている第1の電磁アクチュエータを説明する。この電磁アクチュエータは、回転子2と、固定子枠3と、ヨーク4と、コイル5とで構成されている。そして、回転子2は、径方向に2極に着磁された円筒形の永久磁石2aと、その永久磁石2aと一体に成形された合成樹脂製の腕部2bと、その腕部2bの先端に形成された出力ピン2cとを有しており、地板1に立設されている回転子取付け軸1bに対し、永久磁石2aを回転可能に嵌合させている。また、出力ピン2cは、地板1に形成された逃げ孔1c(図4にはその縁の一部が示され、図5には断面状態で示されている)を貫通し、撮像素子側に突き出ている。
【0020】
また、固定子枠3は、合成樹脂製であって、筒状のボビン部3aと、二つの端子用ピン3b,3cと、孔3dとを有している。そして、上記のヨーク4は、二つの脚部を有する略U字形をしていて、一方の脚部をボビン部3aに貫通させ、両方の脚部の先端を磁極部として、永久磁石2aの周面に対向させている。また、上記のコイル5は、ボビン部3aの外側に巻回されており、図示していないが、その両端を二つの端子用ピン3b,3cに巻き付けている。このようにしてヨーク4とコイル5を取り付けた固定子枠3は、その孔3dを、地板1に立設されている固定子取付け軸1dに嵌合させた後、孔3dから突き出ている固定子取付け軸1dの先端を熱溶解し変形させたことによって、地板1に取り付けられている。
【0021】
上記の三つの電磁アクチュエータのうち、図1の右下方領域に取り付けられている第2の電磁アクチュエータは、回転子6と、固定子枠7と、ヨーク8と、コイル9とで構成されている。そして、回転子6は、径方向に2極に着磁された円筒形の永久磁石6aと、その永久磁石6aと一体に成形された合成樹脂製の腕部6bと、その腕部6bの先端に形成された出力ピン6cとを有しており、地板1に立設された回転子取付け軸1eに対し、永久磁石6aを回転可能に嵌合させている。また、出力ピン6cは、地板1に形成された逃げ孔1f(図5に断面状態で示されている)を貫通し、撮像素子側に突き出ている。
【0022】
また、固定子枠7は、合成樹脂製であって、筒状のボビン部7aと、二つの端子用ピン7b,7cと、孔7dとを有している。そして、ヨーク8は、二つの脚部を有する略U字形をしており、一方の脚部をボビン部7aに貫通させ、両方の脚部の先端を磁極部とし、永久磁石6aの周面に対向させている。また、コイル9は、ボビン部7aの外側に巻回されており、図示していないが、その両端を二つの端子用ピン7b,7cに巻き付けている。そして、ヨーク8とコイル9とを取り付けた固定子枠7は、その孔7dを、地板1に立設された固定子取付け軸1gに嵌合させた後、孔7dから突き出た固定子取付け軸1gの先端を熱溶解し変形させたことによって、地板1に取り付けられている。
【0023】
上記の三つの電磁アクチュエータのうち、図1の左下方領域に取り付けられている第3の電磁アクチュエータは、回転子10と、固定子枠11と、ヨーク12と、コイル13とで構成されている。そして、回転子10は、径方向に2極に着磁された円筒形の永久磁石10aと、その永久磁石10aと一体に成形された合成樹脂製の腕部10bと、その腕部10bの先端に形成された出力ピン10cとを有しており、地板1に立設された回転子取付け軸1hに対し、永久磁石10aを回転可能に嵌合させている。また、出力ピン10cは、地板1に形成された逃げ孔1i(図4,図5参照)を貫通し、撮像素子側に突き出ている。
【0024】
また、固定子枠11は、合成樹脂製であって、筒状のボビン部11aと、二つの端子用ピン11b,11cと、二つの孔11d,11eとを有している。そして、ヨーク12は、二つの脚部を有する略U字形をしており、一方の脚部をボビン部7aに貫通させ、両方の脚部の先端を磁極部として、永久磁石10aの周面に対向させている。また、コイル13は、ボビン部11aの外側に巻回されており、図示していないが、その両端を二つの端子用ピン11b,11cに巻き付けている。そして、ヨーク12とコイル13とを取り付けた固定子枠11は、その孔11d,11eを、地板1に立設された固定子取付け軸1j,1kに嵌合させ、上記の固定子枠3,7の一部を押さえ込んだ後、孔11d,11eから突き出た固定子取付け軸1j,1kの先端を熱溶解し変形させたことによって、地板1に取り付けられている。
【0025】
次に、地板1の撮像素子側に取り付けられている構成部材とその取付け構成を説明する。地板1の撮像素子側には、開口部1aを囲むようにして複雑な平面形状をした凹部が形成されている。そして、その凹部は、図5の左端及び右端の形状から分かるように、3段に形成されている。また、地板1の撮像素子側の面には、図2〜図4に示されているように、その凹部の外形を形成している縁の近傍部位に、四つの羽根取付け軸1A,1B,1C,1Dと、八つのストッパ1E,1F,1G,1H,1I,1J,1K,1Lと、五つのカバー板取付け軸1M,1N,1P,1Q,1Rとが、撮像素子側に向けて立設されている。
【0026】
そして、上記の凹部には、一番被写体側の1段目に、合成樹脂製の口径板(口径規制板ということもある)14が配置され、2段目に、合成樹脂製の中間板(仕切り板ということもある)15が配置され、3段目に、合成樹脂製のカバー板(押さえ板,補助地板などということもある)16が配置されている。そして、口径板14と中間板15との間に構成された羽根室には2枚の絞り羽根17,18が配置され、中間板15とカバー板16との間に構成された羽根室には2枚のシャッタ羽根19,20が配置されている。
【0027】
そこで先ず、一番被写体側に配置されている口径板14について説明する。図1から分かるように、この口径板14には、光軸を中心にして、地板1の開口部1aより遥かに直径の小さい開口部14aが形成されている。そして、この開口部14aによって、本実施例のユニットとしての被写体光の最大の大きさの開口、即ち露光開口が決められている。ところで、かつては、地板1の開口部1aは、口径板14の開口部14aと同じ直径に形成されているのが普通であったし、今でもそのようにすることがある。そうすれば、本実施例のように、口径板14を設ける必要がないからである。ところが、本実施例の場合には、地板1の開口部1aの直径を大きくし、あえて口径板14を設けるようにしている。それは次の理由によるからである。
【0028】
地板1は、合成樹脂製であって多くの構成部材を取り付ける必要があることから、比較的厚い部材として製作されている。そのため、地板1よりも被写体側に配置される撮影レンズと、後述する絞り羽根17,18の作動面との距離が必然的に大きくなってしまい、カメラ内や情報端末機器内における光軸方向の設置スペースが大きくなってしまう。そのため、本実施例では、開口部1aを大きくして、撮影レンズを絞り羽根17,18の作動面に近付けて設置し得るようにし、上記の配置スペースが有利になるようにしている。ところが、開口部1aを大きくすると、絞り羽根17,18が撮影レンズ側に変位し易くなって、撮影レンズに接触してしまうことになる。
【0029】
そのようなことが生じないようにするためには、口径板14のうち、図1に示された状態で見えている部位だけを、地板1と一体的に成形すればよいことになる。しかし、地板1は複雑な形状をしているため、その上にそのような比較的大きな面積を有する部位を薄く形成するのは、成形技術上難しい。そこで、本実施例の場合には、薄い口径板14を別に製作するようにしている。従って、上記した配置スペースを有利にしたり、上記した部位を薄く形成したりする必要がないのであれば、本実施例のように、口径板14を設ける必要はなく、開口部1aを開口部14aと同じ大きさに形成すればよいことになる。
【0030】
このような理由で設けられている本実施例の口径板14には、上記の開口部14aが形成されているほか、周辺部には、上記の中間板15の周辺部を部分的に受けるために、中間板15側に向けて厚く形成された肉厚部が複数個所に設けられている。そして、この口径板14には、上記の出力ピン2c,6cを貫通させた円弧状の二つの逃げ孔が形成されているが、図4においては、一方の出力ピン2cを貫通させている逃げ孔14bの一部だけが示されている。尚、後述の作動説明に用いる図6及び図8には、他方の出力ピン6cを貫通させている逃げ孔14fの一部が示されている。
【0031】
また、この口径板14には、上記の羽根取付け軸1A,1B,1Dを嵌合させた三つの孔が形成されているが、図4には、上記の肉厚部との境に形成されていて、羽根取付け軸1Dを嵌合させている孔14cだけが示されている。更に、この口径板14には、上記のストッパ1E,1Rを嵌合させた二つの孔14d,14eが、各々、肉厚部との境に形成されている。そして、この口径板14は、羽根取付け軸1A,1Dによって、光軸と直行する方向へ移動しない(ガタつかない)ように位置決めされている。
【0032】
次に、口径板14と中間板15との間に配置されている絞り羽根17,18について説明する。図4に示されているように、口径板14側に配置されている絞り羽根17は、長円形の開口部17aと、長孔17bと、孔17cとを有していて、長孔17bに上記の出力ピン2cを貫通させ、孔17cに上記の羽根取付け軸1Aを嵌合させている。そして、図4においては、この絞り羽根17は、開口部14aから退いてストッパ1Eに接触しているが、図4には示されていない回転子2が時計方向へ回転させられると、出力ピン2cによって、羽根取付け軸1Aを中心にして時計方向へ回転させられ、ストッパ1Gに当接して停止させられ、開口部17aを開口部14a内に臨ませるようになっている。
【0033】
また、中間板15側に配置されている他方の絞り羽根18は、上記の絞り羽根17の開口部17aとは形状も大きさも異なる長円形の開口部18aと、長孔18bと、孔18cとを有していて、長孔18bに上記の出力ピン6cを貫通させ、孔18cに上記の羽根取付け軸1Bを嵌合させている。そして、図4においては、この絞り羽根18は、開口部14aから退いてストッパ1Fに接触しているが、図4には示されていない回転子6が反時計方向へ回転させられると、出力ピン6cによって、羽根取付け軸1Bを中心にして反時計方向へ回転させられ、ストッパ1Hに当接して停止させられ、開口部18aを開口部14a内に臨ませるようになっている。
【0034】
次に、中間板15について説明する。図3から分かるように、この中間板15には、光軸を中心にして、上記の口径板14の開口部14aより若干直径の大きな開口部15aが形成されている。また、この中間板15の周辺部には、上記のカバー板16を受けるためにカバー板16側に向けて厚く形成された肉厚部が複数個所に設けられている。そして、この中間板15には、上記の出力ピン2c,6c,10cを貫通させた円弧状の三つの逃げ孔15b,15c,15dが形成されているが、それらのうち逃げ孔15b,15cは、それらの殆どが上記の肉厚部の領域にあるようにして形成されている。
【0035】
また、この中間板15には、上記の羽根取付け軸1A,1B,1Cを嵌合させた三つの孔が形成されているが、図3においては、それらのうち、肉厚部に形成されていて、羽根取付け軸1A,1Bを嵌合させている二つの孔15e,15fが示されている。また、この中間板15には、上記のストッパ1E,1Iを貫通させた二つの孔15g,15hが形成されているが、それらのうち、孔15gは肉厚部に形成されている。更に、この中間板15には、上記のカバー板取付け軸1Rを貫通させた孔15iが形成されている。そして、この中間板15は、羽根取付け軸1A,1Bによって、光軸とは直行する方向へ移動しないように位置決めされている。
【0036】
次に、中間板15とカバー板16との間に配置されている2枚のシャッタ羽根19,20について説明する。図3に示されているように、中間板15側に配置されているシャッタ羽根19は、長孔19aと、孔19bとを有していて、長孔19aに上記の出力ピン10cを貫通させ、孔19bには上記の羽根取付け軸1Cを嵌合させている。そして、図3においては、このシャッタ羽根19は、開口部14aから退いてストッパ1Iに接触しているが、図3には示されていない回転子10が時計方向へ回転させられると、出力ピン10cによって、羽根取付け軸1Cを中心にして時計方向へ回転させられ、ストッパ1Kに当接して停止させられるようになっている。
【0037】
また、カバー板16側に配置されている他方のシャッタ羽根20は、長孔20aと、孔20bとを有していて、長孔20aに上記の出力ピン10cを貫通させ、孔20bに上記の羽根取付け軸1Dを嵌合させている。図3に示された状態においては、このシャッタ羽根20は、開口部14aから退いてストッパ1Jに接触しているが、図3には示されていない回転子10が時計方向へ回転させられると、出力ピン10cによって、羽根取付け軸1Dを中心にして反時計方向へ回転させられ、ストッパ1Lに当接して停止させられるようになっている。そして、シャッタ羽根19,20がストッパ1K,1Lに当接して停止した状態が、開口部14aの閉鎖状態である。
【0038】
尚、上記のように、本実施例の場合には、回転子10の出力ピン10cによって、同時に相反する方向へ回転させられる2枚のシャッタ羽根19,20を備えているが、いずれか一方のシャッタ羽根を若干大きくして、他方のシャッタ羽根を省くようにすることも可能である。そのようにした場合には、部品が減る分だけコストが抑えられるという利点がある反面、開口部14aを閉じ始めてから閉じ終わるまでの時間が長くなるという問題がある。
【0039】
また、本実施例の場合には、上記のように、口径板14とカバー板16との間を中間板15で仕切ることによって、二つの羽根室を構成しているが、これは、周知のように、主に、絞り羽根18とシャッタ羽根19とが作動中に噛み合いを生じず、安定した作動が得られるようにするためである。しかしながら、各羽根の形状や配置関係を工夫することにより、このような中間板15を設けなくても済むようにし得ることが知られている。そのため、本実施例のように、光量制御羽根である2枚の絞り羽根と、2枚のシャッタ羽根とを備えているカメラ用羽根駆動装置であっても、必ずしも中間板を備えていなければならないというものではない。
【0040】
最後に、カバー板16について説明する。図2から分かるように、このカバー板16には、光軸を中心にして、上記の中間板15の開口部15aよりも若干直径の大きな開口部16aが形成されている。また、このカバー板16には、上記の出力ピン2c,6c,10cの先端を挿入させるために、上記の中間板15の逃げ孔15b,15c,15dと重なるところに、全く同じ形状をした円弧状の逃げ孔16b,16c,16dが形成されている。また、このカバー板16には、上記の羽根取付け軸1A,1B,1C,1Dの先端を貫通させた四つの孔16e,16f,16g,16hが形成されている。
【0041】
また、このカバー板16には、上記のストッパ1E,1G,1H,1Iの先端を貫通させた四つの孔16i,16j,16k,16mが形成されている。そして、このカバー板16は、羽根取付け軸1A,1Bによって、光軸とは直行する方向へ移動しないように位置決めされている。更に、このカバー板16には、上記の五つのカバー板取付け軸1M,1N,1P,1Q,1Rの先端を貫通させた孔16n,16p,16q,16r,16sが形成されている。そして、このカバー板16は、それらのカバー板取付け軸1M,1N,1P,1Q,1Rの先端を熱溶解し変形させることによって、地板1に取り付けられている。
【0042】
次に、図6〜図8も加え、本実施例の作動を説明する。図1〜図4は、既に説明したように、開口部14a即ち露光開口を全開にした状態を示したものであるが、この状態は、本実施例のカメラ用羽根駆動装置をデジタルカメラや情報端末機器などに採用した場合における撮影待機状態を示したものでもある。そして、その撮影待機状態においては、カメラの電源スイッチはオンになっているが、三つの電磁アクチュエータのコイル5,9,13には通電されていない。しかしながら、周知のように、このとき、回転子2,6,10の永久磁石2a,6a,10aとヨーク4,8,12の磁極部との間に作用する磁力によって、回転子2,6,10は、いずれも図1において時計方向(図3及び図4においては反時計方向)へ回転するように付勢されている。
【0043】
そのため、図3において、シャッタ羽根19は反時計方向へ、シャッタ羽根20は時計方向へ回転するように付勢されているが、シャッタ羽根19はストッパ1Iにより、シャッタ羽根20はストッパ1Jによって回転を阻止され、この状態が維持されている。また、図4において、絞り羽根17は反時計方向へ、絞り羽根18は時計方向へ回転するように付勢されているが、絞り羽根17はストッパ1Eにより回転を阻止され、絞り羽根18はストッパ1Fにより回転を阻止されることによって、この状態が維持されている。そのため、図示していない撮像素子には被写体光が当たっており、撮影者は、モニターで被写体像を観察することが可能になっている。
【0044】
撮影に際してレリーズボタンを押すと、実際に撮影が開始される前に、図示していない測光装置が被写体光の明るさを測定し、その明るさが、予め決められている4段階の範囲のうちのどれに入っているかを判断する。そこで先ず、測光の結果、被写体光が、暗い方から1番目の範囲に入っていた場合を説明する。この場合、二つの絞り装置は全く作動せず、2枚の絞り羽根17,18は、図4に示されている状態を維持し続ける。そのため、それまで撮像素子に蓄積されていた電荷が直ちに放出されて撮影が開始され、新たな電荷が撮像素子に蓄積されていく。
【0045】
そして、所定の時間が経過すると、露光時間制御回路からの信号によって、上記の第3の電磁アクチュエータのコイル13に順方向の電流が供給される。それによって、回転子10が、図1において反時計方向へ回転させられるので、図3においては時計方向へ回転させられ、出力ピン10cによって、シャッタ羽根19を時計方向へ回転させ、シャッタ羽根20を反時計方向へ回転させて、開口部14aを閉じさせていく。そして、開口部14aを閉鎖した直後には、シャッタ羽根19はストッパ1Kに当接し、シャッタ羽根20はストッパ1Lに当接して停止させられる。
【0046】
その後、撮像素子に蓄積された電荷が、撮像情報として情報処理回路を介して記憶装置に転送されるが、それが終わると、コイル13に対して逆方向の電流が供給される。そのため、回転子10は、上記の場合とは逆の方向へ回転させられることになるので、開口部14aを閉鎖していたシャッタ羽根19,20も、出力ピン10cによって、上記の場合とは逆の方向へ回転させられ、開口部14aを開いていく。そして、開口部14aを全開にした直後に、シャッタ羽根19はストッパ1Iに当接し、シャッタ羽根20はストッパ1Jに当接して停止させられる。その後、コイル13への通電を断つと、図1〜図4に示された撮影待機状態に復帰したことになる。
【0047】
次に、測光装置が被写体光の明るさを測定した結果、その明るさが、予め決められている4段階の範囲のうち、暗い方から2番目の範囲に入っていた場合を説明する。この場合には、上記のようにして、撮像素子によって実際の撮影が行われる前に、上記の第2の電磁アクチュエータのコイル9に対して順方向の電流が供給される。それによって、回転子6が、図1において反時計方向へ回転させられるので、図4においては時計方向へ回転させられ、出力ピン6cによって、絞り羽根18を反時計方向へ回転させ、開口部18aを開口部14aに進入させていく。そして、開口部18aの中心が開口部14aの中心に達すると、絞り羽根18はストッパ1Hに当接して停止させられるが、その状態が図6に示されている。
【0048】
周知のように、図6の状態になったとき、コイル9に対する通電を断っても、永久磁石10aの磁極とヨーク8の磁極部との対向位置関係で、よほどのことでもない限り、絞り羽根18は、図6の停止状態を維持される。しかし、万が一のことを考えると通電をし続けることが好ましい。このようにして図6の状態が得られると、それまで撮像素子に蓄積されていた電荷が直ちに放出されて撮影が開始され、新たな電荷が撮像素子に蓄積されていく。そして、所定の時間が経過すると、シャッタ羽根19,20が開口部14aを閉鎖することになるが、シャッタ羽根19,20の作動説明は上記の説明と重複するため省略し、ここでは、それ以後の絞り羽根18の作動だけを説明する。
【0049】
シャッタ羽根19,20が開口部14aを閉鎖して撮影が終了すると、コイル9に対して逆方向の電流が供給される。そのため、回転子6は、上記の場合とは逆の方向へ回転させられるので、絞り羽根18は、図6において時計方向へ回転させられ、開口部18aを開口部14aから退かせていく。そして、絞り羽根18は、開口部14aから完全に退いた直後にストッパ1Fに当接して停止させられる。その後、コイル9への通電を断つと、図1〜図4に示された撮影待機状態に復帰したことになる。尚、絞り羽根18が図4の状態に復帰するのは、シャッタ羽根19,20が図3の状態に復帰するのと略同時であることが好ましいが、ずれていても差し支えない。このことは、次に説明する絞り羽根17の場合も同じである。
【0050】
そこで次に、測光装置が被写体光の明るさを測定した結果、その明るさが、予め決められている4段階の範囲のうち、暗い方から3番目の範囲に入っていた場合を説明する。この場合には、撮像素子によって実際の撮影が行われる前に、上記の第1の電磁アクチュエータのコイル5に対して順方向の電流が供給される。それによって、回転子2が、図1において反時計方向へ回転させられるので、図4においては時計方向へ回転させられ、出力ピン2cによって、絞り羽根17を時計方向へ回転させ、開口部17aを開口部14aに進入させていく。そして、開口部17aの中心が開口部14aの中心に達すると、絞り羽根17はストッパ1Gに当接して停止させられるが、その状態が図7に示されている。
【0051】
既に説明したように、絞り羽根17の開口部17aの大きさは、他方の絞り羽根18の開口部18aよりも小さい。そのため、図7の状態においては、開口部14aから入射してくる被写体光は、上記の図6の状態よりも減じられることになる。このようにして図7の状態が得られると、それまで撮像素子に蓄積されていた電荷が直ちに放出されて撮影が開始され、新たな電荷が撮像素子に蓄積されていくが、それに伴うシャッタ羽根19,20の作動説明は省略し、ここでは、それ以後の絞り羽根17の作動だけを説明する。
【0052】
シャッタ羽根19,20が開口部14aを閉鎖して撮影が終了すると、コイル5に対して逆方向の電流が供給される。そのため、回転子2は、上記の場合とは逆の方向へ回転させられるので、絞り羽根17は、図7において反時計方向へ回転させられ、開口部17aを開口部14aから退かせていく。そして、絞り羽根17は、開口部14aから完全に退いた直後にストッパ1Eに当接して停止させられる。その後、コイル5への通電を断つと、図1〜図4に示された撮影待機状態に復帰したことになる。
【0053】
次に、測光装置が被写体光の明るさを測定した結果、その明るさが、予め決められている4段階の範囲のうち、暗い方から4番目の範囲、即ち一番明るい範囲に入っていた場合を説明する。この場合には、撮像素子によって実際の撮影が行われる前に、第1の電磁アクチュエータのコイル5と第2の電磁アクチュエータのコイル9の両方に対して、順方向の電流が供給される。それにより、回転子2,6が、共に図1において反時計方向へ回転させられるので、図4においては時計方向へ回転させられることになり、一方の回転子2の出力ピン2cは絞り羽根17を時計方向へ回転させ、他方の回転子6の出力ピン6cは絞り羽根18を反時計方向へ回転させることによって、両方の開口部17a,18aを開口部14aに進入させていく。そして、開口部17a,18aの中心が開口部14aの中心に達すると、絞り羽根17,18はストッパ1G,1Hに当接して停止させられる。その状態が図8に示されている。
【0054】
図8から分かるように、この状態においては、開口部17aと開口部18aとは、お互いの長手方向を直行させて重なっている。しかも、開口部17aの長手方向の最大長の寸法は、開口部18aの短手方向の最大長の寸法よりも大きい。そのため、このときには、両方の開口部17a,18aの形成縁の一部ずつを協働させ、開口部17aよりも小さい開口が形成されている。その結果、図8の状態においては、開口部14aから入射してくる被写体光は、上記の図7の状態よりも減じられることになる。このようにして図8の状態が得られると、それまで撮像素子に蓄積されていた電荷が直ちに放出されて撮影が開始され、新たな電荷が撮像素子に蓄積されていくが、それに伴うシャッタ羽根19,20の作動説明は省略し、ここでは、それ以後の絞り羽根17,18の作動だけを説明する。
【0055】
シャッタ羽根19,20が開口部14aを閉鎖して撮影が終了すると、二つのコイル5,9に対して逆方向の電流が供給される。そのため、回転子2,6は、上記の場合とは逆の方向へ回転させられるので、一方の絞り羽根17は、図8において反時計方向へ回転させられ、他方の絞り羽根18は時計方向へ回転させられて、各々の開口部17a,18aを開口部14aから退かせていく。そして、絞り羽根17,18は、開口部14aから完全に退いた直後にストッパ1E,1Fに当接して停止させられる。その後、コイル5,9への通電を断つと、図1〜図4に示された撮影待機状態に復帰したことになる。
【0056】
このように、本実施例の場合には、開口部14a即ち露光開口よりも小さくて互いに大きさの異なる開口部17a,18aを有している絞り羽根17,18が、各々の電磁アクチュエータによって往復回転させられる構成をしているだけであるにもかかわらず、開口部14aから入射してくる被写体光を、開口部14aを全開にしている状態も含めて、4段階に制御することができるという特徴がある。
【0057】
尚、本実施例のカメラ用羽根駆動装置は、互いに大きさの異なる開口部17a,18aを一つずつ形成した絞り羽根17,18を有している二つの絞り装置を備えているが、本発明は、このような構成に限定されず、互いに大きさの異なる開口部を一つずつ形成した絞り羽根を有している三つ以上の絞り装置を備えているようにしてもよい。そのように構成すると、例えば、それらのうちの二つの絞り装置を選択して同時に作動させたり、全部の絞り装置を同時に作動させたりして、露光開口から入射してくる被写体光を、露光開口を全開にする状態も含めて、少なくとも5段階の制御を行えるようにすることが可能になる。
【0058】
また、本発明は、本実施例の絞り羽根17の方にだけ、開口部17aを覆うようにしてシート状のNDフィルタを取り付けても構わないし、両方の絞り羽根17,18に、それらの開口部17a,18aを覆うようにして同じ濃度のNDフィルタを取り付けるようにしても構わない。更に、本実施例のように、開口部14aから入射してくる被写体光を、開口部14aを全開にしている状態も含めて4段階に制御できることを前提にして、絞り羽根18の方にだけNDフィルタを取り付けるようにしても構わないし、絞り羽根17,18の両方に、濃度の異なるNDフィルタを取り付けるようにしても構わない。
【実施例2】
【0059】
次に、図9〜図11を用いて実施例2を説明するが、図9は、本実施例のカメラ用羽根駆動装置を上記の図4と同様にして示した平面図であり、また、図10は、本実施例のカメラ用羽根駆動装置を上記の図8と同様にして示した平面図であり、さらに、図11は、図10の状態を上記の図3と同様にして示した平面図である。尚、上記の実施例1の構成と本実施例の構成とでは、上記の絞り羽根17,18に形成されている開口部の形状が異なっているだけである。そのため、図9〜図11に示されている構成部材及びそれらの部位には、絞り羽根17,18に形成されている開口部を除き、全て実施例1の場合と同じ符号を付けてある。従って、重複を避けるため、それらの構成部材及び部位についての説明は省略する。
【0060】
本実施例の一方の絞り羽根17には、口径板14の開口部14a、即ち露光開口よりもかなり直径の小さい円形の開口部17Aが形成されている。また、もう一方の絞り羽根18には、猫目形状をした開口部18Aが形成されている。そして、開口部18Aの長手方向の最大長は、開口部17Aの直径よりも大きく、短手方向の最大長は、開口部17Aの直径よりも小さい。また、この開口部18Aの開口面積は、開口部17Aの開口面積よりも大きい。
【0061】
本実施例の作動は、上記の実施例1の場合と実質的に同じである。ただし、上記のように、絞り羽根17,18に形成されている開口部17A,18Aの形状が異なっているため、カメラ用羽根駆動装置としては、実施例1の場合よりも優れた点を有している。そのため、本実施例の全体の作動説明については、重複を避けるために省略するが、その優れている点を、図10及び図11を用いて説明する。
【0062】
図10は、図8と同様にして示した平面図であって、図9に示された撮影待機状態から両方の絞り羽根17,18を作動させ、それらの開口部17A,18Aを露光開口に同時に進入させた状態を示したものである。そのため、この状態においては、開口部17A,18Aは重なっており、両方の形成縁の一部ずつを協働させ、開口部17Aよりも小さい開口が形成されている。そして、その開口形状は、全体として細長い形状をしており、長手方向の中心線の延長線上には、即ち開口部18Aの長手方向の両端を通る直線上には、第3の電磁アクチュエータの回転子10の出力ピン10cが存在するようになっている。図11は、このような図10の状態を、シャッタ羽根19,20を配置している羽根室側から、中間板15の開口部15aを通して見た平面図である。
【0063】
カメラのレリーズによって図10及び図11に示された状態が得られると、上記の実施例1で詳しく説明したように、本実施例の場合にも、それまで撮像素子に蓄積されていた電荷が直ちに放出されて撮影が開始され、新たな電荷が撮像素子に蓄積されていく。そして、所定の時間が経過すると、第3の電磁アクチュエータのコイル13に順方向の電流が供給される。それによって、回転子10が、図3においては時計方向へ回転させられることになるので、出力ピン10cによって、一方のシャッタ羽根19は時計方向へ、他方のシャッタ羽根20は反時計方向へ、同時に回転させられていく。
【0064】
そのとき、図11に円弧状に描かれている矢印付の線からも分かるように、シャッタ羽根19,20の閉じ方向の先端縁は、開口部17A,18Aの協働によって形成された細長い形状の開口を、その開口の略短手方向に作動して閉じていく。そのため、本実施例の場合には、シャッタ羽根19,20が、その開口を閉じ始めてから閉じ終わるまでの時間を最小時間とすることが可能になり、露光むらの発生を効果的に抑制することが可能になる。
【0065】
最後に、上記の各実施例で示したほかに、2枚の絞り羽根の開口部の協働によって形成される開口の異なる形状例を、図12を用いて説明する。尚、図12おいては、八つの形状例が示されているが、それらの全てに符号を付けるまでもないので、左上の一つの例に対してだけ付けてある。そして、図12において、破線で円形に描かれているのは、上記の各実施例における口径板14の開口部14aである。また、その全ての形成縁を実線で描かれているのは、上記の各実施例における絞り羽根18の開口部18a,18Aに代わる形状の開口部18A´である。更に、その開口部18A´内では実線で描かれ、開口部18A´の外側では破線で描かれているのは、上記の各実施例における絞り羽根17の開口部17a,17Aに代わる形状の開口部17A´である。
【0066】
2枚の絞り羽根の開口部が協働して形成する開口形状は、本来であれば、円形であることが好ましい。ところが、その開口の中心が光軸中心と略一致して形成されるようにしようとすると、円形にすることは不可能である。そこで、これらの形状例の中には、直線の縁で多角形に形成されたものが多い。また、一部の縁が円弧状ではあるが、全体として多角形と言ってもよいものがある。また、実施例2のように、一方の開口部18A´だけを円形にしたものがあるが、周知のように、小さい開口形状ほど円形であることが好ましいことから、その点だけからいうと、実施例2の方が優れている。
【符号の説明】
【0067】
1 地板
1a,14a,15a,16a,17a,18a,17A,18A,17A´,18A´ 開口部
1b,1e,1h 回転子取付け軸
1c,1f,1i,14b,14f,15b〜15d,16b〜16d 逃げ孔
1d,1g,1j,1k 固定子取付け軸
1A〜1D 羽根取付け軸
1E〜1L ストッパ
1M,1N,1P,1Q,1R カバー板取付け軸
2,6,10 回転子
2a,6a,10a 永久磁石
2b,6b,10b 腕部
2c,6c,10c 出力ピン
3,7,11 固定子枠
3a,7a,11a ボビン部
3b,3c,7b,7c,11b,11c 端子用ピン
3d,7d,11d,11e,17c,18c,14c〜14e,15e〜15i,16e〜16k,16m,16n,16p〜16s 孔
4,8,12 ヨーク
5,9,13 コイル
14 口径板
15 中間板
16 カバー板
17,18 絞り羽根
17b,18b,19a,20a 長孔
19,20 シャッタ羽根
【技術分野】
【0001】
本発明は、各々が異なる大きさの開口部を有していて、各々の駆動手段によって往復回転させられ、露光開口に対してそれらの開口部を進退させるようにした、少なくとも2枚の光量制御羽根を備えているカメラ用羽根駆動装置に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、カメラ用羽根駆動装置としては、シャッタ装置,絞り装置,フィルタ装置,レンズバリア装置が知られている。それらのうち、コンパクトカメラや、携帯電話を含む情報端末機器用カメラや、監視用カメラなどに内蔵されている絞り装置とフィルタ装置は、いずれも撮像素子へ入射する光量を減じる目的だけで内蔵されていることが多い。そのため、最近では、そのような絞り装置とフィルタ装置を総称して光量制御装置と言い、それらの装置に備えられている絞り羽根とフィルタ羽根を総称して光量制御羽根と言うことがあるようになってきた。
【0003】
そのような光量制御装置のうち、絞り装置としては、露光開口よりも小さい円形の開口部を有する1枚の絞り羽根を、モータなどの電磁駆動手段によって往復回転させ、その開口部を、露光開口に対して進退させるものが典型的な構成となっている。また、フィルタ装置としては、円形の開口部を有していてその開口部を覆うようにしてシート状のNDフィルタを取り付けている1枚のフィルタ羽根を、モータなどの電磁駆動手段によって往復回転させ、そのNDフィルタを、露光開口に対して進退させるようにしたものが典型的な構成となっている。
【0004】
また、それらの典型的な構成をした絞り装置やフィルタ装置は、各々一つだけでユニットとして構成することもあるが、複数の絞り装置を一つのユニットとして構成したり、複数のフィルタ装置を一つのユニットとして構成したりすることもあるほか、絞り装置とフィルタ装置とを一つのユニットとして構成することもある。更に、絞り装置とフィルタ装置は、各々の一つ以上を又は両方を含む二つ以上を、シャッタ装置と共に一つのユニットとして構成することもある。
【0005】
本発明は、それらの構成のうち、互いに異なる大きさの開口部を有している1枚の光量制御羽根を備えている少なくとも二つの光量制御装置を一つのユニットとして構成しているカメラ用羽根駆動装置に関するものである。そして、そのように構成された従来のカメラ用羽根駆動装置としては、二つの絞り装置をシャッタ装置と共に一つのユニットとして構成したものが、下記の特許文献1に記載されている。また、一つの絞り装置と一つのフィルタ装置とをシャッタ装置と共に一つのユニットとして構成したものが、下記の特許文献2に記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平11−133479号公報
【特許文献2】特開2001−188275号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
上記の特許文献1,2に記載されている従来のカメラ用羽根駆動装置は、いずれも、二つの光量制御装置を備えているため、露光開口を全開にしている状態を含めると、撮像素子の撮像面に入射する光を3段階に変えることが可能になっている。そのため、このような構成のカメラ用羽根駆動装置においては、撮像素子の撮像面に入射する光を、4段階に変えることを可能にしようとすると、三つの光量制御装置を備える必要があるし、5段階に変えることを可能にしようとすると、四つの光量制御装置を備える必要がある。しかし、カメラ内における配置スペースには制約があるため、撮像素子の撮像面に入射する光の制御段階を一つ増やすごとに、光量制御装置を一つ増設しなければならないというようなことは極めて問題である。
【0008】
本発明は、このような問題点を解決するためになされたものであり、その目的とするところは、露光開口より小さい開口部を形成している光量制御羽根とその光量制御羽根を往復回転させてその開口部を露光開口に対して進退させる駆動手段とを有する光量制御装置を二つ以上備えているカメラ用羽根駆動装置において、それらの光量制御羽根が露光開口を全開にしている制御状態のほかに、撮像素子の撮像面に入射する光の制御状態を、それらの光量制御装置の数よりも多く得られるようにしたカメラ用羽根駆動装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記の目的を達成するために、本発明のカメラ用羽根駆動装置は、露光開口よりも小さく且つ互いに大きさの異なる開口部を有していて各々の駆動手段によって往復回転させられることにより露光開口に対して各々の前記開口部を進退させる複数枚の光量制御羽根を備えており、前記複数枚の光量制御羽根は、各々の前記開口部を個々に露光開口に進入させることも、少なくとも2枚の光量制御羽根の前記開口部を同時に露光開口に進入させることもでき、後者のときには、それらの前記開口部の一部を協働させ、それらの前記開口部のうちの最も小さい開口部よりも小さい開口を形成するようにする。
【0010】
その場合、前記複数枚の光量制御羽根のうち、1枚の光量制御羽根の前記開口部だけが、円形に形成されているようにするのが好ましい。また、前記複数枚の光量制御羽根のうち、少なくとも2枚の光量制御羽根がそれらの前記開口部を同時に露光開口に進入させたとき、それらの前記開口部の協働によって形成される前記開口の形状が略多角形をしているようにしてもよい。更に、前記複数枚の光量制御羽根のうち、少なくとも1枚の光量制御羽根は、その前記開口部を覆うようにしてシート状のフィルタを取り付けているようにしてもよい。
【0011】
また、本発明のカメラ用羽根駆動装置は、独自の駆動手段によって往復回転させられ露光開口を開閉する少なくとも1枚のシャッタ羽根を備えていると共に、前記複数枚の光量制御羽根のうち、少なくとも2枚の光量制御羽根がそれらの前記開口部を同時に露光開口に進入させたとき、それらの開口部の協働によって形成される前記開口の形状が全体として細長い形状をしており、前記シャッタ羽根は、露光開口を閉じるとき、前記開口の略短手方向へ作動するようにすると、前記開口の閉じ時間が短くなる。
【発明の効果】
【0012】
本発明は、露光開口より小さい開口部を形成している光量制御羽根とその光量制御羽根を往復回転させてその開口部を露光開口に対して進退させる駆動手段とを有している光量制御装置を二つ以上備えたカメラ用羽根駆動装置において、少なくとも2枚の光量制御羽根の開口部を同時に露光開口に進入させたときには、それらの開口部の一部を協働させ、それらの開口部のうちの最も小さい開口部よりも小さい開口が形成されるようにしたものであるから、光量制御羽根が露光開口を全開にしている制御状態と、各々の光量制御装置によって得られる制御状態のほかにも、撮像素子の撮像面に入射する光の制御状態を、光量制御装置を増設することなく、得ることが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】露光開口を全開にした状態における実施例1のカメラ用羽根駆動装置を、被写体側から見て示した平面図である。
【図2】図1示されている状態を撮像素子側から見て示した平面図である。
【図3】図2の状態で、一番撮像素子側にあるカバー板を取り外し、シャッタ羽根の羽根室内を示した平面図である。
【図4】図3の状態で、2枚のシャッタ羽根と中間板とを取り外し、絞り羽根の羽根室内を示した平面図である。
【図5】実施例1の構成部材の重なり関係を分かり易くするようにして示した断面図である。
【図6】図4の状態から、一方の絞り羽根だけを作動させ、その開口部を露光開口に進入させている状態を示した平面図である。
【図7】図4の状態から、他方の絞り羽根だけを作動させ、その開口部を露光開口に進入させている状態を示した平面図である。
【図8】図4の状態から、両方の絞り羽根を作動させ、それらの開口部を露光開口に同時に進入させている状態を示した平面図である。
【図9】実施例2のカメラ用羽根駆動装置を図4と同様にして示した平面図である。
【図10】実施例2のカメラ用羽根駆動装置を、図8と同様にして示した平面図である。
【図11】図10の状態を、図3と同様にして示した平面図である。
【図12】実施例1,2の変形例を説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本発明の実施の形態を、図示した二つの実施例によって説明する。尚、上記したように、本発明のカメラ用羽根駆動装置は、二つ以上の光量制御装置を一つのユニットとして構成してもよいし、二つ以上の光量制御装置をシャッタ装置と共に一つのユニットとして構成してもよい。しかも、二つ以上の光量制御装置は、全て絞り装置であってもよいし、全てフィルタ装置であってもよいほか、絞り装置とフィルタ装置が混在していてもよい。しかしながら、それらの全ての態様を実施例として挙げるまでもないと考えるので、いずれも、二つの絞り装置をシャッタ装置と共に一つのユニットとして構成した態様を実施例として説明し、その他の実施態様については、各実施例の説明中及び説明後に、適宜言及することにする。
【実施例1】
【0015】
本実施例のカメラ用羽根駆動装置は、互いに形状と大きさの異なる開口部を形成している1枚の絞り羽根を備えた二つの絞り装置と、相反する方向へ同時に回転させられる2枚のシャッタ羽根を備えたシャッタ装置とを、一つのユニットとして構成したものである。そこで先ず、2枚の絞り羽根と2枚のシャッタ羽根とが露光開口を全開にしている状態を示した図1〜図5を用いて、本実施例の構成を説明する。
【0016】
尚、図1は、カメラに組み込まれた場合において被写体側から見た平面図であり、図2は、図1の背面側即ち撮像素子側から見た平面図である。また、図3は、図2の状態から一番撮像素子側にあるカバー板を取り外し、シャッタ羽根の羽根室内を示した平面図であり、図4は、さらに図3の状態から2枚のシャッタ羽根と中間板とを順に取り外し、絞り羽根の羽根室内を示した平面図である。更に、図5は、本実施例の各構成部材の重なり関係を分かり易くするために適宜に切断し展開させて示した断面図であるが、紙面の都合上、左半分を上段に、右半分を下段に分けて記載したものである。
【0017】
図1から分かるように、本実施例の地板1は、平面形状が略正方形をしていて、その中央部には光軸を中心にした大きな円形の開口部1aを形成している。この地板1は、合成樹脂製であって、各構成部材の配置と取付けが好適に行えるようにするため、被写体側の面も、撮像素子側の面も、複雑な凹凸形状に形成されている。そして、各構成部材を取り付けた状態におけるユニットの形状は、全体として平坦な表面を有する薄型の6面体として構成されるようにしている。また、このユニットは、実際には、被写体側の面にフレキシブルプリント配線板を取り付けているが、その図示は省略されている。更に、このユニットには、実際には、カメラ本体や情報端末機器などに対する取付け部も形成されているが、その図示も省略されている。
【0018】
地板1の被写体側の面には、開口部1aの周りを約270度囲むようにして、凹部が形成されており、その中に三つの電磁アクチュエータが取り付けられている。これらの電磁アクチュエータは、全体として同じ構成をしている周知の電磁アクチュエータであって、2極に着磁された永久磁石を有する回転子が、所定の角度範囲でだけ、固定子コイルに対する通電方向に対応した方向へ回転するようにしたものである。そして、これらの電磁アクチュエータは、固定子コイルに対する非通電状態においては、回転子が、直接又は間接にストッパに接触していて、その回転子の永久磁石の磁力を利用して、その状態を維持されるものである。
【0019】
先ず、図1の左上方領域に取り付けられている第1の電磁アクチュエータを説明する。この電磁アクチュエータは、回転子2と、固定子枠3と、ヨーク4と、コイル5とで構成されている。そして、回転子2は、径方向に2極に着磁された円筒形の永久磁石2aと、その永久磁石2aと一体に成形された合成樹脂製の腕部2bと、その腕部2bの先端に形成された出力ピン2cとを有しており、地板1に立設されている回転子取付け軸1bに対し、永久磁石2aを回転可能に嵌合させている。また、出力ピン2cは、地板1に形成された逃げ孔1c(図4にはその縁の一部が示され、図5には断面状態で示されている)を貫通し、撮像素子側に突き出ている。
【0020】
また、固定子枠3は、合成樹脂製であって、筒状のボビン部3aと、二つの端子用ピン3b,3cと、孔3dとを有している。そして、上記のヨーク4は、二つの脚部を有する略U字形をしていて、一方の脚部をボビン部3aに貫通させ、両方の脚部の先端を磁極部として、永久磁石2aの周面に対向させている。また、上記のコイル5は、ボビン部3aの外側に巻回されており、図示していないが、その両端を二つの端子用ピン3b,3cに巻き付けている。このようにしてヨーク4とコイル5を取り付けた固定子枠3は、その孔3dを、地板1に立設されている固定子取付け軸1dに嵌合させた後、孔3dから突き出ている固定子取付け軸1dの先端を熱溶解し変形させたことによって、地板1に取り付けられている。
【0021】
上記の三つの電磁アクチュエータのうち、図1の右下方領域に取り付けられている第2の電磁アクチュエータは、回転子6と、固定子枠7と、ヨーク8と、コイル9とで構成されている。そして、回転子6は、径方向に2極に着磁された円筒形の永久磁石6aと、その永久磁石6aと一体に成形された合成樹脂製の腕部6bと、その腕部6bの先端に形成された出力ピン6cとを有しており、地板1に立設された回転子取付け軸1eに対し、永久磁石6aを回転可能に嵌合させている。また、出力ピン6cは、地板1に形成された逃げ孔1f(図5に断面状態で示されている)を貫通し、撮像素子側に突き出ている。
【0022】
また、固定子枠7は、合成樹脂製であって、筒状のボビン部7aと、二つの端子用ピン7b,7cと、孔7dとを有している。そして、ヨーク8は、二つの脚部を有する略U字形をしており、一方の脚部をボビン部7aに貫通させ、両方の脚部の先端を磁極部とし、永久磁石6aの周面に対向させている。また、コイル9は、ボビン部7aの外側に巻回されており、図示していないが、その両端を二つの端子用ピン7b,7cに巻き付けている。そして、ヨーク8とコイル9とを取り付けた固定子枠7は、その孔7dを、地板1に立設された固定子取付け軸1gに嵌合させた後、孔7dから突き出た固定子取付け軸1gの先端を熱溶解し変形させたことによって、地板1に取り付けられている。
【0023】
上記の三つの電磁アクチュエータのうち、図1の左下方領域に取り付けられている第3の電磁アクチュエータは、回転子10と、固定子枠11と、ヨーク12と、コイル13とで構成されている。そして、回転子10は、径方向に2極に着磁された円筒形の永久磁石10aと、その永久磁石10aと一体に成形された合成樹脂製の腕部10bと、その腕部10bの先端に形成された出力ピン10cとを有しており、地板1に立設された回転子取付け軸1hに対し、永久磁石10aを回転可能に嵌合させている。また、出力ピン10cは、地板1に形成された逃げ孔1i(図4,図5参照)を貫通し、撮像素子側に突き出ている。
【0024】
また、固定子枠11は、合成樹脂製であって、筒状のボビン部11aと、二つの端子用ピン11b,11cと、二つの孔11d,11eとを有している。そして、ヨーク12は、二つの脚部を有する略U字形をしており、一方の脚部をボビン部7aに貫通させ、両方の脚部の先端を磁極部として、永久磁石10aの周面に対向させている。また、コイル13は、ボビン部11aの外側に巻回されており、図示していないが、その両端を二つの端子用ピン11b,11cに巻き付けている。そして、ヨーク12とコイル13とを取り付けた固定子枠11は、その孔11d,11eを、地板1に立設された固定子取付け軸1j,1kに嵌合させ、上記の固定子枠3,7の一部を押さえ込んだ後、孔11d,11eから突き出た固定子取付け軸1j,1kの先端を熱溶解し変形させたことによって、地板1に取り付けられている。
【0025】
次に、地板1の撮像素子側に取り付けられている構成部材とその取付け構成を説明する。地板1の撮像素子側には、開口部1aを囲むようにして複雑な平面形状をした凹部が形成されている。そして、その凹部は、図5の左端及び右端の形状から分かるように、3段に形成されている。また、地板1の撮像素子側の面には、図2〜図4に示されているように、その凹部の外形を形成している縁の近傍部位に、四つの羽根取付け軸1A,1B,1C,1Dと、八つのストッパ1E,1F,1G,1H,1I,1J,1K,1Lと、五つのカバー板取付け軸1M,1N,1P,1Q,1Rとが、撮像素子側に向けて立設されている。
【0026】
そして、上記の凹部には、一番被写体側の1段目に、合成樹脂製の口径板(口径規制板ということもある)14が配置され、2段目に、合成樹脂製の中間板(仕切り板ということもある)15が配置され、3段目に、合成樹脂製のカバー板(押さえ板,補助地板などということもある)16が配置されている。そして、口径板14と中間板15との間に構成された羽根室には2枚の絞り羽根17,18が配置され、中間板15とカバー板16との間に構成された羽根室には2枚のシャッタ羽根19,20が配置されている。
【0027】
そこで先ず、一番被写体側に配置されている口径板14について説明する。図1から分かるように、この口径板14には、光軸を中心にして、地板1の開口部1aより遥かに直径の小さい開口部14aが形成されている。そして、この開口部14aによって、本実施例のユニットとしての被写体光の最大の大きさの開口、即ち露光開口が決められている。ところで、かつては、地板1の開口部1aは、口径板14の開口部14aと同じ直径に形成されているのが普通であったし、今でもそのようにすることがある。そうすれば、本実施例のように、口径板14を設ける必要がないからである。ところが、本実施例の場合には、地板1の開口部1aの直径を大きくし、あえて口径板14を設けるようにしている。それは次の理由によるからである。
【0028】
地板1は、合成樹脂製であって多くの構成部材を取り付ける必要があることから、比較的厚い部材として製作されている。そのため、地板1よりも被写体側に配置される撮影レンズと、後述する絞り羽根17,18の作動面との距離が必然的に大きくなってしまい、カメラ内や情報端末機器内における光軸方向の設置スペースが大きくなってしまう。そのため、本実施例では、開口部1aを大きくして、撮影レンズを絞り羽根17,18の作動面に近付けて設置し得るようにし、上記の配置スペースが有利になるようにしている。ところが、開口部1aを大きくすると、絞り羽根17,18が撮影レンズ側に変位し易くなって、撮影レンズに接触してしまうことになる。
【0029】
そのようなことが生じないようにするためには、口径板14のうち、図1に示された状態で見えている部位だけを、地板1と一体的に成形すればよいことになる。しかし、地板1は複雑な形状をしているため、その上にそのような比較的大きな面積を有する部位を薄く形成するのは、成形技術上難しい。そこで、本実施例の場合には、薄い口径板14を別に製作するようにしている。従って、上記した配置スペースを有利にしたり、上記した部位を薄く形成したりする必要がないのであれば、本実施例のように、口径板14を設ける必要はなく、開口部1aを開口部14aと同じ大きさに形成すればよいことになる。
【0030】
このような理由で設けられている本実施例の口径板14には、上記の開口部14aが形成されているほか、周辺部には、上記の中間板15の周辺部を部分的に受けるために、中間板15側に向けて厚く形成された肉厚部が複数個所に設けられている。そして、この口径板14には、上記の出力ピン2c,6cを貫通させた円弧状の二つの逃げ孔が形成されているが、図4においては、一方の出力ピン2cを貫通させている逃げ孔14bの一部だけが示されている。尚、後述の作動説明に用いる図6及び図8には、他方の出力ピン6cを貫通させている逃げ孔14fの一部が示されている。
【0031】
また、この口径板14には、上記の羽根取付け軸1A,1B,1Dを嵌合させた三つの孔が形成されているが、図4には、上記の肉厚部との境に形成されていて、羽根取付け軸1Dを嵌合させている孔14cだけが示されている。更に、この口径板14には、上記のストッパ1E,1Rを嵌合させた二つの孔14d,14eが、各々、肉厚部との境に形成されている。そして、この口径板14は、羽根取付け軸1A,1Dによって、光軸と直行する方向へ移動しない(ガタつかない)ように位置決めされている。
【0032】
次に、口径板14と中間板15との間に配置されている絞り羽根17,18について説明する。図4に示されているように、口径板14側に配置されている絞り羽根17は、長円形の開口部17aと、長孔17bと、孔17cとを有していて、長孔17bに上記の出力ピン2cを貫通させ、孔17cに上記の羽根取付け軸1Aを嵌合させている。そして、図4においては、この絞り羽根17は、開口部14aから退いてストッパ1Eに接触しているが、図4には示されていない回転子2が時計方向へ回転させられると、出力ピン2cによって、羽根取付け軸1Aを中心にして時計方向へ回転させられ、ストッパ1Gに当接して停止させられ、開口部17aを開口部14a内に臨ませるようになっている。
【0033】
また、中間板15側に配置されている他方の絞り羽根18は、上記の絞り羽根17の開口部17aとは形状も大きさも異なる長円形の開口部18aと、長孔18bと、孔18cとを有していて、長孔18bに上記の出力ピン6cを貫通させ、孔18cに上記の羽根取付け軸1Bを嵌合させている。そして、図4においては、この絞り羽根18は、開口部14aから退いてストッパ1Fに接触しているが、図4には示されていない回転子6が反時計方向へ回転させられると、出力ピン6cによって、羽根取付け軸1Bを中心にして反時計方向へ回転させられ、ストッパ1Hに当接して停止させられ、開口部18aを開口部14a内に臨ませるようになっている。
【0034】
次に、中間板15について説明する。図3から分かるように、この中間板15には、光軸を中心にして、上記の口径板14の開口部14aより若干直径の大きな開口部15aが形成されている。また、この中間板15の周辺部には、上記のカバー板16を受けるためにカバー板16側に向けて厚く形成された肉厚部が複数個所に設けられている。そして、この中間板15には、上記の出力ピン2c,6c,10cを貫通させた円弧状の三つの逃げ孔15b,15c,15dが形成されているが、それらのうち逃げ孔15b,15cは、それらの殆どが上記の肉厚部の領域にあるようにして形成されている。
【0035】
また、この中間板15には、上記の羽根取付け軸1A,1B,1Cを嵌合させた三つの孔が形成されているが、図3においては、それらのうち、肉厚部に形成されていて、羽根取付け軸1A,1Bを嵌合させている二つの孔15e,15fが示されている。また、この中間板15には、上記のストッパ1E,1Iを貫通させた二つの孔15g,15hが形成されているが、それらのうち、孔15gは肉厚部に形成されている。更に、この中間板15には、上記のカバー板取付け軸1Rを貫通させた孔15iが形成されている。そして、この中間板15は、羽根取付け軸1A,1Bによって、光軸とは直行する方向へ移動しないように位置決めされている。
【0036】
次に、中間板15とカバー板16との間に配置されている2枚のシャッタ羽根19,20について説明する。図3に示されているように、中間板15側に配置されているシャッタ羽根19は、長孔19aと、孔19bとを有していて、長孔19aに上記の出力ピン10cを貫通させ、孔19bには上記の羽根取付け軸1Cを嵌合させている。そして、図3においては、このシャッタ羽根19は、開口部14aから退いてストッパ1Iに接触しているが、図3には示されていない回転子10が時計方向へ回転させられると、出力ピン10cによって、羽根取付け軸1Cを中心にして時計方向へ回転させられ、ストッパ1Kに当接して停止させられるようになっている。
【0037】
また、カバー板16側に配置されている他方のシャッタ羽根20は、長孔20aと、孔20bとを有していて、長孔20aに上記の出力ピン10cを貫通させ、孔20bに上記の羽根取付け軸1Dを嵌合させている。図3に示された状態においては、このシャッタ羽根20は、開口部14aから退いてストッパ1Jに接触しているが、図3には示されていない回転子10が時計方向へ回転させられると、出力ピン10cによって、羽根取付け軸1Dを中心にして反時計方向へ回転させられ、ストッパ1Lに当接して停止させられるようになっている。そして、シャッタ羽根19,20がストッパ1K,1Lに当接して停止した状態が、開口部14aの閉鎖状態である。
【0038】
尚、上記のように、本実施例の場合には、回転子10の出力ピン10cによって、同時に相反する方向へ回転させられる2枚のシャッタ羽根19,20を備えているが、いずれか一方のシャッタ羽根を若干大きくして、他方のシャッタ羽根を省くようにすることも可能である。そのようにした場合には、部品が減る分だけコストが抑えられるという利点がある反面、開口部14aを閉じ始めてから閉じ終わるまでの時間が長くなるという問題がある。
【0039】
また、本実施例の場合には、上記のように、口径板14とカバー板16との間を中間板15で仕切ることによって、二つの羽根室を構成しているが、これは、周知のように、主に、絞り羽根18とシャッタ羽根19とが作動中に噛み合いを生じず、安定した作動が得られるようにするためである。しかしながら、各羽根の形状や配置関係を工夫することにより、このような中間板15を設けなくても済むようにし得ることが知られている。そのため、本実施例のように、光量制御羽根である2枚の絞り羽根と、2枚のシャッタ羽根とを備えているカメラ用羽根駆動装置であっても、必ずしも中間板を備えていなければならないというものではない。
【0040】
最後に、カバー板16について説明する。図2から分かるように、このカバー板16には、光軸を中心にして、上記の中間板15の開口部15aよりも若干直径の大きな開口部16aが形成されている。また、このカバー板16には、上記の出力ピン2c,6c,10cの先端を挿入させるために、上記の中間板15の逃げ孔15b,15c,15dと重なるところに、全く同じ形状をした円弧状の逃げ孔16b,16c,16dが形成されている。また、このカバー板16には、上記の羽根取付け軸1A,1B,1C,1Dの先端を貫通させた四つの孔16e,16f,16g,16hが形成されている。
【0041】
また、このカバー板16には、上記のストッパ1E,1G,1H,1Iの先端を貫通させた四つの孔16i,16j,16k,16mが形成されている。そして、このカバー板16は、羽根取付け軸1A,1Bによって、光軸とは直行する方向へ移動しないように位置決めされている。更に、このカバー板16には、上記の五つのカバー板取付け軸1M,1N,1P,1Q,1Rの先端を貫通させた孔16n,16p,16q,16r,16sが形成されている。そして、このカバー板16は、それらのカバー板取付け軸1M,1N,1P,1Q,1Rの先端を熱溶解し変形させることによって、地板1に取り付けられている。
【0042】
次に、図6〜図8も加え、本実施例の作動を説明する。図1〜図4は、既に説明したように、開口部14a即ち露光開口を全開にした状態を示したものであるが、この状態は、本実施例のカメラ用羽根駆動装置をデジタルカメラや情報端末機器などに採用した場合における撮影待機状態を示したものでもある。そして、その撮影待機状態においては、カメラの電源スイッチはオンになっているが、三つの電磁アクチュエータのコイル5,9,13には通電されていない。しかしながら、周知のように、このとき、回転子2,6,10の永久磁石2a,6a,10aとヨーク4,8,12の磁極部との間に作用する磁力によって、回転子2,6,10は、いずれも図1において時計方向(図3及び図4においては反時計方向)へ回転するように付勢されている。
【0043】
そのため、図3において、シャッタ羽根19は反時計方向へ、シャッタ羽根20は時計方向へ回転するように付勢されているが、シャッタ羽根19はストッパ1Iにより、シャッタ羽根20はストッパ1Jによって回転を阻止され、この状態が維持されている。また、図4において、絞り羽根17は反時計方向へ、絞り羽根18は時計方向へ回転するように付勢されているが、絞り羽根17はストッパ1Eにより回転を阻止され、絞り羽根18はストッパ1Fにより回転を阻止されることによって、この状態が維持されている。そのため、図示していない撮像素子には被写体光が当たっており、撮影者は、モニターで被写体像を観察することが可能になっている。
【0044】
撮影に際してレリーズボタンを押すと、実際に撮影が開始される前に、図示していない測光装置が被写体光の明るさを測定し、その明るさが、予め決められている4段階の範囲のうちのどれに入っているかを判断する。そこで先ず、測光の結果、被写体光が、暗い方から1番目の範囲に入っていた場合を説明する。この場合、二つの絞り装置は全く作動せず、2枚の絞り羽根17,18は、図4に示されている状態を維持し続ける。そのため、それまで撮像素子に蓄積されていた電荷が直ちに放出されて撮影が開始され、新たな電荷が撮像素子に蓄積されていく。
【0045】
そして、所定の時間が経過すると、露光時間制御回路からの信号によって、上記の第3の電磁アクチュエータのコイル13に順方向の電流が供給される。それによって、回転子10が、図1において反時計方向へ回転させられるので、図3においては時計方向へ回転させられ、出力ピン10cによって、シャッタ羽根19を時計方向へ回転させ、シャッタ羽根20を反時計方向へ回転させて、開口部14aを閉じさせていく。そして、開口部14aを閉鎖した直後には、シャッタ羽根19はストッパ1Kに当接し、シャッタ羽根20はストッパ1Lに当接して停止させられる。
【0046】
その後、撮像素子に蓄積された電荷が、撮像情報として情報処理回路を介して記憶装置に転送されるが、それが終わると、コイル13に対して逆方向の電流が供給される。そのため、回転子10は、上記の場合とは逆の方向へ回転させられることになるので、開口部14aを閉鎖していたシャッタ羽根19,20も、出力ピン10cによって、上記の場合とは逆の方向へ回転させられ、開口部14aを開いていく。そして、開口部14aを全開にした直後に、シャッタ羽根19はストッパ1Iに当接し、シャッタ羽根20はストッパ1Jに当接して停止させられる。その後、コイル13への通電を断つと、図1〜図4に示された撮影待機状態に復帰したことになる。
【0047】
次に、測光装置が被写体光の明るさを測定した結果、その明るさが、予め決められている4段階の範囲のうち、暗い方から2番目の範囲に入っていた場合を説明する。この場合には、上記のようにして、撮像素子によって実際の撮影が行われる前に、上記の第2の電磁アクチュエータのコイル9に対して順方向の電流が供給される。それによって、回転子6が、図1において反時計方向へ回転させられるので、図4においては時計方向へ回転させられ、出力ピン6cによって、絞り羽根18を反時計方向へ回転させ、開口部18aを開口部14aに進入させていく。そして、開口部18aの中心が開口部14aの中心に達すると、絞り羽根18はストッパ1Hに当接して停止させられるが、その状態が図6に示されている。
【0048】
周知のように、図6の状態になったとき、コイル9に対する通電を断っても、永久磁石10aの磁極とヨーク8の磁極部との対向位置関係で、よほどのことでもない限り、絞り羽根18は、図6の停止状態を維持される。しかし、万が一のことを考えると通電をし続けることが好ましい。このようにして図6の状態が得られると、それまで撮像素子に蓄積されていた電荷が直ちに放出されて撮影が開始され、新たな電荷が撮像素子に蓄積されていく。そして、所定の時間が経過すると、シャッタ羽根19,20が開口部14aを閉鎖することになるが、シャッタ羽根19,20の作動説明は上記の説明と重複するため省略し、ここでは、それ以後の絞り羽根18の作動だけを説明する。
【0049】
シャッタ羽根19,20が開口部14aを閉鎖して撮影が終了すると、コイル9に対して逆方向の電流が供給される。そのため、回転子6は、上記の場合とは逆の方向へ回転させられるので、絞り羽根18は、図6において時計方向へ回転させられ、開口部18aを開口部14aから退かせていく。そして、絞り羽根18は、開口部14aから完全に退いた直後にストッパ1Fに当接して停止させられる。その後、コイル9への通電を断つと、図1〜図4に示された撮影待機状態に復帰したことになる。尚、絞り羽根18が図4の状態に復帰するのは、シャッタ羽根19,20が図3の状態に復帰するのと略同時であることが好ましいが、ずれていても差し支えない。このことは、次に説明する絞り羽根17の場合も同じである。
【0050】
そこで次に、測光装置が被写体光の明るさを測定した結果、その明るさが、予め決められている4段階の範囲のうち、暗い方から3番目の範囲に入っていた場合を説明する。この場合には、撮像素子によって実際の撮影が行われる前に、上記の第1の電磁アクチュエータのコイル5に対して順方向の電流が供給される。それによって、回転子2が、図1において反時計方向へ回転させられるので、図4においては時計方向へ回転させられ、出力ピン2cによって、絞り羽根17を時計方向へ回転させ、開口部17aを開口部14aに進入させていく。そして、開口部17aの中心が開口部14aの中心に達すると、絞り羽根17はストッパ1Gに当接して停止させられるが、その状態が図7に示されている。
【0051】
既に説明したように、絞り羽根17の開口部17aの大きさは、他方の絞り羽根18の開口部18aよりも小さい。そのため、図7の状態においては、開口部14aから入射してくる被写体光は、上記の図6の状態よりも減じられることになる。このようにして図7の状態が得られると、それまで撮像素子に蓄積されていた電荷が直ちに放出されて撮影が開始され、新たな電荷が撮像素子に蓄積されていくが、それに伴うシャッタ羽根19,20の作動説明は省略し、ここでは、それ以後の絞り羽根17の作動だけを説明する。
【0052】
シャッタ羽根19,20が開口部14aを閉鎖して撮影が終了すると、コイル5に対して逆方向の電流が供給される。そのため、回転子2は、上記の場合とは逆の方向へ回転させられるので、絞り羽根17は、図7において反時計方向へ回転させられ、開口部17aを開口部14aから退かせていく。そして、絞り羽根17は、開口部14aから完全に退いた直後にストッパ1Eに当接して停止させられる。その後、コイル5への通電を断つと、図1〜図4に示された撮影待機状態に復帰したことになる。
【0053】
次に、測光装置が被写体光の明るさを測定した結果、その明るさが、予め決められている4段階の範囲のうち、暗い方から4番目の範囲、即ち一番明るい範囲に入っていた場合を説明する。この場合には、撮像素子によって実際の撮影が行われる前に、第1の電磁アクチュエータのコイル5と第2の電磁アクチュエータのコイル9の両方に対して、順方向の電流が供給される。それにより、回転子2,6が、共に図1において反時計方向へ回転させられるので、図4においては時計方向へ回転させられることになり、一方の回転子2の出力ピン2cは絞り羽根17を時計方向へ回転させ、他方の回転子6の出力ピン6cは絞り羽根18を反時計方向へ回転させることによって、両方の開口部17a,18aを開口部14aに進入させていく。そして、開口部17a,18aの中心が開口部14aの中心に達すると、絞り羽根17,18はストッパ1G,1Hに当接して停止させられる。その状態が図8に示されている。
【0054】
図8から分かるように、この状態においては、開口部17aと開口部18aとは、お互いの長手方向を直行させて重なっている。しかも、開口部17aの長手方向の最大長の寸法は、開口部18aの短手方向の最大長の寸法よりも大きい。そのため、このときには、両方の開口部17a,18aの形成縁の一部ずつを協働させ、開口部17aよりも小さい開口が形成されている。その結果、図8の状態においては、開口部14aから入射してくる被写体光は、上記の図7の状態よりも減じられることになる。このようにして図8の状態が得られると、それまで撮像素子に蓄積されていた電荷が直ちに放出されて撮影が開始され、新たな電荷が撮像素子に蓄積されていくが、それに伴うシャッタ羽根19,20の作動説明は省略し、ここでは、それ以後の絞り羽根17,18の作動だけを説明する。
【0055】
シャッタ羽根19,20が開口部14aを閉鎖して撮影が終了すると、二つのコイル5,9に対して逆方向の電流が供給される。そのため、回転子2,6は、上記の場合とは逆の方向へ回転させられるので、一方の絞り羽根17は、図8において反時計方向へ回転させられ、他方の絞り羽根18は時計方向へ回転させられて、各々の開口部17a,18aを開口部14aから退かせていく。そして、絞り羽根17,18は、開口部14aから完全に退いた直後にストッパ1E,1Fに当接して停止させられる。その後、コイル5,9への通電を断つと、図1〜図4に示された撮影待機状態に復帰したことになる。
【0056】
このように、本実施例の場合には、開口部14a即ち露光開口よりも小さくて互いに大きさの異なる開口部17a,18aを有している絞り羽根17,18が、各々の電磁アクチュエータによって往復回転させられる構成をしているだけであるにもかかわらず、開口部14aから入射してくる被写体光を、開口部14aを全開にしている状態も含めて、4段階に制御することができるという特徴がある。
【0057】
尚、本実施例のカメラ用羽根駆動装置は、互いに大きさの異なる開口部17a,18aを一つずつ形成した絞り羽根17,18を有している二つの絞り装置を備えているが、本発明は、このような構成に限定されず、互いに大きさの異なる開口部を一つずつ形成した絞り羽根を有している三つ以上の絞り装置を備えているようにしてもよい。そのように構成すると、例えば、それらのうちの二つの絞り装置を選択して同時に作動させたり、全部の絞り装置を同時に作動させたりして、露光開口から入射してくる被写体光を、露光開口を全開にする状態も含めて、少なくとも5段階の制御を行えるようにすることが可能になる。
【0058】
また、本発明は、本実施例の絞り羽根17の方にだけ、開口部17aを覆うようにしてシート状のNDフィルタを取り付けても構わないし、両方の絞り羽根17,18に、それらの開口部17a,18aを覆うようにして同じ濃度のNDフィルタを取り付けるようにしても構わない。更に、本実施例のように、開口部14aから入射してくる被写体光を、開口部14aを全開にしている状態も含めて4段階に制御できることを前提にして、絞り羽根18の方にだけNDフィルタを取り付けるようにしても構わないし、絞り羽根17,18の両方に、濃度の異なるNDフィルタを取り付けるようにしても構わない。
【実施例2】
【0059】
次に、図9〜図11を用いて実施例2を説明するが、図9は、本実施例のカメラ用羽根駆動装置を上記の図4と同様にして示した平面図であり、また、図10は、本実施例のカメラ用羽根駆動装置を上記の図8と同様にして示した平面図であり、さらに、図11は、図10の状態を上記の図3と同様にして示した平面図である。尚、上記の実施例1の構成と本実施例の構成とでは、上記の絞り羽根17,18に形成されている開口部の形状が異なっているだけである。そのため、図9〜図11に示されている構成部材及びそれらの部位には、絞り羽根17,18に形成されている開口部を除き、全て実施例1の場合と同じ符号を付けてある。従って、重複を避けるため、それらの構成部材及び部位についての説明は省略する。
【0060】
本実施例の一方の絞り羽根17には、口径板14の開口部14a、即ち露光開口よりもかなり直径の小さい円形の開口部17Aが形成されている。また、もう一方の絞り羽根18には、猫目形状をした開口部18Aが形成されている。そして、開口部18Aの長手方向の最大長は、開口部17Aの直径よりも大きく、短手方向の最大長は、開口部17Aの直径よりも小さい。また、この開口部18Aの開口面積は、開口部17Aの開口面積よりも大きい。
【0061】
本実施例の作動は、上記の実施例1の場合と実質的に同じである。ただし、上記のように、絞り羽根17,18に形成されている開口部17A,18Aの形状が異なっているため、カメラ用羽根駆動装置としては、実施例1の場合よりも優れた点を有している。そのため、本実施例の全体の作動説明については、重複を避けるために省略するが、その優れている点を、図10及び図11を用いて説明する。
【0062】
図10は、図8と同様にして示した平面図であって、図9に示された撮影待機状態から両方の絞り羽根17,18を作動させ、それらの開口部17A,18Aを露光開口に同時に進入させた状態を示したものである。そのため、この状態においては、開口部17A,18Aは重なっており、両方の形成縁の一部ずつを協働させ、開口部17Aよりも小さい開口が形成されている。そして、その開口形状は、全体として細長い形状をしており、長手方向の中心線の延長線上には、即ち開口部18Aの長手方向の両端を通る直線上には、第3の電磁アクチュエータの回転子10の出力ピン10cが存在するようになっている。図11は、このような図10の状態を、シャッタ羽根19,20を配置している羽根室側から、中間板15の開口部15aを通して見た平面図である。
【0063】
カメラのレリーズによって図10及び図11に示された状態が得られると、上記の実施例1で詳しく説明したように、本実施例の場合にも、それまで撮像素子に蓄積されていた電荷が直ちに放出されて撮影が開始され、新たな電荷が撮像素子に蓄積されていく。そして、所定の時間が経過すると、第3の電磁アクチュエータのコイル13に順方向の電流が供給される。それによって、回転子10が、図3においては時計方向へ回転させられることになるので、出力ピン10cによって、一方のシャッタ羽根19は時計方向へ、他方のシャッタ羽根20は反時計方向へ、同時に回転させられていく。
【0064】
そのとき、図11に円弧状に描かれている矢印付の線からも分かるように、シャッタ羽根19,20の閉じ方向の先端縁は、開口部17A,18Aの協働によって形成された細長い形状の開口を、その開口の略短手方向に作動して閉じていく。そのため、本実施例の場合には、シャッタ羽根19,20が、その開口を閉じ始めてから閉じ終わるまでの時間を最小時間とすることが可能になり、露光むらの発生を効果的に抑制することが可能になる。
【0065】
最後に、上記の各実施例で示したほかに、2枚の絞り羽根の開口部の協働によって形成される開口の異なる形状例を、図12を用いて説明する。尚、図12おいては、八つの形状例が示されているが、それらの全てに符号を付けるまでもないので、左上の一つの例に対してだけ付けてある。そして、図12において、破線で円形に描かれているのは、上記の各実施例における口径板14の開口部14aである。また、その全ての形成縁を実線で描かれているのは、上記の各実施例における絞り羽根18の開口部18a,18Aに代わる形状の開口部18A´である。更に、その開口部18A´内では実線で描かれ、開口部18A´の外側では破線で描かれているのは、上記の各実施例における絞り羽根17の開口部17a,17Aに代わる形状の開口部17A´である。
【0066】
2枚の絞り羽根の開口部が協働して形成する開口形状は、本来であれば、円形であることが好ましい。ところが、その開口の中心が光軸中心と略一致して形成されるようにしようとすると、円形にすることは不可能である。そこで、これらの形状例の中には、直線の縁で多角形に形成されたものが多い。また、一部の縁が円弧状ではあるが、全体として多角形と言ってもよいものがある。また、実施例2のように、一方の開口部18A´だけを円形にしたものがあるが、周知のように、小さい開口形状ほど円形であることが好ましいことから、その点だけからいうと、実施例2の方が優れている。
【符号の説明】
【0067】
1 地板
1a,14a,15a,16a,17a,18a,17A,18A,17A´,18A´ 開口部
1b,1e,1h 回転子取付け軸
1c,1f,1i,14b,14f,15b〜15d,16b〜16d 逃げ孔
1d,1g,1j,1k 固定子取付け軸
1A〜1D 羽根取付け軸
1E〜1L ストッパ
1M,1N,1P,1Q,1R カバー板取付け軸
2,6,10 回転子
2a,6a,10a 永久磁石
2b,6b,10b 腕部
2c,6c,10c 出力ピン
3,7,11 固定子枠
3a,7a,11a ボビン部
3b,3c,7b,7c,11b,11c 端子用ピン
3d,7d,11d,11e,17c,18c,14c〜14e,15e〜15i,16e〜16k,16m,16n,16p〜16s 孔
4,8,12 ヨーク
5,9,13 コイル
14 口径板
15 中間板
16 カバー板
17,18 絞り羽根
17b,18b,19a,20a 長孔
19,20 シャッタ羽根
【特許請求の範囲】
【請求項1】
露光開口よりも小さく且つ互いに大きさの異なる開口部を有していて各々の駆動手段によって往復回転させられることにより露光開口に対して各々の前記開口部を進退させる複数枚の光量制御羽根を備えており、前記複数枚の光量制御羽根は、各々の前記開口部を個々に露光開口に進入させることも、少なくとも2枚の光量制御羽根の前記開口部を同時に露光開口に進入させることもでき、後者のときには、それらの前記開口部の一部を協働させ、それらの前記開口部のうちの最も小さい開口部よりも小さい開口を形成するようにしたことを特徴とするカメラ用羽根駆動装置。
【請求項2】
前記複数枚の光量制御羽根のうち、1枚の光量制御羽根の前記開口部だけが、円形に形成されていることを特徴とする請求項1に記載のカメラ用羽根駆動装置。
【請求項3】
前記複数枚の光量制御羽根のうち、少なくとも2枚の光量制御羽根がそれらの前記開口部を同時に露光開口に進入させたとき、それらの前記開口部の協働によって形成される前記開口の形状が略多角形をしていることを特徴とする請求項1又は2に記載のカメラ用羽根駆動装置。
【請求項4】
前記複数枚の光量制御羽根のうち、少なくとも1枚の光量制御羽根は、前記開口部を覆うようにしてシート状のフィルタを取り付けていることを特徴とする請求項1乃至3のいずれかに記載のカメラ用羽根駆動装置。
【請求項5】
独自の駆動手段によって往復回転させられ露光開口を開閉する少なくとも1枚のシャッタ羽根を備えていると共に、前記複数枚の光量制御羽根のうち、少なくとも2枚の光量制御羽根がそれらの前記開口部を同時に露光開口に進入させたとき、それらの開口部の協働によって形成される前記開口の形状が全体として細長い形状をしており、前記シャッタ羽根は、露光開口を閉じるとき、前記開口の略短手方向へ作動するようにしたことを特徴とする請求項1乃至4のいずれかに記載のカメラ用羽根駆動装置。
【請求項1】
露光開口よりも小さく且つ互いに大きさの異なる開口部を有していて各々の駆動手段によって往復回転させられることにより露光開口に対して各々の前記開口部を進退させる複数枚の光量制御羽根を備えており、前記複数枚の光量制御羽根は、各々の前記開口部を個々に露光開口に進入させることも、少なくとも2枚の光量制御羽根の前記開口部を同時に露光開口に進入させることもでき、後者のときには、それらの前記開口部の一部を協働させ、それらの前記開口部のうちの最も小さい開口部よりも小さい開口を形成するようにしたことを特徴とするカメラ用羽根駆動装置。
【請求項2】
前記複数枚の光量制御羽根のうち、1枚の光量制御羽根の前記開口部だけが、円形に形成されていることを特徴とする請求項1に記載のカメラ用羽根駆動装置。
【請求項3】
前記複数枚の光量制御羽根のうち、少なくとも2枚の光量制御羽根がそれらの前記開口部を同時に露光開口に進入させたとき、それらの前記開口部の協働によって形成される前記開口の形状が略多角形をしていることを特徴とする請求項1又は2に記載のカメラ用羽根駆動装置。
【請求項4】
前記複数枚の光量制御羽根のうち、少なくとも1枚の光量制御羽根は、前記開口部を覆うようにしてシート状のフィルタを取り付けていることを特徴とする請求項1乃至3のいずれかに記載のカメラ用羽根駆動装置。
【請求項5】
独自の駆動手段によって往復回転させられ露光開口を開閉する少なくとも1枚のシャッタ羽根を備えていると共に、前記複数枚の光量制御羽根のうち、少なくとも2枚の光量制御羽根がそれらの前記開口部を同時に露光開口に進入させたとき、それらの開口部の協働によって形成される前記開口の形状が全体として細長い形状をしており、前記シャッタ羽根は、露光開口を閉じるとき、前記開口の略短手方向へ作動するようにしたことを特徴とする請求項1乃至4のいずれかに記載のカメラ用羽根駆動装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【公開番号】特開2012−53209(P2012−53209A)
【公開日】平成24年3月15日(2012.3.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−194776(P2010−194776)
【出願日】平成22年8月31日(2010.8.31)
【出願人】(000001225)日本電産コパル株式会社 (755)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成24年3月15日(2012.3.15)
【国際特許分類】
【出願日】平成22年8月31日(2010.8.31)
【出願人】(000001225)日本電産コパル株式会社 (755)
【Fターム(参考)】
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