説明

カメラ等の高所据付具

【課題】 カメラ支柱を自立構造とするのではなく、他の支柱に添わせると言う斬新な発想を採用することで、カメラ支柱の支持構造を大幅に簡素化し低コストで可搬性の良好な使い勝手のよいカメラ等の高所据付具を提供する。
【解決手段】 操作ロープの先端部を対象となる照明柱等の支柱の周囲に一巻きしたのち、ロープ先端部の係止具を第1段目の単位ロッドの先端部適所に係止させることで、支柱及び当該伸縮ロッドを緩く取り巻くループ部分を形成した状態において、伸縮ロッドを適宜な長さに伸張固定して支柱に沿わせて立て掛け、操作ロープの垂れ下げ部分を強く引っ張って、支柱を取り巻くループ部分を締め付け、その状態にて操作ロープの垂れ下げ部分を適宜に固定することにより、支柱外表面とロッド支持部材のパッド面との当接を介して雲台と支柱とを位置決めしつつ、伸縮ロッドを支柱に添設し得るように構成した。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、例えば、高速道路の料金所付近における交通状況調査のための広角撮影、事件現場の混雑の中での報道撮影等のように、カメラ等の高所仮据付を必要とする用途に好適なカメラ等の高所据付具に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、高速道路の料金所付近における交通状況調査のためには、広い領域の多数の走行車両を一括して視野に収めるために、カメラによる高所撮影が必要とされる場合がある。また、事件現場の混雑の中での報道撮影等においても、カメラによる頭越しの高所撮影ができれば、高品質な報道写真を容易に得られることは言うまでもない。
【0003】
従来、上述の交通状況調査等の場合には、しばしば電柱工事等に使用されるリフトカーが採用されている。すなわち、交通状況調査の現場である高速道路の一画にリフトカーを停車させ、撮影者自身をリフトカーで高所へと上昇させることで、高所からのカメラ撮影を可能とするものである。
【0004】
しかしながら、このようなリフトカーによる場合には、車両利用料が高額となることに加えて、高速道路上にリフトカー駐車のための領域を確保するために、予め道路管理者から道路使用許可をとることが必要となり、コスト並びに迅速作業の面から問題が多い。
【0005】
一方、リフトカーを使用することなく、カメラの高所仮据付を行うための工夫としては、伸縮式の支柱と雲台とを使用する各種のカメラの高所据付装置が知られている(例えば、特許文献1、2、3等参照)。
【特許文献1】特開平8−336068号公報
【特許文献2】特開2002−228088号公報
【特許文献3】実用新案登録第3023696号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上述の特許文献1乃至3に記載のカメラの高所据付装置は、いずれも、仮据付とは言え、それ自体で支柱が自立する構造とされているため、屋外での高所撮影を想定すると、想定されるカメラの据え付け高さが増加するにつれて、風や振動等に耐えるべく、支柱の支持構造が大掛かりなものとなって、装置が高額なものとなり、また可搬性も低下して、使い勝手も低下すると言う問題点が指摘されている。
【0007】
この発明は、このような従来の問題点に着目してなされたものであり、その目的とするところは、カメラ支柱を自立構造とするのではなく、他の支柱(照明柱、電柱、建築物の支柱等々)に添わせると言う斬新な発想を採用することで、カメラ支柱の支持構造を大幅に簡素化し、それにより低コストで可搬性の良好な使い勝手のよいカメラ等の高所据付具を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上述の技術的課題は、以下の構成を有するカメラ等の高所据付具により解決することができる。
【0009】
すなわち、このカメラ等の高所据付具は、伸縮ロッドと、雲台と、ロッド支持部材と、先端部ロープガイドと、を具備して構成される。
【0010】
伸縮ロッドは、複数本の単位ロッドを振り出し竿構造により多段に収容し、個々の単位ロッドを任意の引き出し状態で固定可能とされている。
【0011】
雲台は、伸縮ロッドを構成する複数本の単位ロッドのうちで最初に引き出されるべき第1段目の単位ロッドの先端部に設けられる。
【0012】
ロッド支持部材は、第1段目の単位ロッドの先端部に設けられ、かつ当該単位ロッドの軸方向と直交する方向へと向けられたパッド面を有する。
【0013】
先端部ロープガイドは、第1段目の単位ロッドの先端部に設けられ、かつロープ通し孔を有する。
【0014】
操作ロープは、伸縮ロッドの最大伸張時の長さに対応可能な長さを有すると共に、先端部ガイドリングのロープ通し孔に挿通され、かつその先端部には、第1段目の単位ロッドの先端部適所に対して着脱可能な係止具が取り付けられている。
【0015】
ここで、「伸縮ロッドの最大伸張時の長さに対応可能な長さ」とあるのは、このローブは、予定の高さに伸縮ロッドを伸張させた状態で操作するものであることを考慮したことを意味するものである。そのため、最大伸張時の操作を考慮すれば、最大伸張時の長さよりも長いことが好ましいであろう。もっとも、予定されるれカメラ等の据え付け高さがそれよりも低い場合には、もちろん、最大伸張時の長さよりも短くてよいことは勿論である。
【0016】
そして、操作ロープの先端部を対象となる照明柱等の支柱の周囲に少なくとも一巻きしたのち、ロープ先端部の係止具を第1段目の単位ロッドの先端部適所に係止させることで、支柱及び当該伸縮ロッドを緩く取り巻くループ部分を形成した状態において、伸縮ロッドを適宜な長さに伸張固定して支柱に沿わせて立て掛け、しかるのち、操作ロープの垂れ下げ部分を強く引っ張って、支柱を取り巻くループ部分を締め付け、その状態にて操作ロープの垂れ下げ部分を適宜に固定することにより、支柱外表面とロッド支持部材のパッド面との当接を介して雲台と支柱とを位置決めしつつ、伸縮ロッドを支柱に添設し得るように構成される。
【0017】
このような構成によれば、支柱は元々自立機構を採用していないから、常時は、伸縮ロッドを振り出し竿機構により完全に縮めた状態とすることで、どこでも容易に持ち運ぶことができ、必要に応じて撮影の現場へといつでも持ち運ぶことができる。しかも、リフトカーを使用する場合のように、道路許可を得る必要もないから、この種のカメラ撮影作業を低コストかつ迅速に進めることかができる。
【0018】
一方、使用にあたっても、単に、ループ部分を作ったのち、伸縮ロッドを必要な長さ伸張させ、垂れ下げロープを引っ張ると言うだけであるから、特に熟練を要するものではなく、誰でも容易に行うことができる訳である。それにも拘わらず、伸縮ロープはその上端部をしっかりと照明柱などの支柱に固定されるため、振動や風があっても、カメラ等はぶれることなくしっかりと固定され、しかも雲台と支柱とはパッド面の当接を介して所期の状態に位置決めされるため、カメラが意図しない姿勢に向けられることがなく、期待通りの姿勢で高所にしっかりと据え付けられることとなる。
【0019】
好ましい実施の形態としては、ロッド支持部材のパッド面は、対象となる照明柱等の支柱の断面弧状外表面に対して2点で接するべく角度の緩い断面V字形状の凹面とされていてもよい。
【0020】
このような構成によれば、パッド面は、対象となる照明柱等の支柱の断面弧状外表面に対して2点で接することとなるため、パッド面と支柱外表面とは安定的に当接することとなり、しかも、伸縮ロッドの軸線方向は、断面V字形状の凹面に案内されて支柱の軸方向と整合するように誘導されるから、カメラ撮影における方位方向の基準精度が向上する。
【0021】
好ましい実施の形態によれば、雲台は、俯仰角度を調整可能とされると共に、俯仰角度を示す目盛りが付されていてもよい。
【0022】
このような構成によれば、同一の撮影条件で繰り返し撮影を行うような場合には、そのときどきの俯仰角度を記録しておくことにより、撮影条件を正確に再現することができるほか、初回の撮影にあたっても、目的とする撮影領域と地形乃至カメラの高さとを想定した上で、計算により求められた俯仰角度を設定することにより、目的とする視野を正確に確保することが可能となる。
【0023】
好ましい実施の形態としては、先端部ロープガイドが、第1段目の単位ロッドの先端部に揺動可能に取り付けられた金属製リングであり、係止具がカラビナであり、それにより、先端部ロープガイドは係止具の係止相手としても機能する、ようにしてもよい。
【0024】
このような構成によれば、操作用ローブが先端部ロープガイドをスムーズに挿通すると共に、ループ部分の作成作業がカラビナの装着により容易となり、作業の迅速化が達成されるほか、ループ部分の開放作業も容易となるから、撮影前後の作業性が良好となる。
【0025】
好ましい実施の形態としては、伸縮ロッドのもっとも手元に位置する基段部分の後端部からは、当該基段部分の長さよりも十分に短いリング繋ぎひもが引き出され、その先端には繋留用リングが取り付けられていてもよい。
【0026】
このような構成によれば、操作ロープの端末処理にあたっては、繋留用リングにロープを通すことで、周囲に適当な繋留箇所が存在しなくとも、操作用ロープの下端部をしっかりとつなぎ止めることでき、その上で、ロープの端末を支柱並びにロッドの周囲に巻き付けることにより、ロープのずれや緩みを極力回避して、伸縮ロッドの添設状態を安定的に維持させることが可能となる。
【0027】
好ましい実施の形態としては、第1段目の単位ロッドの先端部には、垂直板部と水平板部とを有するL字金具が固定されており、このL字金具の水平板部により雲台が支持されると共に、垂直板部の背面がパッド面とされていてもよい。
【0028】
このような構成によれば、単に、第1段目の単位ロッドの先端部に、垂直板部と水平板部とを有するL字金具を固定するという構造を採用するだげで、目的とする雲台支持機構並びにパッド面を実現することができる。
【0029】
好ましい実施の形態としては、垂直板部の断面は、左側板部と右側板部とが緩く交叉するV字形状とされ、対象となる支柱は、その断面V字形状の谷状パッド面により受け入れられる、ようにしてもよい。
【0030】
このような構成によれば、上述のパッド面に対して、安定当接作用並びにロッド方向ガイド機能を簡単な構成により容易に付与することができる。
【発明の効果】
【0031】
本発明によれば、カメラ支柱を自立構造とするのではなく、他の支柱(照明柱、電柱、建築物の支柱等々)に添わせると言う斬新な発想を採用することで、カメラ支柱の支持構造を大幅に簡素化し、それにより低コストで可搬性の良好な使い勝手のよいカメラ等の高所据付具を実現することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0032】
以下に、この発明に係るカメラ等の高所据付具の好適な実施の一形態を添付図面を参照しながら詳細に説明する。
【0033】
本発明据付具の使用状態を示す説明図が図1に、同据付具の使用状態における要部を拡大して示す説明図が図2に、同据付具の先端近傍を拡大して示す説明図が図3にそれぞれ示されている。それらの図に従って、本発明に係るカメラ等の高所据付具の基本構成要素についてまず説明を行う。
【0034】
それらの図から明らかなように、本発明のカメラ等の高所据付具は、伸縮ロッド1と、ロッド支持部材として機能するL字金具2と、雲台3と、先端部ロープガイドとしての機能を有する先端ガイドリング15とを具備して構成される。
【0035】
伸縮ロッド1は、複数本の単位ロッドを振り出し竿構造により多段に収容し、個々の単位ロッドを任意の引き出し状態で固定可能とされている。図示の伸縮ロッド1の場合、図1に示されるように、5本の単位ロッド(図では、1段目部分1−1,2段目部分1−2のみが引き出されている)を振り出し竿構造により多段に基段部分10へと収容し、個々の単位ロッド(1−1,1−2,・・・1−5)を先端のものから順に任意に引き出し可能とすると共に、任意の引き出し状態にてネジ止め式の締結具11を介して締め付け固定可能となされている。
【0036】
それらの単位ロッド(1−1,1−2,・・・1−5)及び基段部分10の材質としては、軽量化のためにアルミ合金が採用されている。各単位ロッド及び基段部分の径、厚さ、長さはそれぞれ次のように設計されている。
1段目部分 : 22×1.1×1570
2段目部分 : 26×1.1×1440
3段目部分 : 30×1.1×1420
4段目部分 : 34×1.1×1370
5段目部分 : 38×1.3×1430
基段部分 : 42×1.3×1560 各単位:mm
【0037】
上記の設計値の場合、材質としてアルミ合金を採用した場合、全長8.78m、重量2.5kg(カメラは除く)となり、一人で簡単に持ち運べるサイズ及び重量となることが理解されるであろう。
【0038】
L字金具2は、図3及び図4に示されるように、水平板部21と垂直板部22とを有し、その材質はアルミ合金が採用されている。図示の設計値としては、水平板部21及び垂直板部22の板厚は4mm、水平板部22の長さは75mm、幅は60mmとされている。また、垂直板部22の高さは50mm、厚さは同様に4mmとされている。また、垂直板部22は、図4に示されるように、谷線22cを挟んでその両脇に位置する左側板部22aと右側板部22bとから構成されている。
【0039】
図から明らかなように、垂直板部22は、左側板部22aと右側板部22bとが緩やかに交差する断面V字形状をなしている。そのため、垂直板部22の外表面は、左側板部22aと右側板部22bとから構成される断面V字形状の凹面とされている。後述するように、この断面V字形状の凹面が、照明柱6の外表面と当接する谷状パッド面22dとして機能することとなる。
【0040】
L字金具2の水平板部21には、それぞれ内周にタップが切られた雲台固定用ビス孔21aとロッド固定用ビス孔21bが設けられている。一方、図2及び図3に示されるように、単位ロッドの1段目部分1−1の先端部には、単位ロッドの軸方向へ向けて雄ネジ部16が突設されている。そして、この雄ネジ部16が、台座ディスク24の中心孔を貫通して、L字金具2の水平板部21のロッド固定用ビス孔21bにねじ込まれることによって、スペーサとしても機能する台座ディスク24を介して、単位ロッドの1段目部分1−1の上端部にL字金具2がしっかりと固定される。なお、図3では、L字金具2のロッド固定用ビス孔21bにねじ込まれた雄ネジ部16は、L字金具2の水平板部21を突き抜けて、その上面側へ突出されている。
【0041】
雲台3は、伸縮ロッド1を構成する5本の単位ロッドのうちで最初に引き出されるべき第1段目の単位ロッド1−1の先端部に設けられる。図2に示されるように、雲台3は、L字金具2の水平板部21の雲台取付用ビス孔21aと雲台3の下面に設けられたビス孔とを整合させた状態において、水平板部21の下面側よりワッシャ22を介してビス23をねじ込むことで、水平板部21と一体的に結合される。
【0042】
本発明据付具に使用される雲台の一例を示す斜視図が図8に、同雲台の使用状態における説明図が図9に、図9のA−A線断面図が図10にそれぞれ示されている。図8に示されるように、雲台3は、L字金具2の水平板部21に結合される静止ブロック31と、この静止ブロック31の垂直軸A1を中心に回転する第1可動ブロック32と、この第1可動ブロック32の水平軸A2を中心に回転する第2可動ブロック33と、この第2可動ブロック33と一体的に結合されたカメラ載置ブロック34とを含んで構成される。
【0043】
静止ブロック31には、図10に示されるように、第1の環状目盛板321と方位角度基準表示322とが設けられている。なお、322aは、第1の環状目盛板321を構成する放射状の目盛である。そして、操作摘み321を操作して雲台の方位を調整すると、目盛322aは回転する一方、方位角度基準表示322は静止することから、両者の関係に基づいて、当該雲台の方位角度を認識可能とされている。
【0044】
第2可動ブロック33には、第2の環状目盛板332と俯仰角度基準表示333とが設けられている。なお、332aは第2の環状目盛板332を構成する放射状目盛である。そして、操作用摘み331を操作して、俯仰角度を調整すると、目盛332aは回転する一方、俯仰角度基準表示333は静止することから、両者の関係に基づいて、当該雲台の俯仰角度を認識可能とされている。
【0045】
カメラ載置ブロック34の上面にはカメラ取付用ネジ341が突設されており、このカメラ取付用ネジ341を介して、カメラ本体4の固定が行われる。
【0046】
先端部ロープガイドとしての機能を有する先端部ガイドリング15は、第1段目の単位ロッド1−1の先端部に設けられ、かつロープ通し穴を有するリングとされている。この例にあっては、図2に示されるように、先端ガイドリング15は、その両端部を回動可能に支持されてU字状金属製リングとされている。
【0047】
操作ロープ5は、伸縮ロッド1の最大伸張時の長さに対応可能な長さを有すると共に、先端部ガイドリング15のロープ通し穴に挿通され、かつその先端部には、図2に示されるように、第1段目の単位ロッド1−1の先端部適所に対して着脱可能な係止具53が取り付けられている。図示の係止具53としては、登山や岩登りなどによく使用されるカラビナが採用されている。そのため、この係止具53を構成するカラビナを先端ガイドリング15に係止させることによって、図1、図5、図6に示されるループ部分51を簡単に作り出すことが可能とされている。
【0048】
雲台3に取り付けられるカメラとしては、カメラ本体4とフード41とを有するものが採用されている。当業者にはよく知られているように、カメラ本体4は雲台3に対して、雲台3のカメラ載置ブロック34に設けられたカメラ取付用ネジ341を介してしっかりと固定される。なお、符号42はカメラのケーブルである。
【0049】
伸縮ロッド1の全長の適宜箇所には、図2、図3、図5、及び図6に示されるように、途中ガイドリング12が取り付けられている。この途中ガイドリング12の取り付けは、締結バンド12aと蝶ネジ12bとを使用して行われる。伸縮ロッド5の上端部から垂れ下げられるロープ5は、それらの途中ガイドリング12に通されることによって、風などによるはためきが規制されることとなる。
【0050】
伸縮ロッド1を構成する基段部分10の下端部は、エンドキャップ17により塞がれる。このエンドキャップ17からは、リング繋ぎひも13が抜け止めされて引き出されており、このリング繋ぎひも13の先端には係留用リング14が取り付けられている。後述するように、この係留用リング14は、伸縮ロッド5の先端部から垂れ下げられるロープの固定に利用される。
【0051】
係留用リング14をリング繋ぎひも13を介してエンドキャップ17に固定するようにしたのは、もしも、基段部分10の周側面に係留用リング14を溶接やネジ止めで固定した場合、伸縮ロッド1の回転位置によっては、係留用リング14と照明柱6とが干渉して、邪魔になる虞があるからである。つまり、係留用リング14をリング繋ぎひも13を介してエンドキャップ17に固定する構成によれば、係留用リング14はフリーとなり、伸縮ロッド1と照明柱6との位置関係に拘わらず、任意の位置に係留用リング14を持ってくることができるのである。この例では、リング繋ぎひも13の長さは、基段部分10の長さよりも十分に短く設定されている。
【0052】
次に、以上の構成よりなる高所据付具を使用して照明柱6の高所にカメラを据え付けるための作業について詳細に説明する。
【0053】
例えば、高速道路の料金所手前の広場において、各車線を走行してきた車両がどのように展開するかを調査するような場合を想定すると、かなり広い領域における多数の車両を視野に収めるために、ビデオカメラやスチールカメラを高所に据え付けることが必要となる。このような場合、従来にあっては、いわゆるリフトカーを借用して、高速道路上の適所に駐車させ、人がリフターで持ち上げられることによって、カメラを適当な高さに据え付けたのであるが、これは事前の道路使用届の必要性やコスト高の問題から好ましくなかった。
【0054】
これに対して、本発明の据付具によれば、そのような道路使用許可やリフトカーの借用といった費用をかけることなく、現場へ単に伸縮ロッド1を縮めた状態で持ち込むだけで良い。
【0055】
すなわち、このような料金所前広場の撮影であれば、通常、高速道路の側縁部に適当な間隔で設けられた照明柱6に着目し、その照明柱6の適当な高さにそれらのカメラを取り付ける。この場合、まず、目的とするカメラ(ビデオカメラ、スチールカメラ等)を雲台3に取り付けた後、図2に示されるように、先端ガイドリング15のロープ通し穴に通されたロープを照明柱6の周りに少なくとも1巻させ、その先端の係止具53を伸縮ロッド1の上端部適所(この例では先端ガイドリング15そのもの)に固定する。この例では、係止具53としてカラビナが使用されているため、公知の着脱機構を介して、係止具53を先端ガイドリング15にしっかりと固定することができる。
【0056】
このとき、伸縮ロッド1の伸縮状態は、完全に縮めた状態でも良いし、目的とする高さまで完全に伸ばした状態でも良いし、それらの途中の状態であっても良い。完全に伸ばした状態であれば、斜めに傾けていなければループ部分51を形成することはできない一方、完全に縮め又は手の届く程度の高さまで伸ばした状態であれば、そのとき既に伸縮ロッド1を照明柱6に添わせることができる。
【0057】
次に、伸縮ロッド1を目的とする高さまで振り出し竿機構を利用して伸張させると共に、これを図1に示されるように、照明柱6に添わせるようにして立てかける。このとき、基段部分10の下端エンドキャップ12は路面7に接する状態となり、手を離しても下方にズレ落ちることはなくなる。
【0058】
次に、先端ガイドリング15を通って垂れ下げられたロープ5を、下向きに強く引っ張る。すると、ロープ5は先端ガイドリング15を滑らかに滑るようにして引っ張られ、同時に照明柱6及び伸縮ロッド1の上端部に巻き付けられたループ部分50は締め付けられていき、それにつれて、L字金具2の垂直板部22の断面V字形状の谷状パッド面(図4参照)が照明柱6の円弧状表面に押し当てられる。
【0059】
すると、断面V字形状の谷状パッド面の有する誘導機能によって、照明柱6の垂直軸線方向と伸縮ロッド1の軸線方向とが整合するように誘導されると共に、パッド面においてはV字状谷面が照明柱6の外表面を受け入れることによって、両者は円弧とVとで2点接触状態となり、安定的に固定されることとなる。
【0060】
すると、照明柱6の軸方向と、L字金具2の方向とが一定の関係に規制される結果、雲台3に対して方位基準が与えられ、その結果カメラ本体4の光軸も所期の方向へと向けられると共に、俯仰角度についても所期の方向へとしっかりと位置決めされる。
【0061】
しかる後、先端ガイドリング15から垂れ下げられ、かつ途中ガイドリング12を通されたロープ5の下端5aを、係留用リング14に通し、又は2巻以上巻いた後、ロープ5を上向きに引っ張れば、垂れ下げられたロープ5は緊張状態に仮止めされ、その状態でロープ5の末端部を図7に示されるように、照明柱6及び基段部分10の周囲に巻き付ければ、周囲に特別な係留箇所などが存在せずとも、ロープ5の端末余剰部分を、しっかりと照明柱6に縛り付け、縛り付け部52を形成することができる。
【0062】
このように、ループ部分51の形成、垂れ下げられたロープを引っ張ることによるこのループ部分51の締め付け、垂れ下げられた端末余剰部分の係留用リング14を利用した縛り付け作業といった簡単な作業を経るだけで、適宜に伸張された伸縮ロッド1を照明柱6に添わせてしっかりと固定することができ、これによりカメラ本体4を照明柱6の高所にしっかりと据え付けることができるのである。
【0063】
なお、以上の説明においては、ループ部分51を形成するについて、係止具53を構成するカラビナを先端部ガイドリング15に係止させたが、もちろん係止具を構成するカラビナはそれ以外であっても伸縮ロッド上端部のいずれかに固定すれば良い。
【0064】
また、以上の例では、高所に据え付けられる対象物はカメラとしたが、もちろんこの据付具の対象となるのはカメラだけに限られるものではなく、その他必要とする任意の物体を高所に設置できることはもちろんである。
【0065】
また、以上の例では、伸縮ロッド1を添わせかつ立てかけるための支柱として、照明柱6を挙げたが、例えば事件で混雑する状況下にあって、核心となる撮影対象物を高所から撮影するような場合には、電柱、建築物の支柱、その他さまざまな脚柱などを利用することによって、カメラなどを必要な高所に据え付けることができることはもちろんである。
【産業上の利用可能性】
【0066】
本発明によれば、カメラ支柱を自立構造とするのではなく、他の支柱(照明柱、電柱、建築物の支柱等々)に添わせると言う斬新な発想を採用することで、カメラ支柱の支持構造を大幅に簡素化し、それにより低コストで可搬性の良好な使い勝手のよいカメラ等の高所据付具を実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0067】
【図1】本発明据付具の使用状態を示す説明図である。
【図2】本発明据付具の使用状態における要部を拡大して示す説明図である。
【図3】本発明据付具の先端近傍を拡大して示す説明図である。
【図4】L字金具の拡大斜視図である。
【図5】本発明据付具の使用状態における上端近傍を拡大して示す左側面図である。
【図6】本発明据付具の使用状態における上端近傍を拡大して示す右側面図である。
【図7】本発明据付具の使用状態における下端部近傍を拡大して示す説明図である。
【図8】本発明据付具に使用される雲台の一例を示す斜視図である。
【図9】雲台の使用状態における説明図である。
【図10】図9のA−A線断面図である。
【符号の説明】
【0068】
1 伸縮ロッド
1−1 1段目部分
1−2 2段目部分
2 L字金具
3 雲台
4 カメラ本体
5 ロープ
5a ロープの先端
6 照明柱
7 路面
10 基段部分
11 締結具
12 ガイドリング
12a 締結バンド
12b 蝶ネジ
13 リング繋ぎひも
14 保留用リング
15 先端ガイドリング
16 雄ネジ部
17 エンドキャップ
21 水平板部
21a 雲台固定用ビス孔
21b ロッド固定用ビス孔
22 垂直板部
22a 左側板部
22b 右側板部
22c 谷線
22d 谷状パッド面
23 ビス
24 台座ディスク
31 静止ブロック
32 第1可動ブロック
33 第2可動ブロック
34 カメラ載置ブロック
41 フード
42 ケーブル
51 ループ
52 縛り付け部
53 係止溝
61 照明器
321 第1の環状目盛板
331 操作用摘み
332 第2の環状目盛板
332a 目盛
333 俯仰角度基準表示
341 カメラ取付用ネジ
A1 垂直軸
A2 水平軸

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数本の単位ロッドを振り出し竿構造により多段に収容し、個々の単位ロッドを任意の引き出し状態で固定可能とされた伸縮ロッドと、
伸縮ロッドを構成する複数本の単位ロッドのうちで最初に引き出されるべき第1段目の単位ロッドの先端部に設けられた雲台と、
第1段目の単位ロッドの先端部に設けられ、かつ当該単位ロッドの軸方向と直交する方向へと向けられたパッド面を有するロッド支持部材と、
第1段目の単位ロッドの先端部に設けられ、かつロープ通し孔を有する先端部ロープガイドと、
伸縮ロッドの最大伸張時の長さに対応可能な長さを有すると共に、先端部ガイドリングのロープ通し孔に挿通され、かつその先端部には第1段目の単位ロッドの先端部適所に対して着脱可能な係止具が取り付けられた操作ロープと、を備え、
操作ロープの先端部を対象となる照明柱等の支柱の周囲に少なくとも一巻きしたのち、ロープ先端部の係止具を第1段目の単位ロッドの先端部適所に係止させることで、支柱及び当該伸縮ロッドを緩く取り巻くループ部分を形成した状態において、伸縮ロッドを適宜な長さに伸張固定して支柱に沿わせて立て掛け、しかるのち、操作ロープの垂れ下げ部分を強く引っ張って、支柱を取り巻くループ部分を締め付け、その状態にて操作ロープの垂れ下げ部分を適宜に固定することにより、支柱外表面とロッド支持部材のパッド面との当接を介して雲台と支柱とを位置決めしつつ、伸縮ロッドを支柱に添設し得るように構成した、ことを特徴とするカメラ等の高所据付具。
【請求項2】
ロッド支持部材のパッド面は、対象となる照明柱等の支柱の断面弧状外表面に対して2点で接するべく角度の緩い断面V字形状の凹面とされている、ことを特徴とする請求項1に記載のカメラ等の高所据付具。
【請求項3】
雲台は、俯仰角度を調整可能とされると共に、俯仰角度を示す目盛りが付されている、ことを特徴とする請求項1又は2に記載のカメラ等の高所据付具。
【請求項4】
先端部ロープガイドが、第1段目の単位ロッドの先端部に揺動可能に取り付けられた金属製リングであり、係止具がカラビナであり、それにより、先端部ロープガイドは係止具の係止相手としても機能する、ことを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載のカメラ等の高所据付具。
【請求項5】
伸縮ロッドのもっとも手元に位置する基段部分の後端部からは、当該基段部分の長さよりも十分に短いリング繋ぎひもが引き出され、その先端には繋留用リングが取り付けられている、ことを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載のカメラ等の高所据付具。
【請求項6】
第1段目の単位ロッドの先端部には、垂直板部と水平板部とを有するL字金具が固定されており、このL字金具の水平板部により雲台が支持されると共に、垂直板部の背面がパッド面とされている、ことを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載のカメラ等の高所据付具。
【請求項7】
垂直板部の断面は、左側板部と右側板部とが緩く交叉するV字形状とされ、対象となる支柱は、その断面V字形状の谷状パッド面により受け入れられる、ことを特徴とする請求項6に記載のカメラ等の高所据付具。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2009−16970(P2009−16970A)
【公開日】平成21年1月22日(2009.1.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−173561(P2007−173561)
【出願日】平成19年6月29日(2007.6.29)
【特許番号】特許第4008021号(P4008021)
【特許公報発行日】平成19年11月14日(2007.11.14)
【出願人】(595154395)株式会社道路計画 (1)
【Fターム(参考)】