説明

カラーフィルター用赤色顔料分散体

【課題】現像性、基板密着性に優れた硬化膜を形成することができるカラーフィルター用赤色顔料分散体、それを含有するカラーフィルター用着色組成物、及びカラーフィルター用赤色顔料分散体の製造方法。
【解決手段】〔1〕 ジケトピロロピロール系顔料、高分子分散剤、脂肪酸(ポリ)アルキレングリコールモノアルキルエーテルを含有する顔料分散体であって、該高分子分散剤が、アニオン性基及び環状アミド基を含有するグラフトポリマーである、カラーフィルター用赤色顔料分散体、〔2〕それを含有するカラーフィルター用着色組成物、及び〔3〕 ジケトピロロピロール系顔料、高分子分散剤、脂肪酸(ポリ)アルキレングリコールモノアルキルエーテルを含有する混合物を分散して、顔料分散体(1)を得る工程(1)を有するカラーフィルター用赤色顔料分散体の製造方法であって、該高分子分散剤が、アニオン性基及び環状アミド基を含有するグラフトポリマーである、カラーフィルター用赤色顔料分散体の製造方法である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、カラーフィルター用赤色顔料分散体、それを含有するカラーフィルター用着色組成物、及びカラーフィルター用赤色顔料分散体の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
液晶表示装置に用いられるカラーフィルターは、顔料分散体に樹脂等を配合した着色組成物をガラス等の透明基板に塗布した後、露光・硬化、現像、熱硬化させるフォトリソグラフィー法等によって製造されている。ここで用いられる顔料分散体は、顔料を有機溶媒に分散した非水系顔料分散体であるが、非水系顔料分散体の製造方法として、グラフトポリマー等の高分子分散剤を用いる製造方法が知られている。
【0003】
例えば、特許文献1には、保存安定性及び耐熱性の改善を目的として、顔料、顔料分散ポリマー、及び有機溶媒を含有し、顔料に未吸着のポリマー量が顔料分散体中に2重量%以下であるカラーフィルター用顔料分散体が開示されている。
また、特許文献2には、アルカリ現像が可能で露光感度と塗膜強度に優れた塗膜を得ることを目的として、酸基を有する単量体由来の構成単位とともにN−ビニル−2−ピロリドン由来の構成単位を含み、側鎖にはラジカル重合性二重結合を有する酸基含有重合体をバインダー樹脂とする光硬化性樹脂組成物が開示されている。
特許文献3には、解像性、現像性等の改善を目的として、アミド基含有エチレン性不飽和単量体、カルボキシル基含有エチレン性不飽和単量体、及びそれ以外のエチレン性不飽和単量体を共重合して得られるアクリル系共重合体を、アミド基とカルボキシル基を有するバインダー樹脂として用いるカラーフィルター用感光性着色組成物が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2009−161692号公報
【特許文献2】特開2004−217735号公報
【特許文献3】特開2002−341533号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
フォトリソグラフィー法を用いたカラーフィルターの製造において、用いられる着色組成物は、現像液によってすばやくパターンを形成する現像性に優れつつも、得られた光硬化膜は基板から剥がれることのないように基板への密着性も優れる必要があり、この相反する性能を満たす必要がある。
本発明は、現像性、基板密着性に優れた硬化膜を形成することができるカラーフィルター用赤色顔料分散体、それを含有するカラーフィルター用着色組成物、及びカラーフィルター用赤色顔料分散体の製造方法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者らは、カラーフィルター用顔料分散体の製造方法において、高分子分散剤として、アニオン性基を有するモノマー及び環状アミド基を有するモノマー由来の構成単位を含有するグラフトポリマーを用いることにより、十分な現像性、基板密着性を得ることができることを見出した。
すなわち、本発明は、次の〔1〕〜〔3〕を提供する。
〔1〕 ジケトピロロピロール系顔料、高分子分散剤、脂肪酸(ポリ)アルキレングリコールモノアルキルエーテルを含有する顔料分散体であって、該高分子分散剤が、アニオン性基及び環状アミド基を含有するグラフトポリマーである、カラーフィルター用赤色顔料分散体。
〔2〕前記〔1〕の赤色顔料分散体を含有するカラーフィルター用着色組成物。
〔3〕ジケトピロロピロール系顔料、高分子分散剤、脂肪酸(ポリ)アルキレングリコールモノアルキルエーテルを含有する混合物を分散して、顔料分散体(1)を得る工程(1)を有するカラーフィルター用赤色顔料分散体の製造方法であって、該高分子分散剤が、アニオン性基及び環状アミド基を含有するグラフトポリマーである、カラーフィルター用赤色顔料分散体の製造方法。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、現像性、基板密着性に優れた硬化膜を形成することができるカラーフィルター用赤色顔料分散体、それを含有するカラーフィルター用着色組成物、及びカラーフィルター用赤色顔料分散体の製造方法を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0008】
本発明のカラーフィルター用赤色顔料分散体は、ジケトピロロピロール系顔料、高分子分散剤、脂肪酸(ポリ)アルキレングリコールモノアルキルエーテルを含有する顔料分散体であって、該高分子分散剤が、アニオン性基及び環状アミド基を含有するグラフトポリマーであることを特徴とする。
本発明においては、前記顔料分散体を含有するカラーフィルター用着色組成物が、現像性、基板密着性に優れた硬化膜を形成することができる理由は定かではないが、次のように考えられる。
高分子分散剤の環状アミド基は、ジケトピロロピロール系顔料の骨格にも含まれるため、ジケトピロロピロール系顔料との親和性に優れ、顔料に吸着しやすく、高分子分散剤における顔料との吸着部分を形成すると考えられる。アニオン性基も環状アミド基と共に顔料に吸着するため、強固な吸着層を形成し、顔料表面を覆う。更に該高分子分散剤はグラフトポリマーであり、その側鎖は他の顔料との斥力を発生させるため、顔料が溶媒中に微細に分散されるものと考えられる。
このように本発明の顔料分散体は、顔料表面に吸着する高分子分散剤がアニオン性基とアミド基を有するため、該顔料分散体を含有する着色組成物は、アルカリ現像液によって、顔料表面のアニオン性基がイオン化することにより、分散、溶解しやすく、現像性に優れ、更に硬化膜となった場合には、無機物である基板表面に極性基であるアニオン性基とアミド基が吸着するため、基板への密着性が優れるものと考えられる。
以下、本発明に用いられる各成分、工程等について説明する。
【0009】
〔ジケトピロロピロール系顔料〕
本発明に用いられるジケトピロロピロール系顔料(以下、単に「顔料」ともいう)は、カラーフィルターに好適に用いられるものであれば、特に制限はない。
具体的には、C.I.ピグメントレッド254、C.I.ピグメントレッド255、C.I.ピグメントオレンジ71等が挙げられる。
これらの中では、本発明の効果をより有効に発現させる観点から、下記一般式(1)で表されるジケトピロロピロール系顔料が好ましい。
【0010】
【化1】

【0011】
式(1)中、X1及びX2は、それぞれ独立して、水素原子又はハロゲン原子を示し、Y1及びY2は、それぞれ独立して、水素原子又は−SO3H基を示す。なお、ハロゲン原子はフッ素原子、塩素原子が好ましい。
ジケトピロロピロール系顔料の市販品の好適例としては、チバ・スペシャルティー・ケミカルズ株式会社製、C.I.ピグメントレッド254、商品名「Irgaphor Red B-CF」、「Igaphor Red BK-CF」、「Irgaphor Red BT-CF」、「Irgazin DPP Red BO」、「Irgazin DPP Red BL」、「Cromophtal DPP Red BP」、「Cromophtal DPP Red BOC」等が挙げられる。
ジケトピロロピロール系顔料は、明度Y値の向上の観点から、その平均一次粒子径を、好ましくは100nm以下、更に好ましくは20〜60nmにした微粒化処理品を用いることが望ましい。顔料の平均一次粒子径は、電子顕微鏡写真から一次粒子の大きさを直接計測する方法で求めることができる。具体的には、個々の一次粒子の短軸径と長軸径を計測してその平均値をその粒子の粒子径とし、100個以上の粒子について、それぞれの粒子の体積を、粒子径を一辺とする立方体と近似して体積平均粒子径を求め、それを平均一次粒子径とする。
上記のジケトピロロピロール系顔料は、単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0012】
〔高分子分散剤(グラフトポリマー)〕
本発明に用いられる高分子分散剤は、アニオン性基及び環状アミド基を含有するグラフトポリマーである。
グラフトポリマーは、アニオン性基を有するものであるが、顔料への吸着性を向上させ、ひいては顔料を安定に分散させるとともに、着色組成物の現像性と基板密着性を向上させる観点から、主鎖にアニオン性基を有することが好ましく、側鎖にもアニオン性基を有することがより好ましい。
また、グラフトポリマーは、環状アミド基を有するものであるが、顔料への吸着性を向上させ、顔料を安定に分散させる観点から、主鎖に環状アミド基を有することが好ましい。
更に顔料への吸着性を高める観点から、グラフトポリマーが、水酸基を有することが好ましい。
溶媒への親和性を高め、顔料を安定に分散させるために、グラフトポリマーの側鎖が、ポリ(メタ)アクリル酸エステル由来の構成単位を含有することが好ましい。
なお、本明細書において、「(メタ)アクリル酸」とは、「アクリル酸、及び/又はメタクリル酸」を意味する。
【0013】
グラフトポリマーの主鎖としては、顔料への吸着性の観点から、環状アミド基を含有するビニルモノマー由来の構成単位を含むことが好ましい。
更に主鎖には、顔料への吸着性及び着色組成物の現像性を向上させる観点から、アニオン性基を有するモノマー由来の構成単位を含むことが好ましい。
すなわち、グラフトポリマーの主鎖が、アニオン性基を有するモノマー由来の構成単位及び環状アミド基を有するモノマー由来の構成単位を含有することが好ましい。
また、グラフトポリマーの側鎖は、(メタ)アクリル酸エステル由来の構成単位を含有することが好ましいが、溶媒への顔料の分散性を高める観点から、(メタ)アクリル酸ベンジル及び/又は(メタ)アクリル酸アルキル由来の構成単位を含有することがより好ましく、(メタ)アクリル酸メチル由来の構成単位を含有することが更に好ましい。なかでも、側鎖はポリ(メタ)アクリル酸メチルであることが好ましい。
更に側鎖には、アニオン性基を有することが好ましく、主鎖及び側鎖の両方にアニオン性基を含有するものであることがより好ましい。
上記のグラフトポリマーは、本発明の効果を阻害しない範囲内において、主鎖及び側鎖のいずれにも、前記モノマーと共重合可能なその他のモノマーを共重合したものでもよい。
【0014】
グラフトポリマーの重量平均分子量は、顔料への吸着性の観点及び粘度上昇の抑制の観点から、好ましくは1000〜1000,000、より好ましくは2000〜800,000、更に好ましくは5000〜700,000である。
グラフトポリマーの主鎖の数平均分子量は、本発明の顔料分散体の保存安定性の観点から、好ましくは500〜50,000、より好ましくは1000〜30,000、更に好ましくは2000〜20,000である。また、主鎖の重量平均分子量は、同じ観点から、好ましくは1500〜150,000、より好ましくは3000〜90,000、更に好ましくは6000〜60,000である。
グラフトポリマーの側鎖の数平均分子量は、本発明の顔料分散体の保存安定性の観点から、好ましくは500〜20,000、より好ましくは700〜10,000、更に好ましくは700〜6000である。
なお、重量平均分子量及び数平均分子量の測定は、実施例記載の方法により行うことができる。
グラフトポリマーの酸価は、顔料の分散安定性と着色組成物の現像性を向上させる観点から、10〜120mgKOH/gが好ましく、20〜80mgKOH/gがより好ましく、30〜50mgKOH/gが更に好ましい。
【0015】
(グラフトポリマーの主鎖の構成単位となるモノマー)
グラフトポリマーの主鎖の構成単位となるモノマーとしては、顔料への吸着性の観点から、環状アミド基を含有するビニルモノマーを含有することが好ましい。
環状アミド基を含有するビニルモノマーの具体例としては、ビニルピロリドン類が挙げられ、顔料への吸着性の観点から、N−ビニル−2−ピロリドンが好ましい。
前記グラフトポリマーの全構成単位中の環状アミド基を含有するビニルモノマー由来の構成単位の含有量は、顔料への吸着性の観点、及び粘度上昇の抑制や分散粒径の適正化の観点から、好ましくは1〜30重量%、より好ましくは2〜25重量%、更に好ましくは5〜20重量%である。
【0016】
また、主鎖の構成単位となるモノマーとして、顔料への吸着性及び着色組成物の現像性を向上させる観点から、アニオン性基を含有するモノマーを含有することが好ましい。
アニオン性基を含有するモノマーとしては、カルボキシ基、スルホン酸基又はリン酸基を含有するモノマーが挙げられ、着色組成物の現像性及び基板密着性を向上させる観点から、カルボキシ基又はリン酸基を含有するモノマーが好ましく、着色組成物の基板密着性及びコントラストを向上させる観点から、リン酸基を含有するモノマーが好ましい。
カルボキシ基を含有するモノマーとしては、アクリル酸、メタクリル酸、クロトン酸、イタコン酸、マレイン酸、フマル酸、シトラコン酸、2−メタクリロイルオキシメチルコハク酸等が挙げられる。
スルホン酸基を含有するモノマーとしては、スチレンスルホン酸、2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸、3−スルホプロピル(メタ)アクリレート等が挙げられる。
リン酸基を含有するビニルモノマーとしては、ビニルホスフェート、(メタ)アクリル酸のエチレンオキサイドあるいはプロピレンオキサイドの付加物とリン酸とのエステル、(メタ)アクリル酸2―ヒドロキシエチルとリン酸とのエステル、(メタ)アクリル酸2―ヒドロキシエチルとカプロラクトン重合体とリン酸とのエステル等が挙げられ、官能基の密度が高く、着色組成物の現像性、基板密着性、コントラストを向上させる観点から、(メタ)アクリル酸2―ヒドロキシエチルとリン酸とのエステルが好ましい。
具体的な化合物としては、リン酸(2−メタクリロキシエチル)、リン酸ビス(2−メタクリロキシエチル)、リン酸トリ(2−メタクリロキシエチル)、ジフェニル−2−アクリロイルオキシエチルホスフェート、ジフェニル−2−メタクリロイルオキシエチルホスフェート等が挙げられ、これらの中でもリン酸(2−メタクリロキシエチル)、リン酸ビス(2−メタクリロキシエチル)、リン酸トリ(2−メタクリロキシエチル)が好ましく、リン酸(2−メタクリロキシエチル)及びリン酸ビス(2−メタクリロキシエチル)が好ましい。
【0017】
好適な市販品の例としては、ローディア日華株式会社製、Sipomer−PAM4000(リン酸(2−メタクリロキシエチル)50重量%、リン酸ビス(2−メタクリロキシエチル)50重量%の混合物)、花王株式会社製、padmer−m(リン酸(2−メタクリロキシエチル)63.4重量%、リン酸ビス(2−メタクリロキシエチル)33.8重量%、リン酸トリ(2−メタクリロキシエチル)2.8重量%の混合物)が挙げられる。
上記アニオン性モノマーの中では、他のモノマーあるいは側鎖部分となるマクロモノマーとの共重合性を良好にし、ひいては着色組成物の現像性及び基板密着性を向上させる観点から、(メタ)アクリル酸、リン酸(2−メタクリロキシエチル)、及びリン酸ビス(2−メタクリロキシエチル)から選ばれる1種以上が好ましく、アクリル酸、リン酸(2−メタクリロキシエチル)、及びリン酸ビス(2−メタクリロキシエチル)から選ばれる1種以上がより好ましく、リン酸(2−メタクリロキシエチル)が更に好ましい。
グラフトポリマーの全構成単位中のアニオン性基を含有するモノマー由来の構成単位の含有量は、顔料への吸着性の観点、及び粘度上昇の抑制や分散粒径の適正化の観点から、好ましくは1〜30重量%、より好ましくは2〜25重量%、更に好ましくは5〜20重量%である。
【0018】
主鎖の構成単位となるモノマーとしては、更に水酸基を含有するモノマーを用いることが好ましい。
水酸基を含有するモノマーとしては、(メタ)アクリル酸2−ヒドロキシエチル等の(メタ)アクリル酸ヒドロキシアルキル;グリセリンモノ(メタ)アクリレート;(メタ)アクリル酸ポリエチレングリコール等の(メタ)アクリル酸ポリアルキレングリコール等が挙げられる。
これら水酸基を含有するモノマーの中では、顔料への吸着性の観点から、(メタ)アクリル酸ヒドロキシアルキルが好ましく、(メタ)アクリル酸2−ヒドロキシエチルがより好ましい。
グラフトポリマーの全構成単位中の水酸基を含有するモノマー由来の構成単位の含有量は、顔料への吸着性の観点、及び粘度上昇の抑制や分散粒径の適正化の観点から、好ましくは2〜30重量%、より好ましくは5〜20重量%、更に好ましくは7〜18重量%である。
【0019】
(グラフトポリマーの側鎖の構成単位となるモノマー)
グラフトポリマーの側鎖の構成単位となるモノマーとしては、顔料の溶媒への分散性を高める観点から、(メタ)アクリル酸エステルを含有することが好ましい。
(メタ)アクリル酸エステルとしては、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸ステアリル等の(メタ)アクリル酸アルキル;(メタ)アクリル酸ベンジル;(メタ)アクリル酸イソボルニル;(メタ)アクリル酸2−ヒドロキシエチル;グリセリンモノ(メタ)アクリレート;(メタ)アクリル酸パーフルオロオクチルエチル;(メタ)アクリル酸メトキシポリエチレングリコール等が挙げられる。これらの中では、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、及び(メタ)アクリル酸ベンジルが好ましく、(メタ)アクリル酸メチルがより好ましい。
(メタ)アクリル酸エステルは、単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
グラフトポリマーの側鎖中の(メタ)アクリル酸エステル由来の構成単位の含有量は、特に制限はないが、側鎖中の全構成単位に対して、好ましくは5〜100重量%、より好ましくは50〜100重量%、更に好ましくは80〜100重量%である。
【0020】
[高分子分散剤(グラフトポリマー)の製造]
本発明の高分子分散剤であるグラフトポリマーの製造方法としては、(i)主鎖の構成単位であるモノマーと側鎖を構成するマクロモノマーとを共重合する方法(マクロモノマー法)、及び(ii)主鎖を構成するポリマーと側鎖を構成するポリマーとをカップリング反応させる方法(カップリング法)が挙げられるが、不純物の少ないグラフトポリマーを得、着色組成物の現像性及び基板密着性を向上させる観点から、(i)マクロモノマー法が好ましい。
【0021】
(マクロモノマー法によるグラフトポリマーの製造)
側鎖を構成するマクロモノマーは、(メタ)アクリル酸エステルマクロモノマーが好ましく、前記(メタ)アクリル酸アルキル由来の構成単位を有し、その片末端に重合性官能基を有するものである。
(メタ)アクリル酸エステルマクロモノマーの重合性官能基としては、アクリロイルオキシ基又はメタクリロイルオキシ基が好ましい。
本方法で、主鎖の構成単位であるモノマーと側鎖を構成するマクロモノマーを含有するモノマー混合物(以下、「モノマー混合物」という)を共重合してグラフトポリマーを得る。
塊状重合法、溶液重合法、懸濁重合法、乳化重合法等の公知の重合法により、前記モノマー混合物を共重合させることによって製造することができる。これらの重合法の中では、顔料分散体に有機溶媒を用いる観点から、溶液重合法が好適である。
溶液重合法で用いる有機溶媒としては、グラフトポリマーと親和性の高い有機溶媒が好ましく、前記の有機溶媒を用いることができる。
重合の際には、2,2’−アゾビスイソブチロニトリル、2,2’−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)等のアゾ化合物や、tert−ブチルペルオキシオクトエート、ジベンゾイルペルオキシド等の有機過酸化物等の公知のラジカル重合開始剤を用いることができる。
ラジカル重合開始剤の量は、モノマー混合物1モル当たり、好ましくは0.001〜5モル、より好ましくは0.01〜2モルである。
重合の際には、さらに、オクチルメルカプタン、2−メルカプトエタノール等のメルカプタン類、チウラムジスルフィド類等の公知の重合連鎖移動剤を添加することができる。
モノマー混合物の重合条件は、使用する重合開始剤、モノマー、溶媒の種類等によって異なるが、重合温度は、通常30〜100℃、好ましくは50〜80℃であり、重合時間は、重合温度等の条件により異なり一概に決めることはできないが、通常1〜20時間程度である。また、重合雰囲気は、窒素ガスやアルゴン等の不活性ガス雰囲気であることが好ましい。
重合反応の終了後、反応溶液から再沈澱、溶媒留去等の公知の方法により、生成したポリマーを単離することができる。また、得られたポリマーは、再沈澱を繰り返したり、膜分離法、クロマトグラフ法、抽出法等により、未反応のモノマー等を除去して精製することができる。
【0022】
グラフトポリマーは、側鎖にアニオン性基を有することが着色組成物の現像性、基板密着性を向上し、コントラストも向上させる観点から好ましい。
グラフトポリマーが、アニオン性基を側鎖に有する場合、そのアニオン性基はアニオン性基を有するモノマー由来でもよく、側鎖部分となるポリマーに水酸基を導入し、それに多塩基酸無水物を反応させた、多塩基酸無水物由来であってもよいが、均質なグラフトポリマーを得る観点から、多塩基酸無水物由来であることが好ましい。
その合成方法も制限はない。側鎖部分を構成するポリマーを重合する際にアニオン性基を有するモノマーを共重合してもよいし、あるいは先に水酸基を有するモノマーを共重合し、次いでグラフトポリマーを調製した後多塩基酸無水物を水酸基と反応させアニオン性基であるカルボキシ基を発生させてもよいし、先に水酸基を有するモノマーを共重合したマクロモノマーを調製した後多塩基酸無水物を水酸基と反応させ、主鎖部分を構成するモノマーと共重合してもよい。なかでも、副生成物が生じにくく、均質なグラフトポリマーを得る観点から、先に水酸基を有するモノマーを共重合したマクロモノマーを調製した後多塩基酸無水物を水酸基と反応させ、主鎖部分を構成するモノマーと共重合する方法が好ましい。
多塩基酸無水物は、1分子内に2つ以上のカルボキシル基を脱水縮合させた構造を有する化合物であれば、特に制限はないが、水酸基との反応性から、分子量が70〜500であることが好ましく、80〜300であることがより好ましく、85〜200であることがより好ましく、90〜150であることが更に好ましい。
多塩基酸無水物としては、二塩基酸無水物、三塩基酸無水物が挙げられ、二塩基酸無水物の具体例としては、芳香族カルボン酸の無水物、脂肪族カルボン酸の無水物が挙げられ、反応性の観点から、脂肪族カルボン酸の無水物が好ましい。
脂肪族カルボン酸の無水物の例としては、無水マレイン酸、無水イタコン酸、及び無水コハク酸等が挙げられ、反応性の観点から、無水コハク酸が特に好ましい。
芳香族カルボン酸の無水物の例としては、無水フタル酸等が挙げられる。
三塩基酸無水物の例としては、無水トリメリット酸等が挙げられる。
グラフトポリマー又はマクロモノマーの水酸基と反応させる際の反応温度は、好ましくは90〜130℃、より好ましくは100〜120℃である。
【0023】
〔脂肪酸(ポリ)アルキレングリコールモノアルキルエーテル〕
本発明で用いられる脂肪酸(ポリ)アルキレングリコールモノアルキルエーテルは特に限定されないが、沸点が100℃以上のものを用いることが好ましい。具体的には、以下の(i)及び(ii)等が挙げられる。
(i)アルカンジイルグリコールモノアルキルエーテルプロピオネート:エチレングリコールモノメチルエーテルプロピオネート、エチレングリコールモノエチルエーテルプロピオネート、プロピレングリコールモノメチルエーテルプロピオネート、プロピレングリコールモノエチルエーテルプロピオネート等
(ii)アルカンジイルグリコールモノアルキルエーテルアセテート:エチレングリコールモノメチルエーテルアセテート、エチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート(PGMEA)、プロピレングリコールモノエチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノメチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノブチルエーテルアセテート(BCA)等
上記化合物の中では、グラフトポリマーの溶解性と、ジケトピロロピロール系顔料の分散性の観点から、(i)アルカンジイルグリコールモノアルキルエーテルプロピオネート、及び(ii)アルカンジイルグリコールモノアルキルエーテルアセテートが好ましく、(ii)アルカンジイルグリコールモノアルキルエーテルアセテートがより好ましく、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート(PGMEA、沸点:146℃)、及びジエチレングリコールモノブチルエーテルアセテート(BCA、沸点:247℃)が更に好ましく、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート(PGMEA)が特に好ましい。
上記の脂肪酸(ポリ)アルキレングリコールモノアルキルエーテルは、単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0024】
〔顔料分散体の製造方法〕
本発明のカラーフィルター用赤色顔料分散体は、下記の工程(1)及び(2)を有する製造方法によって得ることが好ましい。
工程(1):ジケトピロロピロール系顔料、高分子分散剤、脂肪酸(ポリ)アルキレングリコールモノアルキルエーテルを含有する混合物を分散して、顔料分散体(1)を得る工程
ただし、該高分子分散剤が、アニオン性基及び環状アミド基を含有するグラフトポリマーである。
工程(1)で得られた顔料分散体(1)をそのままカラーフィルター用着色組成物に含有する顔料分散体として用いてもよいが、基板密着性や耐熱性の観点から、更に以下の工程(2)を有することが好ましく、工程(2)で得られた顔料分散体(2)をカラーフィルター用着色組成物に含有する顔料分散体として用いることが好ましい。
工程(2):工程(1)で得られた顔料分散体(1)から、顔料に未吸着の高分子分散剤を除去して、顔料分散体(2)を得る工程
【0025】
〔工程(1)〕
分散工程における分散方法に特に制限はなく、ジケトピロロピロール系顔料、高分子分散剤、脂肪酸(ポリ)アルキレングリコールモノアルキルエーテルを含有する混合物を一度の分散で目的とする顔料分散体を得てもよいが、該混合物を予備分散して、更に本分散を行うことが、より微細で均一な顔料分散体を得る観点から好ましい。
【0026】
(予備分散)
工程(1)の予備分散は、一度に全成分を混合し、分散してもよいが、高分子分散剤と溶媒である脂肪酸(ポリ)アルキレングリコールモノアルキルエーテルとを予め混合して予備混合物を調製し、得られた予備混合物にジケトピロロピロール系顔料を混合し、分散して最終的な混合物を得ることが好ましい。
予備分散工程における、ジケトピロロピロール系顔料に対する高分子分散剤の重量比〔高分子分散剤/ジケトピロロピロール系顔料〕は、顔料に必要量の高分子分散剤を付着させる観点から、0.3〜2.0とすることが好ましく、0.4〜1.7とすることがより好ましく、0.5〜1.5とすることが更に好ましい。
顔料分散体中のジケトピロロピロール系顔料の割合は、良好な着色性を得る観点から、3重量%以上が好ましく、良好な着色性及び粘度を得る観点から、3〜30重量%が好ましく、5〜20重量%がより好ましく、7〜15重量%が更に好ましい。
予備分散工程における、顔料分散体中の高分子分散剤の含有量は、分散体の低粘度化の観点、及びコントラストに優れた硬化膜を得る観点から、2〜15重量%が好ましく、3〜10重量%がより好ましく、4〜8重量%が更に好ましい。
本工程における、脂肪酸(ポリ)アルキレングリコールモノアルキルエーテルの含有量は、均一に分散させる観点から、40〜90重量%が好ましく、40〜90重量%が更に好ましい。
予備分散工程における分散時間は特に制限はないが、0.1〜10時間が好ましく、0.5〜4時間がより好ましく、1〜3時間が更に好ましい。
【0027】
予備分散で用いる混合分散機に特に制限はなく、公知の種々の分散機を用いることができる。例えば、アンカー翼等を備えた一般に用いられている混合撹拌装置、具体例としては、ウルトラタックス(IKAジャパン株式会社製 商品名)等のホモミキサー等、ウルトラディスパー、デスパミル(浅田鉄工株式会社、商品名)、マイルダー(株式会社荏原製作所、太平洋機工株式会社、商品名)、TKホモミクサー、TKパイプラインミクサー、TKホモジェッター、TKホモミックラインフロー、フィルミックス(以上、プライミクス株式会社、商品名)等の高速撹拌混合装置、ロールミル、ニーダー、エクストルーダ等の混練機が挙げられ、高圧ホモゲナイザー(株式会社イズミフードマシナリ、商品名)に代表されるホモバルブ式の高圧ホモジナイザー、マイクロフルイダイザー(Microfluidics 社、商品名)、ナノマイザー(吉田機械興業株式会社、商品名)、アルティマイザー、スターバースト(スギノマシン株式会社、商品名)等のチャンバー式の高圧ホモジナイザー等の高圧式分散機、ペイントシェーカー、ビーズミル、ダイノーミル(シンマルエンタープライゼス社製、商品名)等のメディア式分散機等が挙げられる。これらの装置は複数を組み合わせることもできる。
これらの中では、顔料を溶媒中に均一に混合させる観点から、ホモミキサー等の高速撹拌混合装置、ペイントシェーカーやビーズミル等のメディア式分散機が好ましく、これらを併用することがより好ましい。
なお、予備分散は平均粒径が100nm以下となるまで行うことが好ましい。
【0028】
(本分散)
本分散は、予備分散で得られた予備分散体を分散処理する工程であり、前記予備分散工程で得られた混合物を更に微細化するために行われるが、顔料を微細化する観点から、メディア式分散機を用いることが好ましく、前記の高圧式分散機を併用してもよい。
本分散工程で用いるメディアの材質としては、ジルコニア、チタニア等のセラミックス、ポリエチレン、ナイロン等の高分子材料、金属等が好ましく、摩耗性の観点からジルコニアが好ましい。また、メディアの粒径としては、0.003〜0.1mmが好ましい。ジケトピロロピロール系顔料を微細化する観点から、0.07mm以下がより好ましく、0.05mm以下が更に好ましく、メディアを顔料と分離する観点から、0.005mm以上がより好ましく、0.01mm以上が更に好ましい。
本分散工程で用いるメディア式分散機としては、ペイントシェーカー、ビーズミル等が好ましく、市販のメディア式分散機としては、ウルトラ・アペックス・ミル(寿工業株式会社製、商品名)、ピコミル(浅田鉄工株式会社製、商品名)等が挙げられる。
【0029】
得られる顔料分散体の保存安定性の観点から、分散時の温度を10〜35℃に保つことが好ましく、15〜30℃がより好ましく、18〜27℃が更に好ましい。
分散時には発熱があるため、分散液を適宜冷却することが好ましい。例えば、分散機がペイントシェーカーの場合は、冷風を吹き付けるスポットクーラーを用いて冷却することが好ましく、ビーズミル、ニーダー、高圧式分散機の場合は、ジャケットに冷媒を流して冷却することが好ましい。
本分散の分散時間は、顔料を十分に微細化する観点から、3〜200時間が好ましく5〜50時間がより好ましい。
【0030】
また、本分散工程の開始時又は途中で高分子分散剤を添加してもよい。高分子分散剤を添加すれば、顔料の分散性が向上し、粘度がやや低下し、顔料分散体の安定性も向上する。
顔料分散体中の高分子分散剤の含有量は、分散体の低粘度化の観点、及びコントラストに優れた硬化膜を得る観点から、3〜15重量%が好ましく、5〜10重量%がより好ましい。
本分散工程における、顔料分散体中のジケトピロロピロール系顔料の割合は、良好な着色性を得る観点から、3重量%以上が好ましく、良好な着色性及び粘度を得る観点から、3〜30重量%が好ましく、5〜20重量%がより好ましい。
また、本工程における、ジケトピロロピロール系顔料に対する高分子分散剤の重量比〔高分子分散剤/ジケトピロロピロール系顔料〕は、分散体の低粘度化、及び硬化膜のコントラスト向上の観点から、0.3〜1.5が好ましく、0.4〜1.4がより好ましい。
本工程における、脂肪酸(ポリ)アルキレングリコールモノアルキルエーテルの含有量は、均一に分散させる観点から、20〜90重量%が好ましく、40〜80重量%がより好ましい。
【0031】
また、顔料分散体の粘度は、1〜100mPa・s(20℃)が好ましく、1〜80mPa・s(20℃)がより好ましく、1〜50mPa・s(20℃)が更に好ましい。該粘度は、分散機の動力や、高分子分散剤、顔料及び溶媒の混合比率を調整することによって調整することができる。
なお、本分散は平均粒径で60nm以下となるまで行うことが好ましい。
【0032】
〔工程(2)〕
工程(2)は、工程(1)で得られた顔料分散体(1)から、顔料に未吸着の高分子分散剤を除去して、顔料分散体(2)を得る工程である。
ジケトピロロピロール系顔料に未吸着の高分子分散剤を除去する方法としては、特に限定されないが、遠心分離処理による方法が好ましい。
遠心分離処理としては、具体的には以下の方法が挙げられる。
まず、分散工程で得られた顔料分散体を、遠心分離機を用いて遠心分離し、液分と固形分とに分離し、液分を除去して固形分を回収する。
次に、顔料に未吸着の高分子分散剤は有機溶媒中に存在するため、遠心分離中ないし遠心分離後に、該上層部(上澄み液)の全部又は一部を除去することにより、該未吸着ポリマーを適切に取り除くことができる。また、回収される固形分は、主として高分子分散剤が顔料に吸着した粒子からなり、遠心分離後にスラリー状ないしケーキ状となって、遠心分離機の側壁ないし底部に残存しているので、容易に回収することができる。
液分を除去して固形分を回収し、顔料に未吸着の高分子分散剤量を2重量%以下にすることで、得られる顔料分散体の保存安定性、耐熱性を大幅に改善することができる。
【0033】
用いることのできる遠心分離機に特に制限はないが、例えば、特開2003−93811号公報等に記載のバスケット型遠心分離機が好ましく、無孔壁バスケット型遠心分離機の市販品としては、例えば、株式会社関西遠心分離機械製作所製のKBS型、タナベウィルテック株式会社製のS型の遠心分離機等が挙げられる。
遠心分離機の運転方法にも特に制限はない。(i)原液分散体を供給しながら分離液層を排出する連続式、及び(ii)原液分散体を供給した後、分離液層が形成されたところで該液層を排出するバッチ式のいずれの運転方法であってもよい。
遠心分離処理における遠心加速度は、原液分散体に含有されている顔料(A)に未吸着の高分子分散剤量を低減させる観点から、好ましくは5,000〜50,000G、より好ましくは10,000〜30,000Gである。
【0034】
更に、遠心分離処理の場合は、遠心分離処理して得た固形分に有機溶媒を加えて再分散することもできる。
有機溶媒としては、前記の脂肪酸(ポリ)アルキレングリコールモノアルキルエーテルを用いることができる。
再分散の方法に特に限定はなく、前記のペイントシェーカーや高圧ホモジナイザー等の分散機等を用いて混合、分散させることができる。
また、超音波ホモジナイザー等を用いて再分散することもできる。
高出力超音波ホモジナイザーの市販例としては、シャープ株式会社製のSILENTSONIC UT−204、株式会社日本精機製作所製の超音波ホモジナイザーUS−300T、同US−1200T、同RUS−1200T、同MUS−1200T、ヒールッシャー社製の超音波プロセッサーUIPシリーズ等が挙げられる。これらの超音波照射装置を用いて好ましくは25kHz以下の周波数で微細分散することができる。
超音波照射方式としては、アジテーター、マグネチックスターラー、ディスパー等の攪拌手段を併用するバッチ式、超音波照射部を備えたチャンバー中に分散液を一定流量で送るフロー式が挙げられる。超音波ホモジナイザーと前記のペイントシェーカーや高圧ホモジナイザー等とを併用することもできる。
本工程で遠心分離処理して得た固形分に有機溶媒を加えた予備混合物を超音波照射処理等により再分散することで、顔料に未吸着の高分子分散剤量が低減された高品質な顔料分散体を効率的に製造することができる。
【0035】
本工程によって得られる顔料分散液中における顔料に未吸着の高分子分散剤量は、保存安定性及び耐熱性に優れたカラーフィルター用顔料分散体を得る観点から、好ましくは2重量%以下、より好ましくは1.5重量%以下、更に好ましくは1重量%以下であり、理想的には未吸着の高分子分散剤が存在しないことが好ましい。
【0036】
〔カラーフィルター用赤色顔料分散体〕
本発明のカラーフィルター用赤色顔料分散体は、ジケトピロロピロール系顔料、高分子分散剤、脂肪酸(ポリ)アルキレングリコールモノアルキルエーテルを含有する。
ただし、高分子分散剤が、アニオン性基及び環状アミド基を含有するグラフトポリマーである。
顔料分散体中のジケトピロロピロール系顔料の割合は、良好な着色性を得る観点から、3重量%以上が好ましく、良好な着色性及び粘度を得る観点から、3〜30重量%が好ましく、5〜20重量%がより好ましい。
顔料分散体中のジケトピロロピロール系顔料に対する高分子分散剤の重量比〔高分子分散剤/ジケトピロロピロール系顔料〕は、顔料分散体の保存安定性の観点から、0.4〜1.2が好ましく、0.5〜0.8がより好ましい。
顔料分散体中の脂肪酸(ポリ)アルキレングリコールモノアルキルエーテルの含有量は、顔料分散体の良好な着色性及び低粘度化の観点から、20〜90重量%が好ましく、40〜80重量%がより好ましい。
【0037】
顔料分散体中の顔料の体積中位粒径(D50)は、カラーフィルター用色材として良好なコントラストを得るために、80nm以下が好ましく、20〜70nmがより好ましく、20〜60nmが更に好ましい。
なお、体積中位粒径(D50)とは、体積分率で計算した累積体積頻度が小粒径側から累積して50%になる粒径を意味する。体積中位粒径(D50)の値は、製造直後の顔料分散体をプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート(PGMEA)で300倍に希釈し、粒度分析計(シスメックス社製、ZETASIZER Nano−ZS)を用いて、測定条件として、例えばジケトピロロピロール系顔料の場合、顔料粒子屈折率:1.51、顔料密度:1.45g/cm3、PGMEA屈折率:1.400、PGMEA粘度:1.3cpsを入力して、20℃で測定することができる。
本発明の顔料分散体の固形分12重量%における粘度(20℃)は、カラーフィルター用色材として良好な粘度とするために、1〜200mPa・sが好ましく、1〜100mPa・sがより好ましい。
【0038】
〔カラーフィルター用着色組成物〕
本発明のカラーフィルター用着色組成物は、前記カラーフィルター用顔料分散体を含有するが、ジケトピロロピロール系顔料、高分子分散剤、脂肪酸(ポリ)アルキレングリコールモノアルキルエーテル以外にバインダー成分等を含有することができる。
バインダー成分としては、電離放射線硬化性成分を含有するバインダー成分等が挙げられる。
電離放射線硬化性成分を含有するバインダー成分には、アルカリ可溶性樹脂、多官能モノマーや電離放射線により活性化する光重合開始剤を含有し、更に多官能オリゴマー、単官能のモノマー、及び増感剤等を配合することができる。これらの樹脂、オリゴマー、モノマー、添加剤等は、単独で又は2種以上を組み合わせて使用することができる。
電離放射線硬化性成分からなる着色組成物中のバインダー成分の含有量は、溶媒を除いた有効分中20〜80重量%が好ましく、光重合開始剤の含有量は、溶媒を除いた有効分中0.2〜20重量%が好ましい。
【0039】
前記アルカリ可溶性樹脂としては、ネガ型レジストに一般的に用いられるものを用いることができ、アルカリ水溶液に可溶性を有するもの(0.05重量%テトラメチルアンモニウムヒドロキシド水溶液に20℃で1重量%以上溶解するもの)であればよく、特に限定されない。例えば、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、n−プロピル(メタ)アクリレート、イソプロピル(メタ)アクリレート、n−ブチル(メタ)アクリレート、sec−ブチル(メタ)アクリレート、イソブチル(メタ)アクリレート、tert−ブチル(メタ)アクリレート、n−ペンチル(メタ)アクリレート、n−ヘキシル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、n−オクチル(メタ)アクリレート、n−デシル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート、スチレン、γ−メチルスチレン、N−ビニル−2−ピロリドン、グリシジル(メタ)アクリレート等の中から選ばれる1種以上と、(メタ)アクリル酸、イタコン酸、クロトン酸、マレイン酸、フマル酸、ビニル酢酸、これらの無水物の中から選ばれる1種以上とからなるコポリマーを例示することができ、上記のコポリマーにグリシジル基又は水酸基を有するエチレン性不飽和化合物を付加させたポリマー等も例示できる。これらの中では、コポリマーにグリシジル基又は水酸基を有するエチレン性不飽和化合物を付加等することにより得られる、エチレン性不飽和結合を有するポリマー等は、露光時に、後述する多官能性モノマーと重合することが可能となり、着色層がより安定なものとなる点で、特に好適である。
アルカリ可溶性樹脂の重量平均分子量は5,000〜50,000が好ましい。
本発明で用いられるアルカリ可溶性樹脂としては、(メタ)アクリル酸エステルと(メタ)アクリル酸の共重合体が好ましく挙げられ、ベンジル(メタ)アクリレートと(メタ)アクリル酸との共重合体がより好ましい。
アクリル酸エステルと(メタ)アクリル酸の共重合割合(モル比)は、90/10〜50/50であることが好ましく、80/20〜70/30であることがより好ましい。
【0040】
多官能モノマーとしては、エチレン性不飽和二重結合を2個以上有する(メタ)アクリル酸エステル(例えば、ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート等)、ウレタン(メタ)アクリレート、(メタ)アクリル酸アミド、アリル化合物、ビニルエステル等が挙げられる。本発明の顔料分散体中の多官能モノマーの含有量は、溶媒を除いた有効分中10〜60重量%が好ましい。
光重合開始剤としては、芳香族ケトン類、ロフィン2量体、ベンゾイン、ベンゾインエーテル類、ポリハロゲン類等が挙げられる。例えば4,4’−ビス(ジエチルアミノ)ベンゾフェノンと2−(o−クロロフェニル)−4,5−ジフェニルイミダゾール2量体の組み合わせ、4−[p−N,N−ジ(エトキシカルボニルメチル)−2,6−ジ(トリクロロメチル)−s−トリアジン]、2−メチル−4’−(メチルチオ)−2−モルホリノプロピオフェノンが好ましい。
【実施例】
【0041】
以下の製造例、実施例及び比較例において、「部」及び「%」は特記しない限り、「重量部」及び「重量%」である。なお、高分子分散剤の分子量、固形分、エポキシ価、顔料分散体の粘度、顔料分散体を用いた現像後の硬化膜のコントラスト比の測定、評価は以下の方法により行った。
(1)高分子分散剤の数平均分子量、重量平均分子量の測定
N,N−ジメチルホルムアミドに、リン酸及びリチウムブロマイドをそれぞれ60mmol/Lと50mmol/Lの濃度となるように溶解した液を溶離液として、ゲルクロマトグラフィー法〔東ソー株式会社製GPC装置(HLC−8120GPC)、東ソー株式会社製カラム(TSK−GEL、α−M×2本)、流速:1mL/min〕により、標準物質としてポリスチレンを用いて測定した。
(2)高分子分散剤の固形分の測定
シャーレにガラス棒と乾燥無水硫酸ナトリウム10部を量り採り、そこにポリマー溶液2部(サンプル量)を加えてガラス棒で混合し、105℃の減圧乾燥機(圧力8kPa)で2時間乾燥した。乾燥後の重さを計り、次式より固形分を算出した。
固形分=[〔サンプル量−(乾燥後の重さ−(シャーレ+ガラス棒+無水硫酸ナトリウムの重さ))〕/サンプル量]×100
(3)高分子分散剤製造時のエポキシ価の測定
ポリマー溶液に塩酸を加え、クロルヒドリン化により消費された量を水酸化カリウムのmg数で表したものをいう。
(4)高分子分散剤の酸価測定
JIS K 0070 に従い測定した。
【0042】
(5)顔料分散体の粘度の測定
顔料濃度10%に合わせた分散体2mLを、20℃で5分間保持した後、E型粘度計(ローターNo.2、20rpm、20℃)を用いて、顔料分散体の粘度を測定した。
(6)コントラストの評価(硬化膜のコントラスト比の測定)
顔料濃度を10%に調整した顔料分散体1.00部、メタクリル酸/ベンジルメタクリレート共重合体(バインダー、モル比:30/70、重量平均分子量:14000、固形分40重量%のプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート(以下、「PGMEA」という)溶液)0.15部、ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート(多官能モノマー:日本化薬株式会社製、DPHA)0.046部、2−メチル−4’−(メチルチオ)−2−モルホリノプロピオフェノン(光重合開始剤:和光純薬工業株式会社製)0.035部、PGMEA0.474部を均一になるまで混合し、着色組成物を得た。ガラス基板上に顔料分散組成物をスピンコーターで塗布した後、水平台にて6分間静置し、80℃で3分間ホットプレートにより乾燥した。次いで、得られた塗膜に紫外線ファイバースポット照射装置(モリテックス社製、MUV−202U)を用いて30mJ/cm2まで紫外線を照射し、硬化膜を得た。硬化膜のコントラスト比をコントラスト比測定器(壺坂電機株式会社製、CT−1)で測定した。
コントラスト比の値が大きいものほど、コントラストが良好である。
【0043】
(7)硬化膜の現像性の評価
前記(6)のコントラスト測定用に調整した着色組成物をガラス基板上にスピンコーターで塗布した後、水平台にて6分間静置し、80℃で3分間ホットプレートにより乾燥した。次いで、得られた塗膜にフォトマスクを載せ、紫外線ファイバースポット照射装置(モリテックス社製、MUV−202U)を用いて30mJ/cm2まで紫外線を照射し、硬化膜基板を得た。
次いで、この硬化膜基板を、テトラメチルアンモニウムヒドロキシド0.1%水溶液中でゆっくり揺動させ、30秒刻みで、水溶液から引き上げ、次いで水シャワーでリンスし未硬化部分を除去した。露光パターンが最も早く得られるテトラメチルアンモニウムヒドロキシド水溶液浸漬時間を現像時間とした。現像時間が短いほど現像性に優れる。
(8)基板密着性の評価
前記(7)で得られた硬化膜基板のパターンの形成性を目視により観察し、下記の基準で基板密着性を評価した。
AA:完全なパターンが形成できており、パターンの端部に乱れがない。
A:完全なパターンが形成できているが、パターンの端部に乱れが見られる。
B:パターンの一部が形成できているが、一部は欠損している。
C:パターンのほぼ全体が欠損している。
パターンの形成性が良好であるほど基板密着性に優れる。
【0044】
製造例1〔高分子分散剤(1)の合成〕
(1)片末端カルボン酸型ポリメタクリル酸メチルの合成
還流冷却器、温度計、窒素ガス導入管及び攪拌装置を取り付けたセパラブルフラスコに、メタクリル酸メチル(以下、「MMA」という)200g、3−メルカプトプロピオン酸(連鎖移動剤)14.2g、PGMEA 25gを仕込み、窒素置換した後、80℃で攪拌しながら、MMA 800g、3−メルカプトプロピオン酸56.9g、PGMEA 400g、2,2’−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)(重合開始剤)8gを3時間かけて滴下した。更に1時間、80℃で攪拌後、前記重合開始剤8g、3−メルカプトプロピオン酸3.6g、PGMEA 400gを加えた。更に、80℃で2時間攪拌し、末端カルボン酸型ポリメタクリル酸メチルのPGMEA溶液を得た。
溶液の固形分は56%であり、得られた末端カルボン酸型ポリメタクリル酸メチルの酸価は21mgKOH/g、数平均分子量は1700、重量平均分子量は3000であった。
【0045】
(2)片末端メタクリロイル化ポリメタクリル酸メチルマクロモノマーの合成
前記(1)で得られた片末端カルボン酸型ポリメタクリル酸メチル溶液450g(固形分252g)、メタクリル酸グリシジル(以下、「GMA」という)18.4g、テトラブチルアンモニウムブロマイド(以下、「TBAB」という)(触媒)6.2g、メトキシフェノール0.6g、PGMEA 10gを、還流冷却器、温度計、空気導入管、攪拌装置を取り付けた4つ口フラスコに仕込み、空気バブリングを行いながら、90℃で12時間攪拌し、片末端メタクリロイル化ポリメタクリル酸メチルのマクロモノマーのPGMEA溶液を得た。
溶液の固形分は58%であり、得られたマクロモノマーの酸価は0.11mgKOH/g、数平均分子量は1800、重量平均分子量3200であった。
【0046】
(3)高分子分散剤(1)(ポリ(HEMA−VP−AA)−g−PMMAグラフトポリマー)の製造)
還流冷却器、温度計、窒素ガス導入管及び攪拌装置を取り付けたセパラブルフラスコに、PGMEA12g、エタノール5.3g、N−ビニル−2−ピロリドン(以下、「VP」という)8.0g、アクリル酸(以下、「AA」という)0.58g、製造例1(2)で得られた片末端メタクリロイル化ポリメタクリル酸メチルのマクロモノマー溶液13.3g(固形分7.7g)、メタクリル酸2−ヒドロキシエチル(以下、「HEMA」という)0.41g、メルカプトエタノール0.03gを仕込み、窒素置換した後、78℃で攪拌しながら、前記重合開始剤0.6g、PGMEA1.0gを添加し、次いで、VP12.1g、AA2.9g、HEMA2.1g、末端メタクリロイル化ポリメタクリル酸メチルのマクロモノマー溶液66.4g(固形分38.5g)、エタノール14g、PGMEA28.2g、メルカプトエタノール0.11g、前記重合開始剤1.0gの混合液を1.5時間で滴下した。滴下終了後、AA2.3g、HEMA0.82g、末端メタクリロイル化ポリメタクリル酸メチルのマクロモノマー溶液53.1g(固形分30.8g)、エタノール6.5g、PGMEA15.1g、メルカプトエタノール0.067g、前記重合開始剤0.4gの混合液を3.0時間かけて滴下した。次いで前記重合開始剤0.1g、PGMEA 46gを添加し、78℃で1時間攪拌し、更に90℃で30分攪拌した。冷却後、エバポレータでエタノールを除去し、高分子分散剤(1)(ポリ(HEMA−VP−AA)−g−PMMAグラフトポリマー)のPGMEA溶液を得た。
溶液の固形分は40.4%であり、得られた高分子分散剤(1)の酸価は43mgKOH/g、数平均分子量は11000、重量平均分子量は32000であった。
【0047】
製造例2〔高分子分散剤(2)の合成〕
(1)片末端カルボン酸型ポリ(MMA−HEMA)の合成
還流冷却器、温度計、窒素ガス導入管及び攪拌装置を取り付けたセパラブルフラスコに、MMA180g、HEMA26g、3−メルカプトプロピオン酸(連鎖移動剤)14.2g、PGMEA 25gを仕込み、窒素置換した後、80℃で攪拌しながら、MMA 720g、HEMA104g、3−メルカプトプロピオン酸56.9g、PGMEA 400g、2,2’−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)(重合開始剤)8gを3時間かけて滴下した。更に1時間、80℃で攪拌後、前記重合開始剤8g、3−メルカプトプロピオン酸3.6g、PGMEA 400gを加えた。更に、80℃で2時間攪拌し、末端カルボン酸型ポリ(MMA−HEMA)のPGMEA溶液を得た。
溶液の固形分は58%であり、得られた末端カルボン酸型ポリ(MMA−HEMA)の酸価は21mgKOH/g、水酸基価は22.0、数平均分子量は1750、重量平均分子量は3100であった。
【0048】
(2)片末端メタクリロイル化コハク酸変性ポリメタクリル酸メチルマクロモノマーの合成
前記(1)で得られた片末端カルボン酸型ポリ(MMA−HEMA)溶液450g(固形分261g)、GMA18.4g、TBAB(触媒)6.2g、メトキシフェノール0.6g、PGMEA 10gを、還流冷却器、温度計、空気導入管、攪拌装置を取り付けた4つ口フラスコに仕込み、空気バブリングを行いながら、90℃で12時間攪拌し、片末端メタクリロイル化ポリ(MMA−HEMA)のマクロモノマーのPGMEA溶液を得た。
溶液の固形分は59.2%であり、得られたマクロモノマーの酸価は0.11mgKOH/g、数平均分子量は1800、重量平均分子量3200であった。次いで無水コハク酸17.5gを添加し、110℃で4時間反応させた。
得られた変性マクロモノマーの酸価は21mgKOH/gであった。
【0049】
(3)(ポリ(HEMA−VP−AA)−g−コハク酸変性PMMAグラフトポリマー)の製造)
還流冷却器、温度計、窒素ガス導入管及び攪拌装置を取り付けたセパラブルフラスコに、PGMEA18g、エタノール10.2g、VP6.1g、AA 0.26g、製造例2(2)で得られた片末端メタクリロイル化コハク酸変性ポリメタクリル酸メチルのマクロモノマー溶液12.82g(固形分7.6g)、HEMA1.21g、メルカプトエタノール0.03gを仕込み、窒素置換した後、78℃で攪拌しながら、前記重合開始剤0.6g、PGMEA1.0gを添加し、次いで、VP9.1g、AA1.31g、HEMA6.1g、末端メタクリロイル化コハク酸変性ポリメタクリル酸メチルのマクロモノマー溶液64.1g(固形分37.9g)、エタノール36g、PGMEA55.1g、メルカプトエタノール0.11g、前記重合開始剤1.0gの混合液を1.5時間で滴下した。滴下終了後、AA1.05g、HEMA2.43g、末端メタクリロイル化ポリメタクリル酸メチルのマクロモノマー溶液51.3g(固形分30.4g)、エタノール22.0g、PGMEA28.1g、メルカプトエタノール0.067g、前記重合開始剤0.4gの混合液を3.0時間かけて滴下した。次いで前記重合開始剤0.1g、PGMEA 13gを添加し、78℃で1時間攪拌し、更に90℃で30分攪拌した。冷却後、エバポレータでエタノールを除去し、高分子分散剤(2)(ポリ(HEMA−VP−AA)−g−コハク酸変性PMMAグラフトポリマー)のPGMEA溶液を得た。
溶液の固形分は40.2%であり、得られた高分子分散剤(2)の酸価は42mgKOH/g、数平均分子量は7500、重量平均分子量は29000であった。
【0050】
製造例3〔高分子分散剤(3)(ポリ(HEMA−VP−リン酸基を含有するビニルモノマーPadmer m)−g−PMMAグラフトポリマー)の製造)〕
還流冷却器、温度計、窒素ガス導入管及び攪拌装置を取り付けたセパラブルフラスコに、PGMEA7.2、エタノール7.2g、VP4.5g、Padmer m(花王株式会社製、リン酸(2−メタクリロキシエチル)31.5重量%、リン酸ビス(2−メタクリロキシエチル)16.8重量%、リン酸トリ(2−メタクリロキシエチル)1.4重量%、残部水からなる水溶液。固形分49.7%)1.1g、製造例1(2)で得られた片末端メタクリロイル化ポリメタクリル酸メチルのマクロモノマー溶液13.3g(固形分7.7g)、HEMA1.41g、メルカプトエタノール0.05gを仕込み、窒素置換した後、78℃で攪拌しながら、前記重合開始剤0.6g、PGMEA1.0gを添加し、次いで、VP6.75g、Padmer m 4.38g、HEMA5.63g、末端メタクリロイル化ポリメタクリル酸メチルのマクロモノマー溶液66.4g(固形分38.5g)、エタノール23g、PGMEA20.0g、メルカプトエタノール0.19g、前記重合開始剤1.0gの混合液を1.5時間で滴下した。滴下終了後、Padmer m 5.47g、HEMA2.25g、末端メタクリロイル化ポリメタクリル酸メチルのマクロモノマー溶液53.1g(固形分30.8g)、エタノール14.23g、PGMEA14.23g、メルカプトエタノール0.12g、前記重合開始剤0.4gの混合液を3.0時間かけて滴下した。次いで前記重合開始剤0.1g、PGMEA 50gを添加し、78℃で1時間攪拌し、更に90℃で30分攪拌した。冷却後、エバポレータでエタノールを除去し、高分子分散剤(3)(ポリ(HEMA−VP−リン酸基を含有するビニルモノマーPadmer m)−g−PMMAグラフトポリマー)のPGMEA溶液を得た。
溶液の固形分は40.2%であり、得られた高分子分散剤(3)の酸価は36mgKOH/g、数平均分子量は8500、重量平均分子量は70600であった。
【0051】
製造例4〔比較高分子分散剤(4)(ポリ(HEMA−VP)−g−PMMAグラフトポリマー)の製造)〕
還流冷却器、温度計、窒素ガス導入管及び攪拌装置を取り付けたセパラブルフラスコに、PGMEA10gを仕込み、窒素置換した後、78℃で攪拌しながら、VP12.7g、製造例1(2)で得られた片末端メタクリロイル化ポリメタクリル酸メチルのマクロモノマー溶液120.9g(固形分70.1g)、HEMA14.8g、PGMEA 41g、前記重合開始剤2g、メルカプトエタノール0.4gを3時間かけて滴下した。滴下終了後、前記重合開始剤2g、PGMEA 45gを添加し、78℃で3時間攪拌し、更に90℃で30分攪拌した。冷却後、比較高分子分散剤(4)(ポリ(HEMA−VP)−g−PMMAグラフトポリマー)のPGMEA溶液を得た。
溶液の固形分は40%であり、得られた比較高分子分散剤(4)の酸価は0mgKOH/g、数平均分子量は7200、重量平均分子量は31000であった。
【0052】
製造例5〔比較高分子分散剤(5)(ポリ(HEMA−AA)−g−PMMAグラフトポリマー)の製造)〕
還流冷却器、温度計、窒素ガス導入管及び攪拌装置を取り付けたセパラブルフラスコに、AA1.5g、製造例1(2)で得られた片末端メタクリロイル化ポリメタクリル酸メチルのマクロモノマー溶液13.8g(固形分8.0g)、HEMA1.0g、PGMEA 10.5g、エタノール4.5g、メルカプトエタノール0.04gを仕込み、窒素置換した後、78℃で攪拌しながら、前記重合開始剤0.2g、PGMEA2.0gを添加し、AA13.5g、片末端メタクリロイル化ポリメタクリル酸メチルのマクロモノマー溶液124.3g(固形分72.1g)、HEMA9.0g、PGMEA 84g、エタノール40.5g、メルカプトエタノール0.36g、前記重合開始剤1.8gの混合液を3.0時間かけて滴下した。滴下終了後、前記重合開始剤0.1g、PGMEA 2gを添加し、78℃で3時間攪拌し、更に90℃で30分攪拌した。冷却後、エバポレータでエタノールを除去し、比較高分子分散剤(5)(ポリ(HEMA−AA)−g−PMMAグラフトポリマー)溶液を得た。
溶液の固形分は38.7%であり、得られた比較高分子分散剤(5)の酸価は114mgKOH/g、数平均分子量は8000、重量平均分子量は21500であった。
【0053】
実施例1〔顔料分散体(2−1)の調製〕
C.I.ピグメントレッド254顔料(A)(チバ・スペシャルティー・ケミカルズ株式会社製、商品名「IRGAPHOR RED BK−CF」、平均一次粒径30nm(カタログ値))15g、製造例1で得られた高分子分散剤(1)溶液37.5g(固形分15g)、PGMEA(SP値8.73、沸点145℃)96.5gを直径0.3mmのジルコニアビーズ300gと一緒に500mLのポリ瓶に量り、ペイントシェーカー(浅田鉄工株式会社製、400W、460rpm)で3時間振とうし、平均粒径が100nm以下となったことを確認し、金網でジルコニアビーズを濾過し、予備分散体を得た。更に得られた予備分散体100gを直径0.05mmのジルコニアビーズ200gと一緒に250mLのポリ瓶に量り、24時間振とうした。平均粒径が60nm以下となったことを確認し、金網でジルコニアビーズを濾過し、顔料分散体(1−1)を得た(工程(1))。
工程(1)で得られた顔料分散体を3倍に希釈後、遠心分離器(株式会社久保田製作所製、商品名:クボタ3K30C、アングルロータS12158)を用いて25000rpmで12時間処理した。上澄み液を除去した後、沈降成分にPGMEAを追加し、超音波分散機(シャープ株式会社製、商品名:SILENTSONIC UT−204)を用いて、超音波照射して再分散処理を行った(工程(2))。
上記工程(2)を再度行い、顔料分散体(2−1)を得た。
得られた顔料分散体(1)の評価結果と、顔料分散体(2−1)を含有する着色組成物の評価結果を表1に示す。
【0054】
実施例2、3及び比較例1、2(顔料分散体(2−2)〜(2−5)の調製)
実施例1において、高分子分散剤(1)溶液を、高分子分散剤(2)、(3)及び比較高分子分散剤(4)、(5)に変更した以外は、実施例1と同様にして、顔料分散体(2−2)〜(2−5)を得た。ただし、高分子分散剤溶液は、固形分で実施例1と同量を用いた。得られた顔料分散体(2−2)〜(2−5)の評価結果と、顔料分散体(2−2)〜(2−5)を含有する着色組成物の評価結果を表1に示す。
【0055】
【表1】

【0056】
表1から、実施例1〜3の顔料分散体を含有する着色組成物は、比較例1〜2の顔料分散体を含有する着色組成物よりも、現像性及び基板密着性に優れていることが分かる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ジケトピロロピロール系顔料、高分子分散剤、脂肪酸(ポリ)アルキレングリコールモノアルキルエーテルを含有する顔料分散体であって、該高分子分散剤が、アニオン性基及び環状アミド基を含有するグラフトポリマーである、カラーフィルター用赤色顔料分散体。
【請求項2】
前記グラフトポリマーの主鎖が、アニオン性基を有するモノマー由来の構成単位及び環状アミド基を有するモノマー由来の構成単位を含有する、請求項1に記載のカラーフィルター用赤色顔料分散体。
【請求項3】
前記グラフトポリマーの酸価が20〜80KOHmg/gである、請求項1又は2に記載のカラーフィルター用赤色顔料分散体。
【請求項4】
前記グラフトポリマーの側鎖が、(メタ)アクリル酸エステル由来の構成単位を含有する、請求項1〜3のいずれかに記載のカラーフィルター用赤色顔料分散体。
【請求項5】
アニオン性基を有するモノマーが、(メタ)アクリル酸、リン酸(2−メタクリロキシエチル)、及びリン酸ビス(2−メタクリロキシエチル)から選ばれる1種以上である、請求項1〜4のいずれかに記載のカラーフィルター用赤色顔料分散体。
【請求項6】
環状アミド性基を有するモノマーがビニルピロリドンである、請求項1〜5のいずれかに記載のカラーフィルター用赤色顔料分散体。
【請求項7】
前記グラフトポリマーが、側鎖にアニオン性基を有する請求項1〜6のいずれかに記載のカラーフィルター用赤色顔料分散体。
【請求項8】
側鎖のアニオン性基が多塩基酸無水物由来である、請求項7に記載のカラーフィルター用赤色顔料分散体。
【請求項9】
前記グラフトポリマーが、水酸基を有する、請求項1〜8のいずれかに記載のカラーフィルター用赤色顔料分散体。
【請求項10】
請求項1〜9のいずれかに記載のカラーフィルター用赤色顔料分散体を含有するカラーフィルター用着色組成物。
【請求項11】
ジケトピロロピロール系顔料、高分子分散剤、脂肪酸(ポリ)アルキレングリコールモノアルキルエーテルを含有する混合物を分散して、顔料分散体(1)を得る工程(1)を有するカラーフィルター用赤色顔料分散体の製造方法であって、該高分子分散剤が、アニオン性基及び環状アミド基を含有するグラフトポリマーである、カラーフィルター用赤色顔料分散体の製造方法。
【請求項12】
工程(1)で得られた顔料分散体(1)から、顔料に未吸着の高分子分散剤を除去して、顔料分散体(2)を得る工程(2)を有する、請求項11記載のカラーフィルター用赤色顔料分散体の製造方法。

【公開番号】特開2012−98381(P2012−98381A)
【公開日】平成24年5月24日(2012.5.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−244231(P2010−244231)
【出願日】平成22年10月29日(2010.10.29)
【出願人】(000000918)花王株式会社 (8,290)
【Fターム(参考)】