説明

カラーフィルタ製造用着色組成物

【課題】6色カラーフィルタを製造するのに適したマゼンタ色の着色組成物を提供すること。
【解決手段】少なくとも顔料、バインダー成分および溶剤を含むカラーフィルタ製造用マゼンタ色着色組成物であって、赤色顔料としてC.I.ピグメントレッド177を顔料全体に対して55重量%以上、および紫色顔料としてC.I.ピグメントバイオレット23を含む、マゼンタ色着色組成物。より好ましくは、赤色顔料としてさらにC.I.ピグメントレッド254を含む。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液晶表示装置などに用いられるカラーフィルタ製造用の着色組成物、該着色組成物を用いて製造したカラーフィルタ、および該カラーフィルタを用いて製造した液晶表示装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、液晶表示装置はパソコン用液晶モニターとして、あるいは液晶テレビとしての需要が急拡大している。また需要拡大と共に、より高輝度かつ高コントラスト比であり、色再現性に優れた高性能の液晶表示装置が求められている。
【0003】
一般にカラー液晶表示装置(101)は、図3(A)に示すように、カラーフィルタ1とTFTアレイ基板等の電極基板2とを対向させて1〜10μm程度の間隙部3を設け、当該間隙部3内に液晶化合物Lを充填し、その周囲をシール材4で密封した構造をとっている。カラーフィルタ1は、透明基板5上に、画素を構成する各色の領域間の境界部を遮光するために所定のパターンに形成されたブラックマトリックス層6と、複数の色を所定順序に配列した画素部7と、保護膜8と、透明電極膜9とが、透明基板に近い側からこの順に積層された構造をとっている。また、カラーフィルタ1及びこれと対向する電極基板2の内面側には配向膜10が設けられる。さらに間隙部3には、カラーフィルタ1と電極基板2の間のセルギャップを一定且つ均一に維持するために、スペーサーが設けられる。スペーサーとしては一定粒子径を有するパール11を分散させるか、または、図3(B)に示すようにセルギャップに対応する高さを有する柱状スペーサー12を、カラーフィルタの内面側であってブラックマトリックス層6が形成されている位置と重なり合う領域に形成する。そして、各色に着色された画素それぞれ又はカラーフィルタの背後にある液晶層の光透過率を制御することによってカラー画像が得られる。
【0004】
カラー液晶表示装置には、通常、赤(R)、緑(G)、青(B)の3原色の画素を有するカラーフィルタが用いられている。しかしながら、上記3原色で表現可能な色はxy色度図上におけるRGBの色三角形により規定される領域内の色に限られてしまうため、従来のカラーフィルタは微妙な色合いに対して自然な発色を提供することが難しいという問題を有していた。
【0005】
このような問題に対し、例えば特許文献1ではRGBに加えてシアン(C)、マゼンタ(M)、イエロー(Y)を用いた6色の領域を有する画素を備えたカラーフィルタ(6色カラーフィルタ)を使用することにより色再現性を向上させることを提案している。しかし、カラーフィルタの製造において広く用いられているフォトリソグラフィ法により6色カラーフィルタを製造する場合、塗工液の塗布、露光、現像のサイクルを計6回繰り返すこととなり、工程が煩雑となりコスト高につながるという問題がある。
【0006】
ところが、近年フォトリソグラフィ法に代わって、特許文献2に記載されているような、着色インクを基板上に吹き付けることでカラーフィルタの各色の着色層を形成するインクジェット法が開発され、実用化されている。インクジェット法によれば、6色の領域であっても一度に形成することが可能であるため、コストを抑えつつ6色カラーフィルタを製造することが可能になると考えられる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2005−62833号公報
【特許文献2】特開平9−21910号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
6色カラーフィルタを製造するにあたって、該6色中マゼンタ色の着色層は、他の5色とのバランスが良い分光スペクトルを有し、かつ高いコントラスト比を有する、という条件を満たす必要がある。従って、そのような要件を満たす、6色カラーフィルタにおけるマゼンタの着色層を製造するのに適したマゼンタ色の着色組成物が求められている。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者らはカラーフィルタ製造用のマゼンタ色の着色組成物について研究を重ねた結果、特定の顔料を特定の配合比で混合することにより、6色カラーフィルタを製造するのに適した特性を備えたマゼンタ色着色組成物を調製することに成功した。本発明の要旨は以下のとおりである。
(1)少なくとも顔料、バインダー成分および溶剤を含むカラーフィルタ製造用マゼンタ色着色組成物であって、赤色顔料としてC.I.ピグメントレッド177を顔料全体に対して55重量%以上、および紫色顔料としてC.I.ピグメントバイオレット23を含む、前記マゼンタ色着色組成物。
(2)赤色顔料としてさらにC.I.ピグメントレッド254を含む、(1)に記載のマゼンタ色着色組成物。
(3)C.I.ピグメントレッド254をC.I.ピグメントレッド177の50重量%以下の量で含む、(2)に記載のマゼンタ色着色組成物。
(4)赤、緑、青、シアン、黄、マゼンタの各色の領域を有する6色カラーフィルタであって、マゼンタ色の領域を構成する着色層に含まれる顔料が、赤色顔料としてC.I.ピグメントレッド177を該顔料全体に対して55重量%以上、および紫色顔料としてC.I.ピグメントバイオレット23を含む、前記6色カラーフィルタ。
(5)マゼンタ色の領域を構成する着色層に含まれる顔料が、赤色顔料としてさらにC.I.ピグメントレッド254を含む、(4)に記載の6色カラーフィルタ。
(6)マゼンタ色の領域を構成する着色層に含まれる顔料が、C.I.ピグメントレッド254をC.I.ピグメントレッド177の50重量%以下の量で含む、(5)に記載の6色カラーフィルタ。
(7)表示側基板と液晶駆動側基板とを対向させ、両者の間に液晶を封入してなる液晶表示装置であって、前記表示側基板が(4)〜(6)のいずれかに記載のカラーフィルタからなる液晶表示装置。
【発明の効果】
【0010】
本発明のカラーフィルタ製造用マゼンタ色着色組成物を用いることで、分光特性、特に輝度に優れた、6色カラーフィルタにおけるマゼンタ色着色層を作製することができる。また、本発明のマゼンタ色着色組成物によれば、顔料の種類および配合を最適化したことにより、該着色組成物により形成した着色層中の顔料濃度を抑えて適切なバインダー成分配合量を確保することが可能となるため、形成した着色層の耐性を高めることができる。さらに、本発明のマゼンタ色着色組成物を他の色の着色組成物と組み合わせて用いることで、色再現性に優れた液晶表示装置用6色カラーフィルタを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】実施例1〜4のインクジェットインク組成物を用いて作製した着色層を測定して得られた分光スペクトルである。
【図2】比較例1〜3のインクジェットインク組成物を用いて作製した着色層を測定して得られた分光スペクトルである。
【図3】液晶表示装置の一例の模式的断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
(マゼンタ色着色組成物)
一実施形態において、本発明は液晶表示装置などに用いられるカラーフィルタ製造用のマゼンタ色着色組成物に関する。本発明のマゼンタ色着色組成物は、特に6色カラーフィルタの製造においてマゼンタ色着色層を形成するのに優れている。ただし、本発明のマゼンタ色着色組成物を6色カラーフィルタ以外のカラーフィルタ、例えばCMYの3色を用いた3色カラーフィルタの製造に用いてもよい。なお、本発明のマゼンタ色着色組成物は、液晶表示装置用カラーフィルタの製造のみならず、例えばCCDイメージセンサなどのイメージセンサ用カラーフィルタの製造にも用いることができる。
【0013】
本発明のマゼンタ色着色組成物は、インクジェット法やフォトリソグラフィ法といった、当業者に知られたカラーフィルタの製造法において用いられる。すなわち、本発明のマゼンタ色着色組成物は、例えばインクジェット法においてはインクジェットインクであり、フォトリソグラフィ法においてはレジストである。本発明のマゼンタ色着色組成物は、特にインクジェット法によるカラーフィルタの製造に適している。
【0014】
本発明のマゼンタ色着色組成物は、少なくとも顔料(特に着色顔料)、バインダー成分および溶剤を含む。顔料は、赤色顔料としてC.I.ピグメントレッド177を顔料全体に対して55重量%以上、好ましくは55〜95重量%、より好ましくは60〜95重量%含み、かつ紫色顔料としてC.I.ピグメントバイオレット23を含む。顔料は、紫色顔料としてC.I.ピグメントバイオレット23を顔料全体に対して好ましくは45重量%以下、より好ましくは5〜45重量%含む。顔料にC.I.ピグメントバイオレット23を加えることにより、着色組成物の分光スペクトルにおいて450nm以下の透過率を上げることができる。また、C.I.ピグメントバイオレット23は着色力が強いため、これを加えることにより着色組成物全体における顔料濃度を抑え、バインダー樹脂含有量を多くすることが可能となる。そして、着色組成物におけるバインダー樹脂含有量を多くすることにより、形成した着色層の耐熱性や耐光性などの耐性を高めることができる。一方、C.I.ピグメントバイオレット23を加えすぎると、着色組成物中における顔料の分散安定性の確保が難しくなり、さらに粘度も上がってしまうため、インクジェット法におけるインクジェットインクとして用いる際に吐出安定性が悪くなる場合があるが、C.I.ピグメントレッド177を55重量%以上含むことで、分散安定性および吐出安定性に問題が生じるのを回避することができる。なお、紫色顔料としてのC.I.ピグメントバイオレット23は、顔料全体に対して5〜40重量%の量で含まれていることが特に好ましい。
【0015】
顔料は、赤色顔料としてさらにC.I.ピグメントレッド254を含むことが好ましい。赤色顔料としてC.I.ピグメントレッド177にC.I.ピグメントレッド254を組み合わせて用いることで、より透明性に優れたマゼンタ色着色層を形成することが可能となる。カラーフィルタにおける着色層の透明性は輝度に関係しており、透明性を高めることにより高い輝度が得られる。また、C.I.ピグメントレッド254はC.I.ピグメントレッド177の50重量%以下、特に40重量%以下、とりわけ30重量%以下の量で用いることがより好ましい。このような量のC.I.ピグメントレッド254を配合することで、色性能や分光スペクトルの面で特にバランスが取れたマゼンタ色着色層を形成することが可能となる。なお、本発明のマゼンタ色着色組成物は、適切であるならば上述した以外の公知の着色顔料、染料あるいは体質顔料(酸化チタン、硫酸バリウム、炭酸カルシウム、亜鉛華、硫酸鉛など)などを含んでいてもよい。顔料は、本発明のマゼンタ色着色組成物の固形分全量に対して1〜50重量%、特に10〜30重量%の割合で配合するのが好ましい。
【0016】
上記の条件を満たす、本発明のマゼンタ色着色組成物における好ましい顔料の配合例は以下のとおりである。なお、数値は着色組成物に含まれる顔料全体に対する重量比を示す。
(1)配合例1
C.I.ピグメントレッド 177 :55〜95重量%
C.I.ピグメントバイオレット 23 :5〜45重量%
C.I.ピグメントレッド 254 :0重量%
(2)配合例2
C.I.ピグメントレッド 177 :55〜95重量% …(a)
C.I.ピグメントバイオレット 23 :5〜45重量%
C.I.ピグメントレッド 254 :(a)の50重量%以下
(3)配合例3
C.I.ピグメントレッド 177 :60〜80重量%
C.I.ピグメントバイオレット 23 :10〜20重量%
C.I.ピグメントレッド 254 :10〜20重量%
【0017】
顔料は、顔料分散剤を用いることにより、溶剤中に良好に分散させることができる。すなわち、本発明のマゼンタ色着色組成物は、顔料、バインダー成分および溶剤に加えて顔料分散剤を含むことが好ましい。顔料分散剤としては、例えば、カチオン系、アニオン系、ノニオン系、両性系、シリコーン系、フッ素系等の界面活性剤を使用できる。当業者であれば、上述した顔料を良好に分散させることができる公知の顔料分散剤を適宜選択することができる。顔料分散剤は、顔料に対して30〜80重量%、特に50〜70重量%用いることが好ましい。
【0018】
本発明のマゼンタ色着色組成物は、着色層の基板に対する密着性を付与すること、および着色層の耐性を高めることを目的として、バインダー成分を含む。当業者であれば、公知のバインダー成分を適宜選択して使用することができる。バインダー成分としては、例えば可視光線、紫外線、電子線等により重合硬化させることができる光硬化性のバインダー成分や、加熱により重合硬化させることができる熱硬化性のバインダー成分のような、重合硬化可能なバインダー成分を用いることができる。
【0019】
熱硬化性バインダー成分としては、1分子中に熱硬化性官能基を2個以上有する化合物と硬化剤の組み合わせが通常用いられ、さらに、熱硬化反応を促進できる触媒を添加してもよい。熱硬化性官能基としてはエポキシ基が好ましく用いられる。また、これらにそれ自体は重合反応性のない重合体をさらに用いてもよい。
【0020】
1分子中に熱硬化性官能基を2個以上有する化合物として、通常は、1分子中にエポキシ基2個以上を有するエポキシ化合物が用いられる。1分子中にエポキシ基2個以上を有するエポキシ化合物は、エポキシ基を2個以上、好ましくは2〜50個、より好ましくは2〜20個を1分子中に有するエポキシ化合物(エポキシ樹脂と称されるものを含む)である。エポキシ基は、オキシラン環構造を有する構造であればよく、例えば、グリシジル基、オキシエチレン基、エポキシシクロヘキシル基等を示すことができる。エポキシ化合物としては、カルボン酸により硬化しうる公知の多価エポキシ化合物を挙げることができ、このようなエポキシ化合物は、例えば、新保正樹編「エポキシ樹脂ハンドブック」日刊工業新聞社刊(昭和62年)等に広く開示されており、これらを用いることが可能である。
【0021】
熱硬化性バインダー成分としては、比較的分子量の高い重合体と、比較的分子量の低い化合物とを併用することが好ましい。これは、着色層の耐性を高めると同時に、着色層の架橋密度を高くし、かつ着色組成物の粘度を低く抑えて取り扱いやすくするためである。熱硬化性バインダー成分としては具体的には、特開2006−106503号公報の[0132]〜[0160]段落に記載されているようなバインダー成分を用いることができる。
【0022】
紫外線、電子線等の光により重合硬化させることができる光硬化性樹脂を含むバインダー成分としては、着色層の耐性を高めるために、比較的分子量の高い重合体を含むことが好ましい。ここでいう比較的分子量が高いとは、いわゆるモノマーやオリゴマーよりも分子量が高いことをいい、重量平均分子量5,000以上を目安にすることができる。比較的分子量の高い重合体としては、それ自体は重合反応性のない重合体、及び、それ自体が重合反応性を有する重合体のいずれを用いてもよく、また、2種類以上を組み合わせて用いてもよい。そして、比較的分子量の高い重合体を主体とし、必要に応じて、光重合性官能基を2つ以上有する多官能モノマーやオリゴマー、光重合性官能基を1つ有する単官能のモノマーやオリゴマー、光により活性化する光重合開始剤、及び、増感剤などを配合して、光硬化性バインダー成分を構成する。
【0023】
それ自体は重合反応性のない重合体を比較的分子量の高い重合体として用いる場合には、バインダー成分に、光重合性官能基を2つ以上有する多官能モノマー、オリゴマーのような多官能重合性成分を配合する。この場合、バインダー成分内において、多官能重合性成分が光照射によりそれ自体が自発的に重合するか、或いは、光照射により活性化した光重合開始剤等の他の成分の作用により重合して塗工膜中にネットワーク構造を形成し、当該ネットワーク構造内に重合反応性のない樹脂や顔料などの成分が包み込まれて硬化する。光硬化性バインダー成分としては具体的には、特開2006−106503号公報の[0066]〜[0128]段落に記載されているようなバインダー成分を用いることができる。
【0024】
本発明のマゼンタ色着色組成物において使用することができるバインダー成分の具体例としては、例えばグリシジルメタクリレート−メチルメタクリレート共重合体、グリシジルメタクリレート−シクロヘキシルメタクリレート共重合体、エピコート828、エピコート157S70、エピコート154(ジャパンエポキシレジン社製)、トリメリット酸、1,2,4−シクロヘキサントリカルボン酸、およびこれらの2以上の組み合わせが挙げられる。硬化した着色層に十分な密着性、強度、硬度を付与するためには、本発明のマゼンタ色着色組成物の顔料やその他の成分を含めた固形分全量に占めるバインダー成分の合計割合を50〜85重量%、特に60〜75重量%とするのが好ましい。なお、フォトリソグラフィ法におけるレジストとして使用する場合、本発明のマゼンタ色着色組成物は、レジストとして機能するために必要となる光硬化性バインダー成分を含む。
【0025】
本発明のマゼンタ色着色組成物は、顔料およびバインダー成分などを分散あるいは溶解させる溶剤を含む。本発明で使用させる溶剤は、顔料およびバインダー成分などの固形分を好適に分散あるいは溶解できるものであれば、特に限定されるものではない。溶剤の具体例としては、エチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールジエチルエーテルのようなグリコールエーテル類;エチレングリコールモノメチルエーテルアセテートのようなグリコールエーテルエステル類;ジエチレングリコールモノメチルエーテルのようなグリコールオリゴマーエーテル類;ジエチレングリコールモノメチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノブチルエーテルアセテートのようなグリコールオリゴマーエーテルエステル類;酢酸エチル、安息香酸プロピルのような脂肪族又は芳香族エステル類;炭酸ジエチルのようなジカルボン酸ジエステル類;3−メトキシプロピオン酸メチル、3−エトキシプロピオン酸エチルのようなアルコキシカルボン酸エステル類;アセト酢酸エチルのようなケトカルボン酸エステル類;エタノール、イソプロパノール、フェノールのようなアルコール類又はフェノール類;ジエチルエーテル、アニソールのような脂肪族又は芳香族エーテル類;2−エトキシエタノール、1−メトキシ−2−プロパノールのようなアルコキシアルコール類;ジエチレングリコール、トリプロピレングリコールのようなグリコールオリゴマー類;2−エトキシエチルアセテートのようなアルコキシアルコールエステル類;アセトン、メチルイソブチルケトンのようなケトン類、あるいはこれらの2以上の組み合わせが挙げられる。溶剤は、着色組成物の全量に対して40〜95重量%、特に70〜95重量%の割合で用いるのが好ましい。
【0026】
(6色カラーフィルタ)
一実施形態において、本発明は赤、緑、青、シアン、黄、マゼンタの各色の領域を備えた6色カラーフィルタに関する。本発明の6色カラーフィルタは、マゼンタ色の領域を構成する着色層に含まれる顔料が、赤色顔料としてC.I.ピグメントレッド177を顔料全体に対して55重量%以上、好ましくは55〜95重量%、より好ましくは60〜95重量%含み、かつ紫色顔料としてC.I.ピグメントバイオレット23を含む。マゼンタ色の領域を構成する着色層に含まれる顔料は、紫色顔料としてのC.I.ピグメントバイオレット23を、顔料全体に対して45重量%以下、特に5〜45重量%、とりわけ5〜40重量%含んでいることが好ましい。また、マゼンタ色の領域を構成する着色層に含まれる顔料は、赤色顔料としてさらにC.I.ピグメントレッド254を含むことが好ましく、C.I.ピグメントレッド254は、C.I.ピグメントレッド177の50重量%以下、特に40重量%以下、とりわけ30重量%以下の量で含まれていることが特に好ましい。このようなマゼンタ色の領域を構成する着色層は、上述した本発明に係るカラーフィルタ製造用マゼンタ色着色組成物を用いて形成することができる。
【0027】
本発明の6色カラーフィルタにおいては、少なくとも赤、緑、青、シアン、黄、マゼンタの各色の領域を備えていればよく、該各色の領域は任意の形態、例えばモザイク型、ストライプ型、トライアングル型、4画素配置型などの形態で配列することができる。本発明の6色カラーフィルタは、RGBの3原色にCMYの3色を加えた6色としたことで、従来のカラーフィルタよりも優れた色再現性を実現することができる。
【0028】
本発明の6色カラーフィルタは、マゼンタ色の領域が、波長500nmにおいて透過率が5%となる膜厚において、(1)波長400nm以上450nm以下で透過率10%以上、(2)波長530〜570nmで透過率3%以下、(3)波長600nm以上700nm以下で透過率15%以上、という3つの条件を全て満たす分光特性を備えることが好ましい。マゼンタ色では波長450nm以下の透過率は色にはあまり影響しないため、波長450nm以下での透過率が10%以上あれば、十分な輝度を得ることができる。一方、波長500〜600nm付近、特に波長530〜570nm付近は色に影響を与える波長域であり、波長530〜570nmで透過率3%以下、波長600nm以上で透過率が15%以上であれば、6色カラーフィルタにおいて望ましいマゼンタ色の着色層となる。
【0029】
また、本発明の6色カラーフィルタは、特にマゼンタ色の領域がコントラスト比においても優れていることを特徴とする。コントラスト比は、例えば2枚の偏光板の間にカラーフィルタを置き、バックライトからの光が2枚の偏光板を通るパラレルニコル時の輝度と、バックライトからの光が2枚目の偏光板により遮断されるクロスニコル時の輝度をそれぞれ測定することにより求めることができる。なお、コントラスト比は、壷坂電機社製コントラスト測定装置CT−10(光源:冷陰極管F10ランプ、輝度計:コニカミノルタセンシング社製LS−100、偏光板:ルケオ社製ポラックス38S)を使用し、上記の方法に沿って測定した場合に、1500以上であることが好ましい。
【0030】
本発明の6色カラーフィルタは、インクジェット法やフォトリソグラフィ法といった、当業者に知られたカラーフィルタの製造法により製造することができる。しかしながら、本発明の6色カラーフィルタは、製造工程の簡素化の観点から、6色の着色層を一度に形成することが可能であるインクジェット法により製造することが好ましい。
【0031】
インクジェット法によるカラーフィルタの製造法の一例を以下に説明する。まず、カラーフィルタの透明基板を準備する。次に、透明基板の一面側の各色の領域間の境界となる部分にブラックマトリックス層を形成する。次に、フッ素化合物を導入ガスとして用いてプラズマを照射し、ブラックマトリックス上のみを撥インク化する。次に、各色のインクジェットインクを用意し、透明基板の表面に、ブラックマトリックス層のパターンにより画成された各色の着色層形成領域に、各色の着色層形成用インクジェットインクをインクジェット方式によって選択的に付着させてインク層を形成する。次に、各色のインク層を乾燥させ、必要に応じてプリベークした後、適宜露光及び/又は加熱することにより硬化させる。インク層を適宜露光及び/又は加熱すると、インクジェットインク中に含まれる硬化性樹脂の架橋要素が架橋反応を起こし、インク層が硬化して着色層が形成される。次に、透明基板の着色層を形成した側に保護膜を形成する。保護膜は、透明な樹脂組成物を用いて、スピンコーター、ロールコーター、スプレイ、印刷等の方法により形成できる。また、保護膜上の透明電極は、酸化インジウムスズ(ITO)、酸化亜鉛(ZnO)、酸化スズ(SnO)等、およびそれらの合金等を用いて、スパッタリング法、真空蒸着法、CVD法等の一般的な方法により形成され、必要に応じてフォトレジストを用いたエッチング又は治具の使用により所定のパターンとすることができる。
【0032】
本発明の6色カラーフィルタは、液晶表示装置の製造に好適に用いることができる。また、本発明の6色カラーフィルタは、液晶表示装置のみならず、例えばCCDイメージセンサなどの製造にも用いることができる。
【0033】
(液晶表示装置)
一実施形態において、本発明は6色カラーフィルタを用いて製造した液晶表示装置に関する。本発明の液晶表示装置は、上述した本発明の6色カラーフィルタからなる表示側基板と液晶駆動側基板を対向させ、両者の間に液晶を封入して組み立てることにより製造される。例えば、上記のようにして製造された6色カラーフィルタからなる表示側基板と液晶駆動側基板(TFTアレイ基板)を対向させ、両基板の内面側周縁部をシール剤により接合すると、両基板は所定距離のセルギャップを保持した状態で貼り合わされる。そして、基板間の間隙部に液晶を満たして密封することにより、本発明の液晶表示装置である、アクティブマトリックス方式のカラー液晶表示装置が得られる。液晶表示装置におけるその他の製造方法及び構成は、通常の用いられる方法及び構成とすることができる。本発明の液晶表示装置は、例えば図3(A)または(B)に示したような構成とすることができる。本発明の液晶表示装置としては、上述した6色カラーフィルタを有するものであれば特に限定はされず、公知の液晶表示装置を挙げることができる。具体的には、IPS(In-Plane Switching)型、STN(Super Twisted Nematic)型、TN(Twisted Nematic)型、強誘電性型、反強誘電性型、MVAモード型等を挙げることができる。
【実施例】
【0034】
以下、実施例を用いて本発明をより詳細に説明するが、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。
[1]略称など
本実施例において使用する化合物の名称とその略称を以下に示す。
BCA:ジエチレングリコールモノブチルエーテルアセテート(別名ブチルカルビトールアセテート)
EEP:3−エトキシプロピオン酸エチル
GMA:グリシジルメタクリレート
MMA:メチルメタクリレート
パーブチルO(商品名、日油(株)製):t−ブチルパーオキシ−2−エチルヘキサノエート
PR254:C.I.ピグメントレッド254
PR177:C.I.ピグメントレッド177
PV23:C.I.ピグメントバイオレット23
なお、本実施例において記載する重量平均分子量は、GPC(ゲル浸透クロマトグラフィー)で測定したポリスチレン換算の値である。
【0035】
[2]インクジェットインク組成物の調製
製造例1:バインダー性エポキシ化合物の合成
温度計、還流冷却器、攪拌機、及び滴下ロートを備えた4つ口フラスコに、表1に示す配合割合に従って、水酸基を含有しない溶剤BCAを40.7重量部仕込み、攪拌しながら加熱して140℃に昇温した。次いで、140℃の温度で滴下成分であるGMA10量部、MMA40重量部、及びパーブチルO(重合開始剤)4.7重量部の混合物を、2時間かけて滴下ロートより等速滴下した。滴下終了後、110℃に降温し、追加触媒成分としてパーブチルO0.3重量部とBCA4.3重量部の混合物を添加し、110℃の温度を2時間保ったところで反応を終了することにより、共重合比がGMA:MMA=20:80、重量平均分子量が20,000のバインダー性エポキシ化合物(GMA−MMA共重合体)を得た。
【0036】
【表1】

【0037】
製造例2:顔料分散液の調製
各顔料、顔料分散剤(Disperbyk2000、ビックケミー・ジャパン(株)製)、及び溶剤を表2に示す割合で混合し、それぞれに直径0.3mmのジルコニアビーズを500重量部加え、ペイントシェーカー(浅田鉄工(株)製)を用いて4時間分散し、PR254顔料分散液、PR177顔料分散液、及びPV23顔料分散液を調製した。
【0038】
【表2】

【0039】
製造例3:熱硬化性バインダー成分の調製
サンプル瓶にテフロン(登録商標)被覆した回転子を入れ、マグネチックスターラーに設置した。このサンプル瓶の中に、表3に示す割合に従い、上記製造例1で得たバインダー性エポキシ化合物(固形分30重量%のBCA溶液)、及び多官能エポキシ樹脂(商品名エピコート154、ジャパンエポキシレジン(株)製)などを加え、室温で十分に攪拌、溶解し、次いで、粘度調整のために希釈溶剤を加えて攪拌、溶解した後、これを濾過して熱硬化性バインダー成分を得た。
【0040】
【表3】

【0041】
製造例4:インクジェットインク組成物の調製
表4に示す配合割合で、上記製造例2で調製したPR254顔料分散液、PR177顔料分散液、PV23顔料分散液、製造例3で調製したバインダー成分及び、溶剤を十分に混合し、マゼンタ色インクジェットインク組成物を調製した。
【0042】
【表4】

【0043】
表4の配合割合に従って調製した各マゼンタ色インクジェットインク組成物の全体としての組成を整理したものを表5に示す。
【0044】
【表5】

【0045】
[3]インクジェットインク組成物の評価
以下に記載した方法に従って、実施例1〜4および比較例1〜3のインクジェットインク組成物の分散安定性、分光特性、輝度およびコントラスト性能をそれぞれ評価した。
(1)分散安定性
各インクジェットインク組成物の調製直後、および23℃保存で1ヵ月後の粘度を測定した。粘度は山一電機社製回転振動型粘度計ビスコメイトUM−1Gで23℃にて測定した。安定性の評価基準は以下の通りである。
A:1ヶ月後に0.3mPa・s未満の粘度増加
B:1ヶ月後に0.6mPa・s未満の粘度増加
C:1ヶ月後に0.6mPa・s以上の粘度増加
【0046】
(2)分光特性および輝度
まず、各インクジェットインク組成物を用いて、以下のようにして評価用の着色層を作製した。
厚み0.7mmのガラス基板(NHテクノグラス社製NA35)上に、スピンコートによりインクジェットインク組成物を塗布し、ホットプレート上で80℃、5分間、150Torrの条件で減圧乾燥し、引き続きホットプレート上で200℃、10分間、さらにクリーンオーブン内で240℃、40分間加熱硬化させてマゼンタ色の着色層を形成した。
【0047】
上記着色層の分光測定を、顕微分光光度計(商品名「OSP200」、オリンパス社製)を用いて行った。得られた分光スペクトルを図1(実施例1〜4)および図2(比較例1〜3)にそれぞれ示す。分光スペクトルの評価基準は以下のとおりである。
条件:波長500nmの時の透過率が5%となる膜厚の着色層において
(a)波長400nm以上450nm以下で、透過率10%以上
(b)波長530nm以上570nm以下で、透過率3%以下
(c)波長600nm以上700nm以下で、透過率15%以上
A:(a)〜(c)の条件を全て満たす
B:(b)のみ満たさない
C:上記以外
【0048】
実施例1〜4および比較例1〜3の分光スペクトルのうち、比較例1のスペクトルは波長450nmにおいて透過率10%を下回ったため「C」と評価した。また、比較例3のスペクトルは波長530nm以上570nm以下で透過率3%を上回ったが、上記(a)および(c)の条件は満たしたため「B」と評価した。
【0049】
さらに、分光スペクトルから、C光源を用いてCIEのXYZ表色系におけるxy色度座標を計算し、輝度を評価した。輝度の評価基準は以下のとおりである。
条件:波長500nmの時の透過率が5%となる膜厚の着色層において、
Y値が
A:10以上
B:8以上
C:8未満
【0050】
(3)コントラスト性能
上記(2)で作製したマゼンタ色の着色層のコントラスト値を、壷坂電機社製コントラスト測定装置CT−10(光源:冷陰極管F10ランプ、輝度計:コニカミノルタセンシング社製LS−100、偏光板:ルケオ社製ポラックス38S)を使用して測定した。なお本実施例におけるコントラスト値は、2枚の偏光板の間に着色層を形成したガラス基板を置き、バックライトからの光が2枚の偏光板を通るパラレルニコル時の輝度と、バックライトからの光が2枚目の偏光板により遮断されるクロスニコル時の輝度をそれぞれ測定し、パラレルニコル時の輝度をクロスニコル時の輝度で割った値である。ここでは、Airのパラレルニコル時の輝度が1000cd/mとなるように光源の明るさを調節し、Airのクロスニコル時の輝度を0.1cd/mになるように偏光板の角度を調節して、2枚の偏光板の間に何もいれていないブランクでのコントラスト値が10000となるよう設定して測定を行った。コントラスト性能の評価基準は以下のとおりである。
条件:波長500nmの時の透過率が5%となる膜厚の着色層において
A:2500以上
B:1500以上
C:1500未満
以上の評価の結果を表6にまとめた。
【0051】
【表6】

【0052】
分散安定性は、インクジェットインクにおいて、インクジェットパターニング時の吐出安定性及び適切な輝度・コントラスト性能を確保する為に求められる要件である。評価結果より、V23の使用量を50重量%未満(45重量%以下程度)とすることにより、良好な分散安定性が得られることがわかった。
【0053】
輝度およびコントラスト比は、高性能な液晶表示装置等を製造するために、カラーフィルタを構成する着色層に求められる要件である。評価結果より、V23の使用量を50重量%未満(45重量%以下程度)とすることにより、透明性に優れ、高い輝度を備えた着色層が形成できることがわかった。また、R177の使用量を50重量%より多くすること(55重量%以上程度)とすることにより、高いコントラスト値が得られることがわかった。
【0054】
分光スペクトルは、6色カラーフィルタにおけるマゼンタ色着色層に要求される波長と透過率の関係性が満たされているかどうかを判断するために測定した。分光スペクトルはコントラスト比とトレードオフの関係にあるが、評価結果より、実施例1〜4の顔料の配合であれば、所定のコントラスト値を確保しつつ、6色カラーフィルタにおけるマゼンタ色着色層を形成するのに適した分光スペクトルを実現できることがわかった。
【符号の説明】
【0055】
1 カラーフィルタ
2 電極基板
3 間隙部
4 シール材
5 透明基板
6 ブラックマトリックス層
7(7R、7G、7B) 画素
8 保護膜
9 透明電極膜
10 配向膜
11 パール
12 柱状スペーサー
101、102 カラー液晶表示装置
104 カラーフィルタ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも顔料、バインダー成分および溶剤を含むカラーフィルタ製造用マゼンタ色着色組成物であって、赤色顔料としてC.I.ピグメントレッド177を顔料全体に対して55重量%以上、および紫色顔料としてC.I.ピグメントバイオレット23を含む、前記マゼンタ色着色組成物。
【請求項2】
赤色顔料としてさらにC.I.ピグメントレッド254を含む、請求項1に記載のマゼンタ色着色組成物。
【請求項3】
C.I.ピグメントレッド254をC.I.ピグメントレッド177の50重量%以下の量で含む、請求項2に記載のマゼンタ色着色組成物。
【請求項4】
赤、緑、青、シアン、黄、マゼンタの各色の領域を有する6色カラーフィルタであって、マゼンタ色の領域を構成する着色層に含まれる顔料が、赤色顔料としてC.I.ピグメントレッド177を該顔料全体に対して55重量%以上、および紫色顔料としてC.I.ピグメントバイオレット23を含む、前記6色カラーフィルタ。
【請求項5】
マゼンタ色の領域を構成する着色層に含まれる顔料が、赤色顔料としてさらにC.I.ピグメントレッド254を含む、請求項4に記載の6色カラーフィルタ。
【請求項6】
マゼンタ色の領域を構成する着色層に含まれる顔料が、C.I.ピグメントレッド254をC.I.ピグメントレッド177の50重量%以下の量で含む、請求項5に記載の6色カラーフィルタ。
【請求項7】
表示側基板と液晶駆動側基板とを対向させ、両者の間に液晶を封入してなる液晶表示装置であって、前記表示側基板が請求項4〜6のいずれか1項に記載のカラーフィルタからなる液晶表示装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2011−75693(P2011−75693A)
【公開日】平成23年4月14日(2011.4.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−225263(P2009−225263)
【出願日】平成21年9月29日(2009.9.29)
【出願人】(000002897)大日本印刷株式会社 (14,506)
【出願人】(000183923)株式会社DNPファインケミカル (268)
【Fターム(参考)】