説明

カリックスアレーン化合物含有分散剤または可溶化剤

カリックスアレーンを構成するフェノール性水酸基中、(A)少なくとも1つは置換されておらず、(B)少なくとも1つは1もしくは2以上のアルキレンオキシ基からなる基及び/または炭化水素基を含む、総炭素数が10以上である基で置換されている特定のカリックスアレーン化合物を含有することを特徴とする、分散剤または可溶化剤を用いることにより、有機マトリクス(有機溶媒など)に、炭素系材料(フラーレンやカーボンナノチューブなど)、有機顔料(フタロシアニンブルーなど)などを従来と比較してより分散または可溶化することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
本発明は、特定のカリックスアレーン化合物を含有することを特徴とする、分散剤及び可溶化剤に関する。さらに詳しくは、特にフラーレンやカーボンナノチューブなどの炭素系材料やフタロシアニン系顔料、アゾ系顔料、キナクリドン系顔料、アントラキノン系顔料、ジケトピロロピロール系顔料などの有機顔料を有機溶媒、樹脂、潤滑油、油性塗料インキなどの有機マトリクスに分散または可溶化することのできるカリックスアレーン化合物に関するものであり、複合材料、潤滑剤、導電材料、光学材料などの分野に広く利用することができる技術である。
【背景技術】
環状包接化合物であるカリックスアレーンは様々な化合物を包接することができ、包接可能なゲスト化合物の分散剤及び可溶化剤として利用されている。有機マトリクス中での応用例としては、フェノール性水酸基がすべてアシル化されたカリックスアレーン誘導体を樹脂組成物中の金属捕捉剤として利用する例(特許文献1:特表平01−501006号公報)、フェノール性水酸基が修飾されていないか、もしくは修飾されたカリックスアレーン誘導体の結晶性が非常によいことを利用して、その固体(結晶)中に添加剤を複合化させることにより添加剤を均一に分散させる例(特許文献2:特開2001−055469号公報)などがある。後者の例では、水酸基を修飾する側鎖は炭素数10以下が望ましいとされており、これは結晶性を維持するためと考えられる。
カリックスアレーンで包接されうるゲスト化合物として、例えばフラーレンが挙げられる。フラーレンは、1970年に大澤らによりその存在が予測され(非特許文献1:日本化学会著、季刊化学総説「炭素第三の同位体フラーレンの化学」、学会出版センター、1999年11月20日、No.43、p.6−14)、クロトーらにより合成に成功した球状炭素分子の総称で、中でも炭素原子60個がサッカーボール構造に結合した直径約0.7nmのC60が代表的である。フラーレンの特異な形状から、ナノサイズの潤滑剤やベアリングなど、発見当初から様々な応用が期待され、その後の物理化学的な研究が進むにつれて、光増感作用や半導体としての性質を応用した検討が行われている。また製造方法も、発見当初のレーザー照射からアーク放電による生成を経て、最近では燃焼による生成とフラーレンと特異的に包接物を生成するカリックスアレーンによる精製を組みあわせた合成法が確立された。現在の所、フラーレンを工業的に応用した例はほとんどなく研究開発段階にとどまっているが、上記の大量生産によるコストダウンとナノテクノロジーに対する関心の高まりにより、近い将来、工業レベルでの利用が期待されている。
フラーレンの持つ特異な性能を発揮させる場合、例えば分子形状を利用して潤滑剤などとして用いる場合、フラーレン分子は1個1個ばらばらに分散している状態が好ましい。しかしながら、フラーレンは各種溶媒などへの溶解性が低く、例えば、比較的溶解性のよい1−メチルナフタレンに対する溶解度は常温付近で約33mg/ml、よく使用されているトルエンに対しては約3mg/mlであり、炭化水素系溶剤やアルコール系溶剤に至っては非常に溶解しにくく、0.1mg/ml以下である(非特許文献2:篠原久典、斎藤弥八著、「フラーレンの化学と物理」、初版第一刷、名古屋大学出版会、1997年1月15日、p.40−41)。
尚、フラーレン以外の炭素系材料、例えばカーボンナノチューブやグラファイトなども、有機溶媒、樹脂などに単分散させるのが困難であり、優れた分散剤が求められている。
本発明が解決しようとする課題は、例えば、フラーレンやカーボンナノチューブなどの炭素系材料やフタロシアニン系顔料、アゾ系顔料、キナクリドン系顔料、アントラキノン系顔料、ジケトピロロピロール系顔料などの有機顔料を有機溶媒、樹脂、潤滑油などの有機マトリクスに、従来と比較してより分散または可溶化することのできる特定のカリックスアレーン化合物を含有してなる分散剤及び可溶化剤を提供することである。さらに、これら分散剤または可溶化剤を含有してなる潤滑剤を提供することである。
【発明の開示】
本発明者らは上記課題を解決するため鋭意検討した。上記特許文献2記載の例では満足のいく分散性が得られていない原因として、本発明者らは(1)カリックスアレーンのフェノール性水酸基が全て炭素数10以下の側鎖で置換されており、フェノール性水酸基が存在していないため、分散対象である基質表面に対して吸着力が弱いこと、(2)フェノール性水酸基の置換基が炭素数10以下の側鎖である場合、有機マトリクスとの親和性が十分ではないことの2点を考えた。そこでこのような原因を取り除いた特定のカリックスアレーン化合物、即ち、
カリックスアレーンを構成するフェノール性水酸基中、
(A)少なくとも1つは置換されておらず、
(B)少なくとも1つは1もしくは2以上のアルキレンオキシ基からなる基及び/または炭化水素基を含む、総炭素数が10以上である基で置換されている
特定のカリックスアレーン化合物を用いて分散及び可溶化を試みたところ、驚くべきことに、例えば、フラーレンやカーボンナノチューブなどの炭素系材料やフタロシアニン系顔料、アゾ系顔料、キナクリドン系顔料、アントラキノン系顔料、ジケトピロロピロール系顔料などの有機顔料を、有機溶媒、樹脂、潤滑油などの有機マトリクスに、従来と比較してより分散または可溶化することができることを見出し、本発明を完成するに至った。また、これらの分散剤または可溶化剤を含有してなる組成物は潤滑剤としても有用である。
即ち、本発明は以下の通りである。
[1] カリックスアレーンを構成するフェノール性水酸基中、
(A)少なくとも1つは置換されておらず、
(B)少なくとも1つは1もしくは2以上のアルキレンオキシ基からなる基及び/または炭化水素基を含む、総炭素数が10以上である基で置換されている
カリックスアレーン化合物(以下、カリックスアレーン化合物(I)ともいう)を含有することを特徴とする、分散剤または可溶化剤。
[2] カリックスアレーン化合物が、下記一般式(1)または(2):

(式中、R、R、R、R’、R’及びR’は、同一でも異なっていてもよく、それぞれ、水素原子、置換基を有していてもよい鎖状炭化水素基、置換基を有していてもよいアリール基、置換基を有していてもよいアルコキシ基、ハロゲン原子、ニトロ基、アシル基、カルボキシル基、スルホン酸基または置換基を有していてもよいアミノ基を表し、
n個、m個及びl個のR、R及びRは、それぞれ、同一でも異なっていてもよく、
p個、q個、r個及びs個のR’、R’及びR’は、それぞれ、同一でも異なっていてもよく、
p’個、r’個及びs’個のR’、R’及びR’は、それぞれ、同一でも異なっていてもよい;
及びR’は、同一でも異なっていてもよく、それぞれ、置換基を有していてもよい炭素数10〜20のアルキル基または置換基を有していてもよい炭素数9〜20のアルキル−カルボニル基であるか、あるいは式(3):−(RCO)x−R、式(4):−(RO)y−Rまたは式(5):−(CO−R10O)w−COR11(式(3)、式(4)及び式(5)中、R、R及びR10は、同一でも異なっていてもよく、それぞれ、置換基を有していてもよい炭素数1〜20のアルキレン基を表し、R、R及びR11は、同一でも異なっていてもよく、それぞれ、水素原子、アシル基または置換基を有していてもよい炭素数1〜20のアルキル基を表し、x、y及びwは、同一でも異なっていてもよく、それぞれ、1〜200の整数を表す)で表される基(但し、式(3)、式(4)及び式(5)で表される基の総炭素数はそれぞれ10以上である)を表し、
m個のRは、それぞれ、同一でも異なっていてもよく、
s個のR’は、それぞれ、同一でも異なっていてもよく、
s’個のR’は、それぞれ、同一でも異なっていてもよい;
は、置換基を有していてもよい炭素数2〜20のアルキレン基を表し、
q個のRは、それぞれ、同一でも異なっていてもよい;
nは0〜8の整数を表し、mは1〜9の整数を表し、lは1〜9の整数を表し、但し、n+m+lは4〜10の整数を表す;
p及びp’は同一でも異なっていてもよく、それぞれ、0〜7の整数を表し、q、r、r’、s及びs’は同一でも異なっていてもよく、それぞれ、1〜8の整数を表し、但し、p+q+r+s及びp’+q+r’+s’は、同一でも異なっていてもよく、それぞれ、4〜10の整数を表す。)
で表されることを特徴とする、上記[1]の分散剤または可溶化剤(以下、式(1)または(2)で表されるカリックスアレーン化合物を、順に、カリックスアレーン化合物(1)、カリックスアレーン化合物(2)ともいう)。
[3] R及びR’は、同一でも異なっていてもよく、それぞれ、置換基を有していてもよい炭素数10〜20のアルキル基または置換基を有していてもよい炭素数9〜20のアルキル−カルボニル基であるか、あるいは式(3):−(RCO)x−Rまたは式(4):−(RO)y−R(式(3)及び式(4)中、R及びRは、同一でも異なっていてもよく、それぞれ、置換基を有していてもよい炭素数1〜20のアルキレン基を表し、R及びRは、同一でも異なっていてもよく、それぞれ、水素原子、アシル基または置換基を有していてもよい炭素数1〜20のアルキル基を表し、x及びyは、同一でも異なっていてもよく、それぞれ、1〜200の整数を表す)で表される基(但し、式(3)及び式(4)で表される基の総炭素数はそれぞれ10以上である)を表す、上記[2]の分散剤または可溶化剤。
[4] R、R、R、R’、R’及びR’は、同一でも異なっていてもよく、それぞれ、水素原子または置換基を有していてもよい鎖状炭化水素基である、上記[2]または[3]の分散剤または可溶化剤。
[5] 炭素系材料と上記[1]〜[4]のいずれかの分散剤または可溶化剤とからなる炭素系複合物。
[6] 炭素系材料がカーボンブラック、カーボンナノチューブ、グラファイト、炭素繊維、非晶質カーボン及びダイヤモンド粉からなるいずれかであり、当該炭素系材料の表面に上記[1]〜[4]のいずれかの分散剤が作用している、上記[5]の炭素系複合物。
[7] 炭素系材料がフラーレンであり、上記[1]〜[4]のいずれかの可溶化剤に包接されている、上記[5]の炭素系複合物。
[8] 有機顔料と上記[1]〜[4]のいずれかの分散剤または可溶化剤とからなる有機顔料複合物。
[9] 有機顔料がフタロシアニン系顔料、アゾ系顔料、キナクリドン系顔料、ジケトピロロピロール系顔料およびアントラキノン系顔料からなるいずれかであり、当該有機顔料の表面に上記[1]〜[4]のいずれかの分散剤が作用している、上記[8]の有機顔料複合物。
[10] 上記[1]〜[4]のいずれかの分散剤または可溶化剤を含有してなる潤滑剤。
[11] 下記一般式(1’)または(2’):

(式中、R、R、R、R’、R’及びR’は、同一でも異なっていてもよく、それぞれ、水素原子、置換基を有していてもよい鎖状炭化水素基、置換基を有していてもよいアリール基、置換基を有していてもよいアルコキシ基、ハロゲン原子、ニトロ基、アシル基、カルボキシル基、スルホン酸基または置換基を有していてもよいアミノ基を表し、
n個、m個及びl個のR、R及びRは、それぞれ、同一でも異なっていてもよく、
p個、q個、r個及びs個のR’、R’及びR’は、それぞれ、同一でも異なっていてもよく、
p’個、r’個及びs’個のR’、R’及びR’は、それぞれ、同一でも異なっていてもよい;
4a及びR4a’は、同一でも異なっていてもよく、それぞれ、式(3):−(RCO)x−R、式(4):−(RO)y−Rまたは式(5):−(CO−R10O)w−COR11(式(3)、式(4)及び式(5)中、R、R及びR10は、同一でも異なっていてもよく、それぞれ、置換基を有していてもよい炭素数1〜20のアルキレン基を表し、R、R及びR11は、同一でも異なっていてもよく、それぞれ、水素原子、アシル基または置換基を有していてもよい炭素数1〜20のアルキル基を表し、x、y及びwは、同一でも異なっていてもよく、それぞれ、1〜200の整数を表す)で表される基(但し、式(3)、式(4)及び式(5)で表される基の総炭素数はそれぞれ10以上である)を表し、
m個のR4aは、それぞれ、同一でも異なっていてもよく、
s個のR4a’は、それぞれ、同一でも異なっていてもよく、
s’個のR4a’は、それぞれ、同一でも異なっていてもよい;
は、置換基を有していてもよい炭素数2〜20のアルキレン基を表し、
q個のRは、それぞれ、同一でも異なっていてもよい;
nは0〜8の整数を表し、mは1〜9の整数を表し、lは1〜9の整数を表し、但し、n+m+lは4〜10の整数を表す;
p及びp’は同一でも異なっていてもよく、それぞれ、0〜7の整数を表し、q、r、r’、s及びs’は同一でも異なっていてもよく、それぞれ、1〜8の整数を表し、但し、p+q+r+s及びp’+q+r’+s’は、同一でも異なっていてもよく、それぞれ、4〜10の整数を表す。)
で表される、カリックスアレーン化合物(以下、式(1’)または(2’)で表されるカリックスアレーン化合物を、順に、カリックスアレーン化合物(1’)、カリックスアレーン化合物(2’)ともいう)。
[12] R4a及びR4a’は、同一でも異なっていてもよく、それぞれ、式(3):−(RCO)x−Rまたは式(4):−(RO)y−R(式(3)及び式(4)中、R及びRは、同一でも異なっていてもよく、それぞれ、置換基を有していてもよい炭素数1〜20のアルキレン基を表し、R及びRは、同一でも異なっていてもよく、それぞれ、水素原子、アシル基または置換基を有していてもよい炭素数1〜20のアルキル基を表し、x及びyは、同一でも異なっていてもよく、それぞれ、1〜200の整数を表す)で表される基(但し、式(3)及び式(4)で表される基の総炭素数はそれぞれ10以上である)を表す、上記[11]のカリックスアレーン化合物。
【発明を実施するための最良の形態】
本明細書において使用する語句の説明をする。
「カプロラクトン重合物」および「カプロラクトン開環重合物」とはいずれも、カプロラクトンモノマーを開環重合して得られたポリカプロラクトン(poly−caprolactone)のことである。「末端ステアリル化カプロラクトン重合物」とは、一方の末端がステアリル化されたポリカプロラクトンのことであり、「ヒドロキシル基末端ステアロイル化カプロラクトン重合物」とは、ヒドロキシル基末端がステアロイル化されたポリカプロラクトンのことである。
「カプロラクトン重合鎖」とは、ポリカプロラクトンの、一方の末端基またはその一部が脱離した状態にある基を意味し、「末端ステアリル化カプロラクトン重合鎖」とは、一方の末端がステアリル化され、かつ他方の末端基またはその一部が脱離したポリカプロラクトンのことである。また、「ヒドロキシル基末端ステアロイル化カプロラクトン重合鎖」とは、ヒドロキシル基末端がステアロイル化され、かつ他方の末端基またはその一部が脱離したポリカプロラクトンのことである。
「ブチロラクトン重合物」および「ブチロラクトン開環重合物」とはいずれも、ブチロラクトンモノマーを開環重合して得られたポリブチロラクトン(poly−butyrolactone)のことである。「ブチロラクトン重合鎖」とは、ポリブチロラクトンの、一方の末端基またはその一部が脱離した状態にある基を意味し、「末端ステアリル化ブチロラクトン重合鎖」とは、一方の末端がステアリル化され、かつ他方の末端基またはその一部が脱離したポリマーのことである。
以下に、置換基の定義を詳細に説明する。
、R、R、R’、R’及びR’は、同一でも異なっていてもよく、それぞれ、水素原子、置換基を有していてもよい鎖状炭化水素基、置換基を有していてもよいアリール基、置換基を有していてもよいアルコキシ基、ハロゲン原子、ニトロ基、アシル基、カルボキシル基、スルホン酸基または置換基を有していてもよいアミノ基を表し、中でも水素原子、置換基を有していてもよい鎖状炭化水素基が好ましい。
、R、R、R’、R’及びR’における置換基を有していてもよい鎖状炭化水素基とは、例えば下記置換基で置換されていてもよい、炭素数が好ましくは1〜20、より好ましくは1〜10である、飽和または不飽和の、直鎖状または分岐鎖状炭化水素基のことである。鎖状炭化水素基の例示としては、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、ブチル、イソブチル、sec−ブチル、tert−ブチル、ペンチル、ヘキシル、2−エチルヘキシル、オクチル、tert−オクチルなどのアルキル基(好ましくはイソプロピル、tert−ブチル)、アリル、1−プロペニル、1−ブテニル、1−オクテニルなどのアルケニル基、1−プロピニル、1−ブチニル、1−オクチニルなどのアルキニル基が挙げられる。
鎖状炭化水素基の置換基としては、例えば、カルボキシ基、アルコキシカルボニル基(好適な総炭素数2〜20、例えば、メトキシカルボニル、エトキシカルボニル、ブトキシカルボニル、オクチルオキシカルボニルなど)、ヒドロキシ基、スルホン酸基、アミノ基、置換基を有していてもよいアリール基(アリール部の好適な炭素数6〜20、好適な置換基は炭素数が1〜12である直鎖または分岐鎖アルキルなど;例えば、フェニル、トリル、キシリル、p−ノニルフェニルなど)などが挙げられる。鎖状炭化水素基は、置換可能な位置で、1またはそれ以上の上記置換基により置換されていてもよい。
置換基を有する鎖状炭化水素基としては、たとえば、カルボキシメチル、カルボキシエチル、カルボキシプロピル、カルボキシブチルなどのカルボキシ置換アルキル基、メトキシカルボニルメチル、エトキシカルボニルメチルなどのアルコキシカルボニル置換アルキル基、ヒドロキシメチル、ヒドロキシエチル、ヒドロキシプロピル、ヒドロキシブチルなどのヒドロキシ置換アルキル基、スルホメチル、スルホエチル、スルホプロピル、スルホブチルなどのスルホン酸置換アルキル基、アミノメチル、アミノエチル、アミノプロピル、アミノブチルなどのアミノ置換アルキル基、フェネチルなどのアリール置換アルキル基などが挙げられる。
及びR’における好適な置換基を有していてもよい鎖状炭化水素基としては、メチル、エチル、イソプロピル、tert−ブチルである。
、R、R、R’、R’及びR’における置換基を有していてもよいアリール基とは、例えば下記置換基で置換されていてもよい、炭素数が好ましくは6〜12、より好ましくは6〜10であるアリール基のことである。アリール基の例示としては、フェニル、ナフチルなどが挙げられる。
アリール基の置換基としては、例えば、アルキル基(好適な炭素数1〜10、例えばメチル、イソプロピル、ヘキシル、オクチルなど)、置換基を有していてもよいアリール基(アリール部の好適な総炭素数6〜10、好適な置換基は炭素数が1〜12である直鎖または分岐鎖アルキルなど;例えば、フェニル、トリル、キシリルなど)などが挙げられる。アリール基は、置換可能な位置で、1またはそれ以上の上記置換基により置換されていてもよい。
置換基を有していてもよいアリール基としては、たとえば、フェニル、トリル、キシリル、クメニル、4−ビフェニルなどが挙げられ、好ましくはフェニルである。
及びR’における好適な置換基を有していてもよいアリール基としては、フェニル、トリルである。
、R、R、R’、R’及びR’における置換基を有していてもよいアルコキシ基とは、下記置換基で置換されていてもよい、炭素数が好ましくは1〜20、より好ましくは1〜10である、直鎖状または分岐鎖状のアルコキシ基である。アルコキシ基の例示としては、メトキシ、エトキシ、プロポキシ、ブトキシ、ヘキシルオキシ、オクチルオキシなどが挙げられる。
アルコキシ基の置換基としては、例えば、アルコキシ基(好適な炭素数1〜4、例えばメトキシ、エトキシ、プロポキシ、ブトキシなど)などが挙げられる。アルコキシ基は、置換可能な位置で、1またはそれ以上の上記置換基により置換されていてもよい。
置換基を有していてもよいアルコキシ基としては、たとえば、メトキシ、エトキシ、プロポキシ、ブトキシ、メトキシエトキシ、メトキシブトキシなどが挙げられる。
及びR’における好適な置換基を有していてもよいアルコキシ基としては、メトキシ、エトキシである。
、R、R、R’、R’及びR’におけるハロゲン原子としては、フッ素原子、塩素原子、臭素原子などが挙げられる。
、R、R、R’、R’及びR’におけるアシル基とは、総炭素数が好ましくは2〜20、より好ましくは2〜10であるアシル基である。アシル基の例示としては、アセチル、プロピオニル、ブチリル、ヘキサノイル、オクタノイル、デカノイルなどのアルキルカルボニル基、ベンゾイルなどのアリールカルボニル基などが挙げられる。R及びR’における好適なアシル基とは、アセチルである。
、R、R、R’、R’及びR’における置換基を有していてもよいアミノ基とは、下記置換基で1または2置換されていてもよいアミノ基である。アミノ基の置換基としては、たとえば、アルキル基(好適な炭素数1〜4、例えば、メチル、エチル、ブチルなど)などが挙げられる。
置換基を有していてもよいアミノ基の具体例としては、アミノ、メチルアミノ、エチルアミノ、ジメチルアミノ、ジエチルアミノ、ブチルアミノなどが挙げられる。
及びR’における好適な置換基を有していてもよいアミノ基とは、ジメチルアミノである。
本発明における「1もしくは2以上のアルキレンオキシ基からなる基及び/または炭化水素基を含む、総炭素数が10以上である基」(以下、R基という)とは、炭化水素基と1もしくは2以上のアルキレンオキシ基からなる基のどちらか一方または両方が含まれ、かつ総炭素数が10以上である基である。
当該炭化水素基とは、直鎖状、分岐鎖状または環状であり、飽和または不飽和である炭化水素基を包含する。炭化水素基は、R基の一部であり、その存在位置は特に限定はなく、R基の末端でも末端以外でもどちらに位置していてもよい。炭化水素基の炭素数は、R基の総炭素数が10以上となる数であればよい。
当該1もしくは2以上のアルキレンオキシ基からなる基とは、構成単位であるアルキレンオキシ基は、直鎖状または分岐鎖状であり、かつその炭素数および縮合度は、R基の総炭素数が10以上となる数であればよい。尚、1もしくは2以上のアルキレンオキシ基からなる基として、アルキレンオキシ基も包含される。
基としては、例えば、置換基を有していてもよい炭素数10〜20のアルキル基、置換基を有していてもよい炭素数9〜20のアルキル−カルボニル基、式(3):−(RCO)x−R(式中の各記号は前記と同義、但し、総炭素数は10以上)で表される基、式(4):−(RO)y−R(式中の各記号は前記と同義、但し、総炭素数は10以上)で表される基などが挙げられ、さらに、式(5):−(CO−R10O)w−COR11(式中の各記号は前記と同義、但し、総炭素数は10以上)で表される基なども挙げられる。
基の1つである、R及びR’における置換基を有していてもよい炭素数10〜20のアルキル基とは、下記置換基で置換されていてもよい直鎖状または分岐鎖状のアルキル基であり、好ましい炭素数は12〜18である。炭素数が10以上であることが有機マトリクスとの相溶性の点から好ましい。当該アルキル基としては、例えばデシル、ウンデシル、ドデシル、テトラデシル、ヘキサデシル、ステアリルなどが挙げられる。置換基としては、例えばヒドロキシ、カルボキシ、アクリルオキシ、メタクリルオキシ、アミノなどが挙げられる。炭素数10〜20のアルキル基は、置換可能な位置で、1またはそれ以上の上記置換基により置換されていてもよい。
置換基を有していてもよい炭素数10〜20のアルキル基の例示としては、デシル、11−ヒドロキシウンデシル、ドデシル、テトラデシル、ヘキサデシル、ステアリル、12−ヒドロキシステアリルなどが挙げられる。
基の1つである、R及びR’における置換基を有していてもよい炭素数9〜20のアルキル−カルボニル基とは、アルキル部が下記置換基で置換されていてもよい、好ましい炭素数が14〜20である直鎖状または分岐鎖状のアルキル基であるアルキル−カルボニル基である。アルキル部の炭素数が9以上であることが有機マトリクスとの相溶性の点から好ましい。当該アルキル−カルボニル基としては、例えば、デカノイル、ドデカノイル、テトラデカノイル、ヘキサデカノイル、ステアロイルなどが挙げられる。置換基としては、例えばヒドロキシなどが挙げられる。炭素数9〜20のアルキル−カルボニル基は、置換可能な位置で、1またはそれ以上の上記置換基により置換されていてもよい。
置換基を有していてもよい炭素数9〜20のアルキル−カルボニル基の例示としては、デカノイル、ドデカノイル、テトラデカノイル、ヘキサデカノイル、ステアロイル、12−ヒドロキシステアロイルが挙げられ、好ましくはデカノイル、ヘキサデカノイル、ステアロイルである。
基の1つである、R及びR’における式(3):−(RCO)x−R(式中の各記号は前記と同義、但し、総炭素数は10以上)で表される基は、有機マトリクスとの相溶性の点から総炭素数が10以上である。R及びR’が式(3)の基である化合物とは、ポリエステルの末端水酸基がカリックスアレーンの水酸基に結合したものである。末端水酸基はエステル化されていてもされていなくてもよく、即ち、式(3)中、Rは水素原子、アシル基または置換基を有していてもよい炭素数1〜20のアルキル基を表す。Rにおける置換基を有していてもよい炭素数1〜20のアルキル基とは、下記置換基で置換されていてもよい、炭素数が1〜20、好ましくは10〜20であるアルキル基であり、例えばメチル、エチル、プロピル、ブチル、ヘキシル、オクチル、デシル、ドデシル、テトラデシル、ヘキサデシル、ステアリルなどが挙げられ、好ましくはステアリルである。置換基としては、例えばヒドロキシ、カルボキシが挙げられる。置換基を有していてもよい炭素数1〜20のアルキル基は、置換可能な位置で、1またはそれ以上の上記置換基により置換されていてもよい。置換基を有していてもよい炭素数1〜20のアルキル基の好適な例示としては、12−ヒドロキシステアリル、1−ヘキシル−11−カルボキシウンデシルが挙げられる。
におけるアシル基とは、総炭素数が好ましくは2〜20、より好ましくは8〜18であるアシル基である。アシル基の例示としては、ラウロイル、ステアロイル、オクタノイル、デカノイルなどのアルキルカルボニル基、ベンゾイルなどのアリールカルボニル基が挙げられ、ラウロイル、ステアロイルが好ましい。
式(3)中、Rにおける置換基を有していてもよい炭素数1〜20のアルキレン基とは、下記置換基で置換されていてもよい炭素数1〜20、好ましくは2〜18である、直鎖状または分岐鎖状のアルキレン基である。当該アルキレン基としては、たとえばメチルメチレン、トリメチレン、ペンタメチレン、ウンデカメチレン、ヘプタデカメチレンなどが挙げられる。置換基としては、ヒドロキシ、カルボキシなどが挙げられる。炭素数1〜20のアルキレン基は、置換可能な位置で、1またはそれ以上の上記置換基により置換されていてもよい。置換基を有していてもよい炭素数1〜20のアルキレン基の例示としては、メチルメチレン、トリメチレン、ペンタメチレン、ウンデカメチレン、ヘプタデカメチレンなどが挙げられ、好ましくはペンタメチレンである。
式(3)中、xは1〜200の整数は表し、有機マトリクスとの相溶性及び原料の入手し易さの点から1〜100が好ましく、3〜20がより好ましい。
式(3)で表される好ましい基としては、例えば末端ステアリル化カプロラクトン重合鎖、末端ラウリル化カプロラクトン重合鎖、末端ステアリル化ブチロラクトン重合鎖、末端ステアリル化ヒドロキシステアリン酸重縮合鎖(いずれも重合度x)などが挙げられる。
基の1つである、R及びR’における式(4):−(RO)y−R(式中の各記号は前記と同義、但し、総炭素数は10以上)で表される基は、有機マトリクスとの相溶性の点から総炭素数が10以上である。式(4)中、Rは水素原子、アシル基または置換基を有していてもよい炭素数1〜20のアルキル基を表す。Rにおける置換基を有していてもよい炭素数1〜20のアルキル基とは、下記置換基で置換されていてもよい、炭素数が1〜20、好ましくは10〜20であるアルキル基であり、例えばメチル、エチル、プロピル、ブチル、ヘキシル、オクチル、デシル、ドデシル、テトラデシル、ヘキサデシル、ステアリルなどが挙げられ、好ましくはデシル、ドデシル、テトラデシル、ヘキサデシル、ステアリルである。置換基としては、例えばヒドロキシ、カルボキシなどが挙げられる。炭素数1〜20のアルキル基は、置換可能な位置で、1またはそれ以上の上記置換基により置換されていてもよい。置換基を有していてもよい炭素数1〜20のアルキル基の好適な例示としては、12−ヒドロキシステアリルが挙げられる。
におけるアシル基とは、総炭素数が好ましくは2〜20、より好ましくは8〜18であるアシル基である。アシル基の例示としては、ラウロイル、ステアロイル、オクタノイル、デカノイルなどのアルキルカルボニル基、ベンゾイルなどのアリールカルボニル基が挙げられ、中でもラウロイル、ステアロイルが好ましい。
式(4)中、Rは置換基を有していてもよい炭素数1〜20のアルキレン基とは、下記置換基で置換されていてもよい炭素数1〜20、好ましくは1〜4である、直鎖状または分岐鎖状のアルキレン基である。当該アルキレン基としては、たとえばメチレン、エチレン、プロピレン、ジメチルプロピレン、ブチレンなどが挙げられる。置換基としては、ヒドロキシ、カルボキシなどが挙げられる。炭素数1〜20のアルキレン基は、置換可能な位置で、1またはそれ以上の上記置換基により置換されていてもよい。置換基を有していてもよい炭素数1〜20のアルキレン基の例示としては、メチレン、エチレン、プロピレン、ジメチルプロピレン、ブチレン、ヒドロキシプロピレン、ビス(ヒドロキシメチル)プロピレンなどが挙げられ、好ましくはエチレン、プロピレン、ヒドロキシプロピレンである。
式(4)中、yは1〜200の整数は表し、水系マトリクスとの相溶性及び原料の入手し易さの点から5〜100が好ましく、10〜50がより好ましい。
式(4)で表される好ましい基としては、例えば、末端ステアロイル化ポリエチレングリコール鎖、末端ステアリル化ポリエチレングリコール鎖、末端ステアロイル化ポリプロピレングリコール鎖(いずれも重合度y)などが挙げられる。
基の1つである、R及びR’における式(5):−(CO−R10O)w−COR11(式中の各記号は前記と同義、但し、総炭素数は10以上)で表される基は、有機マトリクスとの相溶性の点から総炭素数が10以上である。R及びR’が式(5)の基である化合物とは、片末端がカルボニル基で修飾されているポリエステルがカリックスアレーンの水酸基に結合したものである。式(5)中、R11は水素原子、アシル基または置換基を有していてもよい炭素数1〜20のアルキル基を表す。R11における置換基を有していてもよい炭素数1〜20のアルキル基とは、下記置換基で置換されていてもよい、炭素数が1〜20、好ましくは10〜20であるアルキル基であり、例えばメチル、エチル、プロピル、ブチル、ヘキシル、オクチル、デシル、ドデシル、テトラデシル、ヘキサデシル、ステアリルなどが挙げられ、好ましくはステアリルである。置換基としては、例えばヒドロキシ、カルボキシが挙げられる。置換基を有していてもよい炭素数1〜20のアルキル基は、置換可能な位置で、1またはそれ以上の上記置換基により置換されていてもよい。置換基を有していてもよい炭素数1〜20のアルキル基の好適な例示としては、12−ヒドロキシステアリルが挙げられる。
11におけるアシル基とは、総炭素数が好ましくは2〜20、より好ましくは8〜18であるアシル基である。アシル基の例示としては、ラウロイル、ステアロイル、オクタノイル、デカノイルなどのアルキルカルボニル基、ベンゾイルなどのアリールカルボニル基が挙げられ、ラウロイル、ステアロイルが好ましい。
式(5)中、R10における置換基を有していてもよい炭素数1〜20のアルキレン基とは、下記置換基で置換されていてもよい炭素数1〜20、好ましくは2〜18である、直鎖状または分岐鎖状のアルキレン基である。当該アルキレン基としては、たとえばメチルメチレン、トリメチレン、ペンタメチレン、ウンデカメチレン、ヘプタデカメチレンなどが挙げられる。置換基としては、ヒドロキシ、カルボキシなどが挙げられる。炭素数1〜20のアルキレン基は、置換可能な位置で、1またはそれ以上の上記置換基により置換されていてもよい。置換基を有していてもよい炭素数1〜20のアルキレン基の例示としては、メチルメチレン、トリメチレン、ペンタメチレン、ウンデカメチレン、ヘプタデカメチレンなどが挙げられ、好ましくはペンタメチレンである。
式(5)中、wは1〜200の整数は表し、有機マトリクスとの相溶性及び原料の入手しやすさの点から1〜100が好ましく、3〜20がより好ましい。
式(5)で表される好ましい基としては、例えば、ヒドロキシル基末端ステアロイル化カプロラクトン重合物、ヒドロキシル基末端ラウロイル化カプロラクトン重合物、ヒドロキシル基末端ステアロイル化ブチロラクトン重合物、ヒドロキシル基末端ステアロイル化ヒドロキシステアリン酸重縮合物(いずれも重合度w)などが挙げられる。
式(1)中、m個のRは、それぞれ、同一でも異なっていてもよい。
式(2)中、s個のR’は、それぞれ、同一でも異なっていてもよく、
s’個のR’は、それぞれ、同一でも異なっていてもよい。
における置換基を有していてもよい炭素数2〜20のアルキレン基とは、下記置換基で置換されていてもよい、直鎖状または分岐鎖状のアルキレン基であり、好ましい炭素数は4〜10である。アルキレン基としては、例えば、テトラメチレン、ヘキサメチレンオクタメチレン、デカメチレン、ドデカメチレン、テトラデカメチレン、ヘキサデカメチレンなどを挙げることができる。置換基としては、ヒドロキシ、カルボキシなどが挙げられる。炭素数2〜20のアルキレン基は、置換可能な位置で、1またはそれ以上の上記置換基により置換されていてもよい。置換基を有していてもよい炭素数2〜20のアルキレン基の好適な例示としては、テトラメチレン、ヘキサメチレン、オクタメチレン、デカメチレン、ドデカメチレン、テトラデカメチレン、ヘキサデカメチレン、11−ヒドロキシヘキサデカメチレンなどが挙げられる。
式(2)中、q個のRは、それぞれ、同一でも異なっていてもよい。
式(1)中、nは0〜8、好ましくは0〜4の整数を表しであり、mは1〜9、好ましくは2〜6の整数を表しであり、lは1〜9、好ましくは2〜6の整数を表す。但し、n+m+lは4〜10、好ましくは4〜8の整数を表す。
が結合しているユニットは有機マトリクスとの相溶性を合わせるため、必ず存在する必要があり、即ちmは少なくとも1である。また、水酸基が存在するユニットは分散対象へのカリックスアレーン化合物(I)の吸着性を向上させるため、必ず存在する必要があり、即ちlは少なくとも1である。これら以外のユニットであるフェノキシイオンが存在するユニットは、後述の合成過程において生じるものであり、存在してもしなくても本発明の目的を妨げるものではない。
式(1)において、n個、m個及びl個のR、R及びRは、それぞれ、同一でも異なっていてもよい。
式(2)中、p及びp’は同一でも異なっていてもよく、それぞれ、0〜7、好ましくは0〜4の整数を表し、q、r、r’、s及びs’は同一でも異なっていてもよく、それぞれ、1〜8、好ましくは2〜6の整数を表す。但し、p+q+r+s及びp’+q+r’+s’は、同一でも異なっていてもよく、それぞれ、4〜10、好ましくは4〜8の整数を表す。
−O−CO−R−CO−O−基によりカリックスアレーン同士を結合しているユニットは、カリックスアレーン同士を結合するために必ず存在する必要があり、即ちqは少なくとも1である。
’が結合しているユニットは有機マトリクスとの相溶性を合わせるため、必ず存在する必要があり、即ちs及びs’は少なくとも1である。また、水酸基が存在するユニットは分散対象へのカリックスアレーン化合物(I)の吸着性を向上させるため、必ず存在する必要があり、即ちr及びr’は少なくとも1である。これら以外のユニットであるフェノキシイオンが存在するユニットは、後述の合成過程において生じるものであり、存在してもしなくても本発明の目的を妨げることはない。
式(2)において、p個、q個、r個及びs個のR’、R’及びR’は、それぞれ、同一でも異なっていてもよく、
p’個、r’個及びs’個のR’、R’及びR’は、それぞれ、同一でも異なっていてもよい。
本発明におけるカリックスアレーンとは、置換基を有していてもよいフェノール同士がメタ位でメチレン基を介して結合した環状オリゴマーのことである。尚、メチレン基が置換されている場合も本願の範囲に包含される。例えば、式

(式中、R、R及びRは、同一でも異なっていてもよく、それぞれ、水素原子、置換基を有していてもよい鎖状炭化水素基、置換基を有していてもよいアリール基、置換基を有していてもよいアルコキシ基、ハロゲン原子、ニトロ基、アシル基、カルボキシル基、スルホン酸基または置換基を有していてもよいアミノ基(各基はRで対応する基と同義)を表し、
zは1〜10の整数(好ましくは4〜10の整数)を表す)
で表される環状オリゴマーが挙げられる。
本発明におけるカリックスアレーン化合物(I)とは、カリックスアレーンを構成するフェノール性水酸基中、
(A)少なくとも1つは置換されておらず、
(B)少なくとも1つは1もしくは2以上のアルキレンオキシ基からなる基及び/または炭化水素基を含む、総炭素数が10以上である基で置換されている化合物のことであり、本発明の特徴を有する特定のカリックスアレーン化合物(I)は分散剤及び可溶化剤として有効である。
本発明におけるカリックスアレーン化合物(I)の例としては、例えば、カリックスアレーン化合物(1)及びカリックスアレーン化合物(2)が挙げられる。
カリックスアレーン化合物(1)として、カリックスアレーン化合物(1’)が挙げられ、カリックスアレーン化合物(1’)は、Rを式(3)〜式(5)で表される基から選ばれる基に限定したカリックスアレーン化合物(1)のことである。また、カリックスアレーン化合物(2)として、カリックスアレーン化合物(2’)が挙げられ、カリックスアレーン化合物(2’)は、Rを式(3)〜式(5)で表される基から選ばれる基に限定したカリックスアレーン化合物(2)のことである。従って、式(1’)および(2’)中の各用語は式(1)および(2)中の対応する用語と同義である。
カリックスアレーン化合物(1)及びカリックスアレーン化合物(1’)としては、製造しやすさの観点から、n+m+lが6または8である態様が好ましく、nが0であり、mが2〜4であり、Rが置換基を有していてもよい鎖状炭化水素基(特に好ましくはtert−ブチル基)であり、かつRおよびRが水素原子である態様がさらに好ましい。また、分散性の観点からは、nが0であり、mが2〜4であり、かつカリックスアレーン化合物(1)の場合、Rが置換基を有していてもよい炭素数9〜20のアルキル−カルボニル基または式(5)で表される基(特にヒドロキシル基末端ステアロイル化カプロラクトン重合鎖)、カリックスアレーン化合物(1’)の場合、R4aが式(5)で表される基(特にヒドロキシル基末端ステアロイル化カプロラクトン重合鎖)である態様が特に好ましい。
カリックスアレーン化合物(2)及びカリックスアレーン化合物(2’)としては、製造しやすさの観点から、p+q+r+sおよびp’+q+r’+s’が同一でも異なっていてもよく、6または8である態様が好ましく、pおよびp’が0であり、s及びs’が2〜4であり、R’が置換基を有していてもよい鎖状炭化水素基(特に好ましくはtert−ブチル基)であり、かつR’およびR’が水素原子である態様がさらに好ましい。また、分散性の観点からは、pおよびp’が0であり、s及びs’が2〜4であり、かつカリックスアレーン化合物(2)の場合、R’が置換基を有していてもよい炭素数9〜20のアルキル−カルボニル基または式(5)で表される基(特にヒドロキシル基末端ステアロイル化カプロラクトン重合鎖)、カリックスアレーン化合物(2’)の場合、R4a’が式(5)で表される基(特にヒドロキシル基末端ステアロイル化カプロラクトン重合鎖)である態様が特に好ましい。
以下に、本発明の特定のカリックスアレーン化合物(I)の製造方法を、カリックスアレーン化合物(1)及びカリックスアレーン化合物(2)を例にとって説明する。以下、式を用いて説明する場合があるが、式中の各記号は特に断りのない限り、上記と同義である。
カリックスアレーン化合物(1)
まず、カリックス(u)アレーンのフェノール性水酸基をフェノキシイオン化し、有機溶媒に溶解させる。フェノキシイオン化は通常塩基を用いて行う。原料として用いるカリックス(u)アレーンにおける記号uは、4〜10の整数であり、カリックス(u)アレーンの具体例としては、4−tert−ブチルカリックス(8)アレーン、4−tert−ブチルカリックス(6)アレーン、4−tert−ブチルカリックス(4)アレーンなどが挙げられ、中でも4−tert−ブチルカリックス(8)アレーンが好ましい。カリックス(u)アレーンは市販品を使用することも、公知の方法、例えばC.D.Gutsheら、「カリックスアレーン4:p−tert−ブチルフェノール由来のカリックスアレーンの合成、特徴及び性質」(Calixarenes,4.The synthesis,Characterization,and properties of Calixarenes from p−tert−butylphenol)、ジャーナル オブ アメリカン ケミカル ソサイエティ(Journal of American Chemieal Society)、Vol.103、No.13、1981年、3782〜3792頁に開示の方法に従って、または準じて製造することもできる。
フェノキシイオン化で用いる有機溶媒は特に限定はなく、例えば、メタノール、エタノール、プロパノールなどのアルコール類、アセトン、メチルエチルケトンなどのケトン類、酢酸エチル、酢酸ブチルなどのエステル類、トルエン、キシレンなどの芳香族炭化水素類、ヘキサン、ヘプタンなどの脂肪族炭化水素類、テトラヒドロフラン(THF)、ジメチルスルホキシド(DMSO)、ジメチルホルムアミド(DMF)などを挙げることができ、中でもメタノール、アセトン、THFが好ましい。有機溶媒の使用量は特に限定はないが、通常カリックス(u)アレーン1重量部に対して、5〜100重量部、好ましくは10〜50重量部である。
フェノキシイオン化に用いる塩基としては、例えば、カリックス(u)アレーンをフェノキシイオン化できるものであれば特に限定はなく、例えばK、Naなどのアルカリ金属、KOH、NaOHなどのアルカリ金属水酸化物、NaCO、KCOなどのアルカリ金属炭酸塩、NaHなどのアルカリ金属水素化物、アンモニア水、トリエチルアミン、ジエチルアミン、エチレンジアミン、(COHなどの有機アミン類が挙げられ、中でもNaH、NaOH、トリエチルアミンが好ましい。塩基の使用量は、通常カリックス(u)アレーン1モルに対して、1〜20モル当量、好ましくは2〜10モル当量である。
フェノキシイオン化は用いる溶媒によって異なるが、通常室温〜使用する溶媒の還流温度の範囲内で行うのが好ましく、室温から昇温して還流温度でしばらく保ってから終了する。
フェノキシイオン化終了後、生成物は濾過、濃縮、乾燥などの常法により単離精製することができ、単離精製することなく、そのまま次の工程に付すこともできる。
次に、フェノキシイオン化により得られたカリックス(u1+u2)アレーン化合物のフェノキシイオンに、R基を導入する。カリックス(u1+u2)アレーン化合物とは、フェノール性水酸基中、u1個がフェノキシイオン化されておらず、u2個がフェノキシイオン化されていることを意味し、u1+u2は4〜10の整数である。
基の導入に用いる試薬としては、カリックス(u1+u2)アレーン化合物のフェノキシイオンと反応できるものであれば特に限定はなく、反応性の観点から、RBr、RCl、RIなどのハロゲン化物が好ましい。R基の導入は、例えばカリックス(u1+u2)アレーン化合物とハロゲン化物とを反応させることにより行うことができる。R基の導入は、通常、有機溶媒中で行い、例えばフェノキシイオン化と同様な溶媒が挙げられ、中でもアセトン、THFが好ましい。その使用量は、カリックス(u1+u2)アレーン化合物(但し、フェノキシイオン化後、単離することなく、R化する場合、当該使用量は使用したカリックス(u)アレーンから定量的に得られるカリックス(u1+u2)アレーン化合物の収量に基づく)1重量部に対して、通常5〜100重量部であり、好ましくは10〜50重量部である。
ハロゲン化物の使用量は、カリックス(u1+u2)アレーン化合物(但し、フェノキシイオン化後、単離することなく、R化する場合、当該使用量は使用したカリックス(u)アレーンから定量的に得られるカリックス(u1+u2)アレーン化合物の収量に基づく)1モルに対して、通常1〜9モルであり、好ましくは2〜6モルである。
基の導入は、用いる溶媒によって異なるが、通常室温〜使用する溶媒の還流温度の範囲内で行うのが好ましく、室温から昇温して還流温度でしばらく保ってから終了する。
ハロゲン化物の調製はRにより適宜方法を選択する。
例えば、Rが置換基を有していてもよい炭素数10〜20のアルキル基であるハロゲン化物は、式:R41OH(式中、R41が置換基を有していてもよい炭素数10〜20のアルキル基である)で表されるアルコールにハロゲン化試薬(例えば、PCl、PBrなど)を反応させることにより調製できる。
例えば、Rが置換基を有していてもよい炭素数9〜20のアルキル−カルボニル基であるハロゲン化物は、式:R42COH(式中、R42が置換基を有していてもよい炭素数9〜20のアルキル基である)で表されるカルボン酸にハロゲン化試薬(例えば、塩化チオニルなどのハロゲン化チオニルなど)を反応させることにより調製できる。
例えば、Rが式(3):−(RCO)x−Rで表される基であるハロゲン化物は、式:HO−(RCO)x−Rで表される化合物にハロゲン化試薬(例えば、PCl、PBrなど)を反応させることにより調製できる。式:HO−(RCO)x−Rで表される化合物としては、乳酸縮合物、ブチロラクトン開環重合物、カプロラクトン開環重合物、12−ヒドロキシドデカン酸縮合物、12−ヒドロキシステアリン酸縮合物などが挙げられる。
例えば、Rが式(4):−(RO)y−Rで表される基であるハロゲン化物は、式:R−(OR)y−OHで表される化合物にハロゲン化試薬(例えば、PCl、PBrなど)を反応させることにより調製できる。式:R−(OR)y−OHで表される化合物としては、ポリエチレングリコールモノステアリルエーテル、ポリプロピレングリコールモノラウリルエーテル、ポリエチレングリコールモノステアレート、ポリエチレングリコールモノラウレートなどが挙げられる。
が式(4)で表される基であるカリックスアレーン化合物(I)は、このようなハロゲン化試薬を用いた方法以外にも、エチレンオキシド、プロピレンオキシドを直接カリックスアレーンに反応させることにより製造することもできる。
例えば、Rが式(5):−(CO−R10O)w−COR11で表される基であるハロゲン化物は、式:HO−(CO−R10O)w−COR11で表される化合物にハロゲン化試薬(例えば、塩化チオニルなどのハロゲン化チオニルなど)を反応させることにより調製できる。式:HO−(CO−R10O)w−COR11で表される化合物としては、乳酸縮合物、ブチロラクトン開環重合物、カプロラクトン開環重合物、12−ヒドロキシドデカン酸縮合物、12−ヒドロキシステアリン酸縮合物などが挙げられる。
基の導入終了後、酢酸、希塩酸などの酸を添加して中和することにより、未反応のフェノキシイオンをフェノールに戻すことができる。この中和処理を行わなければ、フェノキシイオンが残り、フェノキシイオン化反応で用いた塩基に相当するカチオンが対イオンとして残存する。
また、反応で生成するハロゲンのアルカリ金属塩や中和処理で生成する塩は反応液の濾過により除去することができる。
カリックスアレーン化合物(2)
まず、カリックスアレーンのフェノール性水酸基をフェノキシイオン化し、有機溶媒に溶解させる。フェノキシイオン化は通常塩基を用いて行う。
フェノキシイオン化で用いる有機溶媒及び塩基はカリックスアレーン化合物(1)の製造で使用するものと同様なものが挙げられ、その使用量も同様の範囲内で行う。また、フェノキシ化の反応条件も、カリックスアレーン化合物(1)の場合と同様であればよい。
フェノキシイオン化終了後、生成物は濾過、濃縮、乾燥などの常法により単離精製することができ、単離精製することなく、そのまま次の工程に付すこともできる。
次に、カリックス(u1+u2)アレーン化合物のフェノキシイオンに、R基及びR基を導入する。R基及びR基の導入は、別々に行うこともできるが、同時に行うのが効率的で好ましい。別々に行う場合、その導入順序は特に限定はない。R基及びR基の導入は、通常溶媒中で行い、例えばカリックスアレーン化合物(1)のフェノキシ化工程で用いた溶媒と同様のものが挙げられ、中でもアセトン、THFが好ましい。溶媒の使用量は、カリックス(u1+u2)アレーン化合物(但し、フェノキシイオン化後、単離することなく、R化する場合、当該使用量は使用したカリックス(u)アレーンから定量的に得られるカリックス(u1+u2)アレーン化合物の収量に基づく)1重量部に対して、通常5〜100重量部であり、好ましくは10〜50重量部である。
当該カリックスアレーン化合物へのR基の導入は、カリックスアレーン化合物(1)の場合と同様に行えばよい。R基の導入は、カリックス(u1+u2)アレーン化合物のフェノキシイオンと反応できる試薬を用いて行い、反応性の観点から、Br−C(=O)−R−C(=O)−Br、Cl−C(=O)−R−C(=O)−Cl、I−C(=O)−R−C(=O)−Iなどのジハロゲン化物が好ましい。
ジハロゲン化物の使用量は、カリックス(u1+u2)アレーン化合物(但し、フェノキシイオン化後、単離することなく、R基およびR基を導入する場合、当該使用量は使用したカリックス(u)アレーンから定量的に得られるカリックス(u1+u2)アレーン化合物の収量に基づく)1モルに対して、通常1〜8モルであり、好ましくは2〜6モルである。
基及びR基の導入は、用いる溶媒によって異なるが、通常室温〜使用する溶媒の還流温度の範囲内で行うのが好ましく、室温から昇温して還流温度でしばらく保ってから終了する。
尚、カリックスアレーン化合物(2)は、カリックスアレーン化合物(1)を製造する際の副生物として生成する場合もある。
基及びR基の導入終了後、カリックスアレーン化合物(1)の場合と同様に中和処理を行う。
また、反応で生成するハロゲンのアルカリ金属塩や中和処理で生成する塩は反応液の濾過により除去することができる。
本発明のカリックスアレーン化合物(I)は、特に、炭素系材料および有機顔料を有機マトリクスに分散または溶解させる際に非常に有用である。本発明における炭素系材料とは、炭素原子のみで構成された物質であり、例えば、カーボンブラック、カーボンナノチューブ、グラファイト、炭素繊維、非晶質カーボン、ダイヤモンド粉、フラーレンが挙げられ、本発明のカリックスアレーン化合物(I)は炭素繊維、フラーレンにより好ましく適用できる。本発明における有機顔料とは、共役電子を有し、可視光領域で発色する有機化合物であり、例えばフタロシアニン系(例えば、フタロシアニンブルー、フタロシアニングリーン、塩基性フタロシアニンブルーなど)、アゾ、ジアゾ、縮合アゾなどのアゾ系(例えば、ピグメントレッド3、ピグメントレッド21、ピグメントレッド144、ピグメントオレンジ5、ピグメントオレンジ38、ピグメントブラウン25、ピグメントイエロー1、ピグメントイエロー12など)、キナクリドン系(例えば、ピグメントバイオレット19、ピグメントレッド207、ピグメントレッド206など)、アントラキノン系(例えば、ピグメントイエロー24、ピグメントオレンジ40、ピグメントレッド177、ピグメントブルー6など)、チオインジゴ系(例えば、ピグメントレッド88など)、インダントロン系(例えば、ピグメントブルー60、ピグメントブルー64など)、イソインドリノン系(例えばピグメントイエロー109、ピグメントオレンジ61など)、ジケトピロロピロール系(ジケトピロロピロールの塩化物、メチル化物、ジメチルアミノ化物など)などが挙げられ、フタロシアニン系、アゾ系、キナクリドン系、ジケトピロロピロール系およびアントラキノン系が好ましく、本発明のカリックスアレーン化合物(I)はフタロシアニンブルーにより好ましく適用できる。有機マトリクスとは、上記炭素系材料が分散される、主に有機物で構成された液状または固体状の分散媒であり、例えば、有機溶媒、樹脂、潤滑油、油性塗料インキなどが挙げられる。
本発明のカリックスアレーン化合物(I)を含有してなる分散剤及び可溶化剤と炭素系材料とからなる炭素系複合物は、カリックスアレーン化合物(I)と炭素系材料とを複合化してなる化合物である。炭素系材料は、カリックスアレーン化合物(I)と炭素系複合物を形成することにより、有機マトリクス中に分散、溶解できる。炭素系材料がカーボンブラック、カーボンナノチューブ、グラファイト、炭素繊維、非晶質カーボンまたはダイヤモンド粉のいずれかである場合、本発明の分散剤はこれら炭素系材料の表面に作用し、炭素系材料を有機マトリクスに分散させることができる。
また、炭素系材料がフラーレンである場合、本発明の可溶化剤はフラーレンを包接し、フラーレンを有機マトリクスに溶解させることができる。
本発明の炭素系複合物の製造方法としては、炭素系材料にカリックスアレーン化合物(I)を添加してヘンシェルミキサーなどの高速ミキサーで撹拌混合する乾式処理法、カリックスアレーン化合物(I)を溶媒に溶解後、これに炭素系材料を添加混合し、濾過または溶媒留去をする湿式処理法などが挙げられ、中でも炭素系材料が非常に小さいことから湿式処理法がより適している。湿式処理法で用いる溶媒としては、カリックスアレーン化合物(I)を溶解できるものであれば特に限定はなく、例えば、カリックスアレーン化合物(1)及びカリックスアレーン化合物(2)の製造に使用したものと同じ溶媒が挙げられる。湿式処理法における混合には、撹拌羽根の他に、ボールミルやサンドミルなど混合メディアを利用したミキサーなども使用でき、処理効率を上げる目的で熱や超音波などをかけても何ら差し支えない。
また、有機マトリクスに炭素系材料または有機顔料を添加する際に、カリックスアレーン化合物(I)を同時に添加して、炭素系材料または有機顔料を分散させながら表面処理を行うインテグラルブレンド法を用いても何ら差し支えない。
フラーレンとカリックスアレーン化合物(I)との複合化は、好適には、例えば、フラーレンをトルエンやジクロロベンゼンなどの溶媒に溶解し、これに事前に溶媒に溶解したカリックスアレーン化合物(I)を添加し、溶媒を留去することにより行うことができる。フラーレンを当該方法で複合化することにより、複合化していないフラーレンでは溶解しないような溶媒に溶解できるようになる。
本発明のカリックスアレーン化合物(I)を含有してなる分散剤及び可溶化剤と有機顔料とからなる有機顔料複合物は、カリックスアレーン化合物(I)と有機顔料とを複合化してなる化合物である。有機顔料は、カリックスアレーン化合物(I)と有機顔料複合物を形成することにより、有機マトリクス中に分散、溶解できる。有機顔料がフタロシアニン系、アゾ系、キナクリドン系、アントラキノン系、ジケトピロロピロール系顔料のいずれかである場合、本発明の分散剤はこれら有機顔料の表面に作用し、有機顔料を有機マトリクスに分散させることができる。
本発明の有機顔料複合物は、炭素系材料複合物と同様に製造することができ、中でも表面処理効率が良いという理由により、湿式処理法がより適している。湿式処理法で用いる溶媒としては、カリックスアレーン化合物(I)を溶解できるものであれば特に限定はなく、例えば、カリックスアレーン化合物(1)及びカリックスアレーン化合物(2)の製造に使用したものと同じ溶媒が挙げられる。
フタロシアニンブルーとカリックスアレーン化合物(I)との複合化は、好適には、例えば、トルエン、メチルエチルケトン、ヘキサンなどの溶媒に、フタロシアニンブルー及びカリックスアレーン化合物(I)を添加し、ボールミルなどで混合、分散処理することにより行うことができる。フタロシアニンブルーを当該方法で複合化することにより、複合化していないフタロシアニンブルーでは分散しないような溶媒に分散できるようになる。
尚、本発明の分散剤または可溶化剤は潤滑剤にも有用である。
さらに、本発明の分散剤または可溶化剤を、炭素系材料および顔料(有機顔料)以外に、フェライトなどの磁性材料、銅粉やニッケル粉などの導電材料、水酸化マグネシウムやポリリン酸アンモニウムなどの難燃剤などにも適用することができる。
本発明により得られる効果は、以下の機構で発現するものと考えられる。
本発明のカリックスアレーン化合物(I)のカリックスアレーン骨格は、多数のベンゼン環が環状に結合した構造であり、同様にベンゼン環が縮合した構造を有する炭素系材料に対して、π−π相互作用により親和性が大きい。またカリックスアレーン中のフェノール性水酸基が未反応で残存しているものの方が、分散性や可溶化の点で優れていることから、この水酸基も親和性向上に寄与していると考えられる。特に、フラーレンは、カリックスアレーン(I)の環状構造の内部に収まる大きさであるため、フラーレン分子1個がカリックスアレーン化合物(I)1個に包接され、分子レベルで複合化される。またフタロシアニンブルーなどの有機顔料の多くは、一般に複数のベンゼン環を有しており、カリックスアレーン化合物(I)のベンゼン環との相互作用が働き、顔料表面に効率よく吸着されると考えられる。
一方、本発明のカリックスアレーン化合物(I)は有機マトリクスに親和性のある炭化水素鎖を有するので、本発明の炭素系複合物や有機顔料複合物はこれらのマトリクスに対する親和性が向上し、溶解性や分散性が向上すると考えられる。
【実施例】
次に、本発明について、その内容を実施例及び比較例を挙げて詳細に説明する。なお、以下の実施例は本発明の範囲を限定するものではなく、本発明の内容をより明確に示すために記載されたものである。尚、「部」とは「重量部」のことである。
【実施例1】
化合物(1)の合成
ビーカー内に、4−tert−ブチルカリックス(8)アレーン(50.00部、川口薬品製)及びメタノール(791.00部、純正化学製)を採取し、よく撹拌した後、1mol/L−水酸化ナトリウム(純正化学製)/メタノール溶液(96.15部)を加え、室温で24時間撹拌させた。撹拌終了後、桐山ロートと濾紙(No.5C)を用いて濾過後、濾滓を減圧乾燥(120℃、6時間)した。
撹拌機を備え付けたフラスコ内に、上記の4−tert−ブチルカリックス(8)アレーンと水酸化ナトリウムとの反応物(5.00部)とTHF(35.48部、純正化学製)を採取し、室温で撹拌した。1−ブロモオクタデカン(2.47部、4−tert−ブチルカリックス(8)アレーンに対して2倍モル、東京化成工業製)を滴下ロートに採取し、蒸留塔とともにフラスコに備え付け、撹拌させながら15分かけて1−ブロモオクタデカンを滴下した。滴下終了後、滴下ロートをTHF(8.87部)を用いて洗いこみ、ついで3時間還流を行った。
還流終了後、放冷し、フラスコ内に酢酸(純正化学製)を加えて中和した。その後、析出物を桐山ロートと濾紙(No.5C)を用いて除去し、濾液をシリンジフィルター(0.2μm)に通し、さらに微小の析出物を除去した。その後、濾液中の溶媒をロータリーエバポレーターにより除去し、減圧乾燥(120℃、8時間)し、化合物(1)を収率:95%以上で得た。
得られた化合物(1)の赤外線スペクトルを測定した結果を以下に示す:
原料中のC−Br由来の640cm−1付近のピークの消失、
フェノールエーテル結合由来の1250cm−1付近のピークの出現、及び
ヒドロキシ基由来の3200cm−1のピーク強度の若干の減少。
以上、収率と赤外線スペクトルから、化合物(1)は主に、上記式(1)において、Rが水素原子であり、Rがtert−ブチル基であり、Rが水素原子であり、Rがステアリル基であり、mが2であり、nがほぼ0であり、lが約6であり、かつn+m+lが8である、上記式(1)で表される構造を有するといえる。
【実施例2】
化合物(2)の合成
フラスコ内に60%水素化ナトリウム−オイル分散液(0.43部、和光純薬工業製)を採取し、THF(純正化学製)を用いてオイルを洗浄後、フラスコ内に反応溶媒としてTHF(8.87部)を加え、撹拌機、蒸留塔を備え付けた。そこに予めビーカー内でTHF(22.18部)に分散させた4−tert−ブチルカリックス(8)アレーン(7.00部、川口薬品製)を撹拌させながら、10分かけて加え、ビーカーをTHF(13.31部)を用いて洗いこみ、ついで3時間還流を行った。
11−ブロモ−1−ウンデカノール(3.20部、4−tert−ブチルカリックス(8)アレーンに対して2.25倍モル、ACROSORGANICS製)を予めTHF(13.31部)に溶解したものを滴下ロートに採取し、撹拌機、蒸留塔とともに、上記の4−tert−ブチルカリックス(8)アレーンと水素化ナトリウムとの反応物の入ったフラスコに備え付け、撹拌させながら15分かけて11−ブロモ−1−ウンデカノール/THF溶液を滴下した。滴下終了後、滴下ロートをTHF(4.44部)を用いて洗いこみ、ついで3時間還流を行った。
桐山ロートと濾紙(No.5C)を用いて、上記反応物中の過剰の水素化ナトリウムを除去した後、濾液に酢酸(純正化学製)を加えて中和した。その後、析出物を桐山ロートと濾紙(No.5C)を用いて除去し、濾液をシリンジフィルター(0.2μm)に通し、さらに微小の析出物を除去した。その後、濾液中の溶媒をロータリーエバポレーターにより除去し、減圧乾燥(120℃、8時間)し、化合物(2)を収率95%以上で得た。
得られた化合物(2)の赤外線スペクトルを測定した結果を以下に示す:
原料中のC−Br由来の640cm−1のピークの消失、
フェノールエーテル結合由来の1250cm−1付近のピークの出現、及び
ヒドロキシ基由来の3200cm−1のピーク強度の若干の減少。
以上、収率と赤外線スペクトルから、化合物(2)は主に、Rが水素原子であり、Rがtert−ブチル基であり、Rが水素原子であり、Rが11−ヒドロキシウンデシル基であり、mが2.25であり、nがほぼ0であり、lが約5.75であり、かつn+m+lが8である、上記式(1)で表される構造を有するといえる。
【実施例3】
化合物(3)の合成
ビーカーに、4−tert−ブチルカリックス(8)アレーン(5.00部、川口薬品製)、トリエチルアミン(3.10部、純正化学製)及びアセトン(100部、純正化学製)を入れ、室温で1時間撹拌したところ、ほぼ透明になった。これを桐山ロートと濾紙(No.5C)を用いて濾過することにより、透明な溶液を得た。この溶液をフラスコに入れ、ステアリン酸クロライド(2.33部、4−tert−ブチルカリックス(8)アレーンに対して2倍モル、東京化成工業製)のアセトン(10.0部、純正化学製)溶液を滴下し、室温で4時間撹拌した。これに酢酸(1.38部、純正化学製)を加えて、室温で4時間撹拌した。その後、桐山ロートと濾紙(No.5C)を用いて濾過し、生成した塩類を除去し、ロータリーエバポレーターにて溶媒留去し、白色の固体を得た。これをトルエン(純正化学製)に再溶解し、分液ロートに入れて水を添加して分液操作を行い、トルエン層を分離、無水硫酸マグネシウムで脱水後、ロータリーエバポレーターにてトルエンを留去し、110℃で減圧乾燥して、化合物(3)を収率95%以上で得た。
得られた化合物(3)の赤外線スペクトルを測定した結果を以下に示す:
原料である酸塩化物由来の1780cm−1付近のピークの消失、
フェノールエステル結合由来の1720cm−1付近のピークの出現、及び
ヒドロキシ基由来の3200cm−1のピーク強度の若干の減少。
以上、収率と赤外線スペクトルから、化合物(3)は主に、Rが水素原子であり、Rがtert−ブチル基であり、Rが水素原子であり、Rがステアロイル基であり、mが2であり、nがほぼ0であり、lが約6であり、かつn+m+lが8である、上記式(1)で表される構造を有するといえる。
【実施例4】
化合物(4)の合成
ビーカーに4−tert−ブチルカリックス(8)アレーン(5.00部、川口薬品製)、トリエチルアミン(3.10部、純正化学製)及びアセトン(100部、純正化学製)を入れ、室温で1時間撹拌したところ、ほぼ透明になった。これを桐山ロートと濾紙(No.5C)を用いて濾過して透明な溶液を得た。この溶液をフラスコに入れ、デカノイルクロライド(1.47部、4−tert−ブチルカリックス(8)アレーンに対して2倍モル、純正化学製)のアセトン(10.0部、純正化学製)溶液を滴下し、室温で4時間撹拌した。これに酢酸(1.38部、純正化学製)を加え、室温で4時間撹拌した。その後、桐山ロートと濾紙(No.5C)を用いて濾過して生成した塩類を除去し、ロータリーエバポレーターにて溶媒を留去し、白色固体を得た。これをトルエン(純正化学製)に再溶解し、分液ロートに入れ、水を添加して分液操作を行い、トルエン層を分離、無水硫酸マグネシウムで脱水した後、ロータリーエバポレーターにてトルエンを留去し、110℃で減圧乾燥して化合物(4)を収率95%以上で得た。
得られた化合物(4)の赤外線スペクトルを測定した結果を以下に示す:
原料である酸塩化物由来の1780cm−1付近のピークの消失、
フェノールエステル結合由来の1720cm−1付近のピークの出現、及び
ヒドロキシ基由来の3200cm−1のピーク強度の若干の減少。
以上、収率と赤外線スペクトルから、化合物(4)は主に、Rが水素原子であり、Rがtert−ブチル基であり、Rが水素原子であり、Rがデカノイル基であり、mが2であり、nがほぼ0であり、lが約6であり、かつn+m+lが8である、上記式(1)で表される構造を有するといえる。
【実施例5】
化合物(5)の合成
ビーカーに4−tert−ブチルカリックス(8)アレーン(5.00部、川口薬品製)、トリエチルアミン(3.10部、純正化学製)及びアセトン(100部、純正化学製)を入れ、室温で1時間撹拌したところ、ほぼ透明になった。これを桐山ロートと濾紙(No.5C)を用いて濾過して透明な溶液を得た。この溶液をフラスコに入れ、ステアリン酸クロライド(4.66部、4−tert−ブチルカリックス(8)アレーンに対して4倍モル、純正化学製)のアセトン(10.0部、純正化学製)溶液を滴下し、室温で16時間撹拌した。これに酢酸(0.92部、純正化学製)を加え、室温で4時間撹拌した。その後、桐山ロートと濾紙(No.5C)を用いて濾過して生成した塩類を除去し、ロータリーエバポレーターにて溶媒を留去し、白色固体を得た。これをトルエン(純正化学製)及びヘキサン(純正化学製)の1:1混合溶媒に溶解し、分液ロートに入れ、水を添加して分液操作を行い、トルエン−ヘキサン層を分離、無水硫酸マグネシウムで脱水した後、ロータリーエバポレーターにてトルエン及びヘキサンを留去し、110℃で減圧乾燥して化合物(5)を収率95%以上で得た。
得られた化合物(5)の赤外線スペクトルを測定した結果を以下に示す:
原料である酸塩化物由来の1780cm−1付近のピークの消失、
フェノールエステル結合由来の1720cm−1付近のピークの出現、及び
ヒドロキシ基由来の3200cm−1のピーク強度の半減。
以上、収率と赤外線スペクトルから、化合物(5)は主に、Rが水素原子であり、Rがtert−ブチル基であり、Rが水素原子であり、Rがステアロイル基であり、mが4であり、nがほぼ0であり、lが約4であり、かつn+m+lが8である、上記式(1)で表される構造を有するといえる。
【実施例6】
化合物(6)の合成
ビーカーに4−tert−ブチルカリックス(8)アレーン(5.00部、川口薬品製)、トリエチルアミン(3.10部、純正化学製)及びアセトン(100部、純正化学製)を入れ、室温で1時間撹拌したところ、ほぼ透明になった。これを桐山ロートと濾紙(No.5C)を用いて濾過して透明な溶液を得た。この溶液をフラスコに入れ、ステアリン酸クロライド(6.99部、4−tert−ブチルカリックス(8)アレーンに対して6倍モル、東京化成工業製)のアセトン(10.0部、純正化学製)溶液を滴下し、室温で16時間撹拌した。これに酢酸(0.46部、純正化学製)を加え、室温で4時間撹拌した。その後、桐山ロートと濾紙(No.5C)を用いて濾過して生成した塩類を除去し、ロータリーエバポレーターにて溶媒を留去し、白色固体を得た。これをヘキサン(純正化学製)に溶解し、分液ロートに入れ、水を添加して分液操作を行い、ヘキサン層を分離、無水硫酸マグネシウムで脱水した後、ロータリーエバポレーターにてヘキサンを留去し、110℃で減圧乾燥して化合物(6)を収率95%以上で得た。
得られた化合物(6)の赤外線スペクトルを測定した結果を以下に示す:
原料である酸塩化物由来の1780cm−1付近のピークの消失、
フェノールエステル結合由来の1720cm−1付近のピークの出現、及び
ヒドロキシ基由来の3200cm−1のピーク強度の減少。
以上、収率と赤外線スペクトルから、化合物(6)は主に、Rが水素原子であり、Rがtert−ブチル基であり、Rが水素原子であり、Rがステアロイル基であり、mが6であり、nがほぼ0であり、lが約2であり、かつn+m+lが8である、上記式(1)で表される構造を有するといえる。
【実施例7】
化合物(7)の合成
ビーカーに4−tert−ブチルカリックス(8)アレーン(5.00部、川口薬品製)、トリエチルアミン(3.10部、純正化学製)及びアセトン(100部、純正化学製)を入れ、室温で1時間撹拌したところ、ほぼ透明になった。これを桐山ロートと濾紙(No.5C)を用いて濾過して透明な溶液を得た。この溶液をフラスコに入れ、アジピン酸ジクロライド(0.353部、4−tert−ブチルカリックス(8)アレーンに対して0.5倍モル、純正化学製)及びステアリン酸クロライド(2.33部、4−tert−ブチルカリックス(8)アレーンに対して2倍モル、東京化成工業製)のアセトン(15.0部、純正化学製)溶液を滴下し、室温で4時間撹拌した。これに酢酸(0.92部、純正化学製)を加え、室温で4時間撹拌した。その後、桐山ロートと濾紙(No.5C)を用いて濾過して生成した塩類を除去し、ロータリーエバポレーターにて溶媒を留去し、白色固体を得た。これをヘキサン(純正化学製)に溶解し、分液ロートに入れ、水を添加して分液操作を行い、ヘキサン層を分離、無水硫酸マグネシウムで脱水した後、ロータリーエバポレーターにてヘキサンを留去し、110℃で減圧乾燥して化合物(7)を収率95%以上で得た。
得られた化合物(7)の赤外線スペクトルを測定した結果を以下に示す:
原料である酸塩化物由来の1780cm−1付近のピークの消失、
フェノールエステル結合由来の1720cm−1付近のピークの出現、及び
ヒドロキシ基由来の3200cm−1のピーク強度の減少。
以上、収率と赤外線スペクトルから、化合物(7)は主に、R’が水素原子であり、R’がtert−ブチル基であり、R’が水素原子であり、R’がステアロイル基であり、Rがテトラメチレン基であり、qが1であり、s及びs’が2であり、p及びp’がほぼ0であり、r及びr’が約5であり、p+q+r+s及びp’+q+r’+s’が8である、上記式(2)で表される構造を有するといえる。
【実施例8】
化合物(8)の合成
撹拌子を入れたフラスコ内に、三臭化リン(0.09部、和光純薬工業製)を採取した。ポリエチレングリコールモノステアレート(3.38部、4−tert−ブチルカリックス(8)アレーンに対して2倍モル、平均重合度約45、分子量約2200、東京化成工業製)を滴下ロートに採取し、塩化カルシウム管とともにフラスコに備え付け、氷浴下で撹拌させながら30分かけて滴下した。滴下終了後、氷浴下で2時間撹拌し、さらに撹拌させながら1時間かけて室温に戻し、その後室温で24時間撹拌した。その後、フラスコ中にTHF(20部、純正化学製)を数回に分けて加えた後、撹拌し、溶媒を滴下ロートに取り出すという作業を繰り返し、THFに可溶な成分を滴下ロートに取り出した。
別のフラスコ内に60%水素化ナトリウム−オイル分散液(0.62部、和光純薬工業製)を採取し、THF(純正化学製)を用いてオイルを洗浄後、フラスコ内に反応溶媒としてTHF(8.87部)を加え、撹拌機、蒸留塔を備え付けた。そこに予めビーカー内でTHF(13.31部)に分散させた4−tert−ブチルカリックス(8)アレーン(1.00部、川口薬品製)を撹拌させながら、15分かけて加え、ビーカーをTHF(4.44部)を用いて洗いこみ、ついで3時間還流を行った。還流終了後、放冷し、桐山ロートと濾紙(No.5C)を用いて、上記反応物中の過剰の水素化ナトリウムを除去した後、濾液のフラスコ内に反応溶媒としてTHF(17.74部)を加えた。
前述のポリエチレングリコールモノステアレートと三臭化リンとの反応物の入った滴下ロートを、上記4−tert−ブチルカリックス(8)アレーンと水素化ナトリウムとの反応物の入ったナスフラスコに備え付け、室温で30分かけて滴下した。その後、混合溶媒中で3時間還流した。
還流終了後、放冷し、フラスコ内に酢酸(純正化学製)を加えて中和した。その後、析出物を桐山ロートと濾紙(No.5C)を用いて除去し、濾液中の溶媒をロータリーエバポレーターにより除去し、化合物(8)を収率95%以上で得た。
得られた化合物(8)の赤外線スペクトルを測定した結果を以下に示す:
中間生成物中のC−Br由来の640cm−1付近のピークの消失、
フェノールエーテル結合由来の1250cm−1付近のピークの出現、及び
ヒドロキシ基由来の3200cm−1のピーク強度の若干の減少。
以上、収率と赤外線スペクトルから、化合物(8)は主に、Rが水素原子であり、Rがtert−ブチル基であり、Rが水素原子であり、Rが末端ステアロイル化ポリエチレングリコール鎖であり、mが2であり、nがほぼ0であり、lが約6であり、かつn+m+lが8である、上記式(1)で表される構造を有するといえる。
【実施例9】
化合物(9)の合成
撹拌子を入れたフラスコ内に、ステアリルアルコール(10.00部、純正化学製)、ε−カプロラクトン(60.0部、純正化学製)及びテトラブチルチタネート(0.01部、純正化学製)を入れ、160℃まで4時間かけて昇温し、160℃で2時間加熱し、カプロラクトン重合物(重合度26、数平均分子量2604)の末端ステアリルエステルを得た。
撹拌子を入れたフラスコ内に、三臭化リン(0.09部、和光純薬工業製)を採取し、上記カプロラクトン重合物(4.01部、4−tert−ブチルカリックス(8)アレーンに対して2倍モル)を滴下ロートに採取し、塩化カルシウム管とともにフラスコに備え付け、氷浴下で撹拌させながら30分かけて滴下した。滴下終了後、氷浴下で2時間撹拌し、さらに撹拌させながら1時間かけて室温に戻し、その後室温で24時間撹拌した。ついで、フラスコ中にTHF(20部、純正化学製)を数回に分けて加えた後、撹拌し、溶媒を滴下ロートに取り出すという作業を繰り返し、THFに可溶な成分を滴下ロートに取り出した。
別のフラスコ内に60%水素化ナトリウム−オイル分散液(0.62部、和光純薬工業製)を採取し、THF(純正化学製)を用いてオイルを洗浄後、フラスコ内に反応溶媒としてTHF(8.87部)を加え、撹拌機、蒸留塔を備え付けた。そこに予めビーカー内でTHF(13.31部)に分散させた4−tert−ブチルカリックス(8)アレーン(1.00部、川口薬品製)を撹拌させながら、15分かけて加え、ビーカーをTHF(4.44部)を用いて洗いこみ、ついで3時間還流を行った。還流終了後、放冷し、桐山ロートと濾紙(No.5C)を用いて、上記反応物中の過剰の水素化ナトリウムを除去した後、濾液のフラスコ内に反応溶媒としてTHF(17.74部)を加えた。
前述のカプロラクトン重合物と三臭化リンとの反応物の入った滴下ロートを、上記4−tert−ブチルカリックス(8)アレーンと水素化ナトリウムとの反応物の入ったナスフラスコに備え付け、室温で30分かけて滴下した。その後、混合溶媒中で3時間還流した。
還流終了後、放冷し、フラスコ内に酢酸(純正化学製)を加えて中和した。その後、析出物を桐山ロートと濾紙(No.5C)を用いて除去し、濾液中の溶媒をロータリーエバポレーターにより除去し、化合物(9)を収率95%以上で得た。
得られた化合物(9)の赤外線スペクトルを測定した結果を以下に示す:
中間生成物中のC−Br由来の640cm−1付近のピークの消失、
フェノールエーテル結合由来の1250cm−1付近のピークの出現、及び
ヒドロキシ基由来の3200cm−1のピーク強度の若干の減少。
以上、収率と赤外線スペクトルから、化合物(9)は主に、Rが水素原子であり、Rがtert−ブチル基であり、Rが水素原子であり、Rが末端ステアリル化カプロラクトン重合鎖であり、mが2であり、nがほぼ0であり、lが約6であり、かつn+m+lが8である、上記式(1)で表される構造を有するといえる。
【実施例10】
ナスフラスコ中でヒドロキシル基末端ステアロイル化カプロラクトン重合物(13.72部(t−ブチルカリックス(8)アレーンに対して2倍モル)、川研ファインケミカル製、分子量約3’000)をトルエン(51.90部、純正化学製)に溶解した。そこに塩化チオニル(1.65部、純正化学製)を室温で約10分間かけて滴下し、滴下終了後、滴下ロートをトルエン(2.60部、純正化学製)で洗い込み、その後、一昼夜、室温で撹拌した。別のナスフラスコにt−ブチルカリックス(8)アレーン(3.00部、川口薬品製)およびアセトン(28.48部、純正化学製)を加え、室温で攪拌し、t−ブチルカリックス(8)アレーンをアセトン中に分散させた後、分散液にトリエチルアミン(1.89部、純正化学製)を加えて撹拌し、透明なアセトン溶液を得た。得られたアセトン溶液に、先に反応させたヒドロキシル基末端ステアロイル化カプロラクトン重合物(川研ファインケミカル製)と塩化チオニル(純正化学製)の反応物を反応液ごと滴下ロートに採取してすばやく滴下した。滴下終了後、滴下ロートをアセトン(2.37部、純正化学製)を用いて洗い込み、その後室温で5時間撹拌した。次に、酢酸(0.83部(t−ブチルカリックスアレーンに対して6倍モル)、純正化学製)を加え、室温で1時間撹拌し、中和した。これに純水を加え、室温で1時間撹拌し、未反応の塩化チオニルをクエンチした。その後、ロータリーエバポレーターにて溶媒を留去し、白色の固体を得た。これをトルエン(純正化学製)に再溶解し、分液ロートに入れ、水を添加して分液操作を行い、トルエン層を分離、無水硫酸マグネシウムで脱水した後、ロータリーエバポレーターにてトルエンを留去、さらに110℃で減圧乾燥して化合物(10)を収率93%で得た。
得られた化合物(10)の赤外線スペクトルを測定した結果を以下に示す:
中間生成物中の酸塩化物由来の1780cm−1付近のピークの消失、
フェノールエステル結合由来の1720cm−1付近のピークの出現、及び
ヒドロキシ基由来の3200cm−1のピーク強度の減少。
以上、収率と赤外線スペクトルから、化合物(10)は主に、Rが水素原子であり、Rがtert−ブチル基であり、Rが水素原子であり、Rがヒドロキシル基末端ステアロイル化カプロラクトン重合鎖であり、mが2であり、nがほぼ0であり、lが6であり、かつn+m+lが8である、上記式(1)で表される構造を有するといえる。
【実施例11〜20】
トルエン(200部)に、実施例1〜10で得られた化合物(1)〜(10)をそれぞれ、20.0部溶解させた。これらの溶液にそれぞれC60(0.2部、東京化成工業製)をトルエン(200部)に溶解させた溶液を添加して、室温で20分撹拌後、ロータリーエバポレーターで溶媒を除去し、フラーレン複合物(1)〜(10)を得た。
このフラーレン複合物(1)〜(10)にそれぞれ、ヘキサン(200部)を添加したところ、いずれも不溶物のない透明な溶液となり、24時間後も沈殿が見られなかった。
比較例1
フラスコ内に60%水素化ナトリウム−オイル分散液(0.31部、和光純薬工業製)を採取し、THF(純正化学製)を用いてオイルを洗浄後、フラスコ内に反応溶媒としてTHF(6.33部)を加え、撹拌機、蒸留塔を備え付けた。そこに予めビーカー内でTHF(15.8部)に分散させた4−tert−ブチルカリックス(8)アレーン(5.00部、川口薬品製)を撹拌させながら10分かけて加え、ビーカーをTHF(9.5部)を用いて洗いこみ、ついで3時間還流を行った。
ステアリン酸クロライド(9.32部、4−tert−ブチルカリックス(8)アレーンに対して8倍モル、純正化学製)を予めTHF(10部)に溶解したものを滴下ロートに採取し、撹拌機、蒸留塔とともに、上記の4−tert−ブチルカリックス(8)アレーンと水素化ナトリウムとの反応物の入ったフラスコに備え付け、撹拌させながら15分かけて滴下した。滴下終了後、滴下ロートをTHF(5部)を用いて洗いこみ、3時間還流を行った。
桐山ロートと濾紙(No.5C)を用いて、上記反応物中の過剰の水素化ナトリウムを除去した後、濾液に酢酸(0.1部、純正化学製)を加えて中和した。その後、析出物を桐山ロートと濾紙(No.5C)を用いて除去し、濾液中の溶媒をロータリーエバポレーターにより除去し、ヘキサン(純正化学製)に再溶解し、分液ロートに入れ、水を添加して分液操作を行い、ヘキサン層を分離し、無水硫酸マグネシウムで脱水後、ロータリーエバポレーターでヘキサンを留去し、110℃で減圧乾燥し、比較化合物(1)を収率95%以上で得た。
得られた比較化合物(1)の赤外線スペクトルを測定した結果を以下に示す:
原料である酸塩化物由来の1780cm−1付近のピークの消失、
フェノールエステル結合由来の1720cm−1付近のピークの出現、及び
ヒドロキシ基由来の3200cm−1のピークの消失。
以上、収率と赤外線スペクトルから、比較化合物(1)は主に、Rが水素原子であり、Rがtert−ブチル基であり、Rが水素原子であり、Rがステアロイル基であり、mが8であり、n及びlがほぼ0であり、かつn+m+lが8である、上記式(1)で表される構造を有するといえる。
比較例2:比較化合物(2)の合成
ビーカーに4−tert−ブチルカリックス(8)アレーン(5.00部、川口薬品製)、トリエチルアミン(3.10部、純正化学製)及びアセトン(100部、純正化学製)を入れ、室温で1時間撹拌したところ、ほぼ透明になった。これを桐山ロートと濾紙(No.5C)を用いて濾過して透明な溶液を得た。この溶液をフラスコに入れ、ブチリルクロライド(0.82部、4−tert−ブチルカリックス(8)アレーンに対して2倍モル、東京化成工業製)のアセトン(10.0部、純正化学製)溶液を滴下し、室温で4時間撹拌した。これに酢酸(1.38部、純正化学製)を加え、室温で4時間撹拌した。その後、桐山ロートと濾紙(No.5C)を用いて濾過して生成した塩類を除去し、ロータリーエバポレーターにて溶媒を留去し、白色固体を得た。これをトルエン(純正化学製)に溶解し、分液ロートに入れ、水を添加して分液操作を行い、トルエン層を分離、無水硫酸マグネシウムで脱水した後、ロータリーエバポレーターにてトルエンを留去し、110℃で減圧乾燥して比較化合物(2)を収率95%以上で得た。
得られた比較化合物(2)の赤外線スペクトルを測定した結果を以下に示す:
原料である酸塩化物由来の1780cm−1付近のピークの消失、
フェノールエステル結合由来の1720cm−1付近のピークの出現、及び
ヒドロキシ基由来の3200em−1のピーク強度の若干の減少。
以上、収率と赤外線スペクトルから、比較化合物(2)は主に、Rが水素原子であり、Rがtert−ブチル基であり、Rが水素原子であり、Rがブタノイル基であり、mが2であり、nがほぼ0であり、lが約6であり、かつn+m+lが8である、上記式(1)で表される構造を有するといえる。
比較例3:比較化合物(3)の合成
ビーカーに4−tert−ブチルカリックス(8)アレーン(5.00部、川口薬品製)、トリエチルアミン(3.10部、純正化学製)及びアセトン(100部、純正化学製)を入れ、室温で1時間撹拌したところ、ほぼ透明になった。これを桐山ロートと濾紙(No.5C)を用いて濾過して透明な溶液を得た。この溶液をフラスコに入れ、ブチリルクロライド(1.64部、4−tert−ブチルカリックス(8)アレーンに対して4倍モル、東京化成工業製)のアセトン(10.0部、純正化学製)溶液を滴下し、室温で4時間撹拌した。これに酢酸(0.92部、純正化学製)を加え、室温で4時間撹拌した。その後、桐山ロートと濾紙(No.5C)を用いて濾過して生成した塩類を除去し、ロータリーエバポレーターにて溶媒を留去し、白色固体を得た。これをトルエン(純正化学製)に溶解し、分液ロートに入れ、水を添加して分液操作を行い、トルエン層を分離、無水硫酸マグネシウムで脱水した後、ロータリーエバポレーターにてトルエンを留去し、110℃で減圧乾燥して比較化合物(3)を収率95%以上で得た。
得られた比較化合物(3)の赤外線スペクトルを測定した結果を以下に示す:
原料である酸塩化物由来の1780cm−1付近のピークの消失、
フェノールエステル結合由来の1720cm−1付近のピークの出現、及び
ヒドロキシ基由来の3200cm−1のピークの強度の半減。
以上、収率と赤外線スペクトルから、比較化合物(3)は主に、Rが水素原子であり、Rがtert−ブチル基であり、Rが水素原子であり、Rがブタノイル基であり、mが4であり、nがほぼ0であり、lが約4であり、かつn+m+lが8である、上記式(1)で表される構造を有するといえる。
比較例4:比較化合物(4)の合成
ビーカーに4−tert−ブチルカリックス(8)アレーン(5.00部、川口薬品製)、トリエチルアミン(3.10部、純正化学製)及びアセトン(100部、純正化学製)を入れ、室温で1時間撹拌したところ、ほぼ透明になった。これを桐山ロートと濾紙(No.5C)を用いて濾過して透明な溶液を得た。この溶液をフラスコに入れ、ヘキサノイルクロライド(1.03部、4−tert−ブチルカリックス(8)アレーンに対して2倍モル、東京化成工業製)のアセトン(10.0部、純正化学製)溶液を滴下し、室温で4時間撹拌した。これに酢酸(1.38部、純正化学製)を加え、室温で4時間撹拌した。その後、桐山ロートと濾紙(No.5C)を用いて濾過して生成した塩類を除去し、ロータリーエバポレーターにて溶媒を留去し、白色固体を得た。これをトルエン(純正化学製)に溶解し、分液ロートに入れ、水を添加して分液操作を行い、トルエン層を分離、無水硫酸マグネシウムで脱水した後、ロータリーエバポレーターにてトルエンを留去し、110℃で減圧乾燥して比較化合物(4)を収率で95%以上で得た。
得られた比較化合物(4)の赤外線スペクトルを測定した結果を以下に示す:
原料である酸塩化物由来の1780cm−1付近のピークの消失、
フェノールエステル結合由来の1720cm−1付近のピークの出現、及び
ヒドロキシ基由来の3200em−1のピークの強度の若干の減少。
以上、収率と赤外線スペクトルから、比較化合物(4)は主に、Rが水素原子であり、Rがtert−ブチル基であり、Rが水素原子であり、Rがヘキサノイル基であり、mが2であり、nがほぼ0であり、lが約6であり、かつn+m+lが8である、上記式(1)で表される構造を有するといえる。
比較例5:比較化合物(5)の合成
ビーカーに4−tert−ブチルカリックス(8)アレーン(5.00部、川口薬品製)、トリエチルアミン(3.10部、純正化学製)及びアセトン(100部、純正化学製)を入れ、室温で1時間撹拌したところ、ほぼ透明になった。これを桐山ロートと濾紙(No.5C)を用いて濾過して透明な溶液を得た。この溶液をフラスコに入れ、オクタノイルクロライド(1.25部、4−tert−ブチルカリックス(8)アレーンに対して2倍モル、東京化成工業製)のアセトン(10.0部、純正化学製)溶液を滴下し、室温で4時間撹拌した。これに酢酸(1.38部、純正化学製)を加え、室温で4時間撹拌した。その後、桐山ロートと濾紙(No.5C)を用いて濾過して生成した塩類を除去し、ロータリーエバポレーターにて溶媒を留去し、白色固体を得た。これをトルエン(純正化学製)に溶解し、分液ロートに入れ、水を添加して分液操作を行い、トルエン層を分離、無水硫酸マグネシウムで脱水した後、ロータリーエバポレーターにてトルエンを留去し、110℃で減圧乾燥して比較化合物(5)を収率95%以上で得た。
得られた比較化合物(5)の赤外線スペクトルを測定した結果を以下に示す:
原料である酸塩化物由来の1780cm−1付近のピークの消失、
フェノールエステル結合由来の1720cm−1付近のピークの出現、及び
ヒドロキシ基由来の3200cm−1のピーク強度の若干の消失。
以上、収率と赤外線スペクトルから、比較化合物(5)は主に、Rが水素原子であり、Rがtert−ブチル基であり、Rが水素原子であり、Rがオクタノイル基であり、mが2であり、nがほぼ0であり、lが約6であり、かつn+m+lが8である、上記式(1)で表される構造を有するといえる。
比較例6
ヘキサン(200部)にC60(0.2部、東京化成工業製)を添加したところ、ほとんど溶解せず、黒色の不溶物が沈殿した。
比較例7〜11
トルエン(200部)に、比較例1〜5で得られた比較化合物(1)〜(5)をそれぞれ、20.0部溶解させた。これらの溶液にそれぞれC60(0.2部、東京化成工業製)をトルエン(200部)に溶解させた溶液を添加して、室温で20分撹拌後、ロータリーエバポレーターで溶媒を除去し、比較フラーレン複合物(1)〜(5)を得た。
この比較フラーレン複合物(1)〜(5)にそれぞれ、ヘキサン(200部)を添加して撹拌したところ、比較フラーレン複合物(1)〜(4)はいずれも黒色の不溶物が残り、完全に溶解せず、24時間後にはさらに沈殿物が増加した。比較フラーレン複合物(5)は溶解したが、24時間後には沈殿物が生成した。
比較例12
トルエン(200部)に、チタネート系カップリング剤(20.0部、味の素ファインテクノ製、プレンアクトKR TTS)を溶解させた。この溶液にC60(0.2部、東京化成工業製)をトルエン(200部)に溶解させた溶液を添加して、室温で20分間撹拌後、ロータリーエバポレーターで溶媒を除去し、比較フラーレン複合物(6)を得た。
この比較フラーレン複合物(6)にヘキサン(200部)を添加して撹拌したところ、ほとんど溶解せず、黒色の不溶物が沈殿した。
比較例13
トルエン(200部)に、アルミニウム系カップリング剤(20.0部、味の素ファインテクノ製、プレンアクトAL−M)を溶解させた。この溶液にC60(0.2部、東京化成工業製)をトルエン(200部)に溶解させた溶液を添加して、室温で20分間撹拌後、ロータリーエバポレーターで溶媒を除去し、比較フラーレン複合物(7)を得た。
この比較フラーレン複合物(7)にヘキサン(200部)に添加して撹拌したところ、ほとんど溶解せず、黒色の不溶物が沈殿した。
比較例14
トルエン(200部)に、高分子系分散剤(20.0部、味の素ファインテクノ製、アジスパーPB821)を溶解させた。この溶液にC60(0.2部、東京化成工業製)をトルエン(200部)に溶解させた溶液を添加して、室温で20分間撹拌後、ロータリーエバポレーターで溶媒を除去し、比較フラーレン複合物(8)を得た。
この比較フラーレン複合物(8)にヘキサン(200部)に添加して撹拌したところ、ほとんど溶解せず、黒色の不溶物が沈殿した。
【実施例21〜30】
ヘキサン(500部)に、実施例1〜10で得られた化合物(1)〜(10)をそれぞれ1.0部溶解させた。これらの溶液にそれぞれ、気相法炭素繊維(0.5部、昭和電工製、VGCF−H)を添加して、30分間の超音波照射により気相法炭素繊維の分散を行った。その結果、気相法炭素繊維が良好に分散し、1時間後も分散液が黒色であった。
比較例15
ヘキサン(500部)に、気相法炭素繊維(0.5部、昭和電工製、VGCF−H)を添加して、30分間の超音波照射により気相法炭素繊維の分散を試みた。その結果、気相法炭素繊維が良好に分散せずに数秒程度でほとんど全て沈殿し、液は無色透明になった。
比較例16〜20
ヘキサン(500部)に、比較例1〜5で得られた比較化合物(1)〜(5)をそれぞれ1.0部溶解させた。これらの溶液にそれぞれ、気相法炭素繊維(0.5部、昭和電工製、VGCF−H)を添加して、30分間の超音波照射により気相法炭素繊維の分散を試みた。その結果、気相法炭素繊維が良好に分散せず、比較化合物(1)〜(4)を添加したものは10分程度で、比較化合物(5)を添加したものは30分程度で、ほとんど全て沈殿し、液は無色透明になった。
比較例21
ヘキサン(500部)に、チタネート系カップリング剤(1.0部、味の素ファインテクノ製、プレンアクトKR TTS)を溶解させた。この溶液に気相法炭素繊維(0.5部、昭和電工製、VGCF−H)を添加して、30分間の超音波照射により気相法炭素繊維の分散を試みた。その結果、気相法炭素繊維が良好に分散せず、10分程度でほとんど全て沈殿し、液は無色透明になった。
比較例22
ヘキサン(500部)に、アルミニウム系カップリング剤(1.0部、味の素ファインテクノ製、プレンアクトAL−M)を溶解させた。この溶液に気相法炭素繊維(0.5部、昭和電工製、VGCF−H)を添加して、30分間の超音波照射により気相法炭素繊維の分散を試みた。その結果、気相法炭素繊維が良好に分散せず、10分程度で沈殿し、液は透明になった。
比較例23
ヘキサン(500部)に、高分子系分散剤(1.0部、味の素ファインテクノ製、アジスパーPB821)を溶解させた。この溶液に気相法炭素繊維(0.5部、昭和電工製、VGCF−H)を添加して、30分間の超音波照射により気相法炭素繊維の分散を試みた。その結果、気相法炭素繊維が良好に分散せず、10分程度で沈殿し、液は透明になった。
【実施例31】
シクロヘキサノン(500部)に、実施例10で得られた化合物(10)(1.0部)を溶解させた。この溶液に、フタロシアニンブルー(0.5部、大日精化製)を添加して、30分間の超音波照射によりフタロシアニンブルーの分散を行った。その結果、フタロシアニンブルーが良好に分散し、1週間後も沈降しなかった。
比較例24
シクロヘキサノン(500部)に、市販の顔料分散剤(1.0部、味の素ファインテクノ製、アジスパーPB821)を溶解させた。この溶液に、フタロシアニンブルー(0.5部、大日精化製)を添加して、30分間超音波照射し、フタロシアニンブルーの分散を試みた。その結果、超音波照射直後にはフタロシアニンブルーが分散したが、24時間後には沈降した。
比較例25
シクロヘキサノン(500部)に、フタロシアニンブルー(0.5部、大日精化製)を添加して、30分間超音波照射し、フタロシアニンブルーの分散を試みた。その結果、フタロシアニンブルーが超音波照射から30分経過後には沈降した。
【実施例32】
実施例31で得られたフタロシアニンブルーのシクロヘキサノン分散液を、ロータリーエバポレーターにて溶剤留去し、表面処理フタロシアニンブルー(1)(1.5部)を得た。この表面処理フタロシアニンブルー(1)をキシレン(500部)に添加し、30分間の超音波照射によりフタロシアニンブルーの分散を行った。その結果、フタロシアニンブルーが良好に分散し、1週間後も沈降しなかった。
比較例26
比較例25で得られたフタロシアニンブルーのシクロヘキサノン分散液を、ロータリーエバポレーターにて溶剤留去し、表面処理フタロシアニンブルー(2)(1.5部)を得た。この表面処理フタロシアニンブルー(2)をキシレン(500部)に添加し、30分間の超音波照射によりフタロシアニンブルーの分散を試みた。その結果、フタロシアニンブルーは超音波照射直後には分散したが、12時間後には沈降した。
比較例27
フタロシアニンブルー(1部)をキシレン(500部)に添加し、30分間の超音波照射によりフタロシアニンブルーの分散を試みた。その結果、超音波照射から30分後にはフタロシアニンブルーが沈降した。
以上から、本発明の特徴を有さないカリックスアレーン骨格を有する化合物、チタネート系カップリング剤、アルミニウム系カップリング剤、高分子系分散剤または顔料分散剤は、炭素繊維、フラーレンやフタロシアニンブルーを有機溶媒に分散または可溶化させることができないが、本発明のカリックスアレーン化合物(I)を含んでなる分散剤及び可溶化剤を用いれば分散または可溶化が可能となることは明らかである。
【産業上の利用可能性】
本発明のカリックスアレーン化合物(I)は、対象物、例えば、フラーレンや炭素繊維などの炭素系材料、フタロシアニンブルーなどの有機顔料などの有機溶媒への親和性および樹脂、潤滑剤などの有機マトリクスへの親和性を向上させることができ、対象物の分散や可溶化が可能となる。
本出願は日本で出願された特願2002−316869を基礎としており、その内容は本明細書にすべて包含するものである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
カリックスアレーンを構成するフェノール性水酸基中、
(A)少なくとも1つは置換されておらず、
(B)少なくとも1つは1もしくは2以上のアルキレンオキシ基からなる基及び/または炭化水素基を含む、総炭素数が10以上である基で置換されている
カリックスアレーン化合物を含有することを特徴とする、分散剤または可溶化剤。
【請求項2】
カリックスアレーン化合物が、下記一般式(1)または(2):

(式中、R、R、R、R’、R’及びR’は、同一でも異なっていてもよく、それぞれ、水素原子、置換基を有していてもよい鎖状炭化水素基、置換基を有していてもよいアリール基、置換基を有していてもよいアルコキシ基、ハロゲン原子、ニトロ基、アシル基、カルボキシル基、スルホン酸基または置換基を有していてもよいアミノ基を表し、n個、m個及びl個のR、R及びRは、それぞれ、同一でも異なっていてもよく、
p個、q個、r個及びs個のR’、R’及びR’は、それぞれ、同一でも異なっていてもよく、
p’個、r’個及びs’個のR’、R’及びR’は、それぞれ、同一でも異なっていてもよい;
及びR’は、同一でも異なっていてもよく、それぞれ、置換基を有していてもよい炭素数10〜20のアルキル基または置換基を有していてもよい炭素数9〜20のアルキル−カルボニル基であるか、あるいは式(3):−(RCO)x−R、式(4):−(RO)y−Rまたは式(5):−(CO−R10O)w−COR11(式(3)、式(4)及び式(5)中、R、R及びR10は、同一でも異なっていてもよく、それぞれ、置換基を有していてもよい炭素数1〜20のアルキレン基を表し、R、R及びR11は、同一でも異なっていてもよく、それぞれ、水素原子、アシル基または置換基を有していてもよい炭素数1〜20のアルキル基を表し、x、y及びwは、同一でも異なっていてもよく、それぞれ、1〜200の整数を表す)で表される基(但し、式(3)、式(4)及び式(5)で表される基の総炭素数はそれぞれ10以上である)を表し、
m個のRは、それぞれ、同一でも異なっていてもよく、
s個のR’は、それぞれ、同一でも異なっていてもよく、
s’個のR’は、それぞれ、同一でも異なっていてもよい;
は、置換基を有していてもよい炭素数2〜20のアルキレン基を表し、
q個のRは、それぞれ、同一でも異なっていてもよい;
nは0〜8の整数を表し、mは1〜9の整数を表し、lは1〜9の整数を表し、但し、n+m+lは4〜10の整数を表す;
p及びp’は同一でも異なっていてもよく、それぞれ、0〜7の整数を表し、q、r、r’、s及びs’は同一でも異なっていてもよく、それぞれ、1〜8の整数を表し、但し、p+q+r+s及びp’+q+r’+s’は、同一でも異なっていてもよく、それぞれ、4〜10の整数を表す。)
で表されることを特徴とする、請求項1記載の分散剤または可溶化剤。
【請求項3】
及びR’は、同一でも異なっていてもよく、それぞれ、置換基を有していてもよい炭素数10〜20のアルキル基または置換基を有していてもよい炭素数9〜20のアルキル−カルボニル基であるか、あるいは式(3):−(RCO)x−Rまたは式(4):−(RO)y−R(式(3)及び式(4)中、R及びRは、同一でも異なっていてもよく、それぞれ、置換基を有していてもよい炭素数1〜20のアルキレン基を表し、R及びRは、同一でも異なっていてもよく、それぞれ、水素原子、アシル基または置換基を有していてもよい炭素数1〜20のアルキル基を表し、x及びyは、同一でも異なっていてもよく、それぞれ、1〜200の整数を表す)で表される基(但し、式(3)及び式(4)で表される基の総炭素数はそれぞれ10以上である)を表す、請求項2記載の分散剤または可溶化剤。
【請求項4】
、R、R、R’、R’及びR’は、同一でも異なっていてもよく、それぞれ、水素原子または置換基を有していてもよい鎖状炭化水素基である、請求項2または3記載の分散剤または可溶化剤。
【請求項5】
炭素系材料と請求項1〜4のいずれかに記載の分散剤または可溶化剤とからなる炭素系複合物。
【請求項6】
炭素系材料がカーボンブラック、カーボンナノチューブ、グラファイト、炭素繊維、非晶質カーボン及びダイヤモンド粉からなるいずれかであり、当該炭素系材料の表面に請求項1〜4のいずれかに記載の分散剤が作用している、請求項5記載の炭素系複合物。
【請求項7】
炭素系材料がフラーレンであり、請求項1〜4のいずれかに記載の可溶化剤に包接されている、請求項5記載の炭素系複合物。
【請求項8】
有機顔料と請求項1〜4のいずれかに記載の分散剤または可溶化剤とからなる有機顔料複合物。
【請求項9】
有機顔料がフタロシアニン系顔料、アゾ系顔料、キナクリドン系顔料、ジケトピロロピロール系顔料およびアントラキノン系顔料からなるいずれかであり、当該有機顔料の表面に請求項1〜4のいずれかに記載の分散剤が作用している、請求項8記載の有機顔料複合物。
【請求項10】
請求項1〜4のいずれかに記載の分散剤または可溶化剤を含有してなる潤滑剤。
【請求項11】
下記一般式(1’)または(2’):

(式中、R、R、R、R’、R’及びR’は、同一でも異なっていてもよく、それぞれ、水素原子、置換基を有していてもよい鎖状炭化水素基、置換基を有していてもよいアリール基、置換基を有していてもよいアルコキシ基、ハロゲン原子、ニトロ基、アシル基、カルボキシル基、スルホン酸基または置換基を有していてもよいアミノ基を表し、n個、m個及びl個のR、R及びRは、それぞれ、同一でも異なっていてもよく、
p個、q個、r個及びs個のR’、R’及びR’は、それぞれ、同一でも異なっていてもよく、
p’個、r’個及びs’個のR’、R’及びR’は、それぞれ、同一でも異なっていてもよい;
4a及びR4a’は、同一でも異なっていてもよく、それぞれ、式(3):−(RCO)x−R、式(4):−(RO)y−Rまたは式(5):−(CO−R10O)w−COR11(式(3)、式(4)及び式(5)中、R、R及びR10は、同一でも異なっていてもよく、それぞれ、置換基を有していてもよい炭素数1〜20のアルキレン基を表し、R、R及びR11は、同一でも異なっていてもよく、それぞれ、水素原子、アシル基または置換基を有していてもよい炭素数1〜20のアルキル基を表し、x、y及びwは、同一でも異なっていてもよく、それぞれ、1〜200の整数を表す)で表される基(但し、式(3)、式(4)及び式(5)で表される基の総炭素数はそれぞれ10以上である)を表し、
m個のR4aは、それぞれ、同一でも異なっていてもよく、
s個のR4a’は、それぞれ、同一でも異なっていてもよく、
s’個のR4a’は、それぞれ、同一でも異なっていてもよい;
は、置換基を有していてもよい炭素数2〜20のアルキレン基を表し、
q個のRは、それぞれ、同一でも異なっていてもよい;
nは0〜8の整数を表し、mは1〜9の整数を表し、lは1〜9の整数を表し、但し、n+m+lは4〜10の整数を表す;
p及びp’は同一でも異なっていてもよく、それぞれ、0〜7の整数を表し、q、r、r’、s及びs’は同一でも異なっていてもよく、それぞれ、1〜8の整数を表し、但し、p+q+r+s及びp’+q+r’+s’は、同一でも異なっていてもよく、それぞれ、4〜10の整数を表す。)
で表される、カリックスアレーン化合物。
【請求項12】
4a及びR4a’は、同一でも異なっていてもよく、それぞれ、式(3):−(RCO)x−Rまたは式(4):−(RO)y−R(式(3)及び式(4)中、R及びRは、同一でも異なっていてもよく、それぞれ、置換基を有していてもよい炭素数1〜20のアルキレン基を表し、R及びRは、同一でも異なっていてもよく、それぞれ、水素原子、アシル基または置換基を有していてもよい炭素数1〜20のアルキル基を表し、x及びyは、同一でも異なっていてもよく、それぞれ、1〜200の整数を表す)で表される基(但し、式(3)及び式(4)で表される基の総炭素数はそれぞれ10以上である)を表す、請求項11記載のカリックスアレーン化合物。

【国際公開番号】WO2004/039483
【国際公開日】平成16年5月13日(2004.5.13)
【発行日】平成18年2月23日(2006.2.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−548046(P2004−548046)
【国際出願番号】PCT/JP2003/013751
【国際出願日】平成15年10月28日(2003.10.28)
【出願人】(000000066)味の素株式会社 (887)
【Fターム(参考)】